(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129609
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】組成物および毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20220830BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220830BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/896 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/34
A61Q5/12
A61K8/42
A61K8/37
A61K8/92
A61K8/896
A61K8/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028335
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚人
(72)【発明者】
【氏名】木村 優介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB051
4C083AC012
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC642
4C083AC692
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083BB06
4C083BB11
4C083CC33
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE07
4C083EE28
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】油性成分及びカチオン界面活性剤が配合された上で、高い貯蔵弾性率を実現できる組成物、及び、当該組成物を使用する毛髪処理方法の提供。
【解決手段】組成物は、油性成分、カチオン界面活性剤、多価アルコール、及び水が配合され、特定条件での測定応力2.4Paでの貯蔵弾性率G
1′が300Pa以上のものであり、毛髪処理方法は、油性成分、カチオン界面活性剤、多価アルコール、及び水が配合され、特定条件での測定応力2.4Paでの貯蔵弾性率G
1′が300Pa以上の組成物を使用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性成分、
カチオン界面活性剤、
多価アルコール、及び
水が配合され、
レオメータを用いて下記測定条件1で測定した貯蔵弾性率G1′が300Pa以上であることを特徴とする組成物。
<測定条件1>
測定方法:応力依存測定
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
周波数:1Hz
応力範囲:0.1Pa~1000Pa
貯蔵弾性率G1′測定時の応力:2.4Pa
【請求項2】
毛髪に塗布する用途に使用される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
洗い流さない態様で使用される請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記油性成分の配合量が60質量%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記水の配合量が15質量%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
レオメータを用いて下記測定条件2で測定した貯蔵弾性率G2′に対する損失弾性率G2"の比G2"/G2′が0.50以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
<測定条件2>
測定方法:応力依存測定
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
周波数:1Hz
応力範囲:0.1Pa~1000Pa
貯蔵弾性率G2′及び損失弾性率G2"測定時の応力:100Pa
【請求項7】
アニオン性高分子及びアニオン界面活性剤から選ばれた一種又は二種以上が0.5質量%未満又は無配合である請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物を使用することを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理に適した洗い流さないトリートメントなどの組成物および当該組成物を使用する毛髪処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪に塗布して使用される組成物には、毛髪の感触改善のために、炭化水素、シリコーン、エステル油、油脂などの油性成分が配合される。この配合では、組成物内に油性成分を分散させるために界面活性剤や増粘剤が使用されることが公知となっている。そして、公知の組成物の例として、特許文献1は、ポリアクリレート-13、シリコーン、及びカチオン界面活性剤が配合された水中油滴型乳化物を開示し(請求項1、段落0032参照)、特許文献2は、アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、アルカリ剤、非イオン性界面活性剤、液状油性成分、及び水を配合する毛髪処理剤を開示する(請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-100981号公報
