(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129033
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ネジ
(51)【国際特許分類】
F16B 23/00 20060101AFI20220829BHJP
F16B 33/06 20060101ALI20220829BHJP
F16B 15/08 20060101ALI20220829BHJP
E04D 3/36 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
F16B23/00 U
F16B33/06 Z
F16B15/08 Q
E04D3/36 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027562
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 進
(72)【発明者】
【氏名】窪 浩二
(72)【発明者】
【氏名】新井 利道
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108CC02
2E108CC15
2E108EE01
2E108FF01
2E108FG01
(57)【要約】
【課題】回転負荷が高くても、ビットがネジから外れるカムアウトの発生が抑制されるカバー工法に適したネジを提供する。
【解決手段】ネジ1Aは、ドライバビットが嵌合するリセス2Aが形成される頭部3と、ネジ山40が形成される軸部4を備え、リセス2Aは、頭部の周方向に沿って6個の頂部20Aを有し、各頂部20Aは、頭部3の外周に向かって凸状となる曲線で構成され、各頂部20Aの間が、頭部3の中心に向かって凹状となる曲線で構成され、かつ、軸部4の軸方向に平行な内側面21Aを有する。ネジ1Aは、頭部3の厚さが1.2mm以上2.4mm以下、リセス2Aの深さが1.6mm以上、リセス2Aの周囲の肉厚が0.7mm以上である。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバビットが嵌合するリセスが形成される頭部と、
ネジ山が形成される軸部とを備え、
前記頭部の前記軸部側に形成される座面と前記軸部との間に、前記軸部より径が大きい拡径部を備え、
前記リセスは、前記軸部を軸として回転する前記頭部の周方向に沿って少なくとも3個の頂部を有し、
前記頂部の間が、直線または前記頭部の中心に向かって凹状となる直線と曲線の組み合わせまたは曲線で構成される
ネジ。
【請求項2】
前記リセスは、前記軸部の軸方向に平行な内側面を有する
請求項1に記載のネジ。
【請求項3】
前記頭部は、前記拡径部が設けられる側と反対方向に、前記軸部の軸方向に沿って突出する凸部を備えた
請求項1または請求項2に記載のネジ。
【請求項4】
前記リセスの深さを、前記頭部の厚さに対して同等以上とし、前記リセスの前記頂部を通る外周円の直径を、前記軸部の直径以上とした
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のねじ。
【請求項5】
前記リセスの深さが、1.6mm以上2.5mm以下である
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のネジ。
【請求項6】
前記リセスは、ドライバビットのビットを前記リセスに誘導する誘導凹部を備えた
請求項1~請求項5の何れか1項に記載のネジ。
【請求項7】
前記拡径部は、前記軸部から前記頭部に向けて径が大きくなるテーパ面を備え、
前記テーパ面のなす角は、70°以上115°以下である
請求項1~請求項5の何れか1項に記載のネジ。
【請求項8】
前記拡径部は、前記軸部から前記頭部に向けて径が大きくなるテーパ面を備え、
前記テーパ面のなす角は、38°以上115°以下である
請求項6に記載のネジ。
【請求項9】
前記軸部と前記拡径部が交わる前記拡径部の起点から、前記頭部の前記座面までの前記軸部の軸方向に沿った長さは、1.5mm以上3.5mm以下である
請求項1~請求項8の何れか1項に記載のネジ。
【請求項10】
前記リセスは、前記頭部の周方向に沿って6個の前記頂部を有し、前記各頂部は、前記頭部の外周に向かって凸状となる曲線で構成され、前記各頂部の間が、前記頭部の中心に向かって凹状となる曲線で構成される
請求項1~請求項9の何れか1項に記載のネジ。
【請求項11】
前記頭部の厚さは、1.2mm以上2.4mm以下である
請求項1~請求項10の何れか1項に記載のネジ。
【請求項12】
前記頭部は、前記座面が前記拡径部の外周に設けられ、前記座面が平面で構成される
請求項1~請求項11に何れか1項に記載のネジ。
【請求項13】
前記拡径部は、前記頭部の前記座面から前記軸部の軸方向に沿って1.2mm以上離れた部位における直径が、前記軸部の前記ネジ山の直径以下である
請求項1~請求項12の何れか1項に記載のネジ。
【請求項14】
複数本の前記ネジが、前記軸部の軸方向と直交する方向に連結部材で連結され、内周側から外周側へらせん状に巻かれる
請求項1~請求項13の何れか1項に記載のネジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の施工等で使用されるネジに関する。
【背景技術】
【0002】
屋根の施工方法として、木材からなる下地にスレート材が取り付けられた屋根において、スレート材の上にガルバリウム鋼板(登録商標)からなる板金を重ねて張るカバー工法と称す工法が提案されている。
【0003】
