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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129238
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】モータおよびモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20220829BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H02K13/00 M
H02K15/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027866
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001340
【氏名又は名称】マーレエレクトリックドライブズジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】田中 全
(72)【発明者】
【氏名】植松 拓
(72)【発明者】
【氏名】井原 大貴
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 政彦
(72)【発明者】
【氏名】江口 明彦
【テーマコード(参考)】
5H613
5H615
【Fターム(参考)】
5H613AA01
5H613AA02
5H613BB01
5H613GA01
5H613GB08
5H613KK04
5H615AA01
5H615BB04
5H615PP26
5H615SS15
(57)【要約】
【課題】樹脂の粉末や破片によるモータの信頼性低下を抑制する。
【解決手段】本発明に係るブラシ付きモータ10は、導電性を有するバスバー28と、バスバー28が挿入される溝20gを有する、樹脂からなるボス20eと、を備える。ボス20eは、バスバー28が溝20gから離脱することを阻止するように溝20gの開口部を塞ぐ溶解部20iを有する。溝20gは、ブラシ付きモータ10の軸方向に凹んでいる。バスバー28の軸方向と平行な断面は、軸方向に長い。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するバスバーと、
前記バスバーが挿入される溝を有する、樹脂からなる突出部と、
を備え、
前記突出部は、前記バスバーが前記溝から離脱することを阻止するように前記溝の開口部を塞ぐ溶解部を有することを特徴とする、モータ。
【請求項2】
前記溝は、前記モータの軸方向に凹んでおり、
前記軸方向と平行且つ前記バスバーの延在方向と垂直な前記バスバーの断面は、前記軸方向に長いことを特徴とする、請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記モータは、ブラシ付きモータであることを特徴とする、請求項1または請求項2記載のモータ。
【請求項4】
前記モータは、EMC対策用のコンデンサをさらに備え、
前記バスバーは、前記コンデンサに接続されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載のモータ。
【請求項5】
樹脂からなる突出部に形成された溝に、導電性を有するバスバーを挿入する工程と、
前記バスバーが前記溝から離脱することを阻止するように前記突出部の一部を溶解して前記溝の開口部を塞ぐ工程と、
を備えることを特徴とする、モータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよびその製造方法に関し、特に、導電性のバスバーを有するモータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部部品の摩耗や欠損などにより摩耗粉や破片などがモータの内部に生じる場合がある。信頼性の高いモータを実現するためには、このような摩耗粉や破片はできる限り抑制することが好ましい。
【0003】
このため、例えば、シャフトの後端側外周面に取り付けた整流子とブラシが摺接する摺接部の径方向の外周を覆うようにブラシホルダにリブを形成し、このリブにより誘導されたブラシ磨耗粉を収納するポケットを設けたブラシ付きモータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、摺接によって発生するブラシ磨耗粉はリブによって拡散を抑制され、このブラシ磨耗粉はモータ内部の拡散することなく、このブラシ付きモータ内の不特定箇所の絶縁抵抗値の低下を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-197930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータの内部には、様々な導電性の部材が取り付けられる。近年、モータの一部の部品は樹脂で製造されており、このような樹脂製部品に導電性の部材を、例えば圧入などによって取り付けるときに、樹脂が削れて樹脂の粉末や破片がモータの内部に残る可能性がある。しかしながら、このような樹脂の粉末や破片であっても、モータの信頼性を低下させ得るため、その発生を抑制する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータは、導電性を有するバスバーと、前記バスバーが挿入される溝を有する、樹脂からなる突出部と、を備え、前記突出部は、前記バスバーが前記溝から離脱することを阻止するように前記溝の開口部を塞ぐ溶解部を有する。この態様によれば、バスバーを取り付けるときに樹脂の粉末や破片が飛散する可能性を低減することができる。このため、樹脂の粉末や破片によるモータの信頼性低下を抑制することができる。
【0007】
