(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129525
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220830BHJP
H04N 9/31 20060101ALI20220830BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20220830BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N9/31 410
H04N5/74 A
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028221
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】尾形 洋一
【テーマコード(参考)】
2H199
5C058
5C060
【Fターム(参考)】
2H199CA02
2H199CA23
2H199CA27
2H199CA29
2H199CA44
2H199CA53
2H199CA63
2H199CA65
2H199CA66
2H199CA67
2H199CA69
2H199CA70
2H199CA87
5C058AA18
5C058BA35
5C058EA26
5C058EA27
5C058EA32
5C058EA33
5C058EA54
5C060DA03
5C060EA00
5C060GC06
5C060HC00
5C060HC12
5C060JA18
5C060JB06
(57)【要約】
【課題】複数波長の光を用いた画像投影を行うために必要な光学部材を簡素化し、小型化と軽量化を図ることが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】第1光を照射する第1画像照射部(40a)と、第2光を照射する第2画像照射部(40b)と、第1光および第2光が入射される第1光入射部(22)と、第1光の一部および第2光の一部をそれぞれ第1導波光および第2導波光として導波する光導波部(21)と、第1導波光および第2導波光を出射する第1光出射部(23)を有する導光板部(20)と、第1光入射部(22)に設けられた第1回折格子部(10)を備え、第1回折格子部(10)に対する第1光と第2光の入射角度が異なっており、第1回折格子部(10)で回折された第1光の一部および第2光の一部が光導波部(21)の全反射条件を満たす画像投影装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光を照射する第1画像照射部と、
第2光を照射する第2画像照射部と、
前記第1光および前記第2光が入射される第1光入射部と、前記第1光の一部および前記第2光の一部をそれぞれ第1導波光および第2導波光として導波する光導波部と、前記第1導波光および前記第2導波光を出射する第1光出射部を有する導光板部と、
前記第1光入射部に設けられた第1回折格子部を備え、
前記第1回折格子部に対する前記第1光と前記第2光の入射角度が異なっており、
前記第1回折格子部で回折された前記第1光の一部および前記第2光の一部が前記光導波部の全反射条件を満たすことを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記第1導波光および前記第2導波光は、前記第1光入射部における入射位置、前記光導波部における反射位置および前記第1光出射部における出射位置がそれぞれ略同一であることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像投影装置であって、
前記導光板部は、前記第1回折格子部で分岐された光の一つを透過して外部スクリーン方向に出射する第2光出射部を備え、
前記第1光出射部は、前記外部スクリーン方向に対して前記第1導波光および前記第2導波光を出射することを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の画像投影装置であって、
画像情報に基づいて制御される微小なミラーを複数有するデジタルミラーデバイスを備え、
前記第1光出射部から出射された前記第1導波光および前記第2導波光は、前記デジタルミラーデバイスを介して視点方向に反射されることを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の画像投影装置であって、
前記第1光出射部に設けられた第2回折格子部を備え、
前記第2回折格子部は、前記第1導波光の一部および前記第2導波光の一部をそれぞれ回折して第1出射回折光および第2出射回折光として異なる出射角度で視点方向に照射することを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像投影装置であって、
前記第1回折格子と前記第2回折格子は互いに平行または直交して配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
二つの前記導光板部を備え、
前記導光板部のそれぞれの前記第1光入射部に、一つの前記第1回折格子部が共通に設けられていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記第1回折格子部は、光入射面を構成する平板状部分と、前記平板状部分と一体に構成された凹凸部分を備え、前記導光板部とは別体に形成されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記第1格子部は、波長変換素子を構成することを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に回折格子を用いた画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラスより下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があるため好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)も提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このようなHUDでは、フロントガラスの広い範囲に画像を投影するための光学装置が必要であり、光学装置の小型化および軽量化が望まれている。
