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特開2022-129111急結剤用カルシウムアルミネート、および発泡型急結剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129111
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】急結剤用カルシウムアルミネート、および発泡型急結剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/08 20060101AFI20220829BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20220829BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220829BHJP
   C01F 7/02 20220101ALN20220829BHJP
【FI】
C04B22/08 Z
C04B22/14 A
C04B28/02
C01F7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027677
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】水野 博貴
【テーマコード(参考)】
4G076
4G112
【Fターム(参考)】
4G076AA18
4G076AB02
4G076AB09
4G076BA38
4G076BA46
4G076BD02
4G076DA30
4G112MB00
4G112MB13
4G112PB05
4G112PB10
4G112PC06
(57)【要約】
【課題】発泡型急結剤とした際に、トンネル等の吹付け作業で発生する粉塵の発生を抑えて作業性を向上し、湧水や地山面が悪化した状況下においても、高い急結性が得られ、長期的な強度発現性を求められる箇所への適用が可能な急結剤用カルシウムアルミネートを提供する。
【解決手段】SiO含有量が7質量%以下であり、ガラス化率が30~98%であり、硫黄含有量が0.007~0.5質量%である急結剤用カルシウムアルミネートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO含有量が7質量%以下であり、ガラス化率が30~98%であり、硫黄含有量が0.007~0.5質量%である急結剤用カルシウムアルミネート。
【請求項2】
CaO/Alモル比が1.8~2.8である請求項1に記載の急結剤用カルシウムアルミネート。
【請求項3】
3CaO・Alを1~40質量%含有する請求項1又は2に記載の急結剤用カルシウムアルミネート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の急結剤用カルシウムアルミネートと、pHが1~5を呈する硫酸アルミニウム粉末とを含む発泡型急結剤。
【請求項5】
実質的にアルミン酸アルカリを含有しない請求項4に記載の発泡型急結剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急結剤用カルシウムアルミネート、および発泡型急結剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等露出した地山の崩落を防止するために急結剤をコンクリートに配合した急結コンクリートの吹付工法が行われている(特許文献1)。この工法は、通常、掘削工事現場に設置した、セメント、骨材、及び水等の計量混合プラントで吹付コンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付コンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。
【0003】
従来から使用されている急結剤としては、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ金属炭酸塩等との混合物、焼ミョウバン、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ金属炭酸塩等の混合物、カルシウムアルミネートと3CaO・SiOとの混合物、消石灰、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ金属炭酸塩の混合物等が知られている(特許文献2~5)。
これらの急結剤は、セメントの凝結を促進させる働きがあり、いずれもセメントコンクリートと混合して地山面に吹付けられる。
【0004】
急結剤の添加方法は、通常、空気輸送による粉体混合のために、粉塵量が多くなる方法であった。そのため、作業環境が悪化する場合があり、吹付け時には保護眼鏡や防塵マスクなどを着用して作業する必要があり、粉塵量のより少ない工法が求められていた。粉塵発生量が少ない工法として、急結剤をスラリー化してセメントコンクリートに添加混合した後、さらに、アルカリ金属アルミン酸塩の溶液を別途圧送し、混合し、吹付け施工する方法が提案されている(特許文献6)。この方法は、高アルカリの液体を使用するため、取り扱いにくく、吹付け時には保護眼鏡や手袋等が必要となり、作業性が低下するという課題があった。
