(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129012
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】床用目地カバー装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027537
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】592094243
【氏名又は名称】カネソウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健治
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DG02
2E001DH31
2E001FA11
2E001FA54
2E001HB01
2E001LA18
2E001PA02
2E001PA04
(57)【要約】
【課題】目地に差し渡された目地カバー体を支持する伸縮支持梁が優れた耐性を有し且つ地震時に円滑な伸縮作動し得ると共に、製造や施工に要するコストを抑制し得る床用目地カバー装置を提案する。
【解決手段】両建造物に夫々保持された連結基体に両端が枢結される伸縮支持梁は、中支持梁体52と左右一対の側支持梁体53,53とから構成されてなり、中支持梁体52の案内レール66を構成する上下の案内部67,68間に、側支持梁体53の側回転ローラ74が相対移動可能に嵌合され、かつ該側支持梁体53の案内レール76を構成する上下の案内部77,78間に、中支持梁体52の中回転ローラ64が相対移動可能に嵌合されることによって、中支持梁体52と左右の側支持梁体53,53とが連結されたものである。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地を介して隣接する建造物の側縁に夫々保持された連結基体と、
目地の幅方向に並設された複数のカバー板を備え、カバー板同士を目地幅方向および目地長手方向へ相対的に摺動可能な目地カバー体と、
目地幅方向に伸縮可能に設けられ、両端部が両建造物の各連結基体に夫々枢結されて、前記目地カバー体を下方から支持する伸縮支持梁と
を備えてなる床用目地カバー装置において、
前記連結基体は、
前記建造物の側縁に設けられ、前記伸縮支持梁の少なくとも端部を摺動可能に支持する水平受縁と、
前記水平受縁に立設され、前記伸縮支持梁の端部が横方向と上下方向とに傾動可能に連結された枢結支持部と
を備え、
前記伸縮支持梁は、
目地幅方向に沿って配設された中支持梁体と、
一端部が両建造物の前記枢結支持部に夫々枢結されると共に、他端部が前記中支持梁体の左右両側に目地幅方向へ相対的に摺動可能に夫々連結され、該中支持梁体を支持する左右一対の側支持梁体と
を備えたものであり、
前記中支持梁体は、
目地幅方向に沿う中梁杆部と、
前記中梁杆部から左右両側へ夫々突設された回動軸に、回動自在に連結された左右の中回転ローラと、
上下方向に間隙をおいて目地幅方向に沿って延成された上下一対の案内部により構成され、前記中梁杆部の左右両側に夫々配設された中案内レールと
を備え、
前記側支持梁体は、
一端部が前記連結基体の枢結支持部に枢結された、目地幅方向に沿う側梁杆部と、
前記側梁杆部から左右一側へ突設された回動軸に回動自在に連結され、前記中案内レールを構成する上下の案内部間に、目地幅方向へ相対的に移動可能に嵌合される側回転ローラと、
前記側梁杆部の、前記側回転ローラと同じ左右一側に配設され、上下方向に間隙をおいて目地幅方向に沿って延成された上下一対の案内部により構成されて、当該案内部間に前記中回転ローラが目地幅方向へ相対的に移動可能に嵌合される側案内レールと
を備えたものであることを特徴とする床用目地カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地を覆う床用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震による被害を最小限に留めるために、緩衝機能を備えた免震装置によって下部を支持した建造物が多く建設されている。こうした免震構造の建造物間には、地震による変位を吸収し得る目地が形成されており、かかる目地を覆う床用目地カバー装置が配設されている。
【0003】
