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特開2022-129249ゲート残り処理装置及びゲート残り処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129249
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ゲート残り処理装置及びゲート残り処理方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20220829BHJP
   B29C 71/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C71/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027891
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】500570427
【氏名又は名称】J&T環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】秋谷 享平
【テーマコード(参考)】
4F201
4F206
【Fターム(参考)】
4F201AA04
4F201AA11
4F201AA50
4F201AR06
4F201BA09
4F201BC02
4F201BC12
4F201BD04
4F201BR01
4F201BR05
4F206AA04
4F206AA11
4F206AA50
4F206AM32
4F206AP11
4F206AR027
4F206AR067
4F206AR11
4F206JA07
4F206JL09
4F206JP30
4F206JQ90
4F206JW22
(57)【要約】
【課題】樹脂成形体のゲート残りを処理する場合に樹脂成形体の歪みによって押圧高さ位置が変動する場合であっても、樹脂成形品の表面の損傷を回避しつつ確実にゲート残りを処理することができる、ゲート残り処理装置及びゲート残り処理方法を提供する。
【解決手段】ゲート残り処理装置1において、押圧治具10を下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の加熱温度に加熱された専用工具11を、ばね部材14による弾性力あるいはエアー圧による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融させる。また、専用工具11によるゲート残り32への押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、押圧治具10を上方向に移動させて、専用工具11によるゲート残り32への押圧を解除し、ゲート残り32を当該ゲート残り32が樹脂成形体30の表面から突出しない状態で固化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体の樹脂注入凹部に残るゲート残りを処理するゲート残り処理装置であって、
少なくとも上下方向であるZ軸方向に移動可能な移動軸に取り付けられて前記ゲート残りを押圧する押圧治具を備え、
該押圧治具は、加熱装置に取り付けられた専用工具と、前記加熱装置及び前記専用工具を前記移動軸に取り付けるための取付部とを備え、
前記押圧治具の前記専用工具は、ばね部材の弾性力あるいはエアー圧によってZ軸方向のうちの下方向に付勢された状態で前記取付部に対してZ軸方向に移動可能に前記加熱装置に取り付けられ、
前記押圧治具をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、前記加熱装置によって所定の加熱温度に加熱された前記専用工具を、前記ばね部材の弾性力あるいはエアー圧による所定の押圧力で、前記ゲート残りに対して押圧して、当該ゲート残りを溶融させ、
前記専用工具によるゲート残りへの押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、前記押圧治具を前記Z軸方向のうちの上方向に移動させて、前記専用工具によるゲート残りへの押圧を解除し、前記ゲート残りを当該ゲート残りが前記樹脂成形体の表面から突出しない状態で固化させることを特徴とするゲート残り処理装置。
【請求項2】
前記加熱装置による専用工具の加熱温度を制御する加熱温度制御部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のゲート残り処理装置。
【請求項3】
前記加熱温度制御部は、前記樹脂成形体の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料である場合に、前記加熱装置による前記所定の加熱温度を前記樹脂成形体の融点よりも高い200℃~300℃に設定することを特徴とする請求項2に記載のゲート残り処理装置。
【請求項4】
前記ばね部材の弾性力あるいはエアー圧による前記所定の押圧力を、前記樹脂成形体の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料である場合に、3kgf~5kgfに設定することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のゲート残り処理装置。
【請求項5】
前記押圧治具が取り付けられる前記移動軸は、前記Z軸方向に直交するX軸方向及びY軸方向にも移動可能なXYZ移動軸であり、該XYZ移動軸をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させるXYZ移動軸駆動部と、該XYZ移動軸駆動部による前記XYZ移動軸のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向への移動を制御するNC制御部とを備え、前記樹脂成形体の複数の樹脂注入凹部に残るゲート残りを処理することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載のゲート残り処理装置。
【請求項6】
前記NC制御部は、前記XYZ移動軸における前記Z軸方向の移動停止時間を制御することで、前記専用工具による前記ゲート残りに対する押圧時間を制御することを特徴とする請求項5に記載のゲート残り処理装置。
【請求項7】
前記樹脂成形体の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料である場合に、前記専用工具による前記ゲート残りに対する前記所定の押圧時間を1箇所につき3秒以内に設定することを特徴とする請求項6に記載のゲート残り処理装置。
【請求項8】
前記押圧治具は、前記専用工具による前記ゲート残りに対する押込量を検出するセンサを備え、前記NC制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、前記XYZ移動軸の前記Z軸方向の移動停止時間、前記XYZ移動軸の前記Z軸方向の移動速度、及び前記XYZ移動軸の前記Z軸方向の移動距離を制御することを特徴とする請求項5乃至7のうちいずれか一項に記載のゲート残り処理装置。
【請求項9】
前記専用工具を前記ゲート残りに対して押圧するに際し、前記エアー圧による所定の押圧力で前記ゲート残りに対して押圧する場合には、前記専用工具に対してエアー圧を供給するエアー圧供給部と、該エアー圧供給部による前記専用工具へのエアー圧を制御するエアー圧制御部とを備えていることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のゲート残り処理装置。
【請求項10】
樹脂成形体の樹脂注入凹部に残るゲート残りをゲート残り処理装置によって処理するゲート残り処理方法であって、前記ゲート残り処理装置が、少なくとも上下方向であるZ軸方向に移動可能な移動軸に取り付けられて前記ゲート残りを押圧するとともに、加熱装置に取り付けられた専用工具を有する押圧治具を備えたゲート残り処理方法において、
