(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129468
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】単管把持構造、単管クランプ及び踏板
(51)【国際特許分類】
E04G 7/16 20060101AFI20220830BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
E04G7/16 A
F16B7/04 301H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028136
(22)【出願日】2021-02-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】513083222
【氏名又は名称】Rtb株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100189876
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 将晴
(72)【発明者】
【氏名】寺西 良平
【テーマコード(参考)】
3J039
【Fターム(参考)】
3J039AA11
3J039BB01
3J039CA03
(57)【要約】
【課題】
単管を任意の向きに向けることができ、単管の向きを変更可能に仮固定することも、単管の向きが変わらないように本固定することもできる単管把持構造、単管クランプ、踏板を提供する。
【解決手段】 単管を把持する把持体において、把持体をなす把持部材に回動可能に挿通された回動軸部が有する保持部を単管に当接させて、把持体を僅かに絞め込んだ状態では、単管が保持部を介して回動軸部を押圧し、回動軸部の押圧部が把持部材を押圧して、単管の向きを微調整可能に仮固定させ、把持体を絞め込んだ状態では、単管が回動軸部を介して把持部材を押圧するだけでなく、把持部材が単管に広く接するように反って、回動軸部の回動ができない本固定させる構造とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設用の単管を把持する単管把持構造であって、
第1の把持部材と、第2の把持部材と、回動軸部と、絞込手段とを含み、
第1の把持部材と第2の把持部材の各々が、単管を把持する湾曲部を備え、
第1の把持部材と第2の把持部材の一方の端部が前記湾曲部を近接可能に軸支させ、第1の把持部材と第2の把持部材の他方の端部が絞込手段を備え、
前記回動軸部が、第1の把持部材を押圧させる押圧部と、第1の把持部材の湾曲部よりも単管把持空間に突出された保持部とを有し、第1の把持部材に回動可能に軸支され、
近接させた前記湾曲面に前記単管を抱持させてから前記絞込手段を絞めた状態で、前記単管が、第2の把持部材の湾曲部に広く接し、且つ、少なくとも前記保持部に接し、前記押圧部が第1の把持部材を押圧した状態で、把持した前記単管の向きが微調整可能に仮固定され、
前記絞込手段を絞め込んだ状態で、前記単管が、第2の把持部材の湾曲部に広く接し、且つ、前記保持部に接すると共に第1の把持部材の湾曲部に広く接し、前記押圧部が第1の把持部材を押圧した状態で、把持した前記単管の向きが変更不能に本固定される、
ことを特徴とする単管把持構造。
【請求項2】
前記保持部が、座金体からなり、
前記座金体が、前記回動軸部に装着される、
ことを特徴とする請求項1に記載の単管把持構造。
【請求項3】
前記保持部が、前記単管に接する端面に、中心から放射状に十文字をなす方向に角度表示手段を有し、
前記角度表示手段が、前記単管が乗り越え可能とされる筋体である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単管把持構造。
【請求項4】
一対の把持体からなり、並んだ単管を交差させて把持させる単管クランプであって、
各々の把持体を回動させる回動軸部が、一方の把持体の把持部材に固着され、
他方の把持体が、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の単管把持構造を有し、
他方の把持体が、前記絞込手段の絞め込みに応じて、一方の把持体に対して任意の角度で仮固定又は本固定可能である、
ことを特徴とする単管クランプ。
【請求項5】
一対の把持体からなり、並んだ単管を交差させて把持させる単管クランプであって、
各々の把持体を回動させる回動軸部が、各々の把持体の把持部材に遊嵌され、
