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特開2022-129561クリプトスポリジウム分析用自動採水装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129561
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】クリプトスポリジウム分析用自動採水装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20220830BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G01N1/00 101N
G01N33/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028276
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】東 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】川島 栄
(72)【発明者】
【氏名】新井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】澤井 賢司
(72)【発明者】
【氏名】山田 博明
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA06
2G052AA36
2G052AC17
2G052AD26
2G052AD49
2G052CA35
2G052CA39
2G052FC06
2G052FC11
2G052HC10
2G052HC39
2G052JA03
2G052JA09
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、精度の高い採水のクリプトスポリジウム分析を行うことができるクリプトスポリジウム分析用自動採水装置を提供する。
【解決手段】採水タンク10と、給水手段40と、サイフォン手段60と、給水手段40によって採水タンク10にサイフォンが形成される水位a1,a3まで採水を給水することでサイフォン手段60による排水を開始させる排水開始手段(自動弁45など)と、給水手段40による給水を停止させると共に排水開始手段によって開始された排水をサイフォン手段60が空気を吸い込むことで停止させる排水停止手段(自動弁45など)とを有する。給水手段40による採水タンク10への給水と、排水開始手段及び排水停止手段による採水タンク10からの排水とを繰り返すことで、採水タンク10内を採水によって共洗いし、さらに給水手段40によって採水タンク10に採水を貯留させる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリプトスポリジウム分析用の採水を貯留しておく採水貯留手段と、
前記採水貯留手段に給水を行う給水手段と、
前記採水貯留手段に給水した採水をサイフォンを形成することによって全量排水するサイフォン手段と、
前記給水手段によって前記採水貯留手段に前記サイフォンが形成される水位まで採水を給水することで当該サイフォン手段による排水を開始させる排水開始手段と、
前記給水手段による給水を停止させると共に、前記排水開始手段によって開始された排水を前記サイフォン手段が空気を吸い込むことで停止させる排水停止手段と、
を有し、
前記給水手段による前記採水貯留手段への給水と、前記排水開始手段及び前記排水停止手段による前記採水貯留手段からの排水と、を行うことで、前記採水貯留手段内を採水によって共洗いし、さらに前記給水手段によって前記採水貯留手段に採水を貯留させることを特徴とするクリプトスポリジウム分析用自動採水装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクリプトスポリジウム分析用自動採水装置であって、
前記給水手段と前記排水開始手段と前記排水停止手段とを制御する給排水制御手段を有することを特徴とするクリプトスポリジウム分析用自動採水装置。
【請求項3】
クリプトスポリジウム分析用の採水を採水貯留手段に給水する給水ステップと、
前記採水貯留手段に給水した採水の水位を所定の水位以上に超えさせサイフォンを形成して当該採水貯留手段内の採水の排水を開始する排水開始ステップと、
前記給水を停止させると共に、前記排水開始ステップによって開始された排水を前記サイフォンが空気を吸い込むまで行うことで停止させる排水停止ステップと、
を行うことで、前記採水貯留手段内を前記採水によって共洗いし、
