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特開2022-129510気流検出システム、芳香発生システム及び空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129510
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】気流検出システム、芳香発生システム及び空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/00 20060101AFI20220830BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20220830BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60H3/00 J
B60H1/34 671A
B60H1/00 101U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028198
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】坂本 秀樹
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA11
3L211BA52
3L211DA76
3L211DA93
3L211GA03
3L211GA11
3L211GA76
(57)【要約】
【課題】比較的簡易な構成によって車室内の気流の状態を検出する「気流検出システム、芳香発生システム及び空調システム」を提供する。
【解決手段】制御装置4は、空調装置3の吹出口31の近傍に配置されている芳香放出装置1に短時間、芳香剤を放出させ、各席近傍に配置した嗅覚センサ2が検出している、芳香放出装置1が放出した芳香剤の芳香の強さの検出値を記録する。検出値の記録を用いて、気流の向きを、各嗅覚センサ2の位置と各嗅覚センサ2が芳香を検出した時刻の時間差の関係から算定し、各領域に到達する気流の強さを、各嗅覚センサ2の位置と各嗅覚センサ2が検出した芳香の強さの関係から算定する。そして、算定結果に応じて、各席の芳香や気流の強さの分布が所望の分布となるように芳香放出装置1もしくは空調装置3を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車室内の気流を検出する気流検出システムであって、
車室内に芳香を放出する芳香放出装置と、
前記芳香放出装置が放出した芳香を検出する、車室内の相互に異なる位置に配置された複数の嗅覚センサと、
制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記芳香放出装置に短時間、芳香を放出させると共に、各嗅覚センサの配置位置と、当該放出させた芳香を各嗅覚センサが検出したタイミングの時間差とから車室内の気流の向きを、車室内の気流の状態として算定することを特徴とする気流検出システム。
【請求項2】
自動車の車室内の気流を検出する気流検出システムであって、
車室内に芳香を放出する芳香放出装置と、
前記芳香放出装置が放出した芳香の強さを検出する、車室内の相互に異なる位置に配置された複数の嗅覚センサと、
制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記芳香放出装置に短時間、芳香を放出させると共に、各嗅覚センサの配置位置と、各嗅覚センサが検出した芳香の強さとに基づいて車室内の各領域に到達する気流の強さを、車室内の気流の状態としてを算定することを特徴とする気流検出システム。
【請求項3】
請求項2記載の気流検出システムであって、
前記制御手段は、前記車室内の各領域に到達する気流の強さに加え、車室内の気流の向きを、前記車室内の気流の状態として算定すると共に、当該制御手段は、当該車室内の気流の向きを、各嗅覚センサの配置位置と、前記芳香放出装置に放出させた芳香を各嗅覚センサが検出したタイミングの時間差とから算定することを特徴とする芳香発生システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の気流検出システムを備えた芳香発生システムであって、
前記車室に設けられた複数の吹出口から温度を調整した風を吹き出す空調装置を備え、
前記制御手段は、算定した前記気流の状態に応じて、前記車室内の芳香の強さの分布が所定の分布となるように、各吹出口から吹き出す風の強さもしくは向きを制御することを特徴とする芳香発生システム。
【請求項5】
請求項1、2または3記載の気流検出システムを備えた芳香発生システムであって、
前記芳香放出装置を複数備え、
各芳香放出装置は、相互に異なる位置に配置されており、
前記制御手段は、算定した前記気流の状態に応じて、前記車室内の芳香の強さの分布が所定の分布となるように、各芳香放出装置から放出する芳香の強さを制御することを特徴とする芳香発生システム。
【請求項6】
請求項1、3または3記載の気流検出システムを備えた空調システムであって、
前記車室に設けられた複数の吹出口から温度を調整した風を吹き出す空調装置を備え、
前記制御手段は、算定した前記気流の状態に応じて、前記車室内の温度分布が所定の分布となるように、各吹出口から吹き出す風の強さもしくは向きを制御することを特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室内の気流を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願に関連する技術としては、芳香剤を噴霧することにより自動車の車室内に芳香を発生する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
