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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012953
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】廃棄物資源化システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/60 20220101AFI20220111BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20220111BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20220111BHJP
【FI】
B09B3/00 D ZBP
B09B3/00 ZAB
B09B3/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115140
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】520242481
【氏名又は名称】有限会社ネイチャー・オブ・ワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】中村 透
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AB01
4D004BA04
4D004CA04
4D004CA18
4D004CA22
4D004CA26
4D004CA42
4D004CB13
4D004CC15
(57)【要約】
【課題】有機性廃棄物から有価物である炭化製品を生成するために必要な燃料を可及的に低く抑えることができるとともに、腐敗する有機性廃棄物から発生する異臭も抑えることができる環境に優れた廃棄物資源化システムを提供する。
【解決手段】前処理施設と、醗酵乾燥装置と、炭化装置と、により構成される廃棄物資源化システムであって、前処理施設は、処理可能な廃棄物を選別するための廃棄物選別施設と、醗酵乾燥装置に投入可能な大きさに廃棄物を破砕して破砕物生成する廃棄物破砕装置と、破砕物に所定の割合で木チップを混合して混合物を生成する混合作業施設と、混合物を一時保管するための少なくとも一箇所以上の予備醗酵槽と、を備え、醗酵乾燥装置は、混合物を醗酵乾燥させて、所定の含水率とした乾燥物を生成し、炭化装置は、乾燥物を炭化処理して有価物としての炭化製品を生成する廃棄物資源化システムとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理施設と、
醗酵乾燥装置と、
炭化装置と、により構成される廃棄物資源化システムであって、
前記前処理施設は、
処理可能な廃棄物を選別するための廃棄物選別施設と、
前記醗酵乾燥装置に投入可能な大きさに廃棄物を破砕して破砕物生成する廃棄物破砕装置と、
前記破砕物に所定の割合で木チップを混合して混合物を生成する混合作業施設と、
前記混合物を一時保管するための少なくとも一箇所以上の予備醗酵槽と、
を備え、
前記醗酵乾燥装置は、
前記混合物を醗酵乾燥させて、所定の含水率とした乾燥物を生成し、
前記炭化装置は、
前記乾燥物を炭化処理して有価物としての炭化製品を生成することを特徴とする廃棄物資源化システム。
【請求項2】
前記醗酵乾燥装置は、
乾燥炉と、
攪拌翼と、
駆動シリンダーと、
ヒーターと
を備え、
前記乾燥炉に投入された前記混合物を、前記ヒーターで加熱しながら前記攪拌翼で攪拌する自動運転を所定期間行うことにより、微生物による有機物の醗酵分解により生じた分解熱により当該混合物の乾燥を促進させることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物資源化システム。
【請求項3】
前記炭化装置は、廃油を燃料として生成するための廃油精製燃料化装置が付設され、
前記廃油精製燃料化装置で生成した燃料を用いて前記炭化装置内に投入された前記乾燥物の炭化処理を行うとともに、当該炭化処理の過程で発生する乾留ガスを当該炭化処理に再利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の廃棄物資源化システム。
【請求項4】
