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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129326
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】木質爆炎ペレット燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20220829BHJP
   C10L 5/48 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C10L5/44
C10L5/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064566
(22)【出願日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2021027650
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521080521
【氏名又は名称】細川 豪邦
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】細川 豪邦
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA02
4H015AA13
4H015AB01
4H015AB03
4H015AB05
4H015BA01
4H015BA06
4H015BA08
4H015BA13
4H015BB03
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】簡便且つ低コストで、ハンドリング性及び単位重量当たりの燃焼発熱量の向上を図り、且つ耐水性・撥水性の高い木質ペレット燃料の製造方法を提供する。
【解決手段】予熱又は焙煎されたバークペレット1を140℃~280℃に加熱された廃油4に投入して油調(フライ)処理する(ステップS2及びステップS3)。水分の蒸発が進行するに従い、泡の発生量は減少していく過程を確認し、泡の発生が少なくなった時点から計測して、10分間以上油調(フライ)処理して取り出す(ステップS4)、ステンレス製のザル6を別のアルミ鍋の上に置き、廃油4とバークペレット1を分別して爆炎ペレット(製品)7を得る(ステップS5及びステップS6)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット状の木質原料を油調(フライ)してなることを特徴とする木質爆炎ペレットの製造方法。
【請求項2】
ペレット状の木質原料を予熱又は焙煎する工程、予熱した木質原料を廃油で油調(フライ)処理する工程、油調(フライ)処理した木質原料に付着した廃油を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の木質爆炎ペレットの製造方法。
【請求項3】
可燃性硬化剤を廃油に添加した可燃性硬化剤添加合成油液で油調(フライ)したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の木質爆炎ペレットの製造方法。
【請求項4】
可燃性硬化剤を廃油に添加した可燃性硬化剤添加合成油液を含浸してなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の木質爆炎ペレットの製造方法。
【請求項5】
