(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129341
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20220829BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220829BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220829BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20220829BHJP
C08K 7/22 20060101ALI20220829BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220829BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20220829BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B60N2/58
B32B27/18 Z
B32B27/30 101
C08L27/06
C08K7/22
C08K3/34
F16L59/02
B62J1/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088451
(22)【出願日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】110106496
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】顏 世勳
【テーマコード(参考)】
3B087
3H036
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
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3H036AC03
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4J002DJ007
4J002FA097
4J002FD206
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】本発明は、自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造を提供する。
【解決手段】表面断熱構造は、ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成されたホスト層を備え、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルと金属錯体とを含有し、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、金属錯体の含有量は、3~20重量%である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニルと金属錯体とを含有するポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成されたホスト層を備え、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、前記金属錯体の含有量は、3~20重量%である、ことを特徴とする自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項2】
前記金属錯体の中心原子は、マンガン、鉄、コバルト、またはバナジウムである、請求項1に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項3】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、多孔質材料をさらに含み、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、前記多孔質材料の含有量は、1~10重量%である、請求項1に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項4】
前記多孔質材料は、エアロゲル、中空発泡粒子、珪藻石、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項5】
前記ホスト層の一つの表面に設置された白色反射層をさらに含み、前記白色反射層は、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、硫化亜鉛、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、リトポン、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、鉄酸バリウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項6】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物及び第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物を含み、
前記ホスト層は、
ポリ塩化ビニルと前記金属錯体とを含有する前記第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成されたゴム層、及び
前記ゴム層に設置されており、ポリ塩化ビニルと多孔質材料とを含有する前記第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成された冷却層、を含む、
請求項1に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項7】
前記多孔質材料は、エアロゲル、中空発泡粒子、珪藻石、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項8】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物及び第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物を含み、
前記ホスト層は、
ポリ塩化ビニルと前記金属錯体とを含有する前記第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成されたゴム層、及び
前記ゴム層に設置されており、ポリ塩化ビニルと熱伝導材料とを含有する前記第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成された冷却層、を含む、
請求項1に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項9】
前記熱伝導材料は、グラファイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項10】
前記ゴム層と前記冷却層との間に設置された白色反射層をさらに含み、前記白色反射層は、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、硫化亜鉛、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、リトポン、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、鉄酸バリウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【請求項11】