【0005】
これに対して、急結剤をスラリー化し、かつ、セメントコンクリートにミョウバン類を配合することにより、作業環境を改善する急結施工方法が提案されている(特許文献7)。また、作業性、粉塵低減効果をさらに良くし、工期短縮の面で、急結性を向上した急結施工方法が提案されている(特許文献8)。
【0006】
しかしながら、カルシウムアルミネートにアルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属炭酸塩等を混合した急結剤よりも低pH値のもので、弱アルカリ性、好ましくは、中性または弱酸性の急結剤が求められており、この問題を解決するため液体急結剤として、塩基性アルミニウム塩や有機カルボン酸を主成分とするもの(特許文献9)、硫酸アルミニウムやアルカノールアミンを主成分とするもの(特許文献10)、並びにアルミニウムの塩基性水溶液、ケイ酸リチウム、およびアルミン酸リチウムを主成分とするもの(特許文献11)等が用いられている。この液体急結剤は、初期強度発現性が得られ難く、従来のカルシウムアルミネートを主成分とする急結剤と比較してトンネル坑内で厚吹きした場合には剥落することが懸念された(特許文献12、13)。
【0007】
そこで、アルミニウムやイオウを主成分とする酸性液体急結剤と粉末の硫酸アルミニウム、硫酸塩、アルミン酸塩、水酸化物からなる無機化合物の群から選ばれる何れか一種または二種以上を添加することを特徴とする吹付け材料が開発された(特許文献14)。また、更に液体急結剤とアルカリ炭酸塩類とを混合した発泡状急結剤が開発された(特許文献15)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭60-4149号公報
【特許文献2】特開昭64-051351号公報
【特許文献3】特公昭56-27457号公報
【特許文献4】特開昭61-026538号公報
【特許文献5】特開昭63-210050号公報
【特許文献6】特開平05-139804号公報
【特許文献7】特開平05-097491号公報
【特許文献8】特開2003-81664号公報
【特許文献9】特表2001-509124号公報
【特許文献10】特開平10-087358号公報
【特許文献11】特開2001-130935号公報
【特許文献12】特開2002-047048号公報
【特許文献13】特開2003-246659号公報
【特許文献14】特開2007-055831号公報
【特許文献15】特開2012-017235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献15の発泡状急結剤はセメントとの反応性が強く、高い強度発現性を示すが、長期耐久性の向上が求められる箇所への適用性についてはより向上させることが望ましい。
【0010】
本発明は、発泡型急結剤とした際に、トンネル等の吹付け作業で発生する粉塵の発生を抑えて作業性を向上し、湧水や地山面が悪化した状況下においても、高い急結性が得られ、長期的な強度発現性を求められる箇所への適用が可能な急結剤用カルシウムアルミネート、及びこれを含む発泡型急結剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記のような問題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の性状を持つカルシウムアルミネートが上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記のとおりである。
【0012】
[1] SiO含有量が7質量%以下であり、ガラス化率が30~98%であり、硫黄含有量が0.007~0.5質量%である急結剤用カルシウムアルミネート。
[2] CaO/Alモル比が1.8~2.8である[1]に記載の急結剤用カルシウムアルミネート。
[3] 3CaO・Alを1~40質量%含有する[1]又は[2]に記載の急結剤用カルシウムアルミネート。
[4] [1]~[3]のいずれに記載の急結剤用カルシウムアルミネートと、pHが1~5を呈する硫酸アルミニウム粉末とを含む発泡型急結剤。
[5] 実質的にアルミン酸アルカリを含有しない[4]に記載の発泡型急結剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発泡型急結剤とした際に、トンネル等の吹付け作業で発生する粉塵の発生を抑えて作業性を向上し、湧水や地山面が悪化した状況下においても、高い急結性が得られ、長期的な強度発現性を求められる箇所への適用が可能な急結剤用カルシウムアルミネート、及びこれを含む発泡型急結剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
【0015】
[急結剤用カルシウムアルミネート]
本発明の一実施形態(本実施形態)に係る急結剤用カルシウムアルミネートは、SiO含有量が7%以下であり、ガラス化率が30~98%であり、硫黄含有量が0.007~0.5%である。