前記共洗いの後に、給水によって前記採水貯留手段に採水を貯留させることを特徴とするクリプトスポリジウム分析用自動採水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水などにおけるクリプトスポリジウム確認のための採水に用いて好適なクリプトスポリジウム分析用自動採水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば浄水場や配水施設においては、水道水中のクリプトスポリジウム確認のため、毎日手作業にてサンプリング用の水道水を採水している。水道水中のクリプトスポリジウムの分析を行うためには、水道水が20L程度必要である。
【0003】
厚生労働省の指針で、浄水場では水道水20Lを1日1回採取し、これを14日間分保管することが求められている。このため一般に、水道水を汎用の20Lポリエチレンタンク(以下「ポリタンク」という)に詰めて保管する作業を毎日繰り返し行い、常時14日分の水道水を保管している。そして保管期間を過ぎた水道水を詰めているポリタンクは、毎日手作業にて1缶ずつ新しい水道水と入れ替えを行う。
【0004】
採水の際は先ず、14日前の水道水20Lが入ったポリタンクを持ち上げて、傾けたり反転したりして、14日前の水道水を排水する。排水を行なった後、少量の検体(新しい水道水)を前記ポリタンクに給水して、当該ポリタンクをゆすって洗浄を行う。この洗浄は、通称「共洗い」と呼ばれるもので、容器内部に付着している分析対象となる液体以外の物質(14日前の水道水)を、分析対象の液体(新しい水道水)で予め除去するものであり、通常は2~3回程度、この共洗い作業を行う。そしてその後、新しい水道水を当該ポリタンクに給水して保管する。
【0005】
そして上記作業の内、給水のみを自動化した装置は存在するが、当該装置は、排水作業及び、容器のセット作業、採水した容器の保管作業は人手によって行う必要があり、また容器の共洗い作業は行われないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-56333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記クリプトスポリジウム分析用の容器は、上述のように、一般的に汎用の20Lポリタンクが使用されており、このため排水、洗浄(共洗い)を行う際、持ち上げて反転する、またはゆすってから反転するなどの作業が必要であった。従ってこれらの作業を完全自動化するためには、その反転動作を自動化する必要があり、そのためには大掛かりな反転装置が必要になる。
【0008】
また、分析精度を高めるには、容器の共洗いが重要であるが、20L容器は大きいため、この容器の共洗いを手作業で行う場合は少量の原液(分析対象の液体)を容器内に入れて、これをゆすって捨てる作業が行われる。しかし共洗いの効果は、原液が容器内面と多く接触することで高められるため、少量の原液での共洗いでは充分な洗浄効果が得られない。
【0009】
特許文献1には、クリプトスポリジウム分析用ではないが、河川や飲料水の水源の水質確認を目的として、概ね2000mL以下の小さいサンプル瓶を有する自動採水器において、サイフォンを利用して自動排水を可能とすることについての記載がある。
【0010】
しかし、特許文献1に記載の自動採水器は、電磁弁を使用しておらず、またサンプル瓶の容量が概ね2000mL以下の小さい容器であるのに対し、今回分析対象としているクリプトスポリジウム分析用の容器は20L容量という大きい容器が必要であり、特許文献1の技術をそのまま適用することはできない。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、簡単な構成で、精度の高い採水のクリプトスポリジウム分析を行うことができるクリプトスポリジウム分析用自動採水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、クリプトスポリジウム分析用の採水を貯留しておく採水貯留手段と、前記採水貯留手段に給水を行う給水手段と、前記採水貯留手段に給水した採水をサイフォンを形成することによって全量排水するサイフォン手段と、前記給水手段によって前記採水貯留手段に前記サイフォンが形成される水位まで採水を給水することで当該サイフォン手段による排水を開始させる排水開始手段と、前記給水手段による給水を停止させると共に、前記排水開始手段によって開始された排水を前記サイフォン手段が空気を吸い込むことで停止させる排水停止手段と、を有し、前記給水手段による前記採水貯留手段への給水と、前記排水開始手段及び前記排水停止手段による前記採水貯留手段からの排水と、を行うことで、前記採水貯留手段内を採水によって共洗いし、さらに前記給水手段によって前記採水貯留手段に採水を貯留させることを特徴としている。
本発明によれば、採水貯留手段に貯留したクリプトスポリジウム分析用の採水を取り換える作業を、サイフォンの原理を利用した簡単な設備で、全自動で行うことが可能になる。
即ち本発明では、排水作業をサイフォンの原理を利用したサイフォン手段で行うことで、採水貯留手段(例えば20Lポリタンク)を持ち上げて反転することなく、排水工程、洗浄(共洗い)工程、給水工程を全自動で行うことができる。前記各工程は、例えば1台の自動弁(給水弁)をON/OFF制御するだけで、容易に行うことができる。
