(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129428
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】電池及び電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/50 20210101AFI20220830BHJP
【FI】
H01M2/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028085
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】特許業務法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】山根 勇希
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正雄
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA19
5H043BA15
5H043CA03
5H043CA22
5H043FA02
5H043FA36
5H043HA05F
5H043HA16F
5H043JA13F
5H043LA02F
5H043LA03F
5H043LA21F
(57)【要約】
【課題】金属板に溶接されたリードによる他部品の損傷を抑える。
【解決手段】平タブ60の主面60a上に延在するアキシャルリード31は、直径T0の本体部31cと、そこからアキシャルリード31の先端31aまでに設けられて主面60aと接続される接続部とを有する。その接続部は、本体部31c側に設けられる部位33と、そこから先端31aまでに設けられる部位32とを含む。部位33は、平タブ60との溶接部70を含み、直径T0よりも小さい厚さT1を有し、部位32は、平タブ60との非溶接部71を含み、厚さT1以下の厚さT2を有する。部位32は、平タブ60との抵抗溶接の際に立ち上がるアキシャルリード31の先端31aをプレスすることで、形成される。先端31aの立ち上がりをプレスにより変形、消失させ、立ち上がった先端31aによる他部品の損傷を抑える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、
前記金属板の第1主面上に延在するリードと
を備え、
前記リードは、
第1直径を有する本体部と、
前記本体部から前記リードの先端までに設けられ、前記第1主面と接続される接続部と
を有し、
前記接続部は、
前記本体部側に設けられ、前記第1主面との溶接部を含み、前記第1主面と垂直な第1方向の第1厚さが前記第1直径よりも小さい第1部位と、
前記第1部位から前記先端までに設けられ、前記第1主面との非溶接部を含み、前記第1方向の第2厚さが前記第1厚さと同じか又は前記第1厚さよりも小さい第2部位と
を含むことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記第2厚さは、前記第1厚さの50%~100%の厚さであることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第2部位は、一部に前記第1部位から連続する前記溶接部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記金属板は、正極又は負極と電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電池。
【請求項5】
第1直径を有するリードを、金属板の第1主面上に延在するように配置する工程と、
前記リードの前記第1直径を有する本体部から先端までの間の中途部を、抵抗溶接によって前記第1主面と接続する工程と、
前記抵抗溶接後の前記リードの前記先端を含む部位を、前記第1主面側へのプレスによって変形させる工程と
を含むことを特徴とする電池の製造方法。
【請求項6】
前記抵抗溶接によって前記第1主面と接続された、前記プレス前の前記中途部の、前記第1主面と垂直な第1方向の第1厚さに対して、50%~100%の第2厚さとなるように、前記抵抗溶接後の前記リードの前記先端を含む前記部位を、前記第1主面側への前記プレスによって変形させることを特徴とする請求項5に記載の電池の製造方法。
【請求項7】
前記抵抗溶接後の前記リードの前記先端を含む前記部位として、前記リードの前記先端から前記中途部まで、又は前記先端から前記中途部の一部若しくは全部までを、前記第1主面側への前記プレスによって変形させることを特徴とする請求項5又は6に記載の電池の製造方法。
