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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129445
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/20 20060101AFI20220830BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20220830BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20220830BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20220830BHJP
   G01W 1/12 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
G01V8/20 Q
G09G5/00 550C
G09G5/36 520P
G09G5/00 510A
G09G5/10 B
G01W1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028106
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】伊知川 禎一
【テーマコード(参考)】
2G105
5C182
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105CC01
2G105DD03
2G105EE02
2G105FF02
2G105FF12
2G105GG03
2G105HH02
2G105KK06
5C182AA02
5C182AA03
5C182AB15
5C182AB25
5C182AB26
5C182BA01
5C182BA06
5C182BA25
5C182BA27
5C182BA45
5C182BA65
5C182BA66
5C182CA01
5C182CA02
5C182CB44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】太陽光の照射による視認性の低下を抑制した表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の表示装置100は、ディスプレイ110と、赤外光を発光する複数の発光素子および複数の受光素子を含み、赤外光で照射された物体からの反射光を利用してディスプレイ110への物体の近接を検知する近接検知部120と、近接検知部120の受光素子で受光された反射光に含まれる太陽光の赤外光成分に応じてディスプレイ110の輝度等の表示制御を行う表示制御部130とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するディスプレイと、
前記ディスプレイの近傍に配置された複数の発光素子および複数の受光素子を含み、前記発光素子から出射された赤外光が物体で反射されたときの反射光を対応する受光素子で受光することにより前記ディスプレイへの物体の近接を検知する物体検知手段と、
前記複数の受光素子の各々で受光された反射光に含まれる太陽光の赤外光成分に応じて前記ディスプレイの表示制御を行う表示制御手段と、
を含む表示装置。
【請求項2】
前記物体検知手段は、前記受光素子から受光信号を受け取り、当該受光信号から太陽光の赤外光成分を除去する除去手段を含み、
前記表示制御手段は、前記除去手段で除去された太陽光の赤外光成分に応じた表示制御を行う、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記発光素子がパルス駆動されるとき、前記除去手段は、前記受光信号に含まれる直流成分を除去し、
前記表示制御手段は、前記直流成分に応じた表示制御を行う、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記複数の受光素子の位置に対応する前記ディスプレイの領域の表示制御を行う、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記複数の受光素子が前記ディスプレイの近傍に直線状に配置されるとき、前記表示制御手段は、前記受光素子の水平位置に対応する前記ディスプレイの領域の表示制御を行う、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の受光素子が前記ディスプレイの周囲に2次元的に配置されるとき、前記表示制御手段は、前記受光素子の2次元位置に対応する前記ディスプレイの領域の表示制御を行う、請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ディスプレイが、バックライトを含む液晶ディスプレイであるとき、前記表示制御手段は、前記バックライトの輝度を制御する、請求項1ないし6いずれか1つに記載の表示装置。