各々の把持体が、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の単管把持構造を有し、
本固定させた一方の把持体に対して、他方の把持体が、前記絞込手段の絞め込みに応じて、一方の把持体に対して任意の角度で仮固定又は本固定可能である、
ことを特徴とする単管クランプ。
【請求項6】
仮設用の階段をなす、単管に側面を固定される踏板であって、
前記踏板の側端面に、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の単管把持構造を有している、
ことを特徴とする踏板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設用の単管を把持する単管把持構造、単管クランプ及び踏板に関する。具体的には、単管と称されている仮設用の円断面形状の鋼管を把持する単管把持構造であって、単管を任意の向きに向けることができ、単管を把持する把持部材を絞め込む絞込手段の絞め込み程度によって、単管の向きを変更可能に仮固定することも、単管の向きが変わらないように固定(以下、本固定という。)することもできる単管把持構造、単管クランプ及び踏板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、単管が、垂直部材、水平部材又は斜め部材として使用され、単管クランプにより連結されて、工事用の仮設足場等が構築されている。単管クランプは、背面同士が連結された一対の把持体からなり、各々の把持体が単管を把持し、並んだ単管が連結されている。
【0003】
把持された2本の単管の交差角度が直交となる単管クランプは直交クランプと称され、把持された2本の単管の交差角度が固定されていない単管クランプが自在クランプと称されている。自在クランプで把持させた2本の単管を所定の角度で交差させるためには、2本の単管に斜め部材をなす単管を連結させ、所定の角度がかわらないように固定させている。
【0004】
特許文献1には、直交クランプ、自在クランプが混在することにより、現場における組立作業や単管クランプの保管管理が煩雑となることを解消させるために、自在クランプでありながら、直交クランプとしても、2本の単管を平行にさせる平行クランプとしても、使い分けることができる単管クランプの技術が開示されている。
【0005】
この技術によれば、把持体を連結させる連結棒側面のカム面9に、把持体内部に設けたカムストッパー7を当接させることにより、一種類だけの自在クランプでも、把持させる2本の単管の向きを直交又は平行に連結させることができる。しかし、この技術によれば2本の単管を交差させる角度が限られ、その構造が複雑になると共に、カム面とカムストッパーが当接しない中間角度で固定することができないという課題があった。
【0006】
特許文献2には、がたつきをなくし優れた強度で単管を保持することを課題とした単管クランプの技術が開示されている。この技術によれば、単管クランプをなす一対の把持体の基部に筒体9を挿通し、一方の把持体の基部には筒体を溶接固定し、他方の把持体の基部には係合リング12を溶接固定し、他方の把持体を挿通した筒体の端面には環状係合部材10を溶接させている。
【0007】
この技術によれば、係合リング12の凸部と環状係合部材10の凹部が係合する位置で、単管クランプに抱持させた単管の向きが決定され、2本の単管の向きを、直交又は平行以外の前記係合する位置に応じた向きとすることができる。しかし、係合リング12と環状係合部材10とが係合する角度以外の任意の角度で単管を交差させることができないだけでなく、単管クランプの構造が複雑で、製造も困難になるという課題があった。
【0008】
これらの技術以外にも、単管クランプの回転を規制させる嵌合部材12を、把持体内部に傾動させるように備えさせた実開平05-52094号に記載の技術、単管クランプの回転を規制させる回転規制部材31を、把持体外部に沿って進退させるように備えさせた特開平11-107524号に記載の技術等があった。これらの技術は、把持体の内外に追加部材を備えさせて、把持させる2本の単管が交差する向きを限定することにより、自在クランプを直交クランプとしても平行クランプとしても使用できるようにさせた技術であった。
【0009】
しかし、これらの技術は、交差する向きを任意の向きで固定することまではできず、部材数が多くなり、製造が煩雑になるだけでなく、屋外において風雨に長期間暴露されることにより、可動部材が滑らかに動かなくなる可能性があった。