前記溝は、前記モータの軸方向に凹んでおり、前記軸方向と平行且つ前記バスバーの延在方向と垂直な前記バスバーの断面は、前記軸方向に長くてもよい。この態様によれば、モータの径方向に占めるバスバーの領域を低減することができる。このため、モータ内のスペースを有効に活用することができる。
【0008】
前記モータは、ブラシ付きモータであってもよい。ブラシ付きモータは、ブラシ及びコンミテータを内部に有する。ブラシはコンミテータに押し当てられるため、ブラシは径方向に延在するようにモータ内に配置する必要がある。この態様によれば、径方向に延在するブラシがある場合においても、モータの径方向に占めるバスバーの領域を低減することができため、モータ内のスペースを有効に活用することができる。
【0009】
前記モータは、EMC対策用のコンデンサをさらに備えてもよい。前記バスバーは、前記コンデンサに接続されていてもよい。この態様によれば、モータの径方向に占めるEMC対策用に用いられるバスバーの領域を低減することができる。
【0010】
上記課題を解決するために、別の本発明に係るモータの製造方法は、導樹脂からなる突出部に形成された溝に、導電性を有するバスバーを挿入する工程と、前記バスバーが前記溝から離脱することを阻止するように前記突出部の一部を溶解して前記溝の開口部を塞ぐ工程と、を備える。この態様によれば、バスバーを取り付けるときに樹脂の粉末や破片が飛散する可能性を低減することができるため、モータの信頼性低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂の粉末や破片によるモータの信頼性低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るブラシ付きモータの斜視図である。
図2】本実施形態に係るブラシアセンブリの斜視図である。
図3】本実施形態に係るバスバーの斜視図である。
図4】(a)は、ボス周辺の断面図である。(b)は、ボスの上面図である。
図5】本実施形態に係るブラシアセンブリの斜視図である。
図6】溶解部周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態に係るブラシ付きモータ10の斜視図である。ブラシ付きモータ10は、ブラシアセンブリ12、コンミテータ14、ハウジング16、及びシャフト18を有する。ハウジング16は、外周が円筒形に形成された椀状に形成されている。ブラシアセンブリ12は全体的に円盤状に形成されており、ハウジング16の開口に取り付けられることにより、円柱状のブラシ付きモータ10を構成する。ハウジング16には、ブラシ付きモータ10の中心軸と同軸の挿入孔が形成されており、この挿入孔にシャフト18が挿入される。コンミテータ14は、このシャフト18の外周上に設けられている。ブラシアセンブリ12にも中心軸と同軸の挿入孔が形成されており、この挿入孔にシャフト18が挿入される。
【0014】
シャフト18の外周面には、コア(図示せず)が取り付けられており、このコアに巻線(図示せず)が巻回されている。ハウジング16の内周面には、このコアに対向するようにマグネット(図示せず)が配置されている。ブラシ付きモータのこれらの図示していない構成は公知であるため、これ以上の説明を省略する。
【0015】
図2は、本実施形態に係るブラシアセンブリ12の斜視図である。ブラシアセンブリ12は、ベース部材20、ブラシ22、ブラシホルダ24、ばね26を有する。ベース部材20は樹脂により形成されており、ベースプレート20a、フランジ20b、挿入孔20c、およびばねストッパ20dを有する。ベースプレート20aは、円盤状に形成されている。フランジ20bは、ベースプレート20aの縁からブラシ付きモータ10の軸方向(以下、単に「軸方向」という)に延在している。挿入孔20cは、ベースプレート20aの中心と同軸の丸孔として形成されている。この挿入孔20cに、コンミテータ14またはコンミテータ14近傍のシャフト18が挿入される。
【0016】
ブラシホルダ24は、ブラシアセンブリ12の中心に向かって延在するようにベースプレート20aに取り付けられる。ばね26が、ブラシホルダ24の中心側の開口から挿入され、次にブラシ22が同じくブラシホルダ24の中心側の開口から挿入される。こうしてブラシホルダ24は、ブラシ22をコンミテータ14に向けて移動可能に収容する。ばね26はコイルスプリングであり、先端がブラシ22の後端に、後端がばねストッパ20dに当接している。ばねストッパ20dは、フランジ20bの付近に配置されている。ばね26は、ブラシホルダ24に収容されたブラシ22をコンミテータ14に向けて付勢する。
【0017】
本実施形態では、最多で4つのブラシホルダ24がブラシアセンブリ12に取り付けることができるようにベース部材20が構成されている。すなわち、本実施形態に係るブラシ付きモータ10は、最多で4つのブラシ22を使うことができるように構成されている。本実施形態に係るブラシ付きモータ10は、この4つのうち、要求されるブラシ付きモータ10の出力などに応じて、必要な数のブラシ22のみを取り付けることができるように構成されている。これにより、共通のベース部材20、ブラシ22、ブラシホルダ24を用いて、様々な出力のブラシ付きモータ10を製造することができる。図2では、ブラシ22及びブラシホルダ24が4本の例を示している。
【0018】
ベース部材20は、ボス20eおよびバンク部20fをさらに有する。ボス20eは、後述するようにその後溶解される。図2は、ボス20eが溶解される前の状態を示している。ベース部材20は樹脂からなっており、ベースプレート20a、フランジ20b、ばねストッパ20d、ボス20e、バンク部20fは一体的に成形されている。したがって、フランジ20b、バンク部20f、およびボス20eは樹脂からなる。バンク部20fは、フランジ20bに沿って、フランジ20bと概ね同じ高さとなるようにベースプレート20aから盛り上げられている。
【0019】
