(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129050
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220829BHJP
B41J 19/18 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J19/18 F
B41J19/18 L
B41J19/18 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027593
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 英輔
(72)【発明者】
【氏名】桐山 祥衣
【テーマコード(参考)】
2C056
2C480
【Fターム(参考)】
2C056EB11
2C056EB35
2C056EB36
2C056EB58
2C056EC11
2C056EC31
2C056EC34
2C056EC37
2C056EC38
2C056EC71
2C056FA10
2C056HA38
2C056JA01
2C480CA01
2C480CA09
2C480CA10
2C480CA11
2C480CA16
2C480CA31
2C480CA33
2C480CB02
2C480CB31
2C480CB35
2C480DA01
2C480DB03
2C480EA05
2C480EA06
2C480EA07
2C480EA08
2C480EA26
2C480EB14
(57)【要約】
【課題】被移動体の移動制御において速度制御から位置制御への切替を適切に実行する。
【解決手段】制御システムは、移動機構60と、検出器77と、コントローラ100と、を備える。移動機構は、モータ71により駆動され、被移動体50,61を移動させるように構成される。検出器は、被移動体の位置及び速度を検出するように構成される。コントローラは、検出器により検出された位置及び速度に基づくモータの制御によって、被移動体の移動を制御するように構成される。コントローラは、移動機構に被移動体を往復動させるようにモータを制御する。コントローラは、被移動体が折返し地点に到達する前の減速開始時点まで、被移動体が定速移動するように被移動体の速度を制御し、減速開始時点から、目標位置軌跡Pxに従って被移動体が減速し折返し地点で停止するように、被移動体の位置を制御する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動されて、被移動体を移動させるように構成される移動機構と、
前記被移動体の位置及び速度を検出するように構成される検出器と、
前記検出器により検出された前記位置及び速度に基づく前記モータの制御によって、前記被移動体の移動を制御するように構成されるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記移動機構に前記被移動体を往復動させるように前記モータを制御し、前記モータの制御によって、前記被移動体を折返し地点まで移動させる過程では、前記被移動体が前記折返し地点に到達する前の減速開始時点まで、前記被移動体が定速移動するように前記被移動体の速度を制御し、前記減速開始時点から、目標位置軌跡に従って前記被移動体が減速し前記折返し地点で停止するように、前記被移動体の位置を制御する制御システム。
【請求項2】
前記被移動体は、移動過程で対象を加工するように構成され、
前記コントローラは、前記被移動体による加工動作の実行予定に応じて、前記被移動体を前記折返し地点まで移動させる過程での制御モードを複数の制御モードの間で切り替えるように構成され、
前記複数の制御モードのうちの第一の制御モードでは、前記減速開始時点まで、前記被移動体が定速移動するように前記被移動体の速度を制御し、前記減速開始時点から、目標速度軌跡に従って前記被移動体が減速し前記折返し地点で停止するように、前記被移動体の速度を制御し、
前記複数の制御モードのうちの第二の制御モードでは、前記減速開始時点まで、前記被移動体が定速移動するように前記被移動体の速度を制御し、前記減速開始時点から、前記目標位置軌跡に従って前記被移動体が減速し前記折返し地点で停止するように、前記被移動体の位置を制御する請求項1記載の制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記被移動体を前記折返し地点まで移動させる過程に続く前記被移動体を次の折返し地点に移動させる過程において前記加工動作の実行予定がないときには、前記被移動体を前記折返し地点まで移動させる過程において、前記第一の制御モードによる前記モータの制御を実行し、前記加工動作の実行予定があるときには、前記第二の制御モードによる前記モータの制御を実行する請求項2記載の制御システム。
【請求項4】
前記被移動体は、インクを吐出して前記対象としてのシートに画像を形成することにより、前記シートを加工するように構成される吐出ヘッドを含み、前記加工動作は、前記吐出ヘッドからの前記インクの吐出動作を含む請求項2又は請求項3記載の制御システム。
【請求項5】
前記吐出ヘッドは、前記往復動の過程における往路及び復路のうちの一方では、前記インクの吐出動作を実行せず、前記往路及び復路のうちの他方において、前記インクの吐出動作を実行して、前記シートに画像を形成する請求項4記載の制御システム。
【請求項6】
前記第二の制御モードにおいて、前記コントローラは、前記減速開始時点で、前記折返し地点までの前記吐出ヘッドの移動過程における前記インクの吐出動作が終了している場合には、前記減速開始時点から、前記目標位置軌跡に従って前記吐出ヘッドの位置を制御し、前記減速開始時点で前記インクの吐出動作が終了していない場合には、前記減速開始時点から、前記目標速度軌跡に従って前記吐出ヘッドが減速するように、前記吐出ヘッドの速度を制御し、前記インクの吐出動作が終了した時点以降において、前記目標位置軌跡に従って前記吐出ヘッドが減速し前記折返し地点で停止するように、前記吐出ヘッドの位置を制御する請求項4又は請求項5記載の制御システム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記シートへの画像形成が終了すると、第一のモータ制御としての、前記移動機構に前記吐出ヘッドを往復動させるための前記モータの制御を終了し、第二のモータ制御として、前記移動機構に前記吐出ヘッドをキャッピング位置に移動させるための前記モータの制御を実行し、前記第二のモータ制御では、前記吐出ヘッドが所定量移動する度に前記モータに対する駆動電力を基準値に戻しては前記駆動電力を増加させる制御を前記吐出ヘッドが所定量移動する度に実行することにより、前記吐出ヘッドを前記キャッピング位置で停止させる請求項4~請求項6のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項8】
前記吐出ヘッドは、前記吐出ヘッドに接続されたインク供給チューブを通じて供給されるインクを用いて前記インクの吐出動作を実行するように構成される請求項4~請求項7のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記目標位置軌跡に従う前記位置の制御を開始する際には、目標位置の初期値を前記検出器により検出された前記被移動体の現在位置に設定し、前記初期値からの前記目標位置軌跡に従って前記位置を制御する請求項1~請求項8のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記目標位置軌跡として、目標位置の初期値を前記位置の制御を開始するときに前記検出器により検出された前記被移動体の現在位置に設定した目標位置軌跡であって、前記目標速度軌跡を積分して定義される目標位置軌跡、に従って前記被移動体の位置を制御する請求項2~請求項8のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記被移動体の速度を制御する際には、前記被移動体の目標速度と前記検出器により検出された前記被移動体の速度との偏差に基づき前記モータを制御し、前記被移動体の位置を制御する際には、前記被移動体の目標位置と前記検出器により検出された前記被移動体の位置との偏差に基づき前記モータを制御するように構成される請求項1~請求項10のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項12】
