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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129585
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】防火ダンパー
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20220830BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20220830BHJP
   F24F 13/12 20060101ALI20220830BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20220830BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20220830BHJP
   A62C 2/18 20060101ALI20220830BHJP
   A62C 2/24 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F24F13/02 Z
F24F13/10 E
F24F13/12
F24F7/06 D
F24F13/02 C
F24F7/10 Z
A62C2/18
A62C2/24 C
A62C2/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028302
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】新井 勘
(72)【発明者】
【氏名】根岸 大輔
【テーマコード(参考)】
3L058
3L080
3L081
【Fターム(参考)】
3L058BG01
3L080AC02
3L080AE03
3L081AA05
3L081AB02
3L081EA03
3L081HA03
3L081HA06
(57)【要約】
【課題】床スラブ厚による制限を受けることなく、ダクトの開口部の寸法を任意に選択することのできる防火ダンパーを提供する。
【解決手段】
本発明に係る防火ダンパー10は、ダクト6の床スラブ貫通部分6aの上方を開放させる位置と閉鎖させる位置との間で水平方向にスライド可能に設けられる鋼板12と、ダクト6の床スラブ貫通部分6aの上方を開放させる位置に鋼板12を保持させるように設けられる温度ヒューズ13と、ダクト6の床スラブ貫通部分6aの上方を閉鎖させる方向に鋼板12を付勢する付勢手段14と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床吹出空調システムにおいて、下階から床スラブを貫通して上階の床下空間に開放されるダクトの床スラブ貫通部分に設けられる防火ダンパーであって、
前記ダクトの床スラブ貫通部分の上方を開放させる位置と閉鎖させる位置との間で水平方向にスライド可能に設けられる鋼板と、
前記ダクトの床スラブ貫通部分の上方を開放させる位置に前記鋼板を保持させるように設けられる温度ヒューズと、
前記ダクトの床スラブ貫通部分の上方を閉鎖させる方向に前記鋼板を付勢する付勢手段と、
を備えることを特徴とする防火ダンパー。
【請求項2】
前記ダクトの床スラブ貫通部分の上端部内側に篏合可能に設けられる受け部材をさらに備え、前記鋼板は前記受け部材に対して水平方向にスライド可能に設けられ、前記鋼板の一端には上方起立部が形成され、前記温度ヒューズは前記上方起立部の外面と前記受け部材の内面とに亘って取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の防火ダンパー。
【請求項3】
前記ダクトの床スラブ貫通部分を両側から挟むように一対のレールが並行に設けられ、前記鋼板の両側部は前記レールに沿ってスライド可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防火ダンパー。
【請求項4】
前記鋼板の両側部には外側に突出する突起が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の防火ダンパー。
【請求項5】
前記付勢手段は、前記鋼板の他端中央部を押圧する押し出し機構を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれかの請求項に記載の防火ダンパー 。
【請求項6】
前記付勢手段は、前記鋼板の両側一端部をそれぞれ手前に引き込む引張り機構を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれかの請求項に記載の防火ダンパー 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床吹出空調システムにおいて、下階から床スラブを貫通して上階の床下空間に開放されるダクトの床スラブ貫通部分に設けられる防火ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、執務者や居住者の快適性向上のため、二重床(OAフロア)の床下空間に供給した空調空気を床吹出口から室内へ吹き出す床吹出空調システムが採用されることがある。この床吹出空調システムにおいて空調用ダクトを当該階の床下に設置する場合、a)二重床の床下空間に設置する方法と、b)当該階の下階の天井裏から床スラブを貫通させて設置する方法と、が考えられる。