木質原料が、樹皮、端材、間伐材、剪定材、鋸屑、建築廃材、梱包廃材、パレット廃材、籾殻及び竹類から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の木質爆炎ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を原料とする木質ペレット燃料、とくに、ハンドリング性に優れ、単位重量当りの燃焼発熱量が高い爆炎ペレットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を阻止するべく、世界的に大気中への二酸化炭素の排出量の抑制削減を図るため、再生可能エネルギー源となるバイオマス資源を利用した燃料が種々研究開発されている。そのバイオマス燃料の中でも、とくに、従来は単に焼却処分されていた産業廃棄物である間伐材等を原料とする木質燃料は石油や石炭等の化石燃料の代替燃料として注目されている。実際に近年ではホワイトペレットを製造する為に植林や間伐材の伐採が増加している。
【0003】
現在、蒸気ボイラーや温水ボイラー、暖房設備、調理用熱源で使用されている木質原料は下記である。
(a)建築用材木を製造する工程中に発生する廃材及び間伐材を所定の大きさに破砕しただけのチップペレット。
(b)建築用材木を製造する工程中に発生する端材や鋸屑及び梱包材やパレット廃材を粉砕し、圧縮固形化したホワイトペレット。
(c)建築用材木を製造する工程中に発生する樹皮を粉砕し、圧縮固形化したバークペレット。
(d)(b)及び(c)の原料粉砕物を混合して、圧縮固形化した全木ペレット。
(e)建築用材木を製造する工程中に発生する鋸屑を圧縮固形化したウッドペレットを半炭化(トレファクション)したもの。
(f)森林雑木を炭化加工した木炭。
(g)暖房等で使用される木枝の乾燥材(薪)。
(h)籾殻を圧縮固化成形した燃料。
(i)竹を所定の長さと所定の縦割りにし、高温焙煎して炭化処理を施した竹炭。
【0004】
一般的に木質ペレット燃料は、乾燥した木材を細粉し、圧力をかけて直径6mm~8mm、長さ10mm~25mmの円筒形状に圧縮成形した固形燃料であり、他のバイオマス資源を利用した燃料に比べて、取り扱いが簡便であり、長距離輸送にも適している。また、加熱処理され含水量も少ないため、長期間の貯蔵も可能であるとされている。
【0005】
代替化石燃料として、とくに注目されているのは、上記(b)のホワイトペレット(樹皮を除いた木材のみを原料とするもの)と上記(c)のバークペレット(樹皮のみを原料とするもの;例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)と(d)全木ペレットである。こうした木質ペレットは、間伐材や製材工程で発生する樹皮、鋸屑、端材の粉砕物を圧縮加工して粒状に成形したものである。木材の成分であるリグニンを熱で融解し固着させることでペレット状に形成される(例えば、特許文献3参照。)。また、米及び麦を精米した工程で発生する籾殻を原料とする(h)籾殻圧縮成形燃料も処理に困っている地方では注目される原料である。籾殻圧縮燃料は籾殻をスクリュウー押込圧縮式で固化成形したものである。
【0006】
しかしながら、これら木質ペレットは、化石燃料と比較すると下記のような問題点を擁している。
(1)単位重量当たりの燃焼発熱量が低い。
(2)製造工程が複雑であるためコストが嵩む。
(3)水に接触すると膨張して形状が崩れるため、石炭のような屋外での保管が困難である。
【0007】
そこで、例えば、木質ペレット用のオガ粉と粉炭用のオガ粉、すなわち木炭を含有させて発熱量の向上を図る方法(特許文献4参照。)。パーム油等の植物油脂や、牛脂、豚脂由来の脂肪酸又はそのエステルを含有させてコーティングして耐水性を向上させたもの(特許文献5参照。)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-266546号公報
【特許文献2】特開2008-297532号公報
【特許文献3】特開2007-40542号公報
【特許文献4】特開2008-303305号公報
【特許文献5】特開2008-7711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記問題(1)及び(2)につき、単位重量当たりの燃焼発熱量を向上するために、木質ペレットを圧縮固形化した後にリアクター装置を使用して高温焙煎を行い半炭化させて、トレファイドペレット、いわゆるブラックペレット化することで解決できるが、リアクター装置の導入コストが嵩むこと、準じてランニングコストも嵩み石炭と比較して不経済である。