前記押圧治具をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、前記加熱装置によって所定の加熱温度に加熱された前記専用工具を、ばね部材の弾性力あるいはエアー圧による所定の押圧力で、前記ゲート残りに対して押圧して、当該ゲート残りを溶融させる押圧・溶融ステップと、
前記専用工具によるゲート残りへの押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、前記押圧治具を前記Z軸方向のうちの上方向に移動させて、前記専用工具によるゲート残りへの押圧を解除し、前記ゲート残りを当該ゲート残りが前記樹脂成形体の表面から突出しない状態で固化させる押圧解除・固化ステップとを含むことを特徴とするゲート残り処理方法。
【請求項11】
前記押圧・溶融ステップにおいて、前記加熱装置による所定の加熱温度を、前記樹脂成形体の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料である場合に、前記樹脂成形体の融点よりも高い200℃~300℃に設定することを特徴とする請求項10に記載のゲート残り処理方法。
【請求項12】
前記押圧・溶融ステップにおいて、前記ばね部材による弾性力あるいはエアー圧による所定の押圧力を、前記樹脂成形体の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料である場合に、3kgf~5kgfに設定することを特徴とする請求項10又は11に記載のゲート残り処理方法。
【請求項13】
前記押圧解除・固化ステップにおいて、前記専用工具による所定の押圧時間を、前記樹脂成形体の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料である場合に、1箇所につき3秒以内に設定することを特徴とする請求項10乃至12のうちいずれか一項に記載のゲート残り処理方法。
【請求項14】
前記押圧治具が取り付けられる前記移動軸は、前記Z軸方向に直交するX軸方向及びY軸方向にも移動可能なXYZ移動軸であり、前記ゲート残り処理装置が、前記XYZ移動軸をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させるXYZ移動軸駆動部と、該XYZ移動軸駆動部による前記XYZ移動軸のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向への移動を制御するNC制御部とを備え、
前記押圧・溶融ステップの前に、前記押圧治具をX軸方向及びY軸方向に移動させて処理対象のゲート残りのある樹脂成形体の樹脂注入凹部の上方へ移動させる押圧治具移動ステップを含み、
前記押圧治具移動ステップ、前記押圧・溶融ステップ、及び前記押圧解除・固化ステップを繰り返し、前記樹脂成形体の複数の樹脂注入凹部に残るゲート残りを処理することを特徴とする請求項10乃至13のうちいずれか一項に記載のゲート残り処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体の樹脂注入凹部に残るゲート残りを処理するゲート残り処理装置及びゲート残り処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂の射出成形においては、特に小型形状のものにおいては、成形後に金型が開く際にスプルー、ランナーと成形品とを金型間で自動的に分離させるピンポイントゲート方式が採用されている。
このピンポイントゲート方式においては、成形品の分離の際、成形品側にゲート残りが発生することを想定し、成形品のゲート部をゲート逃がしと称される樹脂注入凹部の底面に設け、ゲート残りの高さがこの樹脂注入凹部の深さの範囲に収まり、成形品の外形の表面からはみ出すことを防止する形態がとられている。
【0003】
従来のこの種のピンポイントゲート方式を用いたゲート残り処理方法として、例えば、特許文献1に示す樹脂成形体ゲート残り処理方法が知られている。
この特許文献1に示す樹脂成形体ゲート残り処理方法は、ガラスフィラーを含む樹脂で形成された樹脂成形体のゲート残りを半球状の凹部を有するツールで加熱押圧して溶融させることで、ゲート残り周辺の溶融樹脂がゲート残りに覆い被さるように表皮として固化し、溶着ゲートからガラスフィラーが表面に露出しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-173068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来の特許文献1に示す樹脂成形体ゲート残り処理方法にあっては、以下の課題があった。
即ち、特許文献1に示す樹脂成形体ゲート残り処理方法の場合、ガラスフィラーを含む成形樹脂を用いて射出成形した後に、ゲート残りからガラスフィラーを飛散脱落することをなくすことをも目的としており、ガラスフィラーを含まない汎用性のある樹脂を成形した際のゲート残りの処理を対象としていない。このため、ガラスフィラーを含まない汎用性のある樹脂を成形した際のゲート残りを特許文献1に示す方法によって処理すると、樹脂成形品の表面が損傷したりして、確実にゲート残りを処理できないことがある。
【0006】
また、特許文献1に示す樹脂成形体ゲート残り処理方法において、樹脂成形体のゲート残りを処理する場合に樹脂成形体の歪みによってツールの押圧高さ位置が変動する場合がある。特許文献1には、この場合のツールの押圧については一切記載されておらず、仮に、一律に同じ押圧高さ位置までツールでゲート残りを押圧すると、場合によりゲート残りの高さが樹脂注入凹部の深さの範囲に収まらず、ゲート残りが成形品の外形の表面からはみ出してしまうことがある。この際に、成形品の外形の表面からはみ出したゲート残りをゲート残り検出装置によって検出し、再度、成形品の外形の表面からはみ出したゲート残りを処理する必要がある。
【0007】
従って、本発明はこの従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ガラスフィラーを含まない汎用性のある樹脂を成形した樹脂成形体のゲート残りを処理する場合に樹脂成形体の歪みによって押圧高さ位置が変動する場合であっても樹脂成形品の表面の損傷を回避しつつ、確実にゲート残りを処理することができる、ゲート残り処理装置及びゲート残り処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るゲート残り処理装置は、樹脂成形体の樹脂注入凹部に残るゲート残りを処理するゲート残り処理装置であって、 少なくとも上下方向であるZ軸方向に移動可能な移動軸に取り付けられて前記ゲート残りを押圧する押圧治具を備え、該押圧治具は、加熱装置に取り付けられた専用工具と、前記加熱装置及び前記専用工具を前記移動軸に取り付けるための取付部とを備え、前記押圧治具の前記専用工具は、ばね部材の弾性力あるいはエアー圧によってZ軸方向のうちの下方向に付勢された状態で前記取付部に対してZ軸方向に移動可能に前記加熱部材に取り付けられ、前記押圧治具をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、前記加熱装置によって所定の加熱温度に加熱された前記専用工具を、前記ばね部材の弾性力あるいはエアー圧による所定の押圧力で、前記ゲート残りに対して押圧して、当該ゲート残りを溶融させ、前記専用工具によるゲート残りへの押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、前記押圧治具を前記Z軸方向のうちの上方向に移動させて、前記専用工具によるゲート残りへの押圧を解除し、前記ゲート残りを当該ゲート残りが前記樹脂成形体の表面から突出しない状態で固化させることを要旨とする。
【0009】
