IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-超音波センサ 図1
  • 特開-超音波センサ 図2
  • 特開-超音波センサ 図3
  • 特開-超音波センサ 図4
  • 特開-超音波センサ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129093
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】超音波センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/521 20060101AFI20220829BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20220829BHJP
【FI】
G01S7/521 B
G01S7/521 A
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027656
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 正義
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
(72)【発明者】
【氏名】青嶋 春香
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB13
5J083AD04
5J083AF09
5J083CA01
5J083CA32
5J083CA38
5J083CB03
(57)【要約】
【課題】貫通孔をバンパー等の車体部品に設けなくても当該車体部品に取り付けることが可能な構成を有する超音波センサにおいて、優れたEMC特性を有するものを提供すること。
【解決手段】車両(V)に搭載される超音波センサ(1)は、シールド部(2)と振動変換部(3)と電気回路部(5)とを備える。シールド部は、導体層を有する。導体層は、非導電性材料により形成された車体部品である外板(V3)における内表面(V5)側にて、当該外板に接合される。超音波振動と電気信号との変換機能を有する振動変換部は、外板とともに超音波振動可能に、シールド部に接合される。電気回路部は、振動変換部との間で電気信号を授受可能に振動変換部に電気接続される。シールド部は、電気回路部に電気接続された接地側配線(62)と電気的に短絡されることで、振動変換部をシールドするように設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(V)に搭載される超音波センサ(1)であって、
前記車両の外部空間(SG)に面する表面である外表面(V4)とその裏面である内表面(V5)とを有し非導電性材料により形成された車体部品である外板(V3)における前記内表面側にて前記外板に接合される導体層を有する、シールド部(2)と、
超音波振動と電気信号との変換機能を有し、前記外板とともに超音波振動可能に前記シールド部に接合される、振動変換部(3)と、
前記振動変換部との間で前記電気信号を授受可能に前記振動変換部に電気接続される、電気回路部(5)と、
を備え、
前記シールド部は、前記電気回路部に電気接続された接地側配線(62)と電気的に短絡されることで、前記振動変換部をシールドするように設けられた、
超音波センサ。
【請求項2】
前記シールド部は、前記外板における前記内表面に接合され、
前記振動変換部は、接着層(4)により前記シールド部に接合された、
請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記シールド部は、前記外板と前記振動変換部とを接合する導電性の接着層により形成された前記導体層である、
請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記振動変換部は、圧電材料層(31)を有し、
前記接着層の音響インピーダンスは、前記外板の音響インピーダンスと前記圧電材料層の音響インピーダンスとの間である、
請求項3に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記シールド部は、前記振動変換部が有する一対の電極のうちの一方である、前記接地側配線と電気的に短絡される基準電極(33)を構成するように設けられる、
請求項1~4のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項6】
導電性材料により形成され、前記振動変換部および前記電気回路部を覆うように設けられた、カバー部(70)をさらに備え、
前記カバー部は、前記シールド部と電気的に短絡された、
請求項1~5のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のバンパーに貫通孔を形成し、この貫通孔を通して超音波センサの振動面が外部に露出するように、バンパーに超音波センサを取り付ける構成が知られている。しかしながら、かかる構成は、バンパーに貫通孔を形成するために、意匠面であまり好ましいものではなかった。また、かかる超音波センサを搭載しない状態で一旦工場出荷された車両である非搭載車用に「後付け」するためには、バンパーに貫通孔を形成する必要がある。このため、かかる超音波センサを非搭載車用に「後付け」することは困難であった。
