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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012948
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20220111BHJP
   F25B 41/325 20210101ALI20220111BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F25B41/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115133
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮司
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB33
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH08
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】騒音を低減することができる電動弁及び該電動弁を備えた冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】弁ハウジング2と、弁ハウジング2に設けられた主弁室2Rの主弁ポート23aの開度を変更する主弁体4と、主弁体4に設けられた副弁室4Rの副弁ポート41bの開度を変更する副弁体5と、副弁体5をZ方向に進退駆動する駆動部6と、を備えた電動弁1において、副弁ポート41aが開口端部としての上端部412Aと小径部としての筒状内周面413とを有する。これにより、最小絞り部よりも上流側に整流部を形成することができ、流体が第1ポート21及び連通孔421を通過して副弁室4Rに流入する際に、流量が不安定化した場合であっても、流体を整流することで騒音を低減することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジングと、前記弁ハウジングに設けられた主弁室の主弁ポートの開度を変更する主弁体と、前記主弁体に設けられた副弁室の副弁ポートの開度を変更する副弁体と、前記副弁体を軸方向に進退駆動する駆動部と、を備えた電動弁であって、
前記弁ハウジングは、前記軸方向に交差する方向に開口した第1ポートと、前記主弁ポートに連通して前記軸方向に開口した第2ポートと、を有し、
前記主弁体は、前記軸方向に交差する方向に延在し前記副弁体が接近又は離隔する隔壁部と、前記隔壁部から前記主弁ポートとは反対側に向かって延びる筒状部と、を有するとともに、前記隔壁部と前記筒状部とによって前記副弁室が形成され、
前記筒状部には、その内外を連通する少なくとも1つの連通孔が形成され、
前記副弁ポートは、前記隔壁部に形成された貫通孔であるとともに、前記主弁ポートとは反対側の端部である開口端部と、前記開口端部よりも前記主弁ポート側に位置して前記開口端部よりも小径に形成された小径部と、を有することを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記副弁ポートは、前記開口端部と前記小径部との間に、前記主弁ポート側に向かうにしたがって内径が小さくなっていくテーパ部を有することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記副弁ポートは、前記開口端部と前記小径部との間に、前記軸方向に沿って延びる筒状内周面と、前記筒状内周面における前記主弁ポート側の端部から径方向内側に向かって延びる環状部と、によって形成された段差部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記小径部は、前記隔壁部における前記軸方向中央部よりも前記主弁ポート側に設けられ、前記副弁ポートにおいて内径が最小の部分であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項5】
圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~4のいずれか1項に記載の電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主弁体によって主弁ポートの開度を変更可能であるとともに、主弁体に設けられた副弁ポートの開度を副弁体によって変更可能な電動弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電動弁では、主弁体が、主弁部と、円柱状のニードルガイド孔を有する保持部と、副弁座と、を有し、ニードルガイド孔の下側一部が副弁室となっている。また、保持部の側面に導通孔が形成されていることにより、副弁体が副弁ポートを開状態としたときに主弁室と副弁室と副弁ポートと主弁ポートとが導通するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-034141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電動弁では、主弁室を有する円筒状の弁ハウジングに対し、側面及び軸線方向の一端側に継手が接続されている。側面の継手が一次側となる場合、上記のように副弁ポートが開状態となると、この継手から流入する流体は、保持部の側面の導通孔を通過した後、副弁ポート及び主弁ポートを通過して一端側の継手から流出する。このとき、主弁体が回転可能に設けられていると、側面の継手と導通孔との位置関係が変化し、副弁ポートを通過する流体の流量が経時変化する場合があった。また、主弁体が回転しなくても、側面の継手に対して近い位置と遠い位置とで保持部の側面の導通孔を通過する流体の流量が異なり、副弁ポートを通過する流体の流量が位置によって不均一となる可能性があった。このように、副弁ポートを通過する流体の流量は、時間的又は空間的に不安定化(以下、流量の経時変化や位置的な不均一性について、これらをまとめて単に「不安定化」と称する)する可能性があり、このような不安定化が騒音の要因となり得る。
【0005】
本発明の目的は、騒音を低減することができる電動弁及び該電動弁を備えた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁ハウジングと、前記弁ハウジングに設けられた主弁室の主弁ポートの開度を変更する主弁体と、前記主弁体に設けられた副弁室の副弁ポートの開度を変更する副弁体と、前記副弁体を軸方向に進退駆動する駆動部と、を備えた電動弁であって、前記弁ハウジングは、前記軸方向に交差する方向に開口した第1ポートと、前記主弁ポートに連通して前記軸方向に開口した第2ポートと、を有し、前記主弁体は、前記軸方向に交差する方向に延在し前記副弁体が接近又は離隔する隔壁部と、前記隔壁部から前記主弁ポートとは反対側に向かって延びる筒状部と、を有するとともに、前記隔壁部と前記筒状部とによって前記副弁室が形成され、前記筒状部には、その内外を連通する少なくとも1つの連通孔が形成され、前記副弁ポートは、前記隔壁部に形成された貫通孔であるとともに、前記主弁ポートとは反対側の端部である開口端部と、前記開口端部よりも前記主弁ポート側に位置して前記開口端部よりも小径に形成された小径部と、を有することを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、副弁ポートが開口端部と小径部とを有することで、副弁体と小径部との間の空間よりも、副弁体と開口端部との間の空間を大きくすることができる。流体が副弁室から副弁ポートを通過して主弁ポート側に向かう際、この流体は、副弁体と開口端部との間の空間を通過してから、副弁体と小径部との間の空間を通過する。このとき、副弁体と小径部との間の空間が絞り部となり実質的な弁開度(開口面積)を決定するとともに、この上流側により大きな空間が設けられ、即ち、絞り部よりも上流側において流体を一旦整流することができる。従って、流体が弁ハウジングの第1ポート及び連通孔を通過して副弁室に流入した際に、流量が不安定化した場合であっても、流体を整流することで騒音を低減することができる。
【0008】
この際、本発明の電動弁では、前記副弁ポートは、前記開口端部と前記小径部との間に、前記主弁ポート側に向かうにしたがって内径が小さくなっていくテーパ部を有することが好ましい。このような構成によれば、流体がテーパ部に沿って流れやすく、流体の流れに乱れが生じることを抑制することができる。
【0009】
