(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129337
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】アナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
G10K11/178 100
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073447
(22)【出願日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】110106483
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】506255902
【氏名又は名称】中原大學
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】張政元
(72)【発明者】
【氏名】郭森楙
(72)【発明者】
【氏名】徐威
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061FF02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法を提供する。
【解決手段】方法は、騒音収集システムを利用して第1適応的フィルタ・第2適応的フィルタのシステム同定を完了させる。そして、システム同定ツールボックスを利用して第2適応的フィルタを低次数の制御フィルタに変換し、次いでシステム同定ツールボックスを再利用して低次数の制御フィルタをアナログフィルタに変換し、アナログフィルタの実アナログフィルタ回路10と、第1フロントエンドアンプ11と、参照マイクロホンM1と、音声混合器12とでフィードフォワード型能動騒音制御システム1を構築する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実環境騒音を録音するステップ(1)と、
第1騒音収集システムを構築し、かつ前記第1騒音収集システムを利用して前記実環境騒音から取得した第1アナログ参照信号に基づいて、第1デジタル参照信号及びデジタル目標信号を出力するステップ(2)と、
第1適応的フィルタを含む第1自己適応システム同定ユニットを構築し、かつ前記第1自己適応システム同定ユニットを利用して前記第1騒音収集システムから伝送された前記第1デジタル参照信号及び前記デジタル目標信号に基づいて、前記第1適応的フィルタのシステム同定を完了させるステップ(3)と、
第2騒音収集システムを構築し、かつ前記第2騒音収集システムを利用して前記実環境騒音から取得した前記第1アナログ参照信号に基づいて、前記第1デジタル参照信号及び前記デジタル目標信号を出力するステップ(4)と、
第2適応的フィルタと前記第1適応的フィルタとを含む第2自己適応システム同定ユニットを構築し、かつ前記第2自己適応システム同定ユニットを利用して前記第2騒音収集システムから伝送された前記第1デジタル参照信号及び前記デジタル目標信号に基づいて、前記第2適応的フィルタのシステム同定を完了させるステップ(5)と、
システム同定ツールボックスを利用してかかるシステム同定を完了した前記第2適応的フィルタを、低次数のフィルタであるアナログフィルタに変換するステップ(6)と、
前記アナログフィルタの実アナログフィルタ回路と、前記実アナログフィルタ回路に接続される第1フロントエンドアンプと、前記第1フロントエンドアンプに接続される第1マイクロホンと、前記実アナログフィルタ回路と音声信号とに接続される音声混合器と、前記音声混合器に接続される音声再生器とを備えるフィードフォワード型能動騒音制御システムを構築するステップ(7)と、を含むことを特徴とする、
フィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【請求項2】
前記第2騒音収集システムは、前記実環境騒音を騒音信号の形式で放送するための騒音源と、音声再生装置の非放音側に設置され、前記騒音信号を収集するための第1音声収集装置と、前記第1音声収集装置に接続され、前記騒音信号に対してフロントエンド増幅処理を実行するための第1フロントエンド増幅ユニットと、第2音声収集装置と、前記第2音声収集装置に接続される第2フロントエンド増幅ユニットと、前記第1アナログ参照信号を受信し、かつ前記第1アナログ参照信号を前記第1デジタル参照信号に変換する第1アナログデジタル変換回路と、前記第2フロントエンド増幅ユニットに接続される第2アナログデジタル変換回路とを有し、前記音声再生装置の放音側は、消音しようとする区域に面し、前記消音しようとする区域内に設置される前記第2音声収集装置は、前記音声再生装置の前記放音側と特定距離で互いに離間され、第1音声信号を収集するために用いられ、前記第2フロントエンド増幅ユニットは、前記第1音声信号に対してフロントエンド増幅処理を実行するために用いられ、前記第2アナログデジタル変換回路は、フロントエンド増幅処理を経た前記第1音声信号を前記デジタル目標信号に変換するために用いられることを特徴とする、請求項1に記載のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【請求項3】
同様に前記第2フロントエンド増幅ユニットと、前記第1アナログデジタル変換回路と、前記第2アナログデジタル変換回路とを有する前記第1騒音収集システムは、前記第1アナログ参照信号を受信し、かつ同時に前記音声再生装置に接続されるアナログフィルタユニットをさらに有することを特徴とする、請求項2に記載のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【請求項4】