前記床用目地カバー装置として、例えば特許文献1の構成が提案されている。この構成は、目地を介して隣接する建造物の側壁に両端部が枢支された複数の伸縮可能な支持体と、該支持体に所定間隔を置いて並列された複数のバー部材と、両端部が各建造物の側壁に枢支され且つ各バー部材が枢支部に枢支された複数のパンタグラフ状の伸縮リンクと、各バー部材に夫々固定された複数の目地プレートとを備えてなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来構成は、複数の支持体がバー部材を介して目地プレートを支持するものであり、該支持体には、該目地プレートの重量と該目地プレート上を移動する人や物の重量とが掛かる。さらに、この目地プレートは、該目地プレート上を移動する人や物を支持し得る強度と剛性とを必要とすることから、比較的重いものとなる。そのため、支持体には、前記目地プレートと目地プレート上を移動する人や物とを安定して支持できる機能と、円滑に伸縮作動できる機能との両方が必要である。こうした構成では、これら機能の向上が求められている。
【0006】
また、前述した特許文献1の従来構成は、支持体の両端部を建造物の側壁に枢支した構成であることから、この両端部と建造物の側壁との連結部位に、支持体の重量、目地プレートの重量、および該目地プレート上を移動する人や物の重量による比較的大きな負荷が作用する。そのため、支持体の両端部と建造物の側壁との連結部位を前記負荷に耐え得る構造とする必要がある。しかしながら、支持体を建造物に対して円滑に回動可能としつつ、前記負荷に耐え得る構造は、比較的大きなサイズとなったり、特殊な材料や機構を要したりするなど、製造や施工のコストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、目地上を移動する人や物を支持する伸縮支持梁(前記従来構成の支持体に相当)が優れた耐性を有し且つ地震時に円滑な伸縮作動し得ると共に、製造や施工に要するコストを抑制し得る床用目地カバー装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、目地を介して隣接する建造物の側縁に夫々保持された連結基体と、目地の幅方向に並設された複数のカバー板を備え、カバー板同士を目地幅方向および目地長手方向へ相対的に摺動可能な目地カバー体と、目地幅方向に伸縮可能に設けられ、両端部が両建造物の各連結基体に夫々枢結されて、前記目地カバー体を下方から支持する伸縮支持梁とを備えてなる床用目地カバー装置において、前記連結基体は、前記建造物の側縁に設けられ、前記伸縮支持梁の少なくとも端部を摺動可能に支持する水平受縁と、前記水平受縁に立設され、前記伸縮支持梁の端部が横方向と上下方向とに傾動可能に連結された枢結支持部とを備え、前記伸縮支持梁は、目地幅方向に沿って配設された中支持梁体と、一端部が両建造物の前記枢結支持部に夫々枢結されると共に、他端部が前記中支持梁体の左右両側に目地幅方向へ相対的に摺動可能に夫々連結され、該中支持梁体を支持する左右一対の側支持梁体とを備えたものであり、前記中支持梁体は、目地幅方向に沿う中梁杆部と、前記中梁杆部から左右両側へ夫々突設された回動軸に、回動自在に連結された左右の中回転ローラと、上下方向に間隙をおいて目地幅方向に沿って延成された上下一対の案内部により構成され、前記中梁杆部の左右両側に夫々配設された中案内レールとを備え、前記側支持梁体は、一端部が前記連結基体の枢結支持部に枢結された、目地幅方向に沿う側梁杆部と、前記側梁杆部から左右一側へ突設された回動軸に回動自在に連結され、前記中案内レールを構成する上下の案内部間に、目地幅方向へ相対的に移動可能に嵌合される側回転ローラと、前記側梁杆部の、前記側回転ローラと同じ左右一側に配設され、上下方向に間隙をおいて目地幅方向に沿って延成された上下一対の案内部により構成されて、当該案内部間に前記中回転ローラが目地幅方向へ相対的に移動可能に嵌合される側案内レールとを備えたものであることを特徴とする床用目地カバー装置である。
【0009】
かかる構成にあっては、地震時に、伸縮支持梁が中支持梁体と左右の側支持梁体との相対的な移動により伸縮することで、両建造物の相対的な変位に追従できるものである。ここで、中支持梁体と側支持梁体とは、中支持梁体の中回転ローラが側支持梁体の側案内レールにより目地幅方向へ相対移動可能とし、且つ側支持梁体の側回転ローラが中支持梁体の中案内レールにより目地幅方向へ相対移動可能とする構成を備えたものであり、当該構成によって、前記地震時における両建造物の相対的な変位に従って、安定して相対移動できるものである。詳述すると、本構成は、前記側案内レールを構成する上下の案内部間に、前記中回転ローラを相対移動可能に嵌合し、かつ前記中案内レールを構成する上下の案内部間に、前記側回転ローラを相対移動可能に嵌合した構成であるから、地震時にも各回転ローラと各案内レールとの嵌合状態を保つことができ、各回転ローラと各案内レールとの円滑な相対移動を安定して実行できる。したがって、本発明の構成によれば、地震時における両建造物の相対変位に、伸縮支持梁の円滑な伸縮によって安定して追従できる。
