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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129259
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ジャンパ装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/20 20060101AFI20220829BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H02G7/20
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027913
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】514183042
【氏名又は名称】TDM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高司 顕徳
(72)【発明者】
【氏名】熊林 豊
(72)【発明者】
【氏名】川口 倫慶
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AC01
5G367JA01
5G367JA08
(57)【要約】
【課題】施工性のよいジャンパ装置を提供する。
【解決手段】送電線鉄塔9の鉄塔アーム91に引き留められて送電線鉄塔9の両側に延びた架空送電線ELを電気的に接続するジャンパ線2を複数有するジャンパ装置1において、ジャンパ線2の延線方向における両端の袖部と延線方向における中央部との間で複数のジャンパ線2を把持した一対のジャンパ線把持金具3と、一対のジャンパ線把持金具3の間に配置され、複数のジャンパ線2を把持する中央ジャンパスペーサ7とを備え、中央ジャンパスペーサ7は、把持基部721と、上下複数段に分かれて配置され、それぞれがジャンパ線2を把持する複数の中央スペーサ把持部72とを有するものであり、中央スペーサ把持部72は、把持基部721に対して回動自在なものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線鉄塔の鉄塔アームに引き留められて該送電線鉄塔の両側に延びた架空送電線を電気的に接続するジャンパ線を複数有するジャンパ装置において、
前記ジャンパ線の延線方向における両端の袖部と該延線方向における中央部との間で複数の該ジャンパ線を把持した一対のジャンパ線把持金具と、
前記一対のジャンパ線把持金具の間に配置され、複数の前記ジャンパ線を把持する中央ジャンパスペーサとを備え、
前記中央ジャンパスペーサは、基部と、上下複数段に分かれて配置され、それぞれが前記ジャンパ線を把持する複数の把持部とを有するものであり、
前記把持部は、前記基部に対して回動自在なものであることを特徴とするジャンパ装置。
【請求項2】
前記把持部は、前記延線方向に直交し、かつ水平方向に向いた回動軸線を中心に回動自在なものであることを特徴とする請求項1記載のジャンパ装置。
【請求項3】
前記一対のジャンパ線把持金具それぞれは、金具基部と、前記ジャンパ線を把持する複数の金具把持部とを有し、
前記金具把持部は、前記金具基部に対して回動自在なものであることを特徴とする請求項1または2記載のジャンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線鉄塔から両側に延びた鉄塔アームに引き留められた送電線を電気的に接続するジャンパ線を複数有するジャンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャンパ装置として、吊架式ジャンパ装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。この吊架式ジャンパ装置は、ジャンパ線と、そのジャンパ線の下段にある鉄塔アームとの電気絶縁に必要なクリアランスを保つために、一対の支持装置によって吊り下げられた剛性のある形鋼材や鋼管材等からなる吊架材を備えている。吊架材は、鉄塔アームの下方で両端が一対の支持装置によって保持されて長手方向が水平方向に一致するように配置されている。この吊架材の長手方向の複数箇所には、間隔をあけてジャンパスペーサが取り付けられている。