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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129472
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】空中像描画装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20220830BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220830BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G06F3/041 580
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028142
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】515270828
【氏名又は名称】株式会社パリティ・イノベーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】徳田 雄嵩
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA20
2H042AA26
(57)【要約】
【課題】空中像描画装置から空中に飛び出した像を実際に描画する。
【解決手段】空中像描画装置1aは、一面に表示面21を有する表示装置2と、表示面21を覆う透明なスペーサ3と、スペーサ3の表示面21と相対する面とは反対側の面を覆う透明な光学素子4と、を備える。表示装置2は、光学素子4上へのタッチ操作に応じて表示面21に表示する表示パターンを変化させる。光学素子4は、光学素子4の表層から隔離した空中に表示パターンの実像を結像させる。この構成によれば、表示装置2上の表示パターンが光学素子4の作用により空中で結像するので、空中像描画装置1aから空中に飛び出した像HY、HGを実際に描画することができる。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に表示面を有する表示装置と、前記表示面を覆うような平板状に形成された透明なスペーサと、前記スペーサの前記表示面と相対する面とは反対側の面を覆う透明な光学素子と、を備え、
前記表示装置は、前記光学素子上へのタッチ操作に応じて前記表示面に表示する表示パターンを変化させ、
前記光学素子は、該光学素子の表層から隔離した空中に前記表示パターンの実像を結像させることを特徴とする空中像描画装置。
【請求項2】
前記光学素子上へのタッチ操作は、空中描画ペンを用いて成されることを特徴とする請求項1に記載の空中像描画装置。
【請求項3】
前記表示装置は、互いに平行に配設された第1のシート及び第2のシートと、前記第1のシート及び第2のシートの間に平面視で格子状に設けられたセル内において前記第1のシート側又は第2のシート側に移動可能に分散されたマイクロマグネットと、を有し、
前記マイクロマグネットは、少なくとも一方の極に蛍光材、蓄光材又は着色塗料を有し、
前記空中描画ペンは、ペン先及びペン尻に互いに極性の異なる磁性体を有することを特徴とする請求項2に記載の空中像描画装置。
【請求項4】
前記マイクロマグネットは、両極に互いに異なる蛍光材、蓄光材又は着色塗料を有することを特徴とする請求項3に記載の空中像描画装置。
【請求項5】
前記スペーサの側面に面して設けられたエッジライトを更に備え、
前記蛍光塗料及び蓄光塗料は、前記エッジライトから出射されて前記スペーサの内部を導光されてきた光により励起されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の空中像描画装置。
【請求項6】
前記表示装置とスペーサとの間又は前記光学素子の表層に設けられ不透明なサーモクロミックインクを含んだサーモクロミックインク層を更に備え、
前記サーモクロミックインクは、所定温度以上に加熱されると透明になり、
前記空中描画ペンは、所定温度以上に加熱された放射熱体をペン先に有することを特徴とする請求項2に記載の空中像描画装置。
【請求項7】
前記光学素子の全域に亘って形成され該光学素子の表層から前記スペーサまで貫通した複数の透明導電体と、前記スペーサと表示装置との間に設けられ静電容量方式で作用する透明なタッチパネルと、を更に備え、
前記スペーサは、前記光学素子から表示装置に向かう方向にのみ導電する機能を持つドット導電スペーサにより構成され、