前記第1自己適応システム同定ユニットは、前記第1デジタル参照信号を受信する前記第1適応的フィルタと、前記第1適応的フィルタに接続され、及び前記第1デジタル参照信号を受信する第1適応的演算器と、前記第1適応的演算器と前記第1適応的フィルタとに接続され、かつ前記デジタル目標信号を受信する第1デジタル減算器とを有し、前記第1適応的フィルタは、前記第1デジタル参照信号に基づいて第1デジタル出力信号を生成し、次いで前記第1デジタル減算器は、前記第1デジタル出力信号と前記デジタル目標信号とに対して減算演算処理を実行して第1デジタル誤差信号を獲得し、前記第1適応的演算器は、前記第1デジタル参照信号と前記第1デジタル誤差信号とに基づいて、前記第1デジタル誤差信号を零に近づけるように、前記第1適応的フィルタの少なくとも1つのフィルタパラメータを自己適応的に調整することを特徴とする、請求項3に記載のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【請求項5】
前記第2自己適応システム同定ユニットは、前記第1デジタル参照信号に接続され、かつ前記第1デジタル参照信号に応じて前記第1デジタル出力信号を生成する前記第2適応的フィルタと、前記第2適応的フィルタに接続され、前記第1デジタル出力信号に応じて第2デジタル出力信号を生成するための1個目の前記第1適応的フィルタと、前記デジタル目標信号と前記第2デジタル出力信号とに接続される第2デジタル減算器と、前記第1デジタル参照信号に接続され、かつ第2デジタル参照信号を生成する2個目の前記第1適応的フィルタと、前記第2適応的フィルタ、2個目の前記第1適応的フィルタ及び前記第2デジタル減算器に接続される第2適応的演算器とを有し、前記第2デジタル減算器は、前記第2デジタル出力信号と前記デジタル目標信号とに対して減算演算処理を実行して第2デジタル誤差信号を獲得することにより、前記第2適応的演算器に前記第2デジタル誤差信号を受信させ、前記第2適応的演算器は、前記第2デジタル参照信号と前記第2デジタル誤差信号とに基づいて、前記第2デジタル誤差信号を零に近づけるように、前記第2適応的フィルタの少なくとも1つのフィルタパラメータを自己適応的に調整することを特徴とする、請求項4に記載のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【請求項6】
前記システム同定ツールボックスは、C言語で記述された数学計算用ソフトウエアの中に含まれていることを特徴とする、請求項5に記載のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【請求項7】
前記実アナログフィルタ回路は、互いにカスケード接続された複数個の低次フィルタを含むことを特徴とする、請求項5に記載のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【請求項8】
前記第1適応的フィルタと前記第2適応的フィルタとは、有限インパルス応答フィルタであり、前記アナログフィルタは、無限インパルス応答フィルタであることを特徴とする、請求項5に記載のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【請求項9】
前記第1自己適応システム同定ユニットは、以下に示す数学演算式(I)、(II)、及び(III)
【数1】
【数2】
【数3】
を用いて前記第1適応的フィルタのシステム同定を完了することを特徴とする、請求項5に記載のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【請求項10】
前記第2自己適応システム同定ユニットは、以下に示す数学演算式(IV)、(V)、(VI)、及び(VII)
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
を使用して前記第2適応的フィルタのシステム同定を完了することを特徴とする、請求項9に記載のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音減衰の技術分野に係り、特に、アナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展・進歩と相まって、大量の工業生産、便利な交通輸送、及びハイテクの電子製品を享受できるが、その反面、人々が生活している様々な環境中に騒音汚染が広がりつつある。
音声の強度は、デシベル(dB)またはA特性に補正したデシベル(dBA)という単位で表されることが知られている。例を挙げて言えば、普通の会話、冷蔵庫運転音及び空調運転音の音声強度が約60dBAであり、また洗濯機運転音、食器洗い機運転音と都市交通の音声強度が約70~85dBAである。一方、自動車ホーンと鉄道列車の音声強度が約100dBAであり、また警笛と航空機離陸の音声強度が約120~130dBAである。通常、都市環境の中には、上記の騒音が溢れており、更に農村の環境中にも、無視できない多くの騒音が発生している。例えば、音声強度が約110dBAのリーフブロワの運転音、音声強度が約81~102dBAの穀物乾燥機の運転音や音声強度が約90~105dBAの肥料散布機の運転音といった騒音がある。
【0003】
前述した説明から分かるように、環境騒音を如何にして有効に低減させるかが非常に重要な議題となる。従来技術の騒音を低減させるための制御方法としては、(1)受動騒音制御、及び(2)能動騒音制御が含まれる。現在、デジタル信号処理器(DSP)の演算速度の飛躍的な向上、及び適応的信号処理演算法の成熟した発展によって、能動騒音制御(ANC)技術において広範な応用が得られるように促している。例えば、Hyundai社は、ANC技術を自動車エンジンの騒音を低減させるために運用し、Noctua社は、ANC技術を放熱ファンの騒音を低減させるために運用し、かつApple社は、ANC技術をブルートゥース(登録商標)イヤホンAirPodsPro(登録商標)の中に運用している。