【0003】
しかしながら、上記a)の方法は、二重床の空間が狭く、十分な風量を供給するためのサイズを有するダクトを設置することができないという問題や、二重床の空間には電源や通信設備用の配線等も設置されており、空間が密となるため、メンテナンス性が劣ると共に空調空気の均一拡散を図り難いという問題がある。
【0004】
一方、上記b)の方法は、ダクトが床スラブを貫通するため、火災時に建築基準法で定める防火設備(以下、「防火ダンパー」と言う。)を用いてダクト内を遮断させる必要があるが、上記a)の方法と比べて、十分なダクトスペースを確保することができるため、大口径のダクトの設置に自由度が増し、メンテナンス性の向上や空調空気の均一拡散を図ることができるという利点がある。
【0005】
そのため、近年、床吹出空調システムを採用する場合、上記b)の方法を採用して設計を行うケースが多くなってきている。例えば、特許文献1には、床スラブ部分に防火ダンパーを備えたベント装置を設置することで、床スラブの上側又は下側に防火ダンパーを設置することなく防火区画を貫通することのできる床吹出空調システムが提案されている。
【0006】
特許文献1に記載の床吹出空調システムは、二枚一対の略半円形の扉板が支持軸を中心に回動可能に設けられた防火ダンパーを備えている。この防火ダンパーの二枚の扉板は、通常時、支持軸から上方に延びるように互いに重ね合わせた状態で温度ヒューズによって挟持されており、火災時に温度ヒューズが融解すると、二枚の扉板が回動し、ダクト内部を遮蔽するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-76553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の床吹出空調システムでは、通常時、防火ダンパーの二枚の扉板が上方に延びるように互いに重ね合わせた状態で保持されているため、ダクトの開口部の寸法が床スラブの厚みの2倍程度以上の場合、扉板の上部が二重床の空間内に突出してしまう。したがって、床スラブ(防火区画)を貫通するダクトの開口部の寸法を床スラブの厚みの2倍程度以下に制限する必要があるため、開口部の寸法が小さい多数のダクトに床スラブを貫通させなければならなくなり、空調効率や経済性を高めることが難しいという問題が生じている。
【0009】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、床スラブ厚による制限を受けることなく、ダクトの開口部の寸法を任意に選択することのできる防火ダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明は、床吹出空調システムにおいて、下階から床スラブを貫通して上階の床下空間に開放されるダクトの床スラブ貫通部分に設けられる防火ダンパーであって、前記ダクトの床スラブ貫通部分の上方を開放させる位置と閉鎖させる位置との間で水平方向にスライド可能に設けられる鋼板と、前記ダクトの床スラブ貫通部分の上方を開放させる位置に前記鋼板を保持させるように設けられる温度ヒューズと、前記ダクトの床スラブ貫通部分の上方を閉鎖させる方向に前記鋼板を付勢する付勢手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記した本発明に係る防火ダンパーは、前記ダクトの床スラブ貫通部分の上端部内側に篏合可能に設けられる受け部材をさらに備え、前記鋼板は前記受け部材に対して水平方向にスライド可能に設けられ、前記鋼板の一端には上方起立部が形成され、前記温度ヒューズは前記上方起立部の外面と前記受け部材の内面とに亘って取り付けられても良い。
【0012】
また、上記した本発明に係る防火ダンパーにおいて、前記ダクトの床スラブ貫通部分を両側から挟むように一対のレールが並行に設けられ、前記鋼板の両側部は前記レールに沿ってスライド可能に設けられていても良い。
【0013】
また、上記した本発明に係る防火ダンパーにおいて、前記鋼板の両側部には外側に突出する突起が形成されていても良い。
【0014】
また、上記した本発明に係る防火ダンパーにおいて、前記付勢手段は、前記鋼板の他端中央部を押圧する押し出し機構を備えていても良い
【0015】
また、上記した本発明に係る防火ダンパーにおいて、前記付勢手段は、前記鋼板の両側一端部をそれぞれ手前に引き込む引張り機構を備えていても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、床スラブ厚による制限を受けることなく、ダクトの開口部の寸法を任意に選択することができるため、空調効率や経済性の向上を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る防火ダンパーを使用した空調システムの一例を示す概念図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る防火ダンパーの通常時の状態を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る防火ダンパーの通常時の状態を示す平面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る防火ダンパーの通常時の状態を示す側面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る防火ダンパーの火災時の状態を示す平面図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る防火ダンパーの火災時の状態を示す側面図である。