また、本発明の電動弁では、前記副弁ポートは、前記開口端部と前記小径部との間に、前記軸方向に沿って延びる筒状内周面と、前記筒状内周面における前記主弁ポート側の端部から径方向内側に向かって延びる環状部と、によって形成された段差部を有していてもよい。このような構成によれば、筒状部と副弁体との間の空間の容積を確保しやすく、流体を整流しやすくすることができる。
【0010】
また、本発明の電動弁では、前記小径部は、前記隔壁部における前記軸方向中央部よりも前記主弁ポート側に設けられ、前記副弁ポートにおいて内径が最小の部分であることが好ましい。このような構成によれば、流体を整流するための空間の軸方向寸法を確保して容積を大きくすることができ、流体を整流しやすくすることができる。
【0011】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、上記いずれかに記載の電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする。以上のような本発明によれば、上記のように、電動弁において騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一例である実施形態にかかる電動弁を示す断面図である。
図2】前記電動弁において副弁ポートの開度が最小となった際の要部を拡大して示す断面図である。
図3】前記電動弁において副弁ポートの開度が中程度となった際の要部を拡大して示す断面図である。
図4】前記電動弁において副弁ポートの開度が最大となった際の要部を拡大して示す断面図である。
図5】前記電動弁において筒状部を通過する断面を示す断面図である。
図6】前記電動弁が設けられる冷凍サイクルシステムの一例を示すシステム図である。
図7】第1の変形例の電動弁において副弁ポートの開度が最小となった際の要部を拡大して示す断面図である。
図8】第1の変形例の電動弁において副弁ポートの開度が最大となった際の要部を拡大して示す断面図である。
図9】第2の変形例の電動弁において副弁ポートの開度が最小となった際の要部を拡大して示す断面図である。
図10】第2の変形例の電動弁において副弁ポートの開度が中程度となった際の要部を拡大して示す断面図である。
図11】第2の変形例の電動弁において副弁ポートの開度が最大となった際の要部を拡大して示す断面図である。
図12】前記実施形態にかかる電動弁において副弁ポートの弁開度を0とした際の要部を拡大して示す断面図である。
図13】前記第1の変形例の電動弁において副弁ポートの弁開度を0とした際の要部を拡大して示す断面図である。
図14】前記第2の変形例の電動弁において副弁ポートの弁開度を0とした際の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の電動弁1は、パッケージエアコンやルームエアコン等の空気調和機の冷凍サイクルシステムに用いられるものであって、図1に示すように、弁ハウジング2と、ガイド部材3と、主弁体4と、副弁体5と、駆動部6と、を備える。主弁体4及び副弁体5は所定の軸方向に沿って移動するように設けられており、以下では、この軸方向をZ方向とし、Z方向に直交する2方向をX方向及びY方向とし、Z方向における上下は図1を基準とする。
【0015】
弁ハウジング2は、例えば黄銅やステンレス等により略円筒形状に形成されており、その内側に主弁室2Rを有している。弁ハウジング2は、その側面においてX方向の一方側に開口した第1ポート21と、Z方向下側に開口した第2ポート22と、を有する。第1ポート21には、X方向に沿って延びる第1継手管11が接続され、第2ポート22には、Z方向に沿って延びる第2継手管12が接続され、第1継手管11及び第2継手管12は主弁室2Rに連通する。第1継手管11及び第2継手管12は、例えばろう付け等によって弁ハウジング2に対して固着されればよい。
【0016】
弁ハウジング2の下端部には、Z方向を軸方向として主弁室2R側に(上側に向かって)突出した円筒状の主弁座23が形成され、この主弁座23の内側が主弁ポート23aとなっており、主弁ポート23aと第2ポート22とが連通する。即ち、第2継手管12が主弁ポート23aを介して主弁室2Rに導通される。本実施形態では、電動弁1は、第1ポート21を一次側とするとともに第2ポート22を二次側とし、第1継手管11から主弁室2Rに流入した流体(冷媒)が第2継手管12から流出するように使用されるものとするが、電動弁1は、双方向に流体が流れ得るサイクルに組み込まれてもよい。
【0017】
