(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129024
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】回転装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/22 20060101AFI20220829BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20220829BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20220829BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20220829BHJP
F16H 48/05 20120101ALI20220829BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20220829BHJP
B25J 3/00 20060101ALN20220829BHJP
【FI】
F16H1/22
B25J17/00 E
B25J5/00 A
F16H1/06
F16H48/05
H02K7/116
B25J3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027550
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】尾花 功一
【テーマコード(参考)】
3C707
3J009
3J027
5H607
【Fターム(参考)】
3C707AS34
3C707AS36
3C707BS09
3C707CS08
3C707CY00
3C707CY12
3C707HS09
3C707HS27
3C707HT24
3C707KS39
3C707KT02
3C707WA16
3J009DA17
3J009EA06
3J009EA12
3J009EA16
3J009EA25
3J009EA37
3J009EA44
3J009FA26
3J027FB32
3J027HA10
3J027HB07
5H607BB01
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】複数の軸線回りに回転するコンパクトな回転装置を提供する。
【解決手段】2軸回転機構30は、第1傘歯車40と、第1傘歯車40と同軸で軸方向に向かい合う位置に配置される第2傘歯車50と、第1傘歯車40および第2傘歯車50と噛合する第3傘歯車60とを備える。モータを含む電気部品の配線80が、第1傘歯車40および第2傘歯車50の回転軸線と第3傘歯車60の回転軸線との交点を通過する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1傘歯車と、
前記第1傘歯車と同軸で軸方向に向かい合う位置に配置される第2傘歯車と、
前記第1傘歯車および前記第2傘歯車と噛合する第3傘歯車と、
電気部品と、を備えた回転装置であって、
前記電気部品の配線が、前記第1傘歯車および前記第2傘歯車の回転軸線と前記第3傘歯車の回転軸線との交点を通過する、
ことを特徴とする回転装置。
【請求項2】
前記第1傘歯車、前記第2傘歯車、前記第3傘歯車を回転可能に支持する軸部材をさらに備え、
前記配線は、前記軸部材を貫通する貫通孔を通過する、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、円筒状に形成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転装置。
【請求項4】
前記電気部品は、前記第1傘歯車に回転力を供給するための第1モータと、前記第2傘歯車に回転力を供給するための第2モータを含み、
前記第1モータの配線と前記第2モータの配線が、前記交点を通過する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回転装置。
【請求項5】
前記第1モータおよび前記第2モータは、前記交点からみて、前記第1傘歯車、前記第2傘歯車、前記第3傘歯車のいずれも設けられていない方向の領域に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の軸線回りに回転する回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔地に配置したロボットを自分の分身として利用するテレイグジスタンスと呼ばれる技術が登場している。遠隔地にいるロボットが周囲の画像データや音声データをユーザに送信し、ユーザ側で再生することで、ユーザは、ロボットが配置された場所に自分が存在するような臨場感をもって、ロボットの周囲の人達とコミュニケーションをとることが可能となる。
