(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129345
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】防食塗料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20220829BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20220829BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20220829BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220829BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220829BHJP
【FI】
C09D163/00
C23C26/00 A
C09D5/08
C09D7/65
C09D7/63
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115934
(22)【出願日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】110106471
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】廖 徳超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】顏 世勳
【テーマコード(参考)】
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4J038CK022
4J038CN002
4J038DB001
4J038DH002
4J038DJ012
4J038DL032
4J038JB04
4J038JB06
4J038KA07
4J038KA12
4J038NA24
4J038PB06
4J038PC02
4J038PC08
4K044AA02
4K044BB01
4K044BC02
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】
本発明は、環境保護防食塗料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
防食塗料は、80~90重量部のエポキシ樹脂と、3~7重量部の少なくとも1つの導電性高分子と、55~65重量部の硬化剤と、少なくとも1つの機能性添加剤とを含有し、少なくとも1つの導電性高分子は、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びポリパラフェニレンから選択される。応用するときに、本発明の環境保護防食塗料は加工性に優れ、構造物に防食層を形成することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に防食層を形成するための防食塗料であって、
80~90重量部のエポキシ樹脂と、
3~7重量部の少なくとも1つの導電性高分子と、
55~65重量部の硬化剤と、
少なくとも1つの機能性添加剤とを含有し、
前記少なくとも1つの導電性高分子は、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びポリパラフェニレンから選択される、ことを特徴とする防食塗料。
【請求項2】
前記少なくとも1つの導電性高分子は、ポリアニリンである、請求項1に記載の防食塗料。
【請求項3】
前記少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の消泡剤をさらに含む、請求項1に記載の防食塗料。
【請求項4】
前記少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の垂れ防止剤をさらに含む、請求項3に記載の防食塗料。
【請求項5】
前記少なくとも1つの機能性添加剤は、0.5~1.5重量部の沈降防止剤をさらに含む、請求項4に記載の防食塗料。
【請求項6】
前記少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の紫外線吸収剤をさらに含む、請求項5に記載の防食塗料。
【請求項7】
80~90重量部のエポキシ樹脂と、3~7重量部の少なくとも1つの導電性高分子と、少なくとも1つの機能性添加剤とを含有する樹脂組成物を調製することと、
前記樹脂組成物を研磨・分散することと、
研磨・分散した前記樹脂組成物に硬化剤を添加することとを含み、
前記少なくとも1つの導電性高分子は、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びポリパラフェニレンから選択される、ことを特徴とする防食塗料の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、三本ロール式研磨分散機で研磨・分散を行う、請求項7に記載の防食塗料の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの導電性高分子は、ポリアニリンである、請求項7に記載の防食塗料の製造方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の消泡剤をさらに含む、請求項7に記載の防食塗料の製造方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の垂れ防止剤をさらに含む、請求項10に記載の防食塗料の製造方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの機能性添加剤は、0.5~1.5重量部の沈降防止剤をさらに含む、請求項11に記載の防食塗料の製造方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の紫外線吸収剤をさらに含む、請求項12に記載の防食塗料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食塗料に関し、特に、環境保護防食塗料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