【0016】
SiO含有量が7%を超えると、急結性状が低下するため好ましくなく、6%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。また、ガラス化が30%以下とならないことを考慮すると0.1%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。SiO含有量は蛍光X線により測定することができる。
また、SiO含有量は、カルシウムアルミネートを作製する際の原料中のSiO量を調整したり、新たにSiOを添加したりして調整することができる。
【0017】
また、ガラス化率が30%未満、又は、98%を超えると急結性状が低下する。ガラス化率は、40~95%であることが好ましい。
ここで、ガラス化率は、加熱前のサンプルの粉末X線回折法により結晶鉱物のメインピーク面積Sを予め測定し、1000℃で2時間加熱後、1~10℃/分の冷却速度で徐冷し、粉末X線回折法による加熱後の結晶鉱物のメインピーク面積Sを求め、更に、これらのS及びSの値を用い、下記の式を用いてガラス化率を算出することができる。
ガラス化率(%)=100×(1-S/S
なお、ガラス化率は、例えば、カルシウムアルミネートを作製する際の加熱温度や加熱後の冷却速度により、所望の範囲に調整することができる。
【0018】
さらに、硫黄含有量が0.007%未満であると、硫酸アルミニウム粉末と混合した際、発泡量が少なくなることがあり、0.5%を超えると、急結性状を阻害する傾向があり好ましくない。硫黄含有量は0.01~0.3%であることが好ましい。
硫黄含有量は蛍光X線により測定することができる。また、硫黄含有量は、カルシウムアルミネートを作製する際の原料中の硫黄量を調整したり、硫黄源を添加したりして調整することができる。
【0019】
ここで、カルシウムアルミネート(以下、CA類ともいう)は、CaOとAlを主成分とし、水和活性を有する化合物の総称であり、CaO及び/又はAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいは、CaOとAlを主成分とするものにこれらが少量固溶した物質である。
【0020】
なお、本実施形態で用いるカルシウムアルミネートは、工業原料からは微量のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が混入し、このアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含むCA類が一部生成する可能性があるが、これらのわずかなアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の存在によって何ら制限を受けるものではない。
【0021】
カルシウムアルミネートはアルカリ性であることが好ましく、pHが10~14であることがより好ましい。アルカリ性(特にpHが10~14)であることでカルシウムアルミネートの有する特性を発揮させやすくすることができる。
なお、pHはカルシウムアルミネートと水からなる5倍量以上の水溶液を調整した上澄み液を採取し、JIS Z8802のpH測定方法などに代表される一般的なpH測定方法によって測定することができる。
【0022】
カルシウムアルミネートのCaO/Alモル比は特に限定はされないが、極初期の強度発現性を考慮すると、当該モル比は1.8~2.8が好ましい。モル比が1.8以上であると、極初期の凝結性状を良好にすることができ、2.9以下であると、良好な長期強度発現性が得られやすくなる。CaO/Alモル比は2.2~2.8がより好ましい。
【0023】
また、カルシウムアルミネート中に3CaO・Alを1~40%含有することが好ましく、5~30%含有することがより好ましい。1~40%含有することで、3CaO・Alは、X線回折により定量することができる。また、3CaO・AlはCaO/Alモル比を2.8に近づけた原料割合で熱処理したり、更にガラス化率を95%以下に調整したりすることによって調整することができる。
【0024】
カルシウムアルミネートのブレーン比表面積(以下、単に「ブレーン」ということがある)は、4000~8000cm/gであることが好ましく、5000~7000cm/gであることがより好ましい。4000~8000cm/gであることで、初期強度発現性が得られやすく、吹き付け時のモルタル及び/又はコンクリートの取扱い性を良好にすることができる。
なお、ブレーン比表面積とは、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に記載された比表面積試験に基づいて測定されたものである。
【0025】
本実施形態に係る急結剤用カルシウムアルミネートの製造方法としては、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理を施す方法が挙げられる。この原料混合の際に、SiO成分を含む原料や硫黄成分を含む原料を配合することも可能であり、原料に関して、特に制限はない。
【0026】
