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特開2022-129538めっき溶解槽及びめっき液の成分調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129538
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】めっき溶解槽及びめっき液の成分調整方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/14 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
C25D21/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028247
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】394021638
【氏名又は名称】トリックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】青木 典夫
(72)【発明者】
【氏名】森本 圭
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】五家 秀樹
(57)【要約】
【課題】めっき成分調整槽の下部に儲けられた下部開閉弁を開閉するのみで、めっき成分調整槽の数に比例しためっき成分をめっき液に溶解させて供給する。
【解決手段】めっき槽に成分を調整しためっき液wを循環させる溶解本槽10と、その内部にめっき成分供給材32が入れられて、溜められためっき液に前記めっき成分供給材が溶解することで、前記溶解本槽にめっき液の成分を供給する複数のめっき成分調整槽30と、前記溶解本槽からめっき液を前記めっき成分調整槽に供給する供給ポンプ20と、前記めっき成分調整槽の下部にそれぞれ個別に開閉可能に設けられて、そこから排出されるめっき液が前記溶解本槽に戻される下部開閉弁33と、を備え、前記下部開閉弁が閉のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めてオーバーフローさせ、前記下部開閉弁が開のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めずに前記溶解本槽に排出させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき槽に成分を調整しためっき液を循環させる溶解本槽と、
その内部にめっき成分供給材が入れられて、溜められためっき液に前記めっき成分供給材が溶解することで、前記溶解本槽にめっき液の成分を供給する複数のめっき成分調整槽と、
前記溶解本槽からめっき液を前記めっき成分調整槽に供給する供給ポンプと、
前記めっき成分調整槽の下部にそれぞれ個別に開閉可能に設けられて、そこから排出されるめっき液が前記溶解本槽に戻される下部開閉弁と、を備え、
前記下部開閉弁が閉のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めてオーバーフローさせ、
前記下部開閉弁が開のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めずに前記溶解本槽に排出させることを特徴とするめっき溶解槽。
【請求項2】
前記めっき成分調整槽の上下方向の中間部にそれぞれ個別に開閉可能に設けられて、そこから排出されるめっき液が前記溶解本槽に戻される中間部開閉弁をさらに備え、
前記下部開閉弁が開のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めずに前記溶解本槽に排出させ、
前記下部開閉弁が閉かつ前記中間部開閉弁が閉のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めてオーバーフローさせ、
前記下部開閉弁が閉かつ前記中間部開閉弁が開のときは、前記中間部開閉弁の位置まで前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めて前記溶解本槽に排出させる請求項1に記載のめっき溶解槽。
【請求項3】
前記めっき成分調整槽が、前記溶解本槽の中に設けられている請求項1又は2に記載のめっき溶解槽。
【請求項4】
前記めっき成分調整槽の内部にめっき液が溜められていないとき、前記供給ポンプからのめっき液が前記めっき成分供給材に触れずに落下する構成となっている請求項1ないし3のいずれか1に記載のめっき溶解槽。
【請求項5】
前記溶解本槽と前記めっき成分調整槽の側壁の一部が重ねられている又は共通とされ、
前記下部開閉弁が前記側壁の外側に設けられるとともに、前記下部開閉弁から前記溶解本槽の中まで配置される戻り配管を備え、
前記下部開閉弁からめっき液を排出するとき、前記戻り配管を通じてめっき液を前記溶解本槽に排出する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のめっき溶解槽。