ジャンパ線のうち、一対の支持装置の間にある部分は、このジャンパスペーサに把持されることで吊架材に沿って延線方向がほぼ水平方向になるように設置される。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された吊架式ジャンパ装置は、装置が大掛かりになる上に、吊架材が高価であり、吊架材を送電線鉄塔の鉄塔アームの高さまで持ち上げるための作業も煩雑であることから、ジャンパ装置が高価になってしまうという問題がある。これに対し近年では、吊架材を用いずに、ジャンパ装置各部の重量やジャンパ線の長さ等に基づいて、支持装置に支持された部分の間にあるジャンパ線中央部に生じる垂れ下がり高さを調整したジャンパ装置も用いられている(例えば、特許文献2等参照)。この特許文献2のジャンパ装置では、吊架材を使用しないので、ジャンパ装置を安価に構成できるといった効果がある。
【0004】
図6(a)は、特許文献2のジャンパ装置を送電線鉄塔に吊り上げる前の吊上前状態を示す説明図である。また、図6(b)は、同図(a)のジャンパ装置を送電線鉄塔に吊り上げて送電線鉄塔に取り付けた取付状態を示す説明図である。
【0005】
図6(a)に示すように、特許文献2のジャンパ装置10は、4本のジャンパ線20と、一対のジャンパ線把持金具30と、一対の支持装置40と、ジャンパソケット60と、中央ジャンパスペーサ70とを備えている。4本のジャンパ線20は、ともに地上でジャンパ線把持金具30に把持されている。また、ジャンパ線把持金具30は、支持装置40の下端に連結されている。ジャンパ線20のうち、ジャンパ線把持金具30の間にある中央部にはジャンパ線20の延線方向に間隔をあけて3つの中央ジャンパスペーサ70が配置されている。図6(a)には3つの中央ジャンパスペーサを配置する例が示されている。なお、ジャンパ線20のうち、ジャンパ線把持金具30よりも端部側の袖部には、取付作業の最後に袖部ジャンパスペーサが配置されるが、図6(b)では図示省略している。ジャンパソケット60は、ジャンパ線20の両端に固定されている。このジャンパ装置10では、送電線鉄塔90に吊り上げる前の吊上前状態で、4本のジャンパ線20のうち、上方に配置される2本は、中央ジャンパスペーサ70によって把持させる。しかし、ジャンパ線20の延線方向のちょうど真ん中にある中央ジャンパスペーサ70を除いて、ジャンパ線20のうち下方に配置される2本は、吊上前状態では中央ジャンパスペーサ70に把持させていない。以下、ジャンパ線20のうち上方に置されるものを天線と称し、下方に配置されるものを地線と称することがある。
【0006】
そして、図6(b)に示すように、ジャンパ装置10を送電線鉄塔90に吊り上げてから、縄梯子RLを移動させながら送電線鉄塔90の上方で地線を中央ジャンパスペーサ70に把持させている。図6(b)では、中央ジャンパスペーサ70に把持させる前の地線が破線で示され、中央ジャンパスペーサ70に把持させた後の地線が実線で示されている。送電線鉄塔90の上方で地線を中央ジャンパスペーサ70で把持させているのは、天線と地線それぞれの適正な把持位置が地上では不明なためである。天線と地線の両方を地上で中央ジャンパスペーサ70に把持させると、ジャンパ装置10を送電線鉄塔90に吊り上げたときに、ジャンパ線20が、中央ジャンパスペーサ70に把持された位置で歪んで、ジャンパ線20の耐久性などが低下してしまうことがある。このため、特許文献2に記載されたジャンパ装置10では、ジャンパ装置10を送電線鉄塔90に吊り上げて一対の支持装置40それぞれの上端を耐張装置のヨーク金具に連結し、次いでジャンパソケット60を耐張装置の圧縮型クランプに連結する。その後に、ジャンパ線20の中央部がカテナリ曲線に沿った形状になった状態を維持しながら中央ジャンパスペーサ70を傾斜角度を調整して中央ジャンパスペーサ70に地線を把持させている。なお、地線を中央ジャンパスペーサ70に把持させた後、図示省略した袖部ジャンパスペーサを、ジャンパ線20の袖部に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-350343号公報