ガイド部材3は、弁ハウジング2の上端の開口部に取り付けられるものであって、弁ハウジング2の内周面内に圧入される圧入部31と、圧入部31の内側に位置する略円柱状のガイド部32と、ガイド部32の上部に延設されたホルダ部33と、ガイド部32の外周に位置するリング状のフランジ部34と、を有している。圧入部31、ガイド部32及びホルダ部33は樹脂製の一体品として構成されている。また、フランジ部34は、例えば、黄銅やステンレス等により構成された金属板であり、このフランジ部34は、インサート成形により樹脂製の圧入部31及びホルダ部33と共に一体に設けられている。
【0018】
ガイド部材3は、弁ハウジング2に組み付けられ、フランジ部34において弁ハウジング2の上端部に溶接により固定されている。また、ガイド部材3には、Z方向を軸方向とする円筒形状のガイド孔32aがガイド部32に形成され、ガイド孔32aと同軸の雌ねじ部(ねじ孔)33aがホルダ部33の中心に形成されている。
【0019】
主弁体4は、ホルダ部33のガイド孔32a内に配置されるものであって、全体がZ方向を軸方向とする円筒状に形成されている。主弁体4は、XY平面に沿って延在し副弁体5が接近又は離隔する隔壁部41と、隔壁部41から主弁ポート23aとは反対側(上側)に向かって延びる筒状部42と、主弁座23に対して接近又は離隔する主弁部43と、を一体に有する。
【0020】
隔壁部41は、筒状部42の下端部に設けられた副弁座部であり、所定の板厚(Z方向寸法)を有する板状に形成されている。隔壁部41と筒状部42とによって有底筒状の部分が形成され、この有底筒状の部分の内部が副弁室4Rとなる。隔壁部41の中央部には、貫通孔である副弁ポート41aが形成されている。筒状部42は、円筒状に形成され、その内周面がニードルガイド孔42aとなる。筒状部42のニードルガイド孔42a内には、後述する弁軸51に取り付けられたワッシャ53とガイド用ボス部54とが挿通されるとともに、この筒状部42の上端にはリング状のリテーナ44が嵌合固着または溶接等により固着されている。また、リテーナ44とガイド孔32aの上端部との間には、主弁ばね4aが配設され、この主弁ばね4aにより主弁体4は主弁座23の方向(Z方向下側;閉方向)に付勢されている。
【0021】
筒状部42には、図5にも示すように、その内外を連通する複数(本実施形態では4個であり、1個以上形成されていればよい)の連通孔421が形成されている。4個の連通孔421は、Z方向を中心とする周方向において等間隔で並んでいる。図5では、2個の連通孔421がX方向に並ぶとともに他の2個の連通孔421がY方向に並んだ様子を示しているが、主弁体4は弁ハウジング2に対して回転可能に設けられており、主弁体4の回転により連通孔421の位置は変化し得る。即ち、連通孔421と第1ポート21との位置関係は変化し得る。筒状部42に連通孔421が形成されていることにより、主弁室2Rと副弁室4Rと副弁ポート41aと主弁ポート23aとが連通するようになっている。
【0022】
主弁部43は、筒状部42を隔壁部41よりも下側に延長するように略円筒状に形成されている。主弁部43は、全閉状態において主弁座23に対して着座(当接)してもよいし、多少離隔していてもよい。
【0023】
副弁体5は、ニードル弁であって、後述するロータ軸61の下端部に設けられており、ロータ軸61側に連なる弁軸51と、弁軸51の下端に連なるニードル部52と、を一体に有している。副弁体5は、弁軸51に配設された円環状のワッシャ53と、弁軸51に固着されたガイド用ボス部54と、をさらに有している。ガイド用ボス部54は弁軸51と別体として固着されているが、ガイド用ボス部54は弁軸51と一体に形成されたものであってもよい。ワッシャ53及びガイド用ボス部54は、ニードルガイド孔42a内に摺動可能に挿通されている。
【0024】
駆動部6は、弁ハウジング2の上端に固定されたケース24の内外に設けられたものであって、ステッピングモータ6Aと、ステッピングモータ6Aの回転により副弁体5を進退させるねじ送り機構6Bと、ステッピングモータ6Aの回転を規制するストッパ機構6Cと、を有する。ケース24は、弁ハウジング2に対して例えば溶接等によって気密に固定されている。
【0025】