【0010】
さらに、本発明の構成は、伸縮支持梁の両端部が、両建造物の側縁に保持された連結基体の水平受縁に支持されたものであるから、該伸縮支持梁が、目地カバー体と該目地カバー体上を移動する人や物との重量を安定して支持できると共に、該重量による負荷が伸縮支持梁の両端部と連結基体の枢結支持部との連結部位に作用することを抑制できる。そのため、本構成は、伸縮支持梁の両端部と連結基体の枢結支持部との連結を比較的簡単な構造とすることができ、この構造の製造や施工に要するコストを、前述した従来構成に比して低減できる。
【0011】
尚、本発明の構成にあって、中支持梁体は、中梁杆部の左右両側に夫々一個の中回転ローラを備える構成であっても良いし、左右両側に夫々複数個の中回転ローラを備える構成であっても良い。例えば、二個の回転ローラを上下に並設する構成とすることもできる。かかる構成では、上側の回転ローラが、側案内レールを構成する上側の案内部に嵌合し、且つ下側の回転ローラが、当該側案内レールの下側の案内部に嵌合する構成とすることによって、実質的に一個の中回転ローラと同じ機能を有し、同じ作用効果を生ずる。また、側支持梁体にあっても、同様に、側梁杆部の左右一側に設ける側回転ローラは、一個でも良いし、複数であっても良い。
【0012】
また、本発明の構成にあっては、複数のリンク片がパンタグラフ状に枢結されて、目地の幅方向に伸縮可能に形成され、両端部が両建造物の各連結基体に夫々枢結された伸縮保持体を備え、該伸縮保持体に、目地カバー体の各カバー板が連結された構成が好適である。かかる構成は、地震時に両建造物が目地幅方向へ相対変位した際に、伸縮保持体が伸縮することで追従できると共に、地震時に両建造物が目地長手方向へ相対変位した際に、伸縮保持体が各リンク片の相対的な回動によって追従できる。これにより、伸縮保持体に夫々連結された各カバー板が、前記目地幅方向と長手方向とへの相対変位に追従して摺動できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床用目地カバー装置にあっては、前述したように、地震時における両建造物の相対変位に、目地カバー体を支持する伸縮支持梁が円滑に伸縮して安定して追従できる。さらに、伸縮支持梁の両端が、両建造物に保持された連結基体に支持されることから、該伸縮支持梁に掛かる負荷を安定して支えることができる。これにより、伸縮支持梁の両端部と連結基体の枢結支持部との連結構造に要するコストを、前述した従来構成に比して低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】床用目地カバー装置1の施工状態を示す縦断面図である。
【
図2】床用目地カバー装置1の施工状態を示す平面図である。
【
図3】床用目地カバー装置1の施工状態を示す斜視図である。
【
図4】目地カバー体45を省略して示す平面図である。
【
図5】目地カバー体45を省略して示す斜視図である。
【
図7】伸縮支持梁51の、(A)平面図と、(B)側面図である。
【
図9】伸縮支持梁51を構成する中支持梁体52の、(A)平面図と、(B)側面図である。
【
図11】伸縮支持梁51を構成する側支持梁体53の、(A)平面図と、(B)側面図である。
【
図12】側支持梁体53の、(A)正面図と、(B)
図11中のS-S線断面図である。
【
図13】(A)
図7中のT-T線断面図と、(B)
図7中のM-M線断面図である。
【
図14】建造物81,82が近接方向に相対変位した場合の、床用目地カバー装置1の作用説明図である。
【
図15】建造物81,82が左右方向に相対変位した場合の、床用目地カバー装置1の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる実施例を添付図面を用いて説明する。
床用目地カバー装置1は、
図1~3に示すように、隣接する建造物81,82間に設けられた目地83に配設されて、両建造物81,82を連絡する通路を構成する。建造物81,82はそれぞれ、緩衝機能を備えた免震装置(図示せず)によって下部が支持された免震構造の建造物である。目地83は、建造物81と建造物82との間に所定幅で形成され、地震の際に建造物81と建造物82との水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0016】
尚、本実施例では、目地83の長手方向を、床用目地カバー装置1の左右方向として説明する。すなわち、本実施例の左右方向が、本発明の目地長手方向に相当する。また、建造物81,82から目地83に向かう方向を内方とし、目地83から建造物81,82に向かう方向を外方として、以下で説明する。