モータにより駆動されて、被移動体を移動させるように構成される移動機構と、
前記被移動体の位置及び速度を検出するように構成される検出器と、
を備え、前記検出器により検出された前記位置及び速度に基づく前記モータの制御によって、前記被移動体の移動を制御するように構成される制御システム
のコンピュータに、
前記移動機構に前記被移動体を往復動させるように前記モータを制御することであって、
前記被移動体を折返し地点まで移動させる過程では、前記被移動体が前記折返し地点に到達する前の減速開始時点まで、前記被移動体が定速移動するように、前記モータの制御によって前記被移動体の速度を制御することと、
前記減速開始時点から、目標位置軌跡に従って前記被移動体が減速し前記折返し地点で停止するように、前記モータの制御によって前記被移動体の位置を制御することと、
を含む前記モータを制御することを実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリアルプリンタにおいて、目標停止位置より上流の第一の地点からキャリッジを減速させるように速度制御し、第一の地点より下流の第二の地点でキャリッジの移動制御を位置制御に切り替える技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のシリアルプリンタにおいて、移動制御を速度制御と位置制御との間で切り替えるのは、記録ヘッドから吐出されるインクの着弾点の制御のために、シートへの画像形成時には、キャリッジの速度を高精度に制御する必要があるためである。位置制御を実行するのは、次の移動開始地点に対応する目標停止位置に精度よくキャリッジを停止させ、次の移動制御を精度よく実現するためである。しかしながら、従来方法では、位置制御への切替直後にキャリッジの挙動が不安定になり易い。
【0005】
そこで、本開示の一側面によれば、被移動体の移動制御において、速度制御から位置制御への切替を、従来よりも適切に実行可能な技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る制御システムは、移動機構と、検出器と、コントローラと、を備える。移動機構は、モータにより駆動されて、被移動体を移動させるように構成される。検出器は、被移動体の位置及び速度を検出するように構成される。コントローラは、検出器により検出された位置及び速度に基づくモータの制御によって、被移動体の移動を制御するように構成される。
【0007】
本開示の一側面によれば、コントローラは、移動機構に被移動体を往復動させるようにモータを制御する。コントローラは、モータの制御によって、被移動体を折返し地点まで移動させる過程では、被移動体が折返し地点に到達する前の減速開始時点まで、被移動体が定速移動するように被移動体の速度を制御し、減速開始時点から、目標位置軌跡に従って被移動体が減速し折返し地点で停止するように、被移動体の位置を制御する。
【0008】
定速移動のための速度制御によって、減速開始時点直前の被移動体の定速移動中は、被移動体の減速移動中に比べて、被移動体の速度の変化量が小さい。従って、減速開始時点から移動制御を速度制御から位置制御に切り替えると、減速開始時点より後で切り替える場合よりも、直前の被移動体の速度の変化が切替直後の位置制御に及ぼす影響が小さくなる。従って、本開示の一側面によれば、被移動体を移動させるシステムにおいて、速度制御から位置制御への切替を、従来よりも適切に実行することができる。
【0009】
本開示の一側面によれば、コンピュータプログラムが提供されてもよい。コンピュータプログラムは、モータにより駆動されて、被移動体を移動させるように構成される移動機構と、被移動体の位置及び速度を検出するように構成される検出器と、を備え、検出器により検出された位置及び速度に基づくモータの制御によって、被移動体の移動を制御するように構成される制御システムのコンピュータ向けに構成され得る。
【0010】
コンピュータプログラムは、移動機構に被移動体を往復動させるようにモータを制御することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであり得る。移動機構に被移動体を往復動させるようにモータを制御することは、被移動体を折返し地点まで移動させる過程では、被移動体が折返し地点に到達する前の減速開始時点まで、被移動体が定速移動するように、モータの制御によって被移動体の速度を制御することと、減速開始時点から、目標位置軌跡に従って被移動体が減速し前記折返し地点で停止するように、モータの制御によって被移動体の位置を制御することと、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】画像形成システムの構成を表すブロック図である。
【
図2】キャリッジ移動機構及び用紙搬送機構の構成を表す図である。
【
図3】メインコントローラが実行する印刷制御処理を表すフローチャートである。
【
図5】
図5Aは、速度制御器の構成を表すブロック図であり、
図5Bは、外乱オブザーバの構成を表すブロック図である。
【
図7】
図7Aは、切替制御器により実行される切替制御処理を表すフローチャートであり、
図7Bは、切替信号の時間変化を示す図である。
【
図8】速度制御から位置制御への切替を説明する図である。
【
図9】
図9Aは、キャッピング機構の配置を説明する図であり、
図9Bは、微小移動制御による操作量の変化をキャリッジの位置変化と共に説明するグラフである。
【
図10】第二実施形態の切替制御処理を表すフローチャートである。
【
図11】第二実施形態における速度制御から位置制御への切替を説明する図である。
【
図12】第三実施形態における印刷制御処理を表すフローチャートである。
【
図13】第一制御モード及び第二制御モードに関する説明図である。
【
図14】第三実施形態の切替制御処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[第一実施形態]
図1に示す本実施形態の画像形成システム1は、メインコントローラ10と、通信インタフェース20と、印刷コントローラ30と、搬送コントローラ40と、を備えるインクジェットプリンタとして構成される。
【0013】
メインコントローラ10は、プロセッサ11及びメモリ13を備える。メモリ13は、図示しない不揮発性メモリを含み、コンピュータプログラムを記憶する。プロセッサ11は、メモリ13に記憶されたコンピュータプログラムに従う処理を実行することにより、画像形成システム1を統括制御する。以下で説明されるメインコントローラ10が実行する処理は、プロセッサ11がコンピュータプログラムに従う処理を実行することにより、実現されると理解されてよい。
【0014】
メインコントローラ10は、通信インタフェース20を介して外部機器から印刷対象の画像データを受信すると、印刷コントローラ30及び搬送コントローラ40との協働により、当該受信した画像データに基づく画像を用紙Qに形成するための処理を実行する。印刷コントローラ30及び搬送コントローラ40は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用回路で構成され得る。
