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  • 特開-デンタルミラー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129179
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】デンタルミラー
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/247 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61B1/247
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027780
(22)【出願日】2021-02-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】521080820
【氏名又は名称】中村 佳代
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳代
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA08
4C161CC02
4C161HH05
4C161WW03
(57)【要約】
【課題】歯科医や歯科衛生士が患者の口腔内で歯石除去などの処置をする場合に、片手でデンタルミラーとバキューム管とを同時に持つことを容易にするデンタルミラーを提供。
【解決手段】歯科治療用のバキューム管に装着されるデンタルミラーであって、ミラー本体と、バキューム管に装着されるホルダー部とを備え、ミラー本体は、ミラーと、主面にミラーを保持するミラー支持部と、ミラー支持部の裏面に固定された第1の磁石と、を備え、ホルダー部には第2の磁石が固定されており、ミラー本体とホルダー部とは第1の磁石と第2の磁石の吸引力により脱着可能に固定されるデンタルミラー。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療用のバキューム管に装着されるデンタルミラーであって、
ミラー本体と、前記バキューム管に装着されるホルダー部とを備え、
前記ミラー本体は、ミラーと、主面に前記ミラーを保持するミラー支持部と、前記ミラー支持部の裏面に固定された第1の磁石と、を備え、
前記ホルダー部には第2の磁石が固定されており、
前記ミラー本体と前記ホルダー部とは前記第1の磁石と前記第2の磁石の吸引力により脱着可能に固定されることを特徴とするデンタルミラー。
【請求項2】
前記第1の磁石は2つ以上の単位磁石から構成される一列に並んだ磁石群からなり、且つ、前記第2の磁石は前記第1の磁石よりも1つ以上多い単位磁石から構成される一列に並んだ磁石群からなり、または、
前記第2の磁石は2つ以上の単位磁石から構成される一列に並んだ磁石群からなり、且つ、前記第1の磁石は前記第2の磁石よりも1つ以上多い一列に並んだ単位磁石から構成される磁石群からなる、請求項1に記載のデンタルミラー。
【請求項3】
前記ホルダー部は管状体であり、前記バキューム管の周面に対して摺動可能に装着される請求項1または2に記載のデンタルミラー。
【請求項4】
前記ホルダー部は、割スリーブを有する管状体である請求項1~3の何れか1項に記載のデンタルミラー。
【請求項5】
前記ミラーは、凹面鏡または凸面鏡である請求項1~4の何れか1項に記載のデンタルミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医や歯科衛生士が患者の口腔内で歯石除去などの処置をする場合に、片手でデンタルミラーとバキューム管とを同時に持つことを容易にするデンタルミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科医や歯科衛生士が歯石除去などの処置を行う際、片手に歯石除去のための超音波スケーラー等の器具を持ち、他の片手にバキューム管を持ち、口腔内に溜まる水をバキューム管で吸引除去しながら処置を行っていた。このような処置において、下顎前歯の裏側や上顎前歯の裏側等を上から直視することが難しかった。そのために、下顎前歯の裏側や上顎前歯の裏側のような上から直視しにくい個所を処置する場合には、バキューム管をデンタルミラーに持ちかえて、その個所の方向にデンタルミラーの鏡面を当てて鏡視しながら行うことがあった。しかしながら、この際にはバキューム管で吸引除去する作業を停止しているために、患者の口腔内に水が溜まるという問題があった。