【請求項8】
前記リードを、前記抵抗溶接によって前記第1主面と接続し、前記第1主面側への前記プレスによって変形させた後、前記金属板を、正極又は負極と電気的に接続する工程を含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池及び電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池素子材料等の端子となるタブを切断し、その際に生じるバリを、プレス台でプレスして潰し、バリが電池素子材料を傷つけ、ショートや不良の原因となるのを避ける技術が知られている。
【0003】
また、アルカリ二次電池の極板の側端部分をプレス加工する技術、充填剤を用いる極板の側端部分に未充填部を設けてプレス加工することで角部にバリが生じることを抑える技術が知られている。
【0004】
また、金属棒の一端部を平板状にプレス加工してタブ端子を得る技術、金属棒の他端部にリード線を接続する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-251709号公報
【特許文献2】特開2018-78041号公報
【特許文献3】特開2018-22878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電池では、その正極及び負極の各々若しくは一方に、タブ等の金属板が電気的に接続される場合があり、その金属板には、アキシャル型電気素子等のリードが、抵抗溶接によって接続される場合がある。このような金属板へのリードの抵抗溶接では、例えば、それらの間の安定した溶接面積及び電流密度を実現するため、リードの先端を避け、リードの中途部を金属板と抵抗溶接する手法が採用される。
【0007】
この手法では、抵抗溶接されるリードの中途部に潰れが生じるが、その溶接時の応力により、リードの先端が金属板から立ち上がってしまうことが起こり得る。立ち上がったリードの先端は比較的鋭利な形状となるため、リードが抵抗溶接された金属板が組み込まれる電池において、その立ち上がったリードの先端上に比較的柔軟な他部品、例えば、芯線が被覆材で覆われたリード線等の他部品が位置するようになると、その他部品の損傷、それに起因した電気的な不良を招く恐れがある。
【0008】
1つの側面では、本発明は、金属板に溶接されたリードによる他部品の損傷を抑えることのできる電池を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、金属板と、前記金属板の第1主面上に延在するリードとを備え、前記リードは、第1直径を有する本体部と、前記本体部から前記リードの先端までに設けられ、前記第1主面と接続される接続部とを有し、前記接続部は、前記本体部側に設けられ、前記第1主面との溶接部を含み、前記第1主面と垂直な第1方向の第1厚さが前記第1直径よりも小さい第1部位と、前記第1部位から前記先端までに設けられ、前記第1主面との非溶接部を含み、前記第1方向の第2厚さが前記第1厚さと同じか又は前記第1厚さよりも小さい第2部位とを含む電池が提供される。
【0010】
また、1つの態様では、第1直径を有するリードを、金属板の第1主面上に延在するように配置する工程と、前記リードの前記第1直径を有する本体部から先端までの間の中途部を、抵抗溶接によって前記第1主面と接続する工程と、前記抵抗溶接後の前記リードの前記先端を含む部位を、前記第1主面側へのプレスによって変形させる工程とを含む電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面では、金属板に溶接されたリードによる他部品の損傷を抑えることのできる電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】アキシャルリードと平タブとの抵抗溶接の一例について説明する図である。
【
図3】実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体の形成方法の一例について説明する図である。
【
図4】実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体の一例について説明する図である。
【
図5】実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体の変形例について説明する図(その1)である。