前記前処理施設及び前記醗酵乾燥装置は、処理する廃棄物から発生する臭気を抑える脱臭装置を備え、
前記脱臭装置は、
臭気成分が外部へ拡散することを防ぐために常時負圧に調整されるとともに、臭気成分を吸着・分解するための多孔質繊維状の消臭機能部を備え、
前記消臭機能部は、
少なくとも硫化水素、又は窒素化合物を吸着・分解する有用微生物を含む微生物資材からなり、当該微生物資材は、前記脱臭装置において臭気物質を吸着後に、少なくとも、醗酵の促進剤或いは臭気物質の発生抑制剤、として前記醗酵乾燥装置内で前記混合物に添加されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の廃棄物資源化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物資源化システムに関し、詳しくは、有機性廃棄物を醗酵乾燥させて有機性廃棄物の含水率を低下させた後炭化処理して炭化製品を生成し、有価物として再利用することができる廃棄物資源化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物として家庭や飲食店及び各種工場(食品等の製造工場)から発生した生ごみ等の有機性廃棄物は、収集運搬事業者により回収された後、専用の焼却施設で焼却されて廃棄されている。このため、各自治体(県、区、市、町)は、廃棄物(有機性廃棄物を含む家庭や飲食店及び各種工場から焼却可能な廃棄物)を収集し、各自治体が管理する焼却施設または焼却を委託する焼却施設に運搬して焼却している。
【0003】
一般的な焼却施設による焼却法は、有機性廃棄物を400度~800度の範囲の焼却温度で燃焼させて焼却灰とする方法である。しかし、この焼却温度では有害なダイオキシンが多量に発生するため、近年では800度~1200度の範囲の高温の焼却温度による高温焼却処理によりダイオキシンの発生量を減らす方法が採用されている。
【0004】
しかしながら、高温焼却処理ではダイオキシンの発生を減らすことはできるが、焼却施設の設備費やランニングコスト(焼却するための燃料費等)が高いため自治体にかかる負担が大きく、さらに、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)、ダイオキシン等の大気汚染物質の発生を完全に防止することができないばかりか、特に近年環境問題となっているCO2(二酸化炭素)の排出を防止することができない。
【0005】
また、近年では、「循環型社会形成推進基本法(2001年)」の施行により、有機性廃棄物を含む廃棄物の適正処理や資源としてのリサイクルの推進、循環型社会の形成に対応するための、有機性廃棄物の処理に関する技術開発が盛んに行われている。
【0006】
そこで、微生物が添加された余剰汚泥等の有機廃棄物を減圧環境で加熱して乾燥有機物を形成する減圧発酵乾燥装置と、乾燥有機物を粒状化するリングダイ式造粒機と、粒状化された乾燥有機物を炭化する炭化装置を備え、有機廃棄物の臭気の拡散を防止しながら、比較的少ない燃料消費により、乾燥及び炭化を行うことができる有機廃棄物の炭化方法及び炭化プラントが開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-050956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示されている炭化プラントの減圧発酵乾燥装置は、微生物が添加された余剰汚泥等の有機廃棄物を減圧環境で加熱して乾燥有機物を形成するものの、あくまで微生物の添加は、減圧値0.03~0.07MPaの減圧環境のもと、70~90℃の温度で、30分から2~3時間にわたり、被処理物を攪拌しながら発酵菌を混合して脱臭を行うためのものである。このため短時間では、微生物による有機廃棄物の発酵熱等による乾燥効果は望めない。
【0009】