【請求項8】
前記バックライトは、エッジ型バックライトまたは直下型バックライトである、請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示制御手段は、前記ディスプレイに表示する画像データの輝度を制御する、請求項1ないし6いずれか1つに記載の表示装置。
【請求項10】
前記ディスプレイは、運転席前面の幅広のインスツルメンツパネル内に収容される、請求項1ないし7いずれか1つに記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、物体の近接の有無を検知する機能を備えた表示装置の表示制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザーの指等の近接を検知する近接検知装置を搭載した車載ディスプレイが実用化されている。近接検知装置は、例えば、赤外光を発光する赤外LEDとフォトダイオード等の受光素子とを用い、赤外光で照射した物体からの反射光を受光することで物体の近接を検知する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-74465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載ディスプレイでは、車の走行状況によって視聴環境が大きく変化する。例えば、夜間やトンネル内を走行する際、ディスプレイが明るすぎると眩しく感じられ、他方、ディスプレイに直射日光が当たるようなシーンでは輝度やコントラストが低くなり画面が見づらく感じられる。そこで、ディスプレイ周辺の明るさを感知するための環境光センサを車載ディスプレイに搭載し、このセンサの検知結果に基づきディスプレイの表示制御を行っている。
【0005】
図1(A)は、従来の表示装置の構成を示すブロック図である。車載ディスプレイ10は、例えば、運転席と助手席との間の中央部のセンターコンソール内またはその近傍に配置され、ディスプレイ10の上部には明るさを感知するための周囲光センサ20が設けられる。表示制御部30は、周囲光センサ20の検出結果に基づきディスプレイ10の表示を制御する。
【0006】
従来の表示装置における表示制御方法について図1(B)を参照して説明する。
(1)明るさに応じて画像データの輝度レベルを調整する。
表示制御部30は、ディスプレイ10の周囲が明るい場合には、画像処理部32により輝度またはコントラストが大きくなるように画像データを処理し、反対に暗い場合には、輝度またはコントラストが小さくなるように画像データを処理する。
【0007】
(2)明るさに応じて昼モードまたは夜モードを切替える。
表示制御部30は、昼モードと夜モードのカラーセットを予め備えており、ディスプレイ10の周囲が明るい場合には、画像処理部32により昼モードを選択し、暗い場合には夜モードを選択し、選択したカラーセットに基づき画像データを処理する。例えば、昼モードでは、画面の背景が明るく表示され、夜モードでは、画面の背景が暗く表示される。
【0008】
(3)明るさに応じて液晶ディスプレイのバックライトの輝度を調整する。
表示制御部30は、周囲が明るい場合には、駆動部34を介して輝度が大きくなるようにバックライトを駆動し、暗い場合には、輝度が小さくなるようにバックライトを駆動する。
【0009】
近年、車載ディスプレイは、ナビゲーションや音楽再生だけでなく、メーター類やミラー表示にも使用されつつある。例えば、図2に示すように、運転席前面の横長のインスツルメンツパネル内に幅広の大画面ディスプレイ40が配置されるケースも増えてきている。このような幅広の大画面ディスプレイ40では、画面の一部に直射日光が照射されたとき、視認性が劣化したり、あるいは視認性が改善されない状況が発生する。
【0010】