【
図6】実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体の変形例について説明する図(その2)である。
【
図7】実施の形態に係る組電池の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
【
図8】実施の形態に係る組電池の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
【
図9】実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体の評価の一例について説明する図である。
【
図10】実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体を搭載した組電池の評価の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は組電池の一例について説明する図である。
図1には組電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。
図1には、電池の一例として、組電池1Aを示している。
図1に示す組電池1Aは、3個の電池(「素電池」とも言う)10を含む。電池10群は、電気的に直列又は並列に接続される。各電池10の正極又は負極(「電極」とも言う)11には、電極用タブ20が接続され、所定の電極用タブ20同士が、図示しないリード線等を用いて接続され、電池10群が互いに電気的に接続される。
【0014】
組電池1Aでは、安全性を高めるための保護部品として、ダイオード、電流ヒューズ、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子等の電気素子が、所定の電極11間に接続される場合がある。例えば、
図1に示すような、アキシャル型のリード(「アキシャルリード」とも言う)31を有する電気素子30が、所定の電極11間に接続される。
【0015】
組電池1Aの所定の電池10の電極11には、組電池1Aと外部負荷との接続に用いるリード線40が接続される。
また、組電池1Aには、所定の電池10(その電極11又はそれに繋がる電極用タブ20)間の短絡、所定の電池10と電気素子30との短絡を防ぐため、絶縁テープ等の被覆部材50が設けられる。
【0016】
組電池1Aにおける電気素子30の接続について更に述べる。
電気素子30は、例えば、そのアキシャルリード31が、扁平な金属板(「平タブ」とも言う)60に接続される。電気素子30は、そのアキシャルリード31の接続された平タブ60が、所定の電池10の電極11又はそれに繋がる電極用タブ20と接続されることで、組電池1Aに搭載される。
【0017】
ここで、電気素子30のアキシャルリード31と平タブ60との接続には、半田溶接が用いられるほか、半田を使用できない用途の場合には、抵抗溶接が用いられる。
図2はアキシャルリードと平タブとの抵抗溶接の一例について説明する図である。
図2(A)には抵抗溶接されたアキシャルリード及び平タブの一例の要部平面図を模式的に示し、
図2(B)には
図2(A)のII-II断面図を模式的に示している。
【0018】
電気素子30のアキシャルリード31と平タブ60との抵抗溶接では、アキシャルリード31の、その先端31aを含む範囲を溶接エリアとすると、溶接位置がばらついた場合、溶接面積が変化してしまい、アキシャルリード31と平タブ60との間の電流密度が変化してしまうことが起こり得る。そのため、アキシャルリード31と平タブ60との抵抗溶接では、アキシャルリード31のその先端31aを避けた中途部31bを溶接エリアAR0とする手法が採用される。このようにアキシャルリード31の中途部31bを溶接エリアAR0とすることで、溶接位置がばらついた場合にも、溶接面積が変化して電流密度が変化してしまうことを抑えることが可能になる。
【0019】
アキシャルリード31の中途部31bを溶接エリアAR0として抵抗溶接を行うと、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、中途部31bに、平タブ60の主面60a側に凹むような潰れが生じる。例えば、
図2(B)に示すように、直径T0のアキシャルリード31と、平タブ60の主面60aとの抵抗溶接により、アキシャルリード31は、溶接エリアAR0の中途部31b、即ち、溶接部70において潰れる。このような抵抗溶接時の潰れにより、溶接エリアAR0のアキシャルリード31は、抵抗溶接されない本体部31cの直径T0よりも小さい厚さT1となる。尚、厚さT1は、平タブ60の主面60aと垂直な方向Sにおける、溶接エリアAR0のアキシャルリード31の厚さである。