【0010】
上記問題(3)につき、木質ペレット専用の屋根・壁を備えた巨大な倉庫を要する。すなわち、従来の木質ペレットは、石炭等の化石燃料と同等の発熱量を得るためには石炭より多くの貯蔵容積が必要となるという欠点があった。
【0011】
本発明は上記のような従来技術の課題に鑑み、簡便且つ低コストで、ハンドリング性及び単位重量当たりの燃焼発熱量の向上を図り、且つ耐水性の高い木質ペレット燃料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明の木質爆炎ペレット燃料の製造方法は、ペレット状の木質原料を油調(フライ)してなることを第1の特徴とする。これは油調(フライ)することにより無酸素状態でペレット燃料を熱分解させ半炭化させるためである。また、ペレット状の木質原料を予熱又は焙煎する工程、予熱した木質原料を植物性油脂・動物性油脂(本試験では安価に入手できる廃油を使用した。以下廃油とする)で油調(フライ)処理する工程、油調(フライ)処理した木質原料に付着した余分な廃油を除去する工程を含むことを第2の特徴とする。さらに、可燃性硬化剤を廃油に添加した可燃性硬化剤合成油液で油調したことを第3の特徴とする。さらにまた、可燃性硬化剤合成油液を含浸してなることを第4の特徴とする。尚、木質原料は、樹皮、端材、間伐材、剪定材、鋸屑、建築廃材、梱包材廃材、パレット廃材、籾殻及び竹類から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、下記の優れた効果がある。
(1)バイオマス資源(木材)を利用した燃料であるため、二酸化炭素の排出量を軽減でき、環境保護の観点から優れた燃料となる。
(2)油調(フライ)することにより、従来の木質ペレットよりも高い発熱量の燃料を得ることができる。これにより、すなわち、単位熱量を増加できることにより、貯蔵容積の省スペース化を図ることができる。
(3)木質ペレットの含水率が下限付近まで低減するので、微生物による組織分解の影響を受けにくく長期間の貯蔵が可能になる。
(4)ペレットの過乾燥、油分含有、タール含有で耐水性・撥水性が格段に
向上し、屋外での保管が可能であることから巨大な倉庫の設置を不要にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
図1】本発明に係る木質爆炎ペレットの製造工程を示すフローチャートである。
図2】本発明に係る木質爆炎ペレットの他の製造工程を示すフローチャートである。
図3】本発明に係る木質爆炎ペレットの他の製造工程を示すフローチャートである。
図4】本発明に係る木質爆炎ペレットの製造装置構成の一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
本発明に係る木質爆炎ペレットの製造方法を図1にしたがって説明する。木質原料としては、樹皮のみを原料とするバークペレット1を使用した。
【0016】
先ず、紙コップに入れたバークペレット1を卓上式計量器で100gを計量して電子レンジ2を使用して600Wで1分間加熱してバークペレット1の温度を100℃近くまであげて予熱した(ステップS1)。これは通常のペレット燃料を製造する工程でディスク回転圧縮押出式ディスクペレッタから排出されるときのペレットの温度である70℃~100℃を再現するためである。アルミ製鍋3に廃油4(1リットル)を入れガスコンロ5で加熱し、測温抵抗体式温度計を利用して140℃~150℃の範囲に温度保持した。バークペレット1と同じコントロールバークペレットの水分を計測するために卓上式グラインダーで粉砕して近赤外線水分計で予め計量した。
【0017】
