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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129087
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】熱交換器のヘッダタンク
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20220829BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
F28D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027646
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】青山 忠道
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA10
3L103BB39
3L103BB40
3L103CC02
3L103CC22
3L103DD08
3L103DD22
3L103DD34
3L103DD43
(57)【要約】
【課題】 熱交換器のヘッダタンクにおいて、そのヘッダタンクの内部が区画されたものに関し、特に、区画されたことによって生じる温度差に起因する熱応力を低減すること。
【解決手段】 流体の流通路を複数に区画する仕切部7が形成された熱交換器のヘッダタンクにおいて、タンク本体4にはヘッダタンク6内を区画する複数の遮蔽板8が互いに離間して形成され、それらの複数の遮蔽板8が一群の前記仕切部7を構成し、前記遮蔽板8がヘッダプレート5から離間し、そのヘッダプレート5との間に間隙9を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部(1)とその底部(1)の周縁に周壁部(2)が形成されており、一端に開口部(3)を有する箱状のタンク本体(4)と、
前記タンク本体(4)の開口部(3)が被嵌されるヘッダプレート(5)と、
を有するヘッダタンク(6)が形成されており、
そのヘッダタンク(6)内の長手方向の中間位置に、流体の流通路を複数に区画する仕切部(7)が形成された熱交換器のヘッダタンクにおいて、
前記タンク本体(4)には、ヘッダタンク(6)内を区画する複数の遮蔽板(8)が互いに離間して形成されており、
前記複数の遮蔽板(8)が、一群の前記仕切部(7)を構成しており、
前記遮蔽板(8)は前記ヘッダプレート(5)から離間しており、そのヘッダプレート(5)との間に間隙(9)を有することを特徴とする熱交換器のヘッダタンク。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器のヘッダタンクにおいて、
仕切部(7)の中央に位置する遮蔽板(8a)と前記ヘッダプレート(5)との間隙(9)の間隔は、
仕切部(7)の端に位置する遮蔽板(8b)と前記ヘッダプレート(5)との間隙(9)の間隔よりも小さいことを特徴とする熱交換器のヘッダタンク。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換器のヘッダタンクにおいて、
仕切部(7)の両端に位置する各遮蔽板(8b)と前記ヘッダプレート(5)との間隙(9)の間隔は、
仕切部(7)の中央に位置する遮蔽板(8a)と前記ヘッダプレート(5)との間隙(9)の間隔よりも小さいことを特徴とする熱交換器のヘッダタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器のヘッダタンクにおいて、そのヘッダタンクの内部が区画されたものに関し、特に、区画されたことによって生じる温度差に起因する熱応力の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリット自動車には、エンジン冷却用のラジエータと、電動機やインバータなどの補機類の冷却用のラジエータが設けられる。これら2つのラジエータはスペース効率などから、単一の熱交換器内を区画し2つの異なる系統の流体が流通する熱交換器として構成することが多い。
電気自動車では、電動機系冷却用のラジエータと電池冷却用のラジエータとが複合された熱交換器として構成される。
【0003】
下記特許文献1に記載の熱交換器は、上記構成を有する熱交換器の1例が示されている。この熱交換器は、タンクにコア部を構成する複数のチューブが接合されると共に、タンク内には流体の流通路を2つに区画する1つの仕切板が配置されている。仕切板で区画された各タンクの区画部分には、温度の異なる2つの流体が流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-083725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の仕切板は、同文献の図2の如く、区画部分において熱交換器のコアと接合されているので、仕切板の剛性が熱交換器のコアの熱変形を拘束し、そのことによって熱交換器のコアに生じる熱応力が高まる問題がある。
また、1つの仕切板で区画されているので、隣接する区画の間の距離が短く、その区間の温度変化を十分に抑制すること、すなわち、その温度変化に起因する熱応力を十分に抑制することが困難となる。
そこで、本発明は、ヘッダタンクが区画されたことによって生じる熱応力の低減を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、底部1とその底部1の周縁に周壁部2が形成されており、一端に開口部3を有する箱状のタンク本体4と、
