(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129296
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】発熱シートおよび温熱具
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61F7/08 334A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027968
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390003562
【氏名又は名称】株式会社ニトムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】武田 安洋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博志
(72)【発明者】
【氏名】武智 政憲
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA01
4C099CA19
4C099GA02
4C099GA03
4C099JA04
4C099LA14
4C099LA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発熱中および/または発熱後であっても柔軟性を確保できる発熱シート、および発熱具を提供する。
【解決手段】発熱シート2に、通気性を有する樹脂層21と、樹脂層に含まれる被酸化性金属粉22とを有する。樹脂層は、繊維状の樹脂からなり、樹脂層は、樹脂層の厚み方向に通気可能な連通孔を有する。被酸化性金属粉は、樹脂層および被酸化性金属粉の総質量に対して、50質量%以上、80質量%以下含まれる。発熱シート2と、発熱シートを包む袋体3であって、通気性を有する袋体と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する樹脂層と、
前記樹脂層に含まれる被酸化性金属粉とを有する、発熱シート。
【請求項2】
前記樹脂層は、繊維状の樹脂からなる、請求項1に記載の発熱シート。
【請求項3】
前記樹脂層は、前記樹脂層の厚み方向に通気可能な連通孔を有する、請求項1または2に記載の発熱シート。
【請求項4】
前記被酸化性金属粉は、前記樹脂層および前記被酸化性金属粉の総質量に対して、50質量%以上80質量%以下含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の発熱シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱シートと、
前記発熱シートを包む袋体であって、通気性を有する袋体と、を備える。温熱具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱シートおよび温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温熱具において、発熱部の主成分として、鉄粉などの被酸化性金属を利用することが知られている。
【0003】
例えば、還元鉄粉からなる発熱部が、透湿性を有する収容体に収容される化学カイロが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
そのような温熱具では、被酸化性金属が酸素と反応する酸化熱により、発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載される化学カイロのような温熱具では、発熱中および/または発熱後に、酸化した被酸化性金属(金属酸化物)が互いに凝集して、発熱部が固まる場合がある。とりわけ、温熱具が人の身体に装着されて使用されたときに、発熱部が固まると、使用者が不快に感じるおそれがある。
【0007】
本発明は、発熱中および/または発熱後であっても柔軟性を確保できる発熱シートおよび発熱具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、通気性を有する樹脂層と、前記樹脂層に含まれる被酸化性金属粉とを有する、発熱シートを含む。
【0009】
本発明[2]は、前記樹脂層は、繊維状の樹脂からなる、上記[1]に記載の発熱シートを含む。
【0010】
本発明[3]は、前記樹脂層は、前記樹脂層の厚み方向に通気可能な連通孔を有する、上記[1]または[2]に記載の発熱シートを含む。
【0011】
本発明[4]は、前記被酸化性金属粉は、前記樹脂層および前記被酸化性金属粉の総質量に対して、50質量%以上80質量%以下含まれる、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の発熱シートを含む。
【0012】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の発熱シートと、前記発熱シートを包む袋体であって、通気性を有する袋体と、を備える。温熱具を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発熱シートでは、被酸化性金属粉が通気性を有する樹脂層に含まれている。そのため、被酸化性金属粉が酸化しても、酸化した金属粉が互いに凝集することを抑制できる。その結果、発熱中および/または発熱後の発熱シートが固まることを抑制でき、発熱シートの柔軟性を確保することができる。そのため、発熱シートを温熱具に利用して、その温熱具を人の身体に装着して使用したときに、使用者が不快に感じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の温熱具の一実施形態の概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の温熱具の一実施形態としての温熱具1を、
図1を参照して説明する。
【0016】
温熱具1は、発熱シート2と、袋体3とを備える。
【0017】
発熱シート2は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。発熱シート2は、厚み方向と直交する面方向に延びる。発熱シート2は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0018】