さらに、減圧発酵乾燥装置は、2~6時間の短時間で有機廃棄物を所定の水分量(10~25wt%)まで乾燥させるため、いくら減圧環境のもと乾燥処理を行うといえ、乾燥のための蒸気ボイラを作動させるための燃料(固形燃料/液体燃料)の消費量の削減は望めない。また、脱臭に関しても、上記処理時間では、発酵菌を混合することによる脱臭効果は十分に見込めない。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために、有機性廃棄物から有価物としての炭化製品を生成するために必要な燃料を可及的に低く抑えることができるとともに、腐敗する有機性廃棄物から発生する異臭も抑えることができる環境に優れた廃棄物資源化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、前処理施設と、醗酵乾燥装置と、炭化装置と、により構成される廃棄物資源化システムであって、前記前処理施設は、処理可能な廃棄物を選別するための廃棄物選別施設と、前記醗酵乾燥装置に投入可能な大きさに廃棄物を破砕して破砕物生成する廃棄物破砕装置と、前記破砕物に所定の割合で木チップを混合して混合物を生成する混合作業施設と、前記混合物を一時保管するための少なくとも一箇所以上の予備醗酵槽と、を備え、前記醗酵乾燥装置は、前記混合物を醗酵乾燥させて、所定の含水率とした乾燥物を生成し、前記炭化装置は、前記乾燥物を炭化処理して有価物としての炭化製品を生成することを特徴とする廃棄物資源化システムとした。
【0012】
また、前記醗酵乾燥装置は、乾燥炉と、攪拌翼と、駆動シリンダーと、ヒーターと、を備え、前記乾燥炉に投入された前記混合物を、前記ヒーターで加熱しながら前記攪拌翼で攪拌する自動運転を所定期間行うことにより、微生物による有機物の醗酵分解により生じた分解熱により当該混合物の乾燥を促進させることを特徴とする。
【0013】
また、前記炭化装置は、廃油を燃料として生成するための廃油精製燃料化装置が付設され、前記廃油精製燃料化装置で生成した燃料を用いて前記炭化装置内に投入された前記乾燥物の炭化処理を行うとともに、当該炭化処理の過程で発生する乾留ガスを当該炭化処理に再利用することを特徴とする。
【0014】
また、前記前処理施設及び前記醗酵乾燥装置は、処理する廃棄物から発生する臭気を抑える脱臭装置を備え、前記脱臭装置は、臭気成分が外部へ拡散することを防ぐために常時負圧に調整されるとともに、臭気成分を吸着・分解するための多孔質繊維状の消臭機能部を備え、前記消臭機能部は、少なくとも硫化水素、又は窒素化合物を吸着・分解する有用微生物を含む微生物資材からなり、当該微生物資材は、前記脱臭装置において臭気物質を吸着後に、少なくとも、醗酵の促進剤或いは臭気物質の発生抑制剤、として前記醗酵乾燥装置内で前記混合物に添加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有機性廃棄物から有価物としての炭化製品を生成するために必要な燃料を可及的に低く抑えることができるとともに、腐敗する有機性廃棄物から発生する異臭も抑えることができる環境に優れた廃棄物資源化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の廃棄物資源化システムの全体の構成を示す図である。
図2】本実施形態の廃棄物資源化システムの前処理施設を示す横断平面図である。
図3】本実施形態の廃棄物資源化システムの醗酵乾燥装置を説明する概略図である。
図4】本実施形態の廃棄物資源化システムの炭化装置を説明する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、前処理施設と、醗酵乾燥装置と、炭化装置と、により構成される廃棄物資源化システムであって、前記前処理施設は、処理可能な廃棄物を選別するための廃棄物選別施設と、前記醗酵乾燥装置に投入可能な大きさに廃棄物を破砕して破砕物生成する廃棄物破砕装置と、前記破砕物に所定の割合で木チップを混合して混合物を生成する混合作業施設と、前記混合物を一時保管するための少なくとも一箇所以上の予備醗酵槽と、を備え、前記醗酵乾燥装置は、前記混合物を醗酵乾燥させて、所定の含水率とした乾燥物を生成し、前記炭化装置は、前記乾燥物を炭化処理して有価物としての炭化製品を生成することを特徴とする廃棄物資源化システムに関するものである。
【0018】
以下、本実施形態に係る廃棄物資源化システムの一例について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の廃棄物資源化システムの全体の構成を示す図である。図2は、本実施形態の廃棄物資源化システムの前処理施設を示す横断平面図である。図3は、本実施形態の廃棄物資源化システムの醗酵乾燥装置を説明する概略図である。図4は、本実施形態の廃棄物資源化システムの炭化装置を説明する側断面図である。
【0019】