統計によると、全世界において腐食による損失は、毎年数千億ドルに至る。台湾は、亜熱帯に位置し、高温多湿、高塩分な島型気候に属され、また、工業と車両の急速な成長により、ほとんどの沿岸地域は、ひどく腐食を表すC5レベル(ISO分類基準に基づく)までに腐食し、一部の地域はC5レベルさえ超える。このような腐食環境では、金属構造物(例えば、鋼構造物)に防食処理を施すことにより、金属構造物の耐用年数を延長させて、労働安全事故の発生を回避または低減し、社会的費用の低減、経済的利益の改善を達成する。
【0003】
防食塗料による塗装は、現在最も便利な処理方法の1つであり、金属構造物の表面に防食塗料を塗布することにより、酸素・水分・塩分と金属構造物との接触による腐食を防止することができる。しかしながら、従来の防食方法は、金属塗装や有機塗装を採用することが多く、金属塗装の原理は、陽極として、酸素に対する活性が強く且つ酸化腐食されやすい犠牲金属を使用することにより、ベース基材を保護する、犠牲陽極方式であるが、その欠点は、犠牲金属自体は消耗しやすく、再び塗装することが難しい点である。一方、有機塗装は、物理的なバリアと防錆剤の添加によって防食機能を実現するが、その欠点は、揮発性有機化合物の散逸が問題となること、また、防錆剤は重金属であることが多いので、環境を汚染しやすく、人体にも害を及ぼすことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、環境及び人体に無毒で安全である、環境保護防食塗料及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、構造物に防食層を形成するための環境保護防食塗料を提供することである。前記環境保護防食塗料は、80~90重量部のエポキシ樹脂と、3~7重量部の少なくとも1つの導電性高分子と、55~65重量部の硬化剤と、少なくとも1つの機能性添加剤とを含有し、少なくとも1つの導電性高分子は、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びポリパラフェニレンから選択される。
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、環境保護防食塗料の製造方法を提供することである。前記環境保護防食塗料の製造方法は、80~90重量部のエポキシ樹脂と、3~7重量部の少なくとも1つの導電性高分子と、少なくとも1つの機能性添加剤とを含有する樹脂組成物を調製することと、前記樹脂組成物を研磨・分散することと、研磨・分散した前記樹脂組成物に硬化剤を添加することとを含み、少なくとも1つの導電性高分子は、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びポリパラフェニレンから選択される。
【0007】
本発明の一つの実施形態において、前記少なくとも1つの導電性高分子は、ポリアニリンである。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、前記少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の消泡剤をさらに含む。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、前記少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の垂れ防止剤をさらに含む。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記少なくとも1つの機能性添加剤は、0.5~1.5重量部の沈降防止剤をさらに含む。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の紫外線吸収剤をさらに含む。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、前記樹脂組成物は、三本ロール式研磨分散機で研磨・分散を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有利な効果として、本発明に係る、80~90重量部のエポキシ樹脂と、3~7重量部の少なくとも1つの導電性高分子と、55~65重量部の硬化剤と、少なくとも1つの機能性添加剤とを含有する環境保護防食塗料は、重金属、揮発性有機物(VOC)などの有害物質を添加せずに、金属材料に良好な防食効果を提供することができるので、人体の健康に害することはなく、環境にも優しい。また、本発明に係る製造方法は、その環境保護防食塗料の加工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る環境保護防食塗料の一つの実施形態の模式図である。
【
図2】本発明に係る環境保護防食塗料のもう一つの実施形態の模式図である。
【
図3】本発明に係る環境保護防食塗料の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0016】
以下、所定の具体的な実施態様によって「本発明に係る環境保護防食塗料及びその製造方法」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本発明は、構造物1に1層又は複数層の防食層2を形成するための環境保護防食塗料を提供し、それによって、構造物1に優れた防食性、耐塩水性及び高温多湿耐性を付与する。構造物1は、
図1に示すように、金属構造物(例えば、鋼構造物)であってもよく、或いは、