【請求項6】
請求項1に記載のめっき溶解槽を用いためっき液の成分調整方法であって、
前記めっき槽と前記溶解本槽とを循環するめっき液の成分濃度を測定した測定値と、規定の成分濃度である規定値とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より濃いときは、前記下部開閉弁が閉じてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を開く希釈ステップを行ない、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より薄いときは、前記下部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を閉じる濃縮ステップを行なうことを特徴とするめっき液の成分調整方法。
【請求項7】
請求項2に記載のめっき溶解槽を用いためっき液の成分調整方法であって、
前記めっき槽と前記溶解本槽とを循環するめっき液の成分濃度を測定した測定値と、規定の成分濃度である規定値とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より所定値以上離れて濃いときは、前記下部開閉弁と前記中間部開閉弁とが閉じてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を開く希釈ステップを行ない、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より所定値以上離れて薄いときは、前記下部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁と前記中間部開閉弁とを閉じる濃縮ステップを行ない、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より所定値未満に濃いときは、前記下部開閉弁と前記中間部開閉弁とが閉じてある前記めっき成分調整槽の前記中間部開閉弁を開く、又は前記下部開閉弁が閉じてありかつ前記中間部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を開く半希釈ステップを行ない、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より所定値未満に薄いときは、前記下部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を閉じて前記中間部開閉弁を開く、又は前記下部開閉弁が閉じてありかつ前記中間部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記中間部開閉弁を閉じる半濃縮ステップを行なうことを特徴とするめっき液の成分調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき液の成分濃度を所望の範囲に調整するめっき溶解槽及びめっき液の成分調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気亜鉛メッキ浴の管理方法として、特開昭53-138935号公報(特許文献1)に、ストレージタンクに対して並列した複数の溶解槽が設けられ、この溶解槽に供給されるメッキ液を開閉弁で制御し、メッキ電流に応じて稼働させる溶解槽の数を増減させ、メッキ液の成分を調整する技術が開示されている。
【0003】
また、金属イオン供給方法及びその装置として、特公平3-66400号公報(特許文献2)に、循環タンクから排出されたメッキ液が、並列に配置された複数の亜鉛溶解装置を通過して回収タンクに戻り、さらに回収タンクから循環タンクに供給される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53-138935号公報
【特許文献1】特公平3-66400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載されている技術では、めっき成分である亜鉛の供給量を調整しようとして、仮に4つある溶解槽のうち1つしかめっき液を供給しないように開閉弁を操作した場合、ポンプの吐出量は変わらないため溶解槽の1つあたりのめっき液の通過量は4倍となり、その分1つの溶解槽からの亜鉛の供給量は増加してしまう。つまり、めっき液を供給する開閉弁だけの制御では、溶解槽の数と亜鉛の供給量は比例しないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、めっき成分調整槽の下部に儲けられた下部開閉弁を開閉するのみで、下部開閉弁を開閉しためっき成分調整槽の数に比例しためっき成分を供給することができる、めっき溶解槽及びめっき液の成分調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のめっき溶解槽は、
めっき槽に成分を調整しためっき液を循環させる溶解本槽と、