前記表示装置は、ディスプレイにより構成され、前記透明導電体及びスペーサを介して前記タッチパネルが静電容量変化を感知したときに、その感知部分の直下で明光することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空中像描画装置。
【請求項8】
前記光学素子の表層に設けられた透明なタッチパネルを更に備え、
前記表示装置は、ディスプレイにより構成され、前記タッチパネルがタッチ操作を感知したときに、その感知部分の直下で明光することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空中像描画装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中に飛び出した像を描画することができる空中像描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある空間を仕切る平面体の一方の面側に被投影物を配置し、他方の一面側の空間において面対称となる位置に、被投影物の鏡映像を結像させる光学素子が発案されている。この種のものとして、各々が互いに直交する2つの微小な鏡面(反射面)から成る2面コーナーリフレクタを複数、平面的に集合させた構造を有する光学素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1は、複数の2面コーナーリフレクタが一平面上に格子状に整列配置されて成る2面コーナーリフレクタアレイを有する光学素子を開示している。この光学素子では、2面コーナーリフレクタを成す各鏡面が、光学素子の素子面に対して垂直に配置されている。そのため、素子面の一方の面側に配置した被観察物から発せられた光は、光学素子を通過する際に2面コーナーリフレクタで2回反射されて屈曲し、被観察物がない他方の一面側の空間に実像として結像する。これにより、被観察物が、光学素子の素子面に対して対称位置に存在するように、その実像が結像される。また、被投影物として、液晶ディスプレイのような映像表示装置を用い、映像表示装置が発せられた光を、光学素子により空中に結像させることで、空中に任意の画像や映像を表示することができる空間映像表示装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-191404号公報
【特許文献2】特開2915-191051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような空間映像表示装置では、液晶ディスプレイのような映像表示装置に予め設定された画像や映像を空中に表示するに過ぎず、空中に飛び出した像をユーザが直感的にリアルタイムで描画できるものではない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、空中に飛び出した像をユーザが直感的にリアルタイムで描画することができる空中像描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空中像描画装置は、一面に表示面を有する表示装置と、前記表示面を覆うような平板状に形成された透明なスペーサと、前記スペーサの前記表示面と相対する面とは反対側の面を覆う透明な光学素子と、を備え、前記表示装置は、前記光学素子上へのタッチ操作に応じて前記表示面に表示する表示パターンを変化させ、前記光学素子は、該光学素子の表層から隔離した空中に前記表示パターンの実像を結像させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空中像描画装置によれば、表示装置上の表示パターンが光学素子の作用により空中で結像するので、空中像描画装置から空中に飛び出した像を実際に描画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る空中像描画装置の斜視図。
図2】(a)(b)は、上記空中像描画装置を構成する光学素子の斜視図。
図3】上記光学素子による光の反射パターンを示す模式図。
図4】(a)は本発明の実施例1に係る空中像描画装置の上面図、(b)は(a)のA-A線断面図、(c)は同空中像描画装置を構成するマイクロマグネットの模式図。
図5】上記実施例1に係る空中像描画装置の作用を示す側断面図。
図6】上記実施例1の変形例に係る空中像描画装置の作用を示す側断面図。
図7】上記実施例1及びその変形例に係る空中像描画装置で用いられる電磁石マグネットペンを示す図。
図8】本発明の実施例2に係る空中像描画装置で用いられるサーモクロミックインクの温度特性を示す図。
図9】(a)(b)は、上記実施例2に係る空中像描画装置の構成及び作用を示す側断面図。
図10】(a)(b)は、上記実施例2の変形例に係る空中像描画装置の構成及び作用を示す側断面図。