従来、屋根の施工では、回転方向に打撃を加えることが可能なインパクトドライバが用いられてきた。上述したカバー工法において、インパクトドライバを用いる場合、板金、スレート材にネジを押し付けて貫通させるため、インパクトドライバを使用する作業者による強い押し付け力が必要となる。また、回転方向に打撃を加えることによる高い回転負荷により、ビットがネジから外れるカムアウトが発生しやすく、カムアウトを防ぐためには、より強い押し付け力が必要である。
【0004】
そこで、押し付け力を軽減するため、特許文献1等に記載のように、ネジを軸方向に打ち込んだ後、回転動作で締結する打撃機構とネジ締め込み機構を備えたネジ打ち込み機をカバー工法に適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カバー工法に上述したネジ打ち込み機を使用することで、板金、スレート材に空気圧でネジを貫通させるため、ネジ打ち込み機を使用する作業者によるネジ貫通時の押し付け力を軽減できる。
【0007】
一方、ネジで一般的に使われる十字ビットの特性として、回転負荷が高いとビットがネジから外れるカムアウトが発生しやすいという課題がある。しかし、上述したネジ打ち込み機では、ねじ込み時に空気圧でビットをネジに押し付け、ビットを介してネジを締結対象物に押し付けているので、ネジ打ち込み機を使用する作業者による押し付け力を強めても、十字リセスの特性に起因するカムアウトの発生を防ぐことが難しい。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、回転負荷が高くても、ビットがネジから外れるカムアウトの発生が抑制されるカバー工法に適したネジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、ドライバビットが嵌合するリセスが形成される頭部と、ネジ山が形成される軸部とを備え、頭部の軸部側に形成される座面と軸部との間に、軸部より径が大きい拡径部を備え、リセスは、軸部を軸として回転する頭部の周方向に沿って少なくとも3個の頂部を有し、頂部の間が、直線または前記頭部の中心に向かって凹状となる直線と曲線の組み合わせまたは曲線で構成されるネジである。
【0010】
本発明では、軸部を軸として回転する頭部の周方向に沿って少なくとも3個の頂部を有し、頂部の間が、直線または頭部の中心に向かって凹状となる直線と曲線の組み合わせまたは曲線で構成されるリセスに合致した形状のビットが使用され、ネジが締結される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビットがネジから外れるカムアウトの発生を抑制でき、ビットとネジの間で、高トルクの確実な伝達が可能である。また、頭部に形成された座面と軸部との間に、軸部より径が大きい拡径部を備えることで、ネジの強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本実施の形態のネジの一例を示す要部断面図である。
【
図1B】本実施の形態のネジの一例を示す要部断面図である。
【
図1C】本実施の形態のネジの他の例を示す要部断面図である。
【
図1D】本実施の形態のネジの他の例を示す要部断面図である。
【
図1E】本実施の形態のネジの変形例を示す要部断面図である。
【
図1F】本実施の形態のネジの変形例を示す要部断面図である。
【
図1G】本実施の形態のネジの他の変形例を示す要部断面図である。
【
図2A】本実施の形態のネジの一例を示す側面図である。
【
図2B】本実施の形態のネジの一例を示す正面図である。
【
図2C】本実施の形態のネジの一例を示す斜視図である。
【
図2D】本実施の形態の一例のネジを示す
図2BのA-A線断面図である。
【
図2E】本実施の形態の一例のネジを示す
図2BのB-B線断面図である。
【
図2F】本実施の形態のネジの他の例を示す側面図である。
【
図2G】本実施の形態の他の例のネジを示す
図2BのA-A線断面図である。
【
図2H】本実施の形態の他の例のネジを示す
図2BのB-B線断面図である。
【
図2I】本実施の形態のネジの提供形態の一例を示す斜視図である。
【
図3A】本実施の形態の一例のネジの使用形態を示す断面図である。
【
図3B】本実施の形態の他の例のネジの使用形態を示す断面図である。
【
図4A】ドライバビットの一例を示す側面図である。
【
図4B】ドライバビットの一例を示す正面図である。
【
図4C】ドライバビットの一例を示す斜視図である、
【
図4D】ドライバビットの一例を示す
図4AのC部拡大図である。
【
図5A】ネジとドライバビットの嵌合状態を示す断面図である。
【
図5B】ネジとドライバビットの嵌合状態を示す断面図である。
【
図6A】本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。
【
図6B】本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。
【
図6C】本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。
【
図6D】本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。
【
図6E】本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。
【
図6F】本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。
【
図6G】本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。
【
図6H】本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。
【
図6I】本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明のネジの実施の形態について説明する。