ステップS1で予熱されたバークペレット1を加熱された廃油4に投入して油調(フライ)処理した(ステップS2及びステップS3)。ここでは、先ずバークペレット1に含まれる水分を蒸発させる。一旦、廃油4の温度は下がるが温度域が180℃~240℃になるようにガスコンロ5の火力を調整しながら蒸発する水分の泡の状況を確認した。投入当初は勢いよく蒸発水分の泡が発生するが、水分の蒸発が進行するに従い、泡の発生量は減少していく過程を確認し、泡の発生が少なくなった時点で取り出し(ステップS4)、ステンレス製のザル6を別のアルミ鍋の上に置き、そのザル6の上に廃油4でフライ処理されたバークペレットを廃油ごと投入し、廃油4とバークペレット1を分別して爆炎ペレット(製品)7を得た(ステップS5及びステップS6)。ここで、ザル6に残ったバークペレット1に付着した廃油4を可能な限り除去するために、数回にわたり上下に振動させて廃油4の除去を行う。この作業は遠心分離機を使用すればなおよいと考察する。廃油4の除去後冷却して本発明の成果品である爆炎ペレット7を得た。
【0018】
得られた爆炎ペレット7を紙コップに移して、その重量を卓上式計測器で計量した。その後、得られた爆炎ペレット7の水分を計測するために、卓上式グラインダーで粉砕し、近赤外線水分計で計測した。
【0019】
[撥水性・疎水性試験]
爆炎ペレット7の撥水性・疎水性を確認するために、紙コップに水を入れ、その中にフライ処理されたバークペレット(製品)を投入して、形状の変化を観察すると共に、形状保持された時間を計測した。水中での保形時間は6時間を目標とした。単位重量当たりの燃焼熱量は、外部の試験機関で計測する。目標熱量は5400Kカロリーとした。
【0020】
[試験結果1]
フライ処理されたバークペレット1は当初の焦げ褐色の色が真っ黒に変化していた。これは180℃以上の温度域で微粉原料が炭化し、また原料の表面にタールが合成された結果、変色したものである。単位重量当たりの燃焼発熱量は、処理前の4200Kカロリーから5860Kカロリーに上昇した。この値は粗石炭に匹敵する数値であり、代替石炭の可能性が見い出された。処理前のバークペレットの水分値は13.2%であり、処理後は1.8%に低下した。また、重量は当初100gが処理後は102gであり、蒸発した水分量と浸透した廃油量のほぼ完全な入れ替わりが確認された。
【0021】
ここで、以下3つの問題点が発生した。
問題点(1):撥水性・疎水性確認のための水中保形性は2時間経過後までは変化が観察されないが、その後は徐々に膨らみ6時間後には手で掴むと崩れ、目標とする6時間の保形はできなかった。
問題点(2):フライ処理されたバークペレットは周囲温度が30℃を越えると表面が廃油でベトつき、ハンドリングに問題があることが判明した。この問題により、ホッパなどに投入され排出される際に、ブリッジを起こす可能性があることと、屋外保管する際に、廃油が地面に沁み出して土壌汚染を引き起こすおそれがある。
問題点(3)油調(フライ)を終了して空気と接触させて自然冷却を行う時に品温が高温であることから自然発火する危険性がある可能性が懸念される。
【0022】
そこで、上記3つの問題点の解消と、さらに単位重量当たりの燃焼発熱量を上げるために、ペレット中の不可燃性(揮発性)物質をガス化して排除するために、加熱温度域を140℃~280℃に範囲を拡大した。
【0023】
水中保形性を保つため、ペレットを過乾燥させて撥水効果を上げること、また構成する小さな粒の表面とペレット内部により多くのタールを合成させること、炭化した木質成分の割合を増加させること、さらにリグニンのさらなる高温溶融させて粘性と撥水性を持たせ水分がペレット内部に浸透することを阻むことを目的として、長めの時間フライ処理を行った。油温度が140℃~160℃付近の状態で、蒸発水分の泡の発生量が減少し、泡の発生が極力少なくなった時点から計測して、フライ時間は油の温度を180℃~280℃の範囲に上げて保持した状態で5分、10分、15分及び20分と5分間刻みで行った。温度域を投入時に140℃~160℃付近にする理由は木質ペレットの水分率が高い原料が投入された時、突然沸騰や水蒸気爆発を防ぐために行うものである。また高温での油調(フライ)処理後の低温油調(フライ)工程は自然発火を防ぐために品温を下げる目的と廃油に添加された可燃性硬化剤が高温油調(フライ)工程で揮発消滅する懸念があるため、低温油調(フライ)の工程で可燃性硬化剤を廃油に調合して含浸させる目的で設けた。