【0015】
画像形成システム1は、記録ヘッド50と、インクタンク51と、ヘッド駆動回路55と、キャリッジ移動機構60と、CRモータ71と、モータ駆動回路73と、エンコーダ75と、信号処理回路77とを更に備える。キャリッジ移動機構60は、記録ヘッド50を搭載するキャリッジ61を備える。
【0016】
印刷コントローラ30は、メインコントローラ10からの指令に従って、CRモータ71を制御することにより、キャリッジ移動機構60によるキャリッジ61の移動を制御し、更には、記録ヘッド50によるインクの吐出動作を制御する。この制御によって、印刷コントローラ30は、上記画像を用紙Qに形成する。
【0017】
記録ヘッド50は、用紙Qに向けてインクを吐出する吐出ヘッドであり、所謂インクジェットヘッドである。記録ヘッド50は、キャリッジ61には搭載されないインクタンク51とチューブ51Aを介して接続され、インクタンク51からのインク供給を、チューブ51Aを介して受けて、インク液滴を吐出する。
【0018】
ヘッド駆動回路55は、印刷コントローラ30からの制御信号に従って、記録ヘッド50を駆動するように構成される。キャリッジ移動機構60は、CRモータ71により駆動される。キャリッジ移動機構60は、CRモータ71からの動力をキャリッジ61に伝達することにより、キャリッジ61を主走査方向に沿って往復動させるように構成される。キャリッジ移動機構60の詳細構成については、
図2を用いて後述する。
【0019】
CRモータ71は、直流モータにより構成される。モータ駆動回路73は、印刷コントローラ30から入力される操作量Uに対応する駆動電力をCRモータ71に供給して、CRモータ71を駆動するように構成される。具体的には、モータ駆動回路73は、操作量Uに対応する駆動電流でCRモータ71を駆動する。
【0020】
エンコーダ75は、主走査方向におけるキャリッジ61の変位に応じたエンコーダ信号を出力するリニアエンコーダである。信号処理回路77は、エンコーダ75から入力されるエンコーダ信号に基づき、主走査方向におけるキャリッジ61の位置X及び速度Vを検出する。速度Vは、例えばエンコーダ信号の隣接する二つの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ間の時間間隔の逆数として検出される。信号処理回路77により検出されたキャリッジ61の位置X及び速度Vは、印刷コントローラ30に入力される。
【0021】
印刷コントローラ30は、メインコントローラ10からの指令に従うキャリッジ61の移動制御を実現するように、信号処理回路77から入力されるキャリッジ61の位置X及び速度Vに基づき、CRモータ71に対する操作量Uを決定し、CRモータ71を制御する。
【0022】
CRモータ71の制御は、具体的には、印刷コントローラ30が備えるモータコントローラ100によって実現される。モータコントローラ100の詳細構成については、
図4-6を用いて後述する。
【0023】
印刷コントローラ30は更に、信号処理回路77から入力されるキャリッジ61の位置Xに基づき、メインコントローラ10からの指令に従うインクの吐出制御を実現するための制御信号を、ヘッド駆動回路55に入力する。これにより、用紙Qには、印刷対象の画像を用紙Qに形成するためのインクが記録ヘッド50から吐出される。
【0024】
搬送コントローラ40は、メインコントローラ10からの指令に従って、PFモータ91を制御することにより、用紙Qの搬送を制御する。画像形成システム1は、用紙Qの搬送に関わる構成要素として、用紙搬送機構80と、PFモータ91と、モータ駆動回路93と、エンコーダ95と、信号処理回路97とを更に備える。
【0025】
用紙搬送機構80は、搬送ローラ81を備える。用紙搬送機構80は、PFモータ91からの動力を受けて搬送ローラ81を回転させることにより、用紙Qを主走査方向とは直交する副走査方向に搬送する。これにより、用紙搬送機構80は、記録ヘッド50の動作に合わせて、用紙Qを副走査方向に送り出す。
【0026】
PFモータ91は、直流モータにより構成される。モータ駆動回路93は、搬送コントローラ40から入力される操作量に従う駆動電流をPFモータ91に印加し、PFモータ91を駆動する。エンコーダ95は、PFモータ91又は搬送ローラ81の回転軸に配置されて、PFモータ91又は搬送ローラ81の回転に応じたエンコーダ信号を出力するロータリエンコーダである。
【0027】
信号処理回路97は、エンコーダ95から入力されるエンコーダ信号に基づき、搬送ローラ81の回転量及び回転速度を検出する。信号処理回路97により検出された回転量及び回転速度は、搬送コントローラ40に入力される。搬送コントローラ40は、信号処理回路97から入力される回転量及び回転速度に基づき、PFモータ91に対する操作量を決定して、PFモータ91を制御する。これにより、搬送コントローラ40は、搬送ローラ81による用紙Qの搬送を制御する。
【0028】
キャリッジ移動機構60は、
図2に示すように、キャリッジ61に加えて、ベルト機構65と、ガイドレール67,68とを備える。ベルト機構65は、主走査方向に配列された駆動プーリ651及び従動プーリ653と、駆動プーリ651と従動プーリ653との間に巻回されたベルト655とを備える。
【0029】
ベルト655には、キャリッジ61が固定される。ベルト機構65では、駆動プーリ651がCRモータ71からの動力を受けて回転し、ベルト655及び従動プーリ653が、駆動プーリ651の回転に伴って、従動回転する。
【0030】
ガイドレール67,68は、主走査方向に沿って延設され、互いに副走査方向に離れた位置に配置される。ベルト機構65は、ガイドレール67に配置される。ガイドレール67,68には、例えば主走査方向に沿って延びる凸状の壁(図示せず)がキャリッジ61の移動方向を主走査方向に規制するために形成される。
【0031】
キャリッジ61は、このガイドレール67,68によって移動方向を規制されながら、ベルト655の回転に連動して、ガイドレール67,68上を主走査方向に沿って移動し変位する。記録ヘッド50は、キャリッジ61の移動に伴って、主走査方向に移動する。
【0032】
エンコーダ75は、エンコーダスケール75Aと、光学センサ75Bと、を備える。エンコーダスケール75Aは、主走査方向に沿ってガイドレール67に配置される。光学センサ75Bは、キャリッジ61に搭載される。エンコーダ75は、エンコーダスケール75Aと光学センサ75Bとの間の相対位置の変化に応じたエンコーダ信号を信号処理回路77に入力する。
【0033】
搬送ローラ81は、記録ヘッド50の副走査方向上流において、主走査方向に対して平行に配置される。搬送ローラ81は、PFモータ91からの動力を受けて回転し、上流から搬送されてくる用紙Qを、副走査方向下流に搬送する。
【0034】
続いて、印刷対象の画像データを受信すると、メインコントロ―ラ10が実行する印刷制御処理の詳細を、
図3を用いて説明する。印刷コントローラ30及び搬送コントローラ40は、印刷制御処理におけるメインコントローラ10からの指令に基づき、キャリッジ61の移動制御、インクの吐出制御、及び、用紙Qの搬送制御を行う。
【0035】
印刷制御処理を開始すると、メインコントローラ10は、用紙Qの頭出し処理を実行する(S110)。頭出し処理において、メインコントローラ10は、用紙搬送機構80を通じて、用紙Qにおける印刷対象領域の先頭が記録ヘッド50下方に到達する位置まで、用紙Qを副走査方向に搬送するように、搬送コントローラ40に指令入力する。
