(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129265
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ベルトコンベヤに於けるベルトの浮き上がり防止及び蛇行抑制装置
(51)【国際特許分類】
B65G 15/64 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
B65G15/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027921
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】504385982
【氏名又は名称】株式会社JRC
(74)【代理人】
【識別番号】100077470
【弁理士】
【氏名又は名称】玉利 冨二郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 尚次
(72)【発明者】
【氏名】東根 光善
【テーマコード(参考)】
3F023
【Fターム(参考)】
3F023BA03
3F023GA00
3F023GA07
(57)【要約】
【課題】ベルトコンベヤに於いてベルトが浮き上がることで蛇行防止機能が働かなかったり搬送物が落荷したりすることを防ぐ。
【解決手段】ベルトコンベヤAに於けるキャリヤローラ2の両側の対の縦柱材7と、両縦柱材7に沿って昇降動する昇降フレーム3と、昇降フレーム3に設けてあるキャリヤローラスタンド4とキャリヤローラ2と、キャリヤ側ベルト1の浮き上がり阻止のために縦柱材7に支持して設けた回転体10と、昇降フレーム3及びキャリヤローラ2側の総重量よりも少し強い牽引力により昇降フレーム3に上昇力を付与する牽引手段Cとからなるベルトコンベヤに於けるベルトの浮き上がり防止及び蛇行抑制装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベヤに於けるキャリヤローラの配置位置の両側に設けた並列する対向する対の縦柱材と、この両縦柱材に設けてある縦ガイドレールに両端のスライダをスライド自在に係合して昇降するように設けた昇降フレームと、この昇降フレームの両端間に設けてあるキャリヤローラスタンドにセンタ軸の両端を不回転状態に支持して上記ベルトコンベヤのキャリヤ側ベルトを支承するキャリヤローラと、上記キャリヤ側ベルトの浮き上がりを阻止するように上記縦柱材に支持して設けた回転体と、上記昇降フレーム及び上記キャリヤローラ側の総重量よりも少し強い牽引力により前記昇降フレームに上昇力を付与するように設けた牽引手段とからなることを特徴とするベルトコンベヤに於けるベルトの浮き上がり防止及び蛇行抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルトコンベヤに於けるベルトの浮き上がりに対しベルトに追従してベルトの浮き上がりを防止すると共に、ベルトの蛇行を抑制する(蛇行にともなう落荷をなくする)ようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベヤ設備に於いて、次のラインに乗り移る時にヘッドプーリあるいはこれに準ずるプーリ(例えば、中間で搬送経路を切り換える手段を持つトリッパ部等)が経路を切り換えるためにプーリを立ち上げたことによって、コンベヤベルトが大きく傾斜し、やがては水平部分と弧を描くように接しながら浮き上がることがある。
【0003】
多くの場合、この浮き上がったベルトに添うようなコンベヤフレームの形状になるように計画をし、ローラを配置する。
【0004】
しかし、負荷時にベルトがローラに接していても無負荷時、あるいは頻繁に搬送物の量(キャリヤ側の負荷重量)が変化する(搬送物の供給がとぎれるなどによる)場合、ベルトが浮き上がる場合がある。
また、時として計画通りにベルトが配置したローラに接しない場合もある。
【0005】
そこで、キャリヤ側のベルトを押さえ込んでベルトの浮き上がりを防止する方式として、例えば、ベルトの上面両側と左右の車輪により押さえ込む方式(特許文献1)や、回転支軸が水平なローラで押さえ込む方式(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-194114号公報