【0017】
建造物81の床85の側縁と建造物82の床86の側縁とには、床用目地カバー装置1を構成する連結基体2,2が、目地83の長手方向に沿って対向状に配設されて、各側縁に固結されている。ここで、建造物81,82の床85,86の側縁には、所定深さで凹ませた支持段縁91,92が設けられており、この支持段縁91,92に、前記連結基体2,2が配設されている。連結基体2は、前記支持段縁91,92の上面を覆う平板状の水平受縁21と、該水平受縁21の外端に左右方向に亘って立設された垂直縁22とを備え、さらに、水平受縁21の内端に、目地83を構成する建造物81,82の壁面に沿って下方へ延出された内側縁23が連成されており、両建造物81,82に配設された連結基体2、2の内側縁23,23間により、両建造物81,82を連絡する通路上における目地幅が規定されている。尚、本実施例にあって、連結基体2を構成する水平受縁21、垂直縁22、および内側縁23は、ステンレス等の鋼板を折曲加工することにより形成されており、図示しないアンカーボルトなどによって建造物81,82の床85,86に固結されている。
【0018】
両建造物81,82の前記水平受縁21,21には、
図4に示すように、夫々の垂直縁22,22寄りに、円柱状の連結杆25,25が対向状に立設され、この一対の連結杆25,25が左右方向に所定間隔をおいて複数設けられている。ここで、本実施例にあっては、六組の前記一対の連結杆25,25が、左右方向の中心線に対して左右対称となる位置に夫々配設されている。尚、本実施例にあっては、前記連結杆25が、水平受縁21に固結されて該水平受縁21から上方へ突出されたボルトと、該ボルトに外嵌された円筒とから構成されている。
【0019】
図4,5に示すように、両建造物81,82に対向状に設けられた一対の連結杆25,25のなかで、右端から二番目の一対の連結杆25,25と、左端から二番目の一対の連結杆25,25とには、複数のリンク片33a,33bがパンタグラフ状に枢結されてなる伸縮保持体31が夫々連結されている。伸縮保持体31は、
図6に示すように、二個のリンク片33a,33bを枢結したX状のリンク要素部32が、複数連結された構成を有するものである。ここで、リンク要素部32は、互いの中央部を交差させたリンク片33a,33bを、該中央部で回動可能に枢結してなり、隣合うリンク要素部32,32の各リンク片33a,33bの端部同士が回動可能に夫々枢結されて、伸縮保持体31を構成している。さらに、両端のリンク要素部32,32には、前記一対の連結杆25,25に連結される取付部36,36が、短尺リンク片34a,34bを介して夫々枢結されている。短尺リンク片34a,34bは、前記リンク要素部32を構成するリンク片33a,33bの略半分の長さをなし、夫々の一端が取付部36に枢結され、夫々の他端が、前記リンク要素部32のリンク片33a,33bの各端部に夫々枢結される。また、取付部36は、前記連結杆25の外径よりも大きい径寸法で形成された連結孔37が上下方向に貫通形成されており、該連結孔37が該連結杆25に外嵌される。これにより、取付部36は、連結杆25に対して、左右方向へ回動可能であると共に、上下方向に傾動可能である。
【0020】
こうして配設された伸縮保持体31は、両建造物81,82が目地幅方向に相対変位した場合に、該相対変位に追従して伸縮できる(
図14参照)。そして、両建造物81,82が目地長手方向に相対変位した場合には、該相対変位に追従して左右方向に回動できる(
図15参照)。さらに、両建造物81,81が高さ方向に相対変位した場合には、該相対変位に追従して上下方向に傾動できる。
【0021】
また、左右の伸縮保持体31,31には、左右方向に沿って延在された複数の支持杆41が差し渡されており、各支持杆41が、各伸縮保持体31,31を構成するリンク要素部32,32に回動可能に枢結されている。本実施例の支持杆41は、断面略U字形の鋼材からなり、左右の伸縮保持体31,31の各リンク要素部32を構成するリンク片33a,33bの中央部を枢結したボルトに、回転可能に夫々枢結される。ここで、本実施例にあっては、伸縮保持体31が11個のリンク要素部32により構成されていることから、各リンク要素部32に枢結された11個の支持杆41が、目地幅方向に間隔をおいて配設されている。
【0022】
各支持杆41には、