【0004】
一方で、小型の光学装置を用いて光を投影する画像表示装置としては、導光板の一端から光を入射させて他端側で視点方向に光を取り出すウェアラブル型のHUDが知られている(例えば、特許文献2を参照)。ウェアラブル型のHUDでは、光源から照射された光を視聴者の眼に直接照射して、視聴者の網膜に画像を投影している。このようなウェアラブル型のHUDでは、光源から視聴者に光を照射する際に回折格子やハーフミラーを用いている。ウェアラブル型のHUDは、頭部に装着することで利用者個人の視点に対して画像を投影するため、没入感の高い仮想現実(VR:Virtual Reality)や拡張現実(AR:Augmented Reality)等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-119262号公報
【特許文献2】特開2020-144190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のウェアラブル型のHUDでは、複数波長の光を照射して、色彩豊かな画像投影を行うためには、複数の光源とそれぞれの波長に適した光学部材を用いる必要があり、光学部材の部品点数が増加するという問題があった。また、複数波長の光を重ね合わせて画像投影をする場合には、光学部材における光軸調整が困難であるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、複数波長の光を用いた画像投影を行うために必要な光学部材を簡素化し、小型化と軽量化を図ることが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、第1光を照射する第1画像照射部と、第2光を照射する第2画像照射部と、前記第1光および前記第2光が入射される第1光入射部と、前記第1光の一部および前記第2光の一部をそれぞれ第1導波光および第2導波光として導波する光導波部と、前記第1導波光および前記第2導波光を出射する第1光出射部を有する導光板部と、前記第1光入射部に設けられた第1回折格子部を備え、前記第1回折格子部に対する前記第1光と前記第2光の入射角度が異なっており、前記第1回折格子部で回折された前記第1光の一部および前記第2光の一部が前記光導波部の全反射条件を満たすことを特徴とする。
【0009】
このような本発明の画像投影装置では、第1回折格子部に対して第1光と第2光を異なる入射角度で入射させ、第1光と第2光を光導波部で全反射させて第1光出射部まで導波させるため、光学部材を簡素化し小型化と軽量化を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記第1導波光および前記第2導波光は、前記第1光入射部における入射位置、前記光導波部における反射位置および前記第1光出射部における出射位置がそれぞれ略同一である。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記導光板部は、前記第1回折格子部で分岐された光の一つを透過して外部スクリーン方向に出射する第2光出射部を備え、前記第1光出射部は、前記外部スクリーン方向に対して前記第1導波光および前記第2導波光を出射する。
【0012】
また、本発明の一態様では、画像情報に基づいて制御される微小なミラーを複数有するデジタルミラーデバイスを備え、前記第1光出射部から出射された前記第1導波光および前記第2導波光は、前記デジタルミラーデバイスを介して視点方向に反射される。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記第1光出射部に設けられた第2回折格子部を備え、前記第2回折格子部は、前記第1導波光の一部および前記第2導波光の一部をそれぞれ回折して第1出射回折光および第2出射回折光として異なる出射角度で視点方向に照射する。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記第1回折格子と前記第2回折格子は互いに平行または直交して配置されている。
【0015】
また、本発明の一態様では、二つの前記導光板部を備え、前記導光板部のそれぞれの前記第1光入射部に、一つの前記第1回折格子部が共通に設けられている。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記第1回折格子部は、光入射面を構成する平板状部分と、前記平板状部分と一体に構成された凹凸部分を備え、前記導光板部とは別体に形成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、複数波長の光を用いた画像投影を行うために必要な光学部材を簡素化し、小型化と軽量化を図ることが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態における回折格子部10の構造を示す模式断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る画像投影装置の光入射部22を拡大して示す模式斜視図である。
【
図4】導光板部20にレーザ光を入射させた場合の光の経路を示す写真であり、
図4(a)は赤色光の経路を示し、
図4(b)は緑色光の経路を示し、
図4(c)は赤色光と緑色光を同時に入射した場合の経路を示している。
【
図5】第2実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。
【
図6】第2実施形態の変形例に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。
【
図7】第3実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。
【
図8】第4実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。
【
図9】第4実施形態に係る画像投影装置の光出射部23を拡大して示す模式斜視図である。
【
図10】第5実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。
【