【特許文献2】特開2003-264926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、中央ジャンパスペーサ70に地線を把持させる作業は、縄梯子を使用した送電線鉄塔90の上方での作業であるため、作業者にとっては大きな負担である上に、作業時間も多くかかる施工性の悪い作業であった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、施工性のよいジャンパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決する本発明のジャンパ装置は、送電線鉄塔の鉄塔アームに引き留められて該送電線鉄塔の両側に延びた架空送電線を電気的に接続するジャンパ線を複数有するジャンパ装置において、
前記ジャンパ線の延線方向における両端の袖部と該延線方向における中央部との間で複数の該ジャンパ線を把持した一対のジャンパ線把持金具と、
前記一対のジャンパ線把持金具の間に配置され、複数の前記ジャンパ線を把持する中央ジャンパスペーサとを備え、
前記中央ジャンパスペーサは、基部と、上下複数段に分かれて配置され、それぞれが前記ジャンパ線を把持する複数の把持部とを有するものであり、
前記把持部は、前記基部に対して回動自在なものであることを特徴とする。
【0011】
本発明のジャンパ装置によれば、このジャンパ装置を前記送電線鉄塔に取り付ける際に、地上において全ての前記ジャンパ線を前記把持部に把持させてから吊り上げても、該把持部が前記回動軸線を中心に回動することで、該ジャンパ線に歪みが生じにくい。その結果、前記延線方向における中央部において、前記ジャンパ線は、自然にカテナリ曲線に近い形状になる。これにより、前記ジャンパ線を前記把持部に把持させる作業を送電線鉄塔90の上方で実施する必要がなくなるため、このジャンパ装置の施工が容易になる。
【0012】
ここで、このジャンパ装置は、前記鉄塔アームと前記架空送電線の間に上端部が連結され、前記ジャンパ線把持金具に下端部が連結された一対の支持装置を備えていてもよい。
【0013】
このジャンパ装置において、前記把持部は、前記延線方向に直交し、かつ水平方向に向いた回動軸線を中心に回動自在なものであってもよい。
【0014】
こうすることで、全ての前記ジャンパ線を地上で前記把持部に把持させてからこのジャンパ装置を吊り上げても、該ジャンパ線がより自然にカテナリ曲線に近い形状になりやすい。
【0015】
また、このジャンパ装置において、前記一対のジャンパ線把持金具それぞれは、金具基部と、前記ジャンパ線を把持する複数の金具把持部とを有し、
前記金具把持部は、前記金具基部に対して回動自在なものであってもよい。
【0016】
この態様によれば、前記把持部と前記金具把持部の両方が回動自在であるため、互いの回動を妨げにくい。これにより、ギャロッピング振動によってこのジャンパ装置が振動した際に、前記金具把持部で把持された部分の近傍で前記ジャンパ線が大きく歪んでしまうことが防止されるため、該ジャンパ線が破断してしまうことを抑制できる。
【0017】
ここで、前記金具把持部は、前記把持部の回動軸線と同一方向を向いた回動軸線を中心に回動自在なものであってもよい。また、前記金具把持部は、前記延線方向に直交し、かつ水平方向に向いた回動軸線を中心に回動自在なものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のジャンパ装置によれば、施工性のよいジャンパ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】送電線鉄塔に取り付けられた、本実施形態のジャンパ装置を示す正面図である。
図2】(a)は、図1に示したジャンパ装置に備えられたジャンパ線把持金具を示す側面図であり、(b)は、図1に示したジャンパ装置に備えられた袖部ジャンパスペーサを示す側面図である。
図3図1に示したジャンパ装置に備えられた中央ジャンパスペーサを示す側面図である。
図4図1に示したA部を拡大して示すA部拡大図である。
図5】(a)は、図1に示したジャンパ装置を送電線鉄塔に吊り上げる前の吊上前状態を示す説明図であり、(b)は、同図(a)のジャンパ装置を送電線鉄塔に吊り上げて送電線鉄塔に取り付けた取付状態を示す説明図である。
図6】(a)は、特許文献2のジャンパ装置を送電線鉄塔に吊り上げる前の吊上前状態を示す説明図であり、(b)は、同図(a)のジャンパ装置を送電線鉄塔に吊り上げて送電線鉄塔に取り付けた取付状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態であるジャンパ装置は、送電線鉄塔の鉄塔アームの両側にそれぞれ引き留められた架空送電線を電気的に接続するために、それらの架空送電線の間に配置されるものである。この実施形態の説明では、鉄塔アームの両側にそれぞれ延在する4本の架空送電線どうしを電気的に接続する4本のジャンパ線を備えたジャンパ装置について説明する。
