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特開2022-129021リセット用半導体集積回路およびそれを用いた電子回路システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129021
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】リセット用半導体集積回路およびそれを用いた電子回路システム
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/22 20060101AFI20220829BHJP
   G06F 1/24 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H03K17/22 E
G06F1/24 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027547
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】平井 勝
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX12
5J055AX39
5J055AX44
5J055BX42
5J055DX22
5J055DX56
5J055EY03
5J055EY10
5J055EZ07
5J055EZ10
5J055EZ11
5J055FX05
5J055FX08
5J055FX38
5J055GX01
5J055GX06
(57)【要約】
【課題】リセット信号の遅延時間の変更が可能なリセット回路及びリセット用半導体集積回路を提供する。
【解決手段】電圧検出回路(21)を備え、監視対象の電源電圧(VDD1)が所定のレベルよりも低くなった場合にリセット信号を出力するリセット用半導体集積回路において、前記電圧検出回路の検出結果に応じた信号を生成し出力するCMOS回路からなる出力段(22)と、監視対象の電源電圧(VDD1)が入力される監視電圧入力端子(VS)と、回路の基準電位となる電圧が印加される基準電位端子(GND)と、出力段の電源電圧端子が接続され外部より前記出力段の動作電圧となる電源電圧(VDD2)を印加可能な外部電圧端子(VB)と、出力段が生成した信号を出力するための出力端子(OUT)と、を備えているように構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧検出回路を備え、監視対象の電源電圧が所定のレベルよりも低くなった場合にリセット信号を出力するリセット用半導体集積回路であって、
前記電圧検出回路の検出結果に応じた信号を生成し出力するCMOS回路からなる出力段と、
監視対象の電源電圧が入力される監視電圧入力端子と、
回路の基準電位となる電圧が印加される基準電位端子と、
前記出力段の電源電圧端子が接続され外部より前記出力段の動作電圧となる電源電圧を印加可能な外部電圧端子と、
前記出力段が生成した信号を出力するための出力端子と、
を備えていることを特徴とするリセット用半導体集積回路。
【請求項2】
前記電圧検出回路は、
前記監視電圧入力端子と前記基準電位端子との間に接続され、監視対象の電源電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路により分圧された電圧と所定の参照電圧とを比較する電圧比較回路と、
を備え、前記電圧比較回路はヒステリシス特性を有することを特徴とする請求項1に記載のリセット用半導体集積回路。
【請求項3】
前記電圧比較回路は前記外部電圧端子に印加された電源電圧を動作電圧として動作するように結線されていることを特徴とする請求項2に記載のリセット用半導体集積回路。
【請求項4】
前記電圧比較回路の後段に所定の機能を有するロジック回路が接続され、前記ロジック回路の出力信号が前記出力段に入力されるように構成され、
前記ロジック回路は前記外部電圧端子に印加された電源電圧を動作電圧として動作するように結線されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のリセット用半導体集積回路。
【請求項5】
前記ロジック回路は、コンデンサを備えた遅延回路であり、前記コンデンサを外付け素子として接続するための外部端子が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のリセット用半導体集積回路。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のリセット用半導体集積回路と、リセット入力端子を有する1または2以上のICもしくはLSIと、を含み、前記ICもしくはLSIが2以上の電源電圧で動作するとともに、前記リセット用半導体集積回路より出力されたリセット信号が前記リセット入力端子に入力されるように構成された電子回路システムであって、