また採水貯留手段の共洗いの際、本発明では採水貯留手段の内面全体を完全に採水で浸すことができ、またこの共洗いを自動で繰り返し行えるので、分析精度を高めることができる。
【0013】
また本発明は、上記特徴に加え、前記給水手段と前記排水開始手段と前記排水停止手段とを制御する給排水制御手段を有することを特徴としている。
給排水制御手段による制御は、例えば電磁弁などの自動弁をタイマ制御などすることによって、容易に行うことができる。
【0014】
また本発明は、クリプトスポリジウム分析用の採水を採水貯留手段に給水する給水ステップと、前記採水貯留手段に給水した採水の水位を所定の水位以上に超えさせサイフォンを形成して当該採水貯留手段内の採水の排水を開始する排水開始ステップと、前記給水を停止させると共に、前記排水開始ステップによって開始された排水を前記サイフォンが空気を吸い込むまで行うことで停止させる排水停止ステップと、を行うことで、前記採水貯留手段内を前記採水によって共洗いし、前記共洗いの後に、給水によって前記採水貯留手段に採水を貯留させることを特徴とするクリプトスポリジウム分析用自動採水方法にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成で、精度の高い水道水中などのクリプトスポリジウム確認のための採水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】クリプトスポリジウム分析用自動採水装置1を示す図であり、図1(a)は全体概略正面図、図1(b)は図1(a)の概略左側面図、図1(c)は図1(a)の概略右側面図、図1(d)は排水ユニット70の概略左側面図である。
図2】自動採水装置1の1動作例を示す動作フロー図である。
図3】自動採水装置1のタイムチャートの1例を示す図であり、図3(a)は何れかの自動弁45-n(n:1~14)による1回の採水工程を詳細に示す図、図3(b)は各自動弁45-1~14による採水工程を示す図である。
図4】自動採水装置1の制御ブロック図である。
図5A】採水動作説明図(その1)である。
図5B】採水動作説明図(その2)である。
図5C】採水動作説明図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかるクリプトスポリジウム分析用自動採水装置(以下「自動採水装置」という)1を示す図であり、図1(a)は全体概略正面図、図1(b)は図1(a)の概略左側面図(但し排水ユニット70の記載を省略)、図1(c)は図1(a)の概略右側面図、図1(d)は排水ユニット70の概略左側面図である。これらの図に示すように、自動採水装置1は、クリプトスポリジウム分析用の採水(サンプル液、浄水、検体、原液)を貯留しておく採水貯留手段(以下「採水タンク」という)10と、当該採水タンク10を保持する保持手段(保管ユニット)30と、前記採水タンク10に給水を行う給水手段40と、前記採水タンク10内の採水を排水するサイフォン手段60と、サイフォン手段60からの排水を導入する排水ユニット70と、前記給水手段40に取り付けた下記する自動弁45の開閉を制御する制御盤80と、当該制御盤80と前記自動弁45を取り付ける取付台100とを具備して構成されている。なお上記自動採水装置1を構成する採水タンク10と給水手段40とサイフォン手段60と自動弁45は、それぞれ14組あり、これら14組の部材に対して、保持手段30と排水ユニット70は2台、制御盤80と取付台100は1台設置されている。
【0018】
この自動採水装置1は、水道水の水質確認を目的として、市販の20Lポリタンクを採水タンク10として使用し、そのスクリューキャップ蓋部分(下記する開口13部分)にサイフォン手段(サイフォン形成機構)60を有する排水装置を取り付け、電磁弁などの自動弁45のタイマ制御により自動給排水を行うものである。以下具体的に説明する。
【0019】
採水タンク10は、この例では、市販の20Lポリタンクを使用している。即ちこの採水タンク10は、ポリエチレン製の略矩形箱形状のタンクであり、その上面中央に取っ手11を有し、取っ手11の両側に1つずつの開口13,15を有している。一方の開口13はスクリューキャップ蓋が取り除かれて下記する給水手段40の給水用接続部41が接続され(正確には、開口13のスクリューキャップは給水用接続部41を接続する際に接続手段の一部として使用される)、他方の開口15はスクリューキャップ蓋15aによって閉じられている。
【0020】