【0004】
図1は、従来技術の能動騒音制御システムを示す構成図である。
図1に示すように、従来の能動騒音制御システム1’は、通常、参照マイクロホン1RM’と、2つのプリアンプユニット13’と、2つのアンチエイリアスフィルタ14’と、デジタル信号処理チップ1DP’と、再構成フィルタ11’と、パワー増幅ユニット12’と、スピーカー1LS’と、誤差マイクロホン1EM’とを備える。
その内、前記デジタル信号処理チップ1DP’内に自己適応フィルタ及びかかる自己適応フィルタを更新するための適応的演算器が設けられる。このように設置すれば、前記参照マイクロホン1RM’は、騒音信号を収集した後、前記デジタル信号処理チップ1DP’は、前記参照マイクロホン1RM’から伝送された参照信号を受信するに従って、前記参照信号に基づいて出力信号を生成することにより、前記スピーカー1LS’から、前記出力信号に基づいて消音しようとする区域に向けて反騒音信号を再生させる。補助説明すべきことは、前記誤差マイクロホン1EM’は、前記消音しようとする区域内の残り騒音信号を収集するために用いられ、かつ前記デジタル信号処理チップ1DP’は、前記誤差マイクロホン1EM’から伝送された誤差信号を受信する点である。次に、前記適応的演算器は、前記誤差信号と前記出力信号とに基づいて最小二乗平均演算を実行し、その後、演算結果に基づいて前記自己適応フィルタを更新することで、前記スピーカー1LS’からの前記消音しようとする区域に向けて再生させる前記反騒音信号により、前記騒音信号をより有効に消音できるようになる。
【0005】
図1に示す能動騒音制御システム1’は、参照マイクロホン1RM’を利用して騒音信号を予め受信するので、それが広帯域騒音に対して良好な騒音軽減能力を現出させる。しかし残念ながら、この能動騒音制御システム1’の実際の応用においては、電子遅延と音響遅延との間の因果関係を満足させるには、これら両者を同時に考慮しなければならない。さらに、参照マイクロホン1RM’に対して反騒音信号により生じる音響帰還、及び参照マイクロホン1RM’と誤差マイクロホン1EM’との間の可干渉性を考慮することも必要である。
【0006】
より詳細に説明すると、一次経路は、前記参照マイクロホン1RM’から始まり、かつ前記誤差マイクロホン1EM’で終端する。一方、二次経路は、前記デジタル信号処理チップ1DP’のデジタルアナログ変換器(DAC)から始まり、次いで再構成フィルタ11’、パワー増幅ユニット12’、スピーカー1LS’、誤差マイクロホン1EM’、プリアンプユニット13’、アンチエイリアスフィルタ14’及び前記デジタル信号処理チップ1DP’のアナログデジタル変換器(ADC)を順次経由する。しかしながら、一次経路の音響遅延と二次経路の電子遅延を考慮した場合、必ず前記デジタル信号処理チップ1DP’に一次経路のフィルタ伝達関数(すなわち、P(z))、二次経路のフィルタ伝達関数(すなわち、S(z))、及び推定フィルタ伝達関数
を増設する必要がある。
しかしながら、実務の経験によれば、デジタル信号処理チップ1DP’に過多なフィルタを設置することで、処理チップの演算量が膨大になりすぎると同時に、更新後の自己適応フィルタのオーダーが高くなりすぎる結果を招くこととなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、デジタル信号処理チップ1DP’は、その内部設計が複雑になりすぎるため、従来の能動騒音制御システム1’を遮音用イヤホンなどの電子製品に応用されるときに現れる費用対効果が理想的ではない。しかしながら、前述のフィルタに用いるオーダーが高すぎるため、もし類似のフィルタをアナログ回路で実現する場合、前記アナログ回路も非常に膨大になり、かつ配線が複雑になる。
【0008】
そこで、前述した理由に鑑み、本願の発明者は、極力研究発明した結果、遂に本発明に係るアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法を研究開発して完成させた。
【0009】
本発明の主な目的は、アナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法を提供することである。その方法としては、少なくとも1つの騒音収集システムを利用して実環境騒音に基づいて参照信号と目標信号とを生じ、次いで第1自己適応システム同定ユニットを使用してかかる参照信号とかかる目標信号とに基づいて第1適応的フィルタのシステム同定を完了させ、なお、次に第2自己適応システム同定ユニットを使用してかかる参照信号、かかる目標信号及びかかる第1適応的フィルタに基づいて第2適応的フィルタのシステム同定を完了させる。最終的に、システム同定ツールボックスを利用して前記第2適応的フィルタを低次数の制御フィルタに変換し、次いで前記システム同定ツールボックスを再利用して前記低次数の制御フィルタをアナログフィルタに変換する。