図3(A)に示すように、センサ20が直射日光を受けている場合には、ディスプレイ40の画面全体の輝度/コントラストが大きくなるような表示制御が行われ、その結果、図3(B)に示すように、日光が照射された領域では視認性が改善するが、日光が照射されていない領域では逆に見づらくなってしまう。他方、図3(C)に示すように、センサ20と異なる領域で直射日光を受けている場合には、センサ20により明るさが検知されないので、ディスプレイ40の表示制御が行われない。このため、図3(D)に示すように、日光が照射された領域の見づらさは改善されない。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決し、太陽光の照射による視認性の低下を抑制した表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る表示装置は、画像を表示するディスプレイと、前記ディスプレイの近傍に配置された複数の発光素子および複数の受光素子を含み、前記発光素子から出射された赤外光が物体で反射されたときの反射光を対応する受光素子で受光することにより前記ディスプレイへの物体の近接を検知する物体検知手段と、前記複数の受光素子の各々で受光された反射光に含まれる太陽光の赤外光成分に応じて前記ディスプレイの表示制御を行う表示制御手段とを含む。
【0013】
ある実施態様では、前記物体検知手段は、前記受光素子から受光信号を受け取り、当該受光信号から太陽光の赤外光成分を除去する除去手段を含み、前記表示制御手段は、前記除去手段で除去された太陽光の赤外光成分に応じた表示制御を行う。ある実施態様では、前記発光素子がパルス駆動されるとき、前記除去手段は、前記受光信号に含まれる直流成分を除去し、前記表示制御手段は、前記直流成分に応じた表示制御を行う。ある実施態様では、前記表示制御手段は、前記複数の受光素子の位置に対応する前記ディスプレイの領域の表示制御を行う。ある実施態様では、前記複数の受光素子が前記ディスプレイの近傍に直線状に配置されるとき、前記表示制御手段は、前記受光素子の水平位置に対応する前記ディスプレイの領域の表示制御を行う。ある実施態様では、前記複数の受光素子が前記ディスプレイの周囲に2次元的に配置されるとき、前記表示制御手段は、前記受光素子の2次元位置に対応する前記ディスプレイの領域の表示制御を行う。ある実施態様では、前記ディスプレイが、バックライトを含む液晶ディスプレイであるとき、前記表示制御手段は、前記バックライトの輝度を制御する。ある実施態様では、前記バックライトは、エッジ型バックライトまたは直下型バックライトである。ある実施態様では、前記表示制御手段は、前記ディスプレイに表示する画像データの輝度を制御する。ある実施態様では、前記ディスプレイは、運転席前面の幅広のインスツルメンツパネル内に収容される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、物体検知手段の検知結果を利用して太陽光の照射に応じてディスプレイの表示制御を行うことで、部品等のコストアップを伴うことなく太陽光の照射を検出することができ、ディスプレイ上では、太陽光の照射が検出された領域のみの視認性の向上を図ることができる。特に、幅広の大画面ディスプレイにおいて好適な表示制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)は、従来の表示装置の全体構成を示すブロック図、図1(B)は、従来の表示装置の表示制御方法の例を説明する図である。
図2】幅広の大画面ディスプレイが車両に搭載された例を示す図である。
図3図3(A)、(B)は、日光照射が検知されたときのディスプレイの視認性が劣化する例を説明する図、図3(C)、(D)は、日光照射が検知されないときのディスプレイの視認性が改善されない例を説明する図である。
図4図4(A)は、本発明の実施例に係る表示装置の構成を示すブロック図、図4(B)は、ディスプレイの底部に近接検知部が配置された例を示す図である。
図5】本発明の実施例に係る近接検知部の内部構成を示す図である。
図6】本発明の実施例に係る近接検知部の発光素子と受光素子との駆動例を示すタイミングチャートである。
図7】本発明の実施例に係る近接検知部の発光素子と受光素子との検知例を説明する図である。
図8図8(A)は、太陽光が照射されているときの受光信号の波形例、図8(B)は、太陽光が照射されていないときの受光信号の波形例である。
図9図9(A)は、太陽光が照射されているときの検知信号の波形例、図9(B)は、太陽光が照射されていないときの検知信号の波形例である。
図10】本発明の実施例に係る表示制御部の内部構成を示すブロック図である。
図11図11(A)は、各受光素子の太陽光の検知レベルの例示であり、図11(B)は、図11(A)の検知レベルが得られたときの太陽光が照射された範囲を推定する例である。
