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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129397
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】記憶媒体破壊装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 33/00 20060101AFI20220830BHJP
   G11B 5/024 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G11B33/00 Z
G11B5/024 F
G11B5/024 602Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028023
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】303015505
【氏名又は名称】三央工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】相京 彰
(57)【要約】
【課題】記憶媒体を破壊装置に投入する作業を連続的に行うだけで、破壊処理後に自動的に排出される記憶媒体破壊装置を提供する。
【解決手段】ハードディスク装置26が投入口140から水平方向に破壊処理室222に投入され破壊処理が行われる。ハードディスク装置26Aの破壊処理が終わった後に、作業者が投入扉142を上方にスライドさせて投入口140を開放し、次に破壊処理するハードディスク装置26Bを投入方向Cに向けて破壊処理室222に投入すると、ハードディスク装置26Aが排出口160に押し出されて排出扉162を開放し、更に押し込まれると排出口160から落下し、排出ガイド164上を自重により滑落することで排出される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体に記録された情報を物理的又は磁気的の少なくとも何れかの方法で破壊処理する記憶媒体破壊装置であって、
矩形厚板状の記憶媒体が投入される投入部と、
前記投入部の投入方向側に配置され、投入された記憶媒体を破壊処理する破壊部と、
前記破壊部の前記投入方向側に配置され、次に投入された記憶媒体により前記破壊部から押し出された記憶媒体を排出する排出部と、
を備えたことを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項2】
請求項1記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記投入部は、
破壊処理前の前記記憶媒体が板厚方向を上下方向として略水平方向に投入される投入口と、
使用者により操作され、前記投入口を開閉する投入扉と、
を備え、
前記排出部は、
破壊処理後の前記記憶媒体が排出される排出口と、
前記排出口から押し出された記憶媒体により開放されると共に前記記憶媒体が排出された後に自動的に閉鎖する排出扉と、
を備えたことを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項3】
請求項2記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記投入扉が開放位置にある場合に前記記憶媒体の投入を可能とし、
前記投入扉が閉鎖位置にある場合に前記破壊処理を可能とし、
前記投入扉が閉鎖位置以外にある場合に前記破壊処理を不可とすることを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項4】
請求項2記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記排出扉が閉鎖位置にある場合に前記破壊処理を可能とし、
前記排出扉が閉鎖位置以外にある場合に前記破壊処理を不可とすることを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項5】
請求項2記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記投入扉及び前記排出扉の両方が閉鎖位置にある場合に前記破壊処理を可能とし、
前記投入扉又は前記排出扉が閉鎖位置以外にある場合に前記破壊処理を不可とすることを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項6】
請求項2記載の破壊装置に於いて、
前記排出部は、使用位置にある場合に前記排出口から排出された記憶媒体が自重により滑落するように傾斜し、格納位置にある場合に前記排出扉の開放を不可とする排出ガイドを備えたことを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項7】
請求項1又は2記載の破壊装置に於いて、
前記破壊部は、
ピストンロッドを突出させ、前記投入された記憶媒体を前記ピストンロッドで押圧して破壊する油圧シリンダ機構と、
前記ピストンロッドの突出側に配置され、前記投入された記憶媒体を収容する破壊処理室と、
前記破壊処理室の前記ピストンロッド突出側に対向して配置され、前記ピストンロッドの押圧に対して前記破壊処理室に収容された記憶媒体を支持する受圧板と、
を備えたことを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項8】
請求項2を引用した請求項7記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記油圧シリンダ機構は、前記ピストンロッドを略垂直方向に突出させることを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項9】
請求項7記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記油圧シリンダ機構は、油室が相互に連通し、前記ピストンロッドが挿入された複数のシリンダが、前記投入方向に見て1列又は複数列に、前記投入方向及び前記ピストンロッド突出方向に直角な方向に見て前記投入方向に見た場合の2倍の列に配置されたことを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項10】