図1~3に示すように、左右方向に沿って延在された矩形平板状のカバー板42,43が夫々固結されている。目地幅方向の中央部分に配置されるカバー板42は、他のカバー板43に比して幅広の矩形状をなし、その幅方向中央部が、目地幅方向の中央に位置する支持杆41に固結されている。また、中央のカバー板42よりも一方の建造物81側に配置されるカバー板43は、支持杆41から該一方の建造物81側に突出するように、該支持杆41に固結されている。そして、中央のカバー板42は、一方の建造物81側の側縁が、隣りのカバー板43の側縁に摺動可能に乗載され、同様に、一方の建造物81側の各カバー板43は、当該建造物81側の側縁が、隣りのカバー板43の側縁上に摺動可能に乗載される。また、中央のカバー板42よりも他方の建造物82側に配置されるカバー板43は、支持杆41から該他方の建造物82側に突出するように、該支持杆41の上面に固結されている。そして、中央のカバー板42は、他方の建造物82側の側縁が、隣りのカバー板43の側縁に摺動可能に乗載され、同様に、他方の建造物82側の各カバー板43は、当該建造物82側の側縁が、隣りのカバー板43の側縁上に摺動可能に乗載される。さらに、両建造物81,82に設けられた連結基体2,2の垂直縁22,22には、矩形平板状のカバー板44,44が夫々取り付けられている。そして、最も外側(建造物81,82側)に位置するカバー板42,42の建造物81,82側の側縁が、前記垂直縁22,22に取り付けられたカバー板44,44の側縁上に摺動可能に乗載される。こうした複数のカバー板42~44によって、本発明にかかる目地カバー体45が構成されており、該目地カバー体45が両建造物81,82間に差し渡された前記通路を構成している。
【0023】
前述の各支持杆41とカバー板42,43とが伸縮保持体31に連結された構成では、両建造物81,82が目地幅方向に相対変位すると、該伸縮保持体31の伸縮に伴って、各支持杆41が相対的に近接方向と離間方向とに移動して、各カバー板42,43が目地幅方向に摺動する。これにより、目地カバー体45が目地幅方向に伸縮する(
図14参照)。一方、両建造物81,82が目地長手方向に相対変位した場合には、伸縮保持体31が目地幅方向に対して傾動し、これに伴って、各支持杆41と各カバー板42,43とが相対的に左右方向(目地長手方向)に移動する。これにより、目地カバー体45が、目地長手方向に傾動する(
図15参照)。
【0024】
一方、両建造物81,82に対向状に設けられた複数の一対の連結杆25,25のなかで、前記伸縮保持体31が枢結されていない複数組の一対の連結杆25,25には、
図4,5に示すように、目地幅方向に伸縮可能な伸縮支持梁51が夫々枢結されている。そして、これら伸縮支持梁51上に前記した各支持杆41が乗載されて支持される。伸縮支持梁51は、
図7に示すように、両建造物81,82の連結杆25,25に夫々枢結される一対の側支持梁体53,53と、該側支持梁体53,53により支持される中支持梁体52とにより構成されている。
【0025】
中支持梁体52は、
図9,10に示すよう、目地幅方向に沿って延在された上下方向の側面部を左右両側に有する中梁杆部61を備え、該中梁杆部61の一端部には、左右一側の側面部に、四個の中回転ローラ64を有する中ローラユニット63が設けられていると共に、該中梁杆部61の他端部には、左右他側の側面部に、中ローラユニット63が設けられている。中ローラユニット63は、中梁杆部61の側面部に直交状に取り付けれる四個の回動軸65が上下方向と目地幅方向とに並列して設けられ、各回動軸65に前記中回転ローラ64が回動自在に夫々連結されたものである。中回転ローラ64には、その外周面に嵌合周溝64aが周成されている。
【0026】
さらに、中支持梁体52は、中梁杆部61の左右両側に、上下一対の案内部67,68を有する中案内レール66が夫々固結されている。案内部67,68は、中梁杆部61の上下端から左右一方へ夫々延出された水平縁67a,68aと、該水平縁67a,68aの延出端から下方または上方へ夫々延出された嵌合縁67b,68bとからなる断面略L形を成し、夫々の嵌合縁67b,68bが上下方向に所定間隙をおいて対設されている。こうした中案内レール66は、中梁杆部61の長手方向(目地幅方向)に亘って夫々設けられている。そして、本実施例の中案内レール66は、上側の案内部67が前記中ローラユニット63よりも上方に設けられ且つ下側の案内部68が該中ローラユニット63よりも下方に設けられており、上下の嵌合縁67b,68bの間隙に、該中ローラユニット63が位置する。
【0027】
側支持梁体53は、