図7】本発明の第1及び第2の実施形態に係る防火ダンパーの温度ヒューズを示す正面図であり、(a)は通常時の状態、b)は火災時の状態をそれぞれ示している。
図8】本発明の第2の実施形態に係る防火ダンパーの通常時の状態を示す斜視図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る防火ダンパーの通常時の状態を示す平面図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る防火ダンパーの通常時の状態を示す側面図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る防火ダンパーの火災時の状態を示す平面図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係る防火ダンパーの火災時の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書では、方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜上用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る防火ダンパー10,40を使用した空調システム1について簡単に説明する。図1は防火ダンパー10,40を使用した空調システム1の一例を示す概念図である。
【0020】
図1に示すように、空調システム1は、空調対象の室内空間S1の二重床(OAフロア)2の床下空間S2に供給した空調空気を床吹出口3から室内空間S1へ吹き出す方式の床吹出空調システムである。空調システム1は、室内空間S1の下階に設置されるエアハンドリングユニット4と、エアハンドリングユニット4から床スラブ5を貫通して床下空間S2に開放される給気(SA)ダクト6と、天井吸込口7からエアハンドリングユニット4へ戻る還気(RA)ダクト8と、を備えて概略構成されている。給気ダクト6は角ダクトであり、給気ダクト6の床スラブ5の貫通部分6aに防火ダンパー10,40が設置されている。
【0021】
上記した空調システム1において、エアハンドリングユニット4から給気ダクト6を通って床下空間S2に供給された空調空気は、床吹出口3から室内空間S1に供給され、室内空間S1を空調した後、天井吸込口7から還気ダクト8を通って、エアハンドリングユニット4へ戻される。
【0022】
[第1の実施形態]
図1及び図2図7を参照して、本発明の第1の実施形態に係る防火ダンパー10について説明する。図2は防火ダンパー10の通常時の状態を示す斜視図、図3は防火ダンパー10の通常時の状態を示す平面図、図4は防火ダンパー10の通常時の状態を示す側面図、図5は防火ダンパー10の火災時の状態を示す平面図、図6は防火ダンパー10の火災時の状態を示す側面図、図7は防火ダンパー10の温度ヒューズを示す正面図であり、(a)は通常時の状態、b)は火災時の状態をそれぞれ示している。
【0023】
本発明の第1の実施形態に係る防火ダンパー10は、給気ダクト6の貫通部分6aの上端に取り付けられる受け部材11と、給気ダクト6の貫通部分6aの上方を開放させる位置と閉鎖させる位置との間で受け部材11に対して水平方向にスライド可能に設けられる鋼板12と、給気ダクト6の貫通部分6aの上方を開放させる位置に鋼板12を保持させるように受け部材11と鋼板12とに亘って取り付けられる温度ヒューズ13と、給気ダクト6の貫通部分6aの上方を閉鎖させる位置に鋼板12を付勢する付勢手段としての押し出し機構14と、を備えている。
【0024】
受け部材11は、給気ダクト6の貫通部分6aの形状に対応した矩形枠状に形成されている。受け部材11の内面の両側中央部分には、温度ヒューズ13の取付部18が固定されており、取付部18はフック形状を有している。受け部材11は、その上端が床スラブ5から僅か上方に突出するように、給気ダクト6の貫通部分6aの上端内側に嵌着されている。このように、受け部材11の上端を床スラブ5から上方に突出させることにより、床スラブ5上の不要物が給気ダクト6の内部に落下したりするのを防止する効果を得ることができる。また、受け部材11の上端に落下防止用のメッシュを取り付けることで、この効果をより高めることもできる。
【0025】
鋼板12は、1.6mmの厚みを有しており、一端(図3図6における左端)及び他端(図3図6における右端)にはそれぞれ上方起立部15,16が鉛直に形成されている。一端側の上方起立部15の外面には、受け部材11の取付部18の上方に温度ヒューズ13の取付部17が固定されており、取付部17はフック形状を有している。なお、温度ヒューズ13は、一端側の上方起立部15の外面と受け部材11の内面との間に複数個取り付けられても良い。また、ここでは特に図示しないが、鋼板12の両側部にそれぞれ外側に突出する突起を1個又は複数形成しても良い。これにより、鋼板12の幅を減少させて材料費の削減を図ることができると共に、鋼板12のスライド動作を円滑且つ確実に行わせることができる。
【0026】