【0021】
図1は、送電線鉄塔に取り付けられた、本実施形態のジャンパ装置を示す正面図である。
【0022】
図1に示すように、送電線鉄塔9の鉄塔アーム91の両側には、互いに反対方向に向かって延びた架空送電線ELが引き留められている。鉄塔アーム91と架空送電線ELの間には、耐張装置92が連結されている。耐張装置92は、鉄塔アーム91の、図1における左右それぞれに設けられている。この実施形態の耐張装置92は、4本の架空送電線ELが接続された4導体耐張装置である。耐張装置92は、碍子連921と、ヨーク金具922と、バーニヤ金具923と、圧縮型クランプ924とを備えてる。なお、耐張装置92には、アークホーンやクレビス金具なども備えられているが、図1では図示省略されている。碍子連921は、複数の碍子が連なったものである。碍子連921、ヨーク金具922、バーニヤ金具923、圧縮型クランプ924は、この順で送電線鉄塔9から架空送電線ELに向かって並んで配置され、それらの間は連結されている。碍子連921は不図示の取付金具によって鉄塔アーム91に連結されている。また、圧縮型クランプ924には、架空送電線ELの端部が固定されている。
【0023】
ジャンパ装置1は、送電線鉄塔9の両側に延びた架空送電線ELの間に配置され、それらの架空送電線ELを電気的に接続している。本実施形態のジャンパ装置1は、4本のジャンパ線2と、一対のジャンパ線把持金具3と、一対の支持装置4と、5つの袖部ジャンパスペーサ5と、8つのジャンパソケット6と、3つの中央ジャンパスペーサ7とを備えている。架空送電線ELは、送電線鉄塔9の両側それぞれに4本づつ延びている。4本のジャンパ線2は、延線方向から見たときに、正方形の頂点にそれぞれの中心が位置するように、ジャンパ線把持金具3、袖部ジャンパスペーサ5および中央ジャンパスペーサ7によって位置決めされている。これにより、ジャンパ線2は、上段2本の天線と下段2本の地線とに分かれて設置されている。ジャンパソケット6は、各ジャンパ線2の両端に固定されている。そして、ジャンパソケット6は、耐張装置92の圧縮型クランプ924に取り付けられている。これにより、送電線鉄塔9の両側それぞれに延びた架空送電線ELが電気的に接続されている。
【0024】
一対のジャンパ線把持金具3は、ジャンパ線2の延線方向に間隔をあけ、4本のジャンパ線2の両端側部分を把持している。ジャンパ線把持金具3は、支持装置4の下端に連結されている。ジャンパ線把持金具3の構成については、後に詳述する。
【0025】
支持装置4は、上端部分および下端部分それぞれにクレビスリンクを有し、それらクレビスリンクの間に長さ調整可能な支持金具を有する長尺な装置である。本実施形態では図1の右側に設置された支持金具と図1の右側に設置された支持金具は長さが異なり、右側に設置された支持金具の方が長い。また、支持装置4は下端部分のクレビスリンクに連結された一枚リンクを有している。この一枚リンクはジャンパ線把持金具3に連結されている。支持装置4の上端にあるクレビスリンクは、耐張装置92のヨーク金具922に連結されている。これらのジャンパ線把持金具3と支持装置4により、4本のジャンパ線2の中央部は、耐張装置92を介して送電線鉄塔9に吊り下げられている。以下、ジャンパ線2の、一対のジャンパ線把持金具3が把持している部分よりも延線方向における両端側に配置されている部分を袖部と称し、ジャンパ線2の、一対のジャンパ線把持金具3が把持している部分の間に配置されている部分を中央部と称することがある。
【0026】
袖部ジャンパスペーサ5は、ジャンパ線2の袖部において、ジャンパ線2の延線方向に間隔をあけて配置されている。図1においては、図の左側の袖部に2つの袖部ジャンパスペーサ5が示されており、図の右側の袖部に3つの袖部ジャンパスペーサ5が示されている。また、中央ジャンパスペーサ7は、ジャンパ線2の中央部において、ジャンパ線2の延線方向に間隔をあけて3つ配置されている。これらの、袖部ジャンパスペーサ5および中央ジャンパスペーサ7は、ジャンパ線2どうしの間隔を維持するためのものである。
【0027】
図2(a)は、図1に示したジャンパ装置に備えられたジャンパ線把持金具を示す側面図である。なお、この図2(a)には、支持装置4の下端部分も二点鎖線で示されている。