また、本発明の別の態様に係るゲート残り処理方法は、樹脂成形体の樹脂注入凹部に残るゲート残りをゲート残り処理装置によって処理するゲート残り処理方法であって、前記ゲート残り処理装置が、少なくとも上下方向であるZ軸方向に移動可能な移動軸に取り付けられて前記ゲート残りを押圧するとともに、加熱装置に取り付けられた専用工具を有する押圧治具を備えたゲート残り処理方法において、前記押圧治具をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、前記加熱装置によって所定の加熱温度に加熱された前記専用工具を、ばね部材の弾性力あるいはエアー圧による所定の押圧力で、前記ゲート残りに対して押圧して、当該ゲート残りを溶融させる押圧・溶融ステップと、前記専用工具によるゲート残りへの押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、前記押圧治具を前記Z軸方向のうちの上方向に移動させて、前記専用工具によるゲート残りへの押圧を解除し、前記ゲート残りを当該ゲート残りが前記樹脂成形体の表面から突出しない状態で固化させる押圧解除・固化ステップとを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るゲート残り処理装置及びゲート残り処理方法によれば、ガラスフィラーを含まない汎用性のある樹脂を成形した樹脂成形体のゲート残りを処理する場合に樹脂成形体の歪みによって押圧高さ位置が変動する場合であっても樹脂成形体の表面の損傷を回避しつつ、確実にゲート残りを処理することができる、ゲート残り処理装置及びゲート残り処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るゲート残り処理装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示すゲート残り処理装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図3図1に示すゲート処理装置における専用工具によるゲート残りに対する押圧の様子を示し、(a)専用工具がゲート残りを押圧する直前の状態を示す模式図、(b)は専用工具によるゲート残りに対する押圧が解除された後の状態を示す模式図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るゲート残り処理装置における押圧治具を説明するための図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るゲート残り処理装置の概略構成を示す図である。
図6図5に示すゲート残り処理装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るゲート残り処理装置について図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0013】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態に係るゲート残り処理装置の概略構成が示されている。図1に示すゲート残り処理装置1は、樹脂成形体(パレット)30を製造するためのパレット製造ラインに設置されるものである。樹脂成形体30は、その原料をPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料とした熱可塑性樹脂の成形体である。樹脂成形体30は、所定の板厚を有する正方形板(縦1100(mm)、横1100(mm)、板厚150(mm))で、その表面に複数の樹脂注入凹部31が形成されている。
【0014】
図1に示すゲート残り処理装置1は、樹脂成形体30に形成された複数の樹脂注入凹部31に残るゲート残り32を処理するものである。樹脂成形におけるピンポイントゲート方式においては、成形品である樹脂成形体30の分離の際、成形品側にゲート残り32が発生することを想定し、成形品のゲートをゲート逃がしと称される樹脂注入凹部31の底面に設けている。そして、図3(a),(b)に示すように、このゲート残り32の高さHがこの樹脂注入凹部31の深さDの範囲に収まり、樹脂成形体30の表面からはみ出すことを防止するために、ゲート残り処理装置1によって樹脂成形体30の樹脂注入凹部31に残るゲート残り32を処理するようにしている。
ここで、ゲート残り処理装置1は、X軸方向、Y軸方向、及び上下方向であるZ軸方向に移動可能なXYZ移動軸21に取り付けられてゲート残り32を押圧する押圧治具10を備えている。
【0015】
また、ゲート残り処理装置1は、XYZ移動軸21をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させるXYZ移動軸駆動部22と、XYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸21のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向への移動を制御するNC制御部23と、後述の加熱装置12による専用工具11の加熱温度を制御する加熱温度制御部24と、上位計算機25とを備えている。
上位計算機25は、処理対象となるゲート残り32のある場所、個数、後述する専用工具11の押圧高さ位置P、及び後述する専用工具11の押圧時間の情報をNC制御部23に送出する。また、上位計算機25は、後述の加熱装置12による専用工具11の加熱温度の情報を加熱温度制御部24に送出する。
【0016】
NC制御部23は、上位計算機25からの処理対象となるゲート残り32のある場所の情報に基づき、XYZ移動軸21のX軸方向及びY軸方向への移動距離及び移動速度を制御する。また、NC制御部23は、上位計算機25からの専用工具11の押圧高さ位置Pの情報に基づき、XYZ移動軸21のZ軸方向への移動距離及び移動速度を制御する。また、NC制御部23は、上位計算機25からの専用工具11の押圧時間の情報に基づき、XYZ移動軸21におけるZ軸方向の移動停止時間を制御する。また、NC制御部23は、上位計算機25からの処理対象となるゲート残り32の個数の情報に基づき、処理すべきゲート残り32がもうないか否かを判定する機能を有する。NC制御部23は、演算処理機能を有するコンピュータシステムであり、ハードウェアに予め記憶された各種専用のコンピュータプログラムを実行することにより、前述の各機能をソフトウェア上で実現する。
【0017】
押圧治具10は、加熱装置12に取り付けられた専用工具11と、加熱装置12及び専用工具11をXYZ移動軸21に取り付けるための取付部13とを備えている。
取付部13は、内部に加熱装置収容空間13aを形成した有底筒状に形成され、XYZ移動軸21に着脱自在に取り付けられる。
加熱装置12は、専用工具11を所定の加熱温度に加熱する電気ヒーターで構成され、取付部13内に形成された加熱装置収容空間13a内に上下方向であるZ軸方向に移動可能に収容されている。加熱装置12には、その外周から突出するフランジ部12aが設けられ、加熱装置収容空間13aにおける取付部13の上壁とフランジ部12aとの間に加熱装置12の外周を覆うばね部材(圧縮スプリング)14が設けられている。加熱装置12は、ばね部材14の弾性力によって下方向に付勢された状態で上下方向であるZ軸方向に移動可能に加熱装置収容空間13a内に収容されている。
【0018】
加熱装置12によって専用工具11を加熱する所定の加熱温度は、樹脂成形体30の融点より高くなるように設定され、樹脂成形体30の原料により適宜設定される。本実施形態の場合、樹脂成形体30の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料であり、加熱装置12による所定の加熱温度を樹脂成形体30の融点よりも高い200℃~300℃に設定される。加熱装置12には、前述の加熱温度制御部24が接続されており、この加熱温度制御部24が、上位計算機25からの加熱温度の情報に基づいて、加熱装置12による専用工具11の加熱温度を制御するようになっている。従って、本実施形態では、加熱温度制御部24が加熱装置12による所定の加熱温度を樹脂成形体30の融点よりも高い200℃~300℃に設定する。これにより、原料をPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料とした樹脂成形体30の損傷を回避しつつ短時間でゲート残り32の処理を行うことができる。
【0019】
ここで、専用工具11の加熱温度を200℃未満とすると、その加熱温度が樹脂成形体30の融点よりも高い場合であっても、ゲート残り32の溶融を短時間(3秒以内)で行うことができず、ゲート残り32の溶融時間が長引いてしまう。ゲート残り32の溶融時間が長引くことで、逆に樹脂成形体30をも溶融させてしまう現象が生じ、樹脂成形体30を損傷してしまうおそれがある。