【0003】
これに対し、超音波振動子を備える超音波センサをバンパーの内面に固定することで、バンパーを超音波振動子の振動面として含む構成が、従来種々提案されている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3469243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に搭載される超音波センサは、多様な電磁ノイズ環境にて使用される。この点、貫通孔を有しないバンパーの内面に超音波センサを固定する従来の構成においては、電磁ノイズが超音波振動子に流れることで誤作動あるいは故障が発生したり、超音波振動子の駆動時にノイズを外部に放射したりするという懸念があった。
【0006】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、貫通孔をバンパー等の車体部品に設けなくても当該車体部品に取り付けることが可能な構成を有する超音波センサにおいて、優れたEMC特性を有するものを提供する。EMCはElectromagnetic Compatibilityの略である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の、車両(V)に搭載される超音波センサ(1)は、
前記車両の外部空間(SG)に面する表面である外表面(V4)とその裏面である内表面(V5)とを有し非導電性材料により形成された車体部品である外板(V3)における前記内表面側にて前記外板に接合される導体層を有する、シールド部(2)と、
超音波振動と電気信号との変換機能を有し、前記外板とともに超音波振動可能に前記シールド部に接合される、振動変換部(3)と、
前記振動変換部との間で前記電気信号を授受可能に前記振動変換部に電気接続される、電気回路部(5)と、
を備え、
前記シールド部は、前記電気回路部に電気接続された接地側配線(62)と電気的に短絡されることで、前記振動変換部をシールドするように設けられる。
【0008】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものである。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る超音波センサを搭載した車両の外観を示す斜視図である。
図2図1に示された超音波センサの第一実施形態に係る概略構成を示す断面図である。
図3図1に示された超音波センサの第二実施形態に係る概略構成を示す断面図である。
図4図1に示された超音波センサの第三実施形態に係る概略構成を示す断面図である。
図5図1に示された超音波センサの第四実施形態に係る概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中には挿入せず、その後にまとめて説明する。
【0011】
(車載構成)
図1を参照すると、本実施形態においては、超音波センサ1は、車両Vを装着対象とする車載型のクリアランスソナーとしての構成を有している。すなわち、超音波センサ1は、車両Vに搭載されることで、当該車両Vの周囲に存在する物体を検知可能に構成されている。
【0012】
車両Vは、いわゆる四輪自動車であって、箱状の車体V1を備えている。車体V1には、外板を構成する車体部品である、車体パネルV2およびバンパーV3が装着されている。車体パネルV2は、導電性を有する金属材料(例えば鋼板)により形成されている。バンパーV3は、車体V1の前端部および後端部のそれぞれに設けられている。バンパーV3は、非導電性材料(例えば絶縁性合成樹脂)により形成されている。
【0013】
本実施形態においては、超音波センサ1は、バンパーV3に装着されることで、車両Vの外部空間SGに存在する物体を検知するように構成されている。超音波センサ1が車両VすなわちバンパーV3に装着された状態を、以下「車載状態」と称する。
【0014】
具体的には、車載状態にて、フロントバンパーすなわち車体V1における前面側のバンパーV3には、複数(例えば4つ)の超音波センサ1が装着されている。フロントバンパーに装着された複数の超音波センサ1は、それぞれ、車幅方向における異なる位置に配置されている。同様に、リアバンパーすなわち車体V1における後面側のバンパーV3にも、複数(例えば4つ)の超音波センサ1が装着されている。
【0015】
本開示においては、バンパーV3には、超音波センサ1を装着するための貫通孔である装着孔は設けられていない。すなわち、超音波センサ1は、これを搭載しない状態で一旦工場出荷された車両Vである非搭載車用のバンパーV3に装着孔を形成しなくても「後付け」が可能な構成を有している。以下、かかる構成を有する超音波センサ1の詳細について説明する。
【0016】
(第一実施形態)
