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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129499
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】電池システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20220830BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220830BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028180
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 公彦
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503DA04
5G503FA06
5G503HA03
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】電池システムのサイズを小さくしつつ適切に電池の充電および放電を実行する電池システムおよび制御方法を提供する。
【解決手段】充電装置200と、充電装置200に対して並列に接続可能な複数の電池モジュール110~130と、制御装置400とを備え、複数の電池モジュールの各々は、電池を有し、制御装置400は、充電指令を受信した場合に、複数の電池モジュールの各々の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も低い第1電池E1と、電圧値が2番目に低い第2電池E2とを特定し、第1電池E1の充電を開始し、第1電池E1の充電を開始した後、第1電池モジュール110の電圧値と第2電池E2の電圧値V2との差分値が第1閾値以下となった場合に、第2電池E2の充電を開始する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電装置と、
前記充電装置に対して並列に接続可能な複数の電池モジュールと、
制御装置とを備え、
前記複数の電池モジュールの各々は、電池を有し、
前記制御装置は、
充電指令を受信した場合に、前記複数の電池モジュールの各々の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も低い第1電池と、電圧値が2番目に低い第2電池とを特定し、
前記第1電池の充電を開始し、
前記第1電池の充電を開始した後、前記第1電池を含む第1電池モジュールの電圧値と前記第2電池の電圧値との差分値、または、前記第1電池の電圧値と前記第2電池の電圧値との差分値が第1閾値以下となった場合に、前記第2電池の充電を開始する、電池システム。
【請求項2】
前記複数の電池モジュールは、3個の電池モジュールを含み、
前記制御装置は、
前記充電指令を受信した場合に、前記第1電池と前記第2電池とともに、電圧値が3番目に低い第3電池を特定し、
前記第2電池の充電を開始した後、前記第2電池を含む第2電池モジュールの電圧値と前記第3電池の電圧値との差分値、または、前記第2電池の電圧値と前記第3電池の電圧値との差分値が第2閾値以下となった場合に、前記第3電池の充電を開始する、請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記充電指令を受信した場合において、前記差分値が前記第1閾値以下である場合には、前記第1電池の充電および前記第2電池の充電を開始する、請求項1または請求項2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記充電指令を受信した場合において、前記差分値が前記第1閾値より大きいが前記第1閾値よりも大きい第3閾値以下である場合には、該充電指令を受信したときから所定期間が経過するまでに前記第1電池モジュールの電圧値または前記第1電池の電圧値を線形に増加させるように前記第1電池の充電を開始する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電池システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記充電装置による充電対象の電池の数が所定数以下である場合には、前記制御装置による充電電流を制限する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電池システム。
【請求項6】
負荷と、
前記負荷に対して並列に接続可能な複数の電池モジュールと、
制御装置とを備え、
前記複数の電池モジュールの各々は、電池を有し、
前記制御装置は、
放電指令を受信した場合に、前記複数の電池モジュールの各々の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も高い第1電池と、電圧値が2番目に高い第2電池とを特定し、
前記第1電池の放電を開始し、
前記第1電池の放電を開始した後、前記第1電池を含む第1電池モジュールの電圧値と前記第2電池の電圧値との差分値、または、前記第1電池の電圧値と前記第2電池の電圧値との差分値が第1閾値以下となった場合に、前記第2電池の放電を開始する、電池システム。
【請求項7】
前記複数の電池モジュールは、3個の電池モジュールを含み、
前記制御装置は、
前記放電指令を受信した場合に、前記第1電池と前記第2電池とともに、電圧値が3番目に高い第3電池を特定し、
前記第2電池の放電を開始した後、前記第2電池を含む第2電池モジュールの電圧値と前記第3電池の電圧値との差分値、または、前記第2電池の電圧値と前記第3電池の電圧値との差分値が第2閾値以下となった場合に、前記第3電池の放電を開始する、請求項6に記載の電池システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記放電指令を受信した場合において、前記差分値が前記第1閾値以下である場合には、前記第1電池の放電および前記第2電池の放電を開始する、請求項6または請求項7に記載の電池システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記負荷に放電される電池の数が所定数以下である場合には、前記制御装置による放電電流を制限する、請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の電池システム。
【請求項10】