【0028】
ジャンパ線把持金具3は、ジャンパ線2の延線方向における両端の袖部と中央部との間で4本のジャンパ線それぞれを把持している。図2(a)に示すように、ジャンパ線把持金具3は、金具上側腕片31と、接続片32と、金具下側腕片33と、4つの金具把持部34とを備えている。これら金具上側腕片31、接続片32および金具下側腕片33は、金具基部の一例に相当する。金具上側腕片31は、支持装置4の下端に設けられた一枚リンクに連結するための支持装置連結部311を上端に有している。また、金具上側腕片31は、ジャンパ線2の延線方向に直交し、かつ水平方向を向いた回動軸線31aを回動中心にして回動自在に2つの金具把持部34を支持している。これら2つの金具把持部34には、ジャンパ線2の天線2本がそれぞれ把持されている。接続片32には、金具上側腕片31と金具下側腕片33それぞれが、ジャンパ線2の延線方向に直交し、かつ水平方向を向いた回動軸線32aを中心に回動自在に連結されている。また、金具下側腕片33は、ジャンパ線2の延線方向に直交し、かつ水平方向を向いた回動軸線33aを回動中心にして回動自在に2つの金具把持部34を支持している。これら2つの金具把持部34には、ジャンパ線2の地線2本がそれぞれ把持されている。4つの金具把持部34は全て同一の構成をしている。金具把持部34は、回動軸線31aまたは回動軸線33aを回動中心にして回動自在に金具上側腕片31または金具下側腕片33に保持された把持部下側部材と、その把持部下側部材にねじ止めされた把持部上側部材とを有している。そして、金具把持部34は、把持部下側部材と把持部上側部材とでジャンパ線2を挟み込むことで、ジャンパ線2を把持している。なお、図2(a)では、接続片32に対して、金具上側腕片31が図の真上に位置し、金具下側腕片33が図の真下に位置している様子が示されている。換言すれば、金具上側腕片31と金具下側腕片33が回動していない状態で接続片32に連結された様子が示されている。そして、この図2(a)の状態では、一辺の長さが500mmの正方形の頂点に4本のジャンパ線2それぞれの中心が位置するように、ジャンパ線把持金具3は4本のジャンパ線2を把持している。
【0029】
図2(b)は、図1に示したジャンパ装置に備えられた袖部ジャンパスペーサを示す側面図である。なお、図2(b)では、袖部ジャンパスペーサ5が鉛直方向に沿って配置された状態における側面図が示されている。
【0030】
袖部ジャンパスペーサ5は、ジャンパ線2の袖部において4本のジャンパ線を把持している。図2(b)に示すように、袖部ジャンパスペーサ5は、袖部スペーサ基部51と、4つの袖部スペーサ把持部52とを備えている。なお、図2(b)における右側にある2つの袖部スペーサ把持部52は、袖部スペーサ基部51側部分の紙面手前側部分が切り取られた断面図で示されている。袖部スペーサ基部51は、略正方形の袖基部中心部511から放射方向に突出した4本の袖腕部512とが一体に形成されたものである。4本の袖腕部512は、各々が水平方向に対して45度傾斜した方向に向かって突出している。4つの袖部スペーサ把持部52は、各袖腕部512の突出端部分に1つづつ回動自在に支持されている。4つの袖部スペーサ把持部52は、全て同一の構成をしている。袖部スペーサ把持部52は、後述する中央スペーサ把持部72とも同一の構成をしているので、ここでは袖部スペーサ把持部52の構成の詳細な説明は省略する。4つの袖部スペーサ把持部52は、ジャンパ線2の延線方向に直交し、それぞれ袖腕部512の突出方向に対して直交する回動軸線51aを中心に回動自在に袖部スペーサ基部51に支持されている。すなわち、4つの袖部スペーサ把持部52の回動軸線51aは、ジャンパ線2の延線方向に直交し、袖部ジャンパスペーサ5が鉛直方向に沿って配置された状態である図2(b)の状態では水平方向に対して45度傾斜している。なお、図2(b)では、袖部スペーサ基部51に対して、鉛直方向に袖部スペーサ基部51と袖部スペーサ把持部52が並んだ状態が示されている。換言すれば、4つの袖部スペーサ把持部52が回動していない状態で袖部スペーサ基部51に連結された様子が示されている。そして、この図2(b)の状態では、一辺の長さが500mmの正方形の頂点に4本のジャンパ線2それぞれの中心が位置するように、袖部スペーサ把持部52は4本のジャンパ線2を把持している。ただし、ジャンパ線2の最も端部に配置される袖部スペーサ把持部52は、上底が200mm、下底が500mmの等脚台形の頂点に4本のジャンパ線2それぞれの中心が位置するように、袖部スペーサ把持部52を配置している。こうすることで、2本の天線の中心間の距離が200mm程度になるので、ジャンパ線2の地線が接続されている下段のジャンパソケット6や下段のバーニヤ金具923などに、ジャンパ線2の天線が接触してしまうことを防止できる。