[1.廃棄物資源化システムの構成]
廃棄物資源化システム1は、図1に示すように、前処理施設10と、複数(図中は2個)の醗酵乾燥装置20と、炭化装置30と、により構成される。なお、図中Tは、一般家庭、飲食店及び食品加工工場から発生した有機性廃棄物(生ごみ)を廃棄物資源化システム1に運搬する収集運搬車である。収集運搬車Tで廃棄物資源化システム1に運搬収集された廃棄物W1は、前処理施設10と、醗酵乾燥装置20と、炭化装置30との各施設及び装置により適宜処理されて、有価物である炭化製品Cが生成される。
【0020】
廃棄物W1は、例えば、一般家庭、飲食店及び食品加工工場から発生した有機性廃棄物(生ごみ)であり、収集運搬車Tによって前処理施設10へと搬入される。収集運搬車Tによる廃棄物W1の搬入の際には、前処理施設10に設置されたトラックスケール(図示せず)による計量が行われる。トラックスケールは、廃棄物W1を積載した収集運搬車Tの重量と収集運搬車Tの自重との差から、搬入された廃棄物W1の量を計量するものである。すなわち、トラックスケールは、搬入された廃棄物W1の重量を正確に管理すること、及び搬入された廃棄物W1の重量に応じた料金(処理費用等)を徴収することをも可能とする。
【0021】
前処理施設10は、収集運搬車Tによって搬入された廃棄物W1に対して、後述する醗酵乾燥装置20及び炭化装置30による廃棄物W1の処理を促進するために、廃棄物W1に対して所定の前処理を行うための施設である。
【0022】
醗酵乾燥装置20は、前処理施設10で前処理された廃棄物W1を醗酵乾燥させる装置である。醗酵乾燥は、前処理施設10で前処理された廃棄物W1(以下、混合物ともいう)を微生物による有機物の醗酵分解により生じた分解熱により乾燥を促進させるものである。つまり、廃棄物W1の乾燥は、醗酵熱が水分を蒸発させることにより生起されるものである。廃棄物W1は、醗酵乾燥装置20における醗酵乾燥を経ることにより、含水率を80~85wt%から40wt%程度まで低下される。なお、本実施形態においては、2個の醗酵乾燥装置20により、前処理施設10で前処理された廃棄物W1を醗酵乾燥させているが、廃棄物資源化システム1に設置される醗酵乾燥装置20の数は特に限定されるものではなく、廃棄物資源化システム1に搬入・処理される廃棄物W1の容量に応じて適宜変更可能である。
【0023】
炭化装置30は、醗酵乾燥装置20で醗酵乾燥された廃棄物W1(以下、乾燥物W2ともいう)から有価物である炭化製品Cを生成する装置である。炭化製品Cの含水率は10%程度である。廃棄物資源化システム1で生成された炭化製品Cは、例えば、粉末状に形成し、製鉄会社における製鉄時の精錬工程における鉄の酸化を生起する酸素を取り除くための還元剤として利用することができる。また、所定の大きさのペレット状(粒状)に形成した炭化製品Cを、燃料、肥料、土壌改良剤、水質浄化剤として利用することができる。つまり、本実施形態の廃棄物資源化システム1において、有機性廃棄物から生成された炭化製品Cは、多用途に用いることができるので、価値ある有価物として販売・再利用することができる。なお、本実施形態においては、1個の炭化装置30により、醗酵乾燥装置20で醗酵乾燥された廃棄物W1を炭化処理しているが、廃棄物資源化システム1に設置される炭化装置30の数は特に限定されるものではなく、廃棄物資源化システム1に搬入・処理される廃棄物W1の容量に応じて適宜変更可能である。
【0024】
すなわち、本発明にかかる廃棄物資源化システム1は、醗酵乾燥により含水率が低下した廃棄物W1を燃焼させて炭化製品Cを得る資源化システムである。しかも、醗酵乾燥によって含水率を低下させた廃棄物W1(乾燥物W2)は、醗酵乾燥させない廃棄物W1と比較して、炭化装置が必要とする燃料の使用量を削減できる。燃料の使用量削減は、化石燃料の燃焼によって発生する温室効果ガスの削減効果をも生起する。
【0025】
以下、廃棄物資源化システム1の主な構成要素である、前処理施設10と、醗酵乾燥装置20と、炭化装置30とを、図面を参照して順に詳説する。
【0026】
[2.前処理施設の構成]
本実施形態の前処理施設10は、図2に示すように、搬入搬出口10aから収集運搬車T(図1参照)で廃棄物資源化システム1に運搬された廃棄物W1の一時保管場所であるフリースペース10bと、搬入された廃棄物W1の選別をするための廃棄物選別施設11と、選別された廃棄物W1を破砕するための廃棄物破砕装置12と、破砕された廃棄物と木チップとを混合するための混合作業施設13と、破砕された廃棄物と木チップとの混合物を一時保管するための複数の予備醗酵槽14と、を内部に備えた建造物である。