前記タンク本体4の開口部3が被嵌されるヘッダプレート5と、
を有するヘッダタンク6が形成されており、
そのヘッダタンク6内の長手方向の中間位置に、流体の流通路を複数に区画する仕切部7が形成された熱交換器のヘッダタンクにおいて、
前記タンク本体4には、ヘッダタンク6内を区画する複数の遮蔽板8が互いに離間して形成されており、
前記複数の遮蔽板8が、一群の前記仕切部7を構成しており、
前記遮蔽板8は前記ヘッダプレート5から離間しており、そのヘッダプレート5との間に間隙9を有することを特徴とする熱交換器のヘッダタンクである。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の熱交換器のヘッダタンクにおいて、
仕切部7の中央に位置する遮蔽板8aと前記ヘッダプレート5との間隙9の間隔は、
仕切部7の端に位置する遮蔽板8bと前記ヘッダプレート5との間隙9の間隔よりも小さいことを特徴とする熱交換器のヘッダタンクである。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の熱交換器のヘッダタンクにおいて、
仕切部7の両端に位置する各遮蔽板8bと前記ヘッダプレート5との間隙9の間隔は、
仕切部7の中央に位置する遮蔽板8aと前記ヘッダプレート5との間隙9の間隔よりも小さいことを特徴とする熱交換器のヘッダタンクである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の構成においては、ヘッダプレート5から離間した複数の遮蔽板8で一群の仕切部7を構成したことにより、熱交換器20のコア17の熱変形は遮蔽板8によって拘束されないので、その拘束に起因する熱応力の発生は防止される。
また、複数の遮蔽板8で一群の仕切部7を構成したことにより、その仕切部7内に位置するチューブ15への流量が減少し、その仕切部7が温度変化の緩衝領域となるので、隣接する区画部分10、11の間の温度変化が穏やかになり、その温度変化に起因する熱応力は抑制される。
【0010】
請求項2に記載の構成においては、請求項1の構成に加えて、仕切部7の中央に位置する遮蔽板8aとヘッダプレート5との間隙9の間隔を、仕切部7の端に位置する遮蔽板8bとヘッダプレート5との間隙9の間隔よりも小さくしたことにより、中央に位置する遮蔽板8aが主に仕切として機能し、端に位置する遮蔽板8bは主に仕切部7内のチューブ15の流量を減少する手段として機能し、その仕切部7が温度変化の緩衝領域となるので、隣接する区画部分10、11の間の温度変化が穏やかになり、その温度変化に起因する熱応力は抑制される。
【0011】
請求項3に記載の構成においては、請求項1の構成に加えて、仕切部7の両端に位置する各遮蔽板8bとヘッダプレート5との間隙9の間隔を、仕切部7の中央に位置する遮蔽板8aとヘッダプレート5との間隙9の間隔よりも小さくしたことにより、両端に位置する遮蔽板8bが主に仕切および仕切部7内のチューブ15の流量を減少する手段として機能し、また、両端の間に位置する遮蔽板は仕切および仕切部7内のチューブ15の流量を減少する手段の補助として機能し、その仕切部7が温度変化の緩衝領域となるので、隣接する区画部分10、11の間の温度変化が穏やかになり、その温度変化に起因する熱応力は抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施例のヘッダタンクを用いた熱交換器を示す断面図。
図2図1におけるII-II矢視断面図。
図3】本発明の第2実施例のヘッダタンクを示す要部断面図。
図4】本発明の第3実施例のヘッダタンクを示す要部断面図。
図5】本発明の第1実施例のヘッダタンクを用いた他の例の熱交換器を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施例のヘッダタンクを用いた熱交換器を示す断面図であり、図2は、図1のII-II矢視断面図である。
【0014】
図1に記載の熱交換器20は、コア17とそのコア17の両端に配置される一対のヘッダタンク6、21により構成されている。
コア17は、複数のチューブ15が並列され、各チューブ15の間にフィン16が配置されてコア17を構成している。各チューブ15の両端部はろう付けなどでヘッダタンク6、ヘッダタンク21に接合されており、各チューブ15と各ヘッダタンク6、21の内部が互いに連通する。
【0015】
図1において上下に位置するヘッダタンク6、21は、タンク本体4とヘッダプレート5からなる。タンク本体4は、底部1とその周縁に立ち上げられた周壁部2とからなる長い箱状に形成されており、その一端に、底部1と対向する開口部3を有する。タンク本体4の開口部3は、ヘッダプレート5に被嵌される。ヘッダプレート5は、浅い皿状に形成されており、その底部にはチューブが挿通される挿通孔がチューブの並列方向に並列されている。そのヘッダプレート5の底部の周縁には、環状のシール材12が配置されている。タンク本体4は、そのシール材12を介して、ヘッダプレート5に被嵌される。
ヘッダタンク6の長手方向の中間部の内部には後述する仕切部7が形成されており、仕切部7の左側が第1の区画部分10に、右側が第2の区画部分11に区画されている。また、ヘッダタンク21の長手方向の中間部の内部には仕切22が形成されている。
【0016】