図2は、バンパーV3に取り付けられた複数の超音波センサ1のうちの1つを、車載状態にて示している。以下、図1および図2を参照しつつ、第一実施形態に係る超音波センサ1の概略構成について説明する。
【0017】
本実施形態においては、超音波センサ1は、超音波を送受信可能に構成されている。すなわち、超音波センサ1は、送受信一体型の構成を有している。
【0018】
具体的には、超音波センサ1は、超音波である探査波を指向軸DAに沿って外部空間SGに向けて発信するように構成されている。「指向軸」とは、超音波センサ1から超音波の送受信方向に沿って延びる仮想直線であって、指向角の基準となるものである。「指向軸」は「指向中心軸」あるいは「検出軸」とも称され得る。また、超音波センサ1は、車両Vの周囲に存在する物体による探査波の反射波を含む受信波を外部空間SGから受信して、受信波の受信結果に応じた検知信号を発生および出力するように構成されている。
【0019】
説明の便宜上、図2に示されている通り、平面視にて、Y軸が指向軸DAと平行となり、Z軸が重力作用方向すなわち車高方向と平行となるように、右手系XYZ直交座標系を設定する。「平面視」とは、或る構成要素を重力作用方向と平行な視線で上方から下方に向かって見ることをいうものとする。
【0020】
指向軸DAと平行な方向を「軸方向」と称する。「軸方向における先端側」は、探査波の発信方向側であり、図2におけるY軸正方向側に対応する。これに対し、「軸方向における基端側」は、図2におけるY軸負方向側に対応する。また、軸方向と直交する任意の方向を「面内方向」と称する。「面内方向」は、図2における、XZ平面と平行な方向である。また、或る構成要素の、XZ平面に投影した形状を、「面内形状」と称する。
【0021】
バンパーV3は、バンパー外表面V4とバンパー内表面V5とを有している。バンパー外表面V4は、車両Vの外側の空間である外部空間SGに面するように設けられている。バンパー内表面V5は、バンパー外表面V4の裏面であって、車両VすなわちバンパーV3の内側の空間である内部空間SNに面するように設けられている。
【0022】
超音波センサ1は、車載状態にて内部空間SNに収容されつつバンパー内表面V5に固定されている。そして、超音波センサ1は、バンパーV3を振動させることで探査波を発信するとともに、受信波によるバンパーV3の振動を電気信号に変換して検知信号を生成するように構成されている。具体的には、超音波センサ1は、シールド部2と、振動変換部3と、素子接着層4と、電気回路部5と、配線部6とを備えている。以下、本実施形態に係る超音波センサ1を構成する各部について説明する。
【0023】
シールド部2は、車載状態にてバンパー内表面V5に接合されるようになっている。本実施形態においては、シールド部2は、バンパー内表面V5側にてバンパーV3に接合される導体層21を有している。具体的には、導体層21は、シールド接着層22により、バンパー内表面V5に接合されている。すなわち、シールド部2は、導体層21とシールド接着層22とを有している。導体層21は、銅箔等の、金属薄層あるいは金属膜により形成されている。バンパーV3と導体層21とを接着するシールド接着層22は、固化により超音波振動を良好に伝播可能な硬質の接合層となる接着剤(例えばエポキシ系接着剤)により形成されている。
【0024】
シールド部2は、接地側の基準電位(すなわち接地電位であって具体的には約0V)に設定されることで振動変換部3をシールドし得るように、振動変換部3よりも大きな面内形状を有している。換言すれば、指向軸DAと直交する仮想平面に投影した外形形状を「輪郭形状」と定義すると、振動変換部3の輪郭形状は、シールド部2の輪郭形状の内側に位置するようになっている。
【0025】
振動変換部3は、超音波振動と電気信号との変換機能を有し、バンパーV3とともに超音波振動可能にシールド部2に接合されるようになっている。本実施形態においては、振動変換部3は、電気-機械エネルギー変換素子の一種である圧電素子としての構成を有している。具体的には、振動変換部3は、圧電材料層31と、駆動電極32と、基準電極33とを有している。
【0026】
圧電材料層31は、チタン酸ジルコン酸鉛(すなわちPZT)等の圧電材料により形成されている。圧電材料層31は、軸方向について、駆動電極32と基準電極33との間に設けられている。具体的には、駆動電極32は、圧電材料層31の軸方向における基端側の端面に接合されたメタライズ層すなわち金属膜であって、圧電材料層31上に製膜されている。基準電極33は、駆動電極32は、圧電材料層31の軸方向における先端側の端面に接合されたメタライズ層であって、圧電材料層31上に製膜されている。
【0027】
振動変換部3は、素子接着層4によりシールド部2に接合されるようになっている。シールド部2と振動変換部3とを接着する素子接着層4は、固化により超音波振動を良好に伝播可能な硬質の接合層となる接着剤(例えばエポキシ系接着剤)により形成されている。本実施形態においては、素子接着層4は、シールド部2における導体層21と、圧電材料層31における基準電極33とに接合されるようになっている。
【0028】