【0014】
<本実施の形態のネジの構成例>
図1A及び
図1Bは、本実施の形態のネジの一例を示す要部断面図で、
図1Bは、
図1Aに示すネジの寸法関係を示す。また、
図1C及び
図1Dは、本実施の形態のネジの他の例を示す要部断面図で、
図1Dは、
図1Cに示すネジの寸法関係を示す。更に、
図1E、
図1Fは、本実施の形態のネジの変形例を示す要部断面図、
図1Gは、本実施の形態のネジの他の変形例を示す要部断面図である。また、
図2Aは本実施の形態のネジの一例を示す側面図、
図2Bは、本実施の形態のネジの一例を示す正面図、
図2Cは、本実施の形態のネジの一例を示す斜視図である。更に、
図2Dは、
図2Aに示す本実施の形態の一例のネジを示す
図2BのA-A線断面図、
図2Eは、
図2Aに示す本実施の形態の一例のネジを示す
図2BのB-B線断面図である。また、
図2Fは本実施の形態のネジの他の例を示す側面図、
図2Gは、
図2Fに示す本実施の形態の他の例のネジを示す
図2BのA-A線断面図、
図2Hは、
図2Fに示す本実施の形態の他の例のネジを示す
図2BのB-B線断面図である。また、
図2Iは、本実施の形態のネジの提供形態の一例を示す斜視図である。更に、
図3Aは、
図1Aに示す本実施の形態の一例のネジの使用形態を示す断面図、
図3Bは、
図1Cに示す本実施の形態の他の例のネジの使用形態を示す断面図である。
【0015】
【0016】
ネジ1Aは、
図3A及び
図3Bに示すように、木材からなる下地101に第1の板材であるスレート材102(または、セメントボードと呼ばれる屋根材でも良い)が取り付けられた屋根において、スレート材102の上に防水シート103を挟んで第2の板材であるガルバリウム鋼板(登録商標)からなる板金104を重ねて張るカバー工法と称す屋根の施工方法に用いられる。
【0017】
従来、屋根の施工では、回転方向に打撃を加えることが可能なインパクトドライバが用いられてきた。上述したカバー工法において、インパクトドライバを用いる場合、板金104、スレート材102を貫通させてネジ1Aを下地101に締結するため、強い押し付け力が必要となる。
【0018】
そこで、特開2010-23169号公報に記載のように、ネジ1Aを軸方向に打ち込んだ後、回転動作で締結する打撃機構とネジ締め込み機構を備えたネジ打ち込み機を用いて、ネジ1Aを締結する。ネジ打ち込み機を使用することで、板金104、スレート材102にネジ1Aを貫通させるための負荷を軽減できる。
【0019】
一方、ネジで一般的に使われる十字ビットの特性として、回転負荷が高いとビットがネジから外れるカムアウトが発生しやすいという課題がある。上述したように、ネジ打ち込み機では、ねじ込み時に空気圧でビットをネジに押し付け、ビットを介してネジを締結対象物に押し付けているので、ネジ打ち込み機を使用する作業者による押し付け力を強めても、十字リセスの特性に起因するカムアウトの発生を防ぐことが難しい。そこで、ネジ1Aは、回転負荷が高くなっても、ネジとビットが離れる方向への力が発生しないリセス形状である
図4A~
図4Dに示すヘクサロビュラと称す形態のビット200を備えたドライバビット201で締結できるよう構成される。
【0020】
以下、ネジ1Aの詳細を説明する。ネジ1Aは、ネジ打ち込み機に備えたドライバビットが嵌合されるリセス2Aが形成される頭部3と、円周の外面にネジ山40が形成される軸部4を備える。
【0021】
また、ネジ1Aは、リセス2Aの側部及び底部周囲の肉厚を確保するため、頭部3と軸部4との間に、軸部4より径が大きい拡径部5を備える。ネジ打ち込み機で使用されるネジ1Aは、
図2Iに示すように、複数本のネジ1Aが、軸部4の軸方向と直交する方向に連結部材10Aで連結され、内周側から外周側へらせん状に巻かれた形態で提供される。
【0022】
リセス2Aは、ドライバビット201のビット200の形状に合わせて、頭部3の天面30が開口した凹部で構成される。ヘクサロビュラと称す形態のリセス2Aは、軸部4を軸として回転する頭部3の周方向に沿って6個の頂部20Aを有し、各頂部20Aの間が、頭部3の中心に向かって凹状となる曲線で構成される。各頂部20Aは、頭部3の外周に向かって凸状となる曲線で構成される。
【0023】
また、リセス2Aは、軸部4が延伸する軸方向に平行な内側面21Aを有する。更に、
図1A、
図1B、
図1C、
図1D、
図1E、
図1Fに示すリセス2Aは、
図4A~
図4Dに示すドライバビット201のビット200を誘導する誘導凹部22Aを備える。誘導凹部22Aは、
図1A、
図1B、
図1C、
図1Dに示す例では、ドライバビット201のビット200の先端に突出する周面が凹状に湾曲した円錐状の凸部202の形状に合わせて、誘導凹部22Aの底に向けて径が小さくなるように側面が内側に凸となる方向に湾曲した形状である。また、誘導凹部22Aは、
図1Eに示す例では、誘導凹部22Aの底に向けて径が小さくなるように、側面が直線状の斜面で構成される。更に、誘導凹部22Aは、
図1Fに示す例では、ドライバビット201の凸部202が入る円筒形状である。
【0024】
特開2010-23169号公報等に示すネジ打ち込み機では、ネジ1Aが連結した形態で供給され、ドライバビット201がネジ1Aを軸方向に打ち込む工程、または、ドライバビット201が回転する工程で、ビット200がリセス2Aに嵌合する必要がある。そこで、リセス2Aの誘導凹部22Aが、ドライバビット201のビット200の先端に突出する凸部202を誘導することで、
図5A,
図5Bに示すように、ドライバビット201のビットを確実にネジ1Aのリセス2Aに嵌合させることができる。すなわち、誘導凹部22Aが、
図1A、
図1B、
図1C、
図1E、
図1Fに示すように、誘導凹部22Aの底に向けて径が小さくなる形状、例えば、