【0031】
図3は、図1に示したジャンパ装置に備えられた中央ジャンパスペーサを示す側面図である。なお、図3では、中央ジャンパスペーサ7が鉛直方向に沿って配置された際の側面図が示されている。
【0032】
中央ジャンパスペーサ7は、ジャンパ線2の中央部において4本のジャンパ線それぞれを把持している。図3に示すように、中央ジャンパスペーサ7は、中央スペーサ基部71と、4つの中央スペーサ把持部72とを備えている。中央スペーサ基部71は、水平方向に延びた中央基部711からそれぞれ垂直方向に突出した4本の中央腕部712とが一体に形成された、側面視で略H形状をしたものである。中央腕部712の突出端部分には図3において左右方向に貫通した腕部貫通孔712hが形成されている。また、中央スペーサ基部71には、中央基部711から各中央腕部712に連なって形成された補強リブ713が設けられている。4つの中央スペーサ把持部72は、各中央腕部712の突出端部分に1つづつ回動自在に支持されている。この中央スペーサ把持部72は、把持部の一例に相当する。中央スペーサ把持部72は、上下2段に分かれて配置され、それぞれがジャンパ線2を把持している。中央スペーサ把持部72は、ジャンパ線2の延線方向に直交し、かつ水平方向を向いた回動軸線71aを中心に回動自在に中央スペーサ基部71に支持されている。なお、図3では、中央スペーサ基部71に対して、鉛直方向に中央スペーサ基部71と中央スペーサ把持部72が並んだ状態が示されている。換言すれば、4つの中央スペーサ把持部72が回動してない状態で中央スペーサ基部71に連結された様子が示されている。そして、この図3の状態では、一辺の長さが500mmの正方形の頂点に4本のジャンパ線2それぞれの中心が位置するように、中央スペーサ把持部72は4本のジャンパ線2を把持している。
【0033】
4つの中央スペーサ把持部72は、全て同一の構成をしているので、以下の説明では、主に図3の右上に配置された中央スペーサ把持部72について説明し、その他の中央スペーサ把持部72の説明は省略する。この中央スペーサ把持部72は、把持基部721と、スペーサ回動中心軸722と、スペーサバネ723と、Tボルト724と、押さえ部725と、押しボルト726と、取付確認材727とを備えている。なお、押しボルト726と取付確認材727は、通常はジャンパ装置1を送電線鉄塔9に設置した際に取り外されるが、図3では説明のために示している。この把持基部721は基部の一例に相当し、スペーサ回動中心軸722は回動中心軸の一例に相当する。なお、図3における右側にある2つの中央スペーサ把持部72の把持基部721は、紙面手前側部分が切り取られた断面図で示されている。把持基部721は、中央スペーサ基部71と連結している。把持基部721の、中央スペーサ基部71との連結部分は、スペーサ基部貫通孔721hを有するクレビス形状をしている。そして、そのスペーサ基部貫通孔721h内と腕部貫通孔712h内に、スペーサ回動中心軸722が挿入されている。これにより、中央スペーサ基部71と中央スペーサ把持部72とが連結されている。すなわち、中央スペーサ基部71と中央スペーサ把持部72は、スペーサ回動中心軸722によって回動自在に連結されている。このスペーサ回動中心軸722の軸中心が回動軸線71aになる。
【0034】
把持基部721内には、スペーサバネ723が配置されている。スペーサバネ723の内側には、Tボルト724のネジ部が貫通している。Tボルト724は、ネジ部の先端側に取り付けられたワッシャ7241がスペーサバネ723のバネ力を受けることで、中央スペーサ基部71側に引っ張られている。押さえ部725は、押さえ部軸7251を回動中心にして把持基部721に回動自在に取り付けられている。そして、押さえ部725の回動端にはTボルト724の頭部が引っ掛けられている。このため、押さえ部725は、スペーサバネ723のバネ力によって把持基部721との間にジャンパ線2を挟み込んでいる。すなわち、中央スペーサ把持部72は、スペーサバネ723のバネ力によってジャンパ線2を把持するバネ式クランプである。
【0035】