前記第1閾値は、前記第1電池モジュールの抵抗値、および前記第1電池モジュールと前記第2電池を含む第2電池モジュールとの間で流れることが許容される電流値に基づいて算出される、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の電池システム。
【請求項11】
前記抵抗値は、前記第1電池の内部抵抗値と、前記第1電池に対応する部品の抵抗値との合成値である、請求項10に記載の電池システム。
【請求項12】
充電装置と、前記充電装置に対して並列に接続可能な複数の電池モジュールとを備える電池システムの制御方法であって、
前記複数の電池モジュールの各々は、電池を有し、
前記制御方法は、
充電指令を受信した場合に、前記複数の電池モジュールの各々の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も低い第1電池と、電圧値が2番目に低い第2電池とを特定することと、
前記第1電池の充電を開始することと、
前記第1電池の充電を開始した後、前記第1電池を含む第1電池モジュールの電圧値と前記第2電池の電圧値との差分値、または、前記第1電池の電圧値と前記第2電池の電圧値との差分値が第1閾値以下となった場合に、前記第2電池の充電を開始することとを備える制御方法。
【請求項13】
負荷と、前記負荷に対して並列に接続可能な複数の電池モジュールとを備える電池システムの制御方法であって、
前記複数の電池モジュールの各々は、電池を有し、
前記制御方法は、
放電指令を受信した場合に、前記複数の電池モジュールの各々の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も高い第1電池と、電圧値が2番目に高い第2電池とを特定することと、
前記第1電池の放電を開始することと、
前記第1電池の放電を開始した後、前記第1電池を含む第1電池モジュールの電圧値と前記第2電池の電圧値との差分値、または、前記第1電池の電圧値と前記第2電池の電圧値との差分値が第1閾値以下となった場合に、前記第2電池の放電を開始することとを備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力を動力とする移動体(たとえば、EV(Electric Vehicle)などの車両または船舶など)の需要が増加している。このような移動体に用いられる組電池システム(以下、「電池システム」とも称される。)では、長距離の走行または航行を可能とするため、複数の組電池(以下、単に「電池」とも称される。)が並列に接続された高容量構成が採用されている。該複数の電池は、移動体の駐車または停泊時に充電装置により充電され、走行または航行時に移動体の推進器もしくは移動体内の負荷に対して放電される。
【0003】
ところで、複数の電池間においてセルの特性ばらつきなどで 電圧差が生じる場合がある。電圧差が生じた複数の電池が並列接続される場合、該複数の電池のうち電圧値が高い電池から、電圧値が低い電池に電流が流れるという、いわゆる「横流」が発生する。
【0004】
特許文献1においては、このような横流の発生を防止するための電池システムが提案されている。この電池システムは、たとえば、複数の電池を充電する場合または複数の電池から放電させる場合に、複数の電池の電圧差を均等化するための処理を実行する。この電池システムでは、電池と電池との間に均等化用抵抗が設けられる。そして、電圧値が高い電池から、電圧値が低い電池に対して、電流が均等化用抵抗を経由して流れることにより、均等化処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-182623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この特許文献1においては、均等化抵抗を備える必要があることから、システムのサイズが大きくなるという問題があった。また、抵抗を経由した電流を利用しているため、電圧差が小さい場合は電流が小さくなり、均等化に要する時間が長くなるという問題もあった。
【0007】
本開示の目的は、電池システムのサイズを大きくすることなく短時間で電池の電圧均等化を実行する電池システムおよび制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に従うと、電池システムは、充電装置と、充電装置に対して並列に接続可能な複数の電池モジュールと、制御装置とを備える。複数の電池モジュールの各々は、電池を有する。制御装置は、充電指令を受信した場合に、複数の電池モジュールの各々の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も低い第1電池と、電圧値が2番目に低い第2電池とを特定する。先ず、制御装置は、第1電池の充電を開始する。次に、制御装置は、第1電池の充電を開始した後、第1電池を含む第1電池モジュールの電圧値と第2電池の電圧値との差分値、または、第1電池の電圧値と第2電池の電圧値との差分値が第1閾値以下となった場合に、第2電池の充電を開始する。
【0009】
本開示の別の局面に従うと、電池システムは、負荷と、負荷に対して並列に接続可能な複数の電池モジュールと、制御装置とを備える。複数の電池モジュールの各々は、電池を有する。制御装置は、放電指令を受信した場合に、複数の電池モジュールの各々の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も高い第1電池と、電圧値が2番目に高い第2電池とを特定する。先ず、制御装置は、第1電池の放電を開始する。次に、制御装置は、第1電池の放電を開始した後、第1電池を含む第1電池モジュールの電圧値と第2電池の電圧値との差分値、または、第1電池の電圧値と第2電池の電圧値との差分値が第1閾値以下となった場合に、第2電池の放電を開始する。
【0010】
本開示の別の局面に従うと、制御方法は、充電装置と、充電装置に対して並列に接続可能な複数の電池モジュールとを備える電池システムの制御方法である。複数の電池モジュールの各々は、電池を有する。制御方法においては、充電指令を受信した場合に、複数の電池モジュールの各々の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も低い第1電池と、電圧値が2番目に低い第2電池とを特定する。先ず、制御方法においては、第1電池の充電を開始する。次に、制御方法においては、第1電池の充電を開始した後、第1電池を含む第1電池モジュールの電圧値と第2電池の電圧値との差分値、または、第1電池の電圧値と第2電池の電圧値との差分値が第1閾値以下となった場合に、第2電池の充電を開始する。
【0011】