図1A、
図1B、
図1C、
図1Dに示すように、
図4Dに示すドライバビット201の凸部202の形状に合わせて側面が湾曲した形状、または、
図1Eに示すように、誘導凹部22Aの側面が直線状の斜面であることで、ドライバビット201のビット200とネジ1Aのリセス2Aが嵌合する動作で、ビット200とリセス20Aの径方向の中心が、互いに合う方向に誘導される。これにより、
図5Bに示すように、ドライバビット201のビットを確実にネジ1Aのリセス2Aに嵌合させることができる。なお、
図1Gに示すリセス2Aは、誘導凹部を備えていない構成である。この場合、ドライバビットは、ビットの先端に凸部が設けられていない構成のものが使用される。
【0025】
さて、上述した板金によるカバー工法で用いられるねじに求められる性能は、板金104を確実に固定することであり、板金104を確実に固定する際、重要なことは、ネジの頭部が板金104から浮いた状態とならないことと、ネジの頭部が板金104に沈まないことである。板金104を確実に固定するため、ネジ1Aを締結する動作での負荷の増大を抑制しつつ、軸部4が切断しない強度を確保するため、ネジ1Aの軸部4の直径D1は、2.7mm以上3.3mm以下であることが好ましい。すなわち、軸部4が切断しない強度を確保するため、ネジ1Aの軸部4の直径D1の下限値は、2.7mm以上であることが好ましい。一方、軸部4の直径が太くなると、打ち込み負荷やねじ込み時の回転負荷が増大して、作業性が悪化するため、軸部4の直径D1の上限値は、3.3mm以下であることが好ましい。また、締結したネジ1Aの軸部4が下地101から抜けることを抑制するため、ネジ山40の外径D2は、4.0mm以上であることが好ましいが、打ち込み負荷やねじ込み時の回転負荷を考慮すると、4.5mm以下であることが好ましい。
【0026】
更に、板金104を頭部3で抜けないように押さえられるようにするため、頭部3の直径D3は、8.1mm以上であることが好ましい。一方、ネジ1Aの頭部3の直径は、ネジ打ち込み機においてネジが通るノーズの内径より小さい必要がある。更に、ノーズ内でネジ1Aが傾く角度を抑制するためには、ネジ1Aの軸部4のネジ山40の直径D2と頭部3の直径D3の差が大きくなりすぎない方が良い。そこで、ネジ山40の外径D2が4.0mm程度のネジ1Aである場合、頭部3の直径D3の上限値は8.7mm以下であることが好ましい。
【0027】
リセス2Aがヘクサロビュラと称す形態である場合、ネジ山40の外径D2が4.0mm程度のネジ1Aでは、サイズ(呼び)がT20またはT25と称すドライバビットが用いられる。サイズがT20のドライバビットに対応するリセス2Aは、頭部3の中心を通る対角線上に位置する頂部20Aの間隔A1が3.84mm、サイズがT25のドライバビットに対応するリセス2Aは、対角線に位置する頂部20Aの間隔A1が4.40mmである。
【0028】
また、
図1A、
図1B、
図1C、
図1D、
図1E、
図1Fに示すように、リセス2Aが誘導凹部22Aを備える構成では、サイズがT20のドライバビットに対応するリセス2Aにおいて、誘導凹部22Aの直径A2は、2.85mm以下であり、サイズがT25のドライバビットに対応するリセス2Aにおいて、誘導凹部22Aの直径A2は、3.3mm以下である。
【0029】
上述したカバー工法では、ネジ1Aで固定された板金104の上に、次の板金104が重ねられる。このため、下側に固定されている板金104の表面に露出したネジ1Aの頭部3の上が、次の板金104で覆われる。
【0030】
頭部3は、拡径部5が設けられる側と反対方向に、軸部4の軸方向に沿って突出する凸部33を備える。そこで、ネジ1Aの頭部3の厚さT1は、1.2mm以上~2.4mm以下以下であることが好ましい。頭部3の厚さT1が2.4mm以下であれば、ネジ1Aの頭部3に重ねられた板金104に力が掛かった場合でも、ネジ1Aの頭部3に押し付けられることによる板金104の変形が抑制される。
【0031】
頭部3は、スレート材102を介して下地101に固定される板金104に接触してこれを保持する座面31が、拡径部5の外周に設けられる。ここで、ネジ1Aを締結して板金104を固定した場合に、頭部3において板金104と対向する面である座面31は、平面で構成される場合と、皿ネジと称す形態のように、軸部4から頭部3の外周に向けて径が大きくなる斜面または曲面からなるテーパ面で構成される場合が考えられる。座面31が平面で構成される場合、頭部3の外周を含め、座面31の全面が板金104の表面に接する状態までネジ1Aがねじ込まれることで、ネジ1Aの頭部3が板金104の表面から浮かない状態となる。これに対し、座面31が、軸部4から頭部3の外周に向けて径が大きくなるテーパ面で構成される場合、頭部3の外周から軸部4に向けて、軸部4の軸方向に沿って突出する形態となるので、座面31の一部が板金104を押しつぶしながら、頭部3の外周が板金104の表面に接する状態までネジ1Aがねじ込まれることで、ネジ1Aの頭部3が板金104の表面から浮かない状態となる。このため、ネジ1Aの頭部3が板金104の表面から浮かない状態とは、頭部3の外周である座面31の外周が板金104の表面に接した状態である。
【0032】
そこで、座面31の外周を座面基準面32と称す。頭部3が凸部33を備える構成では、頭部3の厚さT1は、頭部3の天面30から座面基準面32までの軸部4の軸方向に沿った長さである。なお。座面31が平面である場合、頭部3の厚さT1は、頭部3の天面30から座面31までの軸部4の軸方向に沿った長さである。
【0033】