【特許文献2】実用新案登録第3215812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の方式によると、キャリヤ側ベルトの上面両側縁部を左右の回転輪により押さえ込むことで、ベルトの浮き上がりを抑制することにあり、また特許文献2の方式によると、キャリヤ側ベルトの上を横切る1本の水平なローラでベルトの浮き上がりを抑制することにある。
【0008】
しかしながら、いずれの方式も万全ではなく、ベルトがどの高さ、位置にある時に押え回転輪やローラを据えるかによって、その押え回転輪やローラが搬送物と干渉することで落荷を煩雑に起こす問題があった。
【0009】
また、荷の通過状態に合わせてレベル調整を行うことも考察するが、どうしても負荷時と無負荷時のベルトの位置の変化に適して対応する方法がなく、ベルトがキャリヤ側の回転輪やローラから離れて浮き上がることが多く有り、ベルトが蛇行する大きな原因となるのであった。
【0010】
そして、ベルトが浮き上がった状態で蛇行した場合、搬送中であれば搬送物が落荷することがある。
【0011】
このベルトが浮き上がることで、蛇行することを防ぐ、また、搬送物の落荷を防ぐことができない問題があった。
そこで、この発明は、上述の各問題をなくするようにしたことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は、ベルトコンベヤに於けるキャリヤローラの配置位置の両側に設けた並列する対向する対の縦柱材と、この両縦柱材に設けてある縦ガイドレールに両端のスライダをスライド自在に係合して昇降するように設けた昇降フレームと、この昇降フレームの両端間に設けてあるキャリヤローラスタンドにセンタ軸の両端を不回転状態に支持して上記ベルトコンベヤのキャリヤ側ベルトを支承するキャリヤローラと、上記キャリヤ側ベルトの浮き上がりを阻止するように上記縦柱材に支持して設けた回転体と、上記昇降フレーム及び上記キャリヤローラ側の総重量よりも少し強い牽引力により前記昇降フレームに上昇力を付与するように設けた牽引手段とからなる構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明のベルトコンベヤに於けるベルトの浮き上がり防止及び蛇行抑制装置によれば、キャリヤ側ベルトの支承キャリヤローラを有する昇降フレームを縦柱材のガイドレールとこのガイドレールにスライド自在に係合したスライダとで昇降するようにしてあるので、キャリヤ側ベルトの無負荷時、キャリヤ側ベルトを押さえる負荷がないため、少なくともベルトが浮き上がることになる。
【0014】
この時、昇降フレームに付与してある牽引手段により上記の昇降フレームが上昇してキャリヤローラとベルトとが接触することになるので、空荷の状況下でのキャリヤ側ベルトの蛇行がない。
【0015】
そして、キャリヤ側ベルト上に搬送物が存在すると牽引力に抗してキャリヤ側ベルトと共に昇降フレームが降下して搬送物の安定した搬送ができて、搬送物の荷こぼれをなくすることができる。
【0016】
このため、キャリヤ側ベルトの搬送物がなくなる無負荷状態或いは途切れた状態時に常に昇降フレームが張力で浮き上がるキャリヤ側ベルトに追従しながらキャリヤローラに接しているため、ベルトが浮き上がることで起生するふらつきが防止でき、ベルトの蛇行をなくする特有な効果がある。
【0017】
また、今迄の対策方法のようなベルトを押さえ付けることがないので、ベルトに負荷を与えることがなく、ベルトの上下に合わせて、キャリヤローラの位置が追従するので、ベルトに無理な負荷を与えず、ベルトの耐久性が大幅に向上する利点もある。
【0018】
さらに、従来の対策方法と異なり常にキャリヤ側ベルトとキャリヤローラとが接している状態を維持できるので、通常のコンベヤにおいてキャリヤアイドラを用いて蛇行を抑える方法が使用できたり、ローラの種類を変更できる効果もある。すなわち、例えば前傾スタンドを用いてより蛇行を抑制したり、ガーランドにすることでベルトとローラをより接触させて安定した走行ができたり、ローラをインパクトローラに変更することで衝撃に強くしたり、通常のコンベヤで用いる付加機能を追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施形態を示す一部切欠正面図である。
【
図2】同上の要部を示す一部切欠拡大正面図である。
【
図3】同キャリヤローラの支持スタンド付昇降フレームの部分を示す拡大正面図である。
【
図5】同上の昇降フレームの昇降ガイドを示す横断平面図である。
【
図6】キャリヤ側ベルトの浮き上がり防止の他の例を示す一部切欠正面図である。
【
