(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129477
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】防災装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20220830BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A62C35/20
G08B17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028149
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅裕
【テーマコード(参考)】
2E189
5G405
【Fターム(参考)】
2E189EC01
5G405AA02
5G405CA55
5G405FA05
(57)【要約】
【課題】工具を用いずに保護板を容易に取り外すことを可能とする。
【解決手段】押釦を有し、前記押釦の押下に基づいて信号を送信する発信機と、前記押釦を囲う押釦側筒部と、前記押釦側筒部と螺合する装着部側筒部、および前記装着部側筒部よりも内径が小さい環状部を有する装着部と、前記押釦側筒部と前記装着部側筒部が螺合している状態において、前記押釦側筒部と前記環状部の間に位置し、前記押釦を保護する保護板と、を備える、防災装置。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押釦を有し、前記押釦の押下に基づいて信号を送信する発信機と、
前記押釦を囲う押釦側筒部と、
前記押釦側筒部と螺合する装着部側筒部、および前記装着部側筒部よりも内径が小さい環状部を有する装着部と、
前記押釦側筒部と前記装着部側筒部が螺合している状態において、前記押釦側筒部と前記環状部の間に位置し、前記押釦を保護する保護板と、
を備える、防災装置。
【請求項2】
前記装着部は、前記環状部から前記装着部側筒部の反対側に突出する凸部を有する、請求項1に記載の防災装置。
【請求項3】
前記装着部側筒部は、前記押釦側筒部と、前記押釦側筒部よりも径の広い円形開口との間で前記押釦側筒部の外周面に螺合し、
前記装着部側筒部の端部には外周側から突出する突起が形成されており、
前記円形開口に繋がり、前記突起が差し込まれる突起差込開口が形成されている、請求項1または2に記載の防災装置。
【請求項4】
前記装着部は、前記環状部に隣接し、前記装着部側筒部の外側を囲う弾性部材を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の防災装置。
【請求項5】
前記押釦側筒部と前記装着部側筒部との螺合がそれ以上に進まなくなった状態において、前記押釦側筒部と前記環状部との間隔は、前記保護板の厚みよりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の防災装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火災から人身や車両を守るための防災設備が普及している。また、防災設備の安全性、利便性を向上させるための手法も多く提案されている。例えば、道路トンネルには、消火栓を収容する消火栓装置が配置される。
【0003】
消火栓装置などの防災設備には、例えば特許文献1に開示されているように、押釦式の発信機が設けられる。操作者が発信機に設けられた押釦を押し下げると、発信機が火災の発生を通報する。発信機には、押釦を保護する保護板が取り付けられており、操作者は、保護板を強く押して保護板を破壊することで、押釦を押し下げることができる。
【0004】
一方で、押釦の動作を点検する際には、保護板が破壊されないことが望ましい。この点に関し、ある消火栓装置では、保護板が前面から切欠きを有する樹脂製のリングで固定されており、操作者は、切欠きに指の爪を引っかけることでリングを外し、その後に保護板を前方へ取り外し、押釦を押す。また、特許文献1に開示されている消火栓装置では、保護板の前面に孔が設けられており、操作者が専用の治具を当該孔に挿入することで押釦が押される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、保護板が切欠きを有するリングで固定されている消火栓装置では、操作者がリングを外す際にリングの樹脂が破損する場合がある。また、操作者が手袋を着用した状態では切欠きに爪を引っかけられないので、操作者には素手での作業が求められる。また、特許文献2に開示されている消火栓装置では、保護板の取り外しのために専用の治具が必要となる。また、特許文献2に開示されている消火栓装置で保護板を交換するためには、全面プレートを工具で取り外す必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、工具を用いずに保護板を容易に取り外すことが可能な、新規かつ改良された防災装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、押釦を有し、前記押釦の押下に基づいて信号を送信する発信機と、前記押釦を囲う押釦側筒部と、前記押釦側筒部と螺合する装着部側筒部、および前記装着部側筒部よりも内径が小さい環状部を有する装着部と、前記押釦側筒部と前記装着部側筒部が螺合している状態において、前記押釦側筒部と前記環状部の間に位置し、前記押釦を保護する保護板と、を備える、防災装置が提供される。
【0009】
前記装着部は、前記環状部から前記装着部側筒部の反対側に突出する凸部を有してもよい。
【0010】
前記装着部側筒部は、前記押釦側筒部と、前記押釦側筒部よりも径の広い円形開口との間で前記押釦側筒部の外周面に螺合し、前記装着部側筒部の端部には外周側から突出する突起が形成されており、前記円形開口に繋がり、前記突起が差し込まれる突起差込開口が形成されていてもよい。
【0011】