前記リセット用半導体集積回路の前記監視電圧入力端子に前記2以上の電源電圧のうちいずれか低い電源電圧が入力され、
前記リセット用半導体集積回路の前記外部電圧端子に、前記2以上の電源電圧のうち、前記監視電圧入力端子に入力される電源電圧よりも高い電源電圧が印加されるように結線されていることを特徴とする電子回路システム。
【請求項7】
前記ICもしくLSIはCPUコアと信号のインターフェース回路とを内蔵したデバイスであり、
前記CPUコアは第1の電源電圧で動作し、前記インターフェース回路は前記第1の電源電圧よりも高い第2の電源電圧で動作するように構成されており、
前記第1の電源電圧が前記リセット用半導体集積回路の前記監視電圧入力端子に入力され、前記第2の電源電圧が前記リセット用半導体集積回路の前記外部電圧端子に印加されるように結線されていることを特徴とする請求項6に記載の電子回路システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコンやマイコンを内蔵したSoC(システム・オン・チップ)、システムLSIあるいは画像処理や各種演算を行うプロセッサのようなリセット入力端子を有するLSI(大規模半導体集積回路)の電源電圧を監視してリセット信号を生成し出力するリセット用半導体集積回路(以下、リセット用ICと称する)およびそれを用いた電子回路システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイコンやマイコンを備えた電子回路システム(以下、単にシステムと称する)の動作中に電源電圧が低下すると、システムが誤動作したり暴走したりするため、電源電圧を監視して電源電圧が所定レベル以下に低下した場合にマイコンにリセットをかけるリセット信号を生成するリセット回路が必要とされる。また、かかるリセット信号を生成する回路を1つの半導体集積回路として形成したリセット用ICが提供されている。
従来、CMOSプロセスによるリセット用ICにおける出力回路の形式としては、オープンドレイン出力とCMOSインバータを用いたCMOS出力とがある。
【0003】
また、リセット用ICには、電源電圧の立ち上がり時に電源投入直後のシステムの誤動作を防止するため、電源電圧が充分に立ち上がってからリセットを解除すべく遅延回路が設けているものもある。なお、従来、リセット用ICに関する発明としては、例えば特許文献1や2に記載されているものがある。
このうち、特許文献1は、出力回路の形式としてCMOS出力を採用したリセット装置(IC)を開示している。また、特許文献2は、遅延回路を内蔵したリセット用ICにおいて、カウンタ回路を用いて遅延時間を変更可能にした発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-118381号公報
【特許文献2】特開2010-268258号公報
【特許文献3】特開2006-215454号公報
【特許文献4】特開2011-124657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6(A)には、出力回路の形式がオープンドレイン出力であるリセット用ICを使用した電圧監視システムにおけるリセット信号のインターフェース構成が、また図6(B)には、出力回路の形式がCMOS出力であるリセット用ICを使用した電圧監視システムにおけるリセット信号のインターフェース構成が示されている。
【0006】
このうち、図6(A)のオープンドレイン出力にあっては、例えばマイコン等のデバイスがCPUコア用の電源電圧V1とI/O用の電源電圧V2の2電源で動作するLSIである場合、プルアップ抵抗RpをI/O用の電源電圧V2に接続することで、リセット用ICの出力端子OUTから出力されるリセット信号RESのレベルを、マイコン等のデバイスのインターフェース(I/O)に適した信号として入力することができる。
【0007】
しかし、図6(A)のような構成においては、電源電圧V1が低下して所定のレベルよりも低くなり出力端子OUTがロウレベルにされる状態において、電源電圧V2とロウレベルである出力端子OUT間のプルアップ抵抗Rpに暗電流が流れ、電池を電源とするシステムにおいては電池の使用時間を短くしてしまうという課題がある。なお、プルアップ抵抗Rpは、後段デバイスの入力インピーダンスを駆動するため、駆動電流が小さいと入力信号の立上がりが遅くなるので一概に高抵抗にすることができない。
一方、図6(B)のCMOS出力の場合、暗電流が流れることはないが、電圧監視対象のデバイスは単一電源で動作するデバイスに制限されてしまうという課題がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、出力がロウレベルの場合に出力段に暗電流が流れることがないとともに、リセット信号を供給するデバイスが複数の電源で動作するLSIまたはデバイスである場合に、レベルシフト回路を追加的に設けることなくLSIまたはデバイスのインターフェース回路に適した信号として入力することができるリセット用ICおよびそれを用いた電子回路システムを提供することにある。