請求項7記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記破壊処理室は、投入側開口部及び排出側開口部を備え、前記投入部に投入された記憶媒体を前記投入側開口部から導入して収容し、前記収容された記憶媒体が前記次に投入された記憶媒体により排出側開口部から前記排出部へ押し出されるように構成されたことを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項11】
請求項7記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記受圧板は、前記投入方向に見て凹形状に且つ前記凹形状の谷面が前記ピストンロッド突出側に向くように形成され、前記ピストンロッドの押圧に対して前記収容された記憶媒体を前記凹形状の頂面で支持することを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項12】
請求項11記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記投入扉及び前記排出扉は、少なくとも前記受圧板の凹形状の谷面から前記油圧シリンダ機構の底面までを開口することを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項13】
請求項1記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記記憶媒体は、ハードディスク装置であることを特徴とする破壊装置。
【請求項14】
請求項13記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記破壊部は、コイルを励磁して所定強度の磁界を発生させ、前記投入部から投入されたハードディスク装置を前記コイルの空芯部に位置する破壊処理室に保持した状態で前記磁界を印加して磁気情報を消去することを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項15】
請求項7又は13記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記記憶媒体は、3.5インチサイズ又は2.5インチサイズのハードディスク装置の寸法規格に合致したものであり、
前記投入部は、前記3.5インチサイズの記憶媒体が長手方向を前記投入方向として投入でき、前記2.5インチサイズの記憶媒体が短手方向を前記投入方向として投入でき、
前記破壊処理室は、前記投入された3.5インチサイズの記憶媒体が少なくとも1台収容でき、前記投入された2.5インチサイズの記憶媒体が少なくとも2台収容できることを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【請求項16】
請求項1記載の記憶媒体破壊装置に於いて、
前記記憶媒体は、SSD装置であることを特徴とする記憶媒体破壊装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄する記憶媒体に記録された情報を物理的又は磁気的に破壊して情報漏洩を防止する記憶媒体破壊装置に係り、特に、ハードディスク装置を破壊して記録情報へのアクセスを不可能化する記憶媒体破壊装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに搭載されたハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)には、多量の機密情報が含まれ得ることから、ハードディスク装置の廃棄に際して、その保持情報の漏洩がセキュリティの観点で問題になっている。
【0003】
ハードディスク装置を廃棄する際には、保持情報を消去することが基本であるが、ソフトウェアによる保持情報の消去は手間がかかり時間を要するだけでなく、実質的に読取り不能になるように保持情報を完全に消去することは必ずしも容易ではなく、また、保持情報が完全に消去されたことを確認することも容易ではない。
【0004】
ハードディスク装置に記録された情報を電気的方法あるいは磁気的方法によって消去処理を行うものとしては、磁界発生用のコイルの中にハードディスク装置を挿入した状態で磁界を発生させて保持情報を磁気的に消去する装置(特許文献1)や、ハードディスク装置に斜め方向に磁界を印加することで、ハードディスク装置が水平磁気記録方式と垂直磁気記録方式の何れであっても保持情報を磁気的に消去できる装置(特許文献2)が実用化されている。
【0005】
しかし、電気的方法あるいは磁気的方法によって消去処理を行った場合は、ハードディスク装置の外観だけでは保持情報の消去が完全に行われたかどうかを判別できないため、処理履歴の管理に注意を要することになる。
【0006】
一方、ハードディスク装置自身を物理的方法によって破壊処理を行うものとして、油圧シリンダ機構を油圧ポンプにより駆動し、先端に円錐状の破壊工具を設けた複数のピストンロッドにより確実に破壊して記録情報を読取り不能にする油圧式破壊装置が提案され(特許文献3)、ハードディスク装置の廃棄の際に情報漏洩を防止するものとして既に市場に定着している。
【0007】
このような破壊装置でハードディスク装置を破壊処理する場合、日本では通常、破壊処理後の各部材をリサイクル可能とするため、破壊処理後のハードディスク装置が分解し易くなるように、ハードディスク装置の筐体を構成するベース部材(一般的に、アルミダイキャスト製)は破壊せずに、カバー部材側から内部のプラッタを変形又は穿孔する破壊手法を採用している。
【0008】
一方、リサイクル性よりも、ハードディスク装置が破壊処理されているか未処理であるかの確認容易性を優先する場合、特に米国では、ハードディスク装置をベース部材ごと折り曲げる破壊手法を採用し、ベース部材側からも破壊処理の有無が容易に視認できるようにしている(特許文献4)。
【0009】
更に、磁気的方法と物理的方法とを併用して、ハードディスク装置等の記憶媒体だけではなくCD-ROM等の光記録媒体の記録データを読み取り不能とするものも提案されている(特許文献5)。
【0010】