一例として、この熱交換器20をハイブリッド自動車用として使用する場合、第1の流体23としてエンジン冷却用の冷却水が、ヘッダタンク6の第1の区画部分10側に取付けられた入口部18から流入し、各チューブ15へ流入する。第2の流体24として電動機などの補機類冷却用の冷却水は、ヘッダタンク6の第2の区画部分11側に取付けられた入口部18から流入し、各チューブ15へ流入する。
【0017】
そして、チューブ15に流通した各流体23、24は、各チューブ15の外側を流通する第3の流体(例えば、空気流等)によって冷却され、温度低下した各流体23、24が下部に位置するヘッダタンク21に流入する。そのヘッダタンク21も仕切22により仕切られているため、第1の流体23はヘッダタンク21の第1の区画部分10側に取付けられた出口部19から排出され、第2の流体24はヘッダタンク21の第2の区画部分11側に取付けられた出口部19から排出される。
【0018】
本発明の特徴部分は、図1において上部に位置するヘッダタンク6の内部構造にある。
このタンク本体4には、ヘッダタンク6の長手方向の中間部で、その内部を複数に区画する仕切部7が形成されている。
この仕切部7において、複数の遮蔽板8がヘッダタンク6の長手方向に互いに離間して形成されており、それらの複数の遮蔽板8が一群の仕切部7を構成している。
各遮蔽板8は方形な平板状で、タンク本体4と一体的に形成されており、タンク本体4の底部1からヘッダプレート5側に向けて突出している。そして、それらの各遮蔽板8は、図1図2に示す如く、ヘッダプレート5から離間しており、それらの間に間隙9が形成されている。
【0019】
さらに、この例では、図1に示す如く、合計7枚の遮蔽板8により一群の仕切部7が形成されており、遮蔽板8aとヘッダプレート5との間隙9の間隔が一番小さく形成されており、遮蔽板8bへ行くにつれ、その間隙9の間隔が大きくなっている。この中央に位置する遮蔽板8aが主に仕切として機能し、その他の遮蔽板8b等は主に仕切部7内のチューブ15の流量を減らすことにより各流体23、24の温度差に起因する温度変化を穏やかにする緩衝領域として機能する。
このように複数の遮蔽板8で一群の仕切部7を構成したことにより、その仕切部7によってヘッダタンク6の内部が区画されるとともに、仕切部7における温度変化によって生じる熱応力が抑制される。
さらに、先述のとおり、各遮蔽板8は、ヘッダプレート5から離間しているので、熱交換器20のコア17の熱変形は遮蔽板8によって拘束されず、その拘束に起因する熱応力が抑制される。
【0020】
図1に示す例を採用することが好適であるが、これに限定されるものではなく、遮蔽板8aとヘッダプレート5との間隙9の間隔が一番小さく形成されていればよい。例えば、その他の遮蔽板8の間隙9の間隔は、遮蔽板8a以外のいずれかの遮蔽板8の間隙9の間隔と同一であってもよい。
また、各遮蔽板8は、タンク本体4と別体の構成としてもよい。
【0021】
次に、図3は、本発明の第2実施例のヘッダタンクを示す要部断面図である。
この例では、一群の仕切部7は6枚の遮蔽板8で形成されている。
この例が、第1実施例と異なる点は、一群の仕切部7を構成する各遮蔽板8とヘッダプレート5の平面との間隙9の大きさにある。
この例では、仕切部7の両端に位置する各遮蔽板8bとヘッダプレート5との間隙9の間隔が、仕切部7の中央に位置する遮蔽板8aとヘッダプレート5との間隙9の間隔よりも小さく形成されている。
この例の両端に位置する遮蔽板8bが、主に仕切および仕切部7内のチューブ15の流量を減少する手段として機能する。また、両端の遮蔽板8bの間に位置する遮蔽板8は、両端の遮蔽板8bの補助として機能する。
【0022】
次に、図4は、本発明の第3実施例のヘッダタンクを示す要部断面図である。
この例では、一群の仕切部7は8枚の遮蔽板8で形成されているが、仕切部7の中央に位置する遮蔽板8aとヘッダプレート5との間隙9の間隔も、仕切部7の両端に位置する各遮蔽板8bとヘッダプレート5との間隙9の間隔も十分に小さく形成されている。
ここで、仕切部7の中央に位置する遮蔽板8aは、仕切として機能する。また、遮蔽板8bは、仕切および仕切部7内のチューブ15の流量を減少する手段として機能する。そして、遮蔽板8aと遮蔽板8bの間に位置する遮蔽板8は、それらの補助として機能する。
【0023】
これまで説明した各実施例は、単一の熱交換器内に別の2つの流体を流通させる熱交換器である。しかしながら、本発明はそれに限らない。
図5は、他の例の熱交換器を示す断面図である。
この例の熱交換器20は、下部に位置するヘッダタンク21の仕切22を形成せずに、そのヘッダタンク21を介してUターン状の流路を形成するものであり、一例として、チャージエアを冷却するインタークーラ等に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の熱交換器のヘッダタンクは、ハイブリッド車におけるエンジン冷却用ラジエータと補器類冷却用ラジエータとが複合された熱交換器のヘッダタンク、電気自動車における電動機系冷却用ラジエータと電池冷却用ラジエータとが複合された熱交換器のヘッダタンク、等として利用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 底部
2 周壁部
3 開口部
4 タンク本体
5 ヘッダプレート
6 ヘッダタンク
7 仕切部
8 遮蔽板
8a 遮蔽板
8b 遮蔽板
9 間隙
【0026】
10 第1の区画部分
11 第2の区画部分
12 シール材
15 チューブ
16 フィン
17 コア
18 入口部
19 出口部
20 熱交換器
21 ヘッダタンク
22 仕切
23 第1の流体
24 第2の流体
図1
図2
図3
図4
図5