【0020】
このように、アキシャルリード31の中途部31bを溶接エリアAR0として抵抗溶接を行うと、中途部31bに潰れが生じる。その一方、抵抗溶接時の応力により、
図2(B)に示すように、アキシャルリード31の先端31aが、平タブ60の主面60aから立ち上がることが起こり得る。立ち上がったアキシャルリード31の先端は、比較的鋭利な形状となっている。そのため、アキシャルリード31が抵抗溶接された平タブ60が組み込まれる組電池1Aにおいて、その立ち上がったアキシャルリード31の先端31a上に比較的柔軟な他部品が位置するようになると、その他部品の損傷、それに起因した電気的な不良を招く恐れがある。
【0021】
例えば、組電池1Aにおいて、立ち上がったアキシャルリード31の先端31a上に、芯線が被覆材で覆われたリード線40(
図1)が位置するようになると、アキシャルリード31の先端31aでリード線40の被覆材が損傷してしまい、その芯線がアキシャルリード31やそれが繋がる平タブ60と接触して、短絡が生じる恐れがある。
【0022】
尚、組電池1Aにおいて、このようなリード線40の被覆材の損傷を抑えるためには、リード線40が、立ち上がったアキシャルリード31の先端31a上を通らないように配置すればよいが、リード線40の位置を管理する工程が追加されることで、コストの増大を招く恐れがある。リード線40の位置を管理し、立ち上がったアキシャルリード31の先端31a上を避けてリード線40を配置する場合でも、組電池1Aの輸送時や使用時の振動によってリード線40が動く可能性があり、リード線40の被覆材の損傷、それによる芯線とアキシャルリード31との短絡が生じる恐れがある。また、立ち上がったアキシャルリード31の先端31a上に、絶縁板等の保護部品を取り付けることも考えられるが、保護部品の追加による工数、コストの増大を招く恐れがある。
【0023】
以上のような点に鑑み、ここでは、平タブ60の主面60aとの抵抗溶接に伴うアキシャルリード31の先端31aの立ち上がり、立ち上がったアキシャルリード31の先端31aによるリード線40等の他部品の損傷を抑えるため、以下に実施の形態として示すような手法を採用する。
【0024】
図3は実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体の形成方法の一例について説明する図である。
図3(A)にはアキシャルリードと平タブとの抵抗溶接工程の一例の要部断面図を模式的に示し、
図3(B)にはアキシャルリードのプレス工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0025】
アキシャルリード31と平タブ60との接続体の形成では、まず、
図3(A)に示すように、アキシャルリード31の中途部31bと、平タブ60の主面60aとの抵抗溶接が行われる。これにより、アキシャルリード31と平タブ60とが、溶接部70で溶接され、一体化される。
【0026】
アキシャルリード31の中途部31bと、平タブ60の主面60aとの抵抗溶接では、その際の応力により、
図3(A)に示すように、アキシャルリード31の先端31aが、平タブ60の主面60aから立ち上がる。このように立ち上がった先端31aを含むエリアが、
図3(B)に示すように、プレス金型80を用いてプレスされる。プレス金型80を用いたプレスにより、抵抗溶接時に立ち上がった先端31aが、平タブ60の主面60a側に押圧されて潰され、平坦化されるようになる(
図4~
図6等)。
【0027】
図4は実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体の一例について説明する図である。
図4(A)にはアキシャルリードと平タブとの接続体の一例の要部平面図を模式的に示し、
図4(B)には
図4(A)のIV-IV断面図を模式的に示している。
【0028】
上記のように、アキシャルリード31の中途部31bと、平タブ60の主面60aとの抵抗溶接(
図3(A))が行われ、その後、抵抗溶接によって立ち上がったアキシャルリード31の先端31aのプレス金型80によるプレス(
図3(B))が行われる。これにより、例えば、
図4(A)及び
図4(B)に示すような、アキシャルリード31と平タブ60との接続体が得られる。
【0029】