しかし、これらの破壊装置では、破壊処理を行うハードディスク装置の取扱い、特に、ハードディスク装置の破壊装置内への格納と破壊装置内からの取り出しの両方を人手で行う必要があることから、この作業効率を上げるため、ハードディスク装置を破壊装置に投入するだけで、破壊処理後に自動的に排出されるものも提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3088608号公報
【特許文献2】特開2009-004022号公報
【特許文献3】特開2004-316841号公報
【特許文献4】実用新案登録第3192452号公報
【特許文献5】特開2006-147044号公報
【特許文献6】特開2016-110683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ハードディスク装置が破壊処理後に自動的に排出されるこの破壊装置においては、ハードディスク装置を破壊処理する位置へ保持したり、破壊処理後のハードディスク装置を破壊装置内から排出するための構造が複雑であったり、というコスト的な問題がある。
【0013】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、ハードディスク装置を記憶媒体破壊装置に投入する作業を連続的に行うだけで、破壊処理後に自動的に排出される記憶媒体破壊装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するため、本発明による記憶媒体破壊装置は次のように構成する。
【0015】
[基本構成]
本発明は、記憶媒体に記録された情報を物理的又は磁気的の少なくとも何れかの方法で破壊処理する記憶媒体破壊装置であって、
矩形厚板状の記憶媒体が投入される投入部と、
投入部の投入方向側に配置され、投入された記憶媒体を破壊処理する破壊部と、
破壊部の投入方向側に配置され、次に投入された記憶媒体により破壊部から押し出された記憶媒体を排出する排出部と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
[投入部及び排出部]
投入部は、
破壊処理前の記憶媒体が板厚方向を上下方向として略水平方向に投入され投入口と、
使用者により操作され、前記投入口を開閉する投入扉と、
を備え、
排出部は、
破壊処理後の記憶媒体が排出される排出口と、
排出口から押し出された記憶媒体により開放されると共に記憶媒体が排出された後に自動的に閉鎖する排出扉と、
を備えたる。
【0017】
[投入扉]
投入扉が開放位置にある場合に記憶媒体の投入を可能とし、
投入扉が閉鎖位置にある場合に破壊処理を可能とし、
投入扉が閉鎖位置以外にある場合に破壊処理を不可とすることを特徴とする。
【0018】
[排出扉]
排出扉が閉鎖位置にある場合に破壊処理を可能とし、
排出扉が閉鎖位置以外にある場合に破壊処理を不可とする。
【0019】
[投入扉及び排出扉]
投入扉及び排出扉の両方が閉鎖位置にある場合に破壊処理を可能とし、
投入扉又は排出扉が閉鎖位置以外にある場合に破壊処理を不可とする。
【0020】
[排出ガイド]
排出部は、使用位置にある場合に排出部から排出された記憶媒体が自重により滑落するように傾斜し、格納位置にある場合に排出扉の開放を不可とする排出ガイドを備える。
【0021】
[物理的破壊]
破壊部は、
ピストンロッドを突出させ、投入部に投入された記憶媒体をピストンロッドで押圧して破壊する油圧シリンダ機構と、
ピストンロッドの突出側に配置され、投入部に投入された記憶媒体を収容する破壊処理室と、
破壊処理室のピストンロッド突出側に対向して配置され、ピストンロッドの押圧に対して破壊処理室に収容された記憶媒体を支持する受圧板と、
を備える。
【0022】
[油圧シリンダ機構]
油圧シリンダ機構は、ピストンロッドを略垂直方向に突出させる。
【0023】
[油圧シリンダ機構]
油圧シリンダ機構は、油室が相互に連通し、ピストンロッドが挿入された複数のシリンダが、投入方向に見て1列又は複数列に、投入方向に直角な方向に見て投入方向に見た場合の2倍の列に配置される。
【0024】
[破壊処理室]
破壊処理室は、投入側開口部及び排出側開口部を備え、投入部に投入された記憶媒体を投入側開口部から導入して収容し、収容された記憶媒体が次に投入された記憶媒体により排出側開口部から出部へ押し出されるように構成される。
【0025】
[受圧板]
受圧板は、投入方向に見て凹形状に且つ凹形状の谷面がピストンロッド突出側に向くよう形成され、ピストンロッドの押圧に対して収容された記憶媒体を凹形状の頂面で支持する。
【0026】
[投入扉及び排出扉]
投入扉及び排出扉は、少なくとも受圧板の凹形状の谷面から油圧シリンダ機構の底面までを開口する。
【0027】
[ハードディスク装置]
記憶媒体は、ハードディスク装置である。
【0028】
[磁気的破壊]
破壊部は、コイルを励磁して所定強度の磁界を発生させ、投入部から投入された記憶媒体をコイルの空芯部に位置する破壊処理室に保持した状態で磁界を印加して磁気情報を消去する。
【0029】
[記憶媒体]
記憶媒体は、3.5インチサイズ又は2.5インチサイズのハードディスク装置の寸法規格に合致したものであり、
投入部は、3.5インチサイズの記憶媒体が長手方向を前記投入方向として投入でき、2.5インチサイズの記憶媒体が短手方向を前記投入方向として投入でき、
破壊処理室は、投入された3.5インチサイズの記憶媒体が少なくとも1台収容でき、投入された2.5インチサイズの記憶媒体が少なくとも2台収容できる。
【0030】
記憶媒体は、SSD(Solid State Drive)装置である。
【発明の効果】
【0031】
[基本構成による効果]
本発明の、記憶媒体に記録された情報を物理的又は磁気的の少なくとも何れかの方法で破壊処理する記憶媒体破壊装置は、矩形厚板状の記憶媒体が投入される投入部と、投入部の投入方向側に配置され、投入された記憶媒体を破壊処理する破壊部と、破壊部の投入方向側に配置され、次に投入された記憶媒体により破壊部から押し出された記憶媒体を排出する排出部とを備え、投入部は、使用者により開閉される投入扉と、破壊処理前の記憶媒体が板厚方向を上下方向として略水平方向に投入される投入口とを備え、排出部は、破壊処理後の記憶媒体が排出される排出口と、押し出された記憶媒体により開放されると共に記憶媒体が排出された後に自動的に閉鎖する排出扉とを備えたことで、記憶媒体を記憶媒体破壊装置に投入する作業を連続的に行うだけで、破壊処理後に自動的に排出されるため、複雑な搬送機構を必要とせずに記憶媒体の破壊処理を順次行うことができる。
【0032】
[投入扉による効果]