一方、専用工具11の加熱温度を300℃よりも高くすると、ゲート残り32の溶融時間が短くなるものの、加熱温度が高すぎてゲート残り32以外の樹脂成形体30をも溶融させてしまい、樹脂成形体30を損傷してしまうおそれがある。
【0020】
なお、従来の特許文献1に示す樹脂成形体ゲート残り処理方法では、ガラスフィラーを含む樹脂の成形品を対象としていることから、処理後にこのガラスフィラーが表面から露出しないように加熱された樹脂の表皮をエアーにより冷却する機構が必要となるが、本実施形態では、ガラスフィラーを含まない汎用性のある樹脂を対象とし専用工具11の加熱温度が比較的低く冷却機構を設ける必要がない。
【0021】
専用工具11は、ゲート残り32を押圧するものであり、加熱装置12の下端に設けられた専用工具取付部12bに取り付けられている。従って、専用工具11は、ばね部材14の弾性力によってZ軸方向のうちの下方向に付勢された状態で取付部13に対してZ軸方向に移動可能に加熱装置12に取り付けられている。
専用工具11の形状は、図3(a)に示すように、下端面である押圧面を平坦形状とした円柱形状をなし、その外径TDは樹脂注入凹部31の開口部の径RDとゲート残り32の形状、及びゲート残り32の材質を考慮して設定される。本実施形態の場合、専用工具11の外径TDは、樹脂注入凹部31の開口部の径RDがΦ18mmであるため、Φ16mmに設定されている。なお、専用工具11の形状は円柱に限らず、樹脂注入凹部31の形状とゲート残り32の形状とゲート残り32の材質とを考慮し、適宜設定すればよい。
専用工具11は、熱伝導率が高く離型作用がよいことが好ましいことから、本実施形態では、その材質は熱伝導率が高い銅製とし、樹脂離型作用を表面処理してある。
【0022】
そして、ゲート残り処理装置1によってゲート残り32を処理するに際して、押圧治具10をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の加熱温度(200℃~300℃)に加熱された専用工具11を、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融する。
この際に、押圧治具10は、専用工具11の押圧面が押圧高さ位置Pの位置にくるまで下方向に移動する。NC制御部23は、上位計算機25から送出される押圧高さ位置Pの情報に基づき、XYZ移動軸21のZ軸方向の移動距離及び移動速度を制御する。
【0023】
ここで、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力は、樹脂成形体30の材質に応じて適宜設定されるものであるが、本実施形態の場合、樹脂成形体30の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料であり、3kgf~5kgfに設定される。これにより、樹脂成形体30の損傷を回避しつつ短時間でゲート残り32の処理を行うことができる。
ここで、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力が3kgf未満の場合には、ゲート残り32の溶融を短時間(3秒以内)で行うことができず、ゲート残り32の溶融時間が長引いてしまう。ゲート残り32の溶融時間が長引くことで、逆に樹脂成形体30をも溶融させてしまう現象が生じ、樹脂成形体30を損傷してしまうおそれがある。
【0024】
一方、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力が5kgfよりも大きい場合には、押圧力が大きすぎてゲート残り32以外の樹脂成形体30をも損傷してしまうおそれがある。
なお、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力を変更する場合には、ばね係数、線径、巻数、あるいは自由長等を変更して所望の押圧力に設定した別のばね部材14に交換すればよい。
【0025】
また、専用工具11の押圧高さ位置Pは、図3(b)に示すように、ゲート残り32が樹脂注入凹部31の底面から高さHとなる位置である。この押圧高さ位置Pは、樹脂成形体30の歪みによって変動し、一定とならない。このため、専用工具11をいかなるときも同じ押圧高さ位置としてゲート残り32を押圧すると、ゲート残り32の樹脂注入凹部31の底面から高さが一定とならず、場合によってはゲート残り32の高さが樹脂成形体30の深さDの範囲内に収まらず、樹脂成形体30の表面から突出してしまう場合がある。
【0026】
これに対して、本実施形態では、専用工具11を、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧する。この際に、専用工具11は、Z軸方向に移動可能となっているから、樹脂成形体30の歪みによる押圧高さ位置Pの変動に追従し、ゲート残り32の高さが常に樹脂注入凹部31の底面からHとなる位置で安定する。このため、ゲート残り32が樹脂成形体30の表面からはみ出ることなく、確実にゲート残り32の処理を行うことができる。また、ゲート残り32は、樹脂成形体30の表面からはみ出さないので、当該樹脂成形体30の表面からはみ出したゲート残り32をゲート残り検出装置によって検出し、再度、樹脂成形体30の表面からはみ出したゲート残り32を処理する必要はない。
【0027】
また、押圧治具10の下方向への移動速度は、NC制御部23がXYZ移動軸21の下方向への移動速度を制御することによって制御され、本実施形態では、12m/min程度に設定される。この程度の速度であれば、専用工具11がゲート残り32に衝突した際にその衝撃をばね部材14による弾性力によって吸収することができ、樹脂成形体30の損傷を回避することができる。なお、押圧治具10の下方向への移動速度は、樹脂成形体30の材質や処理サイクルによって適宜設定される。
【0028】
そして、専用工具11によるゲート残り32への押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、押圧治具10をZ軸方向のうちの上方向に移動させて、専用工具11によるゲート残り32への押圧を解除し、ゲート残り32を当該ゲート残り32が樹脂成形体30の表面から突出しない状態で固化させる。つまり、図3(b)に示すように、ゲート残り32の上面が平面となり、ゲート残り32の高さHが樹脂成形体30の樹脂注入凹部31の深さDの範囲内となる状態で固化させる。
【0029】
ここで、専用工具11によるゲート残り32に対する前述の所定の押圧時間は、本実施形態では、樹脂成形体30の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料であることから、1箇所につき3秒以内である。バラつきが生じやすい温度と押圧力でも適切に処理可能とするために、本実施形態では、2秒に設定される。当該押圧時間が1箇所につき3秒以内であれば、ゲート残り32の処理を迅速に行え、ゲート残り32以外の樹脂成形体30を損傷させることなく、ゲート残り32の処理を適切に行うことができる。当該押圧時間が1箇所につき3秒よりも長いと、ゲート残り32以外の樹脂成形体30を損傷してしまうおそれがある。なお、専用工具11によるゲート残り32に対する押圧時間の最低時間は、1秒に設定される。
【0030】
本実施形態では、上位計算機25からの専用工具11の押圧時間の情報に基づき、NC制御部23が、XYZ移動軸21におけるZ軸方向の移動停止時間を制御することで、専用工具11によるゲート残り32に対する押圧時間を制御し、当該押圧時間を1箇所につき2秒に設定する。そして、本実施形態では、樹脂成形体30の1枚につき、10か所のゲート残り処理を1サイクル以内に行う。
【0031】
なお、専用工具11によるゲート残り32に対する押圧時間は、樹脂成形体30の特性、成形サイクルによって適宜設定され、NC制御部23が、上位計算機25からの専用工具11の押圧時間の情報に基づき、XYZ移動軸21におけるZ軸方向の移動停止時間を制御することで、専用工具11によるゲート残り32に対する押圧時間を制御する。