ステッピングモータ6Aは、ロータ軸61と、ケース24の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ62と、ケース24の外周においてマグネットロータ62に対して対向配置されたステータコイル63と、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。ロータ軸61はブッシュを介してマグネットロータ62の中心に取り付けられ、このロータ軸61におけるガイド部材3側の外周には雄ねじ部61aが形成されている。この雄ねじ部61aはガイド部材3の雌ねじ部33aに螺合されており、これにより、ガイド部材3はロータ軸61をZ方向に沿った軸線上に支持している。そして、ガイド部材3の雌ねじ部33aとロータ軸61の雄ねじ部61aとが、ねじ送り機構6Bを構成している。
【0026】
ここで、電動弁1における主弁体4及び副弁体5の開閉動作の詳細について説明する。ステッピングモータ6Aの駆動によってマグネットロータ62及びロータ軸61が回転すると、ロータ軸61の雄ねじ部61aとガイド部材3の雌ねじ部33aとのねじ送り機構6Bにより、ロータ軸61がZ方向に沿って移動する。これにより、副弁体5がZ方向に進退移動して副弁ポート41aに対して接近又は離隔し、副弁ポート41aの弁開度が制御される。また、副弁体5(ワッシャ53)が主弁体4(リテーナ44)に係合し、主弁体4は副弁体5と共に移動して、主弁座23に対して接近又は離隔する。これにより、第1継手管11から第2継手管12に向かって流れる冷媒の流量が制御される。
【0027】
マグネットロータ62には突起部62aが形成されており、マグネットロータ62の回転に伴って突起部62aが回転ストッパ機構6Cを作動させ、ロータ軸61(及びマグネットロータ62)の最下端位置及び最上端位置が規制される。図1はロータ軸61(及びマグネットロータ62)が最下端位置にある状態を示す。
【0028】
以下、副弁ポート41a及び副弁体5の詳細な形状及びこれらの関係について、図2~4を参照しつつ説明する。図2は、副弁体5が最下端位置に位置付けられて副弁ポート41aの弁開度が最小となった状態を示し、図3は、副弁体5が最下端位置よりも上側に位置づけられて弁開度が中程度となった状態を示し、図5は、副弁体5が最上端位置に位置付けられて副弁ポート41aの弁開度が最大となった状態を示す。副弁体5は、最下端位置において隔壁部41には当接せず、流体が副弁ポート41aを通過可能となっている。また副弁体5は、最上端位置において、その下端部(先端部)が副弁ポート41a内に位置する。
【0029】
副弁ポート41aは、上端面411から下側(主弁ポート23a側)に向かうにしたがって徐々に内径が小さくなっていくテーパ部412と、テーパ部412の下端部から下側に向かって延びる(内径が一定の)円筒状の筒状内周面413と、を有する。テーパ部412の上端部412Aは、隔壁部41において主弁ポート23aとは反対側の端部に位置し、開口端部となる。筒状内周面413は、上端部412Aよりも主弁ポート23a側に位置して上端部412Aよりも小径に形成されており、小径部となる。また、筒状内周面413は副弁ポート41aにおいて内径が最小の部分となっている。
【0030】
テーパ部412は、副弁ポート41a全体の半分以上に亘って形成されている。即ち、筒状内周面413は、隔壁部41のZ方向中央部よりも主弁ポート23a側に設けられている。また、筒状内周面413は、隔壁部41のZ方向下側1/3の領域に設けられていることが好ましい。
【0031】
副弁体5のニードル部52は、Z方向上側から順に、弁軸51と連続的に形成され外径が一定の第1ストレート部521と、Z方向下側に向かって徐々に外径が小さくなっていく第1テーパ部522と、外径が一定の第2ストレート部523と、Z方向下側に向かって徐々に外径が小さくなっていく円錐台状の第2テーパ部524と、を有する。
【0032】
第1テーパ部522のZ方向に対する傾斜角度は、副弁ポート41aのテーパ部412のZ方向に対する傾斜角度よりも小さい。即ち、図2に示すように第1テーパ部522とテーパ部412とが対向した状態において、Z方向上側に向かうにしたがってこれらの間隔が大きくなる。第2ストレート部523の外径は筒状内周面413の内径よりも小さい。
【0033】