最終的に、前述したアナログフィルタの実アナログフィルタ回路と、フロントエンドアンプと、参照マイクロホンと、音声混合器とでフィードフォワード型能動騒音制御システムが構成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明が提供するかかるアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法の一実施例は、実環境騒音を録音するステップ(1)と、第1騒音収集システムを構築し、かつ前記第1騒音収集システムを利用して前記実環境騒音から取得した第1アナログ参照信号に基づいて、第1デジタル参照信号及びデジタル目標信号を出力するステップ(2)と、第1適応的フィルタを含む第1自己適応システム同定ユニットを構築し、かつ前記第1自己適応システム同定ユニットを利用して前記第1騒音収集システムから伝送された前記第1デジタル参照信号及び前記デジタル目標信号に基づいて、かかる第1適応的フィルタのシステム同定を完了させるステップ(3)と、第2騒音収集システムを構築し、かつ前記第2騒音収集システムを利用してかかる実環境騒音から取得した前記第1アナログ参照信号に基づいて、かかる第1デジタル参照信号及びかかるデジタル目標信号を出力するステップ(4)と、第2適応的フィルタとかかる第1適応的フィルタとを含む第2自己適応システム同定ユニットを構築し、かつ前記第2自己適応システム同定ユニットを利用して前記第1騒音収集システムから伝送されたかかる第1デジタル参照信号とかかるデジタル目標信号とに基づいて、かかる第2適応的フィルタのシステム同定を完了させるステップ(5)と、システム同定ツールボックスを利用してかかるシステム同定を完了した前記第2適応的フィルタを、低次数のフィルタであるアナログフィルタに変換するステップ(6)と、かかるアナログフィルタの実アナログフィルタ回路と、前記実アナログフィルタ回路に接続される第1フロントエンドアンプと、前記第1フロントエンドアンプに接続される第1マイクロホンと、前記実アナログフィルタ回路と音声信号とに接続される音声混合器と、前記音声混合器に接続される音声再生器とを備えるフィードフォワード型能動騒音制御システムを構築するステップ(7)とを含む。
【0011】
前述した本発明のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法の実施例において、前記第2騒音収集システムは、かかる実環境騒音を騒音信号の形式で放送するための騒音源と、音声再生装置の非放音側に設置され、かかる騒音信号を収集するための第1音声収集装置と、前記第1音声収集装置に接続され、前記騒音信号に対してフロントエンド増幅処理を実行するための第1フロントエンド増幅ユニットと、第2音声収集装置と、前記第2音声収集装置に接続される第2フロントエンド増幅ユニットと、かかる第1アナログ参照信号を受信し、かつ前記第1アナログ参照信号をかかる第1デジタル参照信号に変換する第1アナログデジタル変換回路と、前記第2フロントエンド増幅ユニットに接続される第2アナログデジタル変換回路とを有し、その内、前記音声再生装置の放音側は、消音しようとする区域に面し、前記消音しようとする区域内に設置される第2音声収集装置は、前記音声再生装置の前記放音側と特定距離で互いに離間され、第1音声信号を収集するために用いられ、第2フロントエンド増幅ユニットは、前記第1音声信号に対してフロントエンド増幅処理を実行するために用いられ、第2アナログデジタル変換回路は、フロントエンド増幅処理を経たかかる第1音声信号をかかるデジタル目標信号に変換するために用いられる。
【0012】
前述した本発明のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法の実施例において、前記第1騒音収集システムは、同様にかかる第2フロントエンド増幅ユニットと、かかる第1アナログデジタル変換回路と、かかる第2アナログデジタル変換回路とを有し、かつかかる第1アナログ参照信号を受信し、かつ同時に前記音声再生装置に接続されるアナログフィルタユニットをさらに有する。
【0013】
前述した本発明のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法の実施例において、前記第1自己適応システム同定ユニットは、かかる第1デジタル参照信号を受信するかかる第1適応的フィルタと、かかる第1適応的フィルタに接続され、及びかかる第1デジタル参照信号を受信する第1適応的演算器と、前記第1適応的演算器と前記第1適応的フィルタとに接続され、かつかかるデジタル目標信号を受信する第1デジタル減算器とを有し、その内、前記第1適応的フィルタは、前記第1デジタル参照信号に基づいて第1デジタル出力信号を生成し、次いで前記第1デジタル減算器は、前記第1デジタル出力信号とかかるデジタル目標信号とに対して減算演算処理を実行して第1デジタル誤差信号を獲得し、その内、前記第1適応的演算器は、前記第1デジタル参照信号と前記第1デジタル誤差信号とに基づいて、前記第1デジタル誤差信号を零に近づけるように、前記第1適応的フィルタの少なくとも1つのフィルタパラメータを自己適応的に調整する。
【0014】
前述した本発明のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法の実施例において、前記第2自己適応システム同定ユニットは、かかる第1デジタル参照信号に接続され、かつかかる第1デジタル参照信号に応じてかかる第1デジタル出力信号を生成するかかる第2適応的フィルタと、前記第2適応的フィルタに接続され、かかる第1デジタル出力信号に応じて第2デジタル出力信号を生成するための1個目のかかる第1適応的フィルタと、かかるデジタル目標信号及びかかる第2デジタル出力信号に接続される第2デジタル減算器と、かかる第1デジタル参照信号に接続され、かつ第2デジタル参照信号を生成する2個目のかかる第1適応的フィルタと、かかる第2適応的フィルタ、2個目のかかる第1適応的フィルタ及び前記第2デジタル減算器に接続される第2適応的演算器とを有し、その内、前記第2デジタル減算器は、前記第2デジタル出力信号とかかるデジタル目標信号とに対して減算演算処理を実行して第2デジタル誤差信号を獲得することにより、前記第2適応的演算器にかかる第2デジタル誤差信号を受信させ、その内、前記第2適応的演算器は、前記第2デジタル参照信号と前記第2デジタル誤差信号とに基づいて、前記第2デジタル誤差信号を零に近づけるように、前記第2適応的フィルタの少なくとも1つのフィルタパラメータを自己適応的に調整する。