なお、リセス2AのサイズがT20のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、頭部3の厚さT1は、1.2mm以上2.3mm以下であることが好ましく、頭部3の厚さT1の上限値が2.0mm以下であることがより好ましい。また、リセス2AのサイズがT25のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、頭部3の厚さT1は、1.6mm以上2.3mm以下であることが好ましく、頭部3の厚さT1の上限値が2.0mm以下であることがより好ましい。
【0034】
また、ドライバビットとリセス2Aの内側面21Aが接する面積を確保するため、リセス2Aの深さDep1は、1.6mm以上であることが好ましい。リセス2Aの深さDep1が1.6mm以上であれば、ドライバビットでネジ1Aを締結する際にドライバビットがリセス2Aから外れるカムアウトの発生が抑制され、また、締結に必要十分な力をドライバビットがネジ1Aに加えることができる。
【0035】
また、
図1A、
図1B、
図1C、
図1D、
図1E、
図1Fに示すように、リセス2Aが誘導凹部22Aを備える構成では、誘導凹部22Aの深さDep2は、1.2mm以上2.1mm以下であることが好ましい。なお、リセス2AのサイズがT20のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、誘導凹部22Aの深さDep2は、1.2mm以上2.1mm以下であることが好ましい。また、リセス2AのサイズがT25のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、誘導凹部22Aの深さDep2は、1.5mm以上2.1mm以下であることが好ましい。
【0036】
上述したように、サイズがT25のドライバビットに対応するリセス2Aは、各頂部20Aを通る外周円の直径、本例では、対角線に位置する頂部20Aの間隔Aが4.4mmであり、リセス2Aの径方向のサイズが、軸部4の直径D1より大きい。一方、ネジ1Aの頭部3の厚さT1は、2.0mm以下であることが好ましいのに対し、リセス2Aの深さDep1は、1.6mm以上であることが好ましい。
【0037】
リセス2Aの側部及び底部周囲の肉厚は、0.7mm以上であることが好ましい。これに対し、以上の寸法関係では、座面31が平面で、軸部4が、拡径部5が設けられずに略同じ直径で座面31とつながる形状のネジであると、リセス2Aの底部と頭部3の座面31との間の肉厚が、最大でも0.4mmしか確保できず、本発明で規定される値を満たさない。よって、軸部4が、拡径部5が設けられずに略同じ直径で座面31とつながる形状のネジでは、リセス2Aの側部及び底部周囲に、必要とされる肉厚を確保できない。
【0038】
そこで、ネジ1Aは、リセス2Aの側部及び底部周囲の肉厚を確保するため、頭部3と軸部4との間に、軸部4より径が大きい拡径部5を備える。頭部3と軸部4との間に拡径部5を備えることで、リセス2Aの深さDep1を、ネジ1Aの頭部3の厚さT1以上とすることができる。
【0039】
この場合、リセス2Aがヘクサロビュラと称す形態であり、かつ、
図1A、
図1B、
図1Cに示すように、誘導凹部22Aを備えた構成であると、リセス2Aの側部及び底部の周囲において、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2は、リセス2Aの頂部20Aと拡径部5との間の肉厚と、リセス2Aの誘導凹部22Aと拡径部5との間の肉厚の何れかが、最も薄くなる。また、
図1Dに示すように、リセス2Aが誘導凹部を備えていない構成であると、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2は、リセス2Aの頂部20Aと拡径部5との間の肉厚が最も薄くなる。そして、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2は、最も薄い部分が0.7mm以上であることが好ましい。
【0040】
さて、頭部3と軸部4との間に拡径部5を備えたネジ1Aでは、軸部4に対して径(直径)が大きくなる拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの軸部4の軸方向に沿った長さが、板金104と防水シート103の厚さの合計値、本例では1.35mm以下であれば、頭部3の座面基準面32(座面31)が板金104に密着するまでネジ1Aをねじ込んでも、拡径部5はスレート材102に到達しない。
【0041】
しかし、この場合、拡径部5が、拡径部5の起点51から座面基準面32に向けて径が大きくなるテーパ面で構成されると、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2が、最も薄い部分で0.7mm未満となる。
【0042】
これに対し、拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの軸部4の軸方向に沿った長さが、板金104と防水シート103の厚さの合計値を超える構成を考える。
【0043】
この場合、拡径部5はスレート材102に到達する。但し、スレート材102においてネジ1Aの締結動作でネジ山40が通過した部位の孔は、防水シート103に面した開口側では、ネジ山40の外径D2よりも内側部分が、ネジ山40の貫入時にスレート材102が破壊されている。このため、スレート材102の防水シート103に面した側の近傍では、拡径部5において軸部4の直径D1より太い部分でも、スレート材102に貫入可能である。
【0044】