図11】第5実施形態の変形例に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。
【
図12】第6実施形態における回折格子部10と回折格子部80の配置を示す模式斜視図であり、
図12(a)は回折格子部10を示し、
図12(b)は回折格子部80を示している。
【
図13】第6実施形態に係る画像投影装置の画像照射部40の構造例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態における回折格子部10の構造を示す模式断面図である。
図1に示すように回折格子部10は、平板状部分11と、凸部12と凹部13を備えている。ここで凸部12および凹部13は、回折格子部10において面内方向において周期的な屈折率の繰り返しを構成する部分であり、本発明における凹凸部分に相当している。平板状部分11と凸部12は同一の材料で一体に形成されている。なお
図1は、回折格子部10の構造を模式的に示したものであり、図中の寸法や角度は回折格子部10における実寸を示すものではない。
【0020】
図1に示した例では、回折格子部10の凸部12と凹部は、それぞれ紙面の奥行方向にストライプ状に延伸して形成されている。凸部12は、平板状部分11の主面に対して所定の角度φだけ傾斜して形成されており、スランテッドグレーティングを構成している。また、凸部12および凹部13上は、平板状部分11とは屈折率が異なる材料で構成される被覆部により覆われている。回折格子部10を構成する材料は限定されないが、一例としては、平板状部分11および凸部12を構成する材料としてTiO
2を主成分とする屈折率2.5程度の誘電体が挙げられ、凸部12および凹部13を覆う被覆部としてSiO
2を主成分とするガラスやポリマーが挙げられる。
【0021】
回折格子部10の凹凸部分は公知の方法で形成することができ、例えばフォトリソグラフィー技術やナノインプリント技術、EBL(Electron Beam Lithography)技術等を用いることができる。また、被覆部を傾斜させた状態で保持し、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法等を用いることで、角度φだけ傾斜して凸部12および凹部13を形成することができる。このとき、凸部12および凹部13の傾斜角度φとは、凸部12の上端と下端における中央を結んだ線が、回折格子部10の主面との間でなす角度である。
図1では回折格子部10の凹凸部分として、凸部12および凹部13が傾斜したスランテッドグレーティングを示したが、主面に垂直なピラードグレーティングであってもよい。
【0022】
次に
図1を用いて、回折格子部10における光路について説明する。なお
図1は、矢印を用いて回折格子部10における光の進行を模式的に示しているが、正確な光の入射位置や進行経路、出射位置を反映したものではない。図示しない光源部からは、回折格子部10に向けてレーザ光が照射される。ここでレーザ光は位相が揃ったコヒーレントな光であり、コリメートレンズ等によってコリメート光として照射される。光源部から照射された入射光は、回折格子部10の界面から所定の傾斜角度で平板状部分11の内部に入射する。
【0023】
ここで、入射光の偏光方向は、凸部12のストライプとは平行な方向とされている。
図1では、入射光の傾斜角度と、回折格子部10における凸部12および凹部13の傾斜方向φとが同じ方向である例を示しているが、逆方向であってもよい。回折格子部10内に入射した光は、凸部12と凹部13との周期的な屈折率差により一部が回折光として所定角度で外部方向に進行し、一部は伝搬光として平板状部分11の面内を漏れ伝搬光として伝搬する。平板状部分11内を伝搬する漏れ伝搬光は、空気との界面において反射されて再度凹凸部分に到達し、凸部12および凹部13によって回折される。
【0024】
図1に示した例では、回折格子部10により回折された光のうち、0次光T1は被覆部を透過して外部に照射される。また、凸部12が傾斜した方向に回折された一次光(-1次光T2)も被覆部を透過して外部に照射される。これは、0次光T1と-1次光T2は、回折格子部10主面に対して垂直に近い角度で回折されるため、被覆部と空気層との界面における全反射条件を満たさないためである。
【0025】
また、凸部12の傾斜と反対方向に回折された一次光(+1次光I1)は、被覆部と空気層の界面により全反射して被覆部内を伝搬する。同様に、凸部12の傾斜した方向に回折された二次光(-2次光I2)も、被覆部と空気層の界面により全反射して被覆部内を伝搬する。被覆部と空気層の界面での全反射条件は、被覆部を構成する材料の屈折率で決まる。被覆部内を全反射して伝搬した+1次光I1と-2次光I2は、被覆部の端部から外部に照射される。このとき、0次光T1、-1次光T2、+1次光I1および-2次光I2は、凸部12および凹部13によって回折された光であるため、僅かに光径が拡がりながら進行する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。
図2に示すように画像投影装置は、回折格子部10と、導光板部20と、画像照射部40a,40b,40cを備えている。回折格子部10は、
図1に示したように平板状部分11と、凸部12と凹部13と被覆部を備えた光学素子であり、導光板部20とは別体に形成されている。導光板部20は、透光性の材料で構成された板状の部材であり、光導波部21と、光入射部22と、光出射部23と、光フィルター31と、光シャッター部32を備えている。
【0027】
光導波部21は、透光性材料からなる平板状の部材であり、空気との界面で光が全反射を繰り返すことで、一端側から他端側に光を導波する。また、光導波部21は一方の面側から他方の面側に光が透過するため、光導波部21を介して外部スクリーン60方向を視認することが可能である。光導波部21の一端側は主面に対して傾斜した面である光入射部22が形成されており、回折格子部10が配置されている。光導波部21の他端側には、端面が形成されるとともに光出射部23が設けられている。
図1では光導波部21として平板状のものを示しているが、内部で光を全反射により伝搬させることができれば曲面形状であってもよい。
【0028】
光入射部22は、光導波部21の一端に形成された傾斜面であり、回折格子部10が隣接して配置され、本発明における第1光入射部に相当する部分である。光入射部22には、回折格子部10との光結合率を高めるために、反射防止膜や屈折率調整部を設けるとしてもよい。