【0015】
前述した本発明のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法の実施例において、前記システム同定ツールボックスは、数学計算用ソフトウエアの中に含まれており、かつ前記数学計算用ソフトウエアは、C言語で記述されたものであってもよい。
【0016】
前述した本発明のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法の実施例において、前記実アナログフィルタ回路は、互いにカスケード接続された複数個の低次フィルタを含む。
【0017】
前述した本発明のフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法の実施例において、前記第1適応的フィルタと第2適応的フィルタとは、いずれも有限インパルス応答フィルタであり、また前記アナログフィルタは、無限インパルス応答フィルタである。
【発明の効果】
【0018】
特に、実アナログフィルタ回路を使用する場合、本発明の設計方法を利用して作成されたフィードフォワード型能動騒音制御システムは、デジタル信号処理チップ、アナログデジタル変換器及びデジタルアナログ変換器のいずれも備える必要がない。考えれば分かる通り、従来技術のフィードフォワード型能動騒音制御システムに比べて、本発明のアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムが、優れた騒音軽減能力を持つほか、より重要なことに、その製造コストが非常に低廉である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来技術の能動騒音制御システムを示す構成図である。
【
図2】本発明に係るフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法を運用して構築したアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムを示すブロック構成図である。
【
図3A】本発明に係るアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法を示すフローチャートである。
【
図3B】本発明に係るアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法を示すフローチャートである。
【
図4】第1騒音収集システムを示すブロック構成図である。
【
図5】第2騒音収集システムを示すブロック構成図である。
【
図6】アナログフィルタを生成するためのシステム同定システムを示す構成図である。
【
図7】3個の2次フィルタを含むアナログフィルタを示すブロック構成図である。
【
図8】かかるKHNフィルタの回路トポロジーを示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明が提出したアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法をより明瞭に記述するために、添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を以下に詳述する。
【0021】
本発明が提出したアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法は、特に2組の騒音収集システムを利用して実環境騒音に応じて参照信号と目標信号とを生成し、次いで第1自己適応システム同定ユニットを使用してかかる参照信号とかかる目標信号とに基づいて第1適応的フィルタのシステム同定を完了させ、なお、次に第2自己適応システム同定ユニットを使用してかかる参照信号、かかる目標信号及びかかる第1適応的フィルタに基づいて第2適応的フィルタのシステム同定を完了させる。
最終的に、システム同定ツールボックスを利用して前記第2適応的フィルタを低次数の制御フィルタに変換し、次いで前記システム同定ツールボックスを再利用して前記低次数の制御フィルタをアナログフィルタに変換する。最終的に、前述したアナログフィルタの実アナログフィルタ回路と、フロントエンドアンプと、参照マイクロホンと、音声混合器とでフィードフォワード型能動騒音制御システムが構成される。
【0022】
図2は、本発明に係るフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法を運用して構築したアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムを示すブロック構成図である。
図2に示すように、本発明のアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システム1(以下「フィードフォワード型能動騒音制御システム1」と略称)は、基本的に実アナログフィルタ回路10と、前記実アナログフィルタ回路10に接続される第1フロントエンドアンプ11と、前記第1フロントエンドアンプ11に接続される第1マイクロホンM1(すなわち、参照マイクロホン)と、前記実アナログフィルタ回路10と音声信号とに接続される音声混合器12と、前記音声混合器12に接続される音声再生器LSとを備える。注意を要するのは、
図2には、第2マイクロホンM2(すなわち、誤差マイクロホン)と、前記第2マイクロホンM2に接続される第2フロントエンドアンプ13とが示されている点である。特に強調されるべき点は、本発明のアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システム1を