【実施例0024】
実施例1で行った、バークペレット1の電子レンジ2処理を焙煎により行った。図2にその工程を示す。まず、加熱焙煎機2aを事前予熱した(ステップT1)。バークペレット1に含まれる水分の蒸発を短時間に行うため、加熱焙煎機2aの加熱接触部の温度を240℃まで予熱して、ペレットを加熱焙煎機2aに投入しペレットの温度を180℃まで加熱し、水分を蒸発させると共に、ペレットに含まれる不燃性(揮発性)物資がガス化しはじめるまで乾燥・焙煎を行った(ステップT2~ステップT4)。
【0025】
ステップ(T1~T4)で乾燥・焙煎されたバークペレット1をアルミ製鍋3Aで加熱された廃油4に投入してガスコンロ5aを熱源で油調(フライ)処理した(ステップT5及びT6)。ここでは、廃油4の温度は240℃~280℃になるようにガスコンロ5aの火力を調整しながら5分・10分・15分フライしてザル6aに取り出し一旦油分分離した(ステップT7)。次にあらかじめ別のガスコンロ5bでアルミ製鍋3Bの中に可燃性硬化剤8を配合した廃油を温度100℃~110℃になるように準備しておき、その合成油液に原料の品温が160℃以下になるまで油調(フライ)して取り出し(ステップT8及びステップT9)、振動篩装置6cで廃油4とバークペレット1を固液分離し(ステップ10)、可燃性硬化剤添加廃油液の除去後冷却して本発明の成果品である爆炎ペレット7を得た(ステップ11)。
【0026】
ペレットから廃油が沁み出す状態を防止するため、可燃性硬化剤8を廃油に添加した合成油液で油調(フライ)した。廃油:可燃性硬化剤=9:1、8:2、7:3及び6:4の割合とした。これにより、可燃性硬化剤8の融点である65℃までは廃油の沁み出しを抑制することが可能であることが分かった。低温での油調(フライ)工程で可燃性硬化剤を廃油に添加したのは、高温での油調(フライ)で可燃性硬化剤が高温域で揮発ガス化して消滅し、硬化剤の効果が薄れることを防止するためである。
【0027】
フライ処理されたバークペレット1は、当初の焦げ褐色から真っ黒に変色していた。単位重量当たりの燃焼発熱量は処理前の4200Kカロリーから5780Kカロリーに上昇した。この値は粗石炭に匹敵する数値であり、代替石炭の可能性が見いだされた。
【0028】
処理前のバークペレット1の水分値は12.8%であり、処理後は1.2%に下がっていた。また、重量は当初100gが処理後は101gであり、蒸発した水分量及び揮発して消失した不燃性(揮発性)物質量と浸透した廃油量のほぼ完全な入れ替わりが確認された。
【0029】
フライ処理されたバークペレットは、可燃性硬化剤8と油の配合割合に関係なく、周囲温度が30℃を越えても表面から廃油が沁み出すことはなく、サラサラとした乾いた状態となりハンドリング性が格段に向上した。可燃性硬化剤を使用した廃油8の硬化剤効果が有効であった。
【0030】
撥水性・疎水性確認のための水中保形性は、数日間水に漬け込んでも形状の変化は見られず、目標としていた6時間を大幅に延長することができた。フライ時間は10分以上が顕著に良い結果が得られた。
【0031】
以上、撥水性・疎水性確認のための水中保形性は、数日間水に漬け込んでも、形状の変化は見られず、目標としていた保形時間6時間を大幅に延長できることが分かった。また、油温度240℃以上を保持したフライ時間は10分以上が顕著に良かった。
【0032】
[追加実験結果]
以上、各実験の結果、以下の事実が明らかになった。
(1)バークペレットを事前焙煎し、廃油と可燃性硬化剤8を混合した合成油液を使用して160℃~280℃の範囲で10分間以上油調(フライ)処理して製造された爆炎ペレットは、粗石炭に匹敵する燃焼熱量を持つこと。
(2)撥水性・疎水性に優れるため、屋外保管が可能で、トンバック(フレコンバック)に詰め込んで屋内保管するための巨大な倉庫が不要となること、さらに、現在の石炭の保管状況と同様に野積することが可能になること。
(3)可燃性硬化剤8を添加した合成油液を使用することで、成果品からの廃油の沁み出しを抑制できること。とくに、廃油:可燃性硬化剤=9:1以上の割合が好ましい。