【0029】
光出射部23は、光導波部21の他端(光入射部22とは反対側の端部)に形成された傾斜面であり、本発明における第1光出射部に相当する部分である。光出射部23の傾斜面は、光導波部21を伝搬してきた光が光出射部23において全反射しない角度とされている。また、光出射部23から光の取り出し効率を向上させるために、光出射部23の表面に反射防止膜や反射防止構造を設けるとしてもよい。
【0030】
光フィルター31は、所定波長範囲の光を透過しその他の波長の光を遮る光学部材である。本実施形態では、光フィルター31として所定波長の光の波長を遮り、その他の波長を透過するバンドパスフィルターを用いる。
【0031】
光シャッター部32は、制御部(図示省略)によって駆動制御され、光の透過と遮断を切り替える光学部材である。光シャッター部32の具体的構成は限定されず、公知の液晶シャッター等を用いることができる。
【0032】
画像照射部40a,40b,40cは、それぞれ第1画像、第2画像、第3画像を投影するための第1光、第2光、第3光を回折格子部10に対して照射する装置である。画像照射部40a,40bは、それぞれ本発明における第1画像照射部および第2画像照射部に相当している。画像照射部40a,40b,40cは、それぞれが別構造として設けられており、回折格子部10に対する第1光、第2光、第3光の入射角度はそれぞれ異なっている。また、第1光、第2光、第3光の波長は異なっており、例えば第1光は赤色光、第2光は緑色光、第3光は青色光である。
【0033】
画像照射部40a,40b,40cの具体的構成は限定されないが、
図2に示した例では画像照射部40は、光源部と、半波長板と、偏光子を備えている。画像照射部40a,40b,40cはそれぞれミラー、バンドパスフィルター等を介して光を回折格子部10に照射する。光源部はレーザ光源を用いることが好ましく、光源部から照射されるレーザ光を図示しない画像形成部に照射して、第1画像、第2画像、第3画像を第1光、第2光、第3光に含ませる。画像形成部は液晶表示素子やデジタルミラーデバイス等の公知のものを用いることができ、画像照射部40の内部に設けるとしてもよく、回折格子部10までの光路上に配置するとしてもよい。
【0034】
次に
図2および
図3を用いて本実施形態の画像投影装置における画像投影について説明する。
図3は、本実施形態に係る画像投影装置の光入射部22を拡大して示す模式斜視図である。図中に示した破線矢印は第1光LRの経路を示し、二点鎖線は第2光LGの経路を示し、一点鎖線は第3光LBの経路を示している。
【0035】
画像照射部40a,40b,40cから照射された第1光LR、第2光LG、第3光LBは、それぞれ異なる入射角度で回折格子部10に到達する。回折格子部10では、第1光、第2光、第3光の入射角度に応じて0次光T1、-1次光T2、+1次光I1および-2次光I2が回折光として取り出され、光入射部22に入射する。
【0036】
ここで、回折格子部10から光入射部22に入射する回折光は、回折条件によって光入射部22への入射角度が決まるため、0次光T1、-1次光T2、+1次光I1および-2次光I2の何れか一つが光導波部21の両面での全反射条件を満たすように光入射部22の傾斜角度を設定しておく。一例としては、第1光LR、第2光LG、第3光LBのそれぞれの+1次光I1が光入射部22に対して同じ角度で入射するように、第1光LR、第2光LG、第3光LBの回折格子部10への入射角度を設定しておく。
【0037】
回折格子部10で回折された第1光LR、第2光LG、第3光LBの回折光のうち、光導波部21の全反射条件を満たすものは、光導波部21内を全反射しながら導波光として伝搬する。このとき
図2および
図3に示すように、第1導波光、第2導波光、第3導波光は光入射部22の同じ位置から光導波部21に入射し、同じ角度で進行して同じ位置で全反射が繰り返されるため、同じ経路をたどって光出射部23の同じ位置まで到達する。
【0038】
光出射部23まで到達した第1導波光、第2導波光、第3導波光は、光出射部23から外部に照射され、それぞれ第1画像、第2画像、第3画像を投影する。
図2および
図3に示したように、第1導波光、第2導波光、第3導波光は光導波部21内を同じ経路と角度で光出射部23まで到達し、第1画像、第2画像、第3画像は同じ角度で光出射部23から照射される。したがって、第1画像、第2画像、第3画像はスクリーン上の同じ位置に重ね合わせて投影され、赤色光、緑色光、青色光を用いたカラー画像を投影することができる。本実施形態のように、複数波長の光で画像表示を行うことで、警告を示す表示内容の画像は赤色で投影し、落ち着いた雰囲気や爽快感を与えるための表示内容の画像は青色や緑色で投影するなど、色心理学的な効果を得ることもできる。
【0039】
回折格子部10で回折された第1光LR、第2光LG、第3光LBのうち光導波部21での全反射条件を満たさない回折光は、光導波部21の第2光出射部から外部に取り出される。ここで、第2光出射部には光フィルター31が設けられているため、第1光LR、第2光LG、第3光LBのうち選択された波長の光のみが光フィルター31を透過して外部に取り出される。また、光シャッター部32が透過状態の場合には、光フィルター31を透過した光が外部に照射されて画像が投影される。光シャッター部32が遮断状態の場合には、光フィルター31を透過した光が光シャッター部32で遮られて画像は投影されない。
【0040】
図2に示した例では、第2光出射部に光フィルター31と光シャッター部32を設けて、第2光出射部から外部に照射される光を選択しているが、光フィルター31と光シャッター部32を設けず第1光LR、第2光LG、第3光LBのすべてを第2光出射部から外部に照射するとしてもよい。また
図2では、光出射部23を平坦面とした例を示しているが、光出射部23を凹形状や凸形状で形成してレンズとして機能させ、第1光LR、第2光LG、第3光LBの拡がり角を調整するとしてもよい。
【0041】
図4は、導光板部20にレーザ光を入射させた場合の光の経路を示す写真であり、
図4(a)は赤色光の経路を示し、
図4(b)は緑色光の経路を示し、
図4(c)は赤色光と緑色光を同時に入射した場合の経路を示している。
図4(a)、