図12】本発明の実施例によるバックライトの輝度制御の例を説明する図である。
図13】本発明の実施例による画像データの処理例を説明する図である。
図14】本発明の実施例に係る表示装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る表示装置の実施形態について説明する。ある実施態様では、表示装置は、車両のインスツルメンツパネル内に収容された幅広の大画面ディスプレイを有し、ディスプレイには、メーター類の画像、ナビゲーション画像、音楽再生用の画像、ミラー画像(カメラで撮像された車両の後方や側方の画像)などが表示される。ある実施態様では、表示装置は、ディスプレイへの操作対象(例えば、ユーザーの手や指など)の近接を検知する近接検知機能を備える。近接検知機能は、ユーザーのジェスチャ入力に対応することが可能であるとともに、タッチパネル式ディスプレイとの協働も可能である。
【実施例0017】
次に、本発明の実施例に係る表示装置ついて図面を参照して詳細に説明する。図4は、本発明の実施例に係る表示装置の構成を示すブロック図である。本実施例の表示装置100は、ディスプレイ110、近接検知部120および表示制御部130を含んで構成される。
【0018】
ディスプレイ110は特に限定されないが、例えば、バックライトを伴う液晶ディスプレイや、有機EL等に自発光ディスプレイであり、ユーザーからの入力を受け付けるタッチパネルを搭載するものであってもよい。また、ディスプレイ110のサイズや形状は任意であるが、例えば、車両フロントの横長のインスツルメンツパネル内に収容された幅広の大画面ディスプレイである。表示制御部130は、図示しない制御部等から画像データを受け取り、当該画像データに基づきディスプレイ110を駆動するための駆動回路を含み、ディスプレイに画像を表示させる。ディスプレイ110に表示される画像は特に限定されないが、例えば、車両のメーター類、ナビゲーション、音楽再生メニュー、カメラで撮像された車両周辺画像などが表示される。
【0019】
近接検知部120は、ディスプレイ110への操作対象U(例えば、ユーザーの指や手など)の近接を検知する。近接検知部120は、図4(B)に示すように、ディスプレイ110の底部に直線状に配置された複数の発光素子LED1~LEDC(ここでは、12個の発光素子を例示)と複数の受光素子PD1~PD6(ここでは、6個の受光素子を例示)を含み、一対の発光素子の間に1つの受光素子が配置される(なお、以下の説明で発光素子や受光素子を総称するときは、発光素子LED、受光素子PDという)。発光素子LEDは、赤外光を発光する発光ダイオードやレーザーダイオードなどであり、受光素子PDは、赤外光を受光するフォトダイオードやフォトトランジスタなどである。
【0020】
発光素子LEDは、ディスプレイ110の前面に赤外光を照射し、ディスプレイ110の前面にユーザーの操作対象Uが接近すると、発光素子LEDからの赤外光が操作対象Uで反射され、その反射光が受光素子PDで受光され、操作対象Uの近接が検知される。図の例は、発光素子LED4の赤外光が操作対象Uを照射し、その反射光が受光素子PD2で受光され、これにより操作対象Uがディスプレイ110の受光素子PD2の近傍で接近したことが検知されたことを示している。
【0021】
近接検知部120の検知結果は、ユーザー入力として図示しない制御部へ提供され、制御部は、ディスプレイ110への操作対象Uの近接の検知に応答して、例えば、ユーザーが次に行うタッチ操作に対応する画像をディスプレイ110に表示させるための画像データ(例えば、メニュー画面や次のページ画面など)を表示制御部130へ提供する。
【0022】
図5(A)に近接検知部120の内部構成を示す。近接検知部120は、発光素子LEDの駆動を制御する発光制御部122と、受光素子PDの受光(測定)を制御し、受光信号S1を出力する受光制御部124と、受光制御部124から出力された受光信号S1を受け取り、受光信号S1に含まれる太陽光の赤外光成分を除去する太陽光除去部126と、太陽光除去部126から出力される検知信号S2を受け取り、検知信号S2に基づき操作対象の近接の有無を判定する検知判定部128とを含んで構成される。
【0023】