以上のような急結剤用カルシウムアルミネートは、セメントに添加されたときの水和活性に優れていることや、pHが1~5に呈するものと混在された状況下で接水することで、発泡し、セメントモルタルやコンクリートと混合し易くしたり、急結剤は通常圧縮空気ですることが特徴であるため、後述するpHが1~5を呈する硫酸アルミニウム粉末とを組み合わせた発泡型急結剤として、非常に有効である。
【0027】
[発泡型急結剤]
本実施形態に係る発泡型急結剤は、本発明の急結剤用カルシウムアルミネートと、pHが1~5を呈する硫酸アルミニウム粉末(以下、単に「硫酸アルミニウム粉末」ということがある)とを含む。これらの組み合わせによれば、酸アルカリ反応によるセメントコンクリートの著しい凝集が抑制されるため、良好な強度発現性が得られる。また、取扱い性も良好となる。
【0028】
硫酸アルミニウムには無水と水和物があるが特に限定されるものではない。硫酸アルミニウムの形態が液状(スラリーや懸濁液など)であると他の成分と反応し易いため、当該形態は粉末状とする。
【0029】
ここで、発泡型急結剤は、pHが酸性の硫酸アルミニウム粉末と、本発明の急結剤用カルシウムアルミネートとを、混合して発泡型急結剤とし、水やセメントコンクリートなどと接触した際に、急結剤自体が発泡するものである。この発泡は硫化水素が発生し、コンクリートへ添加されると同時に硫化水素の発生はなくなるため、人体に影響はない。急結剤自体が発泡することで、コンクリートと混合合流する際の閉塞トラブルが起こらないため、危険作業が少なく、安全な吹付け施工が行うことができる。
なお、作業性の観点から、実質的にアルミン酸アルカリを含有しないことが好ましい。ここでいう「実質的にアルミン酸アルカリを含有しない」とは、X線回折で測定した際に、その含有量が%オーダーで0の場合をいう。
【0030】
発泡型急結剤中の急結剤用カルシウムアルミネートの含有量(急結剤用カルシウムアルミネート/(急結剤用カルシウムアルミネート+硫酸アルミニウム粉末)×100)は、 極初期の強度発現性や付着性状 の観点から、50~98%であることが好ましく、60~90%であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態に係る発泡型急結剤は、上記の成分以外に、硫酸カルシウム等の吹付けコンクリート用の急結剤で一般的に用いられる材料を配合しても良い。なお、硫酸カルシウムには無水物、半水和物、二水和物があるが、特に限定されるものではない。
【0032】
また、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸等の無機酸、及びこれらの塩(ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム)やモノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、オキシカルボン酸、アミノ酸等の有機酸、及びこれらの塩(ナトリウム、カリウム、リチウム)等を併用可能である。これらのなかでも、水への溶解性、取扱いの面から、ジカルボン酸、オキシカルボン酸、及びこれらの塩の併用が好ましい。
【0033】
本実施形態に係る発泡型急結剤が合流混合されるセメントコンクリートで使用するセメントは、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中庸熱、及び低熱の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、及び石灰石微粉末を混合したフィラーセメント、並びに都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント( エコセメント) 等が挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能である。混合セメントにおける混合物とセメントの割合は特に限定されるものではなく、これら混和材をJISで想定する以上に混合したものも使用可能である。
【0034】
本発明で使用するセメントコンクリートは、セメントと骨材とを含有するものであり、骨材は吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。
骨材は、吹付けできれば特に限定されるものではないが、細骨材としては、川砂、山砂、海砂、石灰砂、及び珪砂等が使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用可能であり、砕砂、砕石の使用も可能である。
【0035】
また、本発明の発泡型急結剤を用いた吹付け工法としては、要求される物性、経済性、及び施工性等に応じた種々の吹付け工法が可能である。本発明の急結剤を用いた吹付け工法としては、乾式吹付け工法、湿式吹付け工法、いずれの工法も可能である。
【実施例0036】
「実験例1」
(1)急結剤用カルシウムアルミネートの作製
炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、シリカ、及び硫黄を種々の割合(シリカが0%の場合を含む)で混合し、電気炉で1600℃にて溶融後、冷却速度を調整し、ボールミルで粉砕した後、分級してブレーン値が8,000cm/g程度で、表1に示すシリカ含有量、ガラス化率、及びCaO/Al(モル比)を有するカルシウムアルミネートを作製した。