本開示の別の局面に従うと、制御方法は、負荷と、負荷に対して並列に接続可能な複数の電池モジュールとを備える電池システムの制御方法である。複数の電池モジュールの各々は、電池を有する。制御方法においては、放電指令を受信した場合に、複数の電池モジュールの各々の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も高い第1電池と、電圧値が2番目に高い第2電池とを特定する。先ず、制御方法においては、第1電池の放電を開始する。次に、制御方法においては、第1電池の放電を開始した後、第1電池を含む第1電池モジュールの電圧値と第2電池の電圧値との差分値、または、第1電池の電圧値と第2電池の電圧値との差分値が第1閾値以下となった場合に、第2電池の放電を開始する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の電池システムでは、システムのサイズを大きくすることなく電池の充電および放電を適切に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電池システムの実装例を示す図である。
図2】電池システムの等価回路図である。
図3】本実施の形態の制御装置の機能ブロック図である。
図4】制御装置の充電処理を示すフローチャートである。
図5】比較例の実験結果を示す図である。
図6】本実施の形態の電池システムの実験結果を示す図である。
図7】ランプ充電制御が実行された場合を示す図である。
図8】制御装置の放電処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
<電池システムの構成例>
図1は、電池システム100の実装例を示す図である。電池システム100は、移動体10に実装される。移動体10は、高容量電池を動力とする船舶または電気自動車などである。 移動体10は、電池システム100と、充電装置200と、負荷300(たとえば、インバータ)と、制御装置400とを備える。負荷300は、たとえば、推進器であってもよい。
【0016】
電池システム100と、充電装置200と、負荷300とは、同一の回路内で接続される。負荷300(たとえばインバータ)は、電池システム100から供給される直流電流を交流電流に変換して、図示しないモーターに交流電流を電力として供給する。充電装置200は、電池システム100へ電力を供給し、二次電池である電池システム100の充電を行なう。
【0017】
制御装置400は、電池システム100と、充電装置200と、負荷300とに接続されている。制御装置400は、充電装置200を制御することにより、電池システム100への充電を制御可能である。また、制御装置400は、負荷300を制御することにより、負荷300への放電電流値を制御可能である。
【0018】
電池システム100は、個別のN個の電池モジュールを備える。ただし、Nは2以上の整数である。本実施の形態では、N=3である。つまり、電池システム100は、3つの電池モジュールを備える。電池システム100は、電池モジュール110、電池モジュール120、電池モジュール130、および全体BMS(Battery Management System)101を備える。電池モジュール110、電池モジュール120、電池モジュール130の各々は、充電装置200および負荷300に対して並列に接続されている。以下では、電池モジュール110、電池モジュール120、電池モジュール130の各々を、各電池モジュール110~130と称する場合がある。以下では、主に、電池モジュール110を説明するが、電池モジュール120、130も電池モジュール110と同様の構成である。
【0019】
電池モジュール110は、電池E1と、バスバーB1と、ヒューズH1と、リレーSw1と、電圧センサ111と、電流センサ113と、BMS114とを備える。電池モジュール120は、電池E2と、バスバーB2と、ヒューズH2と、リレーSw2と、電圧センサ121と、電流センサ123と、BMS124とを備える。電池モジュール130は、電池E3と、バスバーB3と、ヒューズH3と、リレーSw3と、電圧センサ131と、電流センサ133と、BMS134とを備える。なお、リレーは、「接続素子」とも称される。
【0020】
電池E1は、複数の単セル電池が直列に接続されていることにより形成される組電池である。電池E1では、たとえば、80個から100個の単セル電池が直列に接続される。単セル電池は、二次電池である。たとえば、単セル電池は、リチウムイオン二次電池またはニッケル水素二次電池などであってもよい。
【0021】
バスバーB1は、電池E1、ヒューズH1、リレーSw1とを接続するための導電部材である。バスバーB1は、複数の単セル電池を接続するために、電池E1内に設けられてもよい。
【0022】
ヒューズH1は、電池モジュール110内に過電流が流れることを防ぐ。電池システム100において、許容電流値よりも高い値の電流が流された場合、ヒューズH1~H3等の過放電保護が働き、各電池モジュール110~130の使用が中断されるように構成されている。
【0023】
電圧センサは、該電圧センサに対応する電池の電圧値を検出し、該検出した電圧値を対応するBMSに出力する。たとえば、電圧センサ111は、電圧センサ111に対応する電池E1の電圧値V1を検出する。電圧センサ121は、電圧センサ121に対応する電池E2の電圧値V2を検出する。電圧センサ131は、電圧センサ131に対応する電池E3の電圧値V3を検出する。
【0024】
また、電流センサは、該電圧センサに対応する電池モジュールに流れる電流値を検出し、該検出した電流値を対応するBMSに出力する。たとえば、電流センサ113は、電池モジュール110を流れる電流値I1を検出する。電流センサ123は、電池モジュール120を流れる電流値I2を検出する。電流センサ133は、電池モジュール130を流れる電流値I3を検出する。
【0025】
BMS114は、リレーSw1のオン状態またはオフ状態を制御する。リレーSw1がオン状態であるときには、充電装置200による充電が実行される。リレーSw1がオン状態であるときには、負荷300への放電が実行される。リレーSw1がオフ状態であるときには、充電装置200による充電および負荷300への放電のいずれも実行されない。
【0026】
また、BMS114は、電圧センサ111からの電圧値V1と、電流センサ113からの電流値I1とを取得する。また、BMS114は、所定の演算により、たとえば、電池E1のSOC(State Of Charge)および電池モジュールの抵抗値(後述の抵抗値r1など)を取得可能である。
【0027】
電池モジュールは、電池と、該電池に対応する対応部材とを備える。本実施の形態では、対応部材は、バスバー、ヒューズ、およびリレーである。
【0028】