前記冷却層の厚さは、前記ゴム層の厚さの0.5~2倍である、請求項6~9のいずれか一項に記載の自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面断熱構造に関し、特に、自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車・オートバイのシートの表面に用いる人工皮革は、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)及びカーボンブラックを主成分にして製造されたものである。ポリ塩化ビニルは、可塑剤の添加により柔軟且つ弾性を有し、広い分野に用いられる。カーボンブラックは、周知の黒色顔料であり、人工皮革を暗色や黒色にすることが可能である。ただし、それを長時間日光にさらすと、カーボンブラックは、人工皮革の表面温度が高いままとなるように、熱エネルギーを吸収する。
【0003】
特に夏のときに、自動車・オートバイのシートが直接に日光に晒すと、人工皮革の表面は、75~80℃といった高い温度に達することが多いので、使用者の不調若しくはやけどを起こしやすい。故に、従来の人工皮革を日光にさらすことによる温度上昇で起こした問題について、未だ改良する余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造を提供することである。自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造は、ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成されたホスト層を備え、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルと金属錯体とを含有し、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、金属錯体の含有量は、3~20重量%である。
【0006】
本発明の一つの実施形態において、金属錯体の中心原子は、マンガン、鉄、コバルト、バナジウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0007】
本発明の一つの実施形態において、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、多孔質材料をさらに含み、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、多孔質材料の含有量は、1~10重量%である。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、多孔質材料は、エアロゲル(aerogel)、中空発泡粒子、珪藻石、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造は、ホスト層の一つの表面に設置された白色反射層をさらに含み、白色反射層は、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、硫化亜鉛、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、リトポン、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、鉄酸バリウム、又はそれらの組み合わせを含む。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物及び第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物を含み、ホスト層は、ゴム層及び冷却層を含む。ゴム層は、ポリ塩化ビニルと金属錯体とを含有する第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成される。冷却層は、ゴム層に設置されており、ポリ塩化ビニルと多孔質材料とを含有する第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成される。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、多孔質材料は、エアロゲル、中空発泡粒子、珪藻石、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物及び第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物を含み、ホスト層は、ゴム層及び冷却層を含む。ゴム層は、ポリ塩化ビニルと金属錯体とを含有する第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成される。冷却層は、ゴム層に設置されており、ポリ塩化ビニルと熱伝導材料とを含有する第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成される。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、前記熱伝導材料は、グラファイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造は、ゴム層と冷却層との間に設置された白色反射層をさらに含み、白色反射層は、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、硫化亜鉛、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、リトポン、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、鉄酸バリウム、又はそれらの組み合わせを含む。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、冷却層の厚さは、ゴム層の厚さの0.5~2倍である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有利な効果として、本発明に係る自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造は、「前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルと金属錯体とを含有する」こと、及び「前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、前記金属錯体の含有量は、3~20重量%である」といった技術特徴により、表面断熱構造の断熱効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の第一実施形態に係る表面断熱構造の側面模式図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る表面断熱構造の側面模式図である。
【
図4】本発明の第三実施形態に係る表面断熱構造の側面模式図である。
【
図5】本発明の第四実施形態に係る表面断熱構造の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0019】
以下、所定の具体的な実施態様によって「本発明に係る自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0020】
図1に示すように、本発明は、自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造を提供する。表面断熱構造は、一部の赤外線及び可視光を反射することができるので、日差しの下であっても、表面断熱構造の表面温度は、55℃を超えることはない。具体的に、本発明に係る表面断熱構造の全光線反射率(TSR%)は、40%以下であり、且つ、表面断熱構造の赤外線カット率(IR-cut%)は20%以上である。