電気回路部5は、振動変換部3との間で電気信号を授受可能に、振動変換部3に電気接続されるようになっている。本実施形態においては、電気回路部5は、振動変換部3を駆動して探査波を発信するための駆動信号を振動変換部3に出力するように構成されている。また、電気回路部5は、受信波の受信により励振された振動変換部3から出力される受信信号を処理することで、車両Vの周囲に存在する物体を検知するように構成されている。
【0029】
配線部6は、信号線61と、接地側配線62と、シールド接地線63と、電極接地線64とを有している。信号線61は、振動変換部3における駆動電極32と電気回路部5における信号入出力端子とを電気接続するように設けられている。すなわち、振動変換部3と電気回路部5とは、信号線61を介して、駆動信号および受信信号を授受するようになっている。
【0030】
接地側配線62は、電気回路部5における接地端子を接地するように設けられている。シールド接地線63は、シールド部2における導体層21と接地側配線62とを電気接続するように設けられている。すなわち、シールド部2は、シールド接地線63を介して接地側配線62と電気的に短絡されることで、振動変換部3をシールドするようになっている。電極接地線64は、振動変換部3における基準電極33と接地側配線62とを電気接続するように設けられている。
【0031】
(効果)
以下、上記構成を有する、本実施形態に係る超音波センサ1の動作概要を、同構成により奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。
【0032】
探査波を発信する送信時において、電気回路部5は、駆動信号を振動変換部3に出力する。これにより、振動変換部3は、超音波振動する。すると、振動変換部3における超音波振動が素子接着層4およびシールド部2を介してバンパーV3に伝播することで、バンパーV3が、超音波帯域の周波数で励振される。具体的には、バンパーV3が、指向軸DAと交差する位置を「腹」として、厚さ方向すなわち軸方向に撓むように超音波振動する。かかるバンパーV3の超音波振動が外部空間SGにおける空気に伝播することで、探査波が、指向軸DAに沿って、外部空間SGに向けて発信される。
【0033】
受信波を受信する受信時において、外部空間SGからバンパーV3に伝播した受信波により、バンパーV3が励振される。具体的には、バンパーV3が、指向軸DAと交差する位置を「腹」として、厚さ方向に撓むように超音波振動する。すると、バンパーV3における超音波振動が素子接着層4およびシールド部2を介して振動変換部3に伝播する。これにより、振動変換部3にて、受信波の周波数および強度に応じた受信信号が発生する。振動変換部3にて発生した受信信号が、電気回路部5にて処理されることで、超音波センサ1は、周囲の物体を検知する。
【0034】
このように、超音波センサ1は、バンパーV3を超音波振動子の振動面として含む構成を有している。かかる構成においては、バンパーV3には、超音波センサ1を取り付けるための貫通孔である装着孔を形成する必要はない。また、バンパー外表面V4には、超音波の送受信のための何らかの構造を設ける必要はない。このため、かかる構成によれば、意匠性に優れた超音波センサ1を提供することが可能となる。また、非搭載車用のバンパーV3に装着孔を形成しなくても、超音波センサ1の「後付け」が可能となる。
【0035】
上述の通り、本実施形態に係る超音波センサ1は、車体V1の外板を構成する車体部品としてのバンパーV3の内側に収容されつつ、かかるバンパーV3に取り付けられている。具体的には、超音波センサ1は、バンパー内表面V5に接合されている。ところで、車両Vに搭載される超音波センサ1は、多様な電磁ノイズ環境にて使用される。この点、超音波センサ1の取付対象であり、超音波センサ1と外部空間SGとの間に介在する、非導電性材料製のバンパーV3は、それ自体には電磁ノイズをシールドする機能を有しない。
【0036】
そこで、本実施形態は、超音波センサ1をバンパーV3に取り付ける際に必要となる、バンパー内表面V5への接合箇所に、シールド部2を設けた構造を有している。すなわち、シールド部2は、バンパーV3と振動変換部3との間に介在するように設けられる。そして、シールド部2は、電気回路部5に電気接続された接地側配線62と電気的に短絡されることで、振動変換部3をシールドする。
【0037】
かかる構成によれば、電磁ノイズが振動変換部3に流れることで誤作動あるいは故障が発生したり、振動変換部3の駆動時にノイズを外部に放射したりするという不具合が、良好に防止され得る。したがって、かかる構成によれば、貫通孔である装着孔をバンパーV3に設けなくてもバンパーV3に取り付けることが可能な構成を有する超音波センサ1において、優れたEMC特性を有するものを提供することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態においては、電気-機械エネルギー変換素子としての振動変換部3が、比較的薄層に形成可能なシールド部2および素子接着層4を介して、バンパーV3に固定される。このため、探査波の発信のためにバンパーV3を局所的に励振する際の励振効率が向上するとともに、受信波の受信の際の感度が向上する。