投入扉が開放位置にある場合に記憶媒体の投入を可能とし、投入扉が閉鎖位置にある場合に破壊処理を可能とし、投入扉が閉鎖位置以外にある場合に破壊処理を不可としたことで、投入扉が開放している状態では、記憶媒体を記憶媒体破壊装置に投入する作業を行っている使用者の手が、記憶媒体破壊装置の内部に存在する可能性があるため、破壊処理を不可とすることで、安全な破壊処理を行うことができる。
【0033】
[排出扉による効果]
排出扉が閉鎖位置にある場合に前記破壊処理を可能とし、排出扉が閉鎖位置以外にある場合に前記破壊処理を不可としたことで、排出扉が開放している状態では、記憶媒体を破壊装置に投入する作業を行っている使用者の手が、破壊装置の内部に存在する可能性があるため、破壊処理を不可とすることで、安全な破壊処理を行うことができる。
【0034】
[投入扉及び排出扉を備えた効果]
投入扉及び排出扉の両方が閉鎖位置にある場合に破壊処理を可能とし、投入扉又は排出扉が閉鎖位置以外にある場合に前記破壊処理を不可としたことで、破壊処理を可能とする条件を投入扉と排出扉で個別に設定するOR条件とした場合に比べて、破壊処理を可能とする条件を投入扉と排出扉との両方で設定するAND条件とした場合の方が、より安全な破壊処理を行うことができる。
【0035】
[排出ガイドによる効果]
排出部は、使用位置にある場合に排出扉から排出された記憶媒体が自重により滑落するように傾斜し、格納位置にある場合に排出扉の開放を不可とする排出ガイドを備えたことで、排出ガイドの下方に配置したコンテナボックス等に破壊処理後の記憶媒体置を収集することができ、破壊処理後の記憶媒体の取扱いを容易にすることができる。
【0036】
[物理的破壊による効果]
破壊部は、ピストンロッドを略垂直方向に突出させ、投入された記憶媒体をピストンロッドで押圧して破壊する油圧シリンダ機構と、ピストンロッドの突出側に配置され、投入された記憶媒体を収容する破壊処理室と、破壊処理室のピストンロッド突出側に対向して配置され、ピストンロッドの押圧に対して破壊処理室に収容された記憶媒体を支持する受圧板と、を備えたことで、記憶媒体を物理的に破壊することができる。
【0037】
[油圧シリンダ機構による効果]
油圧シリンダ機構は、油室が相互に連通し、ピストンロッドが挿入された複数のシリンダが、投入方向に見て1列又は複数列に、投入方向に直角な方向に見て投入方向に見た場合の2倍の列に配置されたことで、異なるサイズの記憶媒体を物理的に破壊することができる。
【0038】
[破壊処理室による効果]
破壊処理室は、投入側開口部及び排出側開口部を備え、投入部に投入された記憶媒体を投入側開口部から導入して収容し、収容された記憶媒体が次に投入された記憶媒体により排出側開口部から出部へ押し出されるように構成されたことで、記憶媒体を記憶媒体破壊装置に投入する作業を連続的に行うだけで破壊処理後に自動的に排出することができる。
【0039】
[受圧板による効果]
受圧板は、投入方向に見て凹形状に且つ凹形状の底面がピストンロッド突出側に向くよう形成され、ピストンロッドの押圧に対して収容された記憶媒体を凹形状の頂面で支持することで、記憶媒体がハードディスク装置である場合、ハードディスク装置のベース部材ごと折り曲げて破壊することができる。
【0040】
[投入扉及び排出扉による効果]
投入扉及び排出扉は、少なくとも受圧板の凹形状の谷面から油圧シリンダ機構の底面までを開口することで、受圧板の凹形状の谷面に溜まった破壊処理後のハードディスク装置の細かな破砕物(塵埃状の破砕くず等)を容易に掃除する(掃き出す)ことができる。
【0041】
[記憶媒体]
本発明の記憶媒体破壊装置は、記憶媒体として、ハードディスク装置及びSSD装置を破壊処理する。
【0042】
[磁気的破壊による効果]
記憶媒体がハードディスク装置である場合、破壊部は、コイルを励磁して所定強度の磁界を発生させ、投入部から投入されたハードディスク装置をコイルの空芯部に位置する破壊処理室に保持した状態で磁界を印加して磁気情報を消去することで、ハードディスク装置を磁気的に破壊することができる。
【0043】
[処理可能な記憶媒体による効果]
また、記憶媒体がハードディスク装置である場合、記憶媒体は、3.5インチサイズ又は2.5インチサイズのハードディスク装置の寸法規格に合致したものであり、投入部は、3.5インチサイズの記憶媒体が長手方向を前記投入方向として投入でき、2.5インチサイズの記憶媒体が短手方向を前記投入方向として投入でき、破壊処理室は、投入された3.5インチサイズの記憶媒体が少なくとも1台収容でき、投入された2.5インチサイズの記憶媒体が少なくとも2台収容できることで、異なるサイズの記憶媒体を破壊することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明による記憶媒体破壊装置の実施形態を正面側から示す外観図
図2図1の記憶媒体破壊装置の実施形態を背面側から示す外観図
図3】記憶媒体破壊装置が物理的破壊処理を行う場合の構造を正面から示す説明図
図4】記憶媒体破壊装置が物理的破壊処理を行う場合の構造を側面から示す説明図
図5図3、4の物理破壊部の構造を平面から示す説明図
図6】物理破壊部の構造の他の実施形態を平面から示す説明図
図7】受圧板及び補助受圧板の実施形態を示す斜視図
図8】記憶媒体の投入と排出及び収容状態を示す説明図
図9】補助受圧板の取り付け及び記憶媒体の投入と排出を示す説明図
図10図5の物理破壊部による物理的破壊処理の破壊行程を示す説明図
図11図6の物理破壊部による物理的破壊処理の破壊行程を示す説明図
図12】物理破壊部によるSSD装置の物理的破壊処理の破壊行程を示す説明図
図13】記憶媒体破壊装置が磁気的破壊処理を行う場合の実施形態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本願発明による記憶媒体破壊装置の実施形態について、記憶媒体としてハードディスク装置を例にして、その構成等を示す図面を参照して説明する。なお、本願において使用している「上面」、「下部」、「上辺」、「上方」及び「下方」等の呼称は、記憶媒体破壊装置を設置した使用状態での方向(上下関係)を表している。
【0046】
[記憶媒体破壊装置の外観]
図1、2は、本発明による記憶媒体破壊装置の一実施形態の概略を示す外観図であり、図1は正面側(投入部側)から、図2は背面側(排出部側)から見た状態である。
【0047】