【0009】
なお、従来、出力回路の形式としてCMOS出力を採用し出力回路の電源電圧として内部回路の電源電圧と異なる電圧を与えるため出力回路用の電源電圧端子を設けたICに関する発明として特許文献3に記載されているものが、また出力回路の形式としてCMOS出力を採用し出力回路の前段にレベルシフト回路を設けて内部信号の振幅レベルと異なる振幅レベルの信号を出力するように構成したICに関する発明として特許文献4に記載されているものがある。しかし、いずれもPDP(プラズマディスプレイパネル)のためのドライバ回路(駆動回路)に関するもので、マイコン等の電源電圧を監視してリセット信号を出力するリセット用ICに関するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためこの発明は、
電圧検出回路を備え、監視対象の電源電圧が所定のレベルよりも低くなった場合にリセット信号を出力するリセット用半導体集積回路において、
前記電圧検出回路の検出結果に応じた信号を生成し出力するCMOS回路からなる出力段と、
監視対象の電源電圧が入力される監視電圧入力端子と、
回路の基準電位となる電圧が印加される基準電位端子と、
前記出力段の電源電圧端子が接続され外部より前記出力段の動作電圧となる電源電圧を印加可能な外部電圧端子と、
前記出力段が生成した信号を出力するための出力端子と、を備えているようにした。
【0011】
上記のような構成を有するリセット用半導体集積回路によれば、出力段がCMOS回路であるため、出力がロウレベルの際に出力段に暗電流が流れることがない。また、出力するリセット信号は基準電位(GND)~外部電圧端子印加電圧の振幅を有する信号となるため、後段にレベルシフト回路を追加的に設けることなく、リセット信号を受けるデバイスのインターフェースに適したレベルの信号として出力することができる。さらに、4端子であるため、小型のICパッケージを使用することができる。
【0012】
ここで、望ましくは、前記電圧検出回路は、
前記監視電圧入力端子と前記基準電位端子との間に接続され、監視対象の電源電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路により分圧された電圧と所定の参照電圧とを比較する電圧比較回路と、
を備え、前記電圧比較回路はヒステリシス特性を有するように構成する。
かかる構成によれば、電圧比較回路がヒステリシス特性を有するため、ノイズ等の影響を受けにくくすることができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記電圧比較回路は前記外部電圧端子に印加された電源電圧を動作電圧として動作するように結線されているように構成する。
これにより、ICの動作限界がなくなり、監視対象電圧が低下しても電圧比較回路が安定して動作することができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記電圧比較回路の後段に所定の機能を有するロジック回路が接続され、前記ロジック回路の出力信号が前記出力段に入力されるように構成され、
前記ロジック回路は前記外部電圧端子に印加された電源電圧を動作電圧として動作するように結線されているように構成する。
かかる構成によれば、電圧比較回路(コンパレータ)の後段のロジック回路が外部電圧端子(VB)に印加された電源電圧(VDD2)を動作電圧として動作するため、出力段を確実に動作させるとともに貫通電流が流れないようにすることができる。
【0015】
また、望ましくは、前記ロジック回路は、コンデンサを備えた遅延回路であり、前記コンデンサを外付け素子として接続するための外部端子が設けられているように構成する。
これにより、電源起動時のリセット解除やリセット発生時のリセット信号の変化に遅延を持たせることができるとともに、外部端子に接続する外付けのコンデンサの容量値を適宜選択することによって遅延時間を任意に設定することができる。
【0016】
また、本出願に係る他の発明は、上記のような構成を有するリセット用半導体集積回路と、リセット入力端子を有する1または2以上のICもしくはLSIと、を含み、前記ICもしくはLSIが2以上の電源電圧で動作するとともに、前記リセット用半導体集積回路より出力されたリセット信号が前記リセット入力端子に入力されるように構成された電子回路システムであって、
前記リセット用半導体集積回路の前記監視電圧入力端子に前記2以上の電源電圧のうちいずれか低い電源電圧が入力され、
前記リセット用半導体集積回路の前記外部電圧端子に、前記2以上の電源電圧のうち、前記監視電圧入力端子に入力される電源電圧よりも高い電源電圧が印加されるように結線されているように構成する。
【0017】