【特許文献2】特開2013-18735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液状の油性成分を配合した毛髪用組成物には、用途に応じた粘弾性特性を実現するためにアクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などのアニオン性高分子を配合する場合がある。一方で、油性成分と共にカチオン界面活性剤を配合した組成物においては、そのようなアニオン性高分子の配合は、カチオン界面活性剤との相互作用が生じやすいために制限され、粘弾性特性の一種である貯蔵弾性率を高めることが不十分となっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、油性成分及びカチオン界面活性剤が配合された上で、高い貯蔵弾性率を実現できる組成物、及び、当該組成物を使用する毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、油性成分及びカチオン界面活性剤と共に多価アルコール及び水を配合し、かつ、それらの配合量を適宜設定した上で、所定の製造方法を使用すれば、油性成分の分離が抑えられ、特定の測定条件における貯蔵弾性率が高い組成物を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る組成物は、油性成分、カチオン界面活性剤、多価アルコール、及び水が配合され、レオメータを用いて下記測定条件1で測定した貯蔵弾性率G1′が300Pa以上であることを特徴とする。
<測定条件1>
測定方法:応力依存測定
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
周波数:1Hz
応力範囲:0.1Pa~1000Pa
貯蔵弾性率G1′測定時の応力:2.4Pa
【0008】
本発明に係る組成物は、毛髪に塗布する用途に使用されるものであると良い。当該用途において、前記油性成分の分離が、前記カチオン界面活性剤、多価アルコール、及び水の配合で抑止され、かつ、貯蔵弾性率G1′が300Pa以上である組成物を使用するから、使用する際の本発明に係る組成物の独特な感触が得られると共に、前記カチオン界面活性剤及び前記油性成分による毛髪の感触が得られる。このような毛髪の感触は、毛髪に塗布する用途の中でも、洗い流さない態様で使用される場合に、より感じやすい。
【0009】
本発明に係る組成物は、前記油性成分の配合量が60質量%以上であると良い。この配合量であっても、カチオン界面活性剤、多価アルコール、及び水の配合量を適宜設定することで、油性成分の分離がない組成物を実現できる。また、油性成分の感触をより感じやすくなる。
【0010】
本発明に係る組成物は、前記水の配合量が15質量%以下であると良い。この配合量であると、貯蔵弾性率G1′を高める場合に好適であると共に、油性成分の感触をより感じやすい。
【0011】
本発明に係る組成物は、レオメータを用いて下記測定条件2で測定した貯蔵弾性率G2′に対する損失弾性率G2"の比G2"/G2′が0.50以下であると良い。比G2"/G2′が0.50以下であると、使用する際の滑らかな感触の向上に好適である。
<測定条件2>
測定方法:応力依存測定
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
周波数:1Hz
応力範囲:0.1Pa~1000Pa
貯蔵弾性率G2′及び損失弾性率G2"測定時の応力:100Pa
【0012】
本発明に係る組成物は、アニオン性高分子及びアニオン界面活性剤から選ばれた一種又は二種以上が0.5質量%未満又は無配合が好ましい。これにより、アニオン界面活性剤又はアニオン性高分子と前記カチオン界面活性剤による相互作用を低減でき、前記カチオン界面活性剤、多価アルコール、及び水による前記油性成分の分離抑制作用に適する。
【0013】
また、本発明に係る毛髪処理方法は、本発明に係る組成物を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る油性成分、カチオン界面活性剤、多価アルコール、及び水を適宜配合して製造される組成物によれば、油性成分の分離を抑えた上で、300Pa以上の貯蔵弾性率G1′を実現できる。
【0015】
また、本発明に係る毛髪処理方法によれば、使用する組成物に配合されている油性成分及びカチオン界面活性剤による感触を毛髪に付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1a及び1eの貯蔵弾性率G′及び損失弾性率G"を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る組成物は、粘弾性特性に特徴を有するものである。また、本実施形態に係る組成物には、油性成分、カチオン界面活性剤、多価アルコール、及び水が配合され、更に、使用する際の用途に応じた成分が任意に配合される。
【0018】
(粘弾性特性)
本実施形態の組成物は、粘弾性特性の一種である貯蔵弾性率G1′が300Pa以上であり、500Pa以上5000Pa以下が良く、800Pa以上4000Pa以下が好ましく、1000Pa以上3000Pa以下がより好ましく、1300Pa以上2500Pa以下が更に好ましく、1500Pa以上2000Pa以下がより更に好ましい。300Pa以上であると、経時的に生じる油性成分の分離抑制に好適であり、5000Pa以下であると、柔らかな感触とするのに好適である。
【0019】
上記貯蔵弾性率G1′の値は、レオメータ(例えば、HAAKE社製の応力制御型レオメータ「Rheo Stress 6000」)を使用し、下記測定条件1における値を採用する。
<測定条件1>
測定方法:応力依存測定
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
周波数:1Hz
応力範囲:0.1Pa~1000Pa
貯蔵弾性率G1′測定時の応力:2.4Pa
【0020】
本実施形態の組成物は、貯蔵弾性率G2′に対する損失弾性率G2"の比G2"/G2′が0.50以下であると良く、0.45以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下が更に好ましく、0.30以下がより更に好ましい。本実施形態の組成物を延ばす際の滑らかな感触は、比G2"/G2′が0.50以下であると好適である。