図11】(a)(b)は、本発明の実施例3に係る空中像描画装置の構成及び作用を示す側断面図。
図12】上記実施例3の変形例に係る空中像描画装置の構成及び作用を示す側断面図。
図13】(a)(b)は、上記空中像描画装置の使用例1を示す斜視図。
図14】(a)は上記空中像描画装置の使用例2を示す斜視図、(b)は(a)のB-B線断面図。
図15】従来のタッチパネルで生じる視度差を示す側断面図。
図16】本発明の実施例4に係る空中像描画装置の構成及び作用を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る空中像描画装置について、図面を参照して説明する。図1に示すように、空中像描画装置1は、基本構造として表示装置2、スペーサ3及び光学素子4を備える。表示装置2は、矩形平板状に形成され、一面に表示面21を有する。スペーサ3は、表示面21を覆うような矩形平板状に形成され、表示装置2からの光を透過させる透明な材料により構成されている。光学素子4は、スペーサ3により表示装置2と所定の距離隔てられ、スペーサ3において表示面21と相対する面31とは反対側の面32を覆うような矩形平板状に形成されている。以下では図例に従って、下方から順に表示装置2、スペーサ3及び光学素子4が積層され、表示装置2は、上方に向かって光を出射するものとして説明する。
【0011】
図2(a)に示すように、光学素子4は、スペーサ3と平行に拡がる矩形平板状の基盤41と、基盤41からスペーサ3とは反対側に突出した複数の突状部42と、を有する。基盤41及び複数の突状部42は、透明な材料により一体的に形成されている。複数の突状部42は、それぞれ四角錐台状に形成され、互いに同じ向きで格子状に配置されている。なお、図例では理解を容易にするために突状部42を大きく描画しているが、実際の突状部42の大きさはμmオーダーであって、基盤41やスペーサ3の厚みに比べるとずっと小さい。
【0012】
図2(b)に示すように、各々の突状部42は、基盤41に対して垂直に立設された垂直面43、44と、基盤41に対して傾斜した傾斜面45、46と、基盤41に対して平行に設けられた上面47と、を有する。垂直面43、44は、互いに直交して隣接し、表示装置2からの光を反射する2面コーナーリフレクタ48を成している(次項参照)。光学素子4の詳細な構造については、本出願人による以前の出願(例えば、国際公開第2018/139141号)を参照されたい。
【0013】
図3に示すように、表示装置2の所定点Oから光学素子4に向かって発せられた光(一点鎖線で示す)は、光学素子4において2面コーナーリフレクタ48を成す垂直面43、44(それぞれ模式的に直線で表す)により反射された後、光学素子4が拡がる面を基準として点Oと面対称位置にある点Pを通る。これにより、表示装置2上に表示された表示パターン(実物T)の実像Iが、光学素子4の表層から隔離した空中に結像して、空中に浮遊した空中ハイライト像となる。このとき、光学素子4の表層から実像Iまでの浮遊距離は、光学素子4から表示装置2までの距離、すなわち、スペーサ3(不図示)の厚みと等しくなるので、スペーサ3の厚みを変えることで実像Iの浮遊距離を調整することができる。
【0014】
以下、本発明の4つの実施例に係る空中像描画装置について個別に説明する。
【0015】
(実施例1)
図4(a)(b)に示すように、空中像描画装置1aでは、スペーサ3の側面33に面して複数のエッジライト34が設けられている。スペーサ3は、例えば、透明なアクリル樹脂により構成される。複数のエッジライト34は、紫外光を出射する紫外LEDにより構成され、各々の光軸を側面33に直交させた状態でスペーサ3の全周に亘って配置されている。エッジライト34から出射されて側面33からスペーサ3に入射した紫外光は、スペーサ3の内部で全反射を繰り返しながらスペーサ3の内方に向かって進み、その過程で一部の紫外光がスペーサ3の面31、32から外部に出射する。すなわち、スペーサ3は、エッジライト34からの紫外光を導光する導光板として機能する。
【0016】
また、空中像描画装置1aは、ペン型に形成された空中描画ペン5を備える(図4(a)参照)。空中描画ペン5は、ペン先及びペン尻に互いに極性の異なる磁性体を有し、図例ではペン先及びペン尻にそれぞれS極51及びN極52を有するマグネットペンにより構成されている。S極51及びN極52の磁力は、光学素子4及びスペーサ3を通して表示装置2に作用するような強さに調整されている。
【0017】