その内部にめっき成分供給材が入れられて、溜められためっき液に前記めっき成分供給材が溶解することで、前記溶解本槽にめっき液の成分を供給する複数のめっき成分調整槽と、
前記溶解本槽からめっき液を前記めっき成分調整槽に供給する供給ポンプと、
前記めっき成分調整槽の下部にそれぞれ個別に開閉可能に設けられて、そこから排出されるめっき液が前記溶解本槽に戻される下部開閉弁と、を備え、
前記下部開閉弁が閉のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めてオーバーフローさせ、
前記下部開閉弁が開のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めずに前記溶解本槽に排出させることを特徴とする。
【0008】
本発明のめっき溶解槽によれば、複数のめっき成分調整槽に個別に設けられた下部開閉弁によって、所望の数のめっき成分調整槽にめっき液を溜めて、めっき液にめっき成分を溶解させて供給することができる。また、めっき液を溜めないめっき成分調整槽については、供給されためっき液がめっき成分調整槽に溜められず、そのまま下部開閉弁から排出される。このため、1つのめっき成分調整槽をオーバーフロー又は通過するめっき液は、下部開閉弁の開閉状態には左右されずに一定である。これにより、めっき成分の供給量が、下部開閉弁を閉めてめっき液を溜めためっき成分調整槽の数に比例して、正確にめっき液の成分濃度を調整することができる。
【0009】
本発明のめっき溶解槽の好ましい例は、
前記めっき成分調整槽の上下方向の中間部にそれぞれ個別に開閉可能に設けられて、そこから排出されるめっき液が前記溶解本槽に戻される中間部開閉弁をさらに備え、
前記下部開閉弁が開のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めずに前記溶解本槽に排出させ、
前記下部開閉弁が閉かつ前記中間部開閉弁が閉のときは、前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めてオーバーフローさせ、
前記下部開閉弁が閉かつ前記中間部開閉弁が開のときは、前記中間部開閉弁の位置まで前記めっき成分調整槽にめっき液を溜めて前記溶解本槽に排出させる。
【0010】
本発明のめっき溶解槽の好ましい例によれば、めっき成分調整槽に、下部開閉弁に加えて中間部開閉弁を設けている。このため、中間部開閉弁のある位置までめっき液を溜めることが可能となる。これにより、めっき成分調整槽の中に入れられている、めっき成分供給材の一部のみめっき液に浸漬させることができ、細かくめっき液の成分濃度を調整することができる。
【0011】
本発明のめっき溶解槽の好ましい例は、
前記めっき成分調整槽が、前記溶解本槽の中に設けられている。
【0012】
本発明のめっき溶解槽の好ましい例によれば、めっき成分調整槽が、溶解本槽の中に設けられているため、装置全体の構成を小型化することができる。また、めっき成分調整槽からオーバーフローしためっき液、及び下部開閉弁から排出されるめっき液をそのまま溶解本槽に落下させることができるため、構成を簡素なものとすることができる。
【0013】
本発明のめっき溶解槽の好ましい例は、
前記めっき成分調整槽の内部にめっき液が溜められていないとき、前記供給ポンプからのめっき液が前記めっき成分供給材に触れずに落下する構成となっている。
【0014】
本発明のめっき溶解槽の好ましい例によれば、下部開閉弁を開いてめっき液をめっき成分調整槽に溜めないときは、めっき液がめっき成分供給材に触れない。これにより、当該めっき成分調整槽からはめっき成分が全く供給されず、めっき液の成分濃度の調整精度をさらに高めることができる。
【0015】
本発明のめっき溶解槽の好ましい例は、
前記溶解本槽と前記めっき成分調整槽の側壁の一部が重ねられている又は共通とされ、
前記下部開閉弁が前記側壁の外側に設けられるとともに、前記下部開閉弁から前記溶解本槽の中まで配置される戻り配管を備え、
前記下部開閉弁からめっき液を排出するとき、前記戻り配管を通じてめっき液を前記溶解本槽に排出する。
【0016】
本発明のめっき溶解槽の好ましい例によれば、下部開閉弁が溶解本槽の外側に設けられているため、下部開閉弁まで容易に手が届き、下部開閉弁の開閉操作がし易くなる。
【0017】
本発明のめっき液の成分調整方法は、
上記のめっき溶解槽を用いためっき液の成分調整方法であって、
前記めっき槽と前記溶解本槽とを循環するめっき液の成分濃度を測定した測定値と、規定の成分濃度である規定値とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より濃いときは、前記下部開閉弁が閉じてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を開く希釈ステップを行ない、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より薄いときは、前記下部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を閉じる濃縮ステップを行なうことを特徴とする。