図4(b)において明るく示された線が光の経路を示しており、光導波部21の界面で全反射を繰り返して、光入射部22から光出射部23にまでレーザ光が到達している。また
図4(c)に示されているように、光入射部22での赤色光と緑色光の入射位置および入射角度が同じであり、光導波部21内での経路も重なっている。
【0042】
上述したように、本実施形態の画像投影装置では、第1光LR、第2光LG、第3光LBを回折格子部10に異なる入射角度で入射させ、第1光LR、第2光LG、第3光LBを光導波部21で全反射させて光出射部23まで導波させるため、光学部材を簡素化し小型化と軽量化を図ることが可能となる。また、光出射部23から照射される光は同じ位置から同じ角度で照射されるため、複数波長の光を重ね合わせる場合にも光学部材の光軸合わせが不要である。しかし、光導波部21内での導波距離が長くなる場合や、光導波部21を自由曲面で構成する場合には、光出射部23における各光の出射位置がずれることも考えられるため、導光板部20の形状やサイズによって各光の光路を調整するとしてもよい。また、各光が相互に光学的に干渉する可能性も考慮して光路の調整を行うとしてもよい。また、光導波部21での全反射条件を満たさない光を第2光出射部から外部に照射して、多様な画像投影を行うこともできる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。図中に示した実線矢印および破線矢印は、光の経路を模式的に示すものである。また、図中に斜線でハッチングを施した領域は照射光LWが照射される領域を示している。本実施形態では、導光板部20を二つ備えて、それぞれの導光板部20に設けられた光入射部22に対向して共通の回折格子部10が配置されている。
【0044】
図5に示すように、画像投影装置は一つの回折格子部10と、二つの導光板部20と、画像照射部40と、外部スクリーン60を備えている。画像投影装置を装着する視聴者は、二つの視点70の位置から両眼で導光板部20および外部スクリーン60方向を視認する。回折格子部10は、
図1に示したように平板状部分11と、凸部12と凹部13と被覆部を備えた光学素子であり、導光板部20とは別体に形成されている。導光板部20は、透光性の材料で構成された板状の部材であり、それぞれ光導波部21と、光入射部22と、光出射部23を備えている。
【0045】
外部スクリーン60は、導光板部20から照射された光が投影されて画像を表示する部分である。外部スクリーン60を構成する材料は限定されず、光を透過する透光性材料を用いるとしてもよく、光を遮って反射する白色材料を用いるとしてもよい。透光性材料を用いた場合には、画像投影装置の外部環境を背景として画像の重ね合わせ投影をすることができる。
図5に示した例では、外部スクリーン60を画像投影装置とは別体に設けた例を示しているが、外部スクリーン60をアーム部分と一体に形成して、アーム部分を導光板部20に固定することで、外部スクリーン60と導光板部20の相対的な位置関係を保つとしてもよい。
【0046】
二つの導光板部20は、互いの光入射部22が隣接して配置されており、共通の回折格子部10が二つの光入射部22に跨って対向して配置されている。また、二つの導光板部20は平板状であり、V字形状に配置されている。
図5では、第1実施形態の画像照射部40a,40b,40cをまとめて画像照射部40として示しているが、複数波長の第1光LR、第2光LG、第3光LBを異なる入射角度で回折格子部10に照射する。本実施形態では、画像照射部40に含まれる複数の画像照射部が、それぞれ本発明における第1画像照射部および第2画像照射部に相当している。
【0047】
第1実施形態と同様に、画像照射部40から回折格子部10に第1光LR、第2光LG、第3光LBが入射され、回折格子部10で回折された第1光LR、第2光LG、第3光LBの回折光がそれぞれの導光板部20における光入射部22から光導波部21内に入射する。
【0048】
図1で示したように回折格子部10では、凸部12と凹部13で構成された凹凸部によって第1光が回折され、0次光T1と+1次光I1が図中右方向に進行し、-1次光T2と-2次光I2が図中左方向に進行する。したがって、回折格子部10の右半分に対向して配置された光導波部21には0次光T1と+1次光I1が入射し、回折格子部10の左半分に対向して配置された光導波部21には-1次光T2と-2次光I2が入射する。
【0049】
図5に示した例では、0次光T1が右側に配置された光導波部21の全反射条件を満たすように光入射部22の傾斜角度および光導波部21の形状を設計することで、0次光T1が導波光として導波される。同様に、-1次光T2が左側に配置された光導波部21の全反射条件を満たすように光入射部22の傾斜角度および光導波部21の形状を設計することで、-1次光T2が導波光として導波される。
【0050】
二つの導光板部20内を導波された第1導波光、第2導波光、第3導波光は、それぞれの光出射部23から照射光LWとして照射され、第1画像、第2画像、第3画像が外部スクリーン60に重ね合わせて投影画像が表示される。
【0051】
上述したように本実施形態の画像投影装置では、二つの導光板部20に共通の回折格子部10を設けることで、視聴者の両眼に対して投影画像を視認させることができる。また、本実施形態の画像投影装置でも、光学部材を簡素化し小型化と軽量化を図ることが可能となる。
【0052】
(第2実施形態の変形例)
次に、本発明の第2実施形態の変形例について
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図6は、第2実施形態の変形例に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。図中に示した実線矢印および破線矢印は、光の経路を模式的に示すものである。本変形例では、二つの導光板部20が曲面形状を有している点が第2実施形態と異なっている。
【0053】
図6に示した例では、+1次光I1が右側に配置された光導波部21の全反射条件を満たすように光入射部22の傾斜角度および光導波部21の形状を設計することで、+1次光I1が導波光として導波される。同様に、-2次光I2が左側に配置された光導波部21の全反射条件を満たすように光入射部22の傾斜角度および光導波部21の形状を設計することで、-2次光I2が導波光として導波される。