【0027】
前処理施設10の外部には、施設内で発生した臭気物質を吸着・分解するための脱臭装置40Aが付設されている。なお、本実施形態における臭気物質は、不快なにおいの原因となり生活環境を損なうおそれのある物質であり、特定悪臭物質(硫化水素、硫化メチル、アンモニア等)と呼称される物質である。
【0028】
廃棄物選別施設11は、前処理施設10に搬入された廃棄物W1に含まれる焼却不可能な物を取り除く施設である。焼却不可能な廃棄物の例として、ビン・ガラス・金属・石などが挙げられる。廃棄物W1を選別することは、最終生成物(炭化製品C)の純度を高めることができる。焼却不可能な物を取り除いた廃棄物W1は、隣接する廃棄物破砕装置12へと搬入される。なお、本実施形態の廃棄物選別施設11では、醗酵乾燥や炭化処理が見込めない無機物(ビン・ガラス・金属・石等)を重点的に選別して取り除いている。本来なら易分解性有機物(炭水化物、たんぱく質、脂肪、野菜、骨、紙類等)のみで廃棄物W1を構成することが望ましいが、難分解性有機物(プラスチック、ビニール、木類等)は、後述の廃棄物破砕装置12で破砕することができるので選別する必要はない。これにより、廃棄物選別施設11における廃棄物W1の選別が容易である。
【0029】
廃棄物破砕装置12は、所望の大きさとなるように焼却不可能な物を取り除いた廃棄物W1を破砕する装置である。以下、廃棄物破砕装置12により破砕された廃棄物W1は、破砕物という。この破砕物は、破砕前と比較して表面積が大きくなるため、破砕物とすることで、廃棄物W1は酸素と暴露する面積を広く確保することができ、後述する醗酵乾燥装置20による醗酵乾燥が円滑に進むこととなる。ここで生成された破砕物は、隣接する混合作業施設13へと搬入される。
【0030】
混合作業施設13は、破砕物(所定の大きさの廃棄物W1)と所定量の木チップとを混合させる施設である。以下、破砕物と木チップとの混合によって得られた生成物は、混合物という。破砕物への木チップの混合は、混合物の含水量を調整しつつ、微生物のはたらきを活性化させて醗酵乾燥を促進させる作用がある。木チップは、同じ作用を備えた副資材と代えてもよい。副資材は、例えば、藁、古紙粉砕物、コーヒー粕、キノコ廃培地等から採用することができる。混合物は、予備発酵槽14に一時保管された後、前処理施設10の搬入搬出口10aから搬出されて、外部の醗酵乾燥装置20に搬入される。
【0031】
予備発酵槽14は、混合物を一時保管する施設である。前処理施設10には、少なくとも1基の予備発酵槽14が設けられている。前処理施設10が備える予備発酵槽14の基数に上限を設定する必要はないが、3基まで、或いは5基までのように上限を設定してもよい。予備醗酵槽14で一次保管された混合物は、醗酵乾燥装置20へと搬送される。
【0032】
予備醗酵槽14は、醗酵乾燥装置20に混合物を搬送する前の一時保管場所としての利用以外に、醗酵乾燥装置20が故障した場合、或いは、メンテナンス時にも混合物の一時保管場所として利用することができる。したがって、予備醗酵槽14を備えることにより、本システム1内においても特に期間を要する醗酵乾燥の工程が円滑に実施されることとなり、搬入されてきた廃棄物の処理が滞ることを防ぐことができる。つまり、予備醗酵槽14は、廃棄物資源化システム1を円滑に実施させ、炭化製品Cの安定供給を可能とする。
【0033】
脱臭装置40Aは、前処理施設10の壁面或いは天井に設けられた排気口15と、排気口15と内部連通した配管41とを通じて連結している。排気口15は、前処理施設10内で少なくとも1つ以上設けられており(図中は3箇所)、臭気物質が発生する場所を選択して設けることができる。具体的には、予備発酵槽14の近傍に排気口15が設けられる。これにより、予備醗酵槽14における醗酵分解により発生した臭気物質(異臭)は、前処理施設10全体に広がることなく脱臭装置40Aに回収されることとなる。
【0034】
脱臭装置40Aは、配管41を通じて吸気するためのブロア42と、脱臭機能を内蔵した箱体である脱臭装置本体43と、より構成される。ブロア42の吸気によって、配管41内部、および前処理施設10は負圧となる。これによって、前処理施設10内で発生した臭気物質は、排気口15と配管41を通じて、脱臭装置本体43へと吸引される。