全体電圧センサ150は、並列に接続されている電池モジュールの全体電圧値Vcを検出する。全体電圧センサ150は、検出した全体電圧値Vcを全体BMS101に出力する。全体BMS101は、各BMS114、124、134が取得したパラメータ(電圧値など)および全体電圧センサ150からの全体電圧値Vcを取得する。全体電圧センサ150は、独立した回路として実装されてもよく、各BMS114、124、134もしくは全体BMS101の一部の機能として実装されてもよい。また、全体BMS101は、各電池モジュール110~130を制御する。
【0029】
図1では、各電池モジュール110~130がBMS114~134をそれぞれ備える例について説明した。しかし、電池システム100では、BMS114~134を備えない構成であってもよい。たとえば、各電池モジュール110~130の電圧センサ、電流センサは、直接、全体BMS101に接続されてもいてもよい。また、電池システム100では、全体BMS101を備えない構成であってもよい。たとえば、以下で説明する全体BMS101が実行する処理を、BMS114が実行してもよい。
【0030】
BMS114、124、134、制御装置400、および全体BMS101は、各種のプログラムを実行する演算主体である。制御装置400および全体BMS101は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。
【0031】
BMS114、124、134、制御装置400、および全体BMS101は、図示しないメモリを備える。メモリは、全体BMS101が任意の制御プログラムを実行するにあたって、プログラムコードおよびワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリは、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイス(RAM)で構成される。
【0032】
BMS114、124、134、制御装置400、および全体BMS101は、図示しないROM(Read Only Memory)等の記憶装置を備える。ROM等の記憶装置は、演算処理などに必要な各種のプログラム及びデータを格納する記憶領域を提供する。ROM等の記憶装置は、通常の書き換え不可能なメモリの他に、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスで構成される。
【0033】
また、BMS114、124、134、制御装置400、および全体BMS101のうち少なくとも1つの制御プログラムは、情報提供事業者によって、たとえばインターネットなどによりダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供されてもよい。また、制御プログラムは、記憶媒体に格納されて提供されてもよい。記憶媒体は、非一時的にプログラムを記憶する。記憶媒体は、たとえば、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、CD(Compact Disc)-ROMなどである。
【0034】
図2は、図1に示す電池システムの等価回路図である。図2の例では、「電池モジュールに含まれる対応部材の抵抗」と、「該電池モジュールに含まれる電池の内部抵抗」との合成抵抗が記載されている。たとえば、図2には、「電池モジュール110に含まれる対応部材の抵抗」および「該電池モジュールに含まれる電池E1の内部抵抗」とを合成し合成抵抗R1が記載されている。図2には、同様に、合成抵抗R2、R3も記載されている。合成抵抗値は、たとえば、電池E1の内部抵抗値に、バスバーB1、ヒューズH1、リレーSw1の抵抗値を加算した値である。
【0035】
抵抗R1、R2、R3の抵抗値をそれぞれr1、r2、r3とする。抵抗値r1、r2、r3は、それぞれ、BMS114、124、134により検出される。また、電圧値V1、V2、V3のそれぞれは、電圧センサ111、121、131により検出される。電圧値Vcは、全体電圧センサ150により検出される。電流値I1、I2、I3のそれぞれは、電流センサ113、123、133により検出される。電流値Icは、充電装置200による供給される充電電流の値である。
【0036】
[充電処理]
次に、充電処理を説明する。図3は、本実施の形態の制御装置400の機能ブロック図である。制御装置400は、取得部402と、処理部404と、制御部406と、記憶部408とを備える。
【0037】
制御装置400は、充電指令(充電指令信号)を受信した場合に、充電処理を開始する。充電指令信号は、充電装置200による充電を開始することを示す信号である。充電指令は、たとえば、制御装置400とは異なる装置(図示せず)から該制御装置400に対して送信される。また、制御装置400は、放電指令(放電指令信号)を受信した場合に、放電処理を開始する。放電指令信号は、負荷300に対する放電を開始することを示す信号である。放電指令は、たとえば、制御装置400とは異なる装置(図示せず)から該制御装置400に対して送信される。
【0038】
取得部402は、電池システム100(または全体BMS101)から複数のパラメータを取得する。複数のパラメータは、たとえば、電圧値V1、V2、V3、Vcと、電流値I1、I2、I3と、抵抗値r1、r2、r3などである。取得部402は、該複数のパラメータを処理部404に出力する。
【0039】
処理部404は、電圧値V1、V2、V3を比較して、電圧値の順序を特定する。そして、処理部404は、電圧値が最も低い電池(以下、「第1電池」とも称する。)と、電圧値が2番目に低い電池(以下、「第2電池」とも称する。)と、電圧値が3番目に低い電池(つまり、電圧値が最も高い電池であり「第3電池」とも称する。)とを特定する。また、第1電池を含む電池モジュールを第1電池モジュール(つまり、電池モジュール110)と称し、第2電池を含む電池モジュールを第2電池モジュール(つまり、電池モジュール120)と称し、第3電池を含む電池モジュールを第3電池モジュール(つまり、電池モジュール130)と称する。本実施の形態では、第1電池を電池E1とし、第2電池を電池E2とし、第3電池を電池E3とする。つまり、V1<V2<V3である。処理部404は、特定結果を制御部406に出力する。
【0040】
制御部406は、電圧値が最も低い電池E1の充電を開始する。具体的には、制御装置400は、電池E1に対応するリレーSw1をオン状態にする。これとともに、制御装置400は、充電装置200に対して充電電流の出力を開始させる。
【0041】
そうすると、電圧値V1および電圧値Vcは徐々に増加する。VcとV1との関係は、以下の式(1)により表される。
【0042】
Vc=V1+I1×r1 (1)
そして、電圧値Vcと電圧値V2との差分値が第1閾値以下となった場合に、電池E1への充電を継続するとともに、電池E2への充電を開始する。具体的には、制御装置400は、電池E2に対応するリレーSw2をオン状態にする。なお、第1閾値は、ゼロであってもよく、ゼロよりも大きい実数であってもよい。第1閾値は、記憶部408に記憶されている。第1閾値については、後述する。