【0010】
特許文献5には、単管クランプを連結させる連結具をパイプ移動阻止空間に臨ませることにより、2本のパイプが相互に回動するのを阻止させ、パイプを固定した状態から移動させないとする技術が開示されている。その例として、パイプに接する連結具の面をU字形状とした例、表裏面に複数の溝を刻設した円盤を固定部の開口部に嵌め込んで溶接して固定させる例が示されている。
【0011】
しかし、この技術によれば、連結具により、パイプ相互が回動することを阻止されてしまうため、一人の作業員が、パイプの一方の端部を仮固定しておき、その作業員が他方の端部に移動し、他方の端部においてパイプ相互の交差角度を微調整することができない。更に、円盤に放射方向に複数の溝が設けられているため、刻設された溝が咬合される溝と溝の中間の任意の交差角度には固定できないという課題があった。
【0012】
仮設工事の作業員が減少する傾向にあり、仮設足場等の構築は、少ない作業員により、簡単かつ安全に構築できることが求められている。例えば、地山の法面に沿って仮設階段用の踏板を取り付ける単管を設置する場合や、落下防止用ロープを引っ掛ける単管を鉄骨梁に設置する場合等には、現地の状況に応じて、一人の作業員だけでも単管が設置できるとよい。
【0013】
しかし、従来は、地山の法面の勾配が一定でないため、自在クランプの取付け位置と交差角度を調整しながら、地山の上方と下方の夫々の位置で複数の作業員が、地山の法面に沿って単管を設置していた。更に、仮設階段の場合には、踏板が水平になるように、仮設階段をなす踏板の側部に備えられた単管クランプの向きを予め角度調整しておいてから単管に装着させる必要があり、仮設階段を構築するにも手間がかかっていた。
【0014】
また、作業員の落下防止仮設をなす単管を鉄骨梁に設置する場合は、高所かつ狭所における危険作業であるため、簡単かつ安全に作業できる単管クランプが求められていた。更に、仮設足場を解体する際には、従来の自在クランプは、単管の両端を支えていた単管クランプの一方を外すと、支えていた単管が垂れ落ちて事故が発生しやすいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実開平03-035148号公報
【特許文献2】特開平04-306355号公報
【特許文献3】実開平05-52094号公報
【特許文献4】特開平11-107524号公報
【特許文献5】特開2011-26816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで本発明は、単管クランプの構造を複雑としなくても、一人の作業員により、単管の交差角度を限定させず、仮固定の状態とすることができ、仮固定の状態では向きを微調整することができ、本固定の状態では固定がゆるむことがない単管把持構造を提供することを課題とした。更に、この単管把持構造を有し、簡単かつ安全に作業できる単管クランプ及び踏板を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、単管を把持する把持体において、把持体をなす把持部材に回動可能に挿通された回動軸部が有する保持部を単管に当接させて、把持体を僅かに絞め込んだ状態では、単管が保持部を介して回動軸部を押圧し、回動軸部の押圧部が把持部材を押圧して仮固定され、把持体を強く絞め込んだ状態では回動軸部の回動ができないように本固定される構造とさせたことを、最も主要な特徴としている。
【0018】
本発明の第1の発明は、仮設用の単管を把持する単管把持構造であって、第1の把持部材と、第2の把持部材と、回動軸部と、絞込手段とを含み、第1の把持部材と第2の把持部材の各々が、単管を把持する湾曲部を備え、第1の把持部材と第2の把持部材の一方の端部が前記湾曲部を近接可能に軸支させ、第1の把持部材と第2の把持部材の他方の端部が絞込手段を備え、前記回動軸部が、第1の把持部材を押圧させる押圧部と、第1の把持部材の湾曲部よりも単管把持空間に突出された保持部とを有し、第1の把持部材に回動可能に軸支され、近接させた前記湾曲面に前記単管を抱持させてから前記絞込手段を絞めた状態で、前記単管が、第2の把持部材の湾曲部に広く接し、且つ、少なくとも前記保持部に接し、前記押圧部が第1の把持部材を押圧した状態で、把持した前記単管の向きが微調整可能に仮固定され、前記絞込手段を絞め込んだ状態で、前記単管が、第2の把持部材の湾曲部に広く接し、且つ、前記保持部に接すると共に第1の把持部材の湾曲部に広く接し、前記押圧部が第1の把持部材を押圧した状態で、抱持した前記単管の向きが変更不能に本固定されることを特徴としている。