図6に、発光素子LEDおよび受光素子PDの駆動タイミングを示す。発光制御部122は、発光素子LED1、LED2、・・・、LEDB、LEDCの発光が重複しないように、時刻t1、t2、・・・t11、t12のタイミングで発光素子LEDを順次駆動する。受光制御部124は、発光素子LED1、LED2の発光期間と同期するタイミングでそれらの反射光を受光できるように受光素子PD1の駆動を制御し、発光素子LED3、LED4の発光期間と同期するタイミングでそれらの反射光を受光できるように受光素子PD2の駆動を制御し、受光素子PD3~PD6についても同様に制御する。つまり、発光素子LED1を発光させたときの反射光が受光素子PD1によって測定され(LED1→PD1)、発光素子LED2を発光させたときの反射光が受光素子PD1によって測定され(LED2→PD1)、以後同様に、発光素子LEDBを発光させたときの反射光が受光素子PD6によって測定され(LEDB→PD6)、発光素子LEDCを発光させたときの反射光が受光素子PD6によって測定される(LEDC→PD6)。近接検知部120は、こうした6回の測定を1サイクルとして動作する。
【0024】
発光素子LEDと受光素子PDとの間隔をほぼ等しくなるように配置した場合、画面の前方で操作対象Uを水平に移動させたときの1サイクル中の受光素子PD1~PD6の検知レベルは、図7に示すように概ね同等なものとなる。このような近接検知機能を有するディスプレイでは、各々の発光素子LEDを発光した際に検知される反射光の分布を基に、操作対象Uの水平位置が推定される。
【0025】
このような赤外光を利用した近接検知方式では、太陽光が外乱要因となる。すなわち、太陽光には可視光成分だけでなく赤外光成分も含まれ、しかも赤外光成分が強いため、赤外構成分は、近接検知部120において誤検知を引き起こす要因となる。これを避けるため、近接検知部120の太陽光除去部126は、太陽光の赤外光成分の除去を行っている。除去する方法の一例として、発光素子LEDをパルス駆動(例えば、数KHz以上)し、受光制御部124の受光信号S1からこのパルス成分のみを抽出することで、ほぼ直流成分に近い太陽光の赤外光成分を除去している。
【0026】
図8(A)は、太陽光の照射があるときの受光信号S1の波形、図8(B)は、太陽光の照射がないときの受光素子S1の波形を例示する。発光素子LEDは、太陽光による外乱を排除する目的で、数KHz以上の周波数でパルス駆動される。このため、受光素子PDによって操作対象からの反射光と太陽光とが受光された場合、受光信号S1には、図8(A)に示すように、発光素子LEDによる赤外光のパルス成分と太陽光の赤外光成分である直流成分とが重畳される。もし、太陽光が照射されなければ、受光信号S1は、図8(B)に示すように殆ど直流成分を含まないパルス成分になる。
【0027】
太陽光除去部126は、受光信号S1に対して太陽光の赤外光成分である直流成分を除去する処理を行うが、この処理は、例えば、アナログ的にはローパスフィルタを用いて行うものであってもよいし、デジタル的には、発光素子LEDがオンするときとオフするときの測定値の差を取るような処理でよい。図9(A)、(B)は、太陽光除去部126により受光信号S1から太陽光の赤外光成分を除去した後の検知信号S2の波形の例示であり、太陽光の影響を排除された検知信号S2を生成される。日光は、概ね直流成分であり、街路樹の木洩れ日の中を走行するような場合でも、その変化は、数~数10Hzなので、上記の動作処理にて太陽光は十分に除去される。こうして、検知判定部128は、パルス駆動された発光素子LEDの反射光だけを抽出した検知信号S2を基にして操作対象Uの近接の有無を判定することで、太陽光に影響されない検知が可能になる。
【0028】
図10に、表示制御部130の内部構成を示す。表示制御部130は、画像データに基づきディスプレイ110を駆動する駆動回路等に加えて、近接検知部120による太陽光除去部126で除去された信号を利用してディスプレイへの太陽光の照射を検出する太陽光検出部132と、太陽光検出部132の検出結果に基づきディスプレイ110の輝度/コントラストを制御する輝度制御部134とを含んで構成される。表示制御部130は、ハードウェアおよび/またはソフトウエアを用いて実施される。
【0029】
太陽光検出部132は、近接検知部120の各受光素子PD1~PD6の受光信号S1から除去された直流成分の信号を受け取り、これらの直流成分の信号から各受光素子PD1~PD6による太陽光の赤外光成分の受光レベルを検出する。図8(A)の受光信号S1と、図9(A)の検知信号S2の直流成分の差が太陽光の赤外光成分であり、太陽光検出部132は、この直流成分に基づき太陽光の照射を検出する。
【0030】