図2に示すようなヘッドバンド付きイヤホン4に応用する場合、前述の第2マイクロホンM2及び第2フロントエンドアンプ13の使用が不要となる点である。
【0023】
図3Aと
図3Bは、本発明に係るアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法を示すフローチャートである。
図3Aと
図3Bに示すように、本発明の設計方法は、まずステップS1を実行する。ステップS1では、実環境騒音を録音する。それから、次の方法手順は、ステップS2を実行する。ステップS2では、第1騒音収集システムを構築し、かつ前記第1騒音収集システムを利用して前記実環境騒音から取得した第1アナログ参照信号x(t)に基づいて、第1デジタル参照信号x(n)及びデジタル目標信号d(n)を出力する。
第1騒音収集システムを示すブロック構成図である
図4を参照する。
図4に示すように、前記第1騒音収集システムNC2は、第1音声収集装置AC1と、第2音声収集装置AC2と、第2フロントエンド増幅ユニットPA2と、第1アナログデジタル変換回路AD1と、第2アナログデジタル変換回路AD2とを有する。
【0024】
補助説明すべきことは、第1騒音収集システムNC2は、二次経路の電子遅延を示すための伝達関数S(z)を計算推定するために用いられる。
図4に示すように、前記アナログフィルタユニットAF1は、かかる第1アナログ参照信号x(t)を受信し、かつ同時に前記音声再生装置ABに接続される。
一方、前記第2フロントエンド増幅ユニットPA2は、前記第2音声収集装置AC2に接続され、第1アナログ誤差信号e
1(t)に対してフロントエンド増幅処理を実行するために用いられ、かつ第2アナログデジタル変換回路AD2は、前記第2フロントエンド増幅ユニットPA2に接続され、フロントエンド増幅処理を経たかかる第1アナログ誤差信号e
1(t)をかかるデジタル目標信号d(n)に変換するために用いられる。前記第1アナログデジタル変換回路AD1は、前記実環境騒音から取得した第1アナログ参照信号x(t)に接続され、かかる第1デジタル参照信号x(n)を出力する。
【0025】
ステップS2を完了した後、次の方法手順に従ってステップS3を実行する。ステップS3では、
を含む第1自己適応システム同定ユニットAI1を構築し、かつ前記第1自己適応システム同定ユニットAI1を利用して前記第1騒音収集システムNC2から伝送された前記第1デジタル参照信号x(n)及び前記デジタル目標信号d(n)に基づいて、かかる
のシステム同定を完了させる。
図4に示すように、前記第1自己適応システム同定ユニットAI1は、かかる
と、第1適応的演算器ALc1と、第1デジタル減算器A1とを有する。
図4から分かるように、前記
は、かかる第1デジタル参照信号x(n)を受信する。なおかつ、前記第1適応的演算器ALc1は、かかる
に接続され、及びかかる第1デジタル参照信号x(n)を受信し、かつ前記第1デジタル減算器A1は、同時に前記第1適応的演算器ALc1と前記
とに接続され、かつかかるデジタル目標信号d(n)を受信する。
【0026】
かかるステップS4を実行するときには、前記
は、前記第1デジタル参照信号x(n)に基づいて第1デジタル出力信号y(n)を生成し、次いで前記第1デジタル減算器A1は、前記第1デジタル出力信号y(n)とかかるデジタル目標信号d(n)とに対して減算演算処理を実行して第1デジタル誤差信号e
1(n)を獲得する。さらに、前記第1適応的演算器ALc1は、前記第1デジタル参照信号x(n)と前記第1デジタル誤差信号e
1(n)とに基づいて、前記第1デジタル誤差信号e
1(n)を零に近づけるように、前記
の少なくとも1つのフィルタパラメータを自己適応的に調整する。
【0027】
ANCシステムを熟知する電子エンジニアであれば、前記第1適応的演算器ALc1は演算法関数式であり、かつかかる演算法関数式は、最小二乗平均演算法、NLMSまたはフィルタx最小二乗平均演算法であってもよいことが分かるはずである。なおかつ、前記
は、有限インパルス応答フィルタまたは無限インパルス応答フィルタである。例を挙げて言えば、LMS演算法関数式を第1適応的演算器ALc1とすれば、前記第1自己適応システム同定ユニットAI1は、以下に示す数学演算式(1)、(2)と(3)を使用してかかる
のシステム同定を完了する。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
上記式(1)、(2)と(3)において、y(n)は第1デジタル出力信号を表し、d(n)はかかるデジタル目標信号を表し、x(n)はかかる第1デジタル参照信号を表し、e
1(n)はかかる第1デジタル誤差信号を表し、
μはステップサイズ(Step size)であり、かつlはフィルタ長である。理解され得るように、前記第1適応的演算器ALc1には、
に関するフィルタパラメータを自己適応的に調整するに従って、前記かかる第1デジタル誤差信号e
1(n)を零に近づけるようにした後、
のシステム同定を完了し、二次経路S(z)の電子遅延の推定伝達関数(またはフィルタ伝達関数と称される)を獲得する。
【0032】
ステップS3を完了した後、次の方法手順に従ってステップS4を実行する。ステップS4では、第2騒音収集システムNC1を構築し、かつ前記第2騒音収集システムNC1を利用してかかる実環境騒音から取得した前記第1アナログ参照信号x(t)に基づいて、かかる第1デジタル参照信号x(n)及びかかるデジタル目標信号d(n)を出力する。第2騒音収集システムを示すブロック構成図である
図5を参照する。
図5に示すように、前記第2騒音収集システムNC1は、騒音源2と、第1音声収集装置AC1と、第1フロントエンド増幅ユニットPA1と、第2音声収集装置AC2と、第2フロントエンド増幅ユニットPA2とを有する。
【0033】
