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特開2022-129336電磁誘導加熱調理器対応の加熱・保温材及びその製造方法
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  • 特開-電磁誘導加熱調理器対応の加熱・保温材及びその製造方法 図1
  • 特開-電磁誘導加熱調理器対応の加熱・保温材及びその製造方法 図2
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  • 特開-電磁誘導加熱調理器対応の加熱・保温材及びその製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129336
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】電磁誘導加熱調理器対応の加熱・保温材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/02 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
H05B6/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021070690
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】514166171
【氏名又は名称】株式会社マイテックス
(72)【発明者】
【氏名】岡野 照夫
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AB26
3K059AB27
3K059AD10
3K059CD52
3K059CD72
(57)【要約】      (修正有)
【課題】温度上昇を最適にすることができ、潜熱蓄熱材を安全に加熱保温でき、長時間の保温もできるようにした加熱・保温材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電磁誘導加熱調理器で加熱できる材料であって、断熱材にポリホウ酸ナトリウム難燃組成物または液体ガラスを含侵させ、更に磁性体金属を溶射した構造を有し、安全に加熱・保温することができるようにした。また、素材に開けられた貫通孔1bにより、最適で、かつ安全な温度を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導加熱による加熱・保温において、断熱材にポリホウ酸ナトリウム難燃組成物又は液体ガラスを含侵させ、更に磁性体金属を溶射した構造を有し、加熱・保温する事を特徴とする加熱・保温材及びその製造方法。
【請求項2】
電磁誘導加熱による加熱・保温において、ポリホウ酸ナトリウム難燃性組成物又は液体ガラスを含侵させ、更に、磁性体金属を溶射した断熱材に貫通孔を空け、貫通孔の開口率により、断熱効果を抑制させ、熱伝導により被加熱物質への温度上昇が急激にならないようにすることを特徴とする、加熱・保温材及びその製造方法。
【請求項3】
請求項1に対して、更に、潜熱蓄熱剤を載置させて、保温効果を維持させることを特徴とする加熱・保温材及びその製造方法。
【請求項4】
請求項1に対して、更に、潜熱蓄熱剤の容器または風袋の中に貫通穴を持った磁性体金属を溶射した断熱材を内蔵し、蓄熱蓄熱剤の容器または風袋の外側下に断熱材を置くことで、下方向へは熱伝導を抑制することを特徴とする加熱・保温材及びその製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱で加熱・保温するため、薄板状の断熱材に適度な熱伝導を行えるようにして、電磁誘導加熱調理器で最適な加熱・保温ができる様にした加熱、保温材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食器の加熱保温をする場合、予め食器全体を湯煎したり、恒温層に入れたりして食器を温めている。湯煎器や恒温層は、常に電源をオンの状態で管理する関係上、消費電力も多く、また、設置場所の確保が必要である。
【0003】
上述の場合、予め湯煎し食器を取り出し、水分を除去し、また、恒温層から加熱された熱い食器を取り出し,付いた水分を拭き取る作業が発生している。
【0004】
予め食器の底に水をはり、電子レンジにかけ加熱する方法はあるが、毎回、温水を流し捨て、その後水分を拭き取る作業が発生している。
【0005】
電磁誘導加熱調理器で、電磁誘導に対応する容器に食物や飲料水を置いて加熱することは、電磁誘導加熱調理器の普及に伴い、日常生活で普通に行われているが、被加熱物を電磁誘導加熱調理器に掛けると、電磁誘導加熱調理器の加熱効率の良さから、食材の急激な温度上昇により、対応容器への熱伝導も急激に行われるため、容器を加熱し過ぎてしまい、容器が熱くて素手では持てないという欠点があった。また火傷の危険性もあった。
【0006】