【0035】
脱臭装置本体43は、臭気物質の除去を目的とした消臭機能部44を内蔵している。消臭機能部44は、少なくとも臭気物質を吸着するものであれば自由に選択できるが、好適には、臭気物質を吸着・分解するための多孔質繊維状のものが選択される。具体的には、消臭機能部44は、少なくとも臭気物質(異臭)の元となる硫化水素を吸着・分解する有用微生物を定着させたものを採用することが望ましい。これにより、消臭機能部44は、廃棄物から発生する臭気物質に対して高い分解効果を生起する。
【0036】
上述してきたように、前処理施設10は、搬入搬出口10aと、フリースペース10bと、廃棄物仕分け施設11と、廃棄物破砕装置12と、混合作業施設13と、複数の予備醗酵槽14とより構成されることで、廃棄物W1を醗酵乾燥しやすい態様の混合物へと形成するものである。ここで形成された混合物は、後述する醗酵乾燥装置20においてされに廃棄物W1の十分な醗酵乾燥が行われて廃棄物W1の含水率を下げることとなる。その結果、後述する炭化装置30における廃棄物の炭化工程で使用される燃料が少なくなる。しかも、前処理施設10は、脱臭装置40Aを備えているため、前処理施設10の外部に臭気物質が漏れ出すことがない。
【0037】
[3.廃棄物資源化システムにおける発酵乾燥装置の概要]
本実施形態の醗酵乾燥装置20は、図3に示すように、全体として縦長の略筒形状の外形を有する装置である。醗酵乾燥装置20は、有底かつ有蓋の縦長円筒形状である乾燥炉21が基台25の上面に垂直に立設されている。乾燥炉21の内部の略中心には、水平方向に回動自在に枢軸26が設置されている。枢軸26の外周には、乾燥炉21の内周方向に向けて帯状の板体である複数の攪拌翼22が水平に連結されている。枢軸26の長手方向の下端部には、枢軸26を水平方向に回動させる駆動シリンダー23が連結されている。また、乾燥炉21の上面には、乾燥炉21の内部の温度調整をするためのヒーター24が設置されている。さらに、乾燥炉21の外部近傍には、乾燥炉21内で発生する臭気成分を吸着して消臭するための脱臭装置40Bが付設されている。
【0038】
前処理施設10で生成された混合物は、醗酵乾燥装置20の乾燥炉21の蓋部21aに設けられた開閉自在の投入口21bより乾燥炉21の内部に投入される。乾燥炉21の内部に投入された混合物は、枢軸26を介して駆動シリンダー23に回転操作される攪拌翼22によって、常時攪拌される。また、混合物は、ヒーター24によって、醗酵が促進される所定温度に調整される。かかる構成により、乾燥炉21の内部に投入された混合物は、微生物の醗酵に好適な温度が管理される。また、図示はしないが、微生物の醗酵に好適な酸素を十分に供給するための酸素供給装置も付設されている。この構成により、乾燥炉21内の混合物の醗酵乾燥が均一に進むこととなる。また、気温が著しく低下する時間帯や季節であっても醗酵乾燥を可能とし、乾燥物の安定した形成が可能となる。以下、この醗酵乾燥によって得られた物を乾燥物W2という。
【0039】
醗酵乾燥装置20において、醗酵熱は、混合物の中心温度を60度~70度程度まで上昇させる。また、混合物は、醗酵乾燥装置20内で所定期間(例えば、7日間)の醗酵乾燥させることにより、含水率を40wt%程度まで低下することができる。このように、本実施形態の醗酵乾燥装置20は、比較的長時間の所定期間(例えば、7日間)かけて混合物を醗酵乾燥させる。このため、従来の短時間(2~6時間)で混合物(有機廃棄物)を所定の水分量(10~25wt%)まで乾燥する装置と比較して、乾燥のための蒸気ボイラを作動させるための大量の燃料(固形燃料/液体燃料)を必要としない。また、脱臭に関しても、長期間による微生物による十分な醗酵乾燥を促進でき、脱臭効果も十分に見込める。上述した醗酵乾燥装置20によって得られた乾燥物W2は、炭化処理を施すために炭化装置30へと搬送される。また、図示はしないが、乾燥炉21で生成した乾燥物W2を外部に取り出す乾燥物搬出口が乾燥炉21の下部に開閉自在に設けられている。
【0040】