太陽光検出部132により検出された直流成分は、輝度制御部134へ提供される。輝度制御部134は、各受光素子PDで受光された受光信号S1の直流成分、すなわち太陽光の受光レベルに応じた輝度制御を行う。あるいは、輝度制御部134は、各受光素子PDの太陽光の受光レベルと閾値とを比較し、受光レベルが閾値以上の受光素子に太陽光が照射されたと判定し、当該受光素子に対応する領域において輝度制御を行うようにしてもよい。図11(A)は、各受光素子PDの太陽光の受光レベルと閾値Thとを比較し、その結果、受光素子PD3~PD6が太陽光を受光していると判定した例を示している。
【0031】
また、輝度制御部134は、受光素子PDが太陽光を受光していると判定した場合、当該受光素子に基づき太陽光が照射されている領域を決定する。太陽光の照射領域をどのように決定するかは特に限定されないが、例えば、各受光素子PDとディスプレイ上の領域との関係を予め規定し、当該関係を参照して太陽光の照射領域を決定するようにしてもよい。例えば、ディスプレイ110のX方向の長さがLx、Y方向の長さがLy、各受光素子PD1~PD6のX座標をX1~X6、受光素子PDの間隔をDとしたとき、次のような対応関係を規定することができる。
受光素子PD1:(0からX1+D/2、Ly)で示す矩形領域、
受光素子PD2には、(X2-D/2~X2+D/2、Ly)で示す矩形範囲、
受光素子PD3には、(X3-D/2~X3+D/2、Ly)で示す矩形範囲、
受光素子PD4には、(X4-D/2~X4+D/2、Ly)で示す矩形範囲、
受光素子PD5には、(X5-D/2~X5+D/2、Ly)で示す矩形範囲、
受光素子PD6には、(X6-D/2~Lx、Ly)で示す矩形範囲。
【0032】
図11(B)は、図11(A)に示す受光素子PD3~PD6が太陽光を受光していると判定されたときの太陽光の照射領域Mを示している。この場合、輝度制御部134は、受光素子PD3、PD4、PD5、PD6の受光信号S1に含まれる直流成分の大きさに応じた輝度制御を行う。
【0033】
次に、輝度制御部134の具体的な表示制御について説明する。ある態様では、輝度制御部134は、液晶ディスプレイのバックライトを駆動するバックライト駆動回路を含み、当該バックライト駆動回路を介してバックライトの輝度を制御する。図12(A)は、バックライトの輝度(縦軸)とバックライトのLEDの水平位置(横軸)との関係を示すグラフであり、輝度制御部134は、受光素子PDの太陽光の受光レベル(直流成分の大きさ)に応じて、決定された太陽光の照射領域に対応するバックライトのLEDの輝度を制御する。
【0034】
図12(B)は、上下にLEDを配置したエッジ型バックライト液晶ディスプレイ(LCD)の平面図を模式的に示している。エッジ型バックライトのLCDは、液晶パネル112の裏面側の上下のエッジにそれぞれ直線状に配置された複数のLED114を有する。輝度制御部134は、図12(A)のグラフに示すように、液晶パネル112の水平位置の右側に向けてバックライトの輝度が大きくなうようにLED114を制御する。これにより、太陽光が照射された領域のバックライト輝度が上がり、太陽光の照射によって低下した画像の視認性を改善することができる。
【0035】
図12(C)は、直下型バックライトLCDの平面図を模式的に示している。直下型バックライトのLCDは、液晶パネル112の裏面側に2次元的に配置された複数のLED114を有する。輝度制御部134は、図12(A)に示すように、LEDの水平位置に応じた輝度制御を行うことで、太陽光が照射されている部分のバックライト輝度を上げ、太陽光の照射よって低下した視認性を改善することができる。
【0036】
なお、直下型バックライトLCDでは、もともと画像によってバックライト輝度を制御するローカルディミング機能を有するものがあるが、その場合でも、ローカルディミング制御されたLED輝度に太陽光照射の補正分を合成することで、ローカルディミングによる画質改善と、太陽光照射の補償を両立させることができる。
【0037】
上記の制御方法は、バックライトの輝度を制御する例を説明したが、この方法は、液晶ディスプレイにも有機EL等の自発光ディスプレイにも有効となり、ディスプレイ110に表示すべき画像データの輝度を補正するようにしてもよい。
【0038】
図13(A)は、マスク信号(縦軸)とディスプレイの水平位置(横軸)との関係を示すグラフ、図13(B)は、輝度制御部134による画像データの補償回路の構成を示す図である。なお、マスク信号は、例えば、0<マスク信号<1の範囲の係数である。
【0039】
