(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129375
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】アルミニウム表面処理浴
(51)【国際特許分類】
C23C 22/08 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
C23C22/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017720
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021027184
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】315006377
【氏名又は名称】日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】神村 雅之
【テーマコード(参考)】
4K026
【Fターム(参考)】
4K026AA09
4K026AA22
4K026BA03
4K026BB01
4K026BB04
4K026CA13
4K026CA14
4K026CA15
4K026CA23
4K026CA25
4K026CA37
4K026DA02
4K026DA03
(57)【要約】
【課題】ブラウンスポットを抑制でき、外観を向上できるとともに、乾燥効率を向上できるアルミニウム表面処理浴を提供すること。
【解決手段】アルミニウムの表面処理に用いられるアルミニウム表面処理浴であって、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを10~1000mg/L含み、リン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であるリン酸化合物を、リン酸イオン換算で1~50mg/L含む、アルミニウム表面処理浴。リン酸化合物は、リン酸又は縮合リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩のうち、少なくとも1種を含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムの表面処理に用いられるアルミニウム表面処理浴であって、
ポリオキシエチレンアルキルエーテルを10~1000mg/L含み、
リン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であるリン酸化合物を、リン酸イオン換算で1~50mg/L含む、アルミニウム表面処理浴。
【請求項2】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、EO付加モル数3~11、炭素鎖数8~14である、請求項1に記載のアルミニウム表面処理浴。
【請求項3】
アルミニウム缶の表面処理に用いられる、請求項1又は2に記載のアルミニウム表面処理浴。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のアルミニウム表面処理浴を調製するために用いられるアルミニウム表面処理剤であり、
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルを1~20質量%、及び前記リン酸化合物を、リン酸イオン換算で1~20質量%、のうち少なくとも何れかを含む水溶液である、アルミニウム表面処理剤。
【請求項5】
前記リン酸化合物は、リン酸又は縮合リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩のうち、少なくとも1種を含む、請求項4に記載のアルミニウム表面処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム表面処理浴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビールや炭酸飲料等の飲食品の容器として用いられる、アルミニウム製シームレス缶等のアルミニウム製品が広く使用されている。アルミニウム製品の表面に良好な化成処理皮膜を形成するために、界面活性剤やエッチング剤等を含有する表面処理浴による表面処理が行われている。例えば、燐酸エステル類、アルコール類、及び水溶性有機物質を含む金属缶用表面処理剤に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、アルミニウム缶を表面処理することで缶表面に滑り性を付与し、製造ライン上での移動性を改良するものである。一方、アルミニウム缶等のアルミニウム製品の表面には、ブラウンスポットと呼ばれる外観不良が発生する場合がある。また、アルミニウム製品の表面処理後に水洗及び乾燥が行われるが、上記水洗後の乾燥効率を向上させることが求められている。このような課題に対し、従来は検討されていないのが現状だった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ブラウンスポットを抑制でき、外観を向上できるとともに、乾燥効率を向上できるアルミニウム表面処理浴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、アルミニウムの表面処理に用いられるアルミニウム表面処理浴であって、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを10~1000mg/L含み、リン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であるリン酸化合物を、リン酸イオン換算で1~50mg/L含む、アルミニウム表面処理浴に関する。
【0007】
(2) 前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、EO付加モル数3~11、炭素鎖数8~14である、(1)に記載のアルミニウム表面処理浴。
【0008】
(3) アルミニウム缶の表面処理に用いられる、(1)又は(2)に記載のアルミニウム表面処理浴。
【0009】