【0018】
本発明のめっき液の成分調整方法は、
上記のめっき溶解槽を用いためっき液の成分調整方法であって、
前記めっき槽と前記溶解本槽とを循環するめっき液の成分濃度を測定した測定値と、規定の成分濃度である規定値とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より所定値以上離れて濃いときは、前記下部開閉弁と前記中間部開閉弁とが閉じてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を開く希釈ステップを行ない、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より所定値以上離れて薄いときは、前記下部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁と前記中間部開閉弁とを閉じる濃縮ステップを行ない、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より所定値未満に濃いときは、前記下部開閉弁と前記中間部開閉弁とが閉じてある前記めっき成分調整槽の前記中間部開閉弁を開く、又は前記下部開閉弁が閉じてありかつ前記中間部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を開く半希釈ステップを行ない、
前記比較ステップにおいて測定値が規定値より所定値未満に薄いときは、前記下部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記下部開閉弁を閉じて前記中間部開閉弁を開く、又は前記下部開閉弁が閉じてありかつ前記中間部開閉弁が開いてある前記めっき成分調整槽の前記中間部開閉弁を閉じる半濃縮ステップを行なうことを特徴とする。
【0019】
これらの本発明のめっき液の成分調整方法によれば、既に述べためっき溶解槽の発明と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明のめっき溶解槽及びめっき液の成分調整方法によれば、めっき成分調整槽の下部に設けられた下部開閉弁を開閉するのみで、下部開閉弁を開閉しためっき成分調整槽の数に比例しためっき成分をめっき液に溶解させて供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るめっき溶解槽の平面概略図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図であり下部開閉弁と中間部開閉弁とを閉めた状態を説明する図である。
図4】下部開閉弁を開けた状態を説明する図である。
図5】下部開閉弁を閉めて中間部開閉弁を開けた状態を説明する図である。
図6】分岐配管の他の実施形態を説明する図である。
図7】分岐配管の他の実施形態を説明する図である。
図8】めっき成分調整槽の他の実施形態を説明する図である。
図9】めっき成分調整槽の他の実施形態を説明する図である。
図10】めっき溶解槽の他の実施形態を説明する図である。
図11】本発明のめっき液の成分調整方法の一実施形態を説明するフロー図である。
図12】めっき液の成分調整方法の他の実施形態を説明するフロー図である。
図13図11の実施形態と図12の実施形態との使い分けを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のめっき溶解槽1及びめっき液の成分調整方法の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明に係るめっき溶解槽1は、めっき液wをめっき槽(図示せず)とめっき溶解槽1との間で循環させつつ、亜鉛等のめっき成分を規定の濃度でめっき液に溶解させて、めっき液の成分濃度を適切な範囲に調整するものである。また、本発明のめっき液の成分調整方法は、本発明のめっき溶解槽1を用いて実施される。
【0023】
先ずは、めっき溶解槽1の実施形態から説明する。図1から図3に示すように、本実施形態のめっき溶解槽1は、溶解本槽10と、供給ポンプ20と、めっき成分調整槽30と、下部開閉弁33と、中間部開閉弁34とを備える。
【0024】
溶解本槽10は、めっき槽に成分を調整しためっき液wを循環させるものである。具体的には、めっき槽から循環ポンプと循環配管(図示せず)でめっき液が送られてくる。そのめっき液は、溶解本槽10の入口配管11から入り、溶解本槽10でめっき液の成分が調整され、出口配管12から出て行く。そして、めっき槽にめっき液が戻ることを繰り返すのである。
【0025】
供給ポンプ20は、溶解本槽10の中に溜められためっき液wを、めっき成分調整槽30に供給するものである。また、供給ポンプ20からは供給配管21が伸びており、この供給配管21は各々のめっき成分調整槽30に向けて分岐された分岐配管22を備える。この供給配管21と分岐配管22には、メンテナンスのため等の理由で適宜開閉弁を設けることができる。