画像データの輝度/コントラストを制御して視認性を改善する処理は、図1(B)に示す画像処理部32と同様であるが、本実施例の輝度制御部134はさらに、図13(B)に示すように、画像データについての輝度/コントラストの強調信号Qを、図11に示すような受光素子PDによる太陽光の受光レベルに応じたマスク信号Cで乗算する乗算器136と、乗算器136からの補正された強度信号Q’と画像データとを合成する合成器138とを含んでいる。その結果、図13(B)に示すように、受光素子PD3より右側の領域において画像の輝度/コントラストが大きくなるような補正が行われることで、太陽光の照射が検知された領域の画像の視認性が改善される。
【0040】
次に、本実施例の変形例について図14を参照して説明する。上記した実施例では、ディスプレイ110の底部に発光素子LEDと受光素子PDを直線状に配置し、ディスプレイ110の水平方向の太陽光の照射の分布を検知するようにしたが、発光素子LEDおよび受光素子PDを図14(A)に示すようにディスプレイ110の周辺の全体に配置し、ディスプレイ110の2次元的な領域において太陽光の照射の分布を検知するようにしてもよい(なお、図中、発光素子は省略されている)。
【0041】
太陽光検出部132は、2次元的に配置された各受光素子PDの受光信号S1に含まれる直流成分に基づき太陽光を受光している受光素子PDを識別し、その識別結果に基づき太陽光の照射領域を決定する。図14(B)は、太陽光の照射領域Mの例示であり、太陽光検出部132は、受光素子PD07、PD08、PD18、PD19、PD20によって太陽光が検知されたとき、これらの受光素子の2次元的な位置に基づき照射領域Mを決定する。
【0042】
輝度制御部134は、決定された照射領域Mにおいて、受光素子PD07、PD08、PD18、PD19、PD20の太陽光の受光レベルに応じた輝度制御を行う。図14(C)は、直下型バックライトLCDの輝度制御の例であり、本変形例では、上記した実施例よりも限定した範囲でバックライトの輝度を制御することで、不要な部分でのバックライトの輝度制御による視認性の劣化を回避することができる。輝度制御部134は、バックライトの輝度制御の他にも、上記した実施例と同様に、輝度/コントラストの強調信号をマスクするマスク信号を2次元で制御することで(図13を参照)、限定した範囲で画像データに信号処理を施すことができ、不要な部分への画像処理による視認性の劣化を回避することができる。
【0043】
このように本実施例によれば、既存の赤外線近接検知システムを利用することで部品のコストアップを伴うことなくディスプレイへの太陽光の照射を検知することができ、ディスプレイ上で太陽光の照射を検知した領域のみの視認性の向上を図るという、大画面ディスプレイに好適な表示制御を実現することができる。
【0044】
なお、上記実施例では、近接検知部120が2つの発光素子LEDから出射された赤外光の反射光を1つの受光素子で検知する例(図4)を示したが、これは一例であり、必ずしもこのような検知方法に限定されない。例えば、1つの発光素子から出射された赤外光の反射光を1つの受光素子で検知するようにしてもよい。また、発光素子と受光素子の配置は、上記実施例に限定されない。例えば、ディスプレイの上部側に発光素子を配置し、ディスプレイの下部側に受光素子を配置するようにしてもよいし、その反対に上部側に受光素子を配置し下部側に発光素子を配置するようにしてもよい。
【0045】
さらに上記実施例では、受光素子による太陽光の受光レベルに応じてアナログ的な大きさでバックライトの輝度を制御するようにしたが、輝度の制御方法は、これに限らず、受光素子による太陽光の受光レベルに応じてデジタル的に(例えば、2段階または多段階)のレベルで輝度を制御するようにしてもよい。上記実施例では、図4(B)のような幅広の大画面ディスプレイを示したが、これは一例であり、本実施例の表示装置は、他の形状またはサイズのディスプレイであってもよい。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
100:表示装置 110:ディスプレイ
120:近接検知部 122:発光制御部
124:受光制御部 126:太陽光除去部
128:検知判定部 130:表示制御部
132:太陽光検出部 134:輝度制御部
136:乗算器 138:合成器
LED:発光素子
PD:受光素子
M:太陽光の照射領域
S1:受光信号
S2:検知信号
C:マスク信号
Q:輝度/コントラストの強度信号
図1
図2
図3
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図12
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