図11,12に示すように、目地幅方向に沿って延在された上下方向の側面部を左右一側に有する側梁杆部71を備え、該側梁杆部71の一端部には、前記連結杆25に枢結される梁取付部72が設けられると共に、該側梁杆部71の他端部には、前記側梁杆部71の側面部に、二個の側回転ローラ74を有する側ローラユニット73が設けられている。梁取付部72には、前記連結杆25の外径よりも大きい径寸法で形成された連結孔72aが上下方向に貫通形成されており、該連結孔72aが該連結杆25に外嵌される。これにより、梁取付部72は、連結杆25に対して、左右方向へ回動可能であると共に、上下方向に傾動可能である。
【0028】
側ローラユニット73は、側梁杆部71の側面部に直交状に取り付けられる二個の回動軸75が上下方向に並列して設けられ、各回動軸75に前記側回転ローラ74が回動自在に夫々連結されたものである。そして、側回転ローラ74には、その外周面に嵌合周溝74aが周成されている。こうした側ローラユニット73は、上側の側回転ローラ74の嵌合周溝74aに、前記中案内レール66を構成する上側の案内部67の嵌合縁67bを相対移動可能に嵌合でき、且つ下側の側回転ローラ74の嵌合周溝74aに、当該案内部67と対の下側の案内部68の嵌合縁68bを相対移動可能に嵌合できる。
【0029】
さらに、側支持梁体53は、側梁杆部71の側面部に、上下一対の案内部77,78を有する側案内レール76が固結されている。案内部77,78は、側梁杆部71の側面部の上部および下部から左右一方へ夫々延出された水平縁77a,78aと、各水平縁77a,78aの延出端から下方または上方へ夫々延出された嵌合縁77b,78bとからなる断面略L形を成し、夫々の嵌合縁77b,78bが上下方向に所定間隙をおいて対設されている。こうした側案内レール76は、側梁杆部71の側面部に、前記側ローラユニット73が取り付けられた他端部を除いて、該側梁杆部71の長手方向(目地幅方向)に亘って夫々設けられている。そして、本実施例の側案内レール76は、前記中支持梁体52の中案内レール66を構成する上下の案内部67,68(上下の嵌合縁67b,68b)間を挿通可能に設けられており、前記中支持梁体52の中ローラユニット63を構成する上側の二個の回転ローラ64,64の嵌合周溝64a,64aに、上側の案内部77の嵌合縁77bを相対移動可能に嵌合でき、且つ前記中ローラユニット63の下側の二個の回転ローラ64,64の嵌合周溝64a,64aに、下側の案内部78の嵌合縁78bを相対移動可能に嵌合できる。
【0030】
また、本実施例にあって、側支持梁体53には、側梁杆部71の上下端から側面部側へ夫々突設された外嵌片部79,79を備える。上下の外嵌片部79,79は、その間に、前記中支持梁体52の中案内レール66を嵌入可能に形成されており、側梁杆部71の長手方向(目地幅方向)に亘って設けられている。ここで、上下の外嵌片部79,79は、その間に、中案内レール66を構成する上下の案内部77,78の水平縁67a,68aが嵌入されて、該中案内レール66を上下方向で支持する(
図13参照)。
【0031】
伸縮支持梁51は、
図7,8に示すように、前述した中支持梁体52と二個の側支持梁体53,53とが連結されて構成される。すなわち、中支持梁体52の左右両側で、該中支持梁体52を構成する中梁杆部61の側面部と側支持梁体53,53を構成する側梁杆部71,71の側面部とを夫々対向させて、該中支持梁体52の中案内レール66と該側支持梁体53の側回転ローラ74とを嵌合させると共に、該中支持梁体52の中回転ローラ64と該側支持梁体53の側案内レール76とを嵌合させる。こうして中支持梁体52と二個の側支持梁体53,53とを連結してなる伸縮支持梁51が構成され、該伸縮支持梁51は、各側支持梁体53,53が両建造物81,82の連結基体2,2に枢結され且つ該連結基体2,2の水平受縁21,21に乗載されて支持される(
図1,5参照)。かかる伸縮支持梁51は、
図13に示すように、中案内レール66の上下の案内部67,68間に側ローラユニット73の上下の側回転ローラ74,74が相対移動可能に嵌合され、且つ側案内レール76の上下の案内部77,78間に中ローラユニット63の上下の中回転ローラ64,64が相対移動可能に嵌合された構成であることから、中支持梁体52と側支持梁体53,53とが各案内レール66,76に沿って相対的に移動することによって、円滑に伸縮できる。
【0032】
伸縮支持梁51は、
図4,5に示すように、側支持梁体53,53の梁取付部72,72が両建造物81,82の連結基体2,2に枢結されて、左右方向に回転可能かつ上下方向に傾動可能に配設される。そして、側支持梁体53,53が前記連結基体2,2の水平受縁21,21上に摺動可能に乗載されていることから、該側支持梁体53,53によって中支持梁体52が安定して支持される。このように両建造物81,82間の目地83に差し渡された複数の伸縮支持梁51に、前記伸縮保持体31と連結され且つカバー板42,43と固結される複数の支持杆41が摺動可能に乗載されて、本実施例の床用目地カバー装置1が構成される。この床用目地カバー装置1では、目地83間に差し渡された複数の伸縮支持梁51によって、前記支持杆41を介してカバー板42,43が支持されている。