発熱シート2の厚みは、例えば、0.5mm以上、好ましくは、1mm以上、また、例えば、10mm以下、好ましくは、6mm以下、より好ましくは、3mm以下である。
【0019】
発熱シート2の厚みが上記上限以下であれば、発熱シート2の柔軟性を安定して確保することができる。
【0020】
発熱シート2は、樹脂層21と、被酸化性金属粉22とを有する。
【0021】
樹脂層21は、樹脂層21に含まれる被酸化性金属粉22が空気と接触可能となる通気性を有する。
【0022】
本実施形態では、樹脂層21は、繊維状の樹脂(以下、樹脂繊維とする。)からなる。樹脂層21は、好ましくは、樹脂繊維を寄せ集めて織らずに絡み合わせて形成する樹脂不織布である。樹脂層21が樹脂繊維からなると、樹脂層21内に空隙を安定して確保することができ、樹脂層21が上記した通気性を確実に有することができる。
【0023】
樹脂層21は、樹脂層21の厚み方向に通気可能な連通孔を有している。樹脂層21が樹脂繊維からなる場合、連通孔は、樹脂層21における樹脂繊維以外の空間の部分である。連通孔は、3次元網目状に互いに連通して形成されており、樹脂層21の全体にわたって広がっている。また、連通孔は、樹脂層21の表面および裏面において、樹脂層21の外部空間と連通するように開口している。
【0024】
樹脂繊維の直径は、例えば、1.0μm以上、好ましくは、5μm以上、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0025】
樹脂繊維は、例えば、スプレーダイスから樹脂を噴出させることにより調製することができる。
【0026】
樹脂層21が樹脂繊維からなる場合、樹脂層21の目付量は、例えば、2.0g/m2以上、好ましくは、3.0g/m2以上、また、例えば、30g/m2以下、好ましくは、20g/m2以下である。
【0027】
また、樹脂層21は、上記した通気性を有すれば、樹脂不織布に限定されない。樹脂層21は、公知の加工方法により形成される連通孔を有してもよい。樹脂層21に連通孔を形成するには、例えば、樹脂シートを調製した後、公知の加工方法により、樹脂シートに連通孔を形成する。加工方法として、例えば、打ち抜き加工、レーザー加工および針穴加工が挙げられる。また、連通孔を有する樹脂層21を、発泡体から形成することもできる。
【0028】
連通孔を有する樹脂層21の空隙率は、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上、また、例えば、50%以下、好ましくは、30%以下である。
【0029】
このような樹脂層21の材料は、柔軟性を有していれば特に制限されない。樹脂層21の材料として、例えば、アクリル系樹脂およびゴム系樹脂が挙げられる。
【0030】
アクリル系樹脂として、例えば、粘着剤のベースポリマーとして公知のアクリル系樹脂が挙げられる。
【0031】
ゴム系樹脂として、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体(SIS)、天然ゴムおよびスチレン・ブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。
【0032】
樹脂層21の材料のなかでは、好ましくは、ゴム系樹脂が挙げられ、より好ましくは、スチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体が挙げられる。
【0033】
樹脂層21の材料は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0034】
また、樹脂層21は、上記した通気性を確保できれば、樹脂繊維から形成されなくてもよく、連通孔を有しなくてもよい。この場合、樹脂層21は、優れた通気性を有する材料から形成される。
【0035】
被酸化性金属粉22は、樹脂層21に含まれている。より詳しくは、被酸化性金属粉22は、樹脂層21中に分散されている。
【0036】
被酸化性金属粉22は、空気との反応により発熱するものであれば、特に制限されない。被酸化性金属粉22として、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、および、カルシウムが挙げられる。
【0037】
被酸化性金属粉22のなかでは、取り扱い性、安全性、製造コスト、保存性および安定性の点から、鉄粉が挙げられる。
【0038】
鉄粉として、例えば、還元鉄粉、および、アトマイズ鉄粉が挙げられる。
【0039】
被酸化性金属粉22は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0040】
被酸化性金属粉22の平均一次粒子径は、例えば、5μm以上、好ましくは、50μm以上、また、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0041】
被酸化性金属粉22の含有割合は、樹脂層21および被酸化性金属粉22の総質量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、50質量%以上、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0042】
被酸化性金属粉22の含有割合が上記下限以上であると、発熱シート2を安定して発熱させることができる。被酸化性金属粉22の含有割合が上記上限以下であると、発熱シート2の発熱中および/または発熱後において、発熱シート2の柔軟性を安定して確保することができる。
【0043】
また、被酸化性金属粉22の含有割合を調整することにより、発熱シート2の発熱時の最高温度を調整することができる。発熱シート2は用途に応じて要求される最高発熱温度が異なる。
【0044】
発熱シート2に要求される最高発熱温度が比較的高い場合、被酸化性金属粉22の含有割合は、樹脂層21および被酸化性金属粉22の総質量に対して、好ましくは、70質量%以上80質量%以下である。
【0045】
発熱シート2に要求される最高発熱温度が比較的低い場合、被酸化性金属粉22の含有割合は、樹脂層21および被酸化性金属粉22の総質量に対して、好ましくは、50質量%以上65質量%以下である。