【0039】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態について、図3を参照しつつ説明する。なお、以下の第二実施形態の説明においては、主として、上記第一実施形態と異なる部分について説明する。また、第一実施形態と第二実施形態とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の第二実施形態の説明において、第一実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記第一実施形態における説明が適宜援用され得る。後述の第三実施形態以降の他の実施形態についても同様である。
【0040】
本実施形態においては、シールド部2は、振動変換部3が有する一対の電極のうちの一方である、接地側配線62と電気的に短絡される電極(すなわち図2における基準電極33)を構成するように設けられる。すなわち、図2に示された、振動変換部3の軸方向における先端側に設けられた基準電極33は、図3に示された構成においては、シールド部2における導体層21により代用されることで省略される。そして、素子接着層4は、圧電材料層31とシールド部2における導体層21とを接合する接合層として設けられている。
【0041】
かかる構成によれば、シールド部2すなわち導体層21は、振動変換部3を構成する一対の電極のうちの一方としての機能とともに、振動変換部3を電磁ノイズからシールドする機能をも奏する。したがって、超音波センサ1の構成が、よりいっそう簡略化され得る。また、圧電材料層31とバンパーV3との間の層数を削減することで、振動伝播効率が向上する。
【0042】
(第三実施形態)
以下、第三実施形態について、図4を参照しつつ説明する。本実施形態においても、上記第二実施形態と同様に、シールド部2は、振動変換部3が有する一対の電極のうちの一方である、接地側配線62と電気的に短絡される電極を構成するように設けられる。
【0043】
本実施形態においては、シールド部2は、バンパーV3と振動変換部3(すなわち圧電材料層31)とを接合する導電性の接着層により形成された導体層である。すなわち、シールド部2は、接着剤に導電性付与のための添加物(例えば導電性フィラー等)を添加したものを固化することで形成されている。換言すれば、本実施形態に係るシールド部2は、上記第一実施形態等における、導体層21とシールド接着層22と素子接着層4とを、一体化あるいは一元化したものに相当する。
【0044】
かかる構成によれば、バンパーV3と振動変換部3とを接合する導電性の接着層であるシールド部2は、振動変換部3を構成する一対の電極のうちの一方としての機能とともに、振動変換部3を電磁的にシールドする機能をも奏する。したがって、超音波センサ1の構成が、よりいっそう簡略化され得る。また、圧電材料層31とバンパーV3との間の層数を削減することで、振動伝播効率が向上する。
【0045】
かかる構成において、導電性の接着層であるシールド部2の音響インピーダンスZaは、バンパーV3の音響インピーダンスZbと圧電材料層31の音響インピーダンスZcとの間であることが好適である。換言すれば、以下の2つの式のいずれかが成立することが好適である。これにより、導電性の接着層であるシールド部2を音響整合層として機能させることで、バンパーV3と振動変換部3との間の振動伝播効率をよりいっそう向上させることが可能となる。
Zb>Za>Zc
Zb<Za<Zc
【0046】
(第四実施形態)
以下、第四実施形態について、図5を参照しつつ説明する。本実施形態においても、上記第二実施形態と同様に、シールド部2は、振動変換部3が有する一対の電極のうちの一方である、接地側配線62と電気的に短絡される電極を構成するように設けられる。また、上記第三実施形態と同様に、シールド部2は、バンパーV3と振動変換部3とを接合する導電性の接着層として設けられている。
【0047】
本実施形態においては、超音波センサ1は、カバー部70をさらに備えている。カバー部70は、導電性材料により形成され、振動変換部3および電気回路部5を覆うように設けられている。すなわち、カバー部70は、振動変換部3と電気回路部5とを収容するように構成されている。また、カバー部70は、シールド接地線63を介して、接地側配線62と電気的に短絡されている。
【0048】
具体的には、カバー部70は、本体部71とフランジ部72とを有している。本体部71とフランジ部72とは、同一の導電性材料(例えばアルミニウム等の金属材料)によって継ぎ目なく一体に形成されている。
【0049】
本体部71は、指向軸DAに沿った中心軸線を有し軸方向における先端側にて開口する有底筒状に形成されている。すなわち、本体部71は、振動変換部3の背後すなわち軸方向における基端側を覆うように設けられている。
【0050】
フランジ部72は、本体部71の軸方向における先端から径方向に延設されている。「径方向」は、中心軸線から離隔する方向である。すなわち、「径方向」は、中心軸線と直交する仮想平面と中心軸線との交点を起点として当該仮想平面内に半直線を描いた場合に、当該半直線が延びる方向である。換言すれば、「径方向」は、上記の仮想平面と中心軸線との交点を中心として当該仮想平面内に円を描いた場合の、当該円の半径方向である。