図4(A)及び
図4(B)には、アキシャルリード31の先端31aから、抵抗溶接の溶接エリアAR0(抵抗溶接により形成される溶接部70)の一部までのエリア(「プレスエリア」とも言う)AR2に対し、プレス金型80(
図3(B))によるプレスが行われた場合に得られる接続体を例示している。
【0030】
直径T0のアキシャルリード31と、平タブ60の主面60aとの抵抗溶接により、アキシャルリード31は、溶接エリアAR0(中途部31b及び溶接部70)において潰れ、溶接エリアAR0のアキシャルリード31の部位は、抵抗溶接されない本体部31cの直径T0よりも小さい厚さT1となる。そして、抵抗溶接によって立ち上がったアキシャルリード31の先端31aのプレスにより、アキシャルリード31は、プレスエリアAR2において潰れ、プレスエリアAR2のアキシャルリード31の部位32は、例えば、溶接エリアAR0のうちプレスされなかった溶接エリア(「非プレス溶接エリア」とも言う)AR1の部位33の厚さT1よりも小さい厚さT2となる。これにより、抵抗溶接によって生じた、アキシャルリード31の先端31aの立ち上がりが消失する。
【0031】
尚、厚さT1は、平タブ60の主面60aと垂直な方向Sにおける、溶接エリアAR0及び非プレス溶接エリアAR1のアキシャルリード31の部位33の厚さである。厚さT2は、平タブ60の主面60aと垂直な方向Sにおける、プレスエリアAR2のアキシャルリード31の部位32の厚さである。
【0032】
上記のようなプレスにより、アキシャルリード31の先端31aの立ち上がりを消失させることで、アキシャルリード31と平タブ60との接続体が搭載される組電池において、アキシャルリード31の先端31a上にリード線40(
図1)のような比較的柔軟な他部品が位置するようになったとしても、その他部品の損傷が効果的に抑えられるようになる。
【0033】
アキシャルリード31と平タブ60との、
図4(A)及び
図4(B)に示すような接続体において、アキシャルリード31の本体部31c側の、非プレス溶接エリアAR1のアキシャルリード31の部位33には、溶接部70が含まれる。その部位33から先端31aまでの、プレスエリアAR2のアキシャルリード31の部位32には、平タブ60の主面60aに抵抗溶接されて接続された溶接部70の一部と、抵抗溶接されなかった先端31aを含む非溶接部71とが含まれる。非溶接部71は、アキシャルリード31のプレスによって平タブ60の主面60aに押圧され、当該主面60aと接触、接続される。非プレス溶接エリアAR1及びプレスエリアAR2のアキシャルリード31、即ち、アキシャルリード31の本体部31cから先端31aまでに存在する部位33及び部位32は、平タブ60の主面60aと接続されるアキシャルリード31の「接続部」とも言える。
【0034】
上記
図4(A)及び
図4(B)の例では、アキシャルリード31の先端31aから抵抗溶接の溶接エリアAR0(抵抗溶接により形成される溶接部70)の一部までの範囲をプレスエリアAR2とし、プレスエリアAR2のアキシャルリード31の部位32を、非プレス溶接エリアAR1の部位33の厚さT1よりも小さい厚さT2となるようにした。抵抗溶接後のアキシャルリード31のプレス方法は、上記
図4(A)及び
図4(B)に示したような例には限定されない。
【0035】
図5及び
図6は実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体の変形例について説明する図である。
図5(A)にはアキシャルリードと平タブとの接続体の第1の変形例の要部断面図を模式的に示している。
図5(B)にはアキシャルリードと平タブとの接続体の第2の変形例の要部断面図を模式的に示している。
図6(A)にはアキシャルリードと平タブとの接続体の第3の変形例の要部断面図を模式的に示している。
図6(B)にはアキシャルリードと平タブとの接続体の第4の変形例の要部断面図を模式的に示している。
【0036】
抵抗溶接後、アキシャルリード31をプレスする際には、例えば、
図5(A)に示すように、アキシャルリード31の先端31aから溶接エリアAR0(溶接部70)の一部までの範囲をプレスエリアAR2とし、そのプレスエリアAR2の部位32を、非プレス溶接エリアAR1の部位33と同じ厚さとなるように、プレスしてもよい。即ち、プレスエリアAR2の部位32の厚さT2が、非プレス溶接エリアAR1の部位33の厚さT1と同じになるように、プレスしてもよい。
【0037】
このほか、抵抗溶接後、アキシャルリード31をプレスする際には、例えば、