【0021】
[第一実施形態]
図2に示すように、本発明の第一実施形態に係る表面断熱構造Zは、ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成されたホスト層1を備える。ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルと金属錯体(metal complex)とを含有する。
【0022】
本実施形態において、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂組成物であり、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、ポリ塩化ビニルの含有量は、60~90重量%である。金属錯体の中心原子は、マンガン、鉄、コバルト、バナジウム、またはそれらの組み合わせであり、例えば、品番F6331(米国Ferro社)、SG-103(日本ISK社)、SG-101(日本ISK社)、42-707A(日本TOMATEC社)及び42-714A(日本TOMATEC社)の金属錯体が挙げられる。
【0023】
それ以外に、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、他の樹脂成分をさらに含んでもよく、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、塩化ビニル樹脂、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
本発明における金属錯体は、暗い顔料及び反射型充填材の両方の役割を果たす。具体的に、マンガン、鉄、コバルト、またはバナジウムを含む金属錯体を添加することにより、ホスト層1を暗色や黒色にすることができ、このように、表面断熱構造Zを、市販の自動車・オートバイのシートの表面に用いる人工皮革と類似する外観にすることができる。また、金属錯体は、赤外線を反射することで、日光曝露後のホスト層1が高温(75~80℃)までに上昇することを回避することができる。
【0025】
本発明の一つの実施形態において、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、金属錯体の含有量は、3~20重量%であり、それによって、表面断熱構造Zは、良好な赤外線反射効果を有すると共に、表面断熱構造Zの製造コストを効果的に制御することができる。金属錯体の含有量は20重量%を超えると、赤外線の反射効果を向上させることができるが、反射効果が境界値に近いためコスト的に不利である。
【0026】
ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、多孔質材料をさらに含んでもよく、多孔質材料の内部にガスが含まれ、一般的には、ガスの熱伝導率は固体の熱伝導率より低いので、多孔質材料の添加により、熱伝導を遮る効果を果たせる。例えば、多孔質材料は、エアロゲル(aerogel)、中空発泡粒子、及び珪藻石からなる群から選択されることができるが、これに制限されるものではない。多孔質材料を添加した後に、ホスト層1の密度は、0.5~1.2g/cm3である。
【0027】
本発明の一つの実施形態において、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、多孔質材料の含有量は、1~10重量%であり、それによって、表面断熱構造Zは、良好な断熱効果を発揮することができる。多孔質材料の含有量は10重量%を超えると、表面断熱構造Zの伸び性及び構造強度に悪影響を与える。
【0028】
それ以外に、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、熱伝導性材料をさらに含んでもよく、熱伝導性材料の添加により、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の熱伝導性を向上させ、エネルギーの伝送効果を果たせる。例えば、熱伝導材料は、グラファイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
本発明の一つの実施形態において、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、熱伝導性材料の含有量は、1~60重量%であり、それによって、表面断熱構造Zは、良好な断熱効果を発揮することができる。熱伝導性材料の含有量は60重量%を超えると、表面断熱構造Zの伸び性及び構造強度に悪影響を与える。
【0030】
本発明の一つの実施形態において、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、発泡材料であってもよく、即ち、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、物理発泡剤または化学発泡剤を含むことにより、ホスト層1を発泡層にしてもよい。また、発泡剤(物理発泡剤及び/または化学発泡剤)は、多孔質材料と共にポリ塩化ビニル樹脂組成物に含まれてもよい。
【0031】
第一実施形態において、表面断熱構造Zの全光線反射率(TSR%)は、40%以下であり、且つ、表面断熱構造Zの赤外線カット率(IR-cut%)は20%以上である。
【0032】
[第二実施形態]
図3に示すように、本発明の第二実施形態は、表面断熱構造Zを提供し、また、本実施形態に係る表面断熱構造Zは、第一実施形態に係る表面断熱構造Zと類似しているが、両者の相違点について、第二実施形態の表面断熱構造Zはホスト層1の一つの表面に設置された白色反射層2をさらに含むことにある。
【0033】
使用するときに、白色反射層2は、ホスト層1の被照面の反対側に設置する。それによって、一部の光線が金属錯体に吸収された後に、他の部分の光線は、ホスト層1を透過した後に、白色反射層2で反射されることにより、蓄熱を回避することができる。
【0034】
ホスト層1は、ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成される。第二実施形態におけるポリ塩化ビニル樹脂組成物は、第一実施形態におけるポリ塩化ビニル樹脂組成物と類似し、即ち、ポリ塩化ビニルと金属錯体とを含有し、前記多孔質材料及び/または前記熱伝導性材料をさらに含んでもよいので、ここでその説明を省略する。
【0035】
白色反射層2は、反射塗料をホスト層1に塗布することで形成される。反射塗料は、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、硫化亜鉛、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、リトポン、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、鉄酸バリウム、又はそれらの組み合わせを含む。
【0036】
ホスト層1は、暗色の外観を有することから、可視光の反射効果が制限される。よって、第二実施形態において、ホスト層1の被照面の反対側に白色反射層2に設置することにより、熱エネルギーの反射効果をさらに向上させることができる。
【0037】
注目すべきことは、表面断熱構造Zが白色反射層2をさらに含むと、表面断熱構造Zの赤外線カット率は大幅に向上する。第二実施形態において、表面断熱構造Zの全光線反射率(TSR%)は、40%以下であり、且つ、表面断熱構造Zの赤外線カット率(IR-cut%)は20%以上である。
【0038】
[第三実施形態]