図1、2に示すように、記憶媒体破壊装置10には、筐体12の正面120に、破壊するハードディスク装置が投入される投入部14及び操作部18が設けられ、筐体12の背面124に、破壊されたハードディスク装置が排出される排出部16が設けられている。
【0048】
筐体12の左側面122には、電源コード(不図示)を介して記憶媒体破壊装置10に供給される商用電力の通電を開閉する電源スイッチ186が設けられている。筐体12の内部には、ハードディスク装置を破壊する機構である破壊部が設けられているが、詳細については後述する。
【0049】
投入部14は、これから破壊するハードディスク装置が投入される投入口140と、使用者が上下にスライドさせることで投入口140を開閉する投入扉142とで構成されている。図1では、投入扉142が投入口140の下端にスライドした閉鎖位置にある状態を示している。
【0050】
作業者が、投入扉142を図1に示す閉鎖位置から投入口140の上端である開放位置にスライドさせて投入口140を開放すると、ハードディスク装置を投入口140へ投入することができ、ハードディスク装置の投入後、投入扉142を閉鎖位置に戻すことで、破壊部による破壊処理が可能となる。作業者の安全を考慮して、投入扉142が閉鎖位置以外にある場合には、破壊部による破壊処理が開始されないようになっている。
【0051】
排出部16は、破壊されたハードディスク装置が排出される排出口160と、排出されるハードディスク装置に押されて、排出口160の上方に配置された蝶番166を回転軸として排出方向に回動することで排出口160を開放する排出扉162と、排出口160から排出されたハードディスク装置が、自重により所定の位置に滑落するように傾斜したガイド面を形成する排出ガイド164とで構成されている。図2では、排出口160が閉鎖位置にあり、排出ガイド164が使用位置にある状態を示している。
【0052】
排出扉162は、ハードディスク装置の排出時以外では自重やバネ機構(不図示)により、排出口160を自動的に閉鎖する。また、排出扉162が、図2に示す閉鎖位置にある場合に破壊処理を可能とし、排出扉162が閉鎖位置以外にある場合に破壊処理を不可としている。破壊部による破壊処理が可能(実行してよい)か不可(実行してはいけない)かの判断は、図示していないスイッチやフォトセンサ等で投入扉142及び排出扉162の位置を検出することで行われる。
【0053】
排出ガイド164は、本実施形態では、排出口160の下方に配置された蝶番168を回転軸として、排出扉162の開放を阻止する(不可とする)格納位置(図4参照)と、排出されたハードディスク装置を滑落させる使用位置との間で回動し、格納位置ではロック機構(不図示)により固定されるように構成されているが、筐体に対して着脱自在とし、格納位置と使用位置との各々に装着されるようにしてもよい。
【0054】
操作部18には、記憶媒体破壊装置10の動作状態や各種警告等を表示す表示パネル180、破壊処理を開始するためのスタートスイッチ182、破壊処理中に何らかの障害が発生した場合に破壊処理を中断させるストップスイッチ184が配置されている。
【0055】
筐体12は、本実施形態では具備されていないが、持ち運び用の把手を上面に設けたり、ゴム脚やキャスター等を底面に設けたりしても良く、また、上面に操作部18を設けるようにしても良い。
【0056】
[物理的破壊処理を行う場合の記憶媒体破壊装置の内部構造]
図3、4は、図1、2の記憶媒体破壊装置10が物理的破壊処理を行う場合の内部構造の概略を示す説明図であり、図3は筐体12の正面120を透過して正面側から、図4は筐体12の左側面122を透過して左側面から見て、一部を断面で示している。
【0057】
図3、4に示すように、筐体12には、内部を上下方向の2階層に仕切る隔壁126が設けられ、上層には物理破壊部20及び物理破壊制御部24、下層には油圧ポンプ装置30が配置されている。物理破壊部20は、図3では図5(A)のA-A矢視断面、図4では図5(B)のB-B矢視断面で示している。また、図4では排出ガイド164が格納位置にある状態を示しており、この状態では、排出扉162の開放を不可としている。
【0058】
物理破壊部20は、油圧シリンダ機構200及び破壊処理室222を備え、物理破壊制御部24は、電源部240及び回路部242を備えている。油圧シリンダ機構200には、物理破壊制御部24により制御された油圧ポンプ装置30から、油圧ホース308及びホース接続継手232を介して加圧された作動油が供給され、破壊処理室222内のハードディスク装置26を物理的に破壊するが、詳細については後述する。
【0059】
油圧シリンダ機構200は、シリンダブロック202、シリンダブロック202に形成されたシリンダ204と連通路208、シリンダ204の下部で戻しスプリング212を保持するスプリング受け214、シリンダ204に挿入されたピストンロッ216等で構成されている。
【0060】
破壊処理室222は、油圧シリンダ機構200のシリンダブロック202とスプリング受け214、受圧板228及び2枚の横板218で構成され、内部には、投入口140から投入されたハードディスク装置26が収容される。
【0061】
油圧ポンプ装置30は、ポンプ機構部300、タンク部302、電動モータ304及び吐出ポート306等で構成されている。ポンプ機構部300は、油圧源の油圧ポンプ機構、油圧制御用の電磁弁、圧力スイッチ等(不図示)が内蔵され、作動油を吐出する吐出ポート306が装着されている。また、タンク部302には作動油を溜めた密閉型のゴムタンクが内蔵されている。
【0062】
図5は、図3、4の物理破壊部20の構造を平面から示す説明図であり、図5(A)は、3.5インチサイズのハードディスク装置26が、長手方向を投入方向として収容された状態、図5(B)は、2.5インチサイズのハードディスク装置28が、短手方向を投入方向として2台収容された状態である。なお、ハードディスク装置26、28は、想像線で図示している。
【0063】
図5(A)(B)に示すように、油圧シリンダ機構200は、油室(後述する)が相互に連通路208により連通し、ピストンロッド216が挿入された4本(複数)のシリンダ204が、投入方向Cに見て2列(複数列)に、投入方向C及びピストンロッド216の突出方向に直角な方向Dに見て4列(投入方向Cに見た場合の2倍の列)に配置されている。連通路208は、端部が封止プラグ210で密閉され、ホース接続継手232を介して油圧ホース308に接続されている。