また、押圧治具10の上方向への移動速度は、NC制御部23がXYZ移動軸21の上方向への移動速度を制御することによって制御され、本実施形態では、押圧治具10の下方向への移動速度と同様に12m/min程度に設定されることが好ましい。
【0032】
このように、第1実施形態にゲート残り処理装置1によれば、押圧治具10の専用工具11は、ばね部材14の弾性力によってZ軸方向のうちの下方向に常に付勢された状態で取付部13に対してZ軸方向に移動可能に加熱装置12に取り付けられている。そして、ゲート残り処理装置1は、押圧治具10をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の加熱温度に加熱された専用工具11を、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融させる。更に、ゲート残り処理装置1は、専用工具11によるゲート残り32への押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、押圧治具10をZ軸方向のうちの上方向に移動させて、専用工具11によるゲート残り32への押圧を解除し、ゲート残り32を当該ゲート残り32が樹脂成形体30の表面から突出しない状態で固化させる。
【0033】
これにより、ガラスフィラーを含まない汎用性のある樹脂を成形した樹脂成形体30のゲート残り32を処理する場合に樹脂成形体30の歪みによって押圧高さ位置Pが変動する場合であっても、樹脂成形品の表面の損傷を回避しつつ、確実にゲート残り32を処理することができる、ゲート残り処理装置1を提供できる。
【0034】
また、第1実施形態にゲート残り処理装置1によれば、押圧治具10の取付部13はZ軸方向に直交するX軸方向及びY軸方向にも移動可能なXYZ移動軸21に取り付けられている。そして、ゲート残り処理装置1は、XYZ移動軸21をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させるXYZ移動軸駆動部22と、XYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向への移動を制御するNC制御部23とを備え、樹脂成形体30の複数の樹脂注入凹部31に残るゲート残り32を処理するようになっている。
これにより、樹脂成形体30における多数の箇所のゲート残り32を自動化して処理することができる汎用性の高いゲート残り処理装置とすることができる。
【0035】
次に、図1に示すゲート残り処理装置1によってゲート残りを処理する方法を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
樹脂成形体30に形成された複数の樹脂注入凹部31に存在するゲート残り32を処理するに際し、先ず、ステップS1において、加熱温度制御部24が制御し、加熱装置12によって専用工具11を所定の加熱温度に加熱する(加熱ステップ)。
この加熱ステップにおいて、加熱装置12は、専用工具11を200℃~300℃に加熱する。専用工具11の加熱温度を200℃~300℃に加熱することにより、前述したように、樹脂成形体30の原料をPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料とした場合において、樹脂成形体30の損傷を回避しつつ短時間でゲート残り32の処理を行うことができる。
【0036】
次いで、ステップS2に移行し、NC制御部23がXYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸21の移動を制御し、XYZ移動軸駆動部22がXYZ移動軸21をX軸方向及びY軸方向に移動させて図3(a)に示すように押圧治具10(専用工具11)を処理対象のゲート残り32のある樹脂成形体30の樹脂注入凹部31の上方へ移動させる(押圧治具移動ステップ)。
次いで、ステップS3に移行し、NC制御部23がXYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸21の移動を制御し、XYZ移動軸駆動部22がXYZ移動軸21(押圧治具10)をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の温度(200℃~300℃)に加熱された専用工具11を、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融させる(押圧・溶融ステップ)。
【0037】
この際に、押圧治具10は、専用工具11の押圧面が押圧高さ位置Pの位置にくるまで下方向に移動する。
ここで、専用工具11を、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧する際に、専用工具11は、Z軸方向に移動可能となっているから、樹脂成形体30の歪みによる押圧高さ位置Pの変動に追従する。
この押圧・溶融ステップにおいて、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力を3kgf~5kgfに設定する。ばね部材14の弾性力による所定の押圧力を3kgf~5kgfに設定することで、前述したように、樹脂成形体30の原料をPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料とした場合において、樹脂成形体30の表面の損傷を回避しつつ短時間でゲート残り32の処理を行うことができる。
【0038】
また、押圧・溶融ステップにおいて、押圧治具10の下方向への移動速度は、NC制御部23がXYZ移動軸21の下方向への移動速度を制御することによって制御され、本実施形態では、12m/min程度に設定される。これにより、先述したように、専用工具11がゲート残り32に衝突した際にその衝撃をばね部材14による弾性力によって吸収することができ、樹脂成形体30の損傷を回避することができる。
【0039】
次いで、ステップS4に移行し、専用工具11によるゲート残り32への押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、NC制御部23がXYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸21の移動を制御し、XYZ移動軸駆動部22がXYZ移動軸21(押圧治具10)をZ軸方向のうちの上方向に移動させて、専用工具11によるゲート残り32への押圧を解除し、ゲート残り32を当該ゲート残り32が樹脂成形体30の表面から突出しない状態で固化させる(押圧解除・固化ステップ)。
これにより、図3(b)に示すように、処理対象のゲート残り32の上面が平面となり、ゲート残り32の高さHが、樹脂成形体30の樹脂注入凹部31の深さDの範囲内となる状態で固化される。
【0040】
この押圧解除・固化ステップにおいて、専用工具11によるゲート残り32に対する所定の押圧時間を1箇所につき2秒に設定する。これにより、前述したように、樹脂成形体30の原料をPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料とした場合において、ゲート残り32の処理を迅速に行え、樹脂成形体30を損傷させることなく、ゲート残り32の処理を適切に行うことができる。
また、押圧解除・固化ステップにおいて、押圧治具10の上方向への移動速度は、NC制御部23がXYZ移動軸21の上方向への移動速度を制御することによって制御され、本実施形態では、押圧治具10の下方向への移動速度と同様に12m/min程度に設定される。
【0041】
次いで、ステップS5に移行し、NC制御部23は、上位計算機25からの処理対象となるゲート残り32の個数の情報に基づいて、処理すべきゲート残り32がもうないか否かを判定する(判定ステップ)。
そして、判定結果がYES(処理すべきゲート残り32がもうない)場合、ステップS6に移行し、判定結果がNO(処理すべきゲート残り32がまだある)場合は、ステップS2に戻る。処理すべき樹脂成形体30が複数あり、すべての樹脂成形体30の処理が終了していない場合にはこのステップS5(判定ステップ)での判定結果がNOとなり、ステップS2(押圧治具移動ステップ)に戻る。