そこで、拡径部5において、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる部位である位置P1から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの軸部4の軸方向に沿った長さL1は、板金104と防水シート103の厚さの合計値と同等程度であることが好ましく、1.2mm以上であることが好ましく、本例では1.35mm~1.65mm程度である。本例では、ネジ山40の外径D2が4.2mmであるので、拡径部5は、頭部3の座面基準面32(座面31)から軸部4の軸方向に沿って1.2mm以上離れた位置P1における直径が、4.2mm以下であることが好ましい。
【0045】
また、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2が、最も薄い部分で0.7mm以上となるようにするため、拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの長さL2は、1.5mm以上3.5mm以下であることが好ましい。
【0046】
拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの長さL2は、リセス2Aが誘導凹部22Aを備える構成である場合、1.7mm以上2.6mm以下であることが好ましい。なお、リセス2AのサイズがT20のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの長さL2は、1.7mm以上2.6mm以下であることが好ましい。また、リセス2AのサイズがT20のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの長さL2は、1.7mm以上2.6mm以下であることが好ましい。
【0047】
拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの長さL2は、リセス2Aが誘導凹部22Aを備えない構成である場合、1.5mm以上3.5mm以下であることが好ましい。なお、リセス2AのサイズがT20のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの長さL2は、1.7mm以上3.5mm以下であることが好ましい。また、リセス2AのサイズがT20のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの長さL2は、1.7mm以上2.9mm以下であることが好ましい。
【0048】
また、拡径部5において、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの間は、板金104に接する。ネジ1Aの頭部3が板金104の表面から浮かない状態とするためには、頭部3の外周である座面基準面32が、板金104の表面に接した状態となる必要がある。このため、板金104及び防水シート103を変形させるため、拡径部5において、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの間に、軸部4から頭部3に向けて径が大きくなるテーパ面50を備える。
【0049】
テーパ面50のなす角αは、リセス2Aが誘導凹部22Aを備える構成であり、頭部3の直径D3が8.4mmである場合、70°以上115°以下であることが好ましい。なお、リセス2AのサイズがT20のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、テーパ面50のなす角αは、76°以上115°以下であることが好ましい。また、リセス2AのサイズがT25のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、テーパ面50のなす角αは、70°以上115°以下であることが好ましい。
【0050】
テーパ面50のなす角αは、リセス2Aが誘導凹部22Aを備えない構成であり、頭部3の直径D3が8.4mmである場合、38°以上115°以下であることが好ましい。なお、リセス2AのサイズがT20のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、テーパ面50のなす角αは、38°以上115°以下であることが好ましい。また、リセス2AのサイズがT25のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、テーパ面50のなす角αは、57°以上115°以下であることが好ましい。
【0051】
テーパ面50のなす角αが上記値であると、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2を、最も薄い部分で0.7mm以上とし、かつ、リセス2Aの深さDep1を1.6mm以上とすることができる。また、拡径部5を備えることで、ネジ1Aの頭部3の厚さT1が1.2mm以上~2.4mm以下である構成で、リセス2Aの深さDep1を、ネジ1Aの頭部3の厚さT1以上とすることができる。
【0052】
このため、リセス2Aの深さDep1は、1.6mm以上2.5mm以下であることが好ましい。なお、リセス2AのサイズがT20のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、リセス2Aの深さDep1は、1.6mm以上2.5mm以下であることが好ましい。また、リセス2AのサイズがT25のドライバビットに対応するネジ1Aの場合、リセス2Aの深さDep1は、1.6mm以上2.0mm以下であることが好ましい。
【0053】
一方、テーパ面50のなす角αが上記値を超えると、座面31の面積が小さくなったり、座面31となる平面が形成されない場合がある。頭部3の外径を上記値より大きくせず、座面31の面積を確保するには、テーパ面50と座面31との間に座面下連結面50aを備え、テーパ面50と座面31を直接繋がずに所謂段落とし形状としても良い。座面下連結面50aのなす角β(半角)は、0°以上35°以下であることが好ましく、