前記装着部は、前記環状部に隣接し、前記装着部側筒部の外側を囲う弾性部材を有してもよい。
【0012】
前記押釦側筒部と前記装着部側筒部との螺合がそれ以上に進まなくなった状態において、前記押釦側筒部と前記環状部との間隔は、前記保護板の厚みよりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明した本発明によれば、工具を用いずに保護板を容易に取り外すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による消火栓装置10の配置例を示す説明図である。
【
図2】消火栓装置10の車道側面12の正面図である。
【
図3】押釦通報機162および押釦通報機162の周辺構成の正面図である。
【
図5】装着部200の
図3に示したI-I線断面図である。
【
図6】筐体に装着部200が装着された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。
【0017】
<消火栓装置の概要>
本発明の一実施形態は、防災装置に関する。防災装置としては、消火器収納装置、消火栓装置および非常警報装置などが挙げられる。本明細書では、防災装置の一例として、消火栓装置に本発明の一実施形態が適用される例を主に説明する。消火栓装置は、例えば、道路トンネルにおける防災および消防の用途のために道路トンネル内に配置される。道路トンネルには、車両が走行する車道に加えて、監視員による保守作業や災害時における避難経路に用いられる通路が車道の脇に設けられている。なお、通路は、一般的に車道よりも900~1000mmほど高い位置に設けられる。
【0018】
以下、
図1および
図2を参照し、本発明の一実施形態による消火栓装置の概要を説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による消火栓装置10の配置例を示す説明図である。
図1に示したように、本発明の一実施形態による消火栓装置10は、車道と通路の境界に位置している。消火栓装置10は、
図1に示したように、車道側に位置する車道側面12、通路側に面する通路側面14、車道側面12および通路側面14の間に位置する対向する1対の側面(車道の上流側に位置する上流側側面、および下流側に位置する下流側側面16)、および上面19を有する筐体本体を備える。
【0020】
車道側面12および通路側面14には、消火栓の収容空間を開閉する開閉扉が設けられている。このため、操作者は、車道から車道側面12の開閉扉を開けて消火栓を利用することも、通路から通路側面14の開閉扉を開けて消火栓を利用することも可能である。
【0021】
図2は、消火栓装置10の車道側面12の正面図である。
図2に示したように、本発明の一実施形態による消火栓装置10の車道側面12は、消火栓の収容空間を開閉するための扉である車道側扉122、および火災検知器124を有する。車道側扉122は、例えばスライド移動により消火栓の収容空間を開閉する。火災検知器124は火災の発生を検知する。
【0022】
また、消火栓装置10の車道側面12には、SOS銘板126および矢印マーク127からなる案内部125が形成されている。矢印マーク127は、後述する押釦通報機162が設けられている下流側側面16が位置する方向を指している。
【0023】
続いて、
図1を参照して、消火栓装置10の下流側側面16の構成を説明する。
図1に示したように、消火栓装置10の下流側側面16には、発信機の一例である押釦通報機162、応答ランプ164、およびSOS銘板166が形成されている。
【0024】
押釦通報機162は、火災などが発生した際に操作者が押すための押釦を有し、押釦の押下に基づいて防災受信盤に火災の発生を示す通報信号を送信する。応答ランプ164は、防災受信盤が通報信号を受信したことを知らせる際に点灯する。SOS銘板166は、押釦通報機162を押す操作を誘導する表示である。
【0025】
本発明の一実施形態は、上述した消火栓装置10の構成のうち、特に、押釦通報機162の周辺構成に関する。以下、押釦通報機162の周辺構成をより詳細に説明する。
【0026】
<押釦通報機162の周辺構成>
図3は、押釦通報機162および押釦通報機162の周辺構成の正面図である。
図3に示したように、押釦通報機162は押釦163を有する。消火栓装置10の下流側側面16には、装着部200が装着されており、装着部200と押釦163の間には、押釦163を保護する保護板260が位置する。
【0027】
保護板260は透光性を有し、保護板260には、
図3に示したように例えば「強く押す」という文字が形成されている。また、保護板260には、複数の円弧状の開口262が断続的に形成されている。このため、複数の開口262を繋ぐ部分が脆弱部となり、保護板260が強く押されると当該脆弱部が破壊され、押釦163を押下することが可能となる。当該開口262および脆弱部は、通常、装着部200と重なる位置に設けられることから、消火栓装置10の外側からは視認されない。
【0028】
(筐体側の構成)
図4は、筐体側の構成を示す説明図である。具体的には、
図4には、押釦通報機162周辺の筐体側の構成の正面図、および、当該平面図におけるII-II線断面図を示している。
図4に示したように、筐体側には、押釦163を囲う筒状の構成である押釦側筒部167が設けられている。押釦側筒部167の外周面には、後述する装着部側筒部210と螺合するための押釦側螺合部167aが形成されている。
【0029】
また、消火栓装置10の下流側側面16には、円形開口168が形成されている。
図4に示した正面図において、当該円形開口168の内側に押釦側筒部167および押釦163が位置している。さらに、消火栓装置10の下流側側面16には、円形開口168に繋がる突起差込開口169が形成されている。当該突起差込開口169には、後述する装着部200側の突起219が挿入される。
【0030】
(装着部の構成)
図5は、装着部200の
図3に示したI-I線断面図である。