【0026】
めっき成分調整槽30は、その内部にめっき成分供給材32が入れられて、溜められためっき液wにめっき成分供給材32が溶解するとともにめっき液がオーバーフローすることによって、溶解本槽10にめっき液の成分を供給するものである。
【0027】
めっき成分供給材32は、めっき液に溶解することでめっきの成分濃度を保つものであり、それぞれのめっき成分調整槽30の中に設けられた籠31の中に入れられている。本実施形態では、このめっき成分供給材32に、亜鉛めっきに使用する亜鉛のインゴットを用いている。なお、このインゴットは、めっき液に溶解することで次第に減少するが、その都度、籠31の上から新たなインゴットを補充することができる。
【0028】
また、めっき成分調整槽30は複数設けられる。本実施形態ではめっき成分調整槽30を4つ設けている。また、これらの複数のめっき成分調整槽30は、溶解本槽10の中に設けられている。ここで、めっき成分調整槽30が溶解本槽10の中に設けられているとは、めっき成分調整槽30からオーバーフローしためっき液w、及び下部開閉弁33と中間部開閉弁34とから排出されためっき液wが、溶解本槽10の中に落下する状態を意図している。このため、平面視でめっき成分調整槽30が溶解本槽10の中にあればよく、側面視では溶解本槽10の上端よりめっき成分調整槽30が上にあっても良い。
【0029】
また、それぞれのめっき成分調整槽30には、下部開閉弁33と中間部開閉弁34とが設けられている。下部開閉弁33は、めっき成分調整槽30の下部にそれぞれ個別に開閉可能に設けられて、そこから排出されるめっき液wが溶解本槽10に戻されるものである。この下部開閉弁33が開かれた場合、図4に示すように、分岐配管22から供給されためっき液wは、めっき成分調整槽30に溜められずに下部開閉弁33から排出される。この場合、めっき成分調整槽30に供給されためっき液は、めっき成分供給材32には基本的に触れないため、めっき成分が供給されない状態で溶解本槽10に排出される。
【0030】
中間部開閉弁34は、めっき成分調整槽30の上下方向の中間部にそれぞれ個別に開閉可能に設けられて、そこから排出されるめっき液wが溶解本槽10に戻されるものである。この中間部開閉弁34が開かれて、かつ下部開閉弁33が閉じられた場合、図5に示すように、めっき成分調整槽30の中に、めっき液wが中間部開閉弁34の位置まで溜められて、溶解本槽10に排出されるようになる。この場合、めっき成分調整槽30に供給されためっき液は、めっき成分供給材32のうち下半分に触れる。このため、めっき成分がめっき成分調整槽30の半分程度の能力分、溶解して供給された状態で溶解本槽10に排出される。なお、中間部開閉弁34は1つのめっき成分調整槽30に、高さを変えて複数設けることもできる。係る場合、めっき成分調整槽30の中のめっき液wの水位を、3段階以上に細かく調整することができる。
【0031】
なお、下部開閉弁33と中間部開閉弁34との両方が閉じられた場合、図3に示すように、めっき液wはめっき成分調整槽30の中いっぱいに溜められて、オーバーフローにより溶解本槽10の中に排出される。この場合、めっき成分調整槽30に供給されためっき液wは、めっき成分供給材32の全てに触れる。このため、めっき成分がめっき成分調整槽30の全ての能力分、供給された状態で溶解本槽10に排出される。
【0032】
また、必須の構成ではないが、めっき槽とめっき溶解槽1とを循環するめっき液wの成分濃度を自動的に測定して測定値を求め、規定の成分濃度である規定値とのずれを検出し、規定値とのずれを補正する制御部を備え、さらに下部開閉弁33及び中間部開閉弁34を自動開閉弁にすることで、めっき液の成分濃度の調整を自動化することもできる。
【0033】
次に、図6から図9を参照して、下部開閉弁33が開かれてめっき成分調整槽30の内部にめっき液wが溜められていないとき、供給ポンプ20から供給配管21と分岐配管22を通じて供給されるめっき液が、めっき成分供給材32に触れずにめっき成分調整槽30内に落下する構成を説明する。
【0034】
図6に示す実施形態では、分岐配管122をめっき成分調整槽30の底部近傍まで延伸させて、めっき液wをめっき成分調整槽30の底部近傍から供給している。図7に示す実施形態では、分岐配管222の先端をめっき成分調整槽30の壁面に向けて、めっき液がめっき成分調整槽30の壁面に沿って落下するようにしている。図8に示す実施形態では、分岐配管22と籠31との間に隔壁35を設けている。この隔壁35は、めっき成分調整槽30の底部近傍が開口37されており、その開口37からめっき成分調整槽30全体にめっき液が行き渡るようにしている。なお、この実施形態では、下部開閉弁33と中間部開閉弁34とを閉じると、供給ポンプ20から供給されためっき液が開口37を通らずに、めっき成分調整槽30のうち図で示す右側からオーバーフローする恐れがある。このため、めっき成分調整槽30の右側からのオーバーフローを防止する目的で、隔壁35及びその周辺のめっき成分調整槽30の壁を高くしている(図中符号h1,h2)。図9に示す実施形態では、分岐配管22の先端にめっき成分調整槽30の壁面に向かって傾斜した傾斜板36を設け、めっき液がめっき成分調整槽30の壁面に沿って落下するようにしている。この様に図6図9に示す構成にすることで、下部開閉弁33が開かれてめっき成分調整槽30にめっき液がない状態で、めっき液がめっき成分調整槽30に供給されたとき、めっき液がめっき成分供給材32に触れることがないようにすることができる。