【0043】
電池E2への充電が開始された後は、電圧値V1、電圧値V2、および電圧値Vcは徐々に増加する。また、リレーSw2がオン状態となったときには、充電電流Icは、電流I1と電流I2とに分流される。しかし、電池E2の方が電池E1よりもSOCが大きいため、充電電流は、電池E1の方に多く流れる。したがって、電池E1のSOCは、電池E2のSOCに追いつく。
【0044】
そして、電圧値Vcと電圧値V3との差分値が第2閾値以下となった場合に、電池E1および電池E2への充電を継続するとともに、電池E3への充電を開始する。具体的には、制御装置400は、電池E3に対応するリレーSw3をオン状態にする。そして、全ての電池E1~E3の充電が終了したときに、制御装置400は、充電処理を終了させる。電池の充電が終了するとは、たとえば、電池が満充電されたことである。制御装置400は、たとえば、電池E1~E3のそれぞれのSOCが目標値に到達した(電池E1~E3のそれぞれが満充電された)場合に、全ての電池E1~E3の充電が終了したと判断する。なお、第1閾値と第2閾値とは同一であってもよく、異なっていてもよい。本実施の形態では、第2閾値は、第1閾値と同一である構成が採用される。
【0045】
また、本実施の形態においては、制御装置400は、いずれかの電池が満充電されるまでは、定電流充電を実行する。そして、いずれかの電池が満充電されたときに定電流充電から定電圧充電に切換える。
【0046】
次に、第1閾値を説明する。第1閾値は、リレーがオン状態に制御された場合において横流が発生したとしても、電池システム100への悪影響が完全にないまたは殆どないように設定される値である。第1閾値は、典型的には、電池モジュールの抵抗値、および電池システム100内を流れることが許容される最大電流値Ixに基づいて算出される。最大電流値Ixは、たとえば、予め実験などにより決定される値である。第1閾値は、たとえば、以下の式(2)により算出される。
【0047】
第1閾値=抵抗値×最大電流値Ix (2)
たとえば、各電池モジュールの抵抗値r1、r2、r3がそれぞれ0.05Ωであり、最大電流値Ixが100Aである場合には、上記式(2)により、第1閾値は、該抵抗値5V(=100×0.05)となる。なお、第1閾値の定め方は一例に過ぎず、他の値としてもよい。また、第1閾値は、式(2)の右辺により算出される値よりも小さい値としてもよい。また、第1閾値は、制御装置400が充電指令を受信したときに算出するようにしてもよい。また、第1閾値は固定値としてもよい。また、第2閾値も、第1閾値と同様の手法に定められてもよく、異なる手法により定められてもよい。
【0048】
たとえば、上記の特開2011-182623号公報に記載の構成例(以下、「比較例」とも称する。)では、横流を防止するために、均等化用抵抗を備えていた。しかしながら、このような抵抗を備えると電池システムのサイズが大きくなってしまう。
【0049】
そこで、本実施の形態の電池システム100の制御装置400は、複数の電池の電圧値を取得して、電圧値が最も低い第1電池E1と、電圧値が2番目に低い第2電池E2とを特定する。そして、制御装置400は、第1電池E1に対応したリレーSw1をオン状態に制御することにより該第1電池E1の充電を開始する。第1電池E1の充電を開始した後、第1電池E1を含む第1電池モジュール110の電圧値Vcと第2電池E2の電圧値V2との差分値が第1閾値以下となったか否かを判断する。そして、差分値が、第1閾値以下となった場合に、第2電池E2に対応したリレーSw2をオン状態に制御することにより該第2電池E2の充電を開始する。したがって、本実施の形態の電池システム100は、均等化用抵抗を備えていなくても、第1電池E1および第2電池E2を充電できる。
【0050】
また、リレーSw2がオン状態に制御されたときには、横流が発生する場合がある。しかしながら、リレーSw2がオン状態に制御されたときには、差分値が、第1閾値以内となっている。したがって、電池システム100は、横流が発生したとしても、電池システム100への悪影響が完全にないまたは殆どないようにすることができる。よって、均等化用抵抗を必要とせずに、電池システム100のサイズを大きくすることなく電池の電圧の均等化を図ることができる。その結果、電池システム100においては、電池の充電を適切に実行できる。また、比較例では均等化用抵抗を経由した電流を利用しているため、電圧差が小さい場合は電流が小さくなり、均等化に要する時間が長くなるという問題もあった。これに対し、本実施の形態の電池システム100においては、このような均等化用抵抗が無いことから、均等化に要する時間を短くできる。また、比較例では、電池間の電圧差が大きい場合は均等化用抵抗に流れる電流値が大きくなり、均等化用抵抗の発熱が大きくなるという問題もあった。これに対し、本実施の形態の電池システム100においては、このような均等化用抵抗が無いことから、このような問題が生じることを防止できる。
【0051】
また、第1閾値は、たとえば、第1電池モジュールの抵抗値、および第1電池モジュールと第2電池を含む第2電池モジュールとの間で流れることが許容される最大電流値Ixに基づいて算出される(上記の式(2)参照)。したがって、抵抗値および許容電流値に基づいて適切な第1閾値が算出される。
【0052】
また、第1電池モジュールの抵抗値は、たとえば、第1電池E1の内部抵抗値と、第1電池E1の対応部品(第1電池モジュールに含まれる対応部品)の抵抗値との合成値である。したがって、電池システム100は、第1電池E1の内部抵抗値と、第1電池E1の対応部品の抵抗値とを反映させた第1閾値を定めることができる。
【0053】
[充電処理のフローチャート]
図4は、制御装置400の充電処理を示すフローチャートである。ステップS2において、制御装置400は、充電指令を受信したか否かを判断する。制御装置400は、充電指令を受信するまで待機する(ステップS2でNO)。制御装置400が、充電指令を受信した場合には(ステップS2でYES)、処理は、ステップS4に進む。
【0054】
ステップS4において、制御装置400は、全ての電池(本実施の形態では、電池E1、E2、E3)の各々の電圧値V1、V2、V3を取得する。次に、ステップS6において、制御装置400は、充電対象の電池の個数を算出する。ここで、充電対象の電池は、満充電されていない電池であり、たとえば、電圧値が、上限値未満の電池である。上限値は予め定められた値である。なお、充電対象の電池は、他のパラメータ(たとえば、SOC)などにより定められてもよい。
【0055】