ステップS6では、加熱装置12による専用工具11の加熱を終了し、そして処理を終了する。
【0042】
一方、ステップS2に戻った場合、ステップS2~ステップS5を繰り返し、樹脂成形体30に形成された複数の樹脂注入凹部31に存在するゲート残り32のすべての処理を完了(処理すべき樹脂成形体30が複数あり、すべての樹脂成形体30についての処理が完了)したら、ステップS6に移行し、加熱装置12による専用工具11の加熱を終了してから処理を終了する。
【0043】
このように、第1実施形態に係るゲート残り処理方法によれば、押圧治具10をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の加熱温度に加熱された専用工具11を、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融させる押圧・溶融ステップ(ステップS3)を含む。また、ゲート残り処理方法は、専用工具11によるゲート残り32への押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、押圧治具10をZ軸方向のうちの上方向に移動させて、専用工具11によるゲート残り32への押圧を解除し、ゲート残り32を当該ゲート残り32が樹脂成形体30の表面から突出しない状態で固化させる押圧解除・固化ステップ(ステップS4)を含む。
【0044】
これにより、ガラスフィラーを含まない汎用性のある樹脂を成形した樹脂成形体30のゲート残り32を処理する場合に樹脂成形体30の歪みによって押圧高さ位置Pが変動する場合であっても、樹脂成形品の表面の損傷を回避しつつ、確実にゲート残り32を処理することができる、ゲート残り処理方法を提供できる。
【0045】
また、第1実施形態に係るゲート残り処理方法によれば、押圧・溶融ステップ(ステップS3)の前に、押圧治具10をX軸方向及びY軸方向に移動させて処理対象のゲート残り32のある樹脂成形体30の樹脂注入凹部31の上方へ移動させる押圧治具移動ステップ(ステップS2)を含むとともに、押圧解除・固化ステップ(ステップS4)の後に、処理すべきゲート残りがもうないか否かを判定する判定ステップ(ステップS5)を含む。そして、判定ステップ(ステップS5)による判定結果が処理すべきゲート残り32がもうない場合には、次のステップS6に移行し、判定結果が処理すべきゲート残り32がまだある場合には、押圧治具移動ステップ(ステップS2)に戻り、押圧治具移動ステップ(ステップS2)、押圧・溶融ステップ(ステップS3)、押圧解除・固化ステップ(ステップS4)、及び判定ステップ(ステップS5)を繰り返し、樹脂成形体30の複数の樹脂注入凹部31に残るゲート残り32を処理する。
これにより、樹脂成形体30における多数の箇所のゲート残り32を自動化して処理することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るゲート残り処理装置における押圧治具について図4を参照して説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係るゲート残り処理装置における押圧治具を説明するための図である。図4において、図1に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図4に示す押圧治具10は、図1に示す押圧治具10と基本構成は同様であるが、図4に示す押圧治具10が専用工具11によるゲート残り32に対する押込量を検出するセンサ15を備えている点で相違している。
【0047】
具体的に述べると、押圧治具10の取付部13には、加熱装置12との間の距離を測定するセンサ(近接センサ)15が取り付けられている。図4において、左側には専用工具11によるゲート残り32に対する押圧を開始する前の状態が示され、右側にはXYZ移動軸21のZ軸方向(下方向)における移動が停止された状態が示されている。
図4において、専用工具11によるゲート残り32に対する押圧を開始する前では、専用工具11によるゲート残り32に対する押込量は0であり、その際にセンサは、加熱装置12との間の距離Δを検出する。
【0048】
また、図4において、XYZ移動軸21のZ軸方向(下方向)における移動が停止された状態では、専用工具11によるゲート残り32に対する押込量はΔ-δであり、その際にセンサは、加熱装置12との間の距離δを検出する。
つまり、センサ15は、加熱装置12との間の距離を測定することで、専用工具11によるゲート残り32に対する押込量Δ-x(xはセンサ15の測定値)を検出する。
このセンサ15は、図示はしないが図1に示されたNC制御部23に接続され、NC制御部23は、センサ15の検出結果に基づいて、XYZ移動軸21のZ軸方向の移動停止時間、XYZ移動軸21のZ軸方向の移動速度、及びXYZ移動軸21のZ軸方向の移動距離を制御する。
【0049】
具体的な制御内容について説明すると、ゲート残り32の押圧・溶融に際し、図4に示すように、NC制御部23がXYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸21の移動を制御し、XYZ移動軸駆動部22がXYZ移動軸21(押圧治具10)をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の温度に加熱された専用工具11を、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融させる。
この際に、センサ15によって検出される、専用工具11によるゲート残り32に対する押込量Δ-xがΔ-δとなるまで、NC制御部23はXYZ移動軸21(押圧治具10)をZ軸方向のうちの下方向に移動させる。
【0050】
ここで、専用工具11によるゲート残り32に対する押込量Δ-δは、処理の対象となる樹脂成形体30の樹脂成形体30の材質等によって適宜決定される。
この専用工具11を、ばね部材14の弾性力による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧する際に、専用工具11は、Z軸方向に移動可能となっているから、樹脂成形体30の歪みによる押圧高さ位置Pの変動に追従する。
そして、NC制御部23は、専用工具11によるゲート残り32への押圧を開始してから2秒経過した後に、XYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸21の移動を制御し、XYZ移動軸駆動部22がXYZ移動軸21(押圧治具10)をZ軸方向のうちの上方向に移動させて、専用工具11によるゲート残り32への押圧を解除し、ゲート残り32を当該ゲート残り32が樹脂成形体30の表面から突出しない状態で固化させる。
【0051】
このように、第2実施形態に係るゲート残り処理装置によれば、押圧治具10が専用工具11によるゲート残り32に対する押込量を検出するセンサ15を備え、NC制御部23は、センサ15の検出結果に基づいて、XYZ移動軸21のZ軸方向の移動停止時間、XYZ移動軸21のZ軸方向の移動速度、及びXYZ移動軸21のZ軸方向の移動距離を制御する。
【0052】
これにより、専用工具11によるゲート残り32に対する押込量がΔ-δで一定となり、その結果、ばね部材14の弾性力によるゲート残り32に対する押圧力が一定となる。このため、異常な形の製品(樹脂成形体)が流れてきたとしても、押し込みすぎることがないため、設備破損を防止することができる。また、どの高さの製品に対しても一定の押圧力でゲート残り32を押し付けることが可能となる。従って、高さの変わるゲート残り32に対して一定の押圧力を得ることができる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るゲート残り処理装置について図5を参照して説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係るゲート残り処理装置の概略構成を示す図である。図5において、図1に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図5に示す本発明の第2実施形態に係るゲート残り処理装置1は、図1に示すゲート残り処理装置1と基本構成は同様であるが、加熱装置12及び専用工具11を下方向へ付勢する構成が異なっている。