【0054】
図6に示した例では、二つの導光板部20は視点70方向に沿った曲面形状を有しているが、回折格子部10から光入射部22への第1光の入射角度は回折条件によって決まるため、曲面に沿って全反射を繰り返すように導光板部20を設計することは可能である。また、
図6では左右の導光板部20が線対象に近い形状で描かれているが、回折格子部10で回折された第1光LR、第2光LG、第3光LBのうち、どの回折光を導波光とするかで光入射部22の傾斜角度等を左右で異ならせるとしてもよい。
【0055】
本変形例でも、第2実施形態と同様に、二つの視点70の位置から外部スクリーン60上に重ね合わせて表示された投影画像を視認することができる。
【0056】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。図中に示した実線矢印および破線矢印は、光の経路を模式的に示すものである。
図7に示すように、本実施形態の画像投影装置は、回折格子部10と、導光板部20と、画像照射部40と、デジタルミラーデバイス71と、反射ミラー部72を備えている。画像投影装置を装着する視聴者は、視点位置から反射ミラー部72方向を視認する。本実施形態の画像投影装置は眼鏡形状のウェアラブル型HUDであり、導光板部20を眼鏡のテンプルとして用い、反射ミラー部72をレンズとしている。
図7では左半分のみを示しているが、左右対称に同様の構造を備えることで、両眼に対して画像を投影することができる。
【0057】
デジタルミラーデバイス71は、微小なミラーを複数有しており、微小なミラーはそれぞれ個別に反射角度を変更可能とされ、画像情報に基づいて微小なミラーが制御されることで、画像を含んだ光を反射する部材である。反射ミラー部72は、デジタルミラーデバイス71で反射された画像を含んだ光を導波するとともに、視点方向に反射する部材である。
図7では反射ミラー部72として眼鏡のレンズの一部を示しているが、デジタルミラーデバイス71からの光を視点に対して反射できれば形状と位置は限定されない。
【0058】
画像照射部40は、第1光LR、第2光LG、第3光LBを照射するレーザ光源を備え、それぞれの光を異なる入射角度で回折格子部10に入射させる。
図7に示した例では、画像照射部40とは別に画像形成部であるデジタルミラーデバイス71を設け、導光板部20から出射した光に画像を含ませているが、画像照射部40内に画像形成部を備えるとしてもよい。本実施形態では、画像照射部40に含まれる複数のレーザ光源が、それぞれ本発明における第1画像照射部および第2画像照射部に相当している。
【0059】
本実施形態でも、画像照射部40から照射された第1光LR、第2光LG、第3光LBは、それぞれ異なる入射角度で回折格子部10に入射し、回折光の一部が光入射部22の同じ位置から同じ角度で光導波部21に入射する。また、第1光LR、第2光LG、第3光LBの回折光は、光導波部21の全反射条件を満たしており、光導波部21内で全反射を繰り返して光出射部23まで到達する。光出射部23に到達した導波光は、導光板部20から出射されてデジタルミラーデバイス71により反射される。このとき、デジタルミラーデバイス71に含まれる微小なミラーは、画像情報に基づいて反射角度が制御されており、デジタルミラーデバイス71で反射される光に画像が含まれることとなる。デジタルミラーデバイス71で反射された光は、反射ミラー部72で視点方向に再反射されて視点に対して画像が投影される。
【0060】
図2および
図3に示したように、第1光LR、第2光LG、第3光LBは、導光板部20内を同じ位置および角度で全反射するため、光出射部23から出射した照射光は、デジタルミラーデバイス71および反射ミラー部72で反射されて視点まで到達する経路が同じとなる。したがって、視点には第1光LR、第2光LG、第3光LBに含まれる第1画像、第2画像、第3画像が重ね合わせて入射し、カラー画像を視認することができる。ここで、デジタルミラーデバイス71による画像表示として公知の時分割駆動を用いることで、各色の光照射と画像形成のタイミングを同期して、第1画像、第2画像、第3画像の内容をそれぞれ異ならせることができる。また、デジタルミラーデバイス71と画像照射部40の駆動としてPWM(Pulth Width Modulation)を用いることで、各色の光での階調表示をすることもできる。
【0061】
上述したように本実施形態の画像投影装置でも、第1光LR、第2光LG、第3光LBを回折格子部10に異なる入射角度で入射させ、第1光LR、第2光LG、第3光LBを光導波部21で全反射させて光出射部23まで導波させるため、光学部材を簡素化し小型化と軽量化を図ることが可能となる。また、光出射部23から照射される光は同じ位置から同じ角度で照射されるため、複数波長の光を重ね合わせる場合にも光学部材の光軸合わせが不要である。
【0062】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図8,
図9を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。
図8に示すように画像投影装置は、回折格子部10と、導光板部20と、画像照射部40a,40bと、画像照射部50と、外部スクリーン60と、回折格子部80を備えている。画像投影装置を装着する視聴者は、視点の位置から導光板部20および外部スクリーン60方向を視認する。
【0063】
回折格子部10,80は、
図1に示したように平板状部分11と、凸部12と凹部13と被覆部を備えた光学素子であり、導光板部20とは別体に形成されている。導光板部20は、透光性の材料で構成された板状の部材であり、光導波部21と、光入射部22と、光出射部23と、光フィルター31と、光シャッター部32と、投影レンズ33を備えている。
【0064】
画像照射部50は、画像を投影するための光を回折格子部10に対して照射する装置であり、画像照射部40a,40bとは、別構造として設けられている。また、画像照射部40a,40bが照射する第1光、第2光と、画像照射部50が照射する第3光の波長は異なっており、例えば第1光は赤色光、第2光は青色光、第3光は緑色光である。また、画像照射部50が照射する第3光は、回折格子部10で回折された回折光が導光板部20の全反射条件を満たしていない。画像照射部40a,40bが照射する第1光、第2光のうち、回折格子部10で回折された光の一部は導光板部20の全反射条件を満たしている。