【0036】
更に、メインコントローラ10は、ホームポジション(詳細後述)に位置するキャリッジ61を、スタート地点まで移動させる(S120)。スタート地点は、用紙Qにおける印刷対象領域の主走査方向先頭から上流に所定距離離れた地点であり得る。
【0037】
その後、メインコントローラ10は、1パス分の画像形成動作を実現するための画像形成処理を実行する(S130)。ここでいう「1パス分の画像形成動作」とは、キャリッジ61を主走査方向に折返し地点まで片道移動させると共に、その移動過程で記録ヘッド50にインクを吐出させることにより、用紙Qに画像を形成する動作のことを言う。
【0038】
周知のように、インクジェットプリンタでは、1パス分の画像形成動作と、用紙Qの副走査方向への搬送動作と、の繰返しにより、用紙Qの全体に印刷対象の画像データに基づく画像が形成される。
【0039】
画像形成処理において、メインコントローラ10は、速度プロファイル及び目標停止位置を、印刷コントローラ30に入力することによって、印刷コントローラ30に速度プロファイルに従う目標停止位置までのキャリッジ61の移動制御を指令する。
【0040】
速度プロファイルは、折返し地点までの目標速度軌跡Pvに対応し、キャリッジ61が停止するまでの各時点の目標速度に対応する速度指令値Vrの軌跡を示す。速度プロファイルは、速度指令値Vrの時系列データであってもよいし、速度指令値Vrを定義する時間関数であってもよい。
【0041】
印刷コントローラ30には、速度指令値Vrの一階時間微分に対応する各時点の加速度指令値Arを示す加速度プロファイルが更に入力されてもよいし、加速度指令値Arの一階時間微分に対応する各時点の躍度指令値Yrを示す躍度プロファイルが更に入力されてもよい。
【0042】
メインコントローラ10は更に、移動制御によるキャリッジ61の主走査方向への移動過程で用紙Qに形成されるべき画像データを印刷コントローラ30に入力し、画像データに従うインクの吐出制御を、印刷コントローラ30に指令する。
【0043】
これにより、メインコントローラ10は、上記1パス分の画像形成動作を実現するための、キャリッジ61の移動制御とそれに同期したインクの吐出制御を、印刷コントローラ30に実行させる。
【0044】
S130での画像形成処理による1パス分の画像形成動作が終了すると、メインコントローラ10は、用紙一頁分の画像形成動作が完了したか否かを判断する(S140)。ここで、一頁分の画像形成動作が完了していないと判断すると(S140でNo)、メインコントローラ10は、用紙送出処理を実行する(S150)。
【0045】
用紙送出処理において、メインコントローラ10は、搬送コントローラ40に対する指令入力により、搬送コントローラ40に、用紙Qを所定距離、副走査方向下流に搬送させるための用紙Qの搬送制御を実行させる。ここでの所定距離は、S130における「1パス分の画像形成動作」によって用紙Qに形成される画像の副走査方向の長さに対応する。
【0046】
S150での処理を終えると、メインコントローラ10は、処理をS130に戻し、キャリッジ61の移動方向を逆方向に設定した画像形成処理を実行する。この画像形成処理では、前回の画像形成処理により折返し地点で停止したキャリッジ61を、次の折返し地点まで移動するためのキャリッジ61の移動制御、及び、その過程でのインクの吐出制御を、印刷コントローラ30に指令する。
【0047】
S140において、用紙一頁分の画像形成動作が完了したと判断すると、メインコントローラ10は、排紙処理を実行する(S180)。排紙処理において、メインコントローラ10は、搬送コントローラ40に対する指令入力により、用紙搬送機構80を通じて用紙Qを図示しない排紙トレイに排出するための、用紙Qの搬送制御を搬送コントローラ40に実行させる。
【0048】
更に、メインコントローラ10は、次頁の画像データがあるか否かを判断する(S190)。次頁の画像データがあると判断すると(S190でYes)、メインコントローラ10は、処理をS110に戻して、用紙Qの頭出し処理を実行し、更には、頭出しされた用紙Qに対する一連の処理(S120-S150,S180)を実行することにより、次頁の画像形成を、同様に実行する。
【0049】
S190において、次頁の画像データがないと判断すると(190でNo)、メインコントローラ10は、印刷コントローラ30に対する指令入力により、印刷コントローラ30に、ホームポジションまでのキャリッジ61の移動制御を実行させる(S200)。このようにして、キャリッジ61をホームポジションまで移動させる。その後、メインコントローラ10は、印刷制御処理を終了する。
【0050】
続いて、メインコントローラ10からの指令を受けて動作する印刷コントローラ30が備えるモータコントローラ100の構成を説明する。
図4に示すように、モータコントローラ100は、指令生成器110と、速度制御器120と、積分器130と、位置制御器140と、切替器150とを備える。
【0051】
指令生成器110は、速度プロファイルに従って、実現されるべきキャリッジ61の速度、加速度、及び躍度を指定する速度指令値Vr、加速度指令値Ar、及び躍度指令値Yrを出力するように構成される。速度指令値Vr、加速度指令値Ar、及び躍度指令値Yrは、制御周期に対応する時間間隔で指令生成器110から出力される。
【0052】
加速度指令値Arは、速度指令値Vrの一階時間微分に対応し、躍度指令値Yrは、加速度指令値Arの一階時間微分に対応する。加速度指令値Ar及び躍度指令値Yrのそれぞれは、メインコントローラ10から提供される加速度プロファイル及び躍度プロファイルに従って出力され得る。
【0053】
速度制御器120は、信号処理回路77によって検出されたキャリッジ61の速度Vと、指令生成器110から入力される速度指令値Vr、加速度指令値Ar及び躍度指令値Yrとに基づいて、これらの指令値Vr,Ar,Yrに対応する速度、加速度、及び躍度でキャリッジ61を移動させるための操作量Uvを算出し、算出した操作量Uvを出力する。
【0054】
積分器130は、指令生成器110から入力される速度指令値Vrを時間積分することにより算出した位置指令値Xrを出力するように構成される。位置制御器140は、積分器130から入力される位置指令値Xrに基づいて、位置指令値Xrに対応する位置にキャリッジ61を制御するための操作量Upを算出し、算出した操作量Upを出力する。
【0055】
切替器150は、指令生成器110からの切替信号に従って、速度制御器120からの操作量Uv及び位置制御器140からの操作量Upのうちの一方を、CRモータ71に対する操作量Uとして選択的に出力するように構成される。
【0056】
具体的には、切替器150は、切替信号がオフ信号であるとき、速度制御器120からの操作量Uvを、上記操作量Uとして選択的に出力し、切替信号がオン信号であるときには、位置制御器140からの操作量Upを、上記操作量Uとして選択的に出力する。
【0057】
操作量Uは、モータコントローラ100の出力に対応し、CRモータ71に印加すべき駆動電流を指定する電流指令値であり得る。モータコントローラ100は、上述の切替信号に従って、出力する操作量Uを、速度制御器120からの操作量Uvと位置制御器140からの操作量Upとの間で切り替えることにより、速度制御及び位置制御を切り替えて実行し、キャリッジ61の高精度な移動制御を実現する。
【0058】
図5Aに例示される速度制御器120は、減算器210と、ゲインアンプ220と、加算器230,240,250と、外乱オブザーバ290と、を備える。減算器210は、速度指令値Vrと検出されたキャリッジ61の速度Vとの偏差Ev=Vr-Vを出力する。偏差Evは、ゲインアンプ220においてゲインKvだけ増幅された後、ゲインアンプ220から出力される。