【0003】
上述のような問題を解決するために、術者がミラーと超音波スケーラーで処置を行う際に、アシスタントにバキューム管を持たせてバキュームを任せたり、バキューム管を持っている手でデンタルミラーを併せ持って、その個所の方向に鏡面を当てて鏡視したりしながら処置を行うこともあった。
【0004】
しかしながら、アシスタントの補助を受けるときには人手が掛かり、また、バキューム管を持っている手でデンタルミラーを併せ持ってバキューム管とデンタルミラーとをそれぞれ操作するには、テクニックが必要であったり、手に疲労感を覚え易くなったりする等の問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、下記特許文献1は、デンタルミラーの一部にU字状に折り曲げた柄を取り付け、この柄を別に設けたバキュームチップにはさみ着けたことを特徴とするデンタルミラーを開示する。
【0006】
また、下記特許文献2は、手で持つことができるバキュームチップ本体と、このバキュームチップ本体に先端部または後端部よりの部位より挿入して任意の位置に着脱可能に嵌合固定することができる嵌合部材と、バキュームチップ本体に沿い且つこのバキュームチップ本体の軸心方向にスライド移動可能に嵌合部材に支持されたデンタルミラーホルダー、このデンタルミラーホルダーを任意の位置で前記嵌合部材に固定する固定具、デンタルミラーホルダーの先端部に取り付けられた治療時の舌や粘膜肉部等の障害物を排除する排除板とからなる排除機構等で構成し、バキュームチップ本体へ取り付けた嵌合部材側すなわちバキュームチップ側取り付け腕とデンタルミラーホルダー側へ取り付けた固定具すなわちデンタルミラーホルダー側固定具とが相互回転機構により連結されていることを特徴とするバキュームチップを開示する。
【0007】
また、デンタルミラーに関する技術ではないが、下記特許文献3は、歯科治療用ハンドピースに着脱自在に装着されるクリップ部材と、該クリップ部材に対してされる着脱自在に装着されるレンズ部材とから成り、クリップ部材とレンズ部材とはボールジョイントに着脱自在に連結されることを特徴とする歯科治療ハンドピース用拡大鏡を開示する。また、クリップ部材は、一部を切リ欠いた円環状部材から成リ、該切リ欠き部を通してハンドピースに挿脱自在に装着され、かつ、該ハンドピースに弾性固定されるものであることを特徴とする歯科治療ハンドピース用拡大鏡を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-274082号公報
【特許文献2】特開2001-57989号公報
【特許文献3】特開2004-216016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示されたバキュームチップによれば、デンタルミラーで鏡視できる部分が狭く、また、見たい部分を見るためには、バキューム管の方向も変える必要があり、見たい部分が見えにくかった。また、ミラーの直下での吸引しかできないために、喉にたまった水を吸引しようとする場合には、ミラーが口腔粘膜に接触して患者に痛みを感じさせる懸念があった。
【0010】
また、上記特許文献2に開示されたバキュームチップにデンタルミラーを装着させる構造は、角度のついていない直線に近いバキューム管にしか採用することができず、歯科医院で多く採用されている、80~90度程度の角度が付いたバキューム管に採用することは難しかった。また、特許文献2に開示されたデンタルミラーを装着させる構造は、ネジを含む多くの部品を要するために生産コストが高いとともに、口腔内での処置の際に微細な部分の滅菌が不十分になる懸念もあると思われる。
【0011】
また、上記特許文献3に開示された歯科治療用ハンドピースに装着されるレンズ部材は、単なる拡大鏡であり、歯の裏面等の直視しにくい部分を鏡視できるようなものではなかった。
【0012】