【0033】
次に、本実施例の床用目地カバー装置1の作動態様について説明する。
図14に示すように、地震の際に両建造物81,82が近接する方向に相対変位すると、各伸縮支持梁51は、中支持梁体52に対して側支持梁体53,53が目地内方へ夫々相対移動して収縮する。そして、各伸縮保持体31が収縮することによって、各支持杆41が互いに近接し、これに伴って各カバー板42,43が目地内方へ移動して、目地カバー体45が収縮する。ここで、伸縮支持梁51と伸縮保持体31とが円滑に伸縮できることから、地震による両建造物81,82の近接方向への相対変位にスムーズに追従できる。このように伸縮支持梁51に支持された各カバー板42,43が伸縮保持体31に連動して摺動することによって、両建造物81,82の近接方向への相対変位に追従して、目地カバー体45がスムーズに収縮できる。
【0034】
また、地震の際に両建造物81,82が離間する方向に相対変位した場合(図示せず)には、各伸縮支持梁51が、中支持梁体52に対する側支持梁体53,53の目地外方への相対移動によって伸張する。そして、各伸縮保持体31が伸張することによって、各支持杆41が互いに離間し、これに伴って各カバー板42,43が目地外方へ移動して、目地カバー体45が伸張する。このように離間方向へ相対変位した際にも、伸縮支持梁51と伸縮保持体31とが円滑に伸張して、当該相対変位にスムーズに追従できる。そして、各カバー板42,43が離間方向への相対変位に追従して摺動することによって、目地カバー体45がスムーズに伸張できる。
【0035】
一方、
図15に示すように、地震の際に両建造物81,82が左右方向(目地長手方向)に相対変位した場合には、各伸縮支持梁51が目地幅方向に対して傾動すると共に、該傾動に伴って、側支持梁体53,53が両端側へ夫々相対移動して伸張する。そして、各伸縮保持体31が、左右方向へ傾動すると共に、該傾動に伴って伸張する。ここで、各伸縮支持梁51と各伸縮保持体31とは、夫々円滑に伸縮でき、且つ両建造物81,82に固定された連結基体2,2(一対の連結杆25,25)に回動可能に夫々枢結されていることから、地震による両建造物81,82の左右方向への相対変位にスムーズに追従できる。そして、伸縮保持体31の左右方向への傾動により、各支持杆41の左右方向位置がずれ、これに伴って各カバー板42,43が左右方向へ移動して、目地カバー体45が傾動する。このように各カバー板42,43が伸縮保持体31に連動して摺動することによって、両建造物81,82の左右方向への相対変位に追従して、目地カバー体45がスムーズに傾動できる。
【0036】
さらに、地震の際に両建造物81,82が上下方向に相対変位した場合には、各伸縮支持梁51と各伸縮保持体31とが上下方向に傾動し且つ伸張する。そして、各伸縮保持体31の伸張に伴って、目地カバー体45が伸張する。ここで、伸縮支持梁51と伸縮保持体31とは、夫々の両端が、両建造物81,82に固定された連結基体2,2(一対の連結杆25,25)に上下方向へ傾動可能に枢結されていることから、両建造物81,82の上下方向への相対変位にスムーズに追従できる。そして、各カバー板42,43が上下方向への相対変位に追従して摺動することによって、目地カバー体45がスムーズに伸張できる。
【0037】
前述したように、本実施例の床用目地カバー装置1にあっては、地震の際に両建造物81,82が相対変位すると、各カバー板42,43を支持する伸縮支持梁51が該相対変位に追従して作動できる。ここで、本実施例の伸縮支持梁51は、中支持梁体52の中回転ローラ64と側支持梁体53の側案内レール76とが相対移動可能に嵌合され、かつ中支持梁体52の中案内レール66と側支持梁体53の側回転ローラ74とが相対移動可能に嵌合されて構成されたものであることから、中支持梁体52と側支持梁体53,53とが各案内レール66,76に沿って相対移動することによって、円滑に伸縮作動できる。さらに、本実施例にあっては、中支持梁体52に配設された上下の中回転ローラ64,64が、側支持梁体53に配設された側案内レール76の上下の案内部77,78間に相対移動可能に嵌合され、かつ側支持梁体53に配設された上下の側回転ローラ74,74が、中支持梁体52に配設された中案内レール66の上下の案内部67,68間に相対移動可能に嵌合された構成であるから、地震の際に、これら嵌合状態が安定して保持され、前記伸縮作動が安定かつスムーズに実行できる。こうしたことから、本実施例の伸縮支持梁51は、前記した両建造物81,82の相対変位に伴って円滑に伸縮することで、該相対変位に安定して追従できる。