【0021】
上記比G2"/G2′の値を算出する際の貯蔵弾性率G2′及び損失弾性率G2"の値は、レオメータ(例えば、HAAKE社製の応力制御型レオメータ「Rheo Stress 6000」)を使用し、下記測定条件2における値を採用する。
<測定条件2>
測定方法:応力依存測定
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
周波数:1Hz
応力範囲:0.1Pa~1000Pa
貯蔵弾性率G2′及び損失弾性率G2"測定時の応力:100Pa
【0022】
(油性成分)
本実施形態の組成物には、塗布対象物表面の感触改善などの目的で油性成分が配合される。この油性成分は、水に不溶又は難溶のものであり、炭化水素、シリコーン、エステル油、及び油脂を意味し、一種又は二種以上の油性成分を本実施形態の組成物に配合すると良い。当該組成物における油性成分の配合量は、油性成分の感触を高める観点から、60質量%以上が良く、75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。一方、油性成分の配合量の上限は、特に限定されないが、例えば95質量%である。
【0023】
本実施形態の組成物に延ばし易さを求める場合、本実施形態の組成物に配合する油性成分として、25℃で流動性を示す液状油性成分の一種又は二種以上を配合すると良い。本実施形態の組成物における液状油性成分の配合量は、延ばし易さの観点から、60質量%以上が良く、75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。一方、液状油性成分の配合量の上限は、特に限定されないが、例えば95質量%である。
【0024】
また、本実施形態の組成物の使用目的に応じて、上記油性成分として一種又は二種以上の揮発性油性成分を当該組成物に配合すると良い。本実施形態の組成物における揮発性油性成分の配合量は、例えば塗布した毛髪のべたつく感触の抑制の観点から、60質量%以上が良く、75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。一方、揮発性油性成分の配合量の上限は、特に限定されないが、例えば95質量%である。
【0025】
上記油性成分として炭化水素を配合する場合、公知の炭化水素から選ばれた一種又は二種以上を配合すると良く、公知の炭化水素としては、例えば、イソドデカン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワランが挙げられる。本実施形態の組成物における炭化水素の配合量は、例えば50質量%以上である。
【0026】
上記油性成分としてシリコーンを配合する場合、公知のシリコーンから選ばれた一種又は二種以上を配合すると良く、公知のシリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン(メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等)、メチルフェニルシリコーン、環状シリコーン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等)、アミノ変性シリコーン(アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等)、長鎖アルキル変性シリコーン、ジメチコノールが挙げられる。本実施形態の組成物におけるシリコーンの配合量は、例えば50質量%以上である。
【0027】
上記油性成分としてエステル油を配合する場合、公知のエステル油から選ばれた一種又は二種以上を配合すると良く、公知のエステル油としては、例えば、カプリル酸セチルなどの直鎖脂肪酸と1価の直鎖アルコールとのエステル、ミリスチン酸2-オクチルドデシルなどの直鎖脂肪酸と1価の分岐アルコールとのエステル、2-エチルヘキサン酸ステアリルなどの分岐脂肪酸と1価の直鎖アルコールとのエステル、イソノナン酸2-エチルヘキシルなどの分岐脂肪酸と1価の分岐アルコールとのエステル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルなどの直鎖又は分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステル、安息香酸アルキル(C12-15)などの安息香酸エステルが挙げられる。本実施形態の組成物におけるエステル油の配合量は、例えば5質量%以上である。
【0028】
上記油性成分として油脂(脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを主成分とするもの)を配合する場合、公知の油脂から選ばれた一種又は二種以上を配合すると良く、公知の油脂としては、例えば、アボガド油、アーモンド油、アルガニアスピノサ核油、オリーブ油、ククイナッツ油、コメヌカ油、コーン油、サフラワー油、シア脂、シア脂油、バオバブ種子油、パーシック油、パーム核油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油が挙げられる。本実施形態の組成物における油脂の配合量は、例えば5質量%以上である。
【0029】
(カチオン界面活性剤)
本実施形態の組成物には、上記貯蔵弾性率G1′の実現、塗布対象物表面の感触改善などの目的でカチオン界面活性剤が配合される。
【0030】
本実施形態の組成物に配合するカチオン界面活性剤は、公知のカチオン界面活性剤から選ばれる一種又は二種以上であり、当該カチオン界面活性剤としては、例えば、アミドアミン(脂肪酸アミドアミンなど)、アルキル4級アンモニウム塩(長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩など)が挙られる。貯蔵弾性率G1′を高める場合、又は、油性成分の分離抑制を長期化させる場合、好適なカチオン界面活性剤は、例えば、脂肪酸アミドアミン、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩であり、特に脂肪酸アミドアミン塩が好適である。