(4) (1)~(3)に記載のアルミニウム表面処理浴を調製するために用いられるアルミニウム表面処理剤であり、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルを1~20質量%、及び前記リン酸化合物を、リン酸イオン換算で1~20質量%、のうち少なくとも何れかを含む水溶液である、アルミニウム表面処理剤。
【0010】
(5) 前記リン酸化合物は、リン酸又は縮合リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩のうち、少なくとも1種を含む、(4)に記載のアルミニウム表面処理剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブラウンスポットを抑制でき、外観を向上できるとともに、乾燥効率を向上できるアルミニウム表面処理浴及びアルミニウム表面処理剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態の記載に限定されない。
【0013】
<アルミニウム表面処理浴>
本実施形態に係るアルミニウム表面処理浴は、被処理対象であるアルミニウム製品の表面に化成皮膜を形成するために用いられる。アルミニウム表面処理浴は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルと、リン酸化合物と、を含む。
【0014】
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレン鎖とアルキル基とがエーテル結合により結合した化合物である。本実施形態に係るポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレン鎖に対し、1つのアルキル基が結合したモノアルキル化合物である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、アルミニウム表面に滑り性を付与する界面活性剤として用いられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの親水基がアルミニウム表面に吸着し、表層側に親水基及び疎水基が配列される。表層側に配列される親水基の作用により、アルミニウム表面に親水性が付与される。これにより、水洗工程によりアルミニウム表面に付着する水分量を、乾燥工程の前に脱落及び低減させることが可能となる。このため、乾燥工程における乾燥温度を低減することができる。また、リン酸化合物とポリオキシエチレンアルキルエーテルを併用することで、リン酸化合物を単独で使用する場合よりもブラウンスポットを抑制する効果が向上する。更に、乾燥後は疎水基の作用により、アルミニウム表面の滑り性が向上するため、例えば被処理対象がアルミニウム缶である場合に、アルミニウム缶の搬送性を向上させることができる。
【0015】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルミニウム表面処理浴中の濃度は10~1000mg/Lである。上記濃度が10mg/L未満である場合、界面活性剤としての上記効果が得られない。また、上記濃度が1000mg/Lを超える場合、乾燥後にアルミニウム表面にポリオキシエチレンアルキルエーテルが残留することで、白色化が生じ、アルミニウム表面の外観特性が損なわれる恐れがある。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの上記濃度は、50~1000mg/Lであることが好ましく、100~400mg/Lであることがより好ましい。
【0016】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのオキシエチレン単位の繰り返し数である、EO付加モル数は、3~11であることが好ましい。
【0017】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLB値は、8~14であることが好ましい。ここで、HLB値とは、親水親油バランス(Hydrophilic-Lipophilic Balance)であり、親水性と親油性(疎水性)の程度を表す尺度である。親水性の強いものほどHLB値は大きい。
【0018】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの炭素鎖数は、8~14であることが好ましい。ここで、炭素鎖数とは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基における炭素鎖数を意味する。
【0019】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのEO付加モル数が11を超過した場合、及びHLB値が14を超過した場合、及び炭素鎖数が8未満である場合、のうちいずれかである場合、アルミニウム表面処理浴の発泡が多くなり作業性が低下する。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのEO付加モル数が3未満である場合、及びHLB値が8未満である場合、及び炭素鎖数が14を超える場合、のうちいずれかである場合、アルミニウム表面処理浴の浴分散性が低下して、浴中の成分が浮上分離しやすくなる。このため、化成皮膜の付着ムラが生じ外観不良となる恐れがある。また、アルミニウム表面に対する付着水分量の低減効果が低下する。
【0020】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルを2種以上混合させて用いる場合、EO付加モル数3~8、HLB値8~12、炭素鎖数10~14である主成分と、EO付加モル数6~10、HLB値12~14、炭素鎖数8~12である副成分とを併用することが好ましい。また、上記のような主成分と副成分とを併用する場合、主成分に対する副成分のモル比が5:1~1:1であることが好ましい。
【0021】
(リン酸化合物)