上記構成の電子回路システムによれば、プルアップ抵抗が不要であるため、素子数の削減によるコストの低減、システムの省スペース化に寄与することができる。また、ICもしくLSIに入力されるリセット信号は基準電位(GND)~外部電圧端子印加電圧の振幅を有する信号となるため、レベルシフト回路を追加的に設けることなく、リセット信号を受けるデバイスが複数の電源で動作するLSIもしくは複数の電源で動作するシステムを構成するLSIまたはICである場合に、LSIまたはICのインターフェースに適したレベルを有する信号として供給することができる。
【0018】
さらに、望ましくは、前記ICもしくLSIはCPUコアと信号のインターフェース回路とを内蔵したデバイスであり、
前記CPUコアは第1の電源電圧で動作し、前記インターフェース回路は前記第1の電源電圧よりも高い第2の電源電圧で動作するように構成されており、
前記第1の電源電圧が前記リセット用半導体集積回路の前記監視電圧入力端子に入力され、前記第2の電源電圧が前記リセット用半導体集積回路の前記外部電圧端子に印加されるように結線されているように構成する。
【0019】
これにより、リセット信号を受けるデバイスがCPUコアと信号のインターフェース回路とを内蔵し2電源で動作するLSIまたはICである場合に、LSIまたはICのインターフェース回路に適した信号として入力することができる。また、監視対象の電源電圧が電池等の電圧であって電圧レベルが低下したとしても、確実にインターフェース回路にリセット信号を入力してシステムにリセットをかけることができるため、電源電圧の低下によるシステムの誤動作や暴走を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従うと、出力がロウレベルの場合に出力段に暗電流が流れることがないとともに、リセット信号を供給するデバイスが複数の電源で動作するLSIもしくは複数の電源で動作するシステムを構成するLSIまたはICである場合に、レベルシフト回路を追加的に設けることなくLSIまたはICのインターフェース回路に適した信号として入力することができるリセット用ICおよびそれを用いた電子回路システムを実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用したリセット用ICの一実施形態およびそれを使用して好適なシステムの一例を示す回路構成図である。
図2】(A),(B)は実施形態のリセット用ICにおける電圧検出回路の具体例を示す回路構成図である。
図3】実施形態のリセット用ICの動作特性を示すグラフである。
図4】(A),(B)は実施形態のリセット用IC内の電圧検出回路の変形例およびそれを用いたシステムの一例を示す回路構成図である。
図5】実施形態のリセット用ICの他の実施例を示す回路構成図である。
図6】(A),(B)は従来のリセット用ICの構成例およびそれを使用したシステムの一例を示す回路構成図である。
図7】本発明のリセット用ICを利用可能な3電源のシステムの例を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用したリセット用ICとこれを使用して好適なシステムの一例を示す。
図1に示されているように、このシステムは、電池もしくはDC-DCコンバータなどの直流電源PS1,PS2から供給される電圧VDD1,VDD2を電源電圧として動作するマイコン等のデバイス10と、デバイス10に供給される上記電圧VDD1,VDD2のうちVDD1を監視してリセット信号を生成しCPUに出力するリセット用IC20とを備えている。
【0023】
デバイス10は、CPU(マイクロプロセッサ)のコアを有し、入力信号を外部より受けたり信号を外部へ出力したりするためのインターフェース部としてのI/Oを有している。上記電圧VDD1はCPUコア用の電源電圧としてデバイス10に供給され、上記電圧VDD2はI/O用の電源電圧としてデバイス10に供給される。デバイスの動作速度を向上させ低消費電力を達成するため、CPUコア用の電源電圧となる電源電圧VDD1には1.2Vのような低電圧が選択される一方、I/O用の電源電圧となる電源電圧VDD2には3.3Vのような電圧が選択される。なお、I/O電圧は、デバイス間のインターフェースのための共通電圧であり、システムごとに適宜設定される。
【0024】
リセット用IC20は、単結晶シリコンのような半導体チップ上に半導体集積回路として形成されたデバイスである。本実施形態のリセット用IC20は、電圧検出回路21と該電圧検出回路21の検出信号を出力するCMOSインバータからなる出力段22とを内蔵し、監視対象の電源電圧VDD1が入力される外部端子VSと、出力段22の出力ノードに接続され電圧検出回路21の検出信号をチップ外部へ出力するための外部端子OUTが設けられている。さらに、CMOSインバータからなる出力段22を有する従来のリセット用ICは、出力段22が外部端子VSに入力される電圧VDD1で動作するように構成されていたが、本実施形態のリセット用IC20は、出力段22の電源電圧となる電圧が印加される外部端子VBが設けられている。
【0025】