図1A、
図1Bに示すように、テーパ面50とは異なる角度のテーパ面で構成しても良いし、
図1C、
図1Dに示すように、軸部4の軸方向に沿ったストレート面で構成しても良い。また、軸部4の軸方向に沿った座面下連結面50aの長さL3、すなわち、頭部3の座面基準面32(座面31)から、座面下連結面50aとテーパ面50との連結点P2までの長さは、0.3mm以上1.3mm以下であることが好ましい。更に、
図1A,
図1Bに示すように、直線状の斜面で構成されるテーパ面50と、拡径部5の起点51までの間、本例では、位置P1から拡径部5の起点51までの間を、軸部4の中心に向かって凹状となる曲面50bで構成しても良い。位置P1から拡径部5の起点51までの間を、軸部4の中心に向かって凹状となる曲面50bで構成することで、ネジ1Aを締結する際の負荷の増加を抑制しつつ、拡径部5の起点51から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの長さL2を、規定の範囲内で延ばすことができ、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2を確保し、かつ、リセス2Aの深さDep1を深くすることができる。
【0054】
図6A~
図6Iは、本実施の形態のネジの更に他の変形例を示す要部断面図である。拡径部5において、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1から、拡径部5の起点51までの間は、ネジ山40の外径D2よりも直径が細ければ、スレート材102に貫入可能である。そこで、拡径部5は、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1から、拡径部5の起点51までの間に、起点51から、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1に向けて径が大きくなるテーパ面を備えても良い。拡径部5において、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1から、拡径部5の起点51までの間に設けるテーパ面52aは、テーパ面50と同じ角度でも良いし、
図6Aに示すように、テーパ面50のなす角α1(半角)と、位置P1から拡径部5の起点51までの間に設けるテーパ面52aのなす角α2(半角)が、異なる角度でも良い。このとき、テーパ面50とテーパ面52が接続される位置が、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1と一致していなくても良い。リセス2A側を中心とし、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2として求められる最小値(本例では0.7mm)を半径とした仮想円C1を二点鎖線で示す。各テーパ面のなす角は、リセス2A側の任意の点Oを中心とした仮想円C1に対し、各テーパ面が仮想円C1の内側に入らないような値であれば、リセス2Aと各テーパ面との間の肉厚T2が所望の値以上となる。
【0055】
また、
図6Bに示すように、位置P1から拡径部5の起点51までの間を、リセス2A側の任意の点Oを中心とした仮想円C1の内側に入らないような軸部4の中心に向かって凸状となる曲面52bで構成しても良い。更に、
図6Cに示すように、拡径部5は、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの間に、軸部4に近い側には軸部4から頭部3に向けて径が大きくなり、リセス2A側の任意の点Oを中心とした仮想円C1の内側に入らないようなテーパ面50を備え、座面31に近い側には、リセス2A側の任意の点Oを中心とした仮想円C1の内側に入らないように、軸部4の軸方向に沿ったストレート面53aを備える構成としても良い。また、拡径部5は、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1から、拡径部5の起点51までの間に、起点51から、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1向けて径が大きくなる段差部を設けても良い。更に、
図6Dに示すように、拡径部5は、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2が略均一となるように、ネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1から、頭部3の座面基準面32(座面31)までの間に、リセス2Aの形状に倣うような段差部53bを備える構成としても良い。
【0056】
また、
図6Eに示すように、拡径部5は、頭部3の座面31からネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1までの間、及び、位置P1から拡径部5の起点51までの間が、単一の直径の円弧C2、または、複数の異なる直径の円弧の組み合わせからなり、リセス2A側の任意の点Oを中心とした仮想円C1の内側に入らない曲面54aを備える構成としても良い。更に、
図6Fに示すように、拡径部5は、座面31が、軸部4から頭部3の外周に向けて径が大きくなる斜面または曲面からなるテーパ面で構成され、頭部3の座面基準面32からネジ山40の外径D2と同じ直径となる位置P1までの間、及び、位置P1から拡径部5の起点51までの間が、単一の直径の円弧C2、または、複数の異なる直径の円弧の組み合わせからなり、リセス2A側の任意の点Oを中心とした仮想円C1の内側に入らない曲面54bを備える構成としても良い。
【0057】
また、