【0051】
フランジ部72は、導電性の接着層であるシールド部2を介して、バンパーV3に接合されている。これにより、シールド部2は、接地されたカバー部70と電気的に短絡されるようになっている。
【0052】
かかる構成によれば、導電性材料により形成されたシールド部2と導電性材料により形成されたカバー部70とによって、振動変換部3および電気回路部5が囲まれる。これにより、振動変換部3および電気回路部5が、良好に電磁的にシールドされ得る。したがって、貫通孔である装着孔をバンパーV3に設けなくてもバンパーV3に取り付けることが可能な構成を有する超音波センサ1において、優れたEMC特性を有するものを提供することが可能となる。
【0053】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0054】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な装置構成に限定されない。すなわち、例えば、適用対象である車両Vは、四輪自動車に限定されない。具体的には、車両Vは、三輪自動車であってもよいし、貨物トラック等の六輪または八輪自動車でもよい。車両Vの種類は、内燃機関のみを備えた自動車であってもよいし、内燃機関を備えない電気自動車または燃料電池車であってもよいし、いわゆるハイブリッド自動車であってもよい。車体V1の形状および構造も、箱状すなわち平面視における略矩形状に限定されない。
【0055】
超音波センサ1の装着対象は、バンパーV3に限定されない。具体的には、例えば、超音波センサ1は、非導電性材料製の車体パネルV2に装着されるものであってもよい。超音波センサ1の装着対象としての、非導電性材料製の車体パネルV2および/またはバンパーV3を構成する非導電性材料についても、特段の限定はない。すなわち、例えば、かかる非導電性材料は、FRPであってもよい。FRPはFiber Reinforced Plasticsの略である。
【0056】
超音波センサ1は、送受信一体型の構成に限定されない。すなわち、例えば、超音波センサ1は、超音波の発信のみが可能な構成を有していてもよい。あるいは、超音波センサ1は、他の超音波発信器から発信された超音波である探査波の、周囲に存在する物体による反射波を受信する機能のみを有するものであってもよい。
【0057】
超音波センサ1における各部の構成も、上記具体例に限定されない。具体的には、例えば、シールド部2、振動変換部3、等の各部における面内形状は、円形、楕円形、四角形、六角形、八角形、等であってもよい。
【0058】
シールド部2における導電材料層、すなわち、図2および図3における導体層21、ならびに、図4および図5におけるシールド部2は、対策したい電磁ノイズの周波数に応じた厚さで形成されることが好適である。具体的には、かかる厚さtは、以下の式を満たす範囲で設定され得る。なお、以下の式において、ρは電気抵抗率、fは周波数、μは絶対透磁率を示す。
t≧√(ρ/πfμ)
【0059】
図2等において、振動変換部3は、1層の圧電材料層31の両面に電極層を有する構成を有しているように図示されている。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、振動変換部3は、典型的には、圧電材料層31と電極層とを交互に軸方向に多数積層した積層型の構成を有している。このため、図2等は、本発明に係る概略構成を簡略的に説明するために、図示が簡略化されたものである。よって、本発明は、積層型の振動変換部3を備えた超音波センサ1に対しても、好適に適用され得る。また、振動変換部3は、圧電素子に限定されず、容量型の電気-機械エネルギー変換素子であってもよい。
【0060】
図5に示されたカバー部70は、図2および図3に示された構成にも設けられ得る。この場合、フランジ部72は、導電性の接着剤により、シールド部2における導体層21に接合され得る。
かかる構成においては、導体層21とフランジ部72とを接合することで構成されるセンサユニットを、シールド接着層22を構成する接着剤により、バンパーV3に接着することで、車載状態が実現され得る。これにより、取り付け工数が良好に低減され得る。
【0061】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0062】
変形例も、上記の例示に限定されない。すなわち、例えば、上記に例示した以外で、複数の実施形態同士が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。同様に、複数の変形例が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0063】
1 超音波センサ
2 シールド部
3 振動変換部
5 電気回路部
62 接地側配線
SG 外部空間
V 車両
V3 バンパー(外板)
V4 バンパー外表面
V5 バンパー内表面
図1
図2
図3
図4
図5