【0037】
【表1】
【0038】
(2)発泡型急結剤の作製と評価
発泡型急結剤中の急結剤用カルシウムアルミネートが含有量(急結剤用カルシウムアルミネート/(急結剤用カルシウムアルミネート+硫酸アルミニウム粉末)×100)が80質量%となるように、各急結剤用カルシウムアルミネートA~Zと硫酸アルミニウム粉末(16水塩(市販品)、pH:3.5、平均粒径:300μm)と混合して発泡型急結剤A~Wを作製した。
【0039】
モルタルミキサーにセメント800g、細骨材2000g、水480gを投入し、練混ぜてモルタルを調製し、表2に示す種類の発泡型急結剤A~Wをセメント100部に対して12.5部となるように、素早くモルタルへ投入し、練混ぜ、急結モルタルを調製した。その後、モルタルの凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表2に示す。
なお、セメントは普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,200cm/g、比重3.16を使用し、細骨材は新潟県糸魚川市姫川水系川砂、表乾状態、比重2.62、最大粒径5mmを使用した。
【0040】
<測定方法>
凝結時間:土木学会基準「吹付けコンクリート用急結剤品質規格(JSCE D-102)」に準じて測定。
圧縮強度:JIS R 5201に準じて測定、各種混和剤との比較をベースモルタルとの圧縮強度比により評価する。
【0041】
【表2】

【0042】
(3)発泡型急結剤を使用した吹付け試験
表3に示すフレッシュ性状とコンクリート配合のコンクリートを調整し、吹付け圧力0.4MPa、吹付け速度12m/hの条件下で、コンクリート圧送機「MKW-25SMT」によりポンプ圧送し、圧送中のポンプ圧のモニタリングを行った。
一方、セメント100部に対して、9部になるように、圧送圧力0.5MPaの条件下で、発泡型急結剤(表4参照)を「NATMクリート」を用いて空気搬送し、この急結剤をY字管のもう一方から圧送された吹付けコンクリートに混合し、吹付けコンクリートとした。この急結性吹付けコンクリートについてコンクリート圧縮強度、リバウンド率、粉じん量を測定した。また、吹付け終了後、Y字管の急結剤側を確認し、固結状況を確認した。表4に示す。
【0043】
<コンクリート配合>
【表3】
【0044】
なお、セメントは普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,200cm/g、比重3.16を使用し、細骨材は新潟県糸魚川市姫川水系川砂、表乾状態、比重2.62、最大粒径5mmを使用し、粗骨材は新潟県糸魚川市姫川水系砕石1505、表乾状態、比重2.67、最大粒径15mmを使用し、水は上水道水を使用した。
また、コンクリートは強制二軸ミキサを用いて調整し、練り上がったコンクリートを、JIS A1101に準じて測定した。
【0045】
<測定方法>
コンクリート圧縮強度:材齢1時間と1日の圧縮強度は、幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から急結性吹付けコンクリートで被覆し、型枠の裏側よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(圧縮強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から圧縮強度を算出した。材齢28日の圧縮強度は、幅50cm×長さ50cm×厚さ20cmの型枠に急結性吹付けコンクリートを吹付け、採取した直径5cm×長さ10cmの供試体を20トン耐圧機で測定し、圧縮強度を求めた。
リバウンド率:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、湧水を想定のもと、上部より、毎分10リットルの水を流している鉄板でアーチ状に作成した高さ3.5m、幅2.5mの模擬トンネルに吹付けた。その後、(リバウンド率)=(模擬トンネルに付着せずに落下した急結性吹付けコンクリートの量+10分の湧水量100kg分)/(模擬トンネルに吹付けた急結性吹付けコンクリートの量+10分の湧水量100kg分)×100(%)で算出した。
粉じん量:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、模擬トンネルに吹付けた。その後、吹付け場所より3mの定位置で粉じん量を測定した。
固結量:コンクリートと急結剤のY字状の合流管を試験終了後、水で洗い流し、乾燥させてからの固結量を測定した。測定は、固結量=使用後のY字合流管の重量-使用前のY字合流管の重量で算出した。
【0046】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、トンネル等の吹付け作業において、高い急結性が得られ、長期的な強度発現性を求められる箇所への適用が可能となる。