【0059】
ゲインアンプ220の出力Kv・Evは、加算器230,240を通って、加速度指令値Ar及び躍度指令値Yrが加算された操作量(Kv・Ev+Ar+Yr)に変換される。更に、操作量(Kv・Ev+Ar+Yr)は、加算器250において、外乱オブザーバ290で算出された外乱推定値dと加算される。加算後の操作量(Kv・Ev+Ar+Yr+d)が、速度制御器120から上述の操作量Uvとして出力される。
【0060】
外乱オブザーバ290は、
図5Bに例示されるように、ローパスフィルタ291,295と、逆モデル297と、減算器299とを備える。ローパスフィルタ291は、エンコーダ信号に基づき信号処理回路77により検出されたキャリッジ61の速度Vから高周波成分を除去し、除去後の速度Vを逆モデル297に入力する。逆モデル297は、高周波成分除去後の速度Vに基づいて、対応する操作量U
*を算出し、算出した操作量U
*を減算器299に入力する。
【0061】
逆モデル297は、制御入力uに対する制御出力yが、伝達関数Hを用いて式y=Huで表されるとき、式u=H-1yを満足する伝達関数H-1により表される演算モデルである。本実施形態によれば、制御入力uは、上述の操作量Uであり、制御出力yは、キャリッジ61の速度Vである。CRモータ71を用いた制御対象の運動は、剛体モデルで表すことができる。このとき逆モデルは、H-1=B・s(但しsはラプラス演算子)である。
【0062】
ローパスフィルタ295は、速度制御器120の出力である操作量Uvから高周波成分を除去し、除去後の操作量Uvを減算器299に入力する。減算器299は、この操作量Uvから、逆モデル297の出力である操作量U*を減算することにより、外乱推定値d=Uv-U*を算出し、加算器250に入力する。
【0063】
これにより速度制御器120は、速度指令値Vrに従うキャリッジ61の移動制御を実現するための外乱を考慮した操作量Uvを算出し、操作量Uvを切替器150に入力する。
【0064】
一方、
図6に例示される位置制御器140は、減算器410,430と、ゲインアンプ420,440と、加算器450と、疑似微分器460と、外乱オブザーバ470とを備える。
【0065】
疑似微分器460は、ハイパスフィルタに対応し、信号処理回路77により検出されたキャリッジ61の位置Xを疑似微分して、推定速度V*として出力する。位置制御の開始初期において、疑似微分に必要な位置Xの過去データがないとき、疑似微分器460は、エンコーダ信号に基づき検出された速度V又は速度指令値Vrを推定速度V*として出力するように構成され得る。
【0066】
外乱オブザーバ470は、速度制御器120の外乱オブザーバ290(
図5B参照)と同様に構成され、信号処理回路77により検出された速度Vに代えて、疑似微分器460から出力される推定速度V
*を用いて、更には、操作量Uvに代えて、位置制御器140の出力である操作量Upを用いて、外乱推定値d=Up-H
-1V
*を算出し、加算器450に入力する。
【0067】
減算器410は、積分器130から入力される位置指令値Xrと検出されたキャリッジ61の位置Xとの偏差Ep=Xr-Xを出力する。偏差Epは、ゲインアンプ420においてゲインKpだけ増幅される。
【0068】
減算器430は、ゲインアンプ420の出力Kp・Epから推定速度V*を減算して出力する。減算器430の出力(Kp・Ep-V*)は、ゲインアンプ440に入力される。ゲインアンプ440は、減算器430の出力(Kp・Ep-V*)をゲインKvだけ増幅する。
【0069】
加算器450は、ゲインアンプ440の出力Kv(Kp・Ep-V*)と外乱推定値dとを加算して出力する。この加算器450の出力{Kv(Kp・Ep-V*)+d}が、位置制御器140から上述の操作量Upとして出力される。これにより位置制御器140は、位置指令値Xrに従うキャリッジ61の移動を実現するための外乱を考慮した操作量Upを算出し、操作量Upを切替器150に入力する。
【0070】
また、位置指令値Xrは、積分器130により次のように生成される。積分器130には、指令生成器110から切替信号が入力される。積分器130は、切替信号がオフ信号からオン信号に切り替わった時点で、位置指令値Xrの初期値を、その時点で信号処理回路77により検出されているキャリッジ61の位置Xに設定し、当該初期値を出力する。すなわち、位置指令値Xrの初期値として位置制御開始時のキャリッジ61の現在位置を出力する。
【0071】
その後、積分器130は、速度指令値Vrの積分動作を、位置指令値Xrが目標停止位置に到達するまで繰返し、上記初期値に速度指令値Vrの積分値を加算した値を、位置指令値Xrとして出力する。積分器130は、位置指令値Xrが目標停止位置に到達した時点以降では、位置指令値Xrとして目標停止位置を出力するように動作する。
【0072】
切替信号のオン信号とオフ信号との間の切替は、指令生成器110が備える切替制御器115により実現される。切替制御器115は、
図7Aに示す切替制御処理を実行することにより、指令生成器110から出力される切替信号を切り替えるように構成される。
【0073】
切替制御器115は、モータコントローラ100がメインコントローラ10からの指令を受けて速度プロファイルに従うキャリッジ61の新たな移動制御を開始しようとする段階で
図7Aの切替制御処理を開始し、切替信号をオフ信号に設定する(S210)。
【0074】
これにより、キャリッジ61の移動制御開始時には、切替信号として指令生成器110からオフ信号が出力され、切替器150からは、速度制御器120からの操作量Uvが、CRモータ71に対する操作量Uとして出力される。
【0075】
その後、切替制御器115は、速度プロファイルから特定される減速開始タイミングが到来するまで待機し(S220)、減速開始タイミングが到来すると(S220でYes)、切替信号を、オン信号に設定する(S230)。その後、切替制御処理を終了する。
【0076】
S230での設定により、キャリッジ61の減速開始時点以降では、位置制御器140から出力される操作量Upが、切替器150からCRモータ71に対する操作量Uとして出力される。
【0077】
すなわち、切替信号は、
図7Bに示すように、速度プロファイルから特定される減速開始時までオフ信号として切替器150に入力され、減速開始時点以降では、オン信号として切替器150に入力される。
【0078】
切替器150は、この切替信号に基づき、CRモータ71に対する操作量Uとして、速度制御器120からの操作量Uv及び位置制御器140からの操作量Upを切り替えて出力する。これにより、キャリッジ61の移動制御は、
図8に示すように、減速開始時点で速度制御から位置制御に切り替えられる。
【0079】
すなわち、モータコントローラ100は、減速開始時点前には、目標速度軌跡Pvに対応する速度指令値Vrと検出されたキャリッジ61の速度Vとの偏差Ev=Vr-Vに基づく操作量UvでCRモータ71を制御することにより、キャリッジ61の速度Vを制御する。
図8上段に示される時間対速度のグラフには、太線により、目標速度軌跡Pvである速度指令値Vrの軌跡が例示される。
【0080】
モータコントローラ100は、減速開始時点以降では、目標速度軌跡Pvの積分に対応する位置指令値Xrと、検出されたキャリッジ61の位置Xと、の偏差Ep=Xr-Xに基づく操作量Upで、CRモータ71を制御することにより、キャリッジ61の位置Xを制御する。この位置指令値Xrに基づく位置制御により、キャリッジ61は、折返し地点に対応する目標停止位置で停止するように減速制御される。
図8下段に示される時間対位置のグラフには、太線により、目標位置軌跡Pxである位置指令値Xrの軌跡が示される。目標位置軌跡Pxは、目標速度軌跡Pvの積分に対応する。
