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  • 特開-電力変換システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129171
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/16 20060101AFI20220829BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220829BHJP
【FI】
H02J3/16
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027768
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】久野村 健
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊匡
(72)【発明者】
【氏名】永井 匠
【テーマコード(参考)】
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G066AD14
5G066DA06
5G066HA15
5G066HA19
5G066HB03
5H770AA09
5H770BA11
5H770CA02
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770KA03Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電源および送電線路を増強することなく、電源からの送電範囲を拡大可能とする電力変換システムを提供する。
【解決手段】電源から、送電線路を介して複数の変電所および列車負荷へ電力を供給するき電系統に適用される電力変換システムであって、電力変換システムの制御装置は、送電線路に接続した位置の接続点実効電圧の値が入力され、入力された接続点実効電圧の値を下限値以上であり上限値以下の値として出力するリミッタ部16と、リミッタ部の出力値から接続点実効電圧の値を引いた差に追従する値であって、力率が所定の値となるように電力変換システムの出力電力指令値を演算する固定力率制御部19と、を備える。リミッタ部の上限値は、送電線路の所定の位置における電流値に少なくとも基づいて調整される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から、送電線路を介して複数の変電所および列車負荷へ電力を供給する電力系統に適用される電力変換システムであって、
前記電力変換システムが前記送電線路に接続した位置の接続点実効電圧の値が入力され、入力された前記接続点実効電圧の値を下限値以上であり上限値以下の値として出力するリミッタ部と、
前記リミッタ部の出力値から前記接続点実効電圧の値を引いた差を出力する減算器と、
前記差に追従する値であって、出力電力の力率が所定の値となるように前記電力変換システムの出力電力指令値を演算する固定力率制御部と、を備え、
前記リミッタ部の前記上限値は、前記送電線路の所定の位置における電流値に少なくとも基づいて調整される、電力変換システム。
【請求項2】
前記リミッタ部の前記下限値は、前記送電線路の前記所定の位置における電流値に少なくとも基づいて調整される、請求項1記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記送電線路の前記所定の位置における電流値を取得する電流センサと、
前記所定の位置における電圧値を取得する電圧センサと、
前記電流値と前記電圧値とを用いて前記所定の位置における電力値を演算する電力演算部と、
前記電力値に所定のゲインを乗じた積を用いて前記上限値を調整するための調整値を演算する調整部と、
前記調整値と予め設定された値とを加算した和を調整後の前記上限値として前記リミッタ部へ出力する加算器と、を更に備えた請求項1記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記送電線路の前記所定の位置における電流値を取得する電流センサと、
前記所定の位置における電圧値を取得する電圧センサと、
前記電流値と前記電圧値とを用いて前記所定の位置における電力値を演算する電力演算部と、
前記電力値に所定のゲインを乗じた積を用いて前記下限値を調整するための第2調整値を演算する第2調整部と、
前記第2調整値と予め設定された値とを加算した和を調整後の前記下限値として前記リミッタ部へ出力する第2加算器と、を更に備えた請求項2記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記電源から最も離れた位置にある前記変電所へ電力を供給する前記送電線路のいずれかの場所に接続されている、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本の電力系統には、大きく分けて東地域の50Hzと西地域の60Hzとの異なる周波数が存在している。そのため、電力系統の周波数が異なる地域にわたって走行する交流電気鉄道の車両へ電力を供給する電源システムは、車両を60Hz専用とする場合には、電力の周波数を50Hzから60Hzに変換する周波数変換装置(FC:Frequency Converter)が必要となる。
【0003】
また、高速鉄道の列車負荷は大電力の負荷であるため、電源システムからの送電距離が長い場合には、安定的に電力を供給することが難しい課題がある。列車本数の増加などにより列車負荷が大きくなる場合において、回転形FCもしくは電力会社の変電所といった電源から離れた末端の電力系統に対して安定した電力を供給できない可能性があった。