【0035】
また、図10に示すめっき溶解槽の他の実施形態では、溶解本槽10とめっき成分調整槽30の側壁swの一部を重ねている又は共通としている。さらに、下部開閉弁33及び中間部開閉弁34を側壁swの外側に設け、これらの下部開閉弁33及び中間部開閉弁34から溶解本槽10の側壁swを貫通して溶解本槽10の中に引き込まれる戻り配管23を備えている。またさらに、めっき成分調整槽の前記側壁swと反対側の上端の一部を切り欠き38としている。これらにより、下部開閉弁33及び中間部開閉弁34の操作を溶解本槽10の外側からすることができる。また、めっき液wがめっき成分調整槽30からオーバーフローするときは、切り欠き38よりオーバーフローして溶解本槽10に排出される。
【0036】
次に、図11から図13も参照して、めっき液の成分調整方法の実施形態を説明する。先ずは図11に示す実施形態を説明する。本実施形態のめっき液の成分調整方法(S1000~)は、比較ステップと、希釈ステップと、濃縮ステップとを含む。
【0037】
比較ステップは、めっき槽、溶解本槽10、及びめっき槽と溶解本槽10との間の循環配管を循環しているめっき液wの成分濃度を測定して測定値を求め、この測定値と予め規定された成分濃度である規定値とを比較するものである(S1010)。このとき、測定値が規定値の範囲内であれば、循環しているめっき液の成分濃度の測定値と規定値との比較を繰り返す(S1020)。一方、循環するめっき液の成分濃度の測定値が規定値の範囲内でないとき、測定値が既定値よりも濃いのか否かが判断される(S1030)。
【0038】
ここで、測定値が規定値より濃いときは、下部開閉弁33と中間部開閉弁34とが閉じてあるめっき成分調整槽30の、下部開閉弁33を開く希釈ステップを行なう(S1040)。この希釈ステップにより、図3に示すような、めっき液wがオーバーフローしているめっき成分調整槽30が、図4に示すような、めっき液wが下部開閉弁33から排出された空の状態になる。この結果、当該めっき成分調整槽30からのめっき成分がめっき液に供給されなくなり、めっき液の成分濃度が薄くなる。
【0039】
一方、めっき液の測定値が規定値より薄いときは、下部開閉弁33が開いてあるめっき成分調整槽30の下部開閉弁33と中間部開閉弁34とを閉じる濃縮ステップを行なう(S1050)。この濃縮ステップにより、図4に示すような、めっき液wが下部開閉弁33から排出されている空のめっき成分調整槽30が、図3に示すようにめっき液wで満たされてオーバーフローする状態になる。この結果、当該めっき成分調整槽30からめっき成分がめっき液に供給されるようになり、めっき液の成分濃度が薄くなる。そして、フローを終了させて(S1060)所定時間経過後、再度図11に示すフローを繰り返すのである。
【0040】
なお、上述の図11に示す実施形態では、中間部開閉弁34を備える構成での説明をしたが、中間部開閉弁34がなく下部開閉弁33のみの構成も考えられる。係る場合、中間部開閉弁34の記載を除いて読まれたい。
【0041】
次に、図12に示す実施形態を説明する。本実施形態のめっき液の成分調整方法(S2000~)は、比較ステップと、半希釈ステップと、半濃縮ステップとを含む。
【0042】
比較ステップ(S2010~S2030)は、上述した図11に示す実施形態のめっき液の成分調整方法(S1010~S1030)と同じであるため、説明を省略する。
【0043】
次に、めっき液の成分濃度である測定値が規定値より濃いときは、半希釈ステップを行なう。ここでは、先ず図5に示すような、下部開閉弁33が閉じてありかつ中間部開閉弁34が開いてあるめっき成分調整槽30があるか否かを判断する(S2040)。この判断で、下部開閉弁33が閉じてありかつ中間部開閉弁34が開いてあるめっき成分調整槽30がある場合、当該めっき成分調整槽30の閉じてある下部開閉弁33を開いて図4に示す状態にする(S2050)。一方、下部開閉弁33が閉じてありかつ中間部開閉弁34が開いてあるめっき成分調整槽30がない場合、図3に示すような下部開閉弁33及び中間部開閉弁34の両方が閉じられているめっき成分調整槽30の中間部開閉弁34を開いて、図5に示す状態にする(S2060)。
【0044】
また、めっき液の測定値が規定値より薄いときは、半濃縮ステップを行なう。ここでは、先ず図5に示すような、下部開閉弁33が閉じてありかつ中間部開閉弁34が開いてあるめっき成分調整槽30があるか否かを判断する(S2070)。この判断で、下部開閉弁33が閉じてありかつ中間部開閉弁34が開いてあるめっき成分調整槽30がある場合、当該めっき成分調整槽30の開いてある中間部開閉弁34を閉じて図3に示す状態にする(S2080)。一方、下部開閉弁33が閉じてありかつ中間部開閉弁34が開いてあるめっき成分調整槽30がない場合、図4に示すような、下部開閉弁33が開かれているめっき成分調整槽30の下部開閉弁33を閉じるとともに中間部開閉弁34を開いて図5に示す状態にする(S2090)。そして、フローを終了させて(S2100)所定時間経過後、再度図12に示すフローを繰り返すのである。