【0031】
上記脂肪酸アミドアミンとしては、例えば、下記一般式(1)で表される脂肪酸アミドアミンが挙げられる。
R1-CO-NH-(CH)n-NR2R3 (1)
[上記一般式(1)において、R1、s、R2、及びR3は、以下の通りである。R1は、炭素数11以上25以下(炭素数15以上21以下でもよい。)の炭化水素基又はヒドロキシ炭化水素基を表す。このR1は、飽和又は不飽和のものであり、また、直鎖状又は分岐鎖状のものである。nは、1以上4以下(2以上3以下でもよい。)の整数を表す。R2は、炭素数3以下(炭素数2以下でもよい。)のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。このR2は、直鎖状又は分岐鎖状のものである。R3は、炭素数3以下(炭素数2以下でも良い。)のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。このR3は、直鎖状又は分岐鎖状のものである。]
【0032】
上記一般式(1)で表される脂肪酸アミドアミンの具体例としては、例えば、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミド、イソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、オレイン酸ジエチルアミノエチルアミド、ラウリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジエチルアミノプロピルアミドが挙げられる。
【0033】
上記長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェートが挙げられる。
【0034】
また、上記ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウムとしては、例えば、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジココイルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキル(C12~18)ジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0035】
本実施形態の組成物におけるカチオン界面活性剤の配合量は、貯蔵弾性率G1′を高める場合、又は、油性成分の分離抑制を長期化させる場合には、0.5質量%以上が良く、0.7質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、この配合量は、上記の比G2"/G2′を低く設定する場合、又は、頭皮への刺激を抑えたい場合には、6質量%以下が良く、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0036】
(多価アルコール)
本実施形態の組成物には、上記貯蔵弾性率G1′の実現、塗布対象物表面の感触改善などの目的で多価アルコールが配合される。
【0037】
本実施形態の組成物に配合する多価アルコールは、炭素数6以下の2価、3価、又は4価のアルコールであり、当該多価アルコールとしては、例えばグリセリン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコールが挙げられ、一種又は二種以上の多価アルコールが本実施形態の組成物に配合される。貯蔵弾性率G1′を高める場合、又は、油性成分の分離抑制を長期化させる場合、好適な多価アルコールは、例えば、グリセリン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオールであり、特にグリセリンが好適である。
【0038】
本実施形態の組成物における多価アルコールの配合量は、貯蔵弾性率G1′を高める場合、又は、油性成分の分離抑制を長期化させる場合には、0.5質量%以上が良く、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。また、この配合量は、上記の比G2"/G2′を低く設定する場合には、5質量%以下が良く、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0039】
(水)
本実施形態の組成物において、製造時及び経時的な油性成分の分離の抑制のために、水が配合される。本実施形態の組成物において、水の配合量は、1質量%以上15質量%以下が良く、2質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上8質量%以下がより好ましい。水の配合量が1質量%以上であると、油性成分の分離抑制の好適であり、水の配合量が15質量%以下であると、貯蔵弾性率G′を高める場合に好適である。
【0040】
(任意成分)
本実施形態の組成物には、公知の毛髪用組成物に配合されている成分を任意に配合しても良い。当該任意成分としては、例えば、カチオン界面活性剤以外の界面活性剤、糖類、一価アルコール、高級アルコール、脂肪酸、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤である。
【0041】
上記任意成分として、アニオン性高分子(アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、カルボキシビニルポリマーなど)及びアニオン性高分子から選ばれた一種又は二種以上を本実施形態の組成物に配合する場合、その配合量は、0.5質量%未満が良く、0.2質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましく、0.05質量%未満が更に好ましく、0.01質量%未満がより更に好ましい(最適には、アニオン性高分子及びアニオン界面活性剤を任意成分として配合しない。)。アニオン性高分子及びアニオン界面活性剤の配合量が0.5質量%未満であると、本実施形態の組成物における油性成分の分離抑制に不適切なカチオン界面活性剤との相互作用を低減できる上、比G2"/G2′を低く設定する場合に適する。