図2に示す状態においては、第1ストレート部521の下端部と、第1テーパ部522の全体と、第2ストレート部523の全体と、第2テーパ部524の上端部と、が副弁ポート41aの内側に位置する。副弁体5と副弁ポート41aとの間隔は、第2ストレート部523と筒状内周面413との間において最小となり、この位置が最小絞り部A1となる。副弁体5と副弁ポート41aとの間隔が大きいほど流体が通過可能な断面積が大きく流体が通過しやすいことから、以下では、副弁体5と副弁ポート41aとの間隔に着目して説明する。最小絞り部A1よりも上側において、第1ストレート部521とテーパ部412との間に通過部A2が形成され、第1テーパ部522とテーパ部412との間に通過部A3が形成される。通過部A3において、最小絞り部A1よりも副弁体5と副弁ポート41aとの間隔が大きく、通過部A2において、通過部A3よりも副弁体5と副弁ポート41aとの間隔が大きい。
【0034】
このように、最小絞り部A1よりも上側(第1ポート21を一次側とした際の上流側)に、副弁体5と副弁ポート41aとの間隔が大きい部分が形成され、この部分は、流体が通過しやすいことから、流体が整流される整流部となる。このとき、第1通過部A1と第2通過部A2との両方が整流部として機能してもよいし、一方のみが整流部として機能してもよい。即ち、副弁体5と副弁ポート41aとの間隔が大きすぎても小さすぎても整流効果が得られにくいことから、この間隔が適切な大きさとなる部分が整流部となればよい。このように、開口端部(上端部412A)において整流部が形成されてもよいし、開口端部と小径部との間の位置に整流部が形成されてもよい。図示の例では、主として第2通過部A2が整流部として機能する。
【0035】
図3に示す状態においては、第1テーパ部522の下側部分と、第2ストレート部523の全体と、第2テーパ部524の全体と、が副弁ポート41aの内側に位置する。副弁体5と副弁ポート41aとの間隔は、第2テーパ部524と筒状内周面413の上端部(テーパ部412との境界部)との間において最小となり、この位置が最小絞り部A4となる。図2に示す状態と同様に、最小絞り部A4よりも上側に、副弁体5と副弁ポート41aとの間隔が大きい部分が形成され、この部分が整流部となる。図示の例では、主として、第1テーパ部522又は第2ストレート部523とテーパ部412との間の通過部A5が整流部として機能する。
【0036】
図4に示す状態においては、第2テーパ部524の下側部分のみが副弁ポート41aの内側に位置する。副弁体5と副弁ポート41aとの間隔は、第2テーパ部524の先端部とテーパ部412との間において最小となり、この位置が最小絞り部A6となる。即ち、小径部としての筒状内周面413において最小絞り部が形成されない状態となっている。図2、3に示す状態と同様に、最小絞り部A6よりも上側に、副弁体5と副弁ポート41aとの間隔が大きい部分である通過部A7が形成され、この通過部A7が整流部となる。
【0037】
副弁ポート41aがテーパ部412を有することから、ニードル部52の少なくとも一部が副弁ポート41aの内側に位置すれば、上記と同様に、最小絞り部と、最小絞り部よりも上側に位置する整流部と、が形成される。即ち、図3に示す状態から図5に示す状態の間において、ニードル部52のうちXY平面内において副弁ポート41aと対向する部分が変化していくものの、最小絞り部及び整流部が形成される。尚、副弁体5は、この範囲を超えて移動するように設けられてもよい。
【0038】
第1ポート21から主弁室2Rに流入した流体が、主弁体4の連通孔421を通過して副弁室4Rに流入する際、4個の連通孔421それぞれにおいて流量が異なることがある。即ち、第1ポート21に近い(第1ポート21側を向いた)連通孔421ほど流量が大きくなりやすく、第1ポート21から遠い(第1ポート21側を向いていない)連通孔421ほど流量が小さくなりやすい傾向がある。従って、4個の連通孔421を通過して副弁ポート41aに到達する流体の流量にも差が生じ、副弁ポート41aの近傍において、流体の流量が位置によって異なり不均一となることがある。
【0039】
また、主弁体4が回転して連通孔421と第1ポート21との位置関係が変化し得ることから、連通孔421を通過する流体の流量が時間変化することがあり、副弁ポート41a近傍において流体の流量が時間的に不安定化することがある。
【0040】
上記のように流量の空間的又は時間的な不安定化が生じた場合でも、副弁ポート41aを通過する流体は、整流部を通過することで整流された後、実質的な弁開度を決定する最小絞り部によって絞られて流量が調節される。
【0041】