【0004】
電源から離れた末端の電力系統にも安定した電力を供給するためには、電源や送電線路を増強することが考えられる。電源や送電線路を増強すると、電源から離れた末端の電力系統に対してより大きい電力を電源から供給することが可能となり、安定した電力を供給することができる。しかしながら、電源や送電線路を増強すると既存の設備を変更することとなり、増強のための費用や時間を要してしまう。
【0005】
そこで、電源や送電線路の増強を避ける手段として、末端の電力系統の近傍に電力変換システム(例えば静止形FC)を接続し、その接続点の電圧変動に応じて固定力率で電力を供給することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-191714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では末端の電力系統における電圧変動に応じて電力変換システムから電力が出力されるため、列車負荷の増加に対して、電力変換システムの出力を十分に上げられない課題がある。
【0008】
例えば、電力変換システムの接続点における電圧の実効値が列車負荷の増加に伴い電圧指令値を下回った場合に、電圧指令値からの電圧変動分に応じて電力変換システムから電力が出力されるため、列車負荷の増大に対し電力変換システムの出力が十分には追従しない。また、電力変換システムの出力を上げるために電圧指令値を引き上げると、列車負荷が小さくても電力変換システムの出力が大きくなり、電力変換システムから回転形FCもしくは電力会社変電所に対し電力を逆潮流させてしまう場合があるため、電圧指令値はむやみに引き上げられない。
【0009】
このため、例えば回転形FCもしくは電力会社変電所といった電源の送電範囲を拡大して列車負荷が増大したときに、末端の電力系統等に固定力率電圧制御を行う電力変換システムを接続しても、送電範囲拡大に伴う列車負荷の増加分は電源が主として負担することとなり、電源や送電線路の増強が必要となってしまう。また、列車負荷の増加に対し電力変換システムの出力が十分に追従できないため、電力を安定に供給できない。
【0010】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、電源からの送電範囲を拡大して列車負荷が増大しても、電源や送電線路を増強することなく、安定した電力の供給を実現する電力変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態による電力変換システムは、電源から、送電線路を介して複数の変電所および負荷へ電力を供給する電力系統に適用される電力変換システムであって、前記電力変換システムが接続している回路の接続点電圧実効値が入力され、入力された前記接続点電圧実効値を下限電圧指令値以上であり上限電圧指令値以下の値として出力するリミッタ部と、前記リミッタ部の出力値から前記接続点電圧実効値を引いた差を出力する減算器と、前記差に追従する値であって、出力電力の力率が所定の値となるように前記電力変換システムの出力電力指令値を演算する固定力率制御部と、を備え、前記リミッタ部の前記下限電圧指令値は、前記送電線路の所定の位置における電流値に基づいて調整される、電力変換システム。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態の電力変換システムを適用した電力系統の一構成例を概略的に示す図である。
図2図2は、図1に示す電力変換システムの制御装置の一構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態の電力変換システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の電力変換システムを適用した電力系統の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換システムは、回転形FCもしくは電力会社変電所といった電源から供給される電力を列車負荷へ供給する電力系統に適用される。
【0014】
図1に示す電力系統は、電源PSと、複数の変電所21-24と、電源PSと変電所21との間に接続された送電線路1と、変電所21と変電所22との間に接続された送電線路2と、変電所22と変電所23との間に接続された送電線路3と、変電所23と変電所24との間に接続された送電線路4と、末端の電力系統の近傍において送電線路4に接続された電力変換システム10と、を備える。電力変換システム10は、電流センサCTと、電圧センサVS1、VS2とを備えている。なお、本実施形態では、図1に示す電力系統において電源PSからの送電範囲を変電所21-22から変電所21-24へ拡大したものとして説明する。
【0015】
電源PSは、例えば、回転形FCや電力会社変電所といった電源であって、変電所21-24に三相交流電力を供給する。
【0016】
変電所21-24のそれぞれは、送電線路1-4を介して電源PSから供給された三相交流電力を単相交流電力に変換して出力する変圧器を備えている。本実施形態では、変電所21-24のそれぞれは、例えばスコット変圧器を備えている。スコット変圧器は、三相交流電圧を、90°の位相差のある単相電圧2回路に、つまりM座とT座との二相に変換して出力する。変電所21-24は、M座とT座とのそれぞれの単相交流電力を出力する。変電所21-24から出力された単相交流電力は、列車負荷に供給される。
【0017】