【0019】
仮設用の単管クランプは、背面で連結された一対の把持体からなり、各把持体は第1と第2の把持部材を備えている。本発明の第1の発明の単管把持構造は、単管クランプ等をなす把持体に適用される把持構造であり、仮固定した状態では抱持した単管の向きを微調整することができ、本固定した状態では抱持した単管の向きが変更できない構造である。
【0020】
第1と第2の把持部材は、夫々の一方の端部で軸支され、向い合う面に単管を把持する窪んだ湾曲部を有している。第1の把持部材の他方の端部には先方にナットが螺合された螺子軸体が傾動可能に装着され、第2の把持部材の他方の端部には先方が分岐され、螺子軸体を挟む二股部を有し、二股部と螺子軸体とナットとが絞込手段をなしていればよいが、絞込手段の形態は限定されない。
【0021】
回動軸部は、第1の把持部材を貫通し、第1の把持部材を回動軸部に対して回動可能とさせると共に、単管に当接される保持部と第1の把持部材に接する押圧部とを備えている。保持部は、湾曲部より僅かに単管把持空間に突出されている。保持部は、回動軸部の先端部であってもよく、回動軸部の先端に装着される保持部材であってもよい。単管クランプに把持された単管は、回動軸部の横断面に平行な面に回動される。
【0022】
第1と第2の把持部材の向い合った湾曲部を開放させた状態とし、その開放部から単管を差し入れて、第1と第2の把持体の湾曲部がなす単管把持空間を狭め単管を把持させる。そして二股部に螺子軸体を挟むように螺子軸体を傾動させ、ナットを締めて単管を把持させる。
【0023】
ナットを締め込んで、湾曲部がなす単管把持空間を狭めると、第2の把持部材の湾曲部の広い面が単管に当接すると共に保持部が押圧され、押圧部が第1の把持部材を押圧して、回動軸部の回転が拘束され、単管の向きが仮固定された状態とされる。この絞め込み程度では、第1の把持部材側では、主に保持部だけが単管に当接しているだけなので、抱持した単管の先方をハンマー等により軽打すると単管の向きを微調整することができる。保持部以外に第2の把持部材の湾曲部の一部が単管に接することがあってもよいことは勿論のことである。
【0024】
更に、ナットを締め込んで、第2の把持部材を第1の把持部材に向けて絞め込むと、第1の把持部材が変形し、保持部だけでなく湾曲部が広く接するようになり、抱持した単管の向きが変わらないように本固定される。抱持した単管の向きを微調整する必要がある場合には仮固定の状態まで絞め込んでおき、単管の向きを微調整すればよい。単管の向きを変える必要がない場合には、最初から強く絞め込み本固定の状態とすればよい。
【0025】
第1の発明によれば、単管把持構造を複雑な構造にしないで、作業員が一人でも、単管の向きを微調整することも、単管の向きが変わらないように固定することもできると共に、単管の向きを任意の向きに固定することができるという従来にない有利な効果を奏する。更に、単管の両端を支えていた単管クランプの一方を外しても、他方の単管クランプが単管を固定させているため、単管が垂れ落ちないという効果を奏する。
【0026】
本発明の第2の発明は、第1の発明の単管把持構造において、前記保持部と前記押圧部とが、座金体からなり、前記座金体が、前記回動軸部に装着されることを特徴としている。座金体が複数枚からなっていてもよく、座金体の一部が単管把持空間に突出されて保持部とされ、座金体の一部が押圧部とされればよい。
【0027】
従来の自在クランプの把持体は、湾曲部が単管を把持した状態で、回動軸部が単管から離間しているため、回動軸部が回転自在とされている。第2の発明によれば、座金体を保持部と押圧部となし、湾曲部よりもわずかに突出させ、単管に押圧された座金体が第1の把持部材を押圧し、第1の把持部材に対して回動軸部の回動を抑制させている。第2の発明によれば、従来の単管クランプに座金体を装着させるだけでよく、従来の単管クランプ資材を有効に活用できるという効果を奏する。
【0028】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の単管把持構造において、前記保持部が、前記単管に接する端面に、中心から放射状に十文字をなす方向に角度表示手段を有し、前記角度表示手段が、前記単管が乗り越え可能とされる筋体であることを特徴としている。
【0029】