電磁誘導加熱調理器に対応して、容器自体が発熱できるようにした物もあるが、容器が急激に温度上昇するため、長時間掛けてしまうと、火傷の危険や、容器自体が急加熱で破損するという欠点があり、安全に使用することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、食器の底の必要な部分のみを、電磁誘導加熱調理器で短時間に、安全に加熱保温をする事を目的としている。電磁誘導加熱調理器は簡便性と安価という理由から、各家庭や業務施設に幅広く普及している。
【0008】
しかし、電磁誘導加熱調理器は、スタートした直後、電磁誘導の高周波が対応容器に直接渦電流を発生させ、容器及び食材が、急激に高温になるため、火傷の危険がある。
【0009】
電磁誘導加熱調理器は、調理器プレート面から離した状態になると、電磁誘導の影響を受けなくなり、また、取り出した後の食材温度は、逆に急激に冷めるため、摂食に適する60℃~65℃を維持する事が難しい。また、保温のため蓄熱材を使う方法もあるが、電磁誘導加熱調理器で急加熱すると、蓄熱材の劣化が進み、寿命が短くなるため、繰り返しの回数に制限がつき、経済的に使える製品ではなかった。
【問題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電磁誘導加熱調理器で加熱できる材料であって、断熱材にポリホウ酸ナトリウム難燃組成物、または液体ガラスを含侵させ、更に磁性体金属を溶射した構造を有し、安全に加熱・保温することができるようにしたものである。また、素材に開けられた、貫通孔により、最適で、かつ安全な温度を得ることができるようにしたものである。温度上昇を最適にすることができることにより、潜熱蓄熱材を安全に加熱保温することもできるため、長時間の保温ができるようにしたものである。
【0011】
本発明の断熱材は、200℃域ではパルプ・ガラスビーズ組成、パルプ・ガラスビー・シリカエアロジェル組成、及び1000℃域では生体溶解性ロックウール・セラミックビーズ組成の高耐熱断熱材であり、一方にはポリホウ酸ナトリウム難燃組成物、または液体ガラスを含侵させた素材に、磁性体金属を溶射するようにして構成された素材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め食器の必要部分のみに本発明の素材を設置することにより、短時間で、その設置部分のみの加熱保温ができるので、調理から配膳時、摂食に至る距離と時間を考慮して、本素材に施された貫通孔の総面積比率と熱伝導を考慮して、食器に担持させれば、摂食時の最適温度である60℃から65℃を保温維持できる。
【0013】
本発明の加熱保温材の基材は、200℃域ではパルプ・ガラスビーズ組成、パルプ・ガラスビー・シリカエアロジェル組成、及び1000℃域では生体溶解性ロッナトリウム難燃性適宜な硬度や曲げに強く、安定性、安全性、であり、更に、軽量で、大きさも自由に選択でき、電磁誘導加熱調理器により短時間で加熱ができる。
【0014】
本発明で使用される潜熱蓄熱剤は、ミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱剤や、エリスリトールやマンニトールを主成分とするもので、食品由来からの素材であり無害、難燃性で、更に、水の約10分の1の体積で保温効果を保てるので、コンパクト及び軽量な食器が実現可能である。
【0015】
上述の発明に、潜熱蓄熱剤を積層する事で、更に長時間保温温度維持が出来る。
【0016】
本発明の断熱材の一方には、200℃域ではパルプ・ガラスビーズ組成、パルプ・ガラスビー・シリカエアロジェル組成、及び1000℃域では生体溶解性ロックウール・セラミックビーズ組成に、ポリホウ酸難燃性組成物または、液体ガラスを含侵させ、その上に磁性体金属を溶射した高耐熱断熱材で、貫通孔を施し、開けた貫通孔の総面積の比により、断熱効果及び熱伝導効果を制御させ、電磁誘導加熱調理器の加熱により急激な温度上昇を抑制する事が可能となる。
【0017】
従来、電磁誘導加熱調理器による急激な温度上昇は、被加熱物質に割れや、組成変化の影響を及ぼし理想的な加熱・保温が出来ない。本発明では、熱伝導による温度制御が容易に可能になることで、被加熱物の急激な温度上昇を抑制できるという利点がある。
【0018】
本発明では、食器の底の部分に加熱保温用材を封じこめ、食器の底の高台内に担持させれば、加熱保温材部分のみが、加熱保温されるので、食器を素手で持つ部分は加熱されないため安全であり、容器の長時間保温ができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】全体構造図
図2】A1-A1断面図
図3】B1-B1断面図