より詳細に説明すると、前記騒音源2は、前述の実環境騒音を騒音信号の形式で放送するために用いられる。前記第1音声収集装置AC1は、
図2に示すような第1マイクロホンM1として見なすことができる。前記第2騒音収集システムNC1の中に、第1音声収集装置AC1は、音声再生装置ABの非放音側に設置され、かかる騒音信号を収集するために用いられる。なおかつ、前記音声再生装置ABの放音側は、消音しようとする区域(すなわち、人形3の右耳)に面する。
一方、前記第1フロントエンド増幅ユニットPA1は、前記第1音声収集装置AC1に接続され、前記騒音信号に対してフロントエンド増幅処理を実行するために用いられ、かつ第1アナログデジタル変換回路AD1は、前記第1フロントエンド増幅ユニットPA1から出力される第1アナログ参照信号x(t)を受信し、前記第1アナログ参照信号x(t)をかかる第1デジタル参照信号x(n)に変換するために用いられる。
【0034】
そのうえ、前記第2音声収集装置AC2は、かかる消音しようとする区域内に設置され、かつ前記音声再生装置ABの前記放音側と特定距離で互いに離間され、第1音声信号を収集するために用いられる。
図4には、前記第2フロントエンド増幅ユニットPA2は、前記第2音声収集装置AC2に接続され、前記第1音声信号(すなわち、第1アナログ誤差信号e
1(t))に対してフロントエンド増幅処理を実行するために用いられ、かつ第2アナログデジタル変換回路AD2は、前記第2フロントエンド増幅ユニットPA2に接続され、フロントエンド増幅処理を経たかかる第1アナログ誤差信号e
1(t)をかかるデジタル目標信号d(n)に変換するために用いられることが示されている。
【0035】
ステップS4を完了した後、次の方法手順に従ってステップS5を実行する。ステップS5では、第2適応的フィルタW(z)とかかる
とを含む第2自己適応システム同定ユニットAI2を構築し、かつ前記第2自己適応システム同定ユニットAI2を利用して前記第2騒音収集システムNC1から伝送された前記第1デジタル参照信号x(n)及び前記デジタル目標信号d(n)に基づいて、かかる第2適応的フィルタW(z)のシステム同定を完了させる。
図5に示すように、かかる第2自己適応システム同定ユニットAI2は、かかる第2適応的フィルタW(z)と、2個のかかる
と、第2デジタル減算器A2と、第2適応的演算器ALc2とを有する。
【0036】
前記第2適応的フィルタW(z)は、かかる第1デジタル参照信号x(n)に接続され、かつかかる第1デジタル参照信号x(n)に応じてかかる第1デジタル出力信号y(n)を生成する。なおかつ、1個目のかかる
は、前記第2適応的フィルタW(z)に接続され、かかる第1デジタル出力信号y(n)に応じてかかる第2デジタル出力信号y’(n)を生成するために用いられる。前記第2デジタル減算器A2は、かかるデジタル目標信号d(n)及びかかる第2デジタル出力信号y’(n)に接続され、かつ2個目のかかる
は、かかる第1デジタル参照信号x(n)に接続されることから、第2デジタル参照信号x’(n)を生成する。一方、前記第2適応的演算器ALc2は、かかる第2適応的フィルタW(z)、2個目のかかる
及び前記第2デジタル減算器A2に接続される。かかるステップS5を実行するときには、前記第2デジタル減算器A2は、前記第2デジタル出力信号y’(n)とかかるデジタル目標信号d(n)とに対して減算演算処理を実行して第2デジタル誤差信号e
2(n)を獲得することにより、前記第2適応的演算器ALc2にかかる第2デジタル誤差信号e
2(n)を受信させる。さらに、前記第2適応的演算器ALc2は、前記第2デジタル参照信号x’(n)と前記第2デジタル誤差信号e
2(n)とに基づいて、前記第2デジタル誤差信号e
2(n)を零に近づけるように、前記第2適応的フィルタW(z)の少なくとも1つのフィルタパラメータを自己適応的に調整する。
【0037】
ANCシステムを熟知する電子エンジニアであれば、前記第2適応的演算器ALc2は演算法関数式であり、かつかかる演算法関数式は、最小二乗平均演算法、NLMSまたはフィルタx最小二乗平均演算法であってもよいことが分かるはずである。なおかつ、前記第2適応的フィルタW(z)は、有限インパルス応答フィルタまたは無限インパルス応答フィルタである。例を挙げて言えば、LMS演算法関数式を第2適応的演算器ALc2とすれば、前記第2自己適応システム同定ユニットAI2は、以下に示す数学演算式(4)、(5)、(6)と(7)を使用してかかる第2適応的フィルタW(z)のシステム同定を完了する。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
上記式(4)、(5)、(6)と(7)において、y(n)はかかる第1デジタル出力信号を表し、y’(n)はかかる第2デジタル出力信号を表し、d(n)はかかるデジタル目標信号を表し、x(n)はかかる第1デジタル参照信号を表し、x’(n)はかかる第2デジタル参照信号を表し、e
2(n)はかかる第2デジタル誤差信号を表し、
はいずれも重み係数ベクトルを表し、μはステップサイズ(Step size)であり、かつlとmはいずれもフィルタ長である。理解され得るように、前記第2適応的演算器ALc2には、前記第2適応的フィルタW(z)に関するフィルタパラメータを自己適応的に調整するに従って、かかる第2デジタル誤差信号e
2(n)を零に近づけるようにした後、第2適応的フィルタW(z)のシステム同定を完了する。
【0043】
ステップS5を完了した後、次の方法ステップに従ってステップS6を実行する。ステップS6では、システム同定ツールボックスを利用してかかるシステム同定を完了した前記第2適応的フィルタW(z)をアナログフィルタW(s)に変換し、その内、前記アナログフィルタW(s)は低次数のフィルタである。実施可能な実施例において、かかる前記システム同定ツールボックスは、数学計算用ソフトウエアの中に含まれており、かつ前記数学計算用ソフトウエアは、模範となるC言語で記述されたものである。