保持手段30は、左右両側の略四角形状に組まれた脚部31,31と、両脚部31,31間をその上下で連結する2本ずつのタンク支持アーム33,33,35,35とを具備して構成されている。また略四角形状に組まれた脚部31の上下方向に向かう縦棒部分31a,31aには、水平方向に向かう棒状の連結部37が連結されている。前記一対のタンク支持アーム33,33は、前記縦棒部分31a,31aの上部の同一高さに水平に取り付けられている。また前記一対のタンク支持アーム35,35は、前記連結部37,37の中間部分の同一高さに水平に取り付けられる。これら離間距離の長い一対のタンク支持アーム33,33と、離間距離の短い一対のタンク支持アーム35,35によって、前記略矩形箱形状の採水タンク10を、斜めに傾けた状態で(底面側の一方の角部が両タンク支持アーム35,35の間において最下部に位置する状態で)安定して支持する構造になっている。なお、タンク支持アーム33,33,35,35の長さは、この例では、7つの採水タンク10を並列に並べて載置(保持)できる長さに形成されており、この寸法の保持手段30を2台具備することで14個の採水タンク10を保持する構成となっている(図では1台のみを示している)。
【0021】
給水手段40は、前記各採水タンク10の開口13に接続される給水用接続部41と、各給水用接続部41の上側部に接続される配管43と、各配管43の途中に1つずつ取り付けられる自動弁45(45-1~14)と、各自動弁45よりも上流側で1本とされた配管44に接続される1台の流量測定手段47とを有して構成されている。当該流量測定手段47の上流側には配管46を介して図示しない水道の給水栓が接続されている。
【0022】
給水用接続部41は、上下が開放された略筒形状に形成されており、その下端は前記採水タンク10の開口13に、外部に水が漏れない状態で接続されている。給水用接続部41の上部側面には、パイプ状の配管接続部49が取り付けられており、当該配管接続部49に前記配管43の一端が取り付けられている。給水用接続部41の下部側面(前記配管接続部49よりも下側の側面位置)には、下記するサイフォン手段60のサイフォン管61を外部に水が漏れない状態で挿入するサイフォン管挿入部51が設けられている。
【0023】
自動弁45(45-1~14)は、この例では電磁弁であり、下記する給排水制御手段81によってオンオフ(開閉)制御される。流量測定手段47は、いわゆる水道メーターであり、給水される採水(水道水)の流量を測定し、一定流量毎に流量信号(パルス信号)を下記する給排水制御手段81に出力する。
【0024】
サイフォン手段60は、サイフォン管61を具備して構成されている。サイフォン管61の一端側は前記給水用接続部41のサイフォン管挿入部51から給水用接続部41内に挿入され、さらに給水用接続部41の下端の開口から採水タンク10の開口13内に挿入される。この挿入したサイフォン管61の先端は、斜めに設置された採水タンク10の底面側の一方の角部17(採水タンク10内の最も下側の位置)近傍位置に位置する。サイフォン管61の他端側は下記する排水ユニット70内に挿入される。この挿入したサイフォン管61の先端は排水ユニット70内の下部に位置する。サイフォン管61の採水タンク10内の先端の高さ位置は、サイフォン管61の排水ユニット70内の先端の高さ位置よりも高い位置に設置されている(さらに言えば、サイフォン管61の採水タンク10内の先端の高さ位置は、排水ユニット70内に常に残る水の水面位置よりも高い位置に位置している)。
【0025】
排水ユニット70は、長尺(取付台100の幅寸法と同等の寸法)で筒状の容器で構成され、その一端の最下部よりも所定寸法上部の位置に排水管71が接続され、またその上面からその内部に前記サイフォン管61を挿入している。挿入するサイフォン管61は7本である。排水管71の接続位置は、当該排水管71からの排水が終わった状態でも、排水ユニット70内の底部に水が所定量溜まった状態となる位置としている。そしてこの排水ユニット70内の底部に溜まった水の中に、前記挿入した各サイフォン管61の先端が位置し、これによって当該各サイフォン管61の先端が常に水封された状態となるようにしている。排水ユニット70は2台設置されている(図では1台のみ示す)。サイフォン管61の先端を常に水封しておくのは、サイフォン管61内にサイフォンを形成する際にその形成をスムーズに行わせる、即ちサイフォン管61から空気をスムーズに排出させるためである。
【0026】
制御盤80は、その内部に下記する図4に示す給排水制御手段81を設置し、またその手前側の表面を操作表示面81として構成されている。図4は本実施形態に係る自動採水装置1の制御ブロック図である。同図に示すように、給排水制御手段81はシーケンス制御を行うコンピュータであり、流量測定手段47から給水する採水の流量測定値を入力し、当該流量や内蔵するタイマなどを用いて、14個ある自動弁45(45-1~14)をオンオフ(開閉)制御する。
【0027】
取付台100は枠体であり、その下部に14個ある自動弁45(45-1~14)や流量測定手段47が取り付けられており、またその上部に前記制御盤80が取り付けられている。なお、図1においては図示の都合上、3つの自動弁45-1~3のみを実線で示し、それ以外の自動弁45-4~14は点線の仮想線で示している。
【0028】