(4)油調(フライ)後の製品温度が160℃以下になっていればその後の冷却工程で空気との接触による自然発火は見られず安全に製品を製造出来ることが確認できた。
【実施例0033】
紙コップでホワイトペレット1を卓上式計量器で100gを計量する。ここで、ホワイトペレット1を卓上式グラインダーで粉砕し、近赤外水分計で加工前の含水量を予め計測しておく。加熱焙煎機2bの鍋底の温度が240℃~280℃の範囲になるまで非接触型温度計を使用して計測しながら加熱する。
次いで、この加熱焙煎機2bにホワイトペレット1を投入し、攪拌しながら事前焙煎した(ステップU1~U2)。これにより、先ず原料の品温が95℃になるあたりからホワイトペレット1に含まれる水分が蒸発する。ここで、加熱焙煎機2bの温度は200℃位まで低下するが、温度域が230℃~280℃になるように加熱焙煎機2bの火力を調整した。5分程経過ころから原料温度が150℃を越え、揮発性ガスの発生が始まる。徐々に原料の色が褐色を帯び始め、14分経過し原料の温度が270℃を超えた時点でガスの発生が激しくなるので、そこで加熱焙煎機2bの加熱を止めて、乾燥・焙煎工程を終える(ステップU3~U4)。
次いで、別のアルミ製鍋3Cに廃油4を入れ、ガスコンロ5cで加熱し、測温抵抗体式温度計を使用して250℃~280℃の範囲で5分間油調(フライ)しザル6bに取り出し一旦油分を分離した。(U5~U7)
次いで、別のアルミ製鍋Dに可燃性硬化剤8を添加した廃油4を入れ、ガスコンロ5dで加熱し、測温抵抗体式温度計を使用して100℃~110℃の範囲に加熱した合成廃油に投入して低温油調(フライ)して品温を160℃以下にして振動篩機6dに投入し固液分離をした(U8~U10)。可燃性硬化剤添加廃油液の除去後冷却して本発明の成果品である爆炎ペレット7を得た(ステップU11)。ここで、可燃性硬化剤8としてパラフィンを使用した。
【0034】
ステップU2~U4で乾燥・焙煎されたホワイトペレット1を加熱された廃油4に投入して油調(フライ)処理した(ステップU5及びステップU6)。一旦、廃油4の温度は下がるが温度域が250℃~280℃になるようにガスコンロ5cの火力を調整しながら5分間油調(フライ)してザル6bに取り出し一旦油分分離し(ステップU7)、別のアルミ製鍋3Dに可燃性硬化剤8を添加した廃油4を入れ、ガスコンロ5dで加熱し、測温抵抗体式温度計を使用して100℃~110℃の範囲に加熱した合成廃油に投入して低温油調(フライ)して品温を160℃以下にした(ステップU8)。その後、低温油調(フライ)処理されたホワトペレット1を廃油ごと振動篩機6dに投入し、可燃性硬化剤添加廃油液とホワイトペレット1を分別して(ステップU9~U10)、冷却後、爆炎ペレット(製品)7を得た(ステップU11)。
【0035】
ここでは、ペレットから廃油が沁み出す状態を防止するため、可燃性硬化剤としてパラフィン8を廃油に添加した合成油液で低温油調(フライ)した。廃油:可燃性硬化剤=9:1の割合とした。これにより、パラフィンの融点である65℃までは廃油の沁み出しを抑制することが可能であることが分かった。
【0036】
フライ処理されたホワイトペレット1は、当初の薄茶色から真っ黒に変色していた。単位重量当たりの燃焼発熱量は処理前の4200Kカロリーから5910Kカロリーに上昇した。この値は粗石炭に匹敵する数値であり、代替石炭の可能性が見いだされた。
【0037】
処理前のホワイトペレット1の水分値は7.8%であり、処理後は1.8%に下がっていた。また、重量は当初100gが焙煎処理後に72g、油調処理後は103gであり、蒸発した水分量及び揮発して消失した揮発性物質量と浸透したパラフィンを添加した廃油量のほぼ完全な入れ替わりが確認された。
【0038】
フライ処理されたホワトペレット1は、周囲温度が30℃を越えても表面から廃油が沁み出すことはなく、サラサラとした乾いた状態となりハンドリング性が格段に向上した。可燃性硬化剤8としてパラフィンを使用した廃油の硬化剤効果が有効であった。
【0039】