筋体は、単管の向きを変える際に、区切りのいい角度であることが、手触りで判別できる程度の微小な高さの筋体であればよく、深さ約1mmの溝体、高さ約0.5mmの並んだ凸条体等であればよい。単管が乗り越え可能な筋体の高さとされているため、直交クランプ又は平行クランプとして使うための手掛かりが付きやすいと共に、単管を任意の角度に回動させることが容易である。
【0030】
本発明の第4の発明は、一対の把持体からなり、並んだ単管を交差させて把持させる単管クランプであって、各々の把持体を回動させる回動軸部が、一方の把持体の把持部材に固着され、他方の把持体が、第1から第3の発明の単管把持構造を有し、他方の把持体が、前記絞込手段の絞め込みに応じて、一方の把持体に対して任意の角度で仮固定又は本固定可能であることを特徴としている。
【0031】
第4の発明は、回動軸部が一方の把持体に固着された単管クランプの他方の把持体に適用される。回動軸部が一方の把持体に固着されているため、他方の把持体の向きを調整する際に、一方の把持体においては回動軸部が回動しない。他方の把持体の絞め込みだけで単管の交差角度が決定でき、平行クランプ又は直行クランプの適用に好適である。
【0032】
本発明の第5の発明は、一対の把持体からなり、並んだ単管を交差させて把持させる単管クランプであって、各々の把持体を回動させる回動軸部が、各々の把持体の把持部材に遊嵌され、各々の把持体が、第1から第3の発明の単管把持構造を有し、本固定させた一方の把持体に対して、他方の把持体が、前記絞込手段の絞め込みに応じて、一方の把持体に対して任意の角度で仮固定又は本固定可能であることを特徴としている。
【0033】
第5の発明では、単管クランプをなす各々の把持体が第1から第3の発明の単管把持構造を備えている。仮設足場を構築する敷地環境や建物の形状などに応じて、把持体の絞め込みに優先順位をつけなければならない場合でも、第5の発明の単管クランプによれば、把持体のいずれを先に本固定してもよく、仮設足場の構築が容易であるという効果を奏する。
【0034】
本発明の第6の発明は、仮設用の階段をなす、単管に側面を固定される踏板であって、前記踏板の側端面に、第1又は第2の発明の単管把持構造を有していることを特徴としている。
【0035】
地山や堤防等の法面に構築される仮設階段は、踏板の両側に単管を配設させておき、単管に踏板がクランプにより固定されている。従来は、予め踏板が水平になるようにクランプの向きを調整してから、踏板を単管にクランプで固定する必要があった。しかし、第6の発明の踏板によれば、予め踏板が水平になるようにクランプの向きを調整しておかなくても、踏板を単管に装着しながら、踏板が水平になるように仮固定又は本固定すればよく、作業手間が著しく軽減されるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0036】
・本発明の第1の発明の単管把持構造によれば、単管把持構造を複雑な構造にしないで、作業員が一人でも、単管の向きを微調整することも、単管の向きが変わらないように固定することもできると共に、単管の向きを任意の向きに固定することができるという従来にない有利な効果を奏する。更に、単管の両端を支えていた単管クランプの一方を外しても、他方の単管クランプが単管を固定させているため、単管が垂れ落ちないという効果を奏する。
・第2の発明の単管把持構造によれば、従来の単管クランプに座金体を装着させるだけでよく、従来の単管クランプ資材を有効に活用できるという効果を奏する。
・第3の発明の単管把持構造によれば、直交クランプ又は平行クランプとして使うための手掛かりが付きやすいと共に、単管を任意の角度に回動させることが容易である。
【0037】
・第4の発明の単管クランプによれば、他方の把持体の向きを調整する際に、一方の把持体においては回動軸部が回動しない。他方の把持体の絞め込みだけで単管の交差角度が決定でき、平行クランプ又は直行クランプの適用に好適である。
・第5の発明の単管クランプによれば、把持体のいずれを先に本固定してもよく、仮設足場の構築が容易であるという効果を奏する。
・第6の発明の踏板によれば、予め踏板が水平になるようにクランプの向きを調整しておかなくても、踏板を単管に装着しながら、踏板が水平になるように仮固定又は本固定すればよく、作業手間が著しく軽減されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の単管把持構造は、単管を把持する一対の把持部材の向かい合う内面を湾曲部とさせ、一方の把持部材の湾曲部を広く単管に接しさせる。そして他方の把持部材の湾曲部から回動軸部の天面を僅かに突出させて保持部とし、クランプの絞め込み程度に応じて、保持部だけに主として単管が接した状態では仮固定の状態とされ単管の交差角度が微調整可能とされ、保持部と湾曲部が広く単管に接した状態では本固定とされ単管の交差角度が変更不能とされることを最も主要な特徴としている。