押しボルト726は、スペーサバネ723のバネ力に抗してTボルト724を中央スペーサ基部71側とは反対側に押し上げるためのものである。押しボルト726は、把持基部721に形成されたネジ穴に挿入されており、回転させることでネジ先端部が図3において上下方向に移動する。ジャンパ線2を、中央スペーサ把持部72に把持させる前の状態では、押しボルト726がTボルト724を押し上げている。中央スペーサ把持部72にジャンパ線2を挟み込ませた後、押しボルト726を回転して押しボルト726のネジ部先端を中央スペーサ基部71側に移動させることで、挟み込まれたジャンパ線2が、スペーサバネ723のバネ力で中央スペーサ把持部72に把持される。取付確認材727は、一端と他端それぞれがループ状をした帯である。取付確認材727の一端と他端のループ状部分は、押しボルト726のネジ部が挿入されている。このループ状部分は、中央スペーサ把持部72にジャンパ線2を把持させる前の状態では、押しボルト726頭部と把持基部721の間に配置されている。また、その状態では、取付確認材727の長手方向の中央部分は、Tボルト724のネジ部先端部分に巻き掛けられている。ジャンパ装置1を送電線鉄塔9に設置した際に、押しボルト726を回転させて押しボルト726のネジ部先端がTボルトのネジ部先端から離間することで、取付確認材727の中央部分をそれらの間から抜き出すことができる。この取付確認材727が抜き出されていることで、スペーサバネ723のバネ力によって設定された正しい荷重でジャンパ線2が中央スペーサ把持部72に把持されていることを確認できる。なお、通常は、取付確認材727の中央部分を抜き出した後、押しボルト726をさらに緩め、押しボルト726を取付確認材727とともに把持基部721から取り外す。このため、ジャンパ装置1の設置後は、取付確認材727の有無によって、ジャンパ線2が中央スペーサ把持部72に正しい荷重で把持されているか確認できる。
【0036】
図4は、図1に示したA部を拡大して示すA部拡大図である。
【0037】
図4に示すように、中央ジャンパスペーサ7の中央スペーサ把持部72は、回動軸線71aを中心に回動自在に中央スペーサ基部71に支持されている。図4では、中央スペーサ把持部72の回動方向が白抜きの両矢印で示されている。これにより、ジャンパ線2は、少なくとも中央スペーサ把持部72が回動する方向については中央ジャンパスペーサ7による束縛を受けにくい。このため、ジャンパ線2の中央部は、中央ジャンパスペーサ7が存在しない場合に自然に形成されるカテナリ曲線に近い形状になる。特に、この実施形態では、回動軸線71aが、ジャンパ線2の延在方向に直交し、かつ水平方向を向いているので、ジャンパ線2の延線方向と重力方向によって形成される面方向におけるジャンパ線2への中央ジャンパスペーサ7の束縛が最小になり、ジャンパ線2の中央部は、カテナリ曲線に近い形状になりやすい。
【0038】
図5(a)は、図1に示したジャンパ装置を送電線鉄塔に吊り上げる前の吊上前状態を示す説明図であり、図5(b)は、同図(a)のジャンパ装置を送電線鉄塔に吊り上げて送電線鉄塔に取り付けた取付状態を示す説明図である。
【0039】
図5(a)に示すように、図1に示したジャンパ装置1では、地上でジャンパ線把持金具3と中央ジャンパスペーサ7に4本のジャンパ線2全てを把持させる。その際、天線の把持位置に対する地線の把持位置は、地上で天線と地線を並べたときにある程度近い位置であればよい。なお、2本の天線どうしは、延線方向における同一位置が中央ジャンパスペーサ7に把持されることが好ましい。同様に、2本の地線どうしも延線方向における同一位置が中央ジャンパスペーサ7に把持されることが好ましい。その後、図5(b)に示すように、ジャンパ装置1を送電線鉄塔9に吊り上げ、支持装置4の上端を耐張装置92に連結し、ジャンパソケット6を圧縮型クランプ924に固定する。そして最後に、袖部ジャンパスペーサ5(図1参照)を袖部に設置するが、図5(b)では、袖部ジャンパスペーサ5は図示省略されている。
【0040】
この実施形態のジャンパ装置1によれば、地上において4本のジャンパ線2を全て中央ジャンパスペーサ7に把持させてから送電線鉄塔9に吊り上げても、中央スペーサ把持部72が回動するので、ジャンパ線2の中央部において、ジャンパ線2は自然にカテナリ曲線に近い形状になる。このため、送電線鉄塔90の上方でジャンパ線2の地線を中央スペーサ把持部72に把持させる作業が不要になり、ジャンパ装置1の施工が容易になる。また、中央ジャンパスペーサ7は、中央スペーサ基部71と中央スペーサ把持部72とをスペーサ回動中心軸722で連結するといった簡便な構造で中央スペーサ把持部72を回動自在にしているので、ジャンパ装置1を安価に構成できる。