本発明は上述した課題を解決し、歯科医や歯科衛生士が患者の口腔内で歯石除去などの処置をする場合に、片手でデンタルミラーとバキューム管とを同時に保持することを容易にするデンタルミラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態は、歯科治療用のバキューム管に装着されるデンタルミラーであって、ミラー本体と、バキューム管に装着されるホルダー部とを備え、ミラー本体は、ミラーと、主面にミラーを保持するミラー支持部と、ミラー支持部の裏面に固定された第1の磁石と、を備え、ホルダー部には第2の磁石が固定されており、ミラー本体とホルダー部とは第1の磁石と第2の磁石の吸引力により脱着可能に固定されるデンタルミラーである。このようなデンタルミラーによれば、歯科医や歯科衛生士が患者の口腔内で歯石除去などの処置をする場合に、片手でデンタルミラーを装着させたバキューム管を操作することができる。また、ミラー本体が、バキューム管に装着されたホルダー部と磁石で脱着可能に固定されているために、鏡視する必要がないときには、ミラー本体のみを容易に取り外すことができるために、喉にたまった水を吸引しようとする場合等に口腔内で邪魔にならない。
【0014】
また、第1の磁石は2つ以上の単位磁石から構成される一列に並んだ磁石群からなり、且つ、第2の磁石は第1の磁石よりも1つ以上多い単位磁石から構成される一列に並んだ磁石群からなり、または、第2の磁石は2つ以上の単位磁石から構成される一列に並んだ磁石群からなり、且つ、第1の磁石は第2の磁石よりも1つ以上多い一列に並んだ単位磁石から構成される磁石群からなることが好ましい。このように、一列に並んだ複数の単位磁石から構成される磁石群から構成される第1の磁石と第2の磁石とを用いて脱着可能に固定することによれば、各磁石群の互いに吸引される単位磁石の組み合わせによって位置を変更できるために、容易にミラーの位置を先端側に移動させたり、後端側に移動させたりして固定することができる。
【0015】
また、ホルダー部は管状体であり、バキューム管の周面に対して摺動可能に装着されることが、摺動させることにより、鏡視する部分の方向を容易に調整することができる点から好ましい。
【0016】
また、ホルダー部は、割スリーブを有する管状体であることが、バキューム管の周面に対する装着性に優れる点から好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のデンタルミラーによれば、歯科医や歯科衛生士が患者の口腔内で歯石除去などの処置をする場合に、片手でデンタルミラーとバキューム管とを同時に保持することを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態のデンタルミラー10の模式図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図を示す。また、(f)はホルダー部2の底面、(g)は、ミラー本体1の底面の模式図である。
図2図2は、デンタルミラー10を歯科治療用のバキューム管20に装着する方法を説明するための模式図である。
図3図3は、互いに吸引する第1の磁石と第2の磁石との位置関係を変更して、ミラー本体1を後端側に移動させたときの様子を説明する説明図である。
図4図4は、バキューム管20の周面でホルダー部2の管状体2aを摺動させて90度向きを変えたときの状態を説明する説明図である。
図5図5は、デンタルミラー10を用いて口腔内を処置しているときの様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の歯科治療用のバキューム管に装着されるデンタルミラーについて、図面を参照して詳しく説明する。図1は、本発明に係るデンタルミラーの一実施形態である、デンタルミラー10の模式図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図を示す。また、(f)はデンタルミラー10を構成する、ホルダー部2の底面、(g)は、ミラー本体1の底面の模式図である。
【0020】
図1中、1はミラー本体、2はバキューム管に装着されるホルダー部である。
【0021】
ミラー本体1は、板状のミラー支持部4と、ミラー支持部4の主面に配されたミラー5と、ミラー支持部4の裏面に固定された第1の磁石7(単位磁石7a,7bの2個)と、ミラー支持部4に所定の傾斜を保持して連接する長尺平板状の柄部3と、を備える。ミラー5としては、一般的なミラーである平面鏡のほか、像を拡大して映す凹面鏡、広い範囲の像を映す凸面鏡等が挙げられる。凹面鏡は、小さい部分を大きくして鏡視させる点から好ましい。また、凸面鏡は、小さいミラーの表面で広い範囲を鏡視させる点から好ましい。
【0022】
一方、ホルダー部2は、バキューム管に装着するための管状体2aと、管状体2aの周面に固定された第2の磁石6(単位磁石6a,6b,6cの3個)と、を備える。管状体2aには、バキューム管への装着を容易にするために、割スリーブvが形成されていることが好ましい。なお、管状体2aまたは柄部3の何れかが金属製である場合には、第1の磁石7又は第2の磁石6の何れかを省略してもよい。