図6は、アナログフィルタW(s)を生成するためのシステム同定システムを示す構成図である。
図6に示すように、数学計算用ソフトウエアを利用して騒音源2と、第2適応的フィルタW(z)と、システム同定演算ユニットSIUとを含むシステム同定システムをC言語で構築することができる。このため、ステップS6を実行するときには、前記騒音源2から白色雑音を生成させたのち、この白色雑音を前記第2適応的フィルタW(z)(すなわち、FIRフィルタ)に入力し、次いでFIRフィルタに入力される複数のデジタル参照信号x(n)及び前記FIRフィルタから対応して出力される複数のデジタル出力信号y(n)を一緒にかかるシステム同定演算ユニットSIUに入力する。最終的に、前記システム同定演算ユニットSIUが前記複数のデジタル参照信号x(n)及び前記複数のデジタル出力信号y(n)に基づいてシステム同定演算を完了した後、前記システム同定演算ユニットSIUはアナログフィルタW(s)を生成する。
【0044】
ステップS6を完了した後、最終の方法ステップに従ってステップS7を実行する。ステップS7では、フィードフォワード型能動騒音制御システム1を構築する。
図2に示すように、ステップS7で構築完成したフィードフォワード型能動騒音制御システム1は、かかるアナログフィルタW(s)の実アナログフィルタ回路10と、前記実アナログフィルタ回路10に接続される第1フロントエンドアンプ11と、前記第1フロントエンドアンプ11に接続される第1マイクロホンM1と、前記実アナログフィルタ回路10と音声信号とに接続される音声混合器12と、前記音声混合器12に接続される音声再生器LSとを備える。
【0045】
説明に値するのは、アナログフィルタW(s)は1個の6次の高次フィルタであるため、それを実体的な回路で実現することが比較的に難しい点である。これに鑑み、本発明は、数学計算用ソフトウエアを再度利用してかかるアナログフィルタW(s)を互いにカスケード接続された3個の2次フィルタに変換する。
図7は、3個の2次フィルタを含むアナログフィルタW(s)を示すブロック構成図である。
【0046】
さらに、KHNフィルタを利用して前述したアナログフィルタW(s)の実体的な回路を実現することができる。
図8は、かかるKHNフィルタの回路トポロジーを示す構造図である。
図8に示すように、かかるKHNフィルタは、非反転バッファ101と、第1積分器102と、第2積分器103と、加算器104とを含む。その内、レジスタR3は、入力信号Vinと前記非反転バッファ101との間に接続され、レジスタR1は、前記非反転バッファ101と前記第1積分器102との間に接続され、レジスタR2は、前記第1積分器102と前記第2積分器103との間に接続される。なおかつ、レジスタR4は、前記非反転バッファ101の第1信号入力端と前記第1積分器102の信号出力端との間に接続され、かつレジスタR5は、前記非反転バッファ101の第2信号入力端と前記第2積分器103の信号出力端との間に接続される。
【0047】
以上、本発明で開示するアナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システムの設計方法を完全かつ明瞭に説明した。強調すべき点は、上記の詳細な説明は、本発明の実施可能な実施例を具体的に説明したものであり、本発明の権利範囲はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的精神を逸脱しない限り、その等効果の実施又は変更は、なお、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものとする点である。
【符号の説明】
【0048】
1’ 能動騒音制御システム
1DP’ デジタル信号処理チップ
1EM’ 誤差マイクロホン
1LS’ スピーカー
1RM’ 参照マイクロホン
11’ 再構成フィルタ
12’ パワー増幅ユニット
13’ プリアンプユニット
14’ アンチエイリアスフィルタ
1 アナログフィルタを備えたフィードフォワード型能動騒音制御システム(フィードフォワード型能動騒音制御システム)
2 騒音源
3 人形
4 ヘッドバンド付きイヤホン
10 実アナログフィルタ回路
11 第1フロントエンドアンプ
12 音声混合器
13 第2フロントエンドアンプ
101 非反転バッファ
102 第1積分器
103 第2積分器
104 加算器
A1 第1デジタル減算器
A2 第2デジタル減算器
AB 音声再生装置
AC1 第1音声収集装置
AC2 第2音声収集装置
AD1 第1アナログデジタル変換回路
AD2 第2アナログデジタル変換回路
AF1,W(s) アナログフィルタ
AI1 第1自己適応システム同定ユニット
AI2 第2自己適応システム同定ユニット
ALc1 第1適応的演算器
ALc2 第2適応的演算器
LS 音声再生器
M1 第1マイクロホン
M2 第2マイクロホン
NC1 第2騒音収集システム
NC2 第1騒音収集システム
PA1 第1フロントエンド増幅ユニット
PA2 第2フロントエンド増幅ユニット
R1,R2,R3,R4,R5 レジスタ
S1~S7 ステップ
SIU システム同定演算ユニット
d(n) デジタル目標信号
e
1(n) 第1デジタル誤差信号
e
1(t) 第1アナログ誤差信号
e
2(n) 第2デジタル誤差信号
P(z) 一次経路のフィルタ伝達関数
S(z) 二次経路のフィルタ伝達関数
W(z) 第2適応的フィルタ
w
l(n) 重み係数ベクトル
x(n) 第1デジタル参照信号
x(t) 第1アナログ参照信号
x’(n) 第2デジタル参照信号
y(n) 第1デジタル出力信号
y’(n) 第2デジタル出力信号