図5(B)に示すように、アキシャルリード31の先端31aから溶接エリアAR0(溶接部70)の全部の範囲をプレスエリアAR2とし、そのプレスエリアAR2の部位32を、プレス前の溶接エリアAR0の部位の厚さT1よりも小さい厚さT2となるように、プレスしてもよい。
【0038】
例えば、
図5(A)及び
図5(B)に示すようなプレスにより、アキシャルリード31の先端31aの立ち上がりを消失させてもよい。
また、抵抗溶接後、アキシャルリード31をプレスする際には、例えば、
図6(A)に示すように、アキシャルリード31の先端31aから溶接エリアAR0(溶接部70)の手前までの範囲、即ち、溶接部70と非溶接部71のうち非溶接部71のみをプレスエリアAR2とし、そのプレスエリアAR2の部位32を、非プレス溶接エリアAR1の部位33の厚さT1よりも小さい厚さT2となるように、プレスしてもよい。
【0039】
このほか、抵抗溶接後、アキシャルリード31をプレスする際には、例えば、
図6(B)に示すように、アキシャルリード31の先端31aから溶接エリアAR0(溶接部70)の手前までの範囲、即ち、溶接部70と非溶接部71のうち非溶接部71のみをプレスエリアAR2とし、そのプレスエリアAR2の部位32を、非プレス溶接エリアAR1の部位33と同じ厚さとなるように、プレスしてもよい。即ち、プレスエリアAR2の部位32の厚さT2を、非プレス溶接エリアAR1の部位33の厚さT1と同じになるように、プレスしてもよい。
【0040】
例えば、
図6(A)及び
図6(B)に示すようなプレスによっても、アキシャルリード31の先端31aの立ち上がりを消失させることが可能である。
アキシャルリード31の、プレスエリアAR2の部位32の厚さT2が、非プレス溶接エリアAR1の部位33の厚さT1或いはプレス前の溶接エリアAR0の部位の厚さT1と、同じか又はそれよりも小さくなっていれば、先端31aの立ち上がりを消失させ、立ち上がった先端31aによる他部品の損傷を抑えることができる。但し、プレスエリアAR2の部位32の厚さT2を小さくし過ぎると、溶接部70の溶接強度が弱くなってしまう場合がある。一定以上の溶接強度を確保する観点では、アキシャルリード31の、プレスエリアAR2の部位32の厚さT2は、非プレス溶接エリアAR1の部位33の厚さT1或いはプレス前の溶接エリアAR0の部位の厚さT1の、50%~100%の範囲となるように設定することが望ましい。
【0041】
次に、電池の製造方法の一例について説明する。ここでは組電池を例に、その製造方法の一例について説明する。
図7及び
図8は実施の形態に係る組電池の製造方法の一例について説明する図である。
図7(A)には電気素子のアキシャルリードの平タブ上への配置工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図7(B)には電気素子のアキシャルリードと平タブとの抵抗溶接工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図7(C)には電気素子のアキシャルリードのプレス工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図8(A)には電気素子と平タブとの接続体の組電池への搭載工程の一例の要部斜視図を模式的に示している。
図8(B)には組電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。
【0042】
まず、
図7(A)に示すように、平タブ60の主面60a上の所定の位置に、組電池1に搭載される電気素子30(
図8)のアキシャルリード31(直径T0)が配置される。アキシャルリード31は、その軸線方向が平タブ60の主面60aと平行になるように、主面60a上の所定の位置に延在され、配置される。
【0043】
次いで、
図7(B)に示すように、上記
図3(A)の例に従い、アキシャルリード31の中途部31bと、平タブ60の主面60aとの抵抗溶接が行われる。これにより、アキシャルリード31と平タブ60とが、溶接部70で溶接され、一体化される。この抵抗溶接では、
図7(B)に示すように、アキシャルリード31の中途部31bが潰れ(厚さT1(<T0))、先端31aが平タブ60の主面60aから立ち上がった形状となる。
【0044】
次いで、
図7(C)に示すように、例えば、上記
図3(B)、
図4(A)及び