【0081】
図8に示す目標速度軌跡Pvは、加速区間、定速区間、減速区間、及び停止区間を含む。目標速度軌跡Pvは、1パス分の画像形成動作において、記録ヘッド50からインクが吐出される画像形成区間が定速区間内に位置するようにメインコントローラ10によって設定され、対応する速度プロファイルが、メインコントローラ10からモータコントローラ100に入力される。
【0082】
インクの吐出を定速区間に限定するのは、記録ヘッド50から吐出されるインクの用紙Qへの着弾点を高精度に制御するためである。着弾点の高精度な制御のためには、キャリッジ61の速度の高精度な制御が必要である。このため、定速区間では、キャリッジ61が精度よく定速移動するように、速度制御によりキャリッジ61の移動制御が行われる。
【0083】
一方、キャリッジ61の折返し地点への停止時には、その停止地点からの次のキャリッジ61の移動制御が行われるために、目標停止位置にキャリッジ61が正確に停止するのが好ましい。このため、本実施形態では、キャリッジ61が折返し地点で停止する前後では、位置制御によりキャリッジ61の移動制御が行われる。
【0084】
特に、本実施形態では、記録ヘッド50にインク供給用のチューブ51Aが接続されており、キャリッジ61の移動に伴うチューブ51Aの湾曲に起因して、キャリッジ61に作用する負荷は一律ではない。
【0085】
速度制御のままキャリッジ61を折返し地点まで移動すると、湾曲によって上昇する高い負荷に起因して、目標停止位置より手前でキャリッジ61が停止又は後退してしまう可能性がある。本実施形態によれば、位置制御の実行により、このような負荷変動による停止精度悪化の影響を抑え、キャリッジ61を目標停止位置に高精度に停止及び保持する。
【0086】
図8において停止区間が含まれるように、位置制御器140における位置制御は、キャリッジ61が目標停止位置に到達した後も次のキャリッジ61の移動制御が開始されるまで続けられる。これにより、キャリッジ61が目標停止位置に停止した後、キャリッジ61が目標停止位置から後退する事象の発生は抑制される。
【0087】
モータコントローラ100は、キャリッジ61の移動制御が安定している定速区間の終了時、換言すれば減速開始時に、キャリッジ61の移動制御を、速度制御から位置制御に切り替える。この切替によれば、位置制御への切替初期に、キャリッジ61の挙動が不安定になるのを、減速開始後に切り替える場合よりも抑制することができる。すなわち、定速区間の速度制御によって、減速開始直前では、減速開始後に比べて、キャリッジ61の速度変化量、換言すれば速度に関する制御誤差が小さい。従って、減速開始時点から移動制御を速度制御から位置制御に切り替えると、減速開始時点より後で切り替える場合よりも、直前のキャリッジ61の速度の変化が切替直後の位置制御に及ぼす影響が小さくなる。従って、本実施形態によれば、速度制御から位置制御への切替を、従来よりも適切に実行することができる。
【0088】
特に、本実施形態によれば、速度制御から位置制御への切替時に挙動が不安定になるのを抑制するために、目標位置軌跡Pxを目標速度軌跡Pvの積分に基づいて設定し、目標位置の初期値を検出されたキャリッジ61の現在位置に設定する。
【0089】
従って、本実施形態によれば、キャリッジ61の往復動に関して、全体として高精度な移動制御が可能である。この高精度な移動制御の実現により、インクの吐出制御、特に着弾点の制御が高精度に実現され、用紙Qに形成される画像の品質は向上する。
【0090】
上述した速度制御器120及び位置制御器140を用いた速度制御及び位置制御は、画像形成を伴うキャリッジ61の往復動のプロセスにおいて実行される。メインコントローラ10からの指令(S200)に基づき、ホームポジションまでのキャリッジ61の移動制御が行われるとき、これらの制御とは別の微小移動制御が実行される。
【0091】
画像形成システム1では、キャッピング機構69が、
図9Aに示すように、ホームポジションに設けられている。ホームポジションは、キャリッジ61の主走査方向における移動可能範囲のうち、画像形成時にキャリッジ61が往復動する領域の外側に位置する。
【0092】
キャッピング機構69は、ガイドレール68に設けられた貫通孔68aから上方に突出するレバー69aと機械的に連結されており、レバー69aの移動に連動して、図示しないキャップを上方にリフトアップするように構成される。
【0093】
レバー69aは、キャリッジ61がホームポジションに近づくときに、キャリッジ61からの押圧力を受けて、キャップをリフトアップする方向に移動する。キャップは、キャリッジ61がホームポジションに配置された状態で、記録ヘッド50のノズル面を覆うように、最上位までリフトアップされる。
【0094】
微小移動制御は、キャリッジ61のホームポジションでの停止直前に、記録ヘッド50のノズル面がキャップと接触しながら摺動して、ノズル面が傷ついたりするのを抑制するために行われる。
【0095】
ホームポジションまでのキャリッジ61の移動過程では、ホームポジションから所定距離上流の微小移動制御の開始地点にキャリッジ61が到達するまで、速度制御によるキャリッジ61の移動制御が行われる。この速度制御は、例えば速度制御器120を用いて実現される。キャリッジ61が微小移動制御の開始地点に到達すると、微小移動制御が実行される。
【0096】
微小移動制御は、
図9Bに示すように、CRモータ71に対する操作量Uを基準値Ukから徐々に上げていき、信号処理回路77により検出されるキャリッジ61の位置Xが進路前方に単位量変化すると、操作量Uを基準値Ukまで戻すように下げ、再度、操作量Uを徐々に上げる動作を繰り返すことにより、ホームポジションまでキャリッジ61を微小移動させる制御である。単位量は、信号処理回路77により検出可能なキャリッジ61の位置Xの最小単位に対応する。
【0097】
図9Bの上段には、微小移動制御により、操作量Uが階段状に漸増する様子を、時間を示す横軸、操作量Uを示す縦軸を有するグラフで示す。
図9Bの下段には、キャリッジ61の位置変化を、
図9Bの上段と同じ時間軸を横軸に有し、キャリッジ61の位置を示す縦軸を有するグラフにより示す。
【0098】
特殊な位置制御と言うことができる上述の微小移動制御は、例えば、位置制御器140が微小移動制御の開始地点からは、位置指令値Xrと検出された位置Xとの偏差Epに基づく操作量Upの算出に代えて、上述した微小移動制御による操作量Uの算出動作を実行することにより、実現され得る。微小移動制御の開始地点は、減速開始地点よりもホームポジション側に位置すると理解されてよい。
【0099】
このように本実施形態の画像形成システム1は、用紙Qに対する画像形成のためにキャリッジ61を往復動させるときには、折返し地点に対応する目標停止位置で精度よくキャリッジ61を停止させるために、速度制御及び位置制御を切り替えて実行する。また、ホームポジションへのキャリッジ61の移動制御時には、微小移動制御を実行することにより、記録ヘッド50のノズル面を保護するように、キャリッジ61を移動する。従って、本実施形態によれば、キャリッジ61を適切に移動可能である。
【0100】
本実施形態に係る技術は特に、チューブの硬いUVインクジェットプリンタに適用されると有意義である。UVインクジェットプリンタでは、紫外線(UV)の照射により硬化するインクが用いられることから、インク供給のためのチューブ、すなわち
図1、
図2、及び
図9Aに示すチューブ51Aには、紫外線を遮断する能力を有したチューブが用いられる。このようなチューブは、紫外線遮断能力のないチューブよりも硬い。
【0101】