醗酵乾燥装置20は、投入口21bを開閉自在に設けたことで、醗酵乾燥時に発生した臭気物質が外部に漏れ出さない構造となっている。しかも、醗酵乾燥装置20は、配管41′を通じて連通連結した脱臭装置40Bを備えている。脱臭装置40Bは、常時負圧となるように構成されている。かかる構成により、脱臭装置40Bが醗酵乾燥装置20内で発生した臭気物質を吸引して、臭気物質の無臭化が行われる。この脱臭装置40Bは、前処理施設10と連結する脱臭装置40Aと同じものを採用できる。
【0041】
醗酵乾燥装置20は、混合物が投入される際に、脱臭装置40A・40Bで使用した消臭機能部44を、上述した前処理施設10による廃棄物破砕装置12で所望の大きさとなるように破砕して一緒に入れることができる。本実施形態の脱臭装置40A・40Bの消臭機能部44は、消耗品であり一定期間使用すると新しい消臭機能部44と交換される。そして、使用済みの消臭機能部44を混合物と共に醗酵乾燥装置20へと投入することで、定着する有用微生物による醗酵の促進効果と臭気物質の発生抑制効果とを生起する。これにより、醗酵乾燥装置20における醗酵乾燥を促進させるとともに、発生する臭気物質を可及的に低減させることができる。
【0042】
醗酵乾燥装置20には、使用済みの消臭機能部44の他に、混合物の醗酵促進を目的とした微生物資材を添加することもできる。具体的には、有機物を分解する微生物、或いはプラスチックを分解する微生物等を添加することができる。
【0043】
上述してきたように、本実施形態の醗酵乾燥装置20は、乾燥炉21と、枢軸26と、攪拌翼22と、駆動シリンダー23と、ヒーター24と、脱臭装置40Bとより構成し、さらに、従来の装置と比較して長時間(例えば。7日間)微生物による十分な醗酵乾燥を行うことで、乾燥のための蒸気ボイラを作動させるための大量の燃料を必要としないため、省エネで混合物の含水率を40wt%程度まで低下することができる。これにより、廃棄物W1を炭化しやすい態様(乾燥物W2)へと形成するものである。
【0044】
乾燥物W2は、含水率が低下している為、炭化装置30が炭化工程で必要とする燃料を削減することができる。しかも、乾燥物W2は、有機物の分解により発生するCO2(二酸化炭素)の気泡によって、内部に微小空間を多く形成される。これにより、乾燥物W2は、炭化装置30における燃焼時に炎との接触面積が増大することとなり、醗酵の工程を経由しない廃棄物の乾燥物と比較して、迅速な炭化が行われる。
【0045】
[4.廃棄物資源化システムにおける炭化装置の概要]
本実施形態の炭化装置30は、図4に示すように、醗酵乾燥装置20で生成された乾燥物W2を炭化させるための炭化装置本体31と、炭化装置本体31の長手方向一側端に接続されて乾燥物W2を炭化装置本体31の内部に供給する送上コンベア32と、炭化装置本体31の長手方向他側端の底部に設けられ、炭化製品Cを外部へ搬出する排出スクリュー33と、廃棄された食用油等を精製して炭化装置30の燃料とする廃油精製燃料化装置34とより構成されている。
【0046】
炭化装置本体31は、乾燥物W2を無酸素状態で燃焼させるための複数(図中は2個)のバーナー35を底部に備えた燃焼室36と、燃焼室36の排出スクリュー33側の上部に設けられた排出室37と、燃焼する乾燥物W2から発生した熱とガスを排出するための排気ダクト39と、を備えている。
【0047】
炭化装置30において、乾燥物W2は、送上コンベア32によって炭化装置本体31の燃焼室36の長手方向一側端に搬入される。燃焼室36において、搬入された乾燥物W2は、耐熱コンベア38上に積載されて、長手方向他側端の排出スクリュー33まで運搬される。この際に、乾燥物W2は、無酸素状態下でバーナー35によって燃焼され、炭化製品Cと乾留ガスとが生成される。なお、図4において、破線矢印Gは、乾留ガスが燃焼室36で生成されてから排出室37を経由して排気ダクト39で排気されるまでのルートを示している。
【0048】
すなわち、炭化装置30に搬入された乾燥物W2は、燃焼室36が備える耐熱コンベア38およびバーナー35により、炭化製品Cと乾留ガスへと生成され、排出室37側に耐熱コンベア38により搬送される。炭化製品Cは、排出室37の底部に設けられた排出スクリュー33によって外部へと搬出される。乾留ガスは、排出室37内で燃焼され、炭化装置本体内壁31aと燃焼室36の周壁36aとの間を通って排気ダクト39へと抜けていく。乾留ガスの燃焼によって発生した熱は、燃焼室36の温度を高め、乾燥物W2の炭化を促進させることとなる。
【0049】