【0054】
具体的に述べると、図1に示すゲート残り処理装置1においては、ばね部材14の弾性力によって加熱装置12及び専用工具11を下方向へ付勢するようになっているが、図5に示すゲート残り処理装置1においては、エアー圧供給部26から供給されるエアー圧によって加熱装置12及び専用工具11を下方向へ付勢する。
加熱装置12は、エアー圧によって下方向に付勢された状態で上下方向であるZ軸方向に移動可能に加熱装置収容空間13a内に収容されている。
専用工具11は、エアー圧によってZ軸方向のうちの下方向に付勢された状態で取付部13に対してZ軸方向に移動可能に加熱装置12に取り付けられている。
【0055】
また、図5に示すゲート残り処理装置1は、上位計算機15からのエアー圧の情報に基づき、エアー圧供給部26が供給するエアー圧を制御するエアー圧制御部27を備えている。
そして、ゲート残り処理装置1によってゲート残り32を処理するに際して、押圧治具10をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の加熱温度(200℃~300℃)に加熱された専用工具11を、エアー圧制御部27で制御されたエアー圧供給部26からのエアー圧による所定の押圧力で、樹脂成形体30の歪みによる押圧高さ位置Pの変動を吸収させつつ、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融する。
【0056】
エアー圧による所定の押圧力は、樹脂成形体30の材質に応じて適宜設定されるものであるが、本実施形態の場合、樹脂成形体30の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料であり、前述したように、3kgf~5kgfに設定される。
エアー圧による所定の押圧力を変更する場合には、上位計算機25から変更すべきエアー圧の情報がエアー圧制御部27に送出され、エアー圧制御部27は、この変更されたエアー圧に基づいてエアー圧供給部26からのエアー圧を変更することにより押圧力を変更する。
【0057】
第3実施形態に係るゲート残り処理装置1によれば、押圧治具10の専用工具11は、エアー圧によってZ軸方向のうちの下方向に常に付勢された状態で取付部13に対してZ軸方向に移動可能に加熱装置12に取り付けられている。そして、ゲート残り処理装置1は、押圧治具10をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の加熱温度に加熱された専用工具11を、エアー圧による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融させる。
【0058】
ここで、専用工具11を、エアー圧による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧する際に、専用工具11は、Z軸方向に移動可能となっているから、樹脂成形体30の歪みによる押圧高さ位置Pの変動に追従する。
更に、ゲート残り処理装置1は、専用工具11によるゲート残り32への押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、押圧治具10をZ軸方向のうちの上方向に移動させて、専用工具11によるゲート残り32への押圧を解除し、ゲート残り32を当該ゲート残り32が樹脂成形体30の表面から突出しない状態で固化させる。
【0059】
ここで、専用工具11によるゲート残り32に対する前述の所定の押圧時間は、樹脂成形体30の原料が、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料であることから、第1実施形態と同様の理由により、1箇所につき3秒以内である。バラつきが生じやすい温度と押圧力でも適切に処理可能とするために、本実施形態では、2秒に設定される。当該押圧時間が1箇所につき3秒以内であれば、ゲート残り32の処理を迅速に行え、ゲート残り32以外の樹脂成形体30を損傷させることなく、ゲート残り32の処理を適切に行うことができる。当該押圧時間が1箇所につき3秒よりも長いと、ゲート残り32以外の樹脂成形体30を損傷してしまうおそれがある。なお、専用工具11によるゲート残り32に対する押圧時間の最低時間は、1秒に設定される。
これにより、ガラスフィラーを含まない汎用性のある樹脂を成形した樹脂成形体30のゲート残り32を処理する場合に樹脂成形体30の歪みによって押圧高さ位置Pが変動する場合であっても、樹脂成形品の表面の損傷を回避しつつ、確実にゲート残り32を処理することができる、ゲート残り処理装置1を提供できる。
【0060】
また、第3実施形態に係るゲート残り処理装置1によれば、押圧治具10の取付部13はZ軸方向に直交するX軸方向及びY軸方向にも移動可能なXYZ移動軸21に取り付けられている。そして、ゲート残り処理装置1は、XYZ移動軸21をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させるXYZ移動軸駆動部22と、XYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向への移動を制御するNC制御部23とを備え、樹脂成形体30の複数の樹脂注入凹部31に残るゲート残り32を処理するようになっている。
これにより、樹脂成形体30における多数の箇所のゲート残り32を自動化して処理することができる汎用性の高いゲート残り処理装置とすることができる。
【0061】
次に、図5に示すゲート残り処理装置1によってゲート残りを処理する方法を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
樹脂成形体30に形成された複数の樹脂注入凹部31に存在するゲート残り32を処理するに際し、先ず、ステップS11において、加熱温度制御部24が制御し、加熱装置12によって専用工具11を所定の加熱温度に加熱する(加熱ステップ)。
この加熱ステップにおいて、加熱装置12は、専用工具11を200℃~300℃に加熱する。専用工具11の加熱温度を200℃~300℃に加熱する理由は前述と同様である。
【0062】
次いで、ステップS12に移行し、エアー圧制御部27が制御し、エアー圧供給部26によって加熱装置12及び専用工具11に対し所定のエアー圧を供給する。ここで供給するエアー圧は、前述したエアー圧による所定の押圧力が前述した設定値となるようにする。
次いで、ステップS13に移行し、NC制御部23がXYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸21の移動を制御し、XYZ移動軸駆動部22がXYZ移動軸21をX軸方向及びY軸方向に移動させて押圧治具10(専用工具11)を図3(a)に示すように処理対象のゲート残り32のある樹脂成形体30の樹脂注入凹部31の上方へ移動させる(押圧治具移動ステップ)。
【0063】
次いで、ステップS14に移行し、NC制御部23がXYZ移動軸駆動部22によるXYZ移動軸21の移動を制御し、XYZ移動軸駆動部22がXYZ移動軸21(押圧治具10)をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の温度(200℃~300℃)に加熱された専用工具11を、エアー圧制御部27で制御されたエアー圧供給部26からのエアー圧による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融させる(押圧・溶融ステップ)。
ここで、専用工具11を、エアー圧による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧する際に、専用工具11は、Z軸方向に移動可能となっているから、樹脂成形体30の歪みによる押圧高さ位置Pの変動に追従する。