図4に示すように、本発明の第三実施形態は、ホスト層1を備える表面断熱構造Zを提供し、ホスト層1は、積層したゴム層11及び冷却層12を含む。本実施形態において、ゴム層11の厚さは、0.3~1μmであり、冷却層12の厚さは、0.3~1.5μmである。好ましくは、冷却層12の厚さは、ゴム層11の厚さの0.3~5倍であり、さらに好ましくは、冷却層12の厚さは、ゴム層11の厚さの0.5~2倍である。
【0039】
ゴム層11は、ポリ塩化ビニルと金属錯体とを含有する第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成され、第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、ポリ塩化ビニルの含有量は、60~90重量%であり、金属錯体の含有量は、3~20重量%であり、また、金属錯体としては、前述と同様である。よって、ゴム層11は、暗色や黒色であると共に、一部の赤外線を吸収することができる。
【0040】
一つの好ましい実施形態において、ゴム層11を形成した第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物は発泡材料であり、ゴム層11は、発泡ゴム層であってもよい。
【0041】
他の実施形態において、第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、前記多孔質材料及び/または熱伝導性材料をさらに含むことにより、ゴム層11にも断熱効果を付与することができる。具体的に、第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、多孔質材料の含有量は、1~10重量%であり、熱伝導性材料の含有量は、1~60重量%であり、ゴム層11の密度は、0.5~1.2g/cm3である。
【0042】
冷却層12は、ポリ塩化ビニルと多孔質材料及び/または熱伝導性材料とを含有する第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成される。第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、ポリ塩化ビニルの含有量は、60~90重量%であり、多孔質材料の含有量は、1~10重量%であり、熱伝導性材料の含有量は、1~60重量%であり、多孔質材料及び熱伝導性材料としては、前述と同様であるので、ここでその説明を省略する。
【0043】
多孔質材料の添加で冷却層12においてより多くのガスを含むことで、冷却層12の熱伝導率を低減させることにより、冷却層12に断熱効果を付与することができる。また、冷却層12におけるガスは、熱対流を促進させ、熱エネルギーを速やかに外部へ伝送することにより、冷却の効果を果たせる。熱伝導性材料の添加により、冷却層12に良好な熱伝導性効果を付与することができる。
【0044】
冷却層12を形成した第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、発泡材料であってもよく、冷却層12は発泡冷却層であることによって、冷却層12におけるガス含有量を増加させることができる。具体的に、冷却層12の密度は、0.4~0.8g/cm3であると共に、冷却層12の密度は、ゴム層11の密度より小さい。
【0045】
冷却層12をゴム層11に設置する方法として、以下の方法が挙げられるが、これらに制限されるものではない。例えば、第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物及び第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物を共射出すること、冷却層12またはゴム層11のいずれかを先に形成して、塗布で冷却層12やゴム層11のもう一つの層を形成すること、先に冷却層12及びゴム層11をそれぞれに形成して、ホットプレスで冷却層12をゴム層11に積層すること、若しくは、先に冷却層12及びゴム層11をそれぞれに形成して、冷却層12とゴム層11との間に接着層を設置することが挙げられる。
【0046】
第三実施形態において、表面断熱構造Zの全光線反射率(TSR%)は、40%以下であり、且つ、表面断熱構造Zの赤外線カット率(IR-cut%)は20%以上である。
【0047】
[第四実施形態]
図5に示すように、本発明の第四実施形態は、表面断熱構造Zを提供し、また、本実施形態に係る表面断熱構造Zは、第三実施形態に係る表面断熱構造Zと類似しているが、両者の相違点について、第四実施形態の表面断熱構造Zはゴム層11と冷却層12との間に設置された白色反射層2をさらに含むことにある。
【0048】
ゴム層11は、第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成され、第四実施形態における第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、第三実施形態における第一ポリ塩化ビニル樹脂組成物と類似している。よって、ゴム層11は一部の赤外線を吸収することができると共に、暗色や黒色である。
【0049】
冷却層12は、第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成され、第四実施形態における第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、第三実施形態における第二ポリ塩化ビニル樹脂組成物と類似している。よって、冷却層12は、断熱効果を果たせる。
【0050】
第四実施形態において、表面断熱構造Zは、3つの断熱構造を有し、ゴム層11における金属錯体は一部の赤外線を吸収することができ、ゴム層11及び/または冷却層12における多孔質材料及び/または熱伝導性材料は、熱伝導を遮ることができ、白色反射層2は、可視光及び赤外線を反射することができる。このように、長時間の日差しの下であっても、表面断熱構造Zの表面温度は、相対的に低い温度(55℃未満)を維持することができる。
【0051】
注目すべきことは、表面断熱構造Zは黒色ゴム層11及び白色反射層2を備えると、その赤外線カット率は大幅に向上する。第四実施形態において、表面断熱構造Zの全光線反射率(TSR%)は、40%以下であり、且つ、表面断熱構造Zの赤外線カット率(IR-cut%)は20%以上である。
【0052】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造Zは、「前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルと金属錯体とを含有する」こと、及び「前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物の総重量を100重量%として、前記金属錯体の含有量は、3~20重量%である」といった技術特徴により、表面断熱構造Zの断熱効果を向上させることができる。
【0053】
更に言うと、本発明に係る自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造Zは、「ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、多孔質材料を含む」といった技術特徴により、表面断熱構造Zの断熱効果を向上させることができる。
【0054】
更に言うと、本発明に係る自動車・オートバイのシートに用いる表面断熱構造Zは、「表面断熱構造Zは、白色反射層2を含む」といった技術特徴により、表面断熱構造Zの赤外線反射効果を向上させることができる。
【0055】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
Z ・・・表面断熱構造
1 ・・・ホスト層
2 ・・・白色反射層
11 ・・・ゴム層
12 ・・・冷却層