図2は、上記自動採水装置1の1動作例を示す動作フロー図である。図3(a),(b)は上記動作フローを行う際の自動採水装置1のタイムチャートの1例を示す図であり、図3(a)は何れかの自動弁45-n(n:1~14)による1回の採水工程を詳細に示す図、図3(b)は各自動弁45-1~14による採水工程を示す図である。また図5A図5Cは、何れかの自動弁45-n(n:1~14)による採水動作説明図である。
【0029】
これらの図を用いてn台目の採水タンク10が保存している前回の採水サンプルを排水し(捨て水工程)、次に共洗いを複数回(この例では3回)行い(共洗い工程)、新たな採水サンプルを保存させる(採水工程)動作について説明する。なお上記捨て水工程、共洗い工程、採水工程全体を「採水動作」という。
【0030】
本実施形態では、図3(b)に示すように、各自動弁45-1~14による採水動作は、一日に1台ずつ順番に同一時刻(サンプリング時刻)t0に行う。これによって、14個ある採水タンク10には、1日に1台ずつ給水した採水が、14日分常に最新の状態で保存されることになる。
【0031】
自動弁45-nによる1回の採水動作は以下のようにして行われる。まず採水の設定時刻t0が来る前は、図5Aの(1)に示すように、前回(14日前)に採水しておいた採水が採水タンク10内に20L保持されている。このときの水位をa1とする。このときは図3(a)の「前回サンプル保存状態」に相当する。
【0032】
そして該当する日の設定時刻t0になると(ステップ1)、採水動作の中の捨て水工程(図3(a)参照)が開始される。即ち、前記給排水制御手段81は該当する1台の自動弁45-nに開信号を送信してこれを開き、採水タンク10への給水を開始する(ステップ2)。これによって、図5Aの(2)に示すように、給水された採水は、採水タンク10内を満たし、さらにその水位が給水用接続部41の内部を上昇する。給水される採水の量は流量測定手段47によって計測され、その流量が6Lになったところで、前記自動弁45-nを閉じる(ステップ3,4)。このときの給水用接続部41内の水位は、図5Aの(2)に示すように、a2の位置、即ちサイフォン管挿入部51よりも少し上方の位置、言い換えればサイフォン手段60の最上点よりも高い位置になる。これに伴って、サイフォン管61の採水タンク10側の端部からサイフォン管61内に導入された採水が、排水ユニット70側の端部に導かれ、排水が開始される。これによってサイフォン管61内が採水で満たされ、サイフォンが形成される。そして図5Bの(3)に示すように、採水タンク10内の採水が吸い出されて行く。そしてこの吸い出し状態を、前記自動弁45-nの閉(ステップ4)から時間t1(この時間t1は、上記サイフォンが切れるまでに必要とされる時間、例えば600秒として予め設定しておく)が経過するまで行う(ステップ5の「N」)。その間に、図5Bの(4)に示すように、採水タンク10内の全ての採水が吸い出され、サイフォン管61の採水タンク10側の端部から空気が吸い込まれ、前記サイフォンが切れて、捨て水工程が終了する。
【0033】
前記自動弁45-nの閉から時間t1が経過すると(ステップ5の「Y」)、採水動作の中の共洗い工程(図3(a)参照)が開始される。即ち、自動弁45-nを開いて(ステップ6)、採水タンク10内に給水を開始し、当該給水量が27Lになったことを流量測定手段47からの信号によって給排水制御手段81が判断するまで維持し(ステップ7)、その後自動弁45-nを閉じる(ステップ8)。これによって、図5Bの(5)に示すように、給水した採水は採水タンク10内を満たし、さらにその水位は給水用接続部41の内部を上昇し、a3の位置、即ちサイフォン管挿入部51よりも少し上方の位置になる。これによって、上記捨て水工程の場合と同様に、サイフォン管61の採水タンク10側の端部から採水が吸引され、排水ユニット70側の端部から排水が開始され、サイフォンが形成される。そして図5Bの(6)に示すように、採水タンク10内の採水が吸い出されて行く。そしてこの吸い出し状態を、前記自動弁45-nの閉(ステップ8)から時間t2(この時間t2は、上記サイフォンが切れるまでに必要とされる時間、例えば600秒として予め設定しておく)が経過するまで行う(ステップ9の「N」)。その間に、図5Cの(7)に示すように、採水タンク10内の全ての採水が吸い出され、サイフォン管61の採水タンク10側の端部から空気が吸い込まれ、前記サイフォンが切れて、1回目の共洗い工程が終了する。
【0034】
そして上記共洗い工程(ステップ6~9)を複数回(この例では3回)行う(ステップ10)。
【0035】
次に、採水工程(図3(a)参照)が開始される。即ち、自動弁45-nを開いて(ステップ11)、採水タンク10内に給水を開始し、当該給水量が20Lになったことを流量測定手段47からの信号によって給排水制御手段81が判断するまで維持し(ステップ12)、その後自動弁45-nを閉じる(ステップ13)。これによって、図5Cの(8)に示すように、給水した採水は採水タンク10内をほぼ一杯に満たした状態となる。これによって、採水工程が完了し、14日後に再び採水動作が行われるのを待つ。
【0036】