【0065】
画像照射部50から照射された第3光は、回折格子部10で回折されて光導波部21を透過し、外部スクリーン60に対して照射光LVとして照射され、外部スクリーン60上に投影画像を投影する。投影レンズ33は、第2光出射部から取り出された照射光LVの光径を拡大して、外部スクリーン60に対して投影するための光学部材である。
図8では投影レンズ33として一つのレンズを示しているが、複数のレンズを組み合わせて投影レンズ33を構成するとしてもよい。
図8では、画像照射部50から照射される照射光LVが外部スクリーン60の左半分に投影された状態を示しているが、別途レンズ等の光学部材を用いることで、外部スクリーン60の全域に照射光LVを照射して、画像を外部スクリーン60全域に視界全体を覆うように投影することもできる。
【0066】
図9は、本実施形態に係る画像投影装置の光出射部23を拡大して示す模式斜視図である。回折格子部80は、光出射部23に配置されており、光出射部23から照射される導波光を開設して外部に取り出す光学部材である。
図8,
図9に示した例では、回折格子部80の凸部12と凹部13の形状を回折格子部10と同じとし、回折格子部10と回折格子部80の凹凸部分が平行になるように配置している。また、回折格子部10は凸部12と凹部13が光入射部22に対向して配置されているが、回折格子部80は平板状部分11が光出射部23に対向して配置されている。
【0067】
光導波部21に入射した第1光、第2光は、光導波部21内の同じ位置で同じ角度で全反射されて光出射部23まで到達する。光出射部23には回折格子部80が設けられており、第1光、第2光は回折格子部80で回折されて、それぞれ異なる回折角度で第1出射回折光および第2出射回折光として視点方向に取り出される。このとき、光導波部21内を伝搬してきた導波光は、回折格子部80で回折されて光径が拡大しながら結像光として視点方向に取り出される。したがって、回折格子部80で回折された第1光と第2光の回折光は、それぞれ視点に到達するまで光径が拡大しながら進行する。これにより視点では、回折格子部80と外部スクリーン60との間の空間にエアリアルイメージA1,A2が結像されているように視認される。ここでエアリアルイメージA1,A2を構成する平面は、
図8に示したように第1出射回折光および第2出射回折光の角度に応じて互いに傾斜して非平行となっている。エアリアルイメージA1,A2は、回折格子部80を中心として円周状に結像されており、複数のエアリアルイメージA1,A2をドーム状に配列して表示することができる。
【0068】
また、外部スクリーン60と回折格子部80との距離を確保することで、第2光出射部から照射光LVによって外部スクリーン60に投影される画像V1と、結像光L1、L2で結像されたエアリアルイメージA1,A2を同時に視認することもできる。
図8,
図9に示した例では回折格子部10と回折格子部80の構造を同じとしたが、回折格子部80の構造を回折格子部10とは異ならせて、エアリアルイメージA1,A2の結像方向および結像位置を適切な位置に設定するとしてもよい。
【0069】
本実施形態の画像投影装置では、光出射部23に設けられた回折格子部80で第1光の一部および第2光の一部をそれぞれ回折して第1出射回折光および第2出射回折光として異なる出射角度で視点方向に照射する。これにより、第1出射回折光および第2出射回折光で、異なる角度と位置にエアリアルイメージA1,A2を結像させることができる。また、画像照射部50からの第3光を第2光出射部から外部スクリーン60に投影して、画像V1とエアリアルイメージA1,A2を重ね合わせて視認させることもできる。
【0070】
上述したように本実施形態の画像投影装置でも、第1光、第2光を回折格子部10に異なる入射角度で入射させ、第1光、第2光を光導波部21で全反射させて光出射部23まで導波させるため、光学部材を簡素化し小型化と軽量化を図ることが可能となる。
【0071】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について
図10を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図10は、本実施形態に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。図中に示した実線矢印および破線矢印は、光の経路を模式的に示すものである。また、図中に斜線でハッチングを施した領域は照射光LVが照射される領域を示している。本実施形態では、曲面形状の導光板部20を二つ備えて、それぞれの導光板部20に設けられた光入射部22に対向して共通の回折格子部10が配置されている。
【0072】
図10に示すように、画像投影装置は一つの回折格子部10と、二つの導光板部20と、画像照射部40と、画像照射部50と、外部スクリーン60と、回折格子部80を備えている。画像投影装置を装着する視聴者は、二つの視点70の位置から両眼で導光板部20および外部スクリーン60方向を視認する。
【0073】
図10に示した例では、+1次光I1が右側に配置された光導波部21の全反射条件を満たすように光入射部22の傾斜角度および光導波部21の形状を設計することで、+1次光I1が導波光として導波される。同様に、-2次光I2が左側に配置された光導波部21の全反射条件を満たすように光入射部22の傾斜角度および光導波部21の形状を設計することで、-2次光I2が導波光として導波される。
【0074】
二つの導光板部20内を導波された第1光、第2光は、それぞれの光出射部23に設けられた回折格子部80で回折され、第1出射回折光および第2出射回折光として視点方向に照射されてエアリアルイメージA1,A2を結像する。また、画像照射部50から照射された第3光は、照射光LVとして外部スクリーン60に照射され画像を投影する。
【0075】
上述したように本実施形態の画像投影装置では、二つの導光板部20に共通の回折格子部10を設け、光出射部23に回折格子部80を設けることで、視聴者の両眼に対してエアリアルイメージA1,A2を視認させることができる。また、本実施形態の画像投影装置でも、光学部材を簡素化し小型化と軽量化を図ることが可能となる。
【0076】
(第5実施形態の変形例)