図2に示すように、金属プラスチック複合構造物(例えば、電子装置の筐体)であってもよく、前記金属プラスチック複合構造物は、プラスチック部品11及びプラスチック部品11に設置された金属部品12を含んでもよい。応用するときに、本発明に係る環境保護防食塗料は、例えば、スプレー塗装、刷毛塗りなどの適切な塗布方式で、構造物1の金属表面にコーティングし、乾燥・硬化を行うことにより、防食層2を形成することができ、防食層2の厚さは、200~400μmであってもよい。
【0018】
更に言うと、本発明に係る環境保護防食塗料は、エポキシ樹脂系を採用し、80~90重量部のエポキシ樹脂と、3~7重量部の少なくとも1つの導電性高分子と、55~65重量部の硬化剤と、少なくとも1つの機能性添加剤とを主に含有する。注目すべきことは、導電性高分子の存在において、防食層2は、構造物1の内部における電子の外部への移動を阻止することにより、腐食を防止するか、腐食速度を下げる効果を奏することができる。応用するときに、少なくとも1つの導電性高分子は、ポリアセチレン(polyacetylene, PA)、ポリピロール(polypyrrole, PPy)、ポリアニリン(polyaniline, PANI)、ポリチオフェン(polythiophene, PT)、及びポリパラフェニレン(poly(p-phenylene), PPP)から選択されてもよく、好ましくはポリアニリンである。
【0019】
環境保護防食塗料のエポキシ樹脂として、分子構造内にエポキシ基を2つ以上有するポリマーまたはオリゴマーを使用してもよく、防食性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、150~220であってもよく、好ましくは180~190である。一つの実施形態において、環境保護防食塗料のエポキシ樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、二量体酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、及びエポキシ化油エポキシ樹脂のうちの少なくとも1種又は複数種を使用してもよく、構造物1への密着性の観点から、好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂であり、最も好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0020】
環境保護防食塗料の硬化剤として、アミン系硬化剤を使用してもよく、好ましくは脂肪族、脂環族、芳香族、及び複素環のアミン系硬化剤である。アミン系硬化剤の活性水素当量は、70~120であってもよく、好ましくは100~120である。
【0021】
脂肪族アミン系硬化剤として、アルキレンポリアミン及びポリアルキレンポリアミンが挙げられる。前記アルキレンポリアミンは、下式で表される化合物であってもよい。
H2N-R1-NH2
その中、R1が炭素数1~12である二価炭化水素基であり、前記炭化水素基にある水素原子はそれぞれ、炭素数1~10である炭化水素基で置換されてもよい。
アルキレンポリアミンの具体例として、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、及びトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
前記ポリアルキレンポリアミンは、下式で表される化合物であってもよい。
H2N-(CmH2mNH)nH
その中、mが1~10の整数であり、nが2~10の整数(好ましくは、2~6の整数である)である。
ポリアルキレンポリアミンの具体例として、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、及びノニルエチレンデカミンが挙げられる。また、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラ(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2’-アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサアミン、ビス(3-アミノエチル)アミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、及びビス(シアノエチル)ジエチレントリアミンなどの前記以外の脂肪族アミン系硬化剤も、環境保護防食塗料に用いられる。
【0022】
脂環族アミン系硬化剤として、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、及びベンゼン環に第1級アミン基を2つ以上有する芳香族ポリアミン化合物が挙げられる。
【0023】
芳香族アミン系硬化剤として、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、及びビス(アミノエチル)ナフタレンが挙げられる。
【0024】
複素環アミン系硬化剤としては、N-メチルピペラジン、モルフォリン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、ピペラジン-1,4-ジアゼパン、1-(2’-アミノエチルピペラジン)、1-[2’-(2’’-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11-ジアザシクロエイコサン、及び1,15-ジアザシクロオクタコサンが挙げられる。
【0025】
環境保護防食塗料の硬化剤として、酸無水物系硬化剤を使用してもよい。酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、3,6-エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、及びメチル-3,6-エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物が挙げられる。
【0026】