表示装置2は、スペーサ3の面31に面した第1のシート22と、第1のシート22と平行に設けられた第2のシート23と、第1のシート22及び第2のシート23と直交して第1のシート22と第2のシート23とを繋ぐ複数の仕切り板24と、仕切り板24、第1のシート22及び第2のシート23により囲まれた領域から成る複数のセル(小室)25と、各々のセル25に充填された高粘性液体26と、高粘性液体26に分散されたマイクロマグネット27と、を有する(図4(b)参照)。第1のシート22は、透明な材料により構成され、出射面21を成している。複数のセル25は、例えば、ハニカム状に配置されている。高粘性液体26は、不透明で黒色や灰色のような暗い色の液体、例えば、オイルにより構成されている。
【0018】
マイクロマグネット27は、少なくとも一方の極に蛍光材、蓄光材又は着色塗料を有し、本実施例では、N極及びS極にそれぞれ黄色蛍光材28a及び緑色蛍光材28bを有する(図4(c)参照)。黄色蛍光材28a及び緑色蛍光材28bは、エッジライト34からの紫外光により励起され、それぞれ黄色光及び緑色光を発する。
【0019】
また、空中像描画装置1aは、表示装置2で表示したものを消去するための消去用スライダ6を備える(図4(a)参照)。消去用スライダ6は、表示装置2の一辺S1に亘って伸びる長尺な消去磁石シート61と、消去磁石シート61の一端に取り付けられた持ち手62と、を有する。持ち手62は、辺S1と直交する表示装置2の辺S2に亘って筐体7に設けられたスリット71に沿って、スライド移動可能に保持されている。消去磁石シート61は、第2のシート23の下側に配置され、持ち手62をスリット71に沿って移動させると第2のシート23の端から端までスライド移動する(図4(b)参照)。消去磁石シート61のスライド移動に伴い、消去磁石シート61の磁力によってマイクロマグネット27がセル25内において第2のシート23側に引きつけられる。
【0020】
次に、上記のように構成された空中像描画装置1aの作用について説明する。まず、持ち手62をスリット71の全長に亘ってスライド移動させることで、すべてのセル25においてマイクロマグネット27を第2のシート23側に引きつける。この状態から、図5に示すように、空中描画ペン5のS極51を光学素子4の一部に接触(タッチ操作)させると、その接触部分に対応するセル25において、S極51の磁力によってマイクロマグネット27がN極を上にして第1のシート22側に引き上げられる。そうすると、N極に配置された黄色蛍光材28aが、エッジライト34から出射されてスペーサ3の内部を導光されてきた後に第1のシート22を透過した紫外光により励起され、黄色光を発する。このような黄色光(光路を一点鎖線で示す)は、第1のシート22及びスペーサ3を透過して光学素子4に入射し、そこで図3に示した様式で反射されることで光学素子4上方の空中に黄色の空中ハイライト像HYを与える。
【0021】
同様にして、空中描画ペン5のN極52を光学素子4に接触させた場合には、マイクロマグネット27のS極に配置された緑色蛍光材28bがエッジライト34からの紫外光により励起され、緑色蛍光材28bから発せられた緑色光(光路を二点鎖線で示す)が、光学素子4上方の空中に緑色の空中ハイライト像HGを与える。このような空中ハイライト像HY、HGは、空中描画ペン5を光学素子4の表層から離して空中描画ペン5による磁力が無くなったとしても、セル25内でマイクロマグネット27が高粘性液体26に分散されていて直ぐには沈降しないので所定時間維持される。
【0022】
一方、光学素子4において空中描画ペン5を接触させなかった箇所では、セル25内でマイクロマグネット27が第2のシート23側に引きつけられたままなので、エッジライト34からの紫外光による黄色蛍光材28a及び緑色蛍光材28bの励起は起こらない。そのため、そのようなセル25は、第1のシート22側から見たときに、高粘性液体26の色(黒色や灰色)を呈する。これにより、空中像描画装置1aを斜め上方から見ると、黒色や灰色をバックグラウンドとして、空中描画ペン5を接触させた箇所で空中ハイライト像HY、HGが空中像描画装置1aの上面から浮遊して見える。
【0023】
空中ハイライト像HY、HGを消去するには、持ち手62をスリット71の全長に亘ってスライド移動させる。これにより、消去磁石シート61の磁力によってすべてのセル25においてマイクロマグネット27が第2のシート23側に引きつけられ、エッジライト34からの紫外光による黄色蛍光材28a及び緑色蛍光材28bの励起が起こらなくなる。また、空中ハイライト像HYを与えている箇所、すなわち、黄色蛍光材28a(N極)が第1のシート22に接するようにしてマイクロマグネット27が引き上げられているセル25に対して空中描画ペン5のN極52を作用させ、磁力の反発を利用することでマイクロマグネット27を第2のシート23側に移動させて空中ハイライト像HYを消去してもよい。同様に、空中ハイライト像HGを与えている箇所に空中描画ペン5のS極51を作用させて、空中ハイライト像HGを消去してもよい。