図7】昇降フレームの上昇力付与の他の例を示す一部切欠拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図においてAは、ベルトコンベヤである。
【0021】
上記のベルトコンベヤAは、周知のようにヘッドプーリとテールプーリ(いずれも図示省略)との間に無端状のベルト1をかけ渡し、そして上記ベルト1のキャリヤ側の裏面の点在位置がキャリヤローラ2で支承され、ベルト1のリターン側の表面の点在位置がリターンローラ(図示省略)で支承される。
【0022】
なお、周知のように、キャリヤ側ベルト1の支承キャリヤローラ2を図示のように水平なセンタローラと、このセンタローラの両側に内端から外端に向け登り傾斜の対のサイドローラをトラフ形に配置して搬送物Bの荷こぼれをなくするようになっている。
【0023】
また、上記のキャリヤローラ2は、両端が左右方向に向く昇降フレーム3上から(溶接などの固着手段を用いて)起立するスタンド4に各キャリヤローラ2のセンタ軸5の両端を不回転状態に嵌め込み係合させて支持してある。
【0024】
さらに、上記の昇降フレーム3の両端外側にコンベヤフレーム6から起立する対向二本の縦柱材7を設けて、この各縦柱材7の全長に設けてある縦ガイドレール8に昇降フレーム3の両端に設けてあるスライダ9をスライド自在に係合して(図示縦ガイドレール8に昇降フレーム3の両端に設けてある筒状のスライダ9を嵌装してある)、昇降するようになっている。
【0025】
また、キャリヤ側ベルト1の上方には、キャリヤ側ベルト1の浮き上がりを阻止する回転体10が設けてある。
【0026】
上記回転体10は、
図1、2、3、4に示す場合、左右の縦柱材7の上端に設けてあるブラケット11に押さえローラのセンタ軸12を係合支持したが、限定されず、例えば
図6に示すように両縦柱材7の上端に設けてある支持部材13に軸材14の両端を支持すると共に、この軸材14の両端部に上端側を支持した並列2本1組のアーム15の下端部に回転体10としての車輪のセンタ軸16の両端を支持して、ベルト1上の搬送物Bの減少や空荷の際に生じるベルト1の浮き上がりを(この浮き上がりの際に昇降フレーム3が上昇して発生する)、回転体10によりベルト3を押さえ込んで阻止する。
すると、ベルト3の蛇行を抑制すると共に、荷こぼれを抑制することになる。
【0027】
さらに、上記昇降フレーム3及びキャリヤローラ2側の総重量よりも少し強い牽引力により昇降フレーム3に上昇力を付与する牽引手段Cがもうけてある。
【0028】
上記の牽引手段Cは、キャリヤ側ベルト1上の搬送物Bの著しい減少や空荷(搬送物Bの供給がとぎれることによる)の際、昇降フレーム3に押し上げの力が作用するための牽引手段Cを設ける。
【0029】
上記の牽引手段Cとしては、例えば、
図1、2、3、4、6に示すように、縦柱材7の途中の滑車17と、この滑車17に途中の反転部分を係合したロープ18と、このロープ18の一端を昇降フレーム3に、もう一端に重錘19にそれぞれ接続して形成することで、昇降フレーム3に上昇牽引力が作用して、ベルト1の負荷時と無負荷時とのベルト1の位置の変化に適した対応が可能になる。
【0030】
当然、ベルト1が浮き上がった状態で蛇行した場合、搬送途中であれば搬送物が落荷を防ぐことになる。
【0031】
また、上記以外の牽引手段Cとしては、
図7に示すように、昇降フレーム3に一端を接続したロープ18の途中を滑車17により反転し、ロープ18の他端に接続したバネ20の端末をコンベヤフレーム6の止具21に係止することで、前記のバネ20が重錘19と同等の牽引手段Cとしての役目をする。
【0032】
すると、ベルト1の安定した走行を保障して、キャリヤローラ2からのベルト1の浮き上がりをなくするので、搬送物の荷こぼれや蛇行をなくすることができる。
【0033】
なお、ベルトコンベヤAは、図示の場合、水平な場合のみに昇降フレーム3を配置したものとしたが、限定されず、例えば登り傾斜したベルトコンベヤやキャリヤ側ベルトの浮き上がりが発生しやすい、例えば、トリッパ付ベルトコンベヤに使用することもできる。
図中25は、滑車の支軸である。
【符号の説明】
【0034】
A ベルトコンベヤ
B 搬送物
C 牽引手段
1 ベルト
2 キャリヤローラ
3 昇降フレーム
4 スタンド
5 センタ軸
6 コンベヤフレーム
7 縦柱材
8 縦ガイドレール
9 スライダ
10 回転体
11 ブラケット
12 センタ軸
13 支持部材
14 軸材
15 アーム
16 軸材
17 滑車
18 ロープ
19 重錘
20 バネ
25 支軸