電流センサCTは、送電線路2に設置されている。電流センサCTは、変電所21から出力される三相交流電力の少なくとも二相の電流値を検出する。電流センサCTは、検出した電流値を電力変換システム10の制御装置に送信する。なお、電流センサCTは、少なくとも末端の電力系統に供給される電流を検出することが望ましく、例えば拡大した送電範囲の前段である、送電線路2の変電所22の近傍に設置することが望ましい。
【0018】
電圧センサVS1は、電流センサCTにより電流値が検出される送電線路2の位置に設置されている。電圧センサVS1は、電流センサCTにより電流値が検出される二相の電圧値を少なくとも検出する。電圧センサVS1は、電流値が検出される送電線路2の地点における電圧値を検出し、検出した電圧値を電力変換システム10の制御装置に送信する。
【0019】
電圧センサVS2は、電力変換システム10が接続している位置において送電線路4に設置されている。電圧センサVS2は、電力変換システム10が接続している位置における送電線路4の接続点電圧実効値を検出し、検出した接続点電圧実効値を電力変換システム10の制御装置に送信する。
【0020】
電力変換システム10は、電源PSと離れた位置において送電線路に接続される。本実施形態では、電力変換システム10は、末端の電力系統(拡大した送電範囲である変電所23-24の電力系統)の送電線路4に接続されている。電力変換システム10は、三相交流電力を直流電力に変換するコンバータおよび変圧器と、直流電力を交流電力に変換するインバータおよび変圧器と、電力変換システム10を制御する制御装置(図2に示す)と、を備えている。
【0021】
なお、本実施形態では、電力変換システム10は送電線路4に三相交流電力を供給するように構成されているが、例えば単相交流電力を出力するように構成されてもよい。例えば、電力変換システム10はM座もしくはT座の二相の単相交流電力を出力してもよい。その場合には、電力変換システム10は、例えば変電所21-23の後段に各相の単相交流電力を供給するように接続され得る。
【0022】
本実施形態では、電力変換システム10の制御装置は、固定力率電圧制御の電圧指令値を電流センサCTで検出された電流値および電圧センサVS1で検出された電圧値により調整している。
図2は、図1に示す電力変換システム10の制御装置の一構成例を説明するための図である。
電力変換システム10の制御装置は、電力演算部11と、フィルタ部12と、ゲイン部13U、13Bと、上限調整部14Uと、下限調整部14Bと、加算器15U、15Bと、リミッタ部16と、減算器17と、自動電圧調整部18と、固定力率制御部19と、を備えている。
【0023】
電力演算部11は、電流センサCTで検出された電流値と、電圧センサVS1で検出された電圧値とを取得し、送電線路2から変電所22に供給されている電力の値を演算する。電力演算部11は、電流センサCTで検出された電流値と電圧センサVS1で検出された電圧値とから、送電線路2から変電所22に供給されている有効電力の値を演算してもよい。電力演算部11は、演算した値をフィルタ部12へ出力する。なお、電圧センサVS1は省略されてもよく、その場合には、電力演算部11は、電流センサCTで検出された電流値を取得し、取得した電流値をフィルタ部12へ出力する。
【0024】
フィルタ部12は例えばローパスフィルタやバンドパスフィルタを備え、電力演算部11で演算された電力値(もしくは電流値)を取得し、取得した値のノイズを除去する。フィルタ部12は、ノイズ除去後の値をゲイン部13U、13Bへ出力する。
【0025】
ゲイン部13Uは、フィルタ部12から出力された値に予め設定されたゲインを乗じた積を出力する。
上限調整部14Uは、ゲイン部13Uから出力された値に基づいて、リミッタ部16の上限電圧指令値を調整するための第1調整値を出力する。第1調整値は、例えば、送電線路2から変電所22に供給されている電力の値が所定の閾値を超えたときに、リミッタ部16の上限電圧指令値が小さくなるように設定される。本実施形態では、第1調整値はゲイン部13Uから出力された値に応じた値であって、例えば-3.0kV以上0.0kV以下の値である。上限調整部14Uは、例えば、ゲイン部13Uから出力された値に対する第1調整値を演算する数式を用いてもよく、ゲイン部13Uから出力された値に対する第1調整値を格納した第1テーブルを備え、第1テーブルを用いて第1調整値を取得してもよい。
【0026】
加算器15Uは、上限調整部14Uから出力された第1調整値と、予め設定された上限値とを加算した和(上限電圧指令値)を出力する。なお、本実施形態では、加算器15Uは、予め設定された上限値(80.0kV)に第1調整値(-3.0kV以上0.0kV以下)を加算した和を調整後の上限電圧指令値として出力する。
【0027】
ゲイン部13Bは、フィルタ部12から出力された値に予め設定されたゲインを乗じた積を出力する。ゲイン部13Bで用いられるゲインの値は、ゲイン部13Uで用いられるゲインの値とは独立して設定することができる。ゲイン部13Bで用いられるゲインの値とゲイン部13Uで用いられるゲインの値とを共通の値にできる場合には、ゲイン部13Uとゲイン部13Bとのいずれかを省略しても構わない。その場合には、上限調整部14Uと下限調整部14Bとに共通の調整値が入力される。
【0028】