【0003】
特許文献1は、遠隔操作するロボットのアクチュエータ装置を開示する。アクチュエータ装置は、第1貫通長孔を形成された第1円弧状アームと、第2貫通長孔を形成された第2円弧状アームと、これらを交差させた状態で回動可能に支持する台座と、第1円弧状アームを回転させる第1モータと、第2円弧状アームを回転させる第2モータと、第1貫通長孔および第2貫通長孔に挿通される挿通部材とを備える。挿通部材には、カメラを収容した筐体が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたアクチュエータ装置は、第1円弧状アームおよび第2円弧状アームを用いるため、構造的に小さくできない。
【0006】
そこで本発明は、複数の軸線回りに回転するコンパクトな回転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の回転装置は、第1傘歯車と、第1傘歯車と同軸で軸方向に向かい合う位置に配置される第2傘歯車と、第1傘歯車および第2傘歯車と噛合する第3傘歯車と、電気部品と、を備えた回転装置であって、電気部品の配線が、第1傘歯車および第2傘歯車の回転軸線と第3傘歯車の回転軸線との交点を通過する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】回転装置を搭載したロボット装置の斜視図である。
【
図2】回転装置を搭載したロボット装置の側面図である。
【
図9】第1伝達歯車および第2伝達歯車に、逆方向で且つ同じ大きさの回転力を供給した状態を示す図である。
【
図10】2軸回転機構がピッチ軸回りに回転した状態を示す図である。
【
図11】第1伝達歯車および第2伝達歯車に、同じ方向で且つ同じ大きさの回転力を供給した状態を示す図である。
【
図12】2軸回転機構がロール軸回りに回転した状態を示す図である。
【
図13】回転装置における3つの回転軸線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施例の回転装置を搭載したロボット装置の斜視図を示し、
図2は、実施例の回転装置を搭載したロボット装置の側面図を示す。ロボット装置1は、制御装置等を収容した基体2、基体2の側面に取り付けられた複数の駆動車輪4a、4b、4c(以下、区別しない場合には「駆動車輪4」と呼ぶ)、基体2の下面に取り付けられたバッテリ3、および基体2の上面に搭載された回転装置10を備える。駆動車輪4はオムニホイールであって、3つの駆動車輪4で全方向の移動を実現してよい。バッテリ3は、ロボット装置1に搭載される複数の電気部品に電力を供給する。
【0010】
実施例の回転装置10は、1軸回転機構12および2軸回転機構30を備えて、3軸回転運動を実現する。回転装置10において、1軸回転機構12における1つの回転軸線および2軸回転機構30における2つの回転軸線は常時1点で交差し、したがって回転装置10は、共通の中心点をもつ3軸回転運動を実現する。
【0011】
ロボット装置1において、カメラやマイクを収容した筐体20が、固定部材25を介して2軸回転機構30に固定される。筐体20の前面には、左カメラ21aと右カメラ21bとが、横方向に所定の間隔を空けて配置される。左カメラ21aと右カメラ21bはステレオカメラを構成する。筐体20の両側面には、左マイク23aと右マイク(図示せず)が配置される。固定部材25の中央には、音声を出力するスピーカ22が設けられる。筐体20および固定部材25は、ロボット装置1の頭部を構成してよい。たとえばロボット装置1をテレイグジスタンス環境で利用する場合、回転装置10が、共通の回転中心をもつ3軸回転運動を実現することで、遠隔地にいるユーザの首の動きを再現できるようになる。
【0012】
日本では首を縦に振ると肯定を、横に振ると否定を表現するが、回転装置10が3軸回転運動を行えることで、遠隔地にいるユーザの首の動きと同じように筐体20を動かすことができる。そのためロボット装置1の周囲にいる人は、筐体20の動きによって遠隔地にいるユーザの意思を感じ取ることができる。このようにユーザの首の動きを簡易且つコンパクトな構造で再現できることは、テレイグジステンス技術において有用である。
【0013】