リン酸化合物は、アルミニウム表面を不活性化する皮膜形成処理剤として機能する。アルミニウム表面処理浴の被処理対象であるアルミニウムは、洗浄工程で使用される純水と反応することで、ベーマイト皮膜と呼ばれる酸化皮膜が著しく成長して茶褐色のブラウンスポットが発生する。ブラウンスポットが発生すると、アルミニウム表面に印刷や塗装を行う際にムラが発生し、外観上不具合が生じる問題がある。リン酸化合物は、被処理対象であるアルミニウムと反応することでリン酸アルミニウムを形成し、アルミニウム表面に耐食性に優れた皮膜を形成する。これにより、アルミニウム表面を化学的に不活性化することができ、酸処理等を要さずにブラウンスポットの発生を抑制できる。
【0022】
リン酸化合物は、リン酸基を有する化合物であり、リン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である。上記縮合リン酸は、オルトリン酸の脱水縮合によって生じる直鎖状高分子リン酸の総称であり、例えば、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ウルトラリン酸等が挙げられる。上記リン酸又は縮合リン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩のうち、少なくとも1種を含むことが好ましい。上記リン酸化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0023】
リン酸化合物は、リン酸イオン(PO4
3-)換算でアルミニウム表面処理浴中の濃度は1~50mg/Lである。上記リン酸イオン換算の濃度が1mg/L未満である場合、アルミニウム表面への酸化皮膜の形成を十分に抑制できない恐れがある。上記リン酸イオン換算の濃度が50mg/Lを超える場合、ブラウンスポットの抑制効果が得られない。上記リン酸イオン換算の濃度は、例えばICP(誘導結合プラズマ)発光分析により測定されるリン原子のモル数をリン酸イオンに換算することで算出することができる。上記リン酸イオン換算の濃度は、3~10mg/Lであることが好ましく、5~10mg/Lであることがより好ましい。
【0024】
(その他の成分)
本実施形態に係るアルミニウム表面処理浴は、その他の成分として、抗菌剤、界面活性剤、防錆剤等を任意に含んでいてもよい。また、上記以外に密着性向上を目的としてシランカップリング剤、コロイダルシリカ、アミン類、フェノール樹脂を含むフェノール系水溶性有機化合物等を任意に含んでいてもよい。
【0025】
抗菌剤としては、例えば、エタノールやイソプロパノール等のアルコール、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩等のグアニジン基含有化合物、2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾール、メチル-2-ベンズイミダゾールカルバメート等のベンズイミダゾール系抗菌剤、p-クロロ-m-キシレノール、p-クロロ-m-クレゾール等のフェノール系抗菌剤、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタン等の二トリル系抗菌剤、(2-ピリジルチオ-1-オキシド)ナトリウム、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛等のピリジン系抗菌剤、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等イソチアゾロン系抗菌剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩、安息香酸、p-オキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル以外のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等が挙げられる。防錆剤としては、特に限定されず、例えば、タンニン酸、イミダゾール類、トリアジン類、グアニン類、ヒドラジン類、ビグアニド等が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係るアルミニウム表面処理浴のpHは、3以上10以下であることが好ましい。本実施形態に係るアルミニウム表面処理浴のpHがこの範囲であると、アルミニウム表面に対する過剰エッチングを抑制することができ、アルミニウム表面の外観が損なわれるのを防ぐことができる。
【0028】
本実施形態に係るアルミニウム表面処理浴の被処理対象であるアルミニウムとしては、特に限定されず、アルミニウム、アルミニウム-銅合金、アルミニウム-マンガン合金、アルミニウム-珪素合金、アルミニウム-マグネシウム合金、アルミニウム-マグネシウム-珪素合金、アルミニウム-亜鉛合金、アルミニウム-亜鉛-マグネシウム合金等を挙げることができる。また、処理対象となるアルミニウム基材の形状については特に制限されず、板、棒、缶等の任意形状の処理対象を化成処理することができる。例えば、アルミニウム飲料缶はドローイング・アンド・アイアニング加工(DI加工)と呼ばれる引き抜き加工等によって製造されており、段差となる部分に純水が滞留することでブラウンスポットが生じやすいが、本実施形態に係るアルミニウム表面処理浴を用いることで、アルミニウム飲料缶に生じやすいブラウンスポットを抑制することができる。
【0029】
<アルミニウム表面処理剤>
本実施形態に係るアルミニウム表面処理剤は、上記アルミニウム表面処理浴を調製するため、又はアルミニウム表面処理浴に対して各種成分を補給するために用いることができる。アルミニウム表面処理剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを1~20質量%、及びリン酸化合物を、リン酸イオン換算で1~20質量%のうち少なくとも何れかを含む水溶液である。上記リン酸化合物は、リン酸基を有する化合物であり、リン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。上記縮合リン酸は、オルトリン酸の脱水縮合によって生じる直鎖状高分子リン酸の総称であり、例えば、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ウルトラリン酸等が挙げられる。上記リン酸又は縮合リン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩のうち、少なくとも1種を含むことが好ましい。上記リン酸化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