また、特定の匂いの強さを検出する嗅覚センサ(匂いセンサ)の技術も知られている(たとえば、特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-283975号公報
【特許文献2】特開2020- 8522号公報
【特許文献3】特開2020-197414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した芳香剤を噴霧することにより自動車の車室内に芳香を発生する技術によれば、車室内の気流の影響により、車室内の芳香の強さが所望の分布とならないことがあるという問題がある。
【0005】
そこで、車室内の気流の状態を検出し、検出した気流に応じた形態で芳香を車室内に発生することにより、車室内の芳香の強さが所望の分布となるように制御することが考えられる。
しかし、車室内のユーザに不快な影響を与えることなく車室内の気流の状態を検出するためには、赤外線カメラで撮影した車室内の映像から求まる車室内の温度変化の揺らぎから気流の状態を検出する構成などの、比較的高コストの構成が必要となる。、
そこで、本発明は、車室内に芳香を放出する芳香放出装置を備えた自動車において、比較的簡易な構成によって車室内の気流の状態を検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、自動車の車室内の気流を検出する気流検出システムに、車室内に芳香を放出する芳香放出装置と、前記芳香放出装置が放出した芳香を検出する、車室内の相互に異なる位置に配置された複数の嗅覚センサと、制御手段とを備えたものである。ここで、前記制御手段は、前記芳香放出装置に短時間、芳香を放出させると共に、各嗅覚センサの配置位置と、当該放出させた芳香を各嗅覚センサが検出したタイミングの時間差とから車室内の気流の向きを、車室内の気流の状態として算定する。
【0007】
また、前記課題達成のために、本発明は、自動車の車室内の気流を検出する気流検出システムに、車室内に芳香を放出する芳香放出装置と、前記芳香放出装置が放出した芳香の強さを検出する、車室内の相互に異なる位置に配置された複数の嗅覚センサと、制御手段とを備えたものである。ここで、前記制御手段は、前記芳香放出装置に短時間、芳香を放出させると共に、各嗅覚センサの配置位置と、各嗅覚センサが検出した芳香の強さとに基づいて車室内の各領域に到達する気流の強さを、車室内の気流の状態としてを算定する。
ここで、この気流検出システムは、前記制御手段は、前記車室内の各領域に到達する気流の強さに加え、車室内の気流の向きを、前記車室内の気流の状態として算定してもよい。この場合、当該制御手段は、当該車室内の気流の向きを、各嗅覚センサの配置位置と、前記芳香放出装置に放出させた芳香を各嗅覚センサが検出したタイミングの時間差とから算定する。
【0008】
また、併せて、本発明は、以上の気流検出システムを備えた芳香発生システムとして、前記車室に設けられた複数の吹出口から温度を調整した風を吹き出す空調装置を備え、前記制御手段において、算定した前記気流の状態に応じて、前記車室内の芳香の強さの分布が所定の分布となるように、各吹出口から吹き出す風の強さもしくは向きを制御する芳香発生システムを提供する。
【0009】
また、併せて、本発明は、以上の気流検出システムを備えた芳香発生システムとして、相互に異なる位置に配置された、複数の前記芳香放出装置を備え、前記制御手段において、前記制御手段は、算定した前記気流の状態に応じて、前記車室内の芳香の強さの分布が所定の分布となるように、各芳香放出装置から放出する芳香の強さを制御する芳香発生システムも提供する。
【0010】
また、併せて、本発明は、以上の気流検出システムを備えた空調システムを提供する。当該空調システムは、前記車室に設けられた複数の吹出口から温度を調整した風を吹き出す空調装置を備え、当該空調システムにおいて、前記制御手段は、算定した前記気流の状態に応じて、前記車室内の温度分布が所定の分布となるように、各吹出口から吹き出す風の強さもしくは向きを制御する。
【0011】
以上のような気流検出システムや、気流検出システムを備えた芳香発生システムや空調システムによれば、芳香放出装置が放出する芳香を利用して気流の状態を検出するので、比較的簡易な構成によって車室内の気流の状態を検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、車室内に芳香を放出する芳香放出装置を備えた自動車において、比較的簡易な構成によって車室内の気流の状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る芳香放出装置と匂いセンサの配置を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る芳香制御処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る気流の検出例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
車載システムは、自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、車室内に芳香材を噴霧等することにより芳香を放出する複数の芳香放出装置1、芳香放出装置1が放出した芳香の強さを検出する複数の嗅覚センサ2、温風や冷風等の温度を調節した風を噴出することにより車室内の温度を調整する空調装置3、制御装置4を備えている。
【0015】
図2に示すように、空調装置3は、自動車の前席前方のダッシュボードに、温風や冷風を吹き出す吹出口31を複数備えている。