【0064】
図6は、図3、4の物理破壊部20の構造の他の実施形態を、図5と同様に示す説明図であり、図6(A)は、3.5インチサイズのハードディスク装置26が、長手方向を投入方向として収容された状態、図6(B)は、2.5インチサイズのハードディスク装置28が、短手方向を投入方向として2台収容された状態である。なお、ハードディスク装置26、28は、想像線で図示している。
【0065】
図6(A)(B)に示すように、油圧シリンダ機構200Aは、油室(後述する)が相互に連通路208Aにより連通し、ピストンロッド216Aが挿入された2本(複数)のシリンダ204Aが、投入方向Cに見て1列に、投入方向及びピストンロッド216Aの突出方向に直角な方向Dに見て2列(投入方向Cに見た場合の2倍の列)に配置されている。連通路208Aは、端部が封止プラグ210で密閉され、ホース接続継手232を介して油圧ホース308に接続されている。
【0066】
図6の実施形態では、ピストンロッド216Aの本数が図5に示すピストンロッド216の半分の2本になっているが、ピストンロッド216Aの1本の出力(突出力)が、ピストンロッド216の2本分の出力となるように、シリンダ204A及びピストンロッド216Aの径が設定されている。
【0067】
図7は、図3、4の受圧板228及び補助受圧板の実施形態を示す斜視図であり、図7(A)は、3.5インチサイズのハードディスク装置26が、長手方向を投入方向として受圧板228に載置された状態、図7(B)は、2.5インチサイズのハードディスク装置28が、短手方向を投入方向として受圧板228上の補助受圧板230に2台載置された状態である。なお、ハードディスク装置26、28は、想像線で図示している。
【0068】
図7(A)(B)に示すように、2.5インチサイズのハードディスク装置28は、平面的なサイズが3.5インチサイズのハードディスク装置26の約半分であるだけではなく、厚さも半分以下に薄くなっているため、2.5インチサイズのハードディスク装置28が受圧板228に直接載置されると、油圧シリンダ機構200のピストンロッド216のストローク(突出量)が一定であることから、厚さが薄くなった分、ピストンロッド216のストロークが不足し、所望の状態にまで破壊されなくなってしまう。
【0069】
従って、2.5インチサイズと3.5インチサイズとの厚さの違いを補完するために、2.5インチサイズのハードディスク装置28を物理的に破壊処理する場合には、図7(B)に示すように受圧板228の上に補助受圧板230が取り付けられた状態で、作業者がハードディスク装置28を記憶媒体破壊装置10に投入して物理的破壊処理を行うことになる。物理的破壊処理の詳細については後述する。
【0070】
作業者が受圧板228の上に補助受圧板230を取り付ける場合、投入扉142が、少なくとも受圧板228の凹形状の谷面288aから油圧シリンダ機構200の底面200a(図9参照)までを開口するため、投入扉142を開放して補助受圧板230を投入口140から破壊処理室222に挿入し、受圧板228上の所定位置に取り付けることができる。また、破壊処理中に補助受圧板230が受圧板228上で動いてしまうことを防止するために、受圧板228と補助受圧板230とを位置決めして固定する機構(不図示)を設けるようにしてもよい。
【0071】
[破壊処理作業]
図8は、記憶媒体の投入と排出及び収容状態を部分断面で示す説明図であり、図8(A)は、3.5インチサイズのハードディスク装置26が投入及び排出されている状態、図8(B)は、3.5インチサイズのハードディスク装置26が収容され、破壊処理の開始を待機している状態である。
【0072】
図8(A)に示すように、ハードディスク装置26Aの破壊処理が終わった後に、作業者が投入扉142を上方にスライドさせて投入口140を開放し、次に破壊処理するハードディスク装置26Bを、長手方向を投入方向Cに向けて破壊処理室222に投入すると、ハードディスク装置26Aがハードディスク装置26Bにより排出口160に押し出されて排出扉162を開放する。なお、図8(A)のハードディスク装置26Aは、破壊されて折れ曲がった状態を示している(図10参照)。
【0073】
ハードディスク装置26Aは、更にハードディスク装置26Bにより押し込まれると排出口160から落下し、排出ガイド164上を自重により滑落する。ハードディスク装置26Aが落下した時点でハードディスク装置26Bの投入が停止されることで、ハードディスク装置26Bは、破壊処理が行われる位置に配置され、排出扉162は、自動的に閉鎖する。また、方向Eに滑落したハードディスク装置26Aは、設置面170の下方に配置されたコンテナボックス等に収集することができる。
【0074】
排出扉162が閉鎖した後、図8(B)に示すように、作業者が投入扉142を下方にスライドさせて投入口140を閉鎖すると破壊処理が可能な状態となり、その後、スタートスイッチ182が操作されると、次の破壊処理が開始される。破壊処理が終わり、例えば、表示パネル180に破壊処理が終わった旨が表示されると、図8(A)に示すように、作業者が次のハードディスク装置の投入と破壊処理後のハードディスク装置の排出を行い、以降、この作業を繰り返すことで、ハードディスク装置の破壊処理を連続的に行うことができる。
【0075】
図9は、補助受圧板の取り付け及び記憶媒体の投入と排出を部分断面で示す説明図であり、図9(A)は、補助受圧板230が破壊処理室222に挿入されている状態、図9(B)は、2.5インチサイズのハードディスク装置28が投入及び排出されている状態である。
【0076】
図9(A)に示すように、2.5インチサイズのハードディスク装置28を破壊処理する場合は、作業者が投入扉142を上方にスライドさせて投入口140を開放し、補助受圧板230を挿入して受圧板228上に取り付ける。その際に、補助受圧板230の取り付け位置を明確にするため、受圧板228と補助受圧板230とを位置決めして固定する機構(不図示)を設けるようにしてもよい。
【0077】
補助受圧板230が取り付けられた後、作業者が2.5インチサイズのハードディスク装置28を2台、短手方向を投入方向Cに向けて破壊処理室222に投入することで破壊作業が可能な状態となり、その後、スタートスイッチ182が操作されると、破壊処理が開始される。破壊処理が終わると、例えば、表示パネル180に破壊処理が終わった旨が表示される。
【0078】