回転装置10において、1軸回転機構12は、ヨー軸回りの回転運動を担当し、駆動軸13、連結部14、減速機構収容部15およびモータ16を有する。モータ16は、駆動軸13に回転力を供給する。減速機構収容部15は、モータ16の回転力を駆動軸13に伝達する減速機構を収容する。減速機構は複数の平歯車の組み合わせで構成されてよい。駆動軸13には連結部14が固定され、連結部14には、2軸回転機構30を1軸回転機構12に取り付ける取付部材18の下端が固定される。
【0014】
回転装置10において、2軸回転機構30は、ピッチ軸回りの回転運動と、ロール軸回りの回転運動を担当する。
図3~
図6に、ケース体を外した2軸回転機構30の内部構造を示し、2軸回転機構30の構造の詳細を説明する。
【0015】
図3は、2軸回転機構30の右前方斜視図を示し、
図4は、2軸回転機構30の正面図を示し、
図5は、2軸回転機構30の左前方斜視図を示し、
図6は、2軸回転機構30の背面図を示す。2軸回転機構30は、第1傘歯車40と、第1傘歯車40と同軸で軸方向に向かい合う位置に配置される第2傘歯車50と、第1傘歯車40および第2傘歯車50と噛合する第3傘歯車60と、第1傘歯車40に回転力を供給するための第1モータ49と、第2傘歯車50に回転力を供給するための第2モータ59とを有する。第1傘歯車40および第2傘歯車50の回転軸線と、第3傘歯車60の回転軸線は、1点で交差する。この交差する点を「交点」と呼ぶ。なお
図3に、モータ等の電気部品の配線80を示す(他の図面では配線80の図示を省略している)が、後述するように、配線80は交点を通過するように配置される。
【0016】
第1傘歯車40は、第1伝達歯車46に第1連結部41を介して固定され、第1伝達歯車46は、第1傘歯車40と一体に回転する。第1伝達歯車46は、第1減速機構48を介して第1モータ49の出力軸に連結される。第1減速機構48において、第1歯車42は第1モータ49の出力軸に固定されて第1歯車43と噛合し、第1歯車44は歯数の異なる第1歯車43と同軸に一体に形成されて第1歯車45と噛合し、第1歯車45が第1伝達歯車46と噛合する。第1モータ49の回転力が、第1減速機構48により第1伝達歯車46に伝達されることで、第1傘歯車40に回転力が供給される。
【0017】
第2傘歯車50は、第2伝達歯車56に第2連結部51を介して固定され、第2伝達歯車56は、第2傘歯車50と一体に回転する。第2伝達歯車56は、第2減速機構58を介して第2モータ59の出力軸に連結される。第2減速機構58において、第2歯車52は第2モータ59の出力軸に固定されて第2歯車53と噛合し、第2歯車54は歯数の異なる第2歯車53と同軸に一体に形成されて第2歯車55と噛合し、第2歯車55が第2伝達歯車56と噛合する。第2モータ59の回転力が、第2減速機構58により第2伝達歯車56に伝達されることで、第2傘歯車50に回転力が供給される。
【0018】
2軸回転機構30では、第1傘歯車40、第2傘歯車50、第3傘歯車60の位置関係を固定するために、第1傘歯車40、第2傘歯車50、第3傘歯車60を回転可能に支持する軸部材70が設けられる。
【0019】
図7は、軸部材70の上面図を示す。軸部材70は、基部72と、基部72から突出して第1傘歯車40の環状穴部に挿入される第1軸部73と、基部72から突出して第2傘歯車50の環状穴部に挿入される第2軸部74と、基部72から突出して第3傘歯車60の環状穴部に挿入される第3軸部75とを有する。各傘歯車は、ベアリングを介して各軸部に回転可能に支持される。
【0020】
基部72には貫通孔71が設けられ、貫通孔71には、第1軸部73および第2軸部74の回転軸線(第1傘歯車40および第2傘歯車50の回転軸線)と、第3軸部75の回転軸線(第3傘歯車60の回転軸線)の交点が含まれる。この例で貫通孔71は、第1軸部73および第2軸部74の回転軸線と、第3軸部75の回転軸線のそれぞれに垂直な方向に形成される。なお貫通孔71は、その内部に、2つの回転軸線の交点が含まれるように形成されていればよく、2つの回転軸線のそれぞれに対して垂直でなくてもよい。後述するように、貫通孔71は、モータ等の電気部品の配線80(
図3参照)の経路として設けられる。
【0021】
図8は、交差する2つの回転軸線を示す。
図8において、軸部材70の図示は省略されている。第1傘歯車40および第2傘歯車50の回転軸線は、回転装置10におけるピッチ軸100であり、第3傘歯車60の回転軸線は、回転装置10におけるロール軸102である。ピッチ軸100とロール軸102は交差し、上記したように、その交点は、不図示の軸部材70における貫通孔71の内部に存在している。
【0022】
以下、2軸回転機構30の動作例を示す。