そして、図1のシステムにおいては、リセット用IC20の検出信号がマイコン等のデバイス10のリセット入力端子RSにリセット信号RESとして入力されているとともに、リセット用IC20の外部端子VBに、上記デバイス10にI/O用の電源電圧として供給される電源電圧VDD2が印加されるように結線が行われている。これにより、リセット信号は、0V-VDD2の振幅レベルを有する信号としてデバイス10に供給される。
また、リセット用IC20内の電圧検出回路21は、外部端子VSの入力電圧VDD1を監視して、VDD1が所定のレベル(例えばVDD1=1.2Vの場合、1.0V)以下になると、出力段22が外部端子OUTより出力するリセット信号RESをロウレベルに変化させるように動作する。なお、この実施例では、電圧検出回路21は、VDD1が所定のレベル以下になったことを検出しているが、例えば過電圧保護の場合のように所定のレベル以上になったことを検出することもある。
【0026】
上記のような構成を有するリセット用IC20およびそれを用いたシステムによれば、監視対象の電源電圧VDD1が所定のレベル以下に下がると、リセット用IC20から出力されるリセット信号RESがロウレベルに変化され、このリセット信号RESがデバイス10のリセット端子RSに入力されることによって、内部のCPUコアはその電源電圧が規定電圧よりも下がった場合に直ちにそれを認知することができる。そのため、ロウレベルのリセット信号RESが入力されると、例えばシステムをシャットダウンすることで電圧低下によるシステムの暴走や誤動作を防止することができる。
しかも、上記リセット用IC20は、外部端子VBを有するため、2以上の電源で動作するデバイスに対して、レベルシフト回路を設けることなく、リセット用IC20から後段のデバイスに適した振幅にレベルシフトしたリセット信号を出力することができる。なお、この実施例では、振幅が大きくなる方へレベルシフトしているが、振幅が小さくなる方へレベルシフトする場合もある。
【0027】
また、上記リセット用IC20は出力段22にCMOSインバータを使用しているため、外部端子OUTより出力するリセット信号をロウレベルに変化させた際に、CMOSインバータを構成するNチャンネルMOSトランジスタ(N-MOS)がオン、PチャンネルMOSトランジスタ(P-MOS)がオフされることで貫通電流が流れないため、オープンドレインの出力段におけるような暗電流が流れることがないとともに、P-MOSが後段デバイスのリセット入力端子のインピーダンスを駆動するため、リセット信号が立ち上がる際の立上がり速度が遅くなることもないという利点がある。
さらに、リセット用IC20の出力段22に暗電流が流れないため、電池を電源とするモバイル機器や車載電子システムにおいては、電池の使用時間を長くすることができる。また、プルアップ抵抗が不要であるため、システムを構成する素子を削減してコストを低減できるとともに、システムの省スペース化を図ることができるという利点がある。
【0028】
図2には、上記実施形態のリセット用IC20における電圧検出回路21の具体例が示されている。
図2(A)はリセット用IC20における電圧検出回路21の一般的な構成を示したもので、入力源電圧VDD1が印加される外部端子VSと接地電位が印加される外部端子GNDとの間に直列に接続された抵抗R1,R2からなる分圧回路と、参照電圧Vrefを生成する基準電圧回路と、分圧回路により分圧された電圧と参照電圧Vrefとを比較して入力電圧VDD1が所定のレベルよりも低くなったか判定するコンパレータ(電圧比較回路)CMPと、コンパレータCMPの後段に設けられたロジック回路LGCとから構成されている。
【0029】
コンパレータCMPは、ノイズによる出力のバタつきを回避するためヒステリシス特性を有するシュミットトリガ回路で構成され、外部端子VSに入力される電圧VDD1で動作するように結線される。Vrefを生成する基準電圧回路は、例えばツェナーダイオードや定電流源などから構成することができる。あるいは、トランジスタ単体のVGSを利用したオン・オフ動作の構成でもよい。
ロジック回路LGCにより実現する機能としては、例えばラッチ回路や遅延回路、レベルシフト回路などの機能がある。インバータ1つでロジック回路LGCを構成しても良い。なお、その場合、インバータを含んだものを電圧比較回路と呼ぶことも可能である。
【0030】
また、図2(A)の電圧検出回路21においては、コンパレータCMPおよびロジック回路LGCの電源電圧端子が外部端子VSに接続され、コンパレータCMPおよびロジック回路LGCは外部端子VSに入力される電圧VDD1で動作するように構成される。
また、図2(B)に示すように、コンパレータCMPは電圧VDD1で動作し、ロジック回路LGCは外部端子VBに印加される電圧VDD2で動作するように結線してもよい。このように、外部電圧端子VBの印加電圧VDD2を監視電圧VDD1と別電圧にすることで、レベルシフトや低電圧の動作限界をなくすことができる。