制御装置400は、充電対象の電池の個数が所定値以下であるか否かを判断する。たとえば、本実施の形態のように電池の数が3である場合には、所定個は1と定められる。充電対象の電池が所定個より大きい場合には(ステップS6でNO)、処理は、ステップS10に進む。
【0056】
一方、充電対象の電池が所定個以下であると判断した場合には(ステップS6でYES)、ステップS8において、制御装置400は、最大充電電流値を制限する。充電装置200により制限されていない場合の最大充電電流値を「Am」とし、ステップS8において制限された最大充電電流値を「Am1」とする。Am1は、Amよりも小さい値となる。たとえば、制御装置400は、制限信号を充電装置200に対して送信する。充電装置200は、制限信号を受信すると、該制限信号に基づいて、最大充電電流値を、AmからAm1に変更する。ステップS8の処理が終了すると、処理は、ステップS10に進む。
【0057】
ステップS10において、制御装置400は、取得した全ての電圧値を参照して、最低電圧値(上述の電池E1の電圧値)を検出する。そして、制御装置400は、該最低電圧値と第1閾値以内の電圧値があるか否かを判断する。最低電圧値と第1閾値以下である電圧値がある場合には(ステップS10でYES)、処理は、ステップS12に進む。
【0058】
最低電圧値と第1閾値以下の電圧値がある場合には(ステップS10でYES)、処理は、ステップS12に進む。ステップS12においては、制御装置400は、最低電圧値の電池と、該最低電圧値と第1閾値以下の電圧値である電池との充電を同時に開始する。ここで、「同時」については、「略同時」も含む。たとえば、図2で説明した例では、充電指令を受信した場合において、第1電池E1と第2電池E2との差分値が、既に第1閾値以下である場合には、第1電池E1と第2電池E2との充電を同時に開始する。ステップS12の処理が終了すると、処理は、ステップS22に進む。
【0059】
また、ステップS10においてNOと判断された場合には、ステップS14において、制御装置400は、最低電圧値と2番目に低い電圧値との差分値が第3閾値以下であるか否かを判断する。第3閾値は、第1閾値および第2閾値よりも大きな値であり、予め定められる値である。最低電圧値と2番目に低い電圧値との差分値が第3閾値以下である場合には(ステップS14でYES)、処理は、ステップS16に進む。ステップS16において、制御装置400は、ランプ制御フラグを格納する。ランプ制御フラグは、ランプ充電制御を実行することを示すフラグである。ランプ充電制御は、たとえば、充電装置200の充電電流を徐々に増加させ、第1電池モジュールの電圧値または第1電池の電圧値を時間に対して線形(一次関数的)に増加させる制御である。この制御により、第1電池モジュールの電圧値(全体電圧値Vc)が第2電池E2の電圧値V2を充電開始当初から超えてしまわないように第1電池E1の充電を開始できる。換言すれば、この制御により、充電指令を受信したときから所定期間が経過するまでに第1電池モジュールの電圧値(全体電圧値Vc)が第2電池E2の電圧値V2に到達しないように第1電池E1の充電を開始できる。ランプ充電制御については後述する。ステップS16の処理の終了後、およびステップS14でNOと判断された場合には、処理は、ステップS18に進む。
【0060】
ステップS18において、制御装置400は、最低電圧値の電池(たとえば、第1電池E1)の充電を開始する。なお、ランプ制御フラグが格納されていない場合には、ステップS18において、制御装置400は、後述の通常制御により、最低電圧値の電池を充電させる。一方、ステップS16でランプ充電制御フラグが格納された場合には、ステップS18において、制御装置400は、ランプ充電制御により、最低電圧値の電池を少ない充電電流から開始させる。
【0061】
次に、ステップS20において、制御装置400は、全体電圧値Vcと次に高い電圧値(たとえば、第2電池E2の電圧値V2)との差分値が第1閾値以下となったか否かを判断する。第1電池E1の充電により第1電池E1の電圧値V1が増加するとともに、全体電圧値Vcも増加する。そして、ステップS20において、制御装置400は、全体電圧値Vcと電圧値V2との差分値が第1閾値以下となるまで待機する(ステップS20でNO)。
【0062】
ステップS20においてYESと判断された場合には、ステップS21において、制御装置400は、次に高い電圧値(たとえば、第2電池E2の電圧値V2)の充電を開始する。次に、ステップS22において、制御装置400は、全ての電池の充電が終了したか否かを判断する。全ての電池の充電が終了した場合には、充電処理を終了する。一方、ステップS22でNOと判断された場合には、処理は、ステップS20に戻る。以後、全ての電池の充電が終了するまで(ステップS22でYESと判断されるまで)、ステップS20の処理およびステップS21の処理は繰り返される。
【0063】
以上のように、制御装置400は、ステップS20、ステップS21、ステップS22の処理を繰り返すことにより、均等化用抵抗を備えていなくても、適切に全ての電池(電池E1~電池E3)の充電を実行することができる。
【0064】
また、制御装置400は、充電指令を受信した場合(ステップS2でYES)において、差分値が既に第1閾値以下である場合には(ステップS10でYES)、第1電池E1の充電および第2電池E2の充電を開始する(ステップS12)。このような構成によれば、制御装置400は、充電時間の短縮を図ることができる。
【0065】
また、制御装置400は、複数の電池(N個の電池)のうち、充電装置200による充電対象の電池の数が所定数以下である場合には(ステップS6でYES)、制御装置400による充電電流を制限する(ステップS8)。仮に充電対象の電池の数が少ない場合において、大きな充電電流で該電池を充電すると該電池の許容電流を超過する場合はある。そこで、本実施の形態においては、充電対象の電池の数が少ない場合には、制御装置400は、充電電流を制限する。したがって、充電対象の電池の許容電流を超過しない。
【0066】
[充電処理の実験結果]
次に、本実施の形態の電池システム100の充電処理についての実験結果を説明する。図5は、比較例の実験結果を示す図である。また、図6は、本実施の形態の電池システム100の実験結果を示す図である。図5および図6の回路構成は共に、図2の例である。比較例においては、電池システムの制御装置が充電指令を受信した場合に、電池E1~E3の充電を同時に開始する。
【0067】