【0042】
(pH)
本実施形態の組成物のpHは、カチオン界面活性剤による毛髪への良好な感触付与の観点から、4以上8以下が良く、4以上7以下が好ましい。
【0043】
(製造方法)
本実施形態の組成物の製造においては、カチオン界面活性剤、多価アルコール、水の混合物に、油性成分を添加していくと良い。この製法の採用により、貯蔵弾性率G1′を300Pa以上に設定可能となる。
【0044】
(用途)
本実施形態の組成物には、毛髪の補修、感触改善を行うための成分として公知のカチオン界面活性剤及び油性成分が配合されているから、当該組成物を毛髪に塗布する用途に使用すると良い。特に、洗い流さない態様で使用する場合、湿潤又は乾燥した毛髪に塗布し、自然乾燥又は温風乾燥させて使用すると良い。
【実施例0045】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0046】
実施例及び比較例の組成物を製造した。この組成物製造においては、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、塩化パルミチン酸アミドプロピルトリメチルアンモニウム60質量%配合品(Evonik Operations 社製「VARISOFT PATC」)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム28質量%配合品(花王社製「コータミン86W」)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム28質量%配合品(Miwon社製「MICONIUM STAC80(I)」)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム70質量%配合品(東邦化学工業社製「カチナールSTC-70ET」)、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩80質量%配合品(KCL社製「BTMS P8580KC」)、塩化ジアルキル(C12~C18)ジメチルアンモニウム75質量%配合品(花王社製「コータミンD-2345P」)、ジヤシ油脂肪酸エチルヒドロキシエチルメチルアンモニウム塩80質量%配合品(BASF社製「DEHYQUART L80」)、1,2-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、Lubrizol社製カルボキシビニルポリマー「Carbopol Ultrez 10 Polymer」の2.5質量%水溶液、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ポリクオタニウム-11の20質量%配合品(大阪有機化学社製「H.C.ポリマー2」)、安息香酸アルキル(C12~C15)、メドウフォーム油、高重合メチルポリシロキサンとイソドデカン混合品(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製「Silsoft B3020」)、高重合メチルポリシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサン混合品(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製「XF49-A3818」)、イソドデカン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、PEG-9ジメチコン、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、乳酸、香料、水を使用し、配合量は、下記表1a、2~6の通りとした。また、実施例及び比較例の組成物の製造は、下記表1a及び2~6に示す(A)群の成分を混合し、次に、(B)群の成分を添加しつつ混合した後、(C)群の成分を添加して混合した。
【0047】
製造後の各組成物を目視確認した結果、比較例の組成物の全てにおいて、油性成分の分離が認められた。一方、実施例の組成物の全てにおいては、油性成分の分離は認められなかった。
【0048】
製造後に油性成分の分離が認められなかった全ての実施例の組成物について、ガラス容器に充填、密栓してから50℃温度に放置後の外観を目視確認した(放置期間は、下記表を参照)。
【0049】
また、実施例の組成物の一部について、貯蔵弾性率G′と損失弾性率G"を測定した。この測定では、HAAKE社製の応力制御型レオメータ「Rheo Stress 6000」)を使用し、測定条件は、次の通りとした。
測定方法:応力依存測定
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
周波数:1Hz
応力範囲:0.1Pa~1000Pa
【0050】
下記表1a、2~6において、実施例及び比較例の組成物を製造する際に使用した成分及びその配合量、測定応力2.4Paにおける貯蔵弾性率G
1′、「外観」の目視確認結果を示し、下記表1b~1cにおいて、実施例1a及び実施例1eの貯蔵弾性率G′、損失弾性率G"、貯蔵弾性率G′に対する損失弾性率G"の比G"/G′の値を示す(
図1は、これらの値に基づくグラフ)。なお、各表における「外観」における「○」、「△」、「×」は、次の意味である。
○:油性成分の分離は認められなかった。
△:油性成分の分離が僅かに認められた。
×:油性成分の分離が認められた。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】