撥水性・疎水性確認のための水中保形性は、数日間水に漬け込んでも形状の変化は見られず、目標としていた6時間を大幅に延長することができた。すなわち、原料温度が270℃に達するまで事前焙煎処理後に240℃~280℃に加熱された廃油での5分間以上の油調(フライ)処理に良い結果が得られた。またパラフィン添加の廃油で低温油調(フライ)後の製品温度が160℃以下になっていればその後の冷却工程で空気との接触による自然発火は見られず安全に製品を製造出来ること及び廃油に添加されたパラフィンの揮発ガス化による消失が抑制されることが確認できた。
【0040】
また、同条件で加熱焙煎処理のみを行ったホワイトペレットの撥水性・疎水性確認のための水中保形性試験では、数日間水に漬け込んでも形状の変化は見られずなかった。
【0041】
以上、撥水性・疎水性確認のための水中保形性は、数日間水に漬け込んでも、形状の変化は見られず、目標としていた充分な撥水性・疎水性を有することが分かった。尚、ホワイトペレット以外の原料として、間伐材のチップ原料、農家が屋外保管していた籾殻、青竹をチップ加工したものでも同様の効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
[実用化するための装置]
図4に示すように、通常、木質ペレットを加工する装置構成は、乾燥粉砕した木質原料をコンディショナー9を介してディスク回転圧縮押出式のディスクペレッタ10で加工する。加工後のペレットは、摩擦熱で70℃以上の高温になっている。この状態で製品バンカー12に保管すると、蒸発した水分が凝縮し、製品バンカー12内部にカビを発生させる悪影響を及ぼすため、カウンタークーラー11で冷却して製品バンカー12に搬送保管している。
【0043】
本発明では、上記の既存の装置構成中に連続式焙煎機若しくは連続式オーブン(過熱蒸気式を含む)、連続式フライヤーと振動式分離機を追加することで、より燃焼発熱量が高く、撥水性・疎水性を備えた爆炎ペレットを得ることができる。
ただし連続式過熱蒸気オーブンを使用する時は原料の水分率が高いと熱交換時にペレットが凝集水を吸収して形状が崩れることがあるため、事前に焙煎機を使用して水分率を下げて、なおかつペレットの品温を150℃以上にしておく必要がある。
また、既存の装置の装置構成中に連続式焙煎機若しくは連続式オーブン(過熱蒸気式を含む)、連続式フライヤーと振動式分離機を設置するスペースが確保できず、木質ペレットを製造し、一時的に製品バンカー12(貯留ホッパ)に保管した場合でも製品バンカー12(貯留ホッパ)下部からディスチャージとペレット搬送コンベアーを使用して排出・搬送して連続式焙煎機若しくは連続式オーブン(過熱蒸気式を含む)、連続式フライヤーに投入し、振動式分離機を追加することで燃焼発熱量が高く、撥水性・疎水性を備えた爆炎ペレットを得ることができる。
ただし連続式過熱蒸気オーブンを使用する時は原料の水分率が高いと熱交換時にペレットが凝集水を吸収して形状が崩れることがあるため、事前に焙煎機を使用して水分率を下げて、なおかつペレットの品温を150℃以上にしておく必要がある。
また、新規の爆炎ペレット加工用の装置・工場を構成することで燃焼発熱量が高く、撥水性・疎水性を備えた爆炎ペレットを得ることができる。
連続式フライヤーで少量の木質燃料を油調(フライ)処理する時には、加工処理する原料の量に合わせた大きさの鍋を準備してバッチ式で加工することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 バークペレット又はホワイトペレット(木質原料)
2 電子レンジ
2a加熱焙煎機
2b加熱焙煎機
3 アルミ製鍋
3Aアルミ製鍋
3Bアルミ製鍋
3Cアルミ製鍋
3Dアルミ製鍋
4 廃油
5 ガスコンロ
5aガスコンロ
5bガスコンロ
5cガスコンロ
5dガスコンロ
6 ザル
6aザル
6bザル
6c振動篩機
6d振動篩機
7 爆炎ペレット(製品)
8 可燃性硬化剤
9 コンディショナー
10ディスク回転圧縮押出式のディスクペレッタ
11カウンタークーラー
12製品バンカー
図1
図2
図3
図4