ボス20eは、バンク部20fおよびフランジ20bから軸方向に突出する突出部であり、本実施形態では円柱状に形成されている。なお、ボス20eは円柱状に限定されず、例えば四角柱状に形成されていてもよい。本実施形態では、ボス20eは、ばねストッパ20dの周方向の両側に1つずつ配置されている。なお、ボス20eの配置場所や個数がこれに限られないことはもちろんである。
【0020】
フランジ20bとバンク部20fとの間には、溝20gが設けられている。この溝20gはボス20eにも続いており、溝20gはボス20eをその中心を含む平面で概ね2等分にしている。この溝20gに、バスバー28が挿入される。溝20gは、モータの軸方向に凹んでいる。溝20gは、軸方向から見ると、フランジ20bの外周面に沿うように、ところどころ緩やかな角度で交わる複数の直線によって構成されている。なお、溝20gはフランジ20bの外周面に沿うように円弧状に形成されていてもよい。
【0021】
図3は、本実施形態に係るバスバー28の斜視図である。バスバー28は、導電性を有する金属プレートで形成されている。バスバー28は、延在部28aおよび露出部28bを有する。延在部28aは、一定の高さで細長く延在している。延在部28aは、溝20gの形状に合致するように、軸方向から見てところどころ緩やかな角度で交わる複数の直線部分によって構成されている。なお、延在部28aは、軸方向から見て円弧状に形成されていてもよい。
【0022】
露出部28bは、延在部28aの両端に設けられている。露出部28bは、延在部28aからベース部材20の内部に向かって鋭角に曲げられて形成されている。露出部28bは、上方に突出する突出部28cを有している。突出部28cには、下方に凹む凹部28dが形成されている。この凹部28dに導線が配置される。
【0023】
図4(a)は、ボス20e周辺の断面図である。図4(a)に示すように、溝20gは、ボス20eを2分割するように、フランジ20bとバンク部20fとの間に形成されている。この溝20gに、導電性を有するバスバー28の延在部28aが挿入される。このとき軸方向と平行且つバスバー28の延在方向と垂直なバスバー28の断面は、軸方向に長くなる。このようにバスバー28を軸方向に長く、径方向に短く配置することにより、モータ内部のスペースを有効に活用することができる。特にブラシ付きモータ10は、ブラシ22及びコンミテータ14を内部に有する。ブラシ22はコンミテータ14押し当てられるため、ブラシ22は径方向に延在するようにブラシ付きモータ10内に配置する必要がある。このようにバスバー28を軸方向に長く、径方向に短く配置することにより、径方向に延在するブラシ22がある場合においても、径方向に占めるバスバー28の領域を低減することができため、ブラシ付きモータ10内のスペースを有効に活用することができる。
【0024】
ブラシアセンブリ12は、EMC対策用のコンデンサ30を有している。バスバー28は、このコンデンサ30に接続されている。なお、バスバー28は、コンデンサ30以外の他の構成要素の接続に用いられてもよい。
【0025】
図4(b)は、ボス20eの上面図である。本実施形態に係るボス20eは、クラッシュリブ20hを有する。クラッシュリブ20hは、ボス20eを貫通する溝20gの内部において、溝20gの両壁からボス20eの中心に向かって膨らむように、軸方向に延在している。クラッシュリブ20hを設けることにより、バスバー28を堅固に把持することができる。なお、クラッシュリブ20hが設けられていなくてもよい。
【0026】
図5は、本実施形態に係るブラシアセンブリ12の斜視図である。バスバー28が溝20gに挿入された後、バスバー28が溝20gから離脱することを阻止するようにボス20eの一部を溶解して溝20gの開口部を塞ぐ。図5は、ボス20eが溶解されて溶解部20iが形成された状態を示している。本実施形態では、ボス20eは、超音波溶着技術によって、溝20gの開口部がふさがれるようにその先端部が溶解される。こうして形成された溶解部20iは、バスバー28が溝20gから離脱することを阻止するように溝20gの開口部を塞ぐ。
【0027】
なお、超音波溶着技術以外の技術によってボス20eの先端が溶解され溶解部20iが形成されてもよい。本実施形態では、溶解部20iはドーム型に形成されているが、溶解部20iの形状がこれに限定されないことももちろんである。
【0028】
このようにボス20eの先端部を溶解してバスバー28の離脱を阻止することにより、例えばバスバー28を樹脂に圧入する場合に比べ、飛散し得る樹脂の粉末や破片を大幅に低減することができる。このため、樹脂の粉末や破片によるモータの信頼性の低下を抑制することができる。
【0029】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0030】
ある変形例では、ブラシ付きモータではないモータが、導電性を有するバスバーと、バスバーが挿入される溝を有する、樹脂からなる突出部であるボスと、を備える。ボスは、バスバーが溝から離脱することを阻止するように溝の開口部を塞ぐ溶解部を有する。例えばブラシレスモータでは、コイルの接続にバスバー使うことができ、このバスバーをこのように取り付けてもよい。この場合も、樹脂の粉末や破片の発生を抑制しつつ、モータ内部のスペースを有効に活用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 ブラシ付きモータ,12 ブラシアセンブリ,14 コンミテータ,16 ハウジング,20 ベース部材,20a ベースプレート,20b フランジ,20c 挿入孔,20d ばねストッパ,20e ボス,20f バンク部,20g 溝,20h クラッシュリブ,20i 溶解部,22 ブラシ,24 ブラシホルダ,26 ばね,28 バスバー,28a 延在部,28b 露出部,28c 突出部,28d 凹部,30 コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6