下限調整部14Bは、ゲイン部13Bから出力された値に基づいて、リミッタ部16の下限電圧指令値を調整するための第2調整値を出力する。第2調整値は、例えば、送電線路2から変電所22に供給されている電力の値が所定の閾値を超えたときに、リミッタ部16の下限電圧指令値が大きくなるように設定される。本実施形態では、第2調整値はゲイン部13Bから出力された値に応じた値であって、例えば0.0kV以上3.0kV以下の値である。下限調整部14Bは、例えば、ゲイン部13Bから出力された値に対する第2調整値を演算する数式を用いてもよく、ゲイン部13Bから出力された値に対する第2調整値を格納した第2テーブルを備え、第2テーブルを用いて第2調整値を取得してもよい。
【0029】
加算器15Bは、下限調整部14Bから出力された第2調整値と、予め設定された下限値とを加算した和(下限電圧指令値)を出力する。なお、本実施形態では、加算器15Bは、予め設定された下限値(77.0kV)に第2調整値(0.0kV以上3.0kV以下)を加算した和を調整後の下限電圧指令値として出力する。
【0030】
リミッタ部16は、電圧センサVS2から、電力変換システム10が送電線路4に接続している接続点電圧実効値を取得する。また、リミッタ部16は、加算器15Uから入力された上限電圧指令値を上限値とし、加算器15Bから入力された下限電圧指令値を下限値として、下限値以上であって上限値以下である値を出力する。すなわち、リミッタ部16は、接続点電圧実効値が下限電圧指令値未満であるときには、下限値を出力する。リミッタ部16は、接続点電圧実効値が下限電圧指令値以上であって上限電圧指令値以下であるときには、取得した接続点電圧実効値を出力する。リミッタ部16は、接続点電圧実効値が上限電圧指令値よりも大きいときには、上限値を出力する。リミッタ部16の出力値は減算器17に入力される。
【0031】
減算器17は、リミッタ部16の出力値から接続点電圧実効値を引いた差を演算し、自動電圧調整部18へ出力する。
自動電圧調整部18は、電力変換システム10から出力される実効電圧が、減算器17から入力された値に追従するように(接続点電圧実効値が下限電圧指令値以上、上限電圧指令値以下となるように)、電力変換システム10の出力指令値を演算して出力する。自動電圧調整部18は、例えば、スロープ付きの比例積分制御を行う。自動電圧調整部18の出力値(出力指令値)は、固定力率制御部19に入力される。なお、自動電圧調整部18で演算される出力指令値は、例えば、皮相電力の出力指令値である。
【0032】
固定力率制御部19は、自動電圧調整部18の出力値を用いて電力変換システム10の出力指令値を演算する。固定力率制御部19は、電力変換システム10の出力電力の力率が予め設定された値となるように、電力変換システム10の出力指令値(有効電力出力指令値および無効電力出力指令値)を演算する。なお、本実施形態の電力変換システム10は、三相交流電力を出力するように構成されている。この場合、固定力率制御部19は、電力変換システム10の有効電力出力指令値と、無効電力出力指令値とをそれぞれ演算して出力してもよい。固定力率制御部19から出力された出力指令値は電力変換システム10に送信され、電力変換システム10は出力指令値を実現するように制御される。
【0033】
上記のように、本実施形態の電力変換システム10では、送電線路2から変電所22に供給されている電力(又は電流)に応じてリミッタ部16の上限電圧指令値と下限電圧指令値とを調整することにより、接続点電圧実効値の変動を抑制するとともに、送電線路2から変電所22に供給されている電力(又は電流)の増減に応じて電力変換システム10の出力指令値を調整することができる。
【0034】
例えば、リミッタ部16で設定されている上限電圧指令値と下限電圧指令値とが送電線路2から変電所22に供給されている電力(又は電流)に応じて調整されず、予め設定された一定の値に固定されている場合、接続点電圧実効値がリミッタ部16の下限電圧指令値から下回った差分に応じて電力変換システム10が出力するため、列車負荷の増加に対し、電力変換システム10の出力は十分には追従しない。
したがって、列車負荷の増加に対し電力変換システム10の出力が追従できない電力は、電源PSが負担しなければならない。
【0035】
これに対し、本実施形態の電力変換システム10では、列車負荷の増加に応じてリミッタ部16の下限電圧指令値が調整される。このことにより、送電線路2から変電所22に供給されている電力の一定の部分が電力変換システム10から出力されることとなり、列車負荷の増加に対し電源PSの負担の増加が抑制されるように電力変換システム10が制御される。
【0036】
また、本実施形態の電力変換システム10では、列車負荷に応じてリミッタ部16の上限電圧指令値を調整することが可能である。このことにより、列車負荷の大きさにかかわらず上限電圧指令値と下限電圧指令値の幅を小さくすることができ、接続点電圧実効値の変動が抑制されるように電力変換システム10が制御される。
【0037】
したがって、本実施形態の電力変換システム10を適用することにより電力系統全体の電圧変動を抑制できるとともに、電力変換システム10が積極的に列車負荷を負担することができ、電源PSや送電線路の増強を避け、電源PSの送電範囲の拡大を実現することができる。
すなわち、本実施形態によれば、電源および送電線路を増強することなく、電源からの送電範囲を拡大可能とする電力変換システムを提供することができる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1-4…送電線路、10…電力変換システム、11…電力演算部、12…フィルタ部、13B…ゲイン部、13U…ゲイン部、14B…下限調整部、14U…上限調整部、15B…加算器、15U…加算器、16…リミッタ部、17…減算器、18…自動電圧調整部、19…固定力率制御部、PS…電源、21-24…変電所、VS1…電圧センサ、VS2…電圧センサ、CT…電流センサ
図1
図2