かかる構成により、炭化装置30による乾燥物W2の炭化は、化石燃料及び廃油精製燃料化装置34が精製した燃料を使用する複数のバーナー35、並びに乾留ガスの燃焼によって生じる熱を利用することとなる。その結果、化石燃料の使用量を削減することができ、化石燃料の燃焼に伴う温室効果ガスの排出を可及的に低減することができる。
【0050】
乾留ガスは、炭化工程時に乾燥物W2を無酸素状態で燃焼させることで生成される可燃性のガスである。乾留ガスとしては、例えば、水素・一酸化炭素・メタノール・タール等が挙げられる。
【0051】
乾留ガスは、醗酵乾燥の工程でも発生する。ただし、本システム1における醗酵乾燥装置20では、廃棄物W1の発酵乾燥は、不用意な加熱を伴わない微生物による醗酵熱を利用したものであるため、乾留ガスが発生しにくい特徴がある。
【0052】
上述したように、混合物は、醗酵乾燥装置20において、脱臭装置40A・40Bの消臭機能部44を添加して醗酵乾燥される。消臭機能部44は、混合物の醗酵乾燥の工程で発生する乾留ガスを吸着することとなる。仮に、乾留ガスが、醗酵乾燥装置20内に添加した消臭機能部44に吸着されなかったとしても、脱臭装置40Bによって回収され、後に醗酵乾燥装置20内へと還流されることとなる。
【0053】
乾留ガスは、醗酵乾燥装置20での生成量が抑えられることにより、炭化工程時に乾留ガスを多く生成されることとなる。乾留ガスを循環利用する炭化装置30において、乾燥物W2の炭化工程は、廃棄物W1から生成される乾留ガスを余すことなく回収して利用することができる。
【0054】
これにより、炭化工程において本来必要な燃料に対して、乾留ガスを用いる割合を高めることができる。その結果、炭化工程で使用する化石燃料を削減することができる。つまり、本システム1は、燃料費を削減する効果と、化石燃料の使用に伴う温室効果ガス及び大気汚染物質の排出量を削減する効果を有している。
【0055】
廃油精製燃料化装置34は、食堂等から廃棄される大量の廃油を回収して、廃油の油脂に化学処理を施して、炭化装置30の燃料として再利用するものである。このように、廃棄物資源化システム1に廃油精製燃料化装置34を備えることにより、食堂等から廃棄される廃油を処理して有効に使用することができる。このように、廃油を処理して有効に使用することで、炭化装置30のバーナー35で使用する化石燃料を減らすことができ、省エネを測ることができる。
【0056】
上述してきたように、本発明にかかる廃棄物資源化システム1は、前処理施設10、醗酵乾燥装置20、炭化装置30によって構成することで、廃棄物(有機性廃棄物)から、省エネを図りつつ、効率よく有価物である炭化製品Cを生成することができる。つまり、廃棄物(有機性廃棄物)を資源化して再利用することできる。さらに、化石燃料の使用量を減らすことによる温暖効果ガス排出量の削減を実現することができる。また、廃棄物資源化システム1は、前処理施設10と醗酵乾燥装置20とに連結した脱臭装置40A、40Bにより臭気物質が周辺に拡散しない処理環境を提供することができる。これにより、例えば、住宅の集合地等に廃棄物資源化システム1を設置することができる。
【0057】
上述してきた本実施形態では、縦型の円筒形状の醗酵乾燥装置20として説明してきたが、醗酵乾燥装置20はこれに限定されるものではなく、同様な機能を有するものであればよい。また、炭化装置30についても同様である。
【0058】
以上、上記実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上述した各効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 廃棄物資源化システム
10 前処理施設
10a 搬入搬出口
10b フリースペース
11 廃棄物仕分け施設
12 廃棄物破砕装置
13 混合作業場
14 予備発酵槽
15 排気口
20 発酵乾燥装置
21 乾燥炉
21a 蓋部
21b 投入口
22 攪拌翼
23 駆動シリンダー
24 ヒーター
25 基台
26 枢軸
30 炭化装置
31 炭化装置本体
31a 炭化装置本体内壁
32 送上コンベア
33 排出スクリュー
34 廃油精製燃料化装置
35 バーナー
36 燃焼室
36a 燃焼室周壁
37 排出室
38 耐熱コンベア
40A 脱臭装置
40B 脱臭装置
41 配管
42 ブロア
43 装置本体
44 消臭機能部
図1
図2
図3
図4