【0041】
ところで、架空送電線ELにはギャロッピング振動が生じることがある。このギャロッピング振動は、低周波大振幅の振動で、主に山岳地帯に架設された架空送電線ELに発生しやすい。架空送電線ELにギャロッピング振動が発生すると、振動が伝播してジャンパ装置1も振動する。この振動が大きくかつ長時間継続すると、ジャンパ線2が破断する事故につながる虞がある。本実施形態のジャンパ装置1では、図1の右側の支持装置4と図1の左側の支持金具の長さが異なるため、支持装置4およびその支持装置4に連結されたジャンパ線把持金具3の組み合わせにおける固有周期が左右の組み合わせで異なる。以下、支持装置4およびその支持装置4に連結されたジャンパ線把持金具3の組み合わせを支持ユニットと称する。また、ジャンパ線2の中央部においてジャンパ線2が自由に屈曲できるため、左右の支持ユニットの振動系が分断され、それぞれ単独の振動系に近い状態になっている。これらにより、ギャロッピング振動がジャンパ装置1に伝播しても、左右の支持ユニットが互いの振動を阻害してジャンパ装置1全体の振動は小さくなりやすい。従って、本実施形態のジャンパ装置1は、ジャンパ線2の破断を抑制できるといった効果を奏する。
【0042】
また、吊架式ジャンパ装置では、ジャンパ線2の中央部が比較的剛体に近い状態であるため、ジャンパ線2の中央部では、ジャンパ線2が振れにくい。これにより、金具把持部34の回動が妨げられる。一方、ジャンパ線2の袖部は、相対的にジャンパ線2が振れやすい状態になっている。これにより、ギャロッピング振動が伝播してきた際に、ジャンパ線2の、金具把持部34で把持された部分に対し、袖部側の相対的な振れ角度が大きくなりがちで、金具把持部34で把持された部分の近傍でジャンパ線2が大きく歪んでしまうことがある。このため、ギャロッピング振動が大きく振動時間が長いと、金具把持部34で把持された部分の袖部側でジャンパ線2が破断してしまう虞がある。これに対し、本実施形態のジャンパ装置1では、中央ジャンパスペーサ7の中央スペーサ把持部72が回動自在であるため、ジャンパ線2の中央部が比較的柔軟で、金具把持部34の回動を妨げにくい。従って、金具把持部34はスムーズに回動できる。従って、ギャロッピング振動がジャンパ装置1に伝播してきた際に、ジャンパ線2の、金具把持部34で把持された部分に対し、その袖部側における相対的な振れ角度が大きくなることが抑制され、金具把持部34で把持された部分の近傍でジャンパ線2が大きく歪んでしまうことが防止される。これによっても、本実施形態のジャンパ装置1は、ジャンパ線2の破断を抑制できるといった効果を奏する。
【0043】
すなわち、本実施形態のジャンパ装置1は、施工性がよく、振動抑制に優れ、ジャンパ線2への負荷が少ない。
【0044】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、4本のジャンパ線2を有するジャンパ装置1を例にあげて説明したが、ジャンパ線2の数は複数であればよく、3本であってもよく5本以上であってもよい。また、中央スペーサ把持部72の回動軸線71aは水平方向に対して多少傾いていてもよい。さらに、ジャンパ線2の延線方向におけるちょうど真ん中にある中央ジャンパスペーサ7にジャンパホーンを設けてもよい。その場合、送電線鉄塔9の鉄塔アーム91にジャンパホーンと対になるインパルスホーンを設置することが好ましい。加えて、本実施形態では、中央スペーサ把持部72として、袖部スペーサ把持部52と同一構成のものを用いる例を示したが、これらは別の構成のものであってもよい。ただし、同一構成のものを用いることで、ジャンパ装置1を安価にできるため同一構成のものを用いることが好ましい。
【0045】
なお、以上説明した各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ジャンパ装置
2 ジャンパ線
3 ジャンパ線把持金具
4 支持装置
7 中央ジャンパスペーサ
9 送電線鉄塔
72 中央スペーサ把持部
72a 回動軸線
91 鉄塔アーム
EL 架空送電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6