図6Gに示すように、ネジ1Aは、拡径部5において、リセス2Aの誘導凹部22Aと対向するテーパ面50が、リセス2A側の任意の点Oを中心とした仮想円C1の内側に入らないようにできれば、ボタンヘッドと称す形態の頭部3を備える構成としても良い。更に、
図6Hに示すように、拡径部5において、テーパ面50が頭部3の外周まで延長された形態で、座面31が、軸部4から頭部3の外周に向けて径が大きくなるテーパ面で構成される場合でも、ボタンヘッドと称す形態の頭部3を備える構成としても良い。
【0058】
また、
図6Iに示すように、頭部3が凸部33をそなえず、ネジ1Aが皿ネジの形態である場合、テーパ面50の一部で座面31が構成されるが、リセス2Aの深さDep1が1.6mm以上で、かつ、リセス2A及び誘導凹部22Aと対向するテーパ面50が、リセス2A側の任意の点Oを中心とした仮想円C1の内側に入らず、更に、テーパ面50の一部が板金104を押しつぶし、頭部3の外周(座面基準面32)が板金104の表面に接する状態までネジ1Aがねじ込めれば、皿ネジの形態でも良い。
【0059】
以上説明したように、ネジ1Aは、ドライバビットが嵌合するリセス2Aが、軸部4を軸として回転する頭部3の周方向に沿って少なくとも3個の頂部20Aを有し、頂部20Aの間が、直線または頭部3の中心に向かって凹状となる直線と曲線の組み合わせまたは曲線で構成され、頭部3の座面31と軸部4との間に、軸部4より径が大きい拡径部5を備えることで、ネジ1Aの強度を確保しつつ、カムアウトの発生を抑制する効果を得ることができる。
【0060】
ネジ1Aは、各部の寸法が、上述した本発明で規定される値を満たすことが好ましい。すなわち、頭部3の直径D3は、8.1mm以上8.7mm以下、頭部4の厚さT1は、1.2mm以上2.4mm以下、リセス20Aの深さDep1は、1.6mm以上2.5mm以下、軸部4の直径D1は、2.7mm以上3.3mm以下、軸部4のネジ山40の直径D2は、4.1mm以上4.35mm以下、リセス2Aと拡径部5との間の肉厚T2は、0.7mm以上、軸部4と拡径部5が交わる拡径部5の起点51から、頭部3の座面31(座面基準面32)までの軸部4の軸方向に沿った長さL2は、1.5mm以上3.1mm以下である。
【0061】
また、テーパ面50のなす角αは、38°以上115°以下であり、誘導凹部22Aを備える場合、テーパ面50のなす角αは、70°以上115°以下である。
【0062】
更に、拡径部5は、頭部3の座面31(座面基準面32)から軸部4の軸方向に沿って1.2mm以上離れた位置P1における直径が、4.2mm以下である。
【0063】
ネジ1Aは、各部の寸法が、本発明で規定される値を満たすことで、上述したカバー工法において、板金104を固定する際に、ネジ1Aの頭部3が板金104から浮いた状態とならず、かつ、ネジ1Aの頭部3が板金104に沈まないことを実現できる。
【0064】
これにより、カバー工法において、ネジ1Aを軸方向に打ち込んだ後、回転動作で締結する打撃機構とネジ締め込み機構を備えたネジ打ち込み機を使用することで、板金104、スレート材102にネジ1Aを貫通させるための負荷を軽減できる。また、回転負荷が高くても、ビット200がネジ1Aから外れるカムアウトの発生を抑制できる。
【0065】
なお、ネジ1Aにおいて、リセス2Aは、ヘクサロビュラと称す形態に限らず、頭部3の周方向に沿って4個の頂部20Aを有し、各頂部20Aの間が直線で構成される四角形で、四角形の各辺から、軸部4の軸方向に平行な内側面21Aを有する形態、頭部3の周方向に沿って6個の頂部20Aを有し、各頂部20Aの間が直線で構成される六角形で、六角形の各辺から、軸部4の軸方向に平行な内側面21Aを有する形態等でも良い。
【0066】
さて、硬い木材同士の締結等、ネジの締め込み負荷が高い部材の締結のため、ネジを回転させる際に高トルクが必要な接合を行うには、工具が発生するトルクを、カムアウトせずに確実にネジに伝達することや、高トルクで締め込んでもネジが破断しない強度を確保することが必須である。
【0067】
カムアウトを抑制するには、ネジのリセスを深く形成することが有効である。リセスを深く形成するため、ネジの頭部の厚さを大きくすると、締結対象物の表面からネジの頭の突出量が大きくなる。一方、ネジの頭部の厚さを大きくせず、リセスを深く形成すると、リセスのサイズと、ネジ山が設けられる軸部の直径の大小の関係から、頭部の下面に軸部より径が大きな拡径部を設ける必要が生じる。
【0068】
しかし、拡径部は、ネジの締結動作で締結対象物に沈み込むときの抵抗となるため、ネジの強度を確保するため拡径部の直径を大きくする程、ネジの締結に高いトルクが必要となり、ネジの強度を確保する効果が得られにくい。
【0069】
これに対し、本実施の形態のネジ1Aでは、リセス2Aの形状、拡径部5の直径、軸部4の軸方向に沿った長さが規定されることで、ネジ1Aの締結動作で拡径部5が締結対象物に沈み込むときの負荷の増加を最低限に抑え、ドライバビット201からネジ1Aへの確実なトルク伝達が可能になる。これにより、頭部3の厚さを大きくすることなく、高トルクの確実な伝達、ネジ1Aの強度確保、ネジ1Aの締結に必要なトルクの増加の抑制といった課題をできる。従って、ネジ1Aが適用される用途としては、上述したカバー工法に限らず、硬い木材同士の締結等、ねじの締め込み負荷が高い部材の締結において有効である。
【符号の説明】
【0070】
1A・・・ネジ、2A・・・リセス、20A・・・頂部、21A・・・内側面、22A・・・誘導凹部、3・・・頭部、30・・・天面、31・・・座面、32・・・座面基準面、33・・・凸部、4・・・軸部、40・・・ネジ山、5・・・拡径部、50・・・テーパ面、50a、座面下連結面、50b・・・曲面、51・・・起点、101・・・下地、102・・・スレート材、104・・・板金、200・・・ビット、201・・・ドライバビット