【0023】
図1を参照すれば、柄部3はミラー支持部4に対して所定の傾斜を保持して連接されている。柄部3は、ミラー本体1をホルダー部2に装着するときの掴み部になるとともに、処置の際にバキューム管をつかみやすくさせる。
【0024】
次に、図2を参照して、上述したようなデンタルミラー10を歯科治療用のバキューム管20に装着する方法を説明する。バキューム管20には、先端にバキュームチップ21が装着されている。バキューム管20は、好ましくは、80~110度程度の角度が付いた曲部を有するバキューム管が、作業性に優れる点から好ましい。
【0025】
はじめに、図2(a)に示すように、バキューム管20に管状体2aを装着する。管状体2aに、図1(c)で示したような割スリーブvが形成されている場合には、割スリーブvを開きながらバキューム管20に押し当てることにより、バキューム管20に管状体2aを装着することができる。
【0026】
そして、図2(b)に示すように、バキューム管20に装着された管状体2aに固定された第2の磁石6(単位磁石6a,6b,6c)に、ミラー本体1のミラー支持部4の裏面に固定された第1の磁石7(単位磁石7a,7b)を合わせて単位磁石6aと単位磁石7a,単位磁石6bと単位磁石7bとを互いに吸引させることにより、ミラー本体1とホルダー部2とが一体化されて磁力によって固定される。このようにして、図2(c)に示すように、バキューム管20にデンタルミラー10が装着される。
【0027】
また、図3に示すように、単位磁石6bと単位磁石7a,単位磁石6cと単位磁石7bとを互いに吸引させた場合も、ミラー本体1とホルダー部2とが一体化されて磁力によって固定される。この場合、図2(c)に示したミラー本体1をホルダー部2に固定した場合に比べて、ミラー5の位置が後端側に移動されて固定されている。このように、一列に並んだ複数の単位磁石(単位磁石7a,7b)から構成される第1の磁石7と一列に並んだ複数の単位磁石(単位磁石6a,6b,6c)から構成される第1の磁石6とを用いて脱着可能に固定することによれば、対向する単位磁石の組み合わせを変更することによってミラーの位置を前後方向に容易に変更することができる。
【0028】
また、図4に示すように、バキューム管20の周面でホルダー部2の管状体2aを摺動させて向きを変えることもできる。図4では、図2(c)の向きを基準として、ミラー5の向きを90度変えている。このように、管状体2aを摺動させてミラー5の向きを鏡視したい向きに角度を変えることにより、例えば、上顎前歯裏側のような鏡視しにくいような箇所等も広く見えるような方向に変更して処置を行うこともできる。
【0029】
このような本発明に係るデンタルミラーによれば、片手でデンタルミラーとバキューム管とを支持することを容易にする。図5は、デンタルミラー10を用いて口腔内を処置しているときの様子を説明する説明図である。図5に示すように、歯科医や歯科衛生士が患者の口腔内で歯石除去などの処置をする場合に、例えば、左手に 本発明に係るバキューム管20とともにデンタルミラー10を持ち、右手で歯の処置に用いられる超音波スケーラー等の器具30を持つことにより、一人で、口腔内をバキューム管20でバキュームしながら、デンタルミラー10のミラー5を鏡視することにより、上から直視しにくい歯の裏側等を超音波スケーラー等の器具30で処置することができる。
【0030】
また、例えば、直視しやすい歯の表側を処置する際には、デンタルミラー10のミラー本体1を取り外すことにより、口腔内での処置の際にミラー本体1が邪魔にならなくして、処置を行うこともできる。また、平面鏡を備えたミラー本体1、凹面鏡を備えたミラー本体、または凸面鏡を備えたミラー本体のように異なるミラーを備えたミラー本体1を用意し、状況に応じて付け替えて用いてもよい。
【0031】
以上説明したように、本発明に係るデンタルミラーによれば、歯科医や歯科衛生士が患者の口腔内で歯石除去などの処置をする場合に、片手でデンタルミラーとバキューム管とを同時に持つことを容易にし、さらに、上から見にくい部分を鏡視しやすくすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 ミラー本体
2 ホルダー部
2a 管状体
3 柄部
4 ミラー支持部
5 ミラー
6 磁石
7 磁石
10 デンタルミラー
20 バキューム管
30 器具
v 割スリーブ
図1
図2
図3
図4
図5