本実施形態の技術によれば、硬いチューブ51Aの湾曲によりキャリッジ61に大きな負荷が作用する場合でも、上述の速度制御から位置制御への切替によって、目標停止位置にキャリッジ61を高精度に停止及び維持可能である。
【0102】
[第二実施形態]
続いて、第二実施形態の画像形成システム1を説明する。但し、第二実施形態の画像形成システム1の大部分は、第一実施形態と同様に構成される。以下では、第二実施形態の画像形成システム1における第一実施形態とは異なる構成要素を選択的に説明し、同一の構成要素の説明を省略する。第一実施形態と同一符号が付された構成要素は、追加の説明がない限り、第一実施形態の対応する構成要素と同一であると理解されてよい。
【0103】
本実施形態の画像形成システム1では、キャリッジ61の減速区間においても、インクの吐出動作が実行され得る。印刷コントローラ30には、画像形成区間が定速区間だけでなく減速区間の一部まで続く速度プロファイルが入力され得る。
【0104】
減速区間で吐出されるインクの着弾点の制御のために、切替制御器115は、
図7Aに示す処理に代えて
図10に示す切替制御処理を実行する。切替制御器115は、モータコントローラ100がメインコントローラ10からの指令を受けて、速度プロファイルに従うキャリッジ61の新たな移動制御を開始しようとする段階で、
図10に示す切替制御処理を開始し、切替信号をオフ信号に設定する(S310)。
【0105】
その後、切替制御器115は、速度プロファイルから特定される減速開始タイミングが到来するまで待機する(S320)。減速開始タイミングにおいて(S320でYes)、切替制御器115は、今回の折返し地点までの移動過程におけるインクの吐出動作が現時点で終了しているかを判断する(S325)。
【0106】
減速開始タイミングまでに吐出動作が終了している場合(S325でYes)、切替制御器115は、減速開始タイミングで、切替信号をオン信号に設定する(S330)。減速開始タイミングまでに吐出動作が終了していない場合、切替制御器115は、吐出動作が終了するまで待機し(S325でNo)、吐出動作が終了したタイミングで(S325でYes)、切替信号をオン信号に設定する(S330)。その後、切替制御処理を終了する。
【0107】
こうした切替により、インクの吐出動作が、減速開始タイミングより前に終了している場合、CRモータ71に対する操作量Uは、第一実施形態と同様に、減速開始タイミングで、速度制御器120の操作量Uvから位置制御器140の操作量Upに切り替えられる。すなわち、キャリッジ61の移動制御は、減速開始タイミングで、速度制御から位置制御に切り替えられる。
【0108】
一方、インクの吐出動作が減速開始タイミングより前に終了していない場合、CRモータ71に対する操作量Uは、インクの吐出動作の終了タイミングで、速度制御器120の操作量Uvから位置制御器140の操作量Upに切り替えられる。すなわち、キャリッジ61の移動制御は、
図11に示すように吐出動作の終了タイミングで、速度制御から位置制御に切り替えられる。
【0109】
図11に示すグラフは、
図8に示すグラフに対応する第二実施形態の目標速度軌跡Pv及び目標位置軌跡Px2を示す。
図11から理解できるように、積分器130による積分動作は、切替信号がオフ信号からオン信号に切り替えられる吐出動作の終了タイミングから開始され、位置指令値Xrは、この終了タイミングにおいて信号処理回路77により検出されたキャリッジ61の位置Xを初期値とした目標速度軌跡Pvの積分として算出され、位置制御器140に入力される。
【0110】
本実施形態によれば、モータコントローラ100は、減速が開始されても、インクの吐出動作が終了する画像形成区間の終了までは、キャリッジ61の移動制御を速度制御に維持し、位置制御に切り替えない。画像形成システム1は、例えば小型化のために、キャリッジ61の減速区間でインクの吐出を行うように構成され得るが、本実施形態によれば、減速区間で用紙Qに形成される画像の品質が低下するのを抑制することができる。
【0111】
[第三実施形態]
続いて、第三実施形態の画像形成システム1を説明する。但し、第三実施形態の画像形成システム1の大部分は、第一実施形態と同様に構成される。以下では、第三実施形態の画像形成システム1における第一実施形態とは異なる構成要素を選択的に説明し、同一の構成要素の説明を省略する。第一実施形態と同一符号が付された構成要素は、追加の説明がない限り、第一実施形態の対応する構成要素と同一であると理解されてよい。
【0112】
本実施形態の画像形成システム1では、往復動するキャリッジ61の往路及び復路のうち、往路のみでインクの吐出による用紙Qへの画像形成が行われ、復路では、用紙Qへの画像形成が行われない。
【0113】
メインコントローラ10は、印刷対象の画像データを受信すると、
図3に示す印刷制御処理に代えて、
図12に示す印刷制御処理を開始する。印刷制御処理を開始すると、メインコントローラ10は、S110,S120での処理と同様に、用紙Qの頭出し処理を実行し(S410)、キャリッジ61を、スタート地点まで移動させる(S420)。
【0114】
その後、メインコントローラ10は、印刷コントローラ30の制御モードを第一制御モードに設定し(S430)、1パス分の画像形成動作を実現するための画像形成処理を実行する(S440)。
【0115】
画像形成処理において、メインコントローラ10は、S130での処理と同様に、速度プロファイルを印刷コントローラ30に入力することによって、印刷コントローラ30に第一制御モードでの速度プロファイルに従うキャリッジ61の移動制御を指令する。メインコントローラ10は更に、キャリッジ61の移動過程で用紙Qに形成されるべき画像データを印刷コントローラ30に入力し、画像データに従うインクの吐出制御を、印刷コントローラ30に指令する。
【0116】
これにより、メインコントローラ10は、上記1パス分の画像形成動作を実現するための、第一制御モードによるキャリッジ61の移動制御とそれに同期したインクの吐出制御を、印刷コントローラ30に実行させる。
【0117】
本実施形態によれば、印刷コントローラ30が第一制御モードで動作し、モータコントローラ100が往路におけるキャリッジ61の移動制御を行うとき、
図13上段に示すように、モータコントローラ100が、減速開始前だけでなく減速開始後にも、キャリッジ61を速度制御する。減速開始前後での速度制御の維持は、切替制御器115が
図7Aに示す処理に代えて、
図14に示す切替制御処理を実行することにより実現される。
【0118】
すなわち、切替制御器115は、第一実施形態と同様に、移動制御の開始時には、CRモータ71に対する操作量Uとして、速度制御器120からの操作量Uvが出力されるように、切替信号をオフ信号に設定する(S510)。
【0119】
その後、切替制御器115は、減速開始タイミングが到来するまで待機し(S520)、減速開始タイミングが到来すると(S520でYes)、設定されている制御モードが第二制御モードであるか否かを判断する(S525)。
【0120】
設定されている制御モードが第二制御モードであると判断すると(S525でYes)、切替制御器115は、上記操作量Uとして、位置制御器140からの操作量Upが出力されるように、切替信号をオン信号に設定する(S530)。その後、切替制御処理を終了する。
【0121】
一方、切替制御器115は、上記設定されている制御モードが第二制御モードではなく第一制御モードであると判断すると(S525でNo)、切替信号をオフ信号に保持したまま、切替制御処理を終了する。
【0122】
このようにS440では、キャリッジ61を目標停止位置で停止させる前に、キャリッジ61の移動制御を位置制御に切り替える動作が実行されない。これは、インクの吐出による用紙Qへの画像形成は、キャリッジ61が往路を移動するときのみ実行され、復路では実行されないためである。往路においてキャリッジ61が折返し地点まで移動し、続く復路においてキャリッジ61が次の折返し地点まで移動する過程では、インクの吐出動作が実行されない。