上記表面処理剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。例えば、アルミニウム表面処理浴の調製時又は補給時に2種以上の水溶液を併用して用いてもよいし、単独で用いてもよい。
【0031】
上記アルミニウム表面処理剤を水で希釈することで、本実施形態に係るアルミニウム表面処理浴を調製できる。この際に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの濃度が10~1000mg/L、かつ、リン酸化合物のリン酸イオン換算の濃度が1~50mg/Lとなるようにアルミニウム表面処理浴を調製する。また、上記アルミニウム表面処理剤を表面処理浴に添加することで、アルミニウム表面処理浴への各種成分の補給を行うことができる。補給時にも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びリン酸化合物の濃度が上記範囲内となるように補給することが好ましい。
【0032】
上記アルミニウム表面処理剤には、アルミニウム表面処理浴に含まれるその他の成分としての抗菌剤、界面活性剤、防錆剤、シランカップリング剤、コロイダルシリカ、アミン類、フェノール樹脂を含むフェノール系水溶性有機化合物等が任意に含まれていてもよい。
【0033】
<アルミニウムの表面処理方法>
本実施形態に係るアルミニウム表面処理浴を用いたアルミニウムの表面処理方法は、例えば、水洗工程と、表面処理工程と、乾燥工程と、を含む。また、上記表面処理工程の前に、脱脂工程と、予備洗浄工程と、を含んでいてもよい。
【0034】
脱脂工程は、例えば、DI加工により製造されるアルミニウム缶の表面に付着するスマットと呼ばれるアルミニウム粉末や潤滑油等の成分を脱脂剤により除去する工程である。また、脱脂工程により、アルミニウム表面に形成された酸化アルミニウム皮膜が除去される。脱脂剤としては、公知の市販品を用いることができる。
【0035】
予備洗浄工程は、アルミニウムの表面に付着した汚れを洗浄水の噴霧等により除去する工程である。
【0036】
水洗工程は、アルミニウムの表面に付着した汚れ、又は脱脂工程によりアルミニウムの表面に付着した脱脂剤を純水の噴霧等により洗浄する工程である。
【0037】
表面処理工程は、アルミニウムの表面に表面処理膜を形成する工程である。表面処理工程は、本実施形態に係るアルミニウム表面処理浴にアルミニウムを浸漬することにより、或いはアルミニウム表面処理浴をアルミニウムに噴霧又は塗布等することにより行われる。
【0038】
乾燥工程は、表面処理工程後のアルミニウムを乾燥させ、水分を除去する工程である。本実施形態において、表面処理工程により、親水性に優れた表面処理膜をアルミニウム表面に形成できるため、表面処理膜の上に付着する水分量を乾燥工程の前に脱落及び低減させることが可能である。このため、本実施形態に係る乾燥工程は、乾燥温度を140℃~220℃、乾燥時間を80秒~4分とすることができる。上記乾燥温度及び乾燥時間は、例えば、乾燥温度140℃で乾燥時間4分、乾燥温度220℃で80秒等の組み合わせを適用できる。乾燥工程における乾燥手段は、オーブン等の従来公知の加熱乾燥装置を用いることができる。従来の乾燥条件は、高いエネルギーコストを要するとともに、乾燥温度が高いとアルミニウムの強度が低下して変形する恐れもあった。本実施形態に係る乾燥工程は、従来よりも乾燥温度及び乾燥時間を低減できるため、上記問題を解決できる。
【実施例0039】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0040】
<実施例1~15、比較例1~5>
表1に示す濃度及び化合物の種類で、実施例及び比較例に係るアルミニウム表面処理浴を調製した。調製には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを5質量%含む水溶液と、リン酸化合物をリン酸イオン換算で2質量%含む水溶液と、を用い、水で希釈して表1に示す濃度となるようにアルミニウム表面処理浴を調製した。被処理対象としてDI加工されたアルミニウム缶を用い、脱脂剤(サーフクリーナーNHC260A、日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社製)を用いて、上記脱脂剤の75℃、40g/L浴を用いて60秒スプレー脱脂後、10秒間水洗スプレー、更に10秒間純水スプレーした後、上記調製したアルミニウム表面処理浴で10秒間スプレーした。表面処理後の乾燥性、ブラウンスポット、外観について、以下の条件で評価を行った。
【0041】
[乾燥性評価]
各実施例及び比較例に係るアルミニウム表面処理浴で処理を行ったアルミニウム缶を、それぞれ160℃、及び200℃で3分間乾燥させ、目視により以下の基準で評価を行った。結果を表1に示す。
3:水滴無し
2:ごく微量の水滴あり
1:水滴あり
【0042】
[ブラウンスポット評価]
各実施例及び比較例に係るアルミニウム表面処理浴で処理を行ったアルミニウム缶を、200℃で3分間乾燥させ、内面中心部におけるブラウンスポット(茶褐色に変色した箇所)の発生有無を、目視により以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
3:発生無し
2:僅かに発生あり
1:発生あり
【0043】
[外観評価]
各実施例及び比較例に係るアルミニウム表面処理浴で処理を行ったアルミニウム缶を、200℃で3分間乾燥させ、外面中心部における白色化の有無を、目視により以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
3:白色化なし
2:僅かに白色化
1:白色化あり
【0044】
【0045】
表1の結果から、各実施例に係るアルミニウム表面処理浴を用いた表面処理により、アルミニウムの乾燥性を向上でき、かつブラウンスポットを抑制できることが確認された。