【0064】
この押圧・溶融ステップにおいて、エアー圧による所定の押圧力を3kgf~5kgfに設定する。この理由は、前述と同様である。
また、押圧・溶融ステップにおいて、押圧治具10の下方向への移動速度は、NC制御部23がXYZ移動軸21の下方向への移動速度を制御することによって制御され、本実施形態では、12m/min程度に設定される。この理由は、前述と同様である。
【0065】
次いで、ステップS15に移行し、専用工具11によるゲート残り32への押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、NC制御部23が制御し、XYZ移動軸駆動部22がXYZ移動軸21(押圧治具10)をZ軸方向のうちの上方向に移動させて、専用工具11によるゲート残り32への押圧を解除し、ゲート残り32を当該ゲート残り32が樹脂成形体30の表面から突出しない状態で固化させる(押圧解除・固化ステップ)。
これにより、図3(b)に示すように、処理対象のゲート残り32の上面が平面となり、ゲート残り32の高さHが、樹脂成形体30の樹脂注入凹部31の深さDの範囲内となる状態で固化される。
【0066】
この押圧解除・固化ステップにおいて、専用工具11によるゲート残り32に対する所定の押圧時間を1箇所につき2秒に設定する。この理由は、前述と同様である。また、押圧解除・固化ステップにおいて、押圧治具10の上方向への移動速度は、NC制御部23がXYZ移動軸21の上方向への移動速度を制御することによって制御され、本実施形態では、押圧治具10の下方向への移動速度と同様に12m/min程度に設定される。
【0067】
次いで、ステップS16に移行し、NC制御部23は、上位計算機25からの処理対象となるゲート残り32の個数の情報に基づいて、処理すべきゲート残り32がもうないか否かを判定する(判定ステップ)。
そして、判定結果がYES(処理すべきゲート残り32がもうない)場合、ステップS17に移行し、判定結果がNO(処理すべきゲート残り32がまだある)場合は、ステップS13に戻る。処理すべき樹脂成形体30が複数あり、すべての樹脂成形体30の処理が終了していない場合にはこのステップS16(判定ステップ)での判定結果がNOとなり、ステップS13(押圧治具移動ステップ)に戻る。
ステップS17では、加熱装置12による専用工具11の加熱を終了し、ステップS18でエアー圧供給部26によるエアー圧の供給を終了し、処理を終了する。
【0068】
一方、ステップS13に戻った場合、ステップS13~ステップS16を繰り返し、樹脂成形体30に形成された複数の樹脂注入凹部31に存在するゲート残り32すべての処理を完了(処理すべき樹脂成形体30が複数あり、すべての樹脂成形体30についての処理が完了)したら、ステップS17に移行し、加熱装置12による専用工具11の加熱を終了し、ステップS18でエアー圧供給部26によるエアー圧の供給を終了しから処理を終了する。
【0069】
第3実施形態に係るゲート残り処理方法によれば、押圧治具10をZ軸方向のうちの下方向に移動させて、加熱装置12によって所定の加熱温度に加熱された専用工具11を、エアー圧による所定の押圧力で、ゲート残り32に対して押圧して、当該ゲート残り32を溶融させる押圧・溶融ステップ(ステップS14)を含む。また、ゲート残り処理方法は、専用工具11によるゲート残り32への押圧を開始してから所定の押圧時間経過した後に、押圧治具10をZ軸方向のうちの上方向に移動させて、専用工具11によるゲート残り32への押圧を解除し、ゲート残り32を当該ゲート残り32が樹脂成形体30の表面から突出しない状態で固化させる押圧解除・固化ステップ(ステップS15)を含む。
これにより、ガラスフィラーを含まない汎用性のある樹脂を成形した樹脂成形体30のゲート残り32を処理する場合に樹脂成形体30の歪みによって押圧高さ位置Pが変動する場合であっても、樹脂成形品の表面の損傷を回避しつつ、確実にゲート残り32を処理することができる、ゲート残り処理方法を提供できる。
【0070】
また、第3実施形態に係るゲート残り処理方法によれば、押圧・溶融ステップ(ステップS14)の前に、押圧治具10をX軸方向及びY軸方向に移動させて処理対象のゲート残り32のある樹脂成形体30の樹脂注入凹部31の上方へ移動させる押圧治具移動ステップ(ステップS13)を含むとともに、押圧解除・固化ステップ(ステップS15)の後に、処理すべきゲート残りがもうないか否かを判定する判定ステップ(ステップS16)を含む。そして、判定ステップ(ステップS16)による判定結果が処理すべきゲート残り32がもうない場合には、次のステップS17に移行し、判定結果が処理すべきゲート残り32がまだある場合には、押圧治具移動ステップ(ステップS13)に戻り、押圧治具移動ステップ(ステップS13)、押圧・溶融ステップ(ステップS14)、押圧解除・固化ステップ(ステップS15)、及び判定ステップ(ステップS16)を繰り返し、樹脂成形体30の複数の樹脂注入凹部31に残るゲート残り32を処理する。
これにより、樹脂成形体30における多数の箇所のゲート残り32を自動化して処理することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、樹脂成形体30の形状は、所定の板厚を有する正方形板に限られない。
また、樹脂成形体30の原料は、熱可塑性であれば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を主体とするリサイクル原料以外の原料であってもよい。
この場合、加熱装置12による専用工具11の加熱温度は、樹脂成形体30の原料に応じて樹脂成形体30の融点よりも高い温度に適宜設定されればよく、200℃~300℃に設定する必要は必ずしもない。
【0072】
また、この場合、ばね部材14の弾性力あるいはエアー圧による押圧力は、樹脂成形体30の原料に応じて適宜設定されればよく、3kgf~5kgfに設定する必要は必ずしもない。
また、この場合、専用工具11によるゲート残り32に対する押圧時間は、樹脂成形体30の原料及び処理サイクルに応じて適宜設定すればよく、1箇所につき2秒以内に設定する必要は必ずしもない。
また、第1乃至第3実施形態に係るゲート残り処理装置1において、押圧治具10は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能なXYZ移動軸21に取り付けられているが、この場合に限らず、少なくとも上下方向であるZ軸方向に移動可能な移動軸に取り付けられれば良い。
【0073】
また、樹脂成形体30に形成された複数(全箇所)の樹脂注入凹部31に存在するゲート残り32を処理するに際し、判定ステップ(ステップS5、ステップS16)省略し、押圧治具移動ステップ(ステップS2、ステップS13)、押圧・溶融ステップ(ステップS3、ステップS14)、及び押圧解除・固化ステップ(ステップS4、ステップS15)を繰り返し、専用工具の加熱を終了するステップ(ステップS6、ステップS17)に移行するようにしてもよい。
【0074】
また、第2実施形態に係るゲート残り処理装置の押圧治具10に備えられる、専用工具11によるゲート残り32に対する押込量Δ-xを検出するセンサ15は、第3実施形態に係るゲート残り処理装置の押圧治具10に備えられてもよい。この場合、第3実施形態におけるNC制御部23は、このセンサ15の検出結果に基づいて、XYZ移動軸21のZ軸方向の移動停止時間、XYZ移動軸21のZ軸方向の移動速度、及びXYZ移動軸21のZ軸方向の移動距離を制御するようにする。
【符号の説明】
【0075】
1 ゲート残り処理装置
10 押圧治具
11 専用工具
12 加熱装置
12a フランジ部
12b 専用工具取付部
13 取付部
13a 加熱装置収容空間
14 ばね部材
21 XYZ移動軸(移動軸)
22 XYZ移動軸駆動部
23 NC制御部
24 加熱温度制御部
25 上位計算機
26 エアー圧供給部
27 エアー圧制御部
30 樹脂成形体
31 樹脂注入凹部
32 ゲート残り
P 専用工具の押圧高さ位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6