【0024】
なお、本実施例ではエッジライト34として紫外LEDを用い、これと黄色蛍光材28a及び緑色蛍光材28bを組み合わせたが、組み合わせはこれに限定されず、例えば、紫外LEDと蓄光材を組み合わせてもよいし、可視光を出射する可視光LEDと同可視光により励起される蛍光材又は蓄光材を組み合わせてもよく、赤外光を出射する赤外光LEDと同赤外光により励起される蛍光材又は蓄光材を組み合わせてもよい。
【0025】
(実施例1の変形例)
次に、上記実施例の変形例に係る空中像描画装置について、図6を参照して説明する。空中像描画装置1bは、上述した空中像描画装置1aからエッジライト34を取り除いたものである。黄色蛍光材28a及び緑色蛍光材28bは、エッジライト34からの光ではなく、外部から光学素子4及びスペーサ3を通して表示装置2に入射してきた環境光により励起される。このような空中像描画装置1bによれば、エッジライト34を駆動するための電源が不要となるので、電源の取れない場所にも設置することが可能となって設置自由度を高めることができる。
【0026】
なお、黄色蛍光材28a及び緑色蛍光材28bの代わりに、例えば、黄色蓄光材及び緑色蓄光材、或いは、黄色塗料や緑色塗料等の着色塗料を用いることもできる。また、マイクロマグネット27は、必ずしも両極(N極及びS極)に互いに異なる蛍光材、蓄光材又は着色塗料を有する必要はなく、両極に同じ蛍光材、蓄光材又は着色塗料を有してもよいし、一方の極だけに蛍光材、蓄光材又は着色塗料を有してもよい。
【0027】
上記実施例1及びその変形例で用いられた空中描画ペン5(マグネットペン)は、電磁石を利用した電磁石マグネットペンにより代替可能である。図7に示すように、このような電磁石マグネットペンは、電磁石EMへの通電をオンオフ制御するスイッチSWを有し、スイッチSWをオンにするとペン先がN極又はS極(図例ではN極)に磁化するように構成されている。
【0028】
(実施例2)
次に、実施例2に係る空中像描画装置について、図8及び図9を参照して説明する。本実施例では、温度に依存して色が可逆的に変化するサーモクロミックインクを利用している。図8に示すように、本実施例のサーモクロミックインクは、温度がT1よりも低い場合には不透明(黒色)で、温度がT1より高くなると徐々に透明度を増し、温度がT2に達すると透明(無色)になる。そして、温度がT2からΔH(ヒステリシス巾)低くなってT3になると不透明化が始まり、温度がT4に達すると元の不透明な状態に戻る。ΔHは、例えば、20℃に設定される。温度T1は、表示装置2の発光時における最高表面温度THよりも高く設定され、温度T3、T4は、それぞれ35℃程度及び25℃程度に設定される。
【0029】
図9(a)に示すように、空中像描画装置1cは、図1に示した空中像描画装置1を基に、上述したサーモクロミックインクを含むサーモクロミックインク層8を表示装置2とスペーサ3との間に設けたものである。表示装置2は、発光シート又はディスプレイにより構成される。また、空中描画ペン5は、熱を放射する放射熱体53をペン先に有する熱放射式ペンにより構成されている。放射熱体53は、例えば、遠赤外線を放射するLED又はレーザや電気ヒータにより構成され、上述した温度T2よりも高温に加熱される。
【0030】
このような空中像描画装置1cにおいて空中描画ペン5の放射熱体53が光学素子4に接触していない場合には、サーモクロミックインクの透明化が始まる温度T1が表示装置2の最高表面温度THよりも高く設定されているので、たとえ表示装置2を発光させたとしてもサーモクロミックインク層8は黒色のままで、表示装置2から出射された光はサーモクロミックインク層8により遮られて外部に出射しない。
【0031】
この状態から、図9(b)に示すように、空中描画ペン5の放射熱体53を光学素子4の一部に接触させると、その接触部分直下において放射熱体53からの熱によってサーモクロミックインク層8のサーモクロミックインクが透明になって透明領域81が生じる。そうすると、この透明領域81を通って表示装置2からの光がスペーサ3及び光学素子4に入射し、光学素子4上方の空中に空中ハイライト像Hを与えるようになる。
【0032】
ここで、サーモクロミックインクのΔHが20℃と大きく設定され、且つサーモクロミックインクの不透明化が始まる温度T3が35℃程度に設定されているので、このような空中ハイライト像Hは、出現して直ぐに消滅することはなく、少なくとも空中像描画装置1cを通常室温で使用している限りは出現し続ける。サーモクロミックインク層8を完全に黒色に戻すには、空中像描画装置1cを空冷ファンや熱冷却シートによって放熱・吸収させる、又は冷蔵庫等に入れて温度T4よりも低い温度まで冷却すればよい。