図9は、第1伝達歯車46および第2伝達歯車56に、交点から見て逆方向で且つ同じ大きさの回転力を供給した状態を示す。この場合、第1傘歯車40および第2傘歯車50は第3傘歯車60に対してロックされるため、第1歯車45および第2歯車55が、それぞれ第1伝達歯車46および第2伝達歯車56に対して回転する。これによりピッチ軸100回りの回転運動が実現される。
図10は、2軸回転機構30がピッチ軸回りに回転した状態を示す。
【0023】
図11は、第1伝達歯車46および第2伝達歯車56に、交点から見て同じ方向で且つ同じ大きさの回転力を供給した状態を示す。この場合、第1傘歯車40および第2傘歯車50は第3傘歯車60に対して回転する。これによりロール軸102回りの回転運動が実現される。
図12は、2軸回転機構30がロール軸回りに回転した状態を示す。
【0024】
以上のように、2軸回転機構30が2つの回転運動を実現することで、それぞれの回転運動を別個の機構で実現する場合と比較すると、サイズをコンパクトに構成することができる。実施例の2軸回転機構30においては、2つの第1モータ49および第2モータ59を並べて配置することで、さらなるコンパクト化を実現している。
【0025】
図13は、回転装置10における3つの回転軸線を示す。回転装置10において、取付部材18は、1軸回転機構12における駆動軸13の回転軸線(ヨー軸104)が、ピッチ軸100とロール軸102の交点Cを通るように、2軸回転機構30を1軸回転機構12に取り付ける。このように1軸回転機構12と2軸回転機構30の位置関係を定めることで、コンパクトな点中心3軸回転運動を実現できる。
【0026】
なお
図2に示すように、取付部材18はS字形状に構成され、上端側が2軸回転機構30に、下端側が1軸回転機構12にそれぞれ固定される。
図2において、取付部材18が点線で示すように直線形状に構成されている場合と比較すると、S字形状に構成することで、連結部14における固定位置と駆動軸13の回転軸線の距離を短くでき、したがってモーメントを小さくできる効果がある。
【0027】
上記したように、2軸回転機構30には、電気部品である第1モータ49、第2モータ59が配置されている。ロボット装置1において、バッテリ3は基体2の下面に設けられているため、これら電気部品の配線80(
図3参照)は基体2まで引き回される必要がある。
【0028】
図13を参照して、ピッチ軸100およびロール軸102は交点Cで交差するため、交点Cから見た2軸回転機構30の各構成部品の相対的な位置関係は不変となる。そのため交点Cから、2軸回転機構30に搭載された電気部品までの距離は常に一定であり、姿勢によって変化しない。そこで2軸回転機構30では、電気部品の配線80を、ピッチ軸100およびロール軸102の交点Cを通過させる。これにより、配線80の余長処理などを行う必要性を低減できる。
【0029】
上記したように、貫通孔71は、内部に交点Cを含むように軸部材70に形成されており、したがって電気部品の配線80は、貫通孔71を通過させるようにする。貫通孔71は円筒状に形成されて、配線破損を防止する目的で、たとえばゴム製の環状ブッシュをはめ込まれてよい。ここで電気部品の配線80は、第1モータ49の配線および第2モータ59の配線を含むが、これら以外の配線を含んでよい。なお実施例において、第1モータ49および第2モータ59は、交点Cからみて、第1傘歯車40、第2傘歯車50および第3傘歯車60のいずれも設けられていない方向の領域に配置されている。実施例で第1モータ49および第2モータ59は、2軸回転機構30の上部に配置されているが、かかる領域に電気部品を配置することで、交点Cまでの配線長を短くすることが可能となる。
【0030】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。上記実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0031】
1・・・ロボット装置、2・・・基体、3・・・バッテリ、10・・・回転装置、12・・・1軸回転機構、13・・・駆動軸、14・・・連結部、15・・・減速機構収容部、16・・・モータ、18・・・取付部材、30・・・2軸回転機構、40・・・第1傘歯車、41・・・第1連結部、46・・・第1伝達歯車、48・・・第1減速機構、49・・・第1モータ、50・・・第2傘歯車、51・・・第2連結部、56・・・第2伝達歯車、58・・・第2減速機構、59・・・第2モータ、60・・・第3傘歯車、70・・・軸部材、71・・・貫通孔、72・・・基部、73・・・第1軸部、74・・・第2軸部、75・・・第3軸部、80・・・配線、100・・・ピッチ軸、102・・・ロール軸、104・・・ヨー軸。