図4(B)の例に従い、立ち上がったアキシャルリード31の先端31aを含むエリア、即ち、非溶接部71を含むエリアがプレスされ、抵抗溶接時に立ち上がった先端31aが平タブ60の主面60a側に潰されて平坦化される(厚さT2(≦T1))。尚、抵抗溶接時に立ち上がったアキシャルリード31の先端31aを含むエリアのプレスは、上記
図5(A)、
図5(B)、
図6(A)又は
図6(B)の例に従って行われてもよい。
【0045】
例えば、
図7(A)~
図7(C)に示すような工程により、先端31aの立ち上がりを消失させたアキシャルリード31と平タブ60との接続体が得られる。
次いで、
図8(A)に示すように、組電池1の組み立てが行われる。
図8(A)には一例として、電気的に直列又は並列に接続される3個の電池10(素電池)を含む組電池1を図示している。組電池1における各電池10の電極11(正極又は負極)には、電極用タブ20が接続され、所定の電極用タブ20同士が接続される。組電池1の所定の電池10の電極11には、組電池1と外部負荷との接続に用いるリード線40が接続される。組電池1では、保護部品として、ダイオード、電流ヒューズ、PTC素子等の、アキシャルリード31を有する電気素子30が、所定の電極11間に接続される。また、組電池1には、所定の電池10間の短絡、所定の電池10と電気素子30との短絡を防ぐため、絶縁テープ等の被覆部材50が設けられる。
【0046】
組電池1に搭載される電気素子30は、予め、そのアキシャルリード31が上記
図7(A)~
図7(C)等で述べたような方法を用いて平タブ60に接続され、電気素子30と平タブ60との接続体として準備される。準備された電気素子30と平タブ60との接続体の、その平タブ60が、例えば、
図8(A)に示すように、所定の電池10の電極11に繋がる電極用タブ20と接続されることで、電気素子30が組電池1に搭載される。
【0047】
図8(B)は、電気素子30が搭載された組電池1の一例を示す図である。組電池1では、例えば、
図8(B)に点線で示すように、リード線40が変位し、リード線40が電気素子30と平タブ60との接続体と接触することが起こり得る。その場合、仮に、平タブ60と接続される電気素子30のアキシャルリード31の先端31aが、上記抵抗溶接により立ち上がった形状のままになっていると、リード線40の被覆材が損傷し、その芯線がアキシャルリード31や平タブ60と接触し、短絡が生じる恐れがある。
【0048】
これに対し、
図8(B)に示す組電池1では、上記抵抗溶接で立ち上がった電気素子30のアキシャルリード31の先端31aが、プレスにより潰され、平坦化されている。そのため、例えば、
図8(B)に点線で示すように、リード線40が変位し、リード線40が電気素子30と平タブ60との接続体と接触するとしても、リード線40の被覆材が損傷すること、被覆材が損傷して芯線がアキシャルリード31や平タブ60と接触すること、それによって短絡が生じることが、効果的に抑えられるようになる。
【0049】
次に、電気素子30のアキシャルリード31と平タブ60との接続体及びそれを搭載した組電池1に関する評価結果の一例について説明する。
(接続体の評価)
図9は実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体の評価の一例について説明する図である。
図9(A)は抵抗溶接後で先端をプレスする前のアキシャルリードと平タブとの接続体の他部品への影響を評価する方法を説明するための模式図である。
図9(B)は抵抗溶接後に更に先端をプレスしたアキシャルリードと平タブとの接続体の他部品への影響を評価する方法を説明するための模式図である。
【0050】
図9(A)及び
図9(B)に示すように、アキシャルリード31と平タブ60との接続体上に絶縁テープ90を配置し、絶縁テープ90側からプレス金型81でプレスし、アキシャルリード31の先端31aによる絶縁テープ90の突き破り強度を測定した。絶縁テープ90には、基材厚み0.18mmのアセテートテープを用いた。
【0051】
図9(A)に示すような、抵抗溶接後で先端31aをプレスする前のアキシャルリード31と平タブ60との接続体では、アキシャルリード31の先端31aがプレスされずに立ち上がった形状になっていることで、比較的低い約30Nのプレス金型81によるプレスで絶縁テープ90の突き破りが生じた。
【0052】
これに対し、
図9(B)に示すような、抵抗溶接後に更に先端31aをプレスしたアキシャルリード31と平タブ60との接続体では、アキシャルリード31の先端31aがプレスされて立ち上がりが消失された形状になっていることで、比較的高い約100Nのプレス金型81によるプレスまで絶縁テープ90の突き破りが生じなかった。