次に、図6に基づいて本実施形態の電動弁1が設けられる冷凍サイクルシステムの一例について説明する。この冷凍サイクルシステムは、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。電動弁1は、「除湿制御弁」として第1室内熱交換器91(除湿時冷却器として作動)と第2室内熱交換器92(除湿時加熱器として作動)との間に設けられている。そして、電動弁1、第1室内熱交換器91、第2室内熱交換器92、電子膨張弁93、室外熱交換器94、圧縮機95及び四方弁96は、ヒ-トポンプ式冷凍サイクルを構成している。第1室内熱交換器91と第2室内熱交換器92及び電動弁1は室内に設置され、電子膨張弁93、室外熱交換器94、圧縮機95及び四方弁96は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0042】
以上の本実施形態によれば、副弁ポート41aが開口端部としての上端部412Aと小径部としての筒状内周面413とを有することで、最小絞り部よりも上流側に整流部を形成することができる。従って、流体が第1ポート21及び連通孔421を通過して副弁室4Rに流入する際に、流量が不安定化した場合であっても、流体を整流することで騒音を低減することができる。
【0043】
また、副弁ポート41aがテーパ部412を有することで、流体がテーパ部412に沿って流れやすく、流体の流れに乱れが生じることを抑制することができる。
【0044】
また、小径部としての筒状内周面413が隔壁部41のZ方向中央部よりも主弁ポート23a側に設けられていることで、流体を整流するための空間のZ方向寸法を確保して容積を大きくすることができ、流体を整流しやすくすることができる。
【0045】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、副弁ポート41aがテーパ部412を有し、副弁体5がテーパ部522、524を有するものとしたが、副弁ポート及び副弁体の形状の組み合わせはこれに限定されない。
【0046】
図7、8に示す第1の変形例では、副弁ポート41aが前記実施形態と同様の形状を有し、副弁体5Aのニードル部52AがZ方向上側から順に第1ストレート部521と第1テーパ部522と第2ストレート部525とを有する。図7は、副弁体5Aが最下端位置に位置付けられて副弁ポート41aの弁開度が最小となった状態を示し、図8は、副弁体5Aが最上端位置に位置付けられて副弁ポート41aの弁開度が最大となった状態を示す。副弁体5Aは、最下端位置において隔壁部41には当接せず、流体が副弁ポート41aを通過可能となっている。また副弁体5Aは、最下端位置及び最上端位置のいずれにおいても、その下端部(先端部)が副弁ポート41aの内側に配置され、副弁体5Aが最下端位置と最上端位置との間で移動する際、ニードル部52Aのうち第2ストレート部525が、XY平面において副弁ポート41aと対向する。
【0047】
図7に示す状態においては、第2ストレート部525の下端部とテーパ部412との間に最小絞り部A8が形成され、第2ストレート部525とテーパ部412の上端部412Aとの間の通過部A9が整流部として機能する。同様に、図8に示す状態においては、第2ストレート部525の下端部とテーパ部412との間に最小絞り部A10が形成され、第2ストレート部525とテーパ部412の上端部412Aとの間の通過部A11が整流部として機能する。
【0048】
尚、第1の変形例においては、前記実施形態と比較して、筒状内周面413のZ方向寸法が小さく形成されているものとするが、筒状内周面の寸法は適宜に設定されればよく、筒状内周面が省略されて副弁ポートの全体がテーパ部となっていてもよい。また、副弁ポートのうち上端側に筒状内周面を形成し、その下側にテーパ部を形成してもよい。
【0049】
図9~11に示す第2の変形例では、副弁ポート41bが筒状内周面414と環状部415とを有し、副弁体5が前記実施形態と同様の形状を有する。図9は、副弁体5が最下端位置に位置付けられて副弁ポート41bの弁開度が最小となった状態を示し、図10は、副弁体5が最下端位置よりも上側に位置づけられて弁開度が中程度となった状態を示し、図11は、副弁体5が最上端位置に位置付けられて副弁ポート41bの開度が最大となった状態を示す。副弁体5は、最下端位置において隔壁部41には当接せず、流体が副弁ポート41bを通過可能となっている。また副弁体5は、最上端位置において、その下端部(先端部)が弁ポート41bの内側に配置される。
【0050】