【実施例0040】
実施例1の単管クランプ1は、同一の形状からなる一対の把持体100,100が回動軸部10に貫通され連結され、把持する一対の単管の交差角度が自在とされている。
図1(A)図は単管クランプ1の斜視図を示し、
図1(B)図は断面図を示している。なお、理解を容易にするため、
図1(A)図においては一方の把持体を破線で示し、
図1(B)図においては回動軸部10と一方の単管20のみを実線で示している。
【0041】
いずれの把持体も板体が湾曲されてなり、第1の把持部材110と第2の把持部材120と絞込手段を有し、回動軸部10により軸動可能に連結されている。第1の把持部材110と第2の把持部材120は、夫々の側壁111,121の向かい合う頂部に、単管を把持する湾曲部を有し、一方の端部において軸支されている。
【0042】
第1の把持部材110の他方の端部は、先方にナット112が螺着され、傾動される螺子軸体113を軸支させ、第2の把持部材120の他方の端部が、先方に前記螺子軸部を挟持させる二股部122を有している。ナット112が螺着された螺子軸体113と二股部122が絞込手段とされている。前記湾曲部がなす単管把持空間200に単管20が差し入れられて、軸支された第2の把持部材120が第1の把持部材110に向けて軸動され、前記二股部122に前記螺子軸部113が挟まれた状態とされ、ナット112が絞め込まれて単管20が把持される。
【0043】
回動軸部10は筒体300と一対の環状体310,310とからなり、一対の把持体100,100が向かい合う背面に形成された孔311に挿通され、一対の把持体を回動可能に軸支させる。前記筒体300が前記孔311に挿通されてから、一対の把持体の単管把持空間200,200の夫々から筒体300に環状体310,310が嵌め込まれて、筒体300の両端が加締め潰される(
図1(B)図参照)。加締め潰された状態で、夫々の単管把持空間に、筒体の天面301が僅かに突出された状態とされる。突出高さ(α)は、0.5mmから1.0mmが好適であるが限定されない。
【0044】
この実施例においては、夫々の環状体310,310が押圧部とされ、加締め潰された筒体の天面301が保持部とされる。把持体の単管把持空間200を開放させて単管20を差し入れて、螺子軸体113を二股部122に嵌めてナット112を絞め込んで、絞込手段により単管把持空間200を狭くしていくと、第2の把持部材120の湾曲部をなす側壁121の頂部が、単管20に広く接する。一方、第1の把持部材の湾曲部114から、単管把持空間200に保持部をなす筒体の天面301が突出されているため、単管20は筒体300を押圧し、筒体300が環状体310を押圧し、第1の把持部材110が引き寄せられて、単管20が仮固定された状態となる。
【0045】
長く伸びる単管の一方の端部を仮固定させ、他方の端部を片持ち状態としても、単管は垂れ落ちることがなく、一人の作業員が作業する場合でも、作業員は他方の端部に移動してから、他方の端部をハンマー等で軽打することにより単管の向きを微調整することができる。なお、仮固定させる絞め込み強さは、単管が保持した状態からずれない程度とされればよく、把持部材をなす板材の形状・材質又は側壁の頂部の表面粗さ等に応じて作業員により調整されればよい。
【0046】
単管が仮固定された状態から、絞込手段を更に絞め込むと、保持部を中心にして第1の把持部材110が変形し、第1の把持部材の側壁111の湾曲部の天部が広く単管に接すると共に、第1の把持部材110が単管把持空間に向けて引き寄せられ、第1の把持部材110が環状体310に強く押圧され、単管20と筒体300と環状体310と第1の把持部材110が一体とされ、抱持した単管の向きを変えることができない状態の本固定となる。
実施例2は、第1の把持部材110に、鍔部410を有する軸体420が回動軸部400として挿通された状態とされている。第1の把持部材110から延出された回動軸部は、他の被固定物、例えば仮設構造物、家具、自動車等の移動体等の限定されない対象物に固定される。実施例2の単管クランプ2の回動軸部400が有する鍔部410は、第1の把持部材110が回動軸部400から外れることを防止させる。回動軸部の天面411が保持部とされている。