【0033】
(実施例2の変形例)
次に、実施例2の変形例に係る空中像描画装置について、図10(a)(b)を参照して説明する。図10(a)に示す空中像描画装置1dのように、サーモクロミックインク層8は、光学素子4の表層に設けられてもよい。このような構成において空中描画ペン5の放射熱体53がサーモクロミックインク層8に接触していない場合には、表示装置2から出射された光は、スペーサ3及び光学素子4を透過するものの黒色のサーモクロミックインク層8により遮られて外部に出射しない。そして、この状態から、図10(b)に示すように、空中描画ペン5の放射熱体53をサーモクロミックインク層8の一部に接触させると、その接触部分において放射熱体53からの熱によってサーモクロミックインク層8に透明領域81が生じ、この透明領域81を通って表示装置2からの光が外部に出射して、光学素子4上方の空中に空中ハイライト像Hを与える。
【0034】
(実施例3)
次に、実施例3に係る空中像描画装置について、図11(a)(b)を参照して説明する。図11(a)に示すように、空中像描画装置1eは、図1に示した空中像描画装置1を基に、静電容量方式で作用する透明なタッチパネル9を表示装置2とスペーサ3との間に設けたものである。光学素子4は、上下方向に光学素子4を貫通して設けられた複数の透明導電体49を有する。複数の透明導電体49は、互いに所定の間隔を置いて光学素子4の全域に亘って配置されている。スペーサ3は、上下方向にのみ導電する機能を持つドット導電スペーサにより構成されている。表示装置2は、ディスプレイにより構成されている。空中描画ペン5は、ペン先に導電体54を有する導電ペンにより構成されている。導電体54が光学素子4に接触することで引き起こされる静電容量変化は、透明導電体49及びスペーサ(ドット導電スペーサ)3を介してタッチパネル9で感知される。
【0035】
このような空中像描画装置1eにおいて、空中描画ペン5の導電体54が光学素子4に接触しておらず、タッチパネル9が静電容量変化を感知していない場合には、表示装置2は、黒色や灰色のような暗い色を表示するように構成されている。このとき、表示装置2からは少ない光しか出射していないので、表示装置2からの光に起因する空中ハイライト像HWは、非常に薄くて殆ど目視することができない。このような状態から、図11(b)に示すように、空中描画ペン5の導電体54を光学素子4の一部に接触させると、その接触部分での静電容量変化がタッチパネル9で感知される。そして、この感知部分の直下にある表示装置2は、例えば、黄色のような明るい色で明光して明光領域20を与えるように構成されている。このような明光領域20から生じた空中ハイライト像Hは、薄い空中ハイライト像HWの中で際立って見える。なお、光学素子4上へのタッチ操作は、ユーザの指により行ってもよい。
【0036】
このような空中像描画装置1eは、上記表示装置2及びタッチパネル9を備えた既存のタブレット端末の上に、光学素子4及びスペーサ3を配置することで構築することができる。そのため、既存のタブレット端末に容易且つ低コストな改良を施すことで、空中ハイライト像の表示を可能とすることができる。
【0037】
(実施例3の変形例)
次に、実施例3の変形例に係る空中像描画装置について、図12を参照して説明する。空中像描画装置1fは、図1に示した空中像描画装置1を基に、透明なタッチパネル9を光学素子4の表層に設けたものである。タッチパネル9は、静電容量方式のものに限定されず、例えば、超音波方式、光学方式、抵抗膜方式又は電磁誘導方式のものを採用することができる。超音波方式、光学方式又は抵抗膜方式のタッチパネル9を採用した場合には、空中描画ペン5はタッチペンにより構成され、電磁誘導方式のタッチパネル9を採用した場合には、空中描画ペン5はデジタルペン(電子ペン)により構成される。表示装置2は、空中像描画装置1eと同様にディスプレイにより構成されている。
【0038】
このような空中像描画装置1fでも、空中描画ペン5を作用させた箇所で表示装置2に明光領域20を生じさせるようにすれば、この明光領域20に起因する空中ハイライト像Hを与えることができる。空中像描画装置1fによれば、その設置場所や設置コスト等に応じて多様な方式のタッチパネル9を採用することができるので汎用性が高い。
【0039】
次に、本発明に係る空中像描画装置の具体的な使用例について図13及び図14を参照して説明する。
【0040】
(使用例1)