ハードディスク装置28の破壊処理が終わったら、図9(B)に示すように、作業者が投入扉142を上方にスライドさせて投入口140を開放し、次に破壊処理するハードディスク装置28C、28Dを、短手方向を投入方向Cに向けて破壊処理室222に順に投入すると、ハードディスク装置28A、28Bが排出口160に押し出されて排出扉162を開放する。なお、図9(B)のハードディスク装置28A、28Bは、破壊されて折れ曲がった状態を示している(図11参照)。
【0079】
ハードディスク装置28A、28Bは、更にハードディスク装置28C、28Dにより押し込まれると排出口160から落下し、排出ガイド164上を自重により滑落する。ハードディスク装置28Bが落下した時点でハードディスク装置28Dの投入が停止されることで、ハードディスク装置28C、28Dは、破壊処理が行われる位置に配置され、排出扉162は、自動的に閉鎖する。以降、作業者がこの作業を繰り返すことで、ハードディスク装置の破壊処理を連続的に行うことができる。
【0080】
[物理的破壊処理]
図10は、図5及び図7(A)の物理破壊部20による物理的破壊処理の破壊行程を示す説明図であり、図10(A)は、破壊処理室222に収容された3.5インチサイズのハードディスク装置26の破壊処理が開始された状態、図10(B)は、ハードディスク装置26を破壊処理した状態である。
【0081】
図10(A)に示すように、物理破壊部20、は、2枚のサイドプレート218を介してシリンダブロック202と受圧板228にボルト220で固定され、シリンダブロック202、受圧板228及び2枚のサイドプレート218で囲まれた空間で破壊処理室222が形成されている。
【0082】
ハードディスク装置26が破壊処理室222に収容された状態で、スタートスイッチ182が操作されて油圧ポンプ装置30が作動すると、油圧ホース308及びホース接続継手232を介して作動油が油室206に供給され、ピストンロッド216が破壊処理室222内に突出する。ハードディスク装置26は、サイドプレート218側の両側部が受圧板228の両頂面228bに支持されているため、図10(B)に示すように、中央部が受圧板228の谷面228aへ向かって屈曲するように破壊される。
【0083】
物理破壊部20では、油圧シリンダ機構200の4本のピストンロッド216により1台の3.5インチサイズのハードディスク装置28、又は2台の2.5インチサイズのハードディスク装置28の物理的破壊処理が行われ、1台のハードディスク装置に複数本のピストンロッドが割り当てられることから、ハードディスク装置26の強度分布(内容物の配置や硬さの違い)に偏りがあり、屈曲の途中で突出を停止するピストンロッド216が有ったとしても、他のピストンロッド216の突出が継続されることで、ハードディスク装置26を確実に破壊することができる。
【0084】
物理破壊制御部24が、物理破壊処理の終了を所定の方法、例えば、油圧ポンプ装置30内の圧力スイッチ(不図示)により作動油の吐出圧力の検知で確認すると、油圧ポンプ装置30の作動を停止すると共に、油圧ポンプ装置30内の電磁弁を切替えて油室206と油圧ポンプ装置30のタンク部304を連通させる。油室206内の油圧が下がると、戻しスプリング212の張力によりピストンロッド216が初期位置に復帰する。
【0085】
図11は、図6及び図7(B)の物理破壊部20Aによる物理的破壊処理の破壊行程を示す説明図であり、図11(A)は、破壊処理室222の補助受圧板230上に収容された2.5インチサイズのハードディスク装置28の破壊処理が開始された状態、図11(B)は、ハードディスク装置28を破壊処理した状態である。
【0086】
図11(A)に示すように、物理破壊部20A、は、2枚のサイドプレート218を介してシリンダブロック202Aと受圧板228にボルト220で固定され、シリンダブロック202A、受圧板228、受圧補助板230及び2枚のサイドプレート218で囲まれた空間で破壊処理室222が形成されている。
【0087】
ハードディスク装置28が破壊処理室222に収容された状態で、スタートスイッチ182が操作されて油圧ポンプ装置30が作動すると、油圧ホース308及びホース接続継手232を介して作動油が油室206Aに供給され、ピストンロッド216Aが破壊処理室222内に突出する。ハードディスク装置28は、サイドプレート218側の両側部が受圧板228の上に取り付けられた補助受圧板230の両頂面230bに支持されているため、図11(B)に示すように、中央部が補助受圧板230の谷面230aへ向かって屈曲するように破壊される。
【0088】
物理破壊部20Aでは、油圧シリンダ機構200Aの2本のピストンロッド216Aにより1台の3.5インチサイズのハードディスク装置28、又は2台の2.5インチサイズのハードディスク装置28の物理的破壊処理が行われるが、2.5インチサイズのハードディスク装置は、3.5インチサイズのハードディスク装置に比べて厚さ及び強度が半分以下であることから、1台のハードディスク装置に1本のピストンロッドの割り当てであっても確実に破壊することができ、また、1台の3.5インチサイズのハードディスク装置26の物理的破壊処理が行われる場合には、1台のハードディスク装置に2本のピストンロッドが割り当てられることから、図10の物理破壊部20と同様に、ハードディスク装置26を確実に破壊することができる。
【0089】
図12は、図6の油圧シリンダ機構200によるSSD(Solid State Drive)装置の物理的破壊処理の破壊行程を示す説明図であり、図10に示す物理破壊部20と実質的に同じ構成である。図12(A)は、破壊処理室222に取り付けられたSSD破壊治具50にSSD装置60が収容された状態、図12(B)は、SSD装置60を破壊処理した状態である。
【0090】
SSD装置、例えば、2.5インチサイズのSSD装置であれば、その筐体形状や外形寸法は、2.5インチサイズのハードディスク装置と略等しくなっているが、その筐体内には、ハードディスク装置のプラッタやアクチュエータに対して、記録媒体として複数の不揮発性半導体メモリチップやコントローラ等の他の半導体チップを実装した配線基板が収納されている。
【0091】