図5に示したように、装着部200は、装着部側筒部210、環状部220、凸部230およびゴムリング240を有する。装着部側筒部210は、筒状の構成である。装着部側筒部210の内周面には、押釦側筒部167の押釦側螺合部167aに螺合する装着部側螺合部210aが形成されている。また、装着部側筒部210の端部には、外周側から突出する突起219が形成されている。
【0031】
環状部220は、環状の構成である。当該環状部220の一側の面から装着部側筒部210が延出している。環状部220の内径は装着部側筒部210の内径よりも小さく、環状部220の外形は装着部側筒部210の外径よりも大きい。
【0032】
凸部230は、環状部220から装着部側筒部210の反対側に突出している。
図5に示した例では、凸部230は周方向に連続的に形成された筒状の構成であるが、凸部230は、周方向における一部に形成されていてもよい。
【0033】
ゴムリング240は、環状部220に隣接し、装着部側筒部210の外側を囲う弾性部材である。
【0034】
なお、保護板260の外縁は環状部220に覆われ、保護板260の中央部は環状部220の中空部分を介して露出する。保護板260の外径は、装着部側筒部210の装着部側螺合部210aの径よりも小さい。このため、保護板260と装着部側螺合部210aの間には隙間が存在する。
【0035】
<装着部200の着脱>
続いて、筐体に装着部200が装着された状態、および装着部200の着脱について説明する。
【0036】
図6は、筐体に装着部200が装着された状態を示す説明図である。
図6に示したように、装着部200は、装着部側筒部210が押釦側筒部167に螺合することにより、筐体に装着される。
図6に示した装着状態は、装着部側筒部210と押釦側筒部167の螺合がそれ以上に進まなくなった状態である。当該装着状態において、保護板260は押釦側筒部167と環状部220との間に位置し、押釦163を保護する。
【0037】
図7は、
図6に示したX領域の拡大図である。
図7に示したように、装着部200の装着状態において、筐体と環状部220にゴムリング240が挟持される。また、押釦側筒部167と環状部220の間隔は、保護板260の厚みより大きい。このため、保護板260と環状部220の間、または保護板260と押釦側筒部167の間には隙間が設けられる。当該隙間の量は、例えば、ゴムリング240の厚み、および筐体の外表面の位置と押釦側筒部167の高さの関係などに応じた量となる。
図6および
図7などに示した例では、押釦側筒部167の高さは筐体の外表面の位置に達しない高さに設計されている。
【0038】
操作者は、このような装着部200の装着状態において、凸部230を持ちながら装着部200を
図3に示したA1方向に回転させることにより、装着部側筒部210と押釦側筒部167の螺合を解除することができる。そして、操作者は、
図8に示すように、突起219が突起差込開口169に合うように装着部200の回転位置を調整し、突起219が突起差込開口169に合った状態で装着部200を引くことにより、装着部200を取り外すことができる。
【0039】
反対に、装着部200を筐体に装着する際には、操作者は、突起219が突起差込開口169に合うように装着部200の回転位置を調整し、突起219が突起差込開口169に合った状態で装着部200を円形開口168に押し込む。そして、操作者は、凸部230を持ちながら装着部200を
図3に示したA2方向に回転させることにより、装着部側筒部210と押釦側筒部167を螺合させることができる。当該螺合の完了により、装着部200が筐体に装着される。
【0040】
<作用効果>
以上説明した本発明の一実施形態によれば、多様な作用効果が得られる。例えば、本発明の一実施形態による消火栓装置10では、操作者は、凸部230を持ちながら装着部200を回転させることで、装着部200の着脱を簡単に実現できる。操作者は、保護用手袋を外すことなく、かつ、専用の工具を用いることなく当該操作を行うことが可能である。従って、押釦163の動作点検、および保護板260の交換作業などを行い易い。
【0041】
また、本発明の一実施形態によれば、装着部200側に突起219が設けられ、筐体側に突起差込開口169が形成される。装着部200の着脱は、突起219の位置が突起差込開口169に合っている場合にのみ可能となるので、装着部200の意図しない脱落を防止することが可能である。
【0042】
また、本発明の一実施形態によれば、保護板260の外径は装着部側筒部210の装着部側螺合部210aの径よりも小さく、保護板260と装着部側螺合部210aの間には隙間が存在する。このため、保護板260を装着部200から取り外すこと、および保護板260を装着部200内に取り付けることを容易に行うことが可能である。
【0043】
また、本発明の一実施形態によれば、装着部200の装着状態において、ゴムリング240が筐体と環状部220に挟持される。従って、装着部側筒部210と押釦側筒部167との螺合の緩み、および、外部からの漏水などを防止することが可能である。
【0044】
また、本発明の一実施形態によれば、装着部200の装着状態において、保護板260と環状部220の間、または保護板260と押釦側筒部167の間には隙間が設けられる。したがって、保護板260の締め付けによる保護板260の破損または割れなどを防止できる。また、装着状態においても保護板260を回転させられので、「強く押す」のような文字の傾きを容易に調整することが可能である。
【0045】
<補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0046】
10 消火栓装置
12 車道側面
14 通路側面
16 下流側側面
19 上面
162 押釦通報機
163 押釦
164 応答ランプ
166 SOS銘板
167 押釦側筒部
168 円形開口
169 突起差込開口
200 装着部
210 装着部側筒部
219 突起
220 環状部
230 凸部
240 ゴムリング
260 保護板