まず、使用例1について図13(a)(b)を参照して説明する。図13(a)に示すように、例えば、上述した空中像描画装置1aにおいて光学素子4の表層に透明又は半透明のシートSHを置き、このシートSHに鉛筆やボールペンといった通常の筆記具を用いて描画する。この上に、図13(b)に示すように、ペン先及びペン尻にそれぞれS極51及びN極52を有する空中描画ペン(マグネットペン)5を用いて湯気を表す模様や「ポカポカ」という文字を書き込む。そうすると、これらの模様や文字は、空中像描画装置1aを斜め上方から見たときに、空中ハイライト像HとなってシートSHから浮遊して見える。なお、空中描画ペン5による描画の際には、スペーサ3(不図示)と同程度の厚みを持つ透明な下敷き(不図示)をシートSHの上に敷くことで、空中ハイライト像Hを実際に出現する位置で描画することが可能となる。
【0041】
(使用例2)
次に、使用例2について図14(a)(b)を参照して説明する。本使用例では、例えば、空中像描画装置1cで空中ハイライト像Hとして金魚を表示した後、空中像描画装置1cの上に水Wを入れた透明な水槽AQを置く。そうすると、空中像描画装置1cを斜め上方から見たときに、あたかも金魚が水Wの中で浮いて泳いでいるかのように見せることができる。なお、水Wは、透明なシリコン樹脂やガラスで代替してもよい。
【0042】
上記で説明した空中像描画装置1a-1fによれば、表示装置2に表示された表示パターンが、光学素子4の作用により空中像描画装置1a-1f上方の空中で結像する。これにより、空中像描画装置1a-1fから空中に飛び出した像を実際に表示することができる。このような空中に飛び出した像は、臨場感や存在感に富んでおり、見た者に大きなインパクトを与えて強い印象を残すことができる。
【0043】
(実施例4)
また、本発明に係る空中像描画装置は、従来のタッチパネルが抱える視差ずれの問題も解消することができる。図15に示すように、従来のタッチパネル9は、一般的にスペーサ(ガラス)3を介して表示装置2の上に重畳されている。このような構造で、ユーザUが表示装置2に表示された仮想ボタンBを斜め上方から見ると、この仮想ボタンBの一端B1から出射された光L1(光路を一点鎖線で示す)は、タッチパネル9の点91を通ってユーザUに視認され、仮想ボタンBの他端B2から出射された光L2(光路を二点鎖線で示す)は、タッチパネル9の点92を通ってユーザUに視認される。
【0044】
これにより、ユーザUにはタッチパネル9の点91、92の間に仮想ボタンB’があるように見え、表示装置2に表示された仮想ボタンBの位置との間に視差ずれDが発生する。そのため、ユーザUが、仮想ボタンBを押圧しようとして仮想ボタンB’の点91付近を押圧したとすると、点91の直下には仮想ボタンBが存在しないので、仮想ボタンBを押圧することができないという問題が生じる。なお、従来のタッチパネル9にタッチペンを用いて文字や絵を描画し、それを表示装置2に表示させる場合にも、タッチペンのペン先の位置と、描画された文字や絵のピクセルの位置とのずれによって、ユーザUが違和感を覚えたり、思い通りの描画をできないことがある。
【0045】
そこで、図16に示すように、本発明に係る空中像描画装置1gでは、タッチパネル9とスペーサ3との間に上述したような光学素子4が設けられ、且つスペーサ3の厚みが、タッチパネル9の厚みと同程度となるように調整されている。このようにすることで、表示装置2の仮想ボタンBは、視差ずれ無くタッチパネル9上に仮想ボタンB’として出現するので、ユーザは確実に仮想ボタンBを押圧することができる。また、ユーザUがタッチペンを用いて文字や絵を描画する場合にも、タッチペンのペン先の位置と、描画された文字や絵のピクセルの位置とが一致するので、ユーザUは違和感なく、思い通りに描画することができる。
【0046】
なお、本発明に係る空中像描画装置は、上記実施形態、実施例及びその変形例に限定されず種々の変形が可能である。例えば、空中像描画装置の形状は、矩形状に限定されず、円形状や楕円状であってもよい。また、本発明における「タッチ操作」が、上記実施例及びその変形例の説明で記述したような、空中描画ペン5やユーザUの指を用いて成されるタップ入力や手書き入力を意味することは自明である。
【符号の説明】
【0047】
1、1a-1g 空中像描画装置
2 表示装置
21 表示面
22 第1のシート
23 第2のシート
27 マイクロマグネット
28a (黄色)蛍光材
28b (緑色)蛍光材
3 スペーサ
31 スペーサの表示装置と相対する面
32 スペーサの表示装置と相対する面とは反対側の面
33 スペーサの側面
34 エッジライト
4 光学素子
49 透明導電体
5 空中描画ペン
53 放射熱体
8 サーモクロミックインク層
9 タッチパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16