配線基板に実装されている半導体メモリチップの個数や配置は、半導体メモリチップ単体の記憶容量の違い等により機種毎に任意であり、製造業者やSSD装置の記憶容量等により異なっている場合が多い。このようなSSD装置を破壊するには、配線基板に実装された複数の半導体メモリチップの各々を破壊することが必要である。従って、物理破壊部20でSSD装置を破壊する場合には、SSD装置を確実に破壊できる破壊治具を投入口140から挿入して、受圧板228上に取り付けて行うことになる。
【0092】
図12(A)(B)に示すように、SSD破壊治具50は、固定下型500、固定下型500から起立したガイドポスト502、可動上型504、可動上型504に形成されたガイド穴506及びスプリング508で構成されている。ガイドポスト502は、固定下型500の四隅部に配置され、ガイド穴506は、可動上型504のガイドポスト502に対応する位置に配置されている。
【0093】
スプリング508は、固定下型500の長手方向(投入方向)の両ガイドポスト502の間の2列に複数ずつ配置されている。固定下型500と可動上型504には、お互いの稜線と谷線が相互に相対するように、峰部及び谷部が記憶媒体の投入方向に形成され、固定下型500と可動上型504との間の空間で破壊処理室222が生成される。
【0094】
図12(A)に示すように、1台のSSD装置60が、SSD破壊治具50内の破壊処理室222に収容された状態で、スタートスイッチ182が操作されて油圧ポンプ装置30が作動すると、油圧ホース308及びホース接続継手232を介して作動油が油室206に供給され、ピストンロッド216が破壊処理室222内に突出して可動上型504を下方に移動させる。SSD装置60は、図12(B)に示すように、固定下型500と可動上型504の峰部及び谷部に押圧されて波型状に屈曲するように破壊される。
【0095】
SSD装置60の破壊処理が終わった後、図8に示す手順と同様に、作業者が投入扉142を上方にスライドさせて投入口140を開放し、次に破壊するSSD装置を破壊処理室222に投入することで、破壊されたSSD装置60が押し出されて排出扉162を開放し、排出口160から排出される。以降、この作業を繰り返すことで、SSD装置の破壊処理を連続的に行うことができる。
【0096】
本実施形態では、固定下型500と可動上型504は、お互いの稜線と谷線が相互に相対するように、峰部及び谷部が記憶媒体の投入方向に形成されているが、4角錐状の複数の頂部とこれに相対する麓部を配列するようにすることも可能である。この場合、破壊処理後のSSD装置が凹凸形状(ワッフル状)を呈するため、次に破壊するSSD装置により排出口160へ押し出すことが困難となり、形状破壊処理を連続的に行うことができなくなるが、SSD装置をより確実に破壊することができる。
【0097】
[磁気的破壊処理を行う場合の記憶媒体破壊装置の内部構造]
図13は、図1、2の記憶媒体破壊装置10が磁気的破壊処理を行う場合の内部構造の概略を示す説明図であり、筐体12の正面120を透過して正面側から見て、一部を断面で示している。図12に示すように、筐体12には、内部を上下方向の2階層に仕切る隔壁126が設けられ、上層には磁気消去部40が配置され、磁気消去制御部42が上層と下層に渡って配置されている。
【0098】
磁気消去部40は、コイル部400及び破壊処理室406で構成され、コイル部400は、コイル402、合成樹脂等で形成されたボビン404及びコイル402の外周を囲むように設置された磁性体材料の磁気シールド408を備えている。また、コイル402及びボビン404の空芯部が破壊処理室406となっている。また、磁気消去制御部42は、上層に配置された電源部520及び回路部422、下層に配置された複数のンデンサで構成されている。
【0099】
コイル202は、磁気消去制御部42により励磁されて所定強度の磁界を略水平方向(図12の前後方向)に発生し、空芯部に配置された収容器208内のハードディスク装置36に記録された磁気情報を消去する。記憶媒体の投入と排出は、図8、9に示す手順により、物理的破壊を行う場合と同様に行われる。
【0100】
[その他]
上記の物理破壊部20の実施形態では、単動式の油圧シリンダ機構200を使用してピストンロッド216の突出のみを油圧で駆動し、ピストンロッド216の復帰は戻しスプリング212で行う構成であるが、複動式の油圧シリンダ機構を使用してピストンロッドの突出と復帰の両方を油圧で駆動する構成とすることも可能である。
【0101】
また、磁気消去部40と物理破壊部20とを直列に配置して、磁気的破壊処理と物理的破壊処理の両方を行うように構成し、廃棄する記憶媒体に記録された情報をより確実に破壊することも可能である。
【0102】
また、本発明の記憶媒体破壊装置は、ハードディスク装置やSSD装置に限らず他の記憶装置にも適用可能であり、また上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含む。
【符号の説明】
【0103】
10、50:記憶媒体破壊装置
12:筐体
120:正面
122:左側面
124:背面
126:隔壁
128:底板
14:投入部
140:投入口
142:投入扉
16:排出部
160:排出口
162:排出扉
164:排出ガイド
166、168:蝶番
170:設置面
18:操作部
180:表示パネル
182:スタートスイッチ
184:ストップスイッチ
186:電源スイッチ
20:物理破壊部
200:油圧シリンダ機構
202:シリンダブロック
204:シリンダ
206:油室
208:連通路
210:封止プラグ
212:戻しスプリング
214:スプリング受け
216:ピストンロッド
218:サイドプレート
220:ボルト
222:破壊処理室
224:投入側開口部
226:排出側開口部
228:受圧板
230:補助受圧板
232:ホース接続継手
24:物理破壊制御部
240:電源部
242:回路部
26:ハードディスク装置(3.5インチサイズ)
28:ハードディスク装置(2.5インチサイズ)
30:油圧ポンプ装置
300:ポンプ機構部
302:タンク部
304:電動モータ
306:電磁弁
308:油圧ホース
310:電源コード
40:磁気消去部
400:コイル部
402:コイル
404:ボビン
406:破壊処理室(空芯部)
408:磁気シールド
42:磁気消去制御部
420:電源部
422:回路部
424:コンデンサ
50:SSD破壊治具
500:固定下型
502:ガイドポスト
504:可動上型
506:ガイド穴
508:スプリング
60:SSD装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13