次に、本発明の第5実施形態の変形例について
図11を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図11は、第5実施形態の変形例に係る画像投影装置の構造を示す模式図である。図中に示した実線矢印および破線矢印は、光の経路を模式的に示すものである。また、図中に斜線でハッチングを施した領域は照射光LVが照射される領域を示している。本実施形態では、平板状の導光板部20を二つ備えて、それぞれの導光板部20に設けられた光入射部22に対向して共通の回折格子部10が配置されている。
【0077】
図11に示すように、画像投影装置は一つの回折格子部10と、二つの導光板部20と、画像照射部40と、画像照射部50と、外部スクリーン60と、回折格子部80を備えている。画像投影装置を装着する視聴者は、二つの視点70の位置から両眼で導光板部20および外部スクリーン60方向を視認する。
【0078】
図11に示した例では、0次光T1が右側に配置された光導波部21の全反射条件を満たすように光入射部22の傾斜角度および光導波部21の形状を設計することで、0次光T1が導波光として導波される。同様に、-1次光T2が左側に配置された光導波部21の全反射条件を満たすように光入射部22の傾斜角度および光導波部21の形状を設計することで、-1次光T2が導波光として導波される。
【0079】
二つの導光板部20内を導波された第1光、第2光は、それぞれの光出射部23に設けられた回折格子部80で回折され、第1出射回折光および第2出射回折光として視点方向に照射されてエアリアルイメージA1,A2を結像する。また、画像照射部50から照射された第3光は、照射光LVとして外部スクリーン60に照射され画像を投影する。
【0080】
本変形例でも、第5実施形態と同様に、二つの導光板部20に共通の回折格子部10を設け、光出射部23に回折格子部80を設けることで、視聴者の両眼に対してエアリアルイメージA1,A2を視認させることができる。また、本実施形態の画像投影装置でも、光学部材を簡素化し小型化と軽量化を図ることが可能となる。
【0081】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について
図12を用いて説明する。本実施形態は、回折格子部80の配置が第4実施形態と異なっており、第4実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図12は、実施形態における回折格子部10と回折格子部80の配置を示す模式斜視図であり、
図12(a)は回折格子部10を示し、
図12(b)は回折格子部80を示している。
図13は、本実施形態に係る画像投影装置の画像照射部40の構造例を示す模式図である。
【0082】
図12(a)(b)に示したように、回折格子部10の凹凸部分はx軸方向(図中上下方向)に沿っており、回折格子部80の凹凸部分はy軸方向(図中左右方向)に沿っており、互いに凹凸部分が直交するように配置されている。
【0083】
また、回折格子部10に入射する第1光LRと第2光LBは、yz平面内でz軸に対する角度が異なっており、回折格子部10に異なる入射角度で入射する。第1実施形態で述べたように、回折格子部10での第1光LRと第2光LBの回折光が同じ方向となっており、光導波部21内では第1光LRと第2光LBは同じ経路で全反射して伝搬する。
【0084】
光導波部21内を伝搬した第1光LRと第2光LBの導波光は、光出射部23に設けられた回折格子部80の同じ位置に同じ角度で入射する。回折格子部80の応答部分はy軸方向に沿って伸びているため、回折格子部80で回折された第1光LRと第2光LBは、xz平面内で分離され、視点方向に進行してエアリアルイメージA1,A2が上下方向に分離して結像される。
【0085】
図13に示すように、画像照射部40は、光源部41と、ビームスプリッタ42と、偏光子43a,43bと、チョッパー44と、レンズ45,47と、アパチャー46と、ミラーM1,M2,M3を備えている。光源部41はレーザ光源を用いることが好ましい。
【0086】
光源部41から照射されたレーザ光は、ビームスプリッタ42で分岐され、一方が偏光子43aに入射し、他方がミラーM1で反射されて偏光子43bに入射し、変更方向が互いに直交するように調整される。偏光子43aおよび偏光子43bに入射したレーザ光は、チョッパー44を通る。レーザ光がチョッパー44を通ることで、一方のレーザ光が通過する際に他方のレーザ光が遮られ、相補的に光のオン/オフが切り替えられる。つまり、各々のレーザ光における偏光方向はチョッパー44を通過した後も維持される。その後に、合波部で2本のレーザ光は同軸状に重ねられ、レンズ45,アパチャー46、レンズ47を介して光径と拡がり角が調整され、ミラーM3で反射されて外部に照射される。
【0087】
上述したように、本実施形態の画像投影装置では、回折格子部10と回折格子部80の凹凸部分を直交して配置することで、エアリアルイメージA1,A2を垂直方向に分割して結像することができる。
【0088】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態から第6実施形態では、回折格子部10,80を構成する材料としてTiO2とSiO2を挙げたが、非線形光学結晶を用いて第二次高調波発生素子(SHG:Second harmonic generation)等の波長変換素子を構成するとしてもよい。非線形光学結晶の材料としては、例えばKTP結晶、LBO結晶、CLBO結晶等が挙げられる。
【0089】
回折格子部10,80に非線形光学結晶を用いることで、レーザ光の入射角度や位相を調整して波長変換を行い、出射光の波長を可変とすることもできる。
【0090】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10,80…回折格子部
11…平板状部分
12…凸部
13…凹部
20…導光板部
21…光導波部
22…光入射部
23…光出射部
31…光フィルター
32…光シャッター部
33…投影レンズ
40,40a,40b,40c,50…画像照射部
41…光源部
42…ビームスプリッタ
43a,43b…偏光子
44…チョッパー
45,47…レンズ
46…アパチャー
60…外部スクリーン
70…視点
71…デジタルミラーデバイス
72…反射ミラー部