図7(a)に良く示されているように、温度ヒューズ13は、上下2枚の銅板20,21が半田19により接合されて形成されている。上下の銅板20,21にはそれぞれ丸穴22,23が形成されており、温度ヒューズ13は、丸穴22,23を介して取付部17,18に着脱可能となっている。また、図7(b)に良く示されているように、温度ヒューズ13は、周囲の温度が所定温度以上となると、半田19が溶融して銅板20,21が分離するようになっている。
【0027】
床スラブ5上には、給気ダクト6の貫通部分6a及び受け部材11を両側から挟むように一対のレール24,25が並行に固定されており、レール24,25は、例えば、鋼製である。各レール24,25の互いに対向する部分には、それぞれ溝部26,27が形成されており、鋼板12の両側部は溝部26,27に沿って水平方向にスライド可能に形成されている。
【0028】
各レール24,25の溝部26,27の一端には、それぞれストッパ部28,29が形成されている。これらのストッパ部28,29は、鋼板12が給気ダクト6の貫通部分6aの上方を閉鎖した位置で、鋼板12の一端側の上方起立部15が当接するように形成されている。また、各レール24,25の他端は連結部材30によって互いに接続されている。連結部材30は、例えば、鋼製であり、床スラブ5上に固定されている。
【0029】
押し出し機構14は、例えばバネ圧や空気圧により、図3図4に示すような収縮状態から図5図6に示すような伸長状態に変形可能なように1個設けられている。押し出し機構14の先端部は鋼板12の他端側の上方起立部16の両側中央部分に固定され、押し出し機構14の基端部は連結部材30の両側中央部分に固定されている。
【0030】
なお、押し出し機構14は複数設けられても良く、例えば、各レール24,25の溝部26,27にそれぞれ押し出し機構14を収容し、鋼板12の他端側の上方起立部16の両側部分それぞれを押圧するようにしても良い。このように押し出し機構14を2個設置することで、鋼板12のスライド動作を円滑且つ確実に行わせることができる。
【0031】
上記した構成を備えた第1の実施形態に係る防火ダンパー10は、通常時、図7(a)に示されているように、受け部材11と鋼板12とに亘って固定された温度ヒューズ13の上下2枚の銅板20,21が半田19により接合された状態が保持されることで、図2図4に示されているように、鋼板12が、押し出し機構14の付勢力に抗して、給気ダクト6の貫通部分6aの上方を開放させ、常時開状態を保持する。その結果、空調空気は、給気ダクト6から二重床2の床下空間S2を介して、床吹出口3から室内空間S1に供給される。
【0032】
一方、防火ダンパー10は、火災時、図7(b)に示されているように、温度ヒューズ13の半田19が溶融して銅板20,21が分離することで、図5及び図6に示されているように、鋼板12は、押し出し機構14の付勢力により、給気ダクト6の貫通部分6aの上方を閉鎖する位置までレール24,25の溝部26,27に沿って水平方向(図示左方向)にスライドする。そして、鋼板12の一端側の上方起立部15がストッパ部28,29に当接し、鋼板12が給気ダクト6の貫通部分6aを閉鎖した状態が維持される。これにより、給気ダクト6内における空調空気の流通が遮断され、床スラブ5で防火区画を形成することができる。
【0033】
上記した第1の実施形態に係る防火ダンパー10によれば、鋼板12が水平方向にスライドすることで給気ダクト6の貫通部分6aを開閉させることができるため、床スラブ厚による制限を受けることなく、給気ダクト6の開口部の寸法を任意に選択することができる。したがって、開口部の寸法が大きな給気ダクト6を使用することで給気ダクト6の貫通箇所を減少させることができるため、空調効率や経済性の向上を図ることができる。また、床スラブ上に防火ダンパー10を配置するだけで済むため、施工性を向上させることもできる。
【0034】
また、鋼板12の付勢手段として押し出し機構14を採用することで、付勢手段の配置や設置数を設計する際に、給気ダクト6の貫通部分6aの配置による制限を受け難いため、設計の自由度を高めることができる。
【0035】
[第2の実施形態]
次に、図1及び図7図12を参照して、本発明の第2の実施形態に係る防火ダンパー40について説明する。図8は防火ダンパー40の通常時の状態を示す斜視図、図9は防火ダンパー40の通常時の状態を示す平面図、図10は防火ダンパー40の通常時の状態を示す側面図、図11は防火ダンパー40の火災時の状態を示す平面図、図12は防火ダンパー40の火災時の状態を示す側面図である。なお、以下の説明では、第1の実施形態に係る防火ダンパー10と同一の構成については、図8図12中で同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0036】
本発明の第2の実施形態に係る防火ダンパー40は、受け部材11と、受け部材11に対して水平方向にスライド可能に設けられる鋼板41と、温度ヒューズ13と、付勢手段としての引張り機構42と、を備えている。
【0037】