次に、翌日の同一時刻t0に採水動作を行う自動弁45のナンバー(n=1であったなら、n=2)を設定し(ステップ14)、一連の採水動作を終了する。
【0037】
なお上記サイフォン管61によってサイフォンを形成し、採水タンク10内の全ての採水を吸い出すためには、サイフォン管61の一端が位置する採水タンク10内の最下部の高さ位置を、排水ユニット70内に常に残留する水の水面位置よりも高い位置に設置しておく必要がある。
【0038】
以上説明したように、自動採水装置1は、クリプトスポリジウム分析用の採水を貯留しておく採水タンク10と、採水タンク10に給水を行う給水手段40と、採水タンク10に給水した採水をサイフォンを形成して全量排水するサイフォン手段60と、給水手段40によって採水タンク10にサイフォンが形成される水位a1,a3まで採水を給水することでサイフォン手段60による排水を開始させる排水開始手段(自動弁45と自動弁45を所定のタイミングで開させる給排水制御手段81)と、給水手段40による給水を停止させると共に排水開始手段によって開始された排水をサイフォン手段60が空気を吸い込むことで停止させる排水停止手段(自動弁45と自動弁45を所定のタイミングで閉させる給排水制御手段81)とを有し、給水手段40による採水タンク10への給水と、前記排水開始手段及び前記排水停止手段による採水タンク10からの排水とを繰り返すことで、採水タンク10内を採水によって共洗いし、さらに給水手段40によって採水タンク10に採水を貯留させる構成(ステップ1~14を行う給排水制御手段81)としている。
【0039】
これによって、採水タンク10に貯留したクリプトスポリジウム分析用の採水を取り換える作業である排水(捨て水)工程、洗浄(共洗い)工程、給水(採水)工程を、1台の自動弁45をON/OFF制御するだけで、サイフォンの原理を利用した簡単な設備で、例えば容積20Lの採水タンク10を持ち上げて反転することなく、容易に全自動で行うことが可能になる。
【0040】
また採水タンク10の共洗いの際、本実施形態では採水タンク10内を満たすように給水できるので、採水タンク10の内面全体を完全に採水で浸すことができ、またこれを自動で繰り返し行えるので、実際にクリプトスポリジウムを分析する際の分析精度を高めることができる。
【0041】
また給水手段40と前記排水開始手段と前記排水停止手段とを制御する給排水制御手段81による制御は、例えば電磁弁などの自動弁45をタイマ制御することによって、簡単な構成で、自動的に、容易に行うことができる。
【0042】
また本実施形態では、市販の20Lポリタンクを用いたので、別途特別な容器を用意しなくても、容易に廉価に採水貯留手段を用意することができる。またこの20Lポリタンクの底面側の一方の角部を最下端にするように斜めに傾斜させて取付台30に取り付けたので、容易且つ確実に20Lポリタンク内の採水を全て排水することができ、効果的な共洗いができる。
【0043】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、採水タンク(採水貯留手段)として市販の20Lポリタンクを使用したが、それ以外の各種容器などを用いても良い。また給水手段を、自動弁を用いると共に配管の上流側を水道の給水栓に接続するという簡単な構造で構成したが、給水ポンプを用いて構成するなど、採水タンクに給水を行う構成であればどのような構成を用いても良い。
【0044】
また上記実施形態では、サイフォン手段によって排水を開始させる水位まで採水を給水して停止する手段として、流量測定手段を用いてその流量を測定したが、その代わりに、サイフォン手段によるサイフォン現象が生じたことを検出するセンサを用いたり、タイマを用いて設定時間給水する構成を用いたりするなど、他の各種手段を用いても良い。
【0045】
また上記実施形態では、排水開始手段によって開始された排水をサイフォン手段が空気を吸い込むことで停止させた後に、再び自動弁を開くタイミングとして、タイマを用いたが、その代わりに、サイフォン手段によるサイフォン現象が切れたことを検出するセンサを用いるなどしても良い。
【0046】
また上記実施形態では、14日分の採水タンクを用意し、1日毎に採水を行う例について説明したが、採水タンクの台数は上記以外の何れの日数分でも良く、また1日毎ではなく、数日毎、また数時間毎など、他の各種採水間隔としても良い。また上記実施形態では、共洗い工程を3回繰り返し行ったが、他の複数回行っても良く、1回のみ行っても良い。
【0047】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 自動採水装置(クリプトスポリジウム分析用自動採水装置)
10 採水タンク(採水貯留手段)
30 保持手段
40 給水手段
45(45-1~14) 自動弁
60 サイフォン手段
70 排水ユニット
80 制御盤
81 給排水制御手段
100 取付台
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C