図4】C1-C1断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の全体構造図である。1aは、パルプ・ガラスビー・シリカエアロジェル組成、またはパルプ・ガラスビーズ組成、または生体溶解性ロックウール・セラミックビーズ組成の素材に対し、ポリホウ酸ナトリウム難燃剤性組織物又は液体ガラスを、含侵させた素材に、磁性体金属を溶射した素材、(以下、超薄硬断熱材と称す)1bは、貫通孔、1cは磁性体金属溶射層、1dは、パルプ・ガラスビー・シリカエアロジェル組成、または、パルプ・ガラスビーズ組成、または、生体溶解性ロックウール・セラミックビーズ組成の素材(以下、超薄断熱材と称す)である。1aの超薄硬断熱材。1bの貫通孔、1cの磁性体金属溶射層、1dの超薄断熱材を重ね合わせた断熱材が高断熱効果を発揮し、下面の熱伝導を抑制し、安全に保持できる。電磁誘導加熱調理器より加熱されると、電磁誘導加熱調理器により発生した渦電流は、1cの磁性体金属を溶射した面は電磁誘導を受け、熱が発生する。発生した熱は容器や食材に伝わり加熱する。1b貫通穴があることで、上方向への熱の急激な伝わり方が抑えられる。1b貫通孔の大きさや数をあらかじめ調整した内容にすることで、急激な加熱しすぎを防ぎ、適度な温度を容器や食材に伝えることができる。1d超薄断熱材で覆われているため、傷が付き難く、また熱伝導が良くないため、保温効果があり、下側のプレートや机などを焦がさないように、更に食材の配膳時に人が手で触れることで起こる火傷を防止することができるように構成されている。貫通孔の数や大きさは、電磁誘導加熱調理器に加熱された熱伝導を制御できる。
【0021】
図2は、A1-A1の断面図を示している。図3は、B1-B1の断面図で、図2に加えて、1eの潜熱蓄熱材を追加したもので、1fは電磁誘導加熱調理器上面にあるプレート面を示している。電磁誘導加熱調理器で加熱された、1a超薄硬断熱材の磁性体金属溶射部を通して、貫通孔により急激な加熱がないように調整されて、1eの潜熱蓄熱材を加熱するように構成されている。これにより、1f電磁誘導加熱調理器プレート面から、渦電流により1aが急加熱された熱が、適度に調整された後、1e蓄熱材を加熱するため、容器や食材を適温に温め、長時間の保温ができるように構成されている。図4は、C1-C1の断面図を示しており、1cの磁性体金属溶射層の周囲を1aの超薄硬断熱材で被い、超薄硬断熱材には、部分的に1bの貫通孔が開けられており、更に周囲を1eの潜熱蓄熱材を風袋、または耐熱容器に閉じ込めたもので覆われ、全体は1gの風袋、または耐熱容器に内蔵するように構成されている。
電磁誘導加熱調理器プレート面1f通して、加熱された1c磁性体金属溶射層が加熱されて、1a超薄硬断熱材を通して、1e蓄熱材を適度に加熱するように構成されている。下側は、1d超薄断熱材が設置されているため、下側は熱が伝わらないため、保温性を保ち、上側に対しては、1e潜熱蓄熱材の熱を効率的に保つことができる。各図では説明の為、厚さがあるようになっているが、実際は、1mm以下の薄い構造の物も実現可能であるため、応用範囲が広いことは言うまでもない。
【産業上の利用の可能性】
【0022】
本発明によれば、電磁誘導加熱調理器の普及率は目覚ましくのびており、業務用、家庭用ともに安全である理由から一般化されている。また、生活様式が様変わりし、テイクアウトが主流になり、家庭内の食生活も電磁誘導加熱調理器で温める事が多くなることにより、容器や陶器器等の食器の底部に本発明の素材を内蔵させ、或いは陶磁器の底の高台内に、本発明の素材を内蔵し、電磁誘導加熱調理器に掛ければ、素材のあたる必要部分のみが、短時間で加熱保温されることにより、安全に取扱いが出来る。予め加熱保温された食器に調理後の食材を載せ、配膳すれば、摂食時の快適温度の60℃~65℃前後を保つ事が容易に出来る。
【0023】
本発明によれば、外食産業、ホテル、レストラン、フードコート、ドライブイン、旅館、航空機、船舶等、加熱保温が重要な要素となる施設の維持温度と時間には、当該加熱保温素材の上に、潜熱蓄熱剤を積層すれば、加熱保温後の温度維持は長時間に及び、調理後の配膳までに時間を要する場合、又は、ルームサービス等の、配膳に距離や時間を費やす場合には、長時間温度維持が出来る。
【0024】
本発明で使用する潜熱蓄熱剤は、ミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱剤や、エリスリトールやマンニトールを主成分とするもので、食品由来からの素材であり、無害、難燃性で安全であるため、広い分野で使用することができる。
【0025】
本発明の加熱の対象は、食器や食材のみでなく、薄型の湯たんぽなど、広範囲に応用することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1a・・・パルプ・ガラスビー・シリカエアロジェル組成、または
パルプ・ガラスビーズ組成、または
生体溶解性ロックウール・セラミックビーズ組成の素材に対し、ポリホウ酸 ナトリウム難燃剤性組織物、または液体ガラスを含侵させた 素材
1b・・・貫通孔
1c・・・磁性体金属溶射層
1d・・・パルプ・ガラスビー・シリカエアロジェル組成、または
パルプ・ガラスビーズ組成、または生体溶解性ロックウール・セラミックビ ーズ組成の断熱素材
1e・・・潜熱蓄熱材(風袋または耐熱容器に内蔵)
1f・・・電磁誘導調理器プレート面
1g・・・風袋または耐熱容器
図1
図2
図3
図4