【0053】
このような評価結果から、平タブ60に中途部31bが抵抗溶接されたアキシャルリード31のその先端31aをプレスし、先端31aの立ち上がりを消失させることで、その上に配置される他部品の損傷が効果的に抑えられると言うことができる。
【0054】
(組電池の評価)
図10は実施の形態に係るアキシャルリードと平タブとの接続体を搭載した組電池の評価の一例について説明する図である。
図10には組電池の振動の影響を評価する方法を説明するための模式図を示している。
【0055】
抵抗溶接後で先端31aをプレスする前のアキシャルリード31と平タブ60との接続体を搭載した組電池1A、及び抵抗溶接後に更に先端31aをプレスしたアキシャルリード31と平タブ60との接続体を搭載した組電池1を、それぞれ3個ずつ用意し、各々のアキシャルリード31の先端31a上にリード線40を配置した。そして、
図10に示すようなX方向、Y方向及びZ方向にそれぞれ所定の条件で振動させ、リード線40の被覆材の破れに起因した短絡による電圧低下の有無を評価した。振動条件は、X方向を510Hz、Y方向を620Hz、Z方向を540Hz(各方向の共振点、10
7回×3方向)とした。
【0056】
抵抗溶接後で先端31aをプレスする前のアキシャルリード31と平タブ60との接続体を搭載した組電池1Aでは、3個中2個で電圧降下が生じた。これに対し、抵抗溶接後に更に先端31aをプレスしたアキシャルリード31と平タブ60との接続体を搭載した組電池1では、3個のいずれにも電圧降下は認められなかった。
【0057】
このような評価結果から、抵抗溶接後で先端31aをプレスする前のアキシャルリード31と平タブ60との接続体を搭載した組電池1Aでは、アキシャルリード31の先端31a上にリード線40が通っていると、その被覆材の破れ、それに起因した短絡が比較的生じ易い。一方、抵抗溶接後に更に先端31aをプレスしたアキシャルリード31と平タブ60との接続体を搭載した組電池1では、アキシャルリード31の先端31a上にリード線40が通っていても、その被覆材の破れ、それに起因した短絡が効果的に抑えられると言うことができる。
【0058】
尚、以上の説明では、抵抗溶接後に先端31aをプレスしたアキシャルリード31と平タブ60との接続体を搭載した組電池1として、3個の電池10を含むものを例示したが、電池10の個数はこれに限定されるものではない。2個又は4個以上の電池10を含む組電池に対し、抵抗溶接後に先端31aをプレスしたアキシャルリード31と平タブ60との接続体を搭載することが可能である。また、組電池を構成する電池群は、上記電池10のような円筒形のものに限らず、角形のものであってもよい。
【0059】
また、以上の説明では、アキシャルリード31を平タブ60に接続する場合を例示したが、アキシャルリード31は、平タブ60に限らず、電極用タブ20等、各種金属板に接続することができる。各種金属板に対し、上記のように、アキシャルリード31の中途部31bを抵抗溶接し、それによって生じる先端31aの立ち上がりを、プレスにより変形、消失させることで、先端31aに接触する柔軟なリード線40の被覆材等の他部品の損傷、それに起因した短絡等の電気的な不良を抑えることが可能である。
【0060】
また、以上の説明では、ダイオード、電流ヒューズ、PTC素子等の電気素子30のアキシャルリード31の中途部31bを平タブ60等の金属板に抵抗溶接し、それによって生じる先端31aの立ち上がりを、プレスにより変形、消失させる手法を例示した。このように抵抗溶接後にプレスを行う手法は、電気素子30のアキシャルリード31と平タブ60等の金属板との接続に限らず、各種リードと金属板との接続に適用することもできる。例えば、1個の電池或いは組電池の外部接続用端子として用いるリードを、当該1個の電池或いは組電池の電極(正極若しくは負極)に接続されるタブ等の金属板と接続するような場合にも、同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1,1A 組電池
10 電池
11 電極
20 電極用タブ
30 電気素子
31 アキシャルリード
31a 先端
31b 中途部
31c 本体部
32,33 部位
40 リード線
50 被覆部材
60 平タブ
60a 主面
70 溶接部
71 非溶接部
80,81 プレス金型
90 絶縁テープ
AR0 溶接エリア
AR1 非プレス溶接エリア
AR2 プレスエリア
T0 直径
T1,T2 厚さ