【0038】
また、本実施例の構成は、伸縮支持梁51の側支持梁体53,53が、両建造物81,82に固定された水平受縁21,21に支持され、該側支持梁体53,53によって中支持梁体52を支持するようにしたものであるから、目地83上に配置される該中支持梁体52を安定して支持できる。さらに、側支持梁体53は、その外嵌片部79,79により中支持梁体52を上下から支持する。こうしたことから、伸縮支持梁51は、その中支持梁体52が目地83上でしっかりと支持されると共に、側支持梁体53,53と連結基体2,2との連結部位に作用する負荷を軽減できることから、目地カバー体45上を通過する人や物の荷重を安定して支持し得る高い強度と剛性とを発揮できる。
ここで、本実施例の構成は、伸縮支持梁51を前記水平受縁21,21で支持するものであることから、該伸縮支持梁51の両端を枢結する部位(梁取付部72と連結杆25とを枢結した部位)に、前記負荷が作用することを抑制できる。これにより、伸縮支持梁51の梁取付部72の連結孔72aを、両建造物81,82の側縁に設けられた連結杆25に外嵌させるという比較的簡単な枢結構造が用いられている。したがって、本実施例の構成は、前述した従来構成に比して、製造や施工に要するコストを低減することができる。
【0039】
また、本実施例の床用目地カバー装置1は、目地カバー体45を支持する伸縮支持梁51と、該目地カバー体45の各カバー板42,43を建造物81,82の相対変位に従って摺動させる伸縮保持体31とを、それぞれ別部材として設けた構成である。これにより、前述したように、目地カバー体45に作用する負荷を伸縮支持梁51によって安定して支持できると共に、伸縮保持体31による目地カバー体45の伸縮と傾動とをスムーズに行うことができる。したがって、地震の際に両建造物81,82の相対変位への追従性が極めて高いものとなっている。
【0040】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、伸縮支持梁51の配設数や伸縮保持体31の配設数は適宜変更して設定することができる。すなわち、床用目地カバー装置1の設置場所、通路の幅、目地カバー体45の重量などに応じて適宜設定変更することが好適である。
【0041】
また、前述の実施例は、伸縮支持梁51の中支持梁体52に、四個の中回転ローラ64を有する中ローラユニット63が配設された構成であるが、これに限らず、中ローラユニットに有する中回転ローラの個数は適宜変更することができる。例えば、上下に並ぶ二個の中回転ローラ64,64を備えた中ローラユニットを備えた構成であっても良い。さらには、中支持梁体52の両側面部に、夫々一個の中回転ローラを備えた構成であっても良い。
同様に、側支持梁体53に、二個の側回転ローラ74を有する側ローラユニット73が配設された構成であるが、これに限らず、側回転ローラの配設個数は適宜変更することができる。例えば、四個の側回転ローラを有する側ローラユニットが配設された構成、一個の側回転ローラが配設された構成などとできる。
【0042】
また、前述の実施例は、伸縮支持梁51が、連結基体2の水平受縁21上に直接乗載した構成であるが、これに限らず、該水平受縁21上に固定された受部材の上に、伸縮支持梁51を摺動可能に乗載した構成としても良い。ここで、受部材としては、左右方向に延在された杆状のものが好適に用いられ、該受部材を介装することによって、目地カバー体の上下方向位置を調整することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 床用目地カバー装置
2 連結基体
21 水平受縁
22 垂直縁
23 内側縁
25 連結杆
31 伸縮保持体
32 リンク要素部
33a,33b リンク片
34a,34b 短尺リンク片
36 取付部
37 連結孔
41 支持杆
42,43,44 カバー板
45 目地カバー体
51 伸縮支持梁
52 中支持梁体
53 側支持梁体
61 中梁杆部
63 中ロータユニット
64 中回転ローラ
64a 嵌合周溝
65 回動軸
66 中案内レール
67,68 案内部
67a,68a 水平縁
67b,68b 嵌合縁
71 側梁杆部
72 梁取付部
72a 連結孔
73 側ローラユニット
74 側回転ローラ
74a 嵌合周溝
75 回動軸
76 側案内レール
77,78 案内部
77a,78a 水平縁
77b、78b 嵌合縁
79 外嵌片部
81,82 建造物
83 目地
85,86 床
91,92 支持段縁