【0123】
復路では、キャリッジ61の移動に伴うインクの着弾点の制御が不要であり、復路の移動開始地点に対応する、直前の往路でのキャリッジ61の停止地点は、目標停止位置に高精度に一致している必要もない。このため、本実施形態では、往路の移動制御過程において、減速開始後にもキャリッジ61を速度制御する。すなわち、キャリッジ61は、減速開始時点まで、定速移動するように速度制御され、減速開始時点からも、目標速度軌跡Pvに従ってキャリッジ61が減速し折返し地点で停止するように、速度制御される。
【0124】
画像形成処理(S440)による1パス分の画像形成動作が終了すると、メインコントローラ10は、用紙一頁分の画像形成動作が完了したか否かを判断する(S450)。ここで否定判断すると(S450でNo)、メインコントローラ10は、S460に移行し、印刷コントローラ30の制御モードを第二制御モードに切り替えた後、復路移動処理を実行する(S470)。
【0125】
復路移動処理において、メインコントローラ10は、S150での処理と同様、用紙Qを所定距離、副走査方向下流に搬送させるための用紙Qの搬送制御を実行するように、搬送コントローラ40に指令入力する。
【0126】
メインコントローラ10は更に、キャリッジ61の移動方向を、S440における正方向から逆方向に切り替えて、次の1パス分の画像形成動作におけるキャリッジ61の移動開始地点までキャリッジ61が移動するように、印刷コントローラ30に対してキャリッジ61の移動制御を指令する(S470)。
【0127】
すなわち、メインコントローラ10は、次の往路における1パス分の画像形成動作に適切な折返し地点でキャリッジ61が停止する速度プロファイルを生成し、この速度プロファイルを目標停止位置と共に印刷コントローラ30に入力することによって、印刷コントローラ30に速度プロファイルに従うキャリッジ61の移動制御を指令する。
【0128】
この移動制御の過程において、切替制御器115では、S525での肯定判断により、切替信号が減速開始タイミングでオン信号に設定される。これにより、
図13中段に示すように、減速開始時点以降では、CRモータ71に対する操作量Uとして、位置制御器140からの操作量Upが出力され、キャリッジ61が位置制御される。すなわち、キャリッジ61は、減速開始時点まで、定速移動するように速度制御され、減速開始時点から、目標位置軌跡Pxに従ってキャリッジ61が減速し折返し地点で停止するように、位置制御される。この位置制御により、キャリッジ61は、目標停止位置に精度よく停止した状態に保持される。
【0129】
S470での処理を終えると、メインコントローラ10は、印刷コントローラ30の制御モードを第一制御モードに切り替えて(S430)、
図13下段に示すように、画像形成処理を実行する(S440)。
【0130】
そして、用紙一頁分の画像形成動作が完了すると(S450deYes)、メインコントローラ10は、排紙処理を実行(S480)し、次頁の画像データがあるか否かを判断する(S490)。
【0131】
次頁の画像データがあると判断すると(S490でYes)、メインコントローラ10は、処理をS410に戻して、用紙Qの頭出し処理を実行する。次頁の画像データがないと判断すると(490でNo)、メインコントローラ10は、キャリッジ61をホームポジションまで移動させるための処理を実行し(S500)、印刷制御処理を終了する。
【0132】
以上に説明した第三実施形態の画像形成システム1によれば、復路におけるキャリッジ61の移動制御過程では、続く往路で1パス分の画像形成動作の実行予定があることから、第二制御モードにより、減速開始と共に速度制御から位置制御への切替が行われて、次の1パス分の画像形成動作に備えた高精度なキャリッジ61の停止動作が実現される。
【0133】
往路の移動制御過程では、続く復路で1パス分の画像形成動作の実行予定がなく、インクの吐出による用紙Qへの画像形成が行われないことから、第一制御モードにより、位置制御への切替が行われずに、速度制御により高速にキャリッジ61が折返し地点まで移動される。
【0134】
このように本実施形態では、インクの吐出動作の実行予定に合わせて、吐出動作を伴うキャリッジ61の移動制御の始点となる位置に、キャリッジ61を停止させる復路の移動制御では、速度制御から位置制御への切替を行い、それ以外の場合には、切替を行わずに速度制御を維持する。このような状況に応じた切替は、画質及びスループットの点で高性能な画像形成システム1を構築するのに役立つ。また、位置制御では、モータ駆動音が、速度制御と比較して大きい傾向がある。従って、上記切替は、駆動音の低減にも役立つ。
【0135】
変形例として、位置制御器140は、キャリッジ61が目標停止位置に到達してから一定時間経過した後に、疑似微分器460の出力に対して定数ゲインをかけることにより、疑似微分器460から出力される速度推定値V*の値を小さくする、又は、ゼロにするように、構成されてもよい。こうした処理により、キャリッジ61が目標停止位置に停止した後に、速度推定値V*の変動に起因してキャリッジ61の微小振動が生じる可能性を小さくすることができる。
【0136】
[その他]
本開示が、上述の例示的実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採り得ることは言うまでもない。
【0137】
例えば、本開示の技術は、シート状の用紙Qに画像を形成する画像形成システム1に限定されない。例えば樹脂シートや衣服に画像を形成するシステムに、本開示の技術は適用されてもよい。インク吐出以外手法で対象物を加工するシステムに、本開示の技術は適用されてもよい。加工の例には、画像形成以外の対象物の表面加工や対象物の切断などが含まれる。
【0138】
記録ヘッド50及びキャリッジ61の移動を制御するためのコントローラとしての機能は、メインコントローラ10及び印刷コントローラ30の組合せ、具体的には、プロセッサ11とASICとの組合せに限定されない。例えば、一つ又は複数のプロセッサによるソフトウェア制御のみで、記録ヘッド50及びキャリッジ61の移動制御が実現されてもよい。この場合、印刷コントローラ30及び搬送コントローラ40としての機能は、メインコントローラ10に統合され得る。当該機能をプロセッサ11に実現させるためのコンピュータプログラムがメモリ13に記録され得る。逆に、記録ヘッド50及びキャリッジ61の移動制御は、一つ又は複数のASICによるハードウェア制御のみで実現されてもよい。
【0139】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0140】
1…画像形成システム、10…メインコントローラ、30…印刷コントローラ、40…搬送コントローラ、50…記録ヘッド、51…インクタンク、51A…チューブ、55…ヘッド駆動回路、60…キャリッジ移動機構、61…キャリッジ、65…ベルト機構、69…キャッピング機構、71…CRモータ、73…モータ駆動回路、75…エンコーダ、77…信号処理回路、80…用紙搬送機構、91…PFモータ、93…モータ駆動回路、95…エンコーダ、97…信号処理回路、100…モータコントローラ、110…指令生成器、115…切替制御器、120…速度制御器、130…積分器、140…位置制御器、150…切替器、210…減算器、220…ゲインアンプ、230,240,250…加算器、290…外乱オブザーバ、410,430…減算器、420,440…ゲインアンプ、450…加算器、460…疑似微分器、470…外乱オブザーバ。