【0045】
次に、図11に示す実施形態と図12に示す実施形態の使い分け(S3000~)を、図13を参照して説明する。ここでは、比較ステップとして、測定値が規定値に対して濃いか薄いかだけでなく、所定値以上離れて濃いか否か、又は所定値以上離れて薄いか否かを判断する。具体的には、先ず測定値と規定値とを比較する。そして、測定値は規定値より濃いか否かを判断する(S3010~S3030)。これは、上述した比較ステップ(図11 S1010~S1030)と同じであるため説明を省略する。
【0046】
次に、測定値が規定値より濃い場合、測定値が規定値より所定値以上離れて濃いか否かを判断する(S3040)。ここで、所定値以上離れて濃いならば、図11で説明した希釈ステップを行なう(S3050(図11 S1040))。一方、測定値が所定値未満の濃さであれば、図12で説明した半希釈ステップを行なう(S3060(図12 S2050,S2060))。
【0047】
また、測定値が規定値より薄い場合、測定値が規定値より所定値以上離れて薄いか否かを判断する(S3070)。ここで、所定値以上離れて薄いならば、図11で説明した濃縮ステップを行なう(S3080(図11 S1050))。一方、測定値が所定値未満の薄さであれば、図12で説明した半濃縮ステップを行なう(S3090(図12 S2080,S2090))。
【0048】
さらに、他の実施形態として図示はしないが、例えばめっき液を入れ替えたときのように、測定値と規定値とが大幅にずれているような場合、図11で説明した濃縮ステップ(S1050)、希釈ステップ(S1040)を同時に複数のめっき成分調整槽30で行なうこともできる。この様にすることで、めっき液の様々な状況に対応させることができる。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態のめっき溶解槽1及びめっき液の成分調整方法によれば、供給ポンプ20からは常に一定のめっき液wがめっき成分調整槽30に供給されており、めっき成分供給材32からのめっき成分の供給は、下部開閉弁33及び中間部開閉弁34によってめっき成分調整槽30にめっき液を溜めるか溜めないかによって調整される。これにより、供給ポンプ20の吐出量を制御することなく、下部開閉弁33及び中間部開閉弁34の開閉のみで、めっき成分調整槽30の数に比例しためっき液の成分濃度の調整をすることができる。また、特許文献1及び特許文献2のように、分岐配管22に設けた開閉弁でめっき液の成分調整を行なわないため、供給ポンプ20及び供給ポンプ20の駆動用モータに余分な負荷がかかることがない。これにより、供給ポンプ20及び供給ポンプ20の駆動用モータの寿命を延ばす効果があるとともに、電力の無駄な消費を抑えることができる。
【0050】
また、めっき成分調整槽30に中間部開閉弁34を設けることで、より精度の高いめっき液wの成分濃度の調整をすることができる。例えば、上述の実施形態では4つのめっき成分調整槽30に各1つの中間部開閉弁34を設けている。これにより、めっき成分調整槽30の数は4つながら、8段階でめっき液の成分濃度の調整を行なうことができる。これを中間部開閉弁34の数をさらに増やすことで、めっき成分調整槽の数×中間部開閉弁の数=調整段数とすることができる。このように、めっき液の成分調整の微細な調整において、めっき成分調整槽30の数を変えずに、小さなめっき成分調整槽30を多数設置したのと同じ効果を得ることができる。
【0051】
また、めっき成分調整槽30が複数あるため、一部のめっき成分調整槽30を停止しても、他のめっき成分調整槽30を稼働させてめっきを続けることが可能となり、めっき槽の稼働率向上を図ることもできる。また、下部開閉弁33及び中間部開閉弁34が溶解本槽10の外側に配置されている構成では、作業員が容易に下部開閉弁33及び中間部開閉弁34の操作を行なうことができる。
【0052】
なお、上述のめっき溶解槽1及びめっき液の成分調整方法は、本発明の例示であり発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0053】
1・・めっき溶解槽、
10・・溶解本槽、11・・入口配管、12・・出口配管、
20・・供給ポンプ、21・・供給配管、22,122,222・・分岐配管、23・・戻り配管、
30・・めっき成分調整槽、31・・籠、32・・めっき成分供給材、33・・下部開閉弁、34・・中間部開閉弁、35・・隔壁、36・・傾斜板、37・・開口、38・・切り欠き、
w・・めっき液、sw・・側壁、
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