図5(A)~図5(C)および図6(A)~図6(C)の横軸は、時間軸を示す。図5および図6において、電池E1に関するグラフは破線で示されており、電池E2に関するグラフは一点鎖線で示されており、電池E3に関するグラフは二点鎖線で示されており、全体電圧値Vcに関するグラフは実線で示されている。また、図5(A)および図6(A)には、電圧値が示されている。図5(A)には、電圧値V2、V3および全体電圧値Vcが示されているが電圧値V1は示されていない。図5(B)および図6(B)は、各電池のSOCを示している。図5(C)および図6(C)は、電池システム内の配線を流れる電流値を示す図である。
【0068】
また、比較例においては、充電前の電池E1、E2、E3のそれぞれのSOCは、20%、35%、50%である。また、本実施の形態においては、充電前の電池E1、E2、E3のそれぞれのSOCは、20%、35%、40%である。また、抵抗値r1~r3については、0.5Ωであるとし、充電装置200による充電電流は、50Aである。
【0069】
まず図5を用いて比較例の電池システムを説明する。比較例においては、電池E1~電池E3への充電を同時に開始したときには、図5(A)に示すように、電圧値V1および電圧値V2は同一の値で徐々に増加している。また、全体電圧値Vcは、該同一の値よりも所定値だけ多い値で徐々に増加している。
【0070】
また、図5(B)においては、電池E1~電池E3のSOCが同一の値となり徐々に増加している。また、図5(C)に示すように、充電指令を受信したときに電流値I1の値は、約190Aという多大な電流値となってしまう。このような多大な電流値となる理由は、電池E2および電池E3から電池E1への横流が発生したからである。
【0071】
次に、図6を用いて本実施の形態の電池システム100を説明する。なお、図6の例では、第1閾値がゼロに設定されている。図6(A)において、制御装置400が充電指令を受信したタイミングt1において、制御装置400は、電池E1の充電を開始する(図4のステップS18参照)。該開始されることにより、電圧値V1および全体電圧値Vcは徐々に増加する。そして、全体電圧値Vcが、次に高い電圧値V2に到達したタイミングt2(図4のステップS20でYESと判断されたタイミング)において、制御装置400は、電池E2の充電を開始する(図4のステップS21参照)。
【0072】
そして、第2電池E2の充電が開始されることにより、電圧値V1のみならず、電圧値V2および全体電圧値Vcは徐々に増加する。そして、全体電圧値Vcが、次に高い電圧値V3に到達したタイミングt3(図4のステップS20でYESと判断されたタイミング)において、制御装置400は、電池E3の充電を開始する(図4のステップS21参照)。その後、全ての電池E1~E3のSOCなどが充電終了値に到達した場合に、充電処理を終了する。
【0073】
次に、図4のステップS16で説明したランプ制御フラグについて説明する。制御装置400は、図6のタイミングt1に示すように、該タイミングt1で全体電圧値Vcを所定量増加させる制御(以下、「通常制御」という。)を実行するように、第1電池E1を充電している。図4の例では、所定量は、約3Vである。制御装置400は、タイミングt1で、通常制御を実行することにより、充電時間を短縮させることができる。
【0074】
しかしながら、全体電圧値Vcと電圧値V2との差分値が第1閾値より大きいが第3閾値以下である場合(ステップS10でNOでありかつステップS14でYESの場合)において、制御装置400が通常制御を実行すると、タイミングt1において、全体電圧値Vcが電圧値V2を超えてしまい、「横流発生を抑えつつ電池を接続すること」ができない場合がある。
【0075】
そこで、本実施形態では、全体電圧値Vcと電圧値V2との差分値が第1閾値より大きいが第3閾値以下である場合には、ランプ状制御フラグを設定する(ステップS16)。そして、ステップS18において、制御装置400は、充電電流を徐々に増加させるランプ充電制御を実行する。これにより、第1電池E1の電圧値V1が徐々に増加するため、横流発生を抑えつつ電池を接続することができる。
【0076】
図7は、ランプ充電制御が実行された場合を示す図である。図7に示すように、ランプ充電制御が実行されたことにより、所定期間が経過するまでに第1電池モジュールの電圧値(または全体電圧値Vc)が第2電池E2の電圧値V2に到達しない。なお、所定期間は、予め定められる期間である。
【0077】
[放電処理]
次に、本実施の形態の電池システム100による放電処理を説明する。上述のように、制御装置400が、充電指令を受信した場合には、電圧値が低い電池から順に電池の充電を実行する。放電処理においては、電圧値が高い電池から順に負荷300に対して電池の放電を実行する。これにより、横流の発生を低減できる。
【0078】
図8は、制御装置400の放電処理を示すフローチャートである。ステップS102において、制御装置400は、放電指令を受信したか否かを判断する。制御装置400は、放電指令を受信するまで待機する(ステップS102でNO)。制御装置400が、放電指令を受信した場合には(ステップS102でYES)、処理は、ステップS104に進む。
【0079】
ステップS104において、制御装置400は、全ての電池(本実施の形態では、電池E1、E2、E3)の各々の電圧値V1、V2、V3を取得する。次に、ステップS106において、制御装置400は、放電可能な電池の個数を算出する。ここで、放電対象の電池は、たとえば、電圧値が負荷300に対して放電可能となる下限値よりも大きい電池である。なお、放電対象の電池は、他のパラメータ(たとえば、SOC)などにより定められてもよい。
【0080】
制御装置400は、放電対象の電池の個数が所定値以下であるか否かを判断する。たとえば、本実施の形態のように電池の数が3である場合には、所定個は1と定められる。放電対象の電池が所定個より大きい場合には(ステップS106でNO)、処理は、ステップS110に進む。
【0081】
一方、放電対象の電池が所定個以下であると判断した場合には(ステップS106でYES)、ステップS108において、制御装置400は、最大放電電流値を制限する。負荷300により制限されていない場合の放電電流値を「Bm」とし、ステップS108において制限された放電電流値を「Bm1」とする。Bm1は、Bmよりも小さい値となる。たとえば、制御装置400は、制限信号を負荷300に対して送信する。負荷300は、制限信号を受信すると、該制限信号に基づいて、該負荷300が要求する電流値を低下させる。たとえば、負荷300は、最大放電電流値を、BmからBm1に変更する。ステップS108の処理が終了すると、処理は、ステップS110に進む。
【0082】
ステップS110において、制御装置400は、取得した全ての電圧値を参照して、最高電圧値(上述の電池E3の電圧値)を検出する。そして、制御装置400は、該最高電圧値との差分が第1閾値以内の電圧値があるか否かを判断する。最高電圧値との差分が第1閾値以下である電圧値がある場合には(ステップS110でYES)、処理は、ステップS112に進む。