鋼板41は、1.6mmの厚みを有しており、一端(図9図12における左端)に上方起立部43が鉛直に形成されている。上方起立部43の外面と受け部材11の内面の両側中央部分には、上下に対応する位置にそれぞれ温度ヒューズ13が取付部17,18を介して固定されている。鋼板41の両側部にはそれぞれ外側に突出する突起44,45が形成されている。突起44,45の数は、それぞれ1個ずつでも構わないが、図9及び図11に示されているようにそれぞれ2個ずつ或いは複数設けることで、鋼板41の幅を減少させて材料費の削減を図ることができると共に、鋼板41のスライド動作を円滑且つ確実に行わせることができる。なお、鋼板41の他端(図9図12における右端)には、上記した第1の実施形態の鋼板12と異なり、上方起立部が形成されていない。
【0038】
床スラブ5上には、給気ダクト6の貫通部分6a及び受け部材11を両側から挟むように一対のレール46,47が並行に固定されており、レール46,47は、例えば、鋼製である。各レール46,47の互いに対向する部分には、それぞれ溝部48,49が形成されており、鋼板41の両側部の突起44,45は溝部48,49に沿って水平方向にスライド可能に形成されている。また、各レール46,47の互いに対向する部分には、受け部材11より一端側に、それぞれ、ストッパ部50,51が互いに近接する方向に突設されている。
【0039】
各レール46,47の両端はそれぞれ、連結部材52,53によって互いに接続されている。連結部材52,53、例えば、鋼製であり、床スラブ5上に固定されている。
【0040】
引張り機構42は、例えば引張りコイルバネ54を備えており、レール46,47の溝部48,49にそれぞれ収容されている。各引張りコイルバネ54の一端部は取付金具55を介して連結部材52の側面に支持され、各引張りコイルバネ54の他端部は取付金具56を介して鋼板41の上方起立部43の外面に支持されている。これにより、引張り機構42は、図9図10に示すような伸長状態から図11図12に示すような収縮状態に変形可能となっている。なお、引張りコイルバネ54は、例えば鋼製の筒体に収納されていても良く、これにより引張り機構42の耐火性能を高めることができる。
【0041】
上記した構成を備えた第2の実施形態に係る防火ダンパー40は、通常時、温度ヒューズ13の接合状態が保持されることで、図8図10に示されているように、鋼板41が、引張りコイルバネ54の付勢力に抗して、給気ダクト6の貫通部分6aの上方を開放させ、常時開状態を保持する。その結果、空調空気は、給気ダクト6から二重床2の床下空間S2を介して、床吹出口3から室内空間S1に供給される。
【0042】
一方、防火ダンパー40は、火災時、温度ヒューズ13が溶融することで、図11及び図12に示されているように、鋼板41は、引張り機構42の付勢力により、給気ダクト6の貫通部分6aの上方を閉鎖する位置までレール46,47の溝部48,49に沿って水平方向(図示左方向)にスライドする。そして、鋼板41の上方起立部43がストッパ部50,51に当接し、鋼板12が給気ダクト6の貫通部分6aを閉鎖した状態が維持される。これにより、給気ダクト6内における空調空気の流通が遮断され、床スラブ5で防火区画を形成することができる。
【0043】
上記した第2の実施形態に係る防火ダンパー40によれば、鋼板41が水平方向にスライドすることで給気ダクト6の貫通部分6aを開閉させることができるため、床スラブ厚による制限を受けることなく、給気ダクト6の開口部の寸法を任意に選択することができる。したがって、開口部の寸法が大きな給気ダクト6を使用することで給気ダクト6の貫通箇所を減少させることができるため、空調効率や経済性の向上を図ることができる。また、床スラブ上に防火ダンパー40を配置するだけで済むため、施工性を向上させることもできる。
【0044】
また、鋼板12の付勢手段として採用した引張り機構42をレール46,47の溝部48,49に収容させることで、鋼板41と引張り機構42及びレール46,47等をユニット化し易くなるため、施工性や経済性を向上させることができる。
【0045】
なお、上記した第1及び第2の実施形態に係る防火ダンパー10,40では、受け部材11の上端を床スラブ5から僅かに上方に突出させているが、受け部材11の上端を床スラブ5と同一高さとしてもよい。これにより、二重床2の床下空間S2の高さをより低く抑えることができると共に床下空間S2をより有効に利用することができる。
【0046】
また、受け部材11を設置せずに、温度ヒューズ13を鋼板12,41の一端側の上方起立部15,43の外面と給気ダクト6の貫通部分6aの内面とに亘って取り付けても良い。この場合、火災時、鋼板12,41が給気ダクト6の貫通部分6aの上端を直接閉鎖する。
【0047】
また、上記した第1及び第2の実施形態では、給気ダクト6が角ダクトの場合について説明したが、給気ダクトは丸ダクトであっても良い。
【0048】
なお、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る防火ダンパーにおける好適な実施形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 空調システム
5 床スラブ
6 給気ダクト
6a 貫通部分
10 防火ダンパー
11 受け部材
12 鋼板
13 温度ヒューズ
14 押し出し機構(付勢手段)
15 上方起立部
24 レール
25 レール
26 溝部
27 溝部
40 防火ダンパー
41 鋼板
42 引張り機構(付勢手段)
43 上方起立部
44 突起
45 突起
46 レール
47 レール
48 溝部
49 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12