さらに、図2(A)、(B)に示すような構成の電圧検出回路21を使用した上記実施形態のリセット用IC20は、図6(A)や(B)に示す3端子のリセット用ICに対して外部端子数が1つ増加することとなるが、4端子の小型のICパッケージを使用することができる。
【0031】
図3には、ヒステリシス特性を有するコンパレータCMPを用いたリセット用IC(アクティブLow)の一般的な動作特性が示されている。図3において、Vdetはリセット信号をロウレベルに変化されるタイミングを検出するための電圧であり、入力電圧VDD1が検出電圧Vdet以下になると出力リセット信号は0Vになる。また、Vrelはリセット解除電圧、Vhはヒステリシス電圧で、入力電圧VDD1が解除電圧Vrel(Vdet+Vh)以上になると出力リセット信号は立ち上がることとなる。なお、LMはICの動作限界でありN-MOSのゲート・ソース間電圧に相当する。
【0032】
図4には、図2(B)の実施例のリセット用IC20の変形例が示されている。このうち、(A)はIC内部の電圧検出回路21の構成例を示し、(B)はこの変形例のリセット用IC20を使用したシステムの構成例を示す。
この変形例は、電圧検出回路21を構成する抵抗分圧回路(R1,R2)とコンパレータCMPのバイアスを分離したセンス分離型リセットICとして構成したもので、コンパレータCMPおよびロジック回路LGCの電源電圧端子を外部端子VBに結線して、コンパレータCMPおよびロジック回路LGCが外部端子VBに印加される電圧VDD2で動作するように構成されている。
【0033】
リセット用IC20を上記のように構成することにより、コンパレータCMPを構成するP-MOSとN-MOSのゲート・ソース間電圧VGSを、図2(B)のものに比べて充分に確保することができるようになり、図3に示すICの動作限界LMがなくなる。また、外部端子VSの入力電圧VDD1が低下しても電圧検出回路21が安定して動作することができる。そのため、外部端子VSの入力電圧VDD1が0Vになるまでリセット信号の生成動作をさせることができる。なお、外部端子VBに印加する電圧は、VDD2に限定されず安定なものであれば他の電圧であっても良い。
【0034】
図5には、上記実施形態のリセット用IC20の他の実施例が示されている。
図5のリセット用IC20は遅延機能を付加したものである。具体的には、電源起動時におけるリセット解除の遅延時間を発生させるもので、リセットICの一般的な機能である。図5に示すように、この変形例のリセット用IC20は、外付けのコンデンサCdを接続する外部端子CDを有し、遅延時間を可変できるように構成されている。
【0035】
遅延回路は、ロジック回路LGCにコンデンサCdを充電する定電流源または抵抗と充電電圧を検知するコンパレータとから構成する。なお、上記のような構成の遅延回路は周知であるので、図示を省略する。また、遅延回路はコンデンサを充電する形式に限定されず、例えば特許文献2に記載されているようなクロック信号を計数するカウンタで構成されたタイマー回路を使用するようにしても良い。また、遅延機能は、電源起動時のリセット解除の際のみならず、リセットをかける際に遅延を付加するもの、または両方であっても良い。
【0036】
以上本発明の一実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、リセット信号をロウレベルに立ち下げることでリセットをかけ、リセット信号をハイレベルに立ち上げることでリセットを解除する場合を説明したが、ハイレベルとロウレベルは逆の関係であっても良い。
【0037】
また、上記実施形態では、リセット信号RESを受けるデバイスとして2電源で動作するものを示したが、3電源以上で動作するデバイスやシステムであっても良い。
図7に3電源で動作するシステムの例を示す。図7に示すシステムは、マイコン10とマイコンによって制御されるマイコン以外のデバイス11A,11Bによって構成され、それぞれ異なる電源電圧で動作するとともに、マイコン以外のデバイス11A,11Bの電源電圧をリセットIC20A,20Bによって監視している。本発明は、図7のシステムにおけるリセットIC20A,20Bにも適用することができる。
【0038】
さらに、リセット信号RESを受けるデバイス10は、マイコンやマイコンを内蔵したSoC(システム・オン・チップ)、システムLSIあるいは画像処理や各種演算を行うプロセッサのようなリセット入力端子を有するLSIないしはICであっても良い。また、リセットICを使用するシステムは、リセットIC20とリセット信号を受ける1つのデバイス10で構成されたものに限定されず、デバイス10が複数のLSIやICで構成されているものであっても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 CPUコアを有するデバイス
20 リセットIC
21 電圧検出回路
22 出力段
R1,R2 分圧回路を構成する抵抗
CMP 電圧比較回路(コンパレータ)
LGC ロジック回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7