【0083】
ステップS112においては、制御装置400は、最高電圧値の電池と、該最高電圧値との差分が第1閾値以下の電圧値である電池との放電を同時に開始する。ここで、「同時」については、「略同時」も含む。たとえば、図2で説明した例では、放電指令を受信した場合において、第3電池E3と第2電池E2との差分値が、既に第1閾値以下である場合には、第3電池E3と第2電池E2との放電を同時に開始する。ステップS112の処理が終了すると、処理は、ステップS122に進む。
【0084】
また、ステップS110においてNOと判断された場合には、ステップS118において、制御装置400は、最高電圧値の電池(たとえば、第3電池E3)の放電を開始する。次に、ステップS120において、制御装置400は、全体電圧値Vcと次に高い電圧値(たとえば、第2電池E2の電圧値V2)との差分値が第1閾値以下となったか否かを判断する。第3電池E3の放電により第3電池E3の電圧値V3が減少するとともに、全体電圧値Vcも減少する。そして、ステップS120において、制御装置400は、全体電圧値Vcと電圧値V2との差分値が第1閾値以下となるまで待機する(ステップS120でNO)。
【0085】
制御装置400は、ステップS120においてYESと判断された場合には、ステップS121において、ステップS120で判断された次に高い電圧値の電池の放電を開始する。次に、ステップS122において、制御装置400は、全ての電池の放電が終了したか否かを判断する。全ての電池の放電が終了した場合には(ステップS122でYES)、放電処理を終了する。一方、ステップS122でNOと判断された場合には、処理は、ステップS120に戻る。以後、全ての電池の放電が終了するまで(ステップS122でYESと判断されるまで)、ステップS120の処理およびステップS121の処理は繰り返される。このように、電池システム100は、ステップS120、ステップS121、ステップS122の処理を繰り返す。
【0086】
以上のように、電池システム100は、放電処理において、横流が発生したとしても、電池システム100への悪影響が完全にないまたは殆どないようにすることができる。よって、均等化用抵抗を必要とせずに、電池システム100のサイズを大きくすることなく電池の電圧の均等化を図ることができる。その結果、電池システム100においては、電池の放電を適切に実行できる。また、比較例では均等化用抵抗を経由した電流を利用しているため、電圧差が小さい場合は電流が小さくなり、均等化に要する時間が長くなるという問題もあった。これに対し、本実施の形態の電池システム100においては、このような均等化用抵抗が無いことから、均等化に要する時間を短くできる。また、比較例では、電池間の電圧差が大きい場合は均等化用抵抗に流れる電流値が大きくなり、均等化用抵抗の発熱が大きくなるという問題もあった。これに対し、本実施の形態の電池システム100においては、このような均等化用抵抗が無いことから、このような問題が生じることを防止できる。
【0087】
また、制御装置400は、放電指示を受信した場合(ステップS102でYES)において、差分値が既に第1閾値以下である場合には(ステップS110でYES)、第1電池E1の放電および第2電池E2の放電を開始する(ステップS112)。このような構成によれば、制御装置400は、まとめて大きな電力を負荷300に供給できる。
【0088】
また、制御装置400は、複数の電池(N個の電池)のうち、負荷300への電池の数が所定数以下である場合には(ステップS106でYES)、制御装置400は、負荷300への放電電流を制限する(ステップS108)。仮に放電対象の電池の数が少ない場合には、負荷300への電力が足らなくなり、移動体10を適切に制御できなくなる場合がある。そこで、制御装置400は、負荷300に対して制限信号を送信する。これにより、負荷300は、該負荷300に供給される電力が少ないことを事前に認識することができる。よって、負荷300は、該少ない電力で移動体10を制御できる。
【0089】
[その他の実施の形態]
(1) 上述の実施の形態の充電処理においては、ステップS20などで説明したように、差分値は、「「全体電圧値Vc」と、「次に低い電圧値」との差分値」である構成を説明した。しかしながら、ステップS20においては、差分値は、「最低電圧値と、該最低電圧値の次に高い電圧値との差分値」であり、また、差分値は、「「次に低い電圧値」と、該「次に低い電圧値」の次に高い電圧値との差分値」とする構成が採用されてもよい。たとえば、ステップS20において、制御装置400は、第1電池E1の電圧値V1と、第2電池E2の電圧値V2との差分値が第1閾値以下となったか否かを判断するようにしてもよい。また、ステップS20において、制御装置400は、第2電池E2の電圧値V2と、第3電池E3の電圧値V3との差分値が第1閾値以下となったか否かを判断するようにしてもよい。このような構成が採用された場合であっても、上述の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0090】
(2) 上述の実施の形態の放電処理においては、ステップS120などで説明したように、差分値は、「「全体電圧値Vc」と、「次に高い電圧値」との差分値」である構成を説明した。しかしながら、ステップS120においては、差分値は、「最高電圧値と、該最高電圧値の次に低い電圧値との差分値」であり、また、差分値は、「「次に高い電圧値」と、該「次に高い電圧値」の次に低い電圧値との差分値」とする構成が採用されてもよい。たとえば、ステップS120において、制御装置400は、第3電池E3の電圧値V3と、第2電池E2の電圧値V2との差分値が第1閾値以下となったか否かを判断するようにしてもよい。また、ステップS120において、制御装置400は、第2電池E2の電圧値V2と、第1電池E1の電圧値V1との差分値が第1閾値以下となったか否かを判断するようにしてもよい。このような構成が採用された場合であっても、上述の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本実施の形態の電池システムは、電池は複数の並直電池で構成された組電池もしくは電池モジュールのほか、単一の電池もしくは単一電池を並列接続した構成も包含する。
【符号の説明】
【0092】
10 移動体、100 電池システム、111,121,131 電圧センサ、113,123,133 電流センサ、150 全体電圧センサ、200 充電装置、300 負荷、400 制御装置、402 取得部、404 処理部、408 記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8