筒状内周面414は、隔壁部41の上端面411を開口端部としてZ方向に沿って下側に延び、内径が略一定となっている。環状部415は、筒状内周面414の下端部から内周側に向かうように、XY平面に沿って延在して板状に形成されている。筒状内周面414の内径よりも環状部415の内径の方が小さくなっており、筒状内周面414と環状部415との間に段差部416が形成されている。第2ストレート部523の外径は、環状部415の貫通孔の内径よりも小さい。
【0051】
図9に示す状態では、第2ストレート部523と環状部415との間に最小絞り部A12が形成され、これよりも上側に、最小絞り部A12よりも副弁ポート41bとニードル部52との間隔が大きい通過部が形成されている。このような通過部のうち、例えば、主として第1ストレート部521と筒状内周面414との間の通過部A13が整流部として機能する。図10に示す状態では、第2テーパ部524の先端部と環状部415との間に最小絞り部A14が形成され、これよりも上側に、最小絞り部A14よりも副弁ポート41bとニードル部52との間隔が大きい通過部が形成されている。このような通過部のうち、例えば、主として第1テーパ部522と筒状内周面414との間の通過部A15が整流部として機能する。図11に示す状態では、第2テーパ部524の先端部と筒状内周面414との間に最小絞り部A16が形成され、これよりも上側に、最小絞り部A16よりも副弁ポート41bとニードル部52との間隔が大きい通過部(第2テーパ部524と筒状内周面414との間の通過部A17)が形成され、通過部A17が整流部として機能する。
【0052】
また、前記実施形態、第1の変形例及び第2の変形例として、副弁ポート及び副弁体の形状の組み合わせを例示したが、これらの形状は適宜に組み合わされていればよく、上記に限定されない。例えば副弁ポートがテーパ部と段差部との両方を有していてもよく、副弁ポートが開口端部及び小径部を有し、且つ、最小絞り部よりも上流側に、最小絞り部よりも容積の大きい整流部が形成されるようになっていればよい。
【0053】
また、前記実施形態では、副弁体5が最下端位置において隔壁部41には当接せず、流体が副弁ポート41aを通過可能となっているものとしたが、図12~14に具体例を示すように、副弁体が隔壁部に当接することで流体が通過不能となる構成としてもよい。図12は前記実施形態の形状に対応しており、第1テーパ部522が、テーパ部412と筒状内周面413との境界部に当接する。図13は前記第1の変形例に対応しており、第1テーパ部522のうち第1ストレート部521の近傍部分が上端部412Aに当接する。図14は前記第2の変形例に対応しており、第1テーパ部522が環状部415の上端部に当接する。尚、副弁体と副弁ポートとが当接する位置の組み合わせは、上記に限定されない。
【0054】
また、前記実施形態では、小径部としての筒状内周面413が隔壁部41のZ方向中央部よりも主弁ポート23a側に設けられているものとしたが、小径部の位置はこれに限定されない。例えば、隔壁部のZ方向寸法が充分に大きく整流部の容積を確保しやすいような場合には、小径部を隔壁部のZ方向中央部よりも主弁ポートとは反対側に設けてもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、小径部としての筒状内周面413が、副弁ポート41aにおいて内径が最小の部分であり、且つ、隔壁部41のうち最も主弁ポート23a側に位置しているものとしたが、例えば、小径部から主弁ポート側に向かうにしたがって内径が再び大きくなるような形状(くびれ形状)としてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…電動弁、2…弁ハウジング、21…第1ポート、22…第2ポート、23a…主弁ポート、2R…主弁室、4…主弁体、41…隔壁部、41a,41b…副弁ポート、412…テーパ部、412A…上端部(開口端部)、413…筒状内周面(小径部)、414…筒状内周面、415…環状部、416…段差部、42…筒状部、421…連通孔、4R…副弁室、5…副弁体、6…駆動部、91…第1室内熱交換器、92…第2室内熱交換器92、93…電子膨張弁、94…室外熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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