本実施形態において、少なくとも1つの機能性添加剤は、1~3重量部の消泡剤、1~3重量部の垂れ防止剤、0.5~1.5重量部の沈降防止剤、及び1~3重量部の紫外線吸収剤を含んでもよい。消泡剤としては、ポリシロキサンポリマー、疎水性固体粒子及びポリエーテル変性シリコーンオイルが挙げられ、垂れ防止剤としては、ポリアミドワックスが挙げられ、沈降防止剤としては、ポリアミドワックス及び酸化ポリエチレンワックスが挙げられ、紫外線吸収剤としては、ベンジリデンマロン酸エステル及びヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が挙げられる。なかでも、消泡剤は、塗料において消泡作用を発揮し且つガスの排出を加速することにより、防食層2の表面に疵が生じることを回避することができ、垂れ防止剤と沈降防止剤とをお互いに配合することにより、塗料の加工性及び構造物1への密着性を高めることができる。紫外線吸収剤は、防食層2の紫外線耐性を高めることができる。しかしながら、上述したものは、機能性添加剤は塗料において主な役割に過ぎなく、他の作用を奏することができる。
【0027】
少なくとも1つの機能性添加剤は、本発明の目的を損しない範囲で、可塑剤、硬化促進剤、安定剤、防汚剤、溶媒、着色顔料などをさらに含んでもよい。
【0028】
図3に示すように、本発明に係る実施形態においては、樹脂組成物を調製する工程S1と、前記樹脂組成物を研磨・分散する工程S2と、研磨・分散した前記樹脂組成物に硬化剤を添加する工程S3とを少なくとも含む、前記環境保護防食塗料を製造するための製造方法を提供する。
【0029】
更に言うと、工程S1において、配合比に基づいてエポキシ樹脂と、導電性高分子と、硬化剤と、機能性添加剤とを高速混合機で均一に混合を行うことにより、樹脂組成物を得る。工程S1において、樹脂組成物は、三本ロール式研磨分散機で研磨・分散を行うと共に、三本ロールの間隔を調整することにより所望の細かさレベルを達成する。工程S3において、硬化剤は、塗料の粘着力及び硬化速度を調整することができる。本実施形態において、エポキシ樹脂及び硬化剤の当量比(即ち、(硬化剤の使用量/活性水素当量)を(エポキシ樹脂の使用量/エポキシ当量)で割った値)は、0.4~0.8であり、好ましくは0.5~0.6である。
【実施例0030】
[実験例1]
まず、エポキシ樹脂90重量部と、ポリアニリン4.0重量部と、消泡剤2.1重量部と、垂れ防止剤2.4重量部と、沈降防止剤0.5重量部と、UV吸収剤1.0重量部とを均一に混合することにより、樹脂組成物を得た。次に、三本ロール式研磨機で樹脂組成物を研磨・分散することにより、導電性高分子をエポキシ樹脂に均一に分散させると共に、細さを20~30μmに制御した。塗布を行う際に、樹脂組成物を100重量部として、60重量部の硬化剤を添加して、均一に混合・撹拌を行った後に、防食塗料を得た。
【0031】
[実験例2]
まず、エポキシ樹脂87.5重量部と、ポリアニリン6.0重量部と、消泡剤2.1重量部と、垂れ防止剤2.4重量部と、沈降防止剤1.0重量部と、UV吸収剤1.0重量部とを均一に混合することにより、樹脂組成物を得た。次に、三本ロール式研磨機で樹脂組成物を研磨・分散することにより、導電性高分子をエポキシ樹脂に均一に分散させると共に、細さを20~30μmに制御した。塗布を行う際に、樹脂組成物を100重量部として、60重量部の硬化剤を添加して、均一に混合・撹拌を行った後に、防食塗料を得た。
【0032】
[実験例3]
まず、エポキシ樹脂87.8重量部と、ポリアニリン6.0重量部と、消泡剤1.7重量部と、垂れ防止剤2.0重量部と、沈降防止剤1.5重量部と、UV吸収剤1.0重量部とを均一に混合することにより、樹脂組成物を得た。次に、三本ロール式研磨機で樹脂組成物を研磨・分散することにより、導電性高分子をエポキシ樹脂に均一に分散させると共に、細さを20~30μmに制御した。塗布を行う際に、樹脂組成物を100重量部として、55重量部の硬化剤を添加して、均一に混合・撹拌を行った後に、防食塗料を得た。
【0033】
[耐塩水性試験]
試験装置:
塩水噴霧試験機(ブランド:TERCHY、品番:SST9NL)
試験方法:
実施例1~3で得た防食塗料を、7cm×15cmの鋼板(試験板)に塗布・乾燥することにより、厚さが300μmである塗層を形成し、23±2℃の温度及び50±15%の相対湿度において、下記の試験条件を用いて、ASTM B117-16の基準に基づいて、塗層で被覆された試験板に塩水噴霧試験を行った後に、試験板の外観を観察した。その結果、表1に示す通りである。
試験条件:
1.塩水の濃度 :50±5g/L
2.収集された塩水噴霧のpH値 :6.5~7.2
3.供給ガスの圧力 :1.0kgf/cm2
4.塩霧チャンバーの温度 :35.0±2.0℃
5.飽和空気の温度 :46~49℃
6.スプレー量 :1.0~2.0ml/80cm2/h
7.試験板の配置角度 :20±5°
8.測定時間 :1000時間
【0034】
【0035】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る、80~90重量部のエポキシ樹脂と、3~7重量部の少なくとも1つの導電性高分子と、55~65重量部の硬化剤と、少なくとも1つの機能性添加剤とを含有する環境保護防食塗料は、重金属、揮発性有機物(VOC)などの有害物質を添加せずに、金属材料に良好な防食効果を提供することができるので、人体の健康に害することはなく、環境にも優しい。また、本発明に係る製造方法は、その環境保護防食塗料の加工性を高めることができる。
【0036】
更に言うと、導電性高分子の存在において、防食層は、構造物の内部における電子の外部への移動を阻止することにより、腐食を防止するか、腐食速度を下げる効果を奏することができる。また、垂れ防止剤と沈降防止剤とをお互いに配合することにより、塗料の加工性及び構造物への密着性を高めることができる。
【0037】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。