【0046】
樹脂層21が樹脂不織布である場合、被酸化性金属粉22は、樹脂繊維に予め混合される。その後、被酸化性金属粉22が混合された樹脂繊維から、樹脂不織布が形成される。
【0047】
また、樹脂層21が上記した加工方法により形成される連通孔を有する場合、被酸化性金属粉22は、原料となる樹脂に予め混合される。その後、被酸化性金属粉22が混合された樹脂から、樹脂シートが形成され、次いで、上記した加工方法により、樹脂シートに連通孔が形成される。
【0048】
また、樹脂層21には、被酸化性金属粉22以外のその他の成分を含有させることもできる。
【0049】
その他の成分として、使い捨てカイロに用いられている公知の成分が挙げられる。具体的には、その他の成分として、例えば、活性炭、保水剤(例えば、木粉、バーミキュライト、けい藻土、パーライト、シリカゲル、アルミナおよび吸水性樹脂)、金属塩(例えば、食塩)および水が挙げられる。
【0050】
上記した発熱シート2は、
図1において、袋体3に収容されており、温熱具1の一部品である。しかし、発熱シート2は、袋体3に収容されない状態で流通でき、産業上利用可能なデバイスである。
【0051】
このような発熱シート2では、被酸化性金属粉22が通気性を有する樹脂層21に含まれている。そのため、被酸化性金属粉22が酸化しても、酸化した金属粉が互いに凝集することを抑制できる。その結果、発熱中および/または発熱後の発熱シート2が固まることを抑制でき、発熱シート2の柔軟性を確保することができる。
【0052】
袋体3は、発熱シート2を包む。袋体3は、通気性を有する。
【0053】
袋体3は、例えば、通気性を有する多孔質樹脂フィルムからなる。多孔質樹脂フィルムの通気度の範囲は、上記した樹脂層21の通気度の範囲と同様である。
【0054】
多孔質樹脂フィルムの材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、および、エチレン酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0055】
多孔質樹脂フィルムの厚みは、例えば、20μm以上、好ましくは、50μm以上、また、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。
【0056】
このような温熱具1は、上記した発熱シート2を備えているので、発熱中および/または発熱後の柔軟性に優れている。そのため、温熱具1を人の身体に装着したときに、使用者が不快に感じることを抑制できる。よって、温熱具1は、人の身体に装着して使用する人体装着用温熱具として好適である。
【0057】
とりわけ、温熱具1は、好ましくは、比較的小さいサイズに加工して、人の身体の局所的部分に装着して使用される。温熱具1は、例えば、一辺が30mm~60mmの矩形状に加工される。そして、温熱具1は、人の身体の局所的部分としてのツボに装着される。つまり、温熱具1は、ツボ温熱具として利用できる。人の身体のツボとして、例えば、足の三里、上巨虚、下巨虚、条口、および、三陰交が挙げられる。
【0058】
温熱具1を人の身体に装着するには、例えば、袋体3の外面に粘着剤層を設けて、人の身体に貼り付ける。また、温熱具1を、衣服と身体との間で挟み込み固定することもできる。また、実用新案登録番号第3034431号に記載されるような装着用具を用いて、温熱具1を身体に装着してもよい。
【実施例0059】
以下に、準備例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら準備例、実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0060】
<<実施例1>>
スチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体(SIS)系のホットメルト型樹脂を、180℃でスプレーダイスから噴出して、繊維状の樹脂を調製した。繊維状の樹脂の直径は、5μm~50μmであった。
【0061】
次いで、繊維状の樹脂2gに鉄粉8gを混合した後、厚さ3mmのシート状に加工して、発熱シートを調製した。
【0062】
その後、発熱シートをポリエチレン製多孔質フィルムからなる袋体で包んで、温熱具を調製した。
【0063】
<<実施例2>>
実施例1と同様にして、温熱具を調製した。実施例2では、繊維状の樹脂4gに鉄粉8gを混合した。
【0064】
<<比較例1>>
鉄粉10gを、ポリエチレン製多孔質フィルムからなる袋体で包んで、温熱具を調製した。
【0065】
<<比較例2>>
繊維状に加工されていないSIS系のホットメルト型樹脂2gに鉄粉8gを混合した後、厚さ3mmのシート状に加工して、発熱シートを調製した。
【0066】
その後、発熱シートをポリエチレン製多孔質フィルムからなる袋体で包んで、温熱具を調製した。
【0067】
<評価>
(通気性)
各実施例および各比較例で得られた発熱シートの発熱の有無から通気性を確認した。発熱した場合を〇、発熱しなかった場合を×とした。その結果を表1に示す。なお、比較例1の発熱シートは、樹脂層を有していないため、比較例1は評価しなかった。
【0068】
(柔軟性)
各実施例および各比較例で得られた温熱具を大気中で発熱させて、発熱終了後の温熱具を手でさわって、発熱シートが板状に固まってないかどうかを確認した。固まっておらず柔軟性が維持されている場合を〇、板状に固まって硬くなっていた場合を×とした。その結果を表1に示す。
【0069】
(最高温度)
温熱具を大気中で発熱させた時の最高温度を測定した。その結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
<考察>
実施例1および2の温熱具では、発熱後であっても柔軟性が確保されていた。また、実施例2の温熱具では、実施例1と比較して最高温度が低い。なお、温熱具の用途に応じて適切な最高温度は異なる。そのため、比較的高い温度が要求される温熱具には、実施例1の温熱具が好適であり、比較的低い温度が要求される温熱具には、実施例2の温熱具が好適である。
【0072】
比較例1の温熱具では、発熱後に固まっており、柔軟性が確保されていない。比較例2の温熱具では、樹脂層が通気性を有しておらず、ほとんど発熱しなかった。