また、各芳香放出装置1は、空調装置3の各吹出口31の内側や各吹出口31の手前の位置等の各吹出口31の近傍の位置に配置されている。ここで、芳香放出装置1としては、アロマオイルを液滴化して放出するアロマディフューザ等を用いることができる。
【0016】
そして、各嗅覚センサ2は、各座席のヘッドレスト等の、各座席近傍の位置に配置されている。各嗅覚センサ2としては、芳香放出装置1が放出する可能性のある芳香剤の種類によらずに、芳香の強さを検出できるように、複数の種類の芳香について、それぞれの芳香の強さを検出できる複合型の嗅覚センサ2を用いる。
【0017】
次に、制御装置4が行う芳香制御処理について説明する。
図3に、この芳香制御処理の手順を示す。
図示するように、芳香制御処理において、制御装置4は、各嗅覚センサ2が検出する、芳香放出装置1が放出した芳香剤の芳香の強さの検出値の記録を開始する(ステップ302)。
そして、芳香放出装置1に短時間、芳香剤を放出させ(ステップ304)、所定時間が経過したならば(ステップ306)、検出値の記憶を停止する(ステップ308)。
【0018】
そして、各嗅覚センサ2の検出値の記録から、車室内の気流の状態として、気流の向きと強さを解析する(ステップ310)。
ここで、この車室内の気流の向きと強さの解析は、各嗅覚センサ2の位置と各嗅覚センサ2が芳香を検出した時刻の時間差の関係から気流の向きを算定し、各嗅覚センサ2の位置と各嗅覚センサ2が検出した芳香の強さの関係から気流の強さを算定することにより行う。
【0019】
すなわち、たとえば、図4aに示すように、右前席近傍に配置した嗅覚センサ2をA、左前席近傍に配置した嗅覚センサ2をB、右後席近傍に配置した嗅覚センサ2をC、中央後席近傍に配置した嗅覚センサ2をD、左後席近傍に配置した嗅覚センサ2をEとして、各嗅覚センサA-Eで図4bに示すタイミングと強さで芳香放出装置1が放出した芳香剤の芳香の強さが検出された場合には、次のように気流の向きと強さを算定する。なお、図4bは、空調装置3が稼働している状態で、各嗅覚センサA-Eで芳香の強さを検出した場合の例を示している。
【0020】
図4bの場合、各嗅覚センサ2で検出された芳香の強さのピークが表れるタイミングは、比較的前方側に配置された嗅覚センサA、Bの群の方が、比較的後方側に配置された嗅覚センサC、D、Eの群より早い。また、各群の中でのピークが表れるタイミングは、比較的右側に配置された嗅覚センサ2のものほど早くなっている。
【0021】
したがって、このピークが表れるタイミングの差から、図4cに矢印で示すように、前方から後方に向かって右よりに気流の向きを算定することができる。
また、各嗅覚センサ2で検出した芳香の強さのピーク値より、図4cにグラディユーションで示したように、各芳香放出装置1が配置されている領域から、各嗅覚センサ2が配置されている領域に届いている気流の強さを算定することができる。
【0022】
さて、図3に戻り、以上のようにして車室内の気流の向きと強さを解析したならば(ステップ310)、解析結果に応じた制御を行う(ステップ312)。
この解析結果に応じた制御では、空調装置3や芳香放出装置1の動作を、車室内の芳香の強さの分布が所望の分布となるように制御する。
たとえば、車室内の芳香の強さの所望の分布が均一な分布であれば、空調装置3の個々の吹出口31からの風の吹き出し量や吹き出しの方向を変更し、各嗅覚センサ2で検出される芳香の強さがより均一となるように気流の向きや強さの分布を変化させる制御や、各嗅覚センサ2で検出される芳香の強さがより均一となるように行う、個々の芳香放出装置1の放出量を変更する制御を行う。
【0023】
そして、前回のステップ302の芳香剤の放出から予め設定した時間であるインターバル時間が経過するのを待って(ステップ314)、ステップ302からの処理に戻る。
以上のように、本実施形態によれば、車室内に芳香を放出する芳香放出装置1を備えた自動車において、芳香放出装置1が放出する芳香を利用して気流の状態を検出するので、比較的簡易な構成によって車室内の気流の状態を検出することができる。
【0024】
また、赤外線カメラを用いて検出した車室内の温度を用いて気流の検出を行う場合には窓の近くの領域などにおいて車外の外気温の影響のために正しく気流の状態を検出できなくなることがあるが、本実施形態によれば、比較的外気温の影響をうけずに気流の状態の検出を行うことができる。
【0025】
ところで、以上の実施形態では、芳香放出装置1を複数設けたが、芳香放出装置1は一つだけ設けるようにしてもよい。または、複数の芳香放出装置1を設けつつ、気流の検出を行う場合には、そのうちの一部、もしくは、一つの芳香放出装置1にだけ放出を行わせるようにしてもよい。または、複数の芳香放出装置1を設けつつ、一つずつ順番に各芳香放出装置1に放出を行わせて、その芳香放出装置1の配置位置を通る気流の検出を行うようにしてもよい。また、芳香放出装置1は、必ずしも空調装置3の吹出口31の近傍に配置しなくてもよい。
【0026】
また、以上の実施形態では、ステップ314において、車室内の気流の向きと強さの解析結果に応じた制御として、各嗅覚センサ2で検出される芳香の強さをより均一化するための制御を行ったが、この制御としては、他の制御を行うようにしてもよい。
【0027】
すなわち、ステップ314の制御では、車室内の温度分布が所望の分布となるように、空調装置3や芳香放出装置1の動作を制御してもよい。たとえば、車室内の温度分布の所望の分布が均一な分布であれば、空調装置3の個々の吹出口31からの風の吹き出し量や吹き出しの方向を変更し、各席の温度がより均一となるように気流の向きや強さの分布を変化させる制御を行う。
【符号の説明】
【0028】
1…芳香放出装置、2…嗅覚センサ、3…空調装置、4…制御装置、31…吹出口。
図1
図2
図3
図4