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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129629
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/02 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
C08F299/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028370
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BA02
4J127BA121
4J127BA122
4J127BA123
4J127BB023
4J127BB031
4J127BB032
4J127BB103
4J127BB111
4J127BB112
4J127BB221
4J127BB222
4J127BB223
4J127BC021
4J127BC022
4J127BC023
4J127BC131
4J127BC132
4J127BC133
4J127BC162
4J127BD143
4J127BD282
4J127BD411
4J127BD471
4J127BE111
4J127BE112
4J127BE113
4J127BE241
4J127BE242
4J127BE243
4J127BE312
4J127BE313
4J127BE511
4J127BF473
4J127BF601
4J127BF702
4J127BG182
4J127BG183
4J127BG281
4J127BG382
4J127CA01
4J127EA12
4J127FA07
(57)【要約】
【課題】 基材との密着性が良好で、薬品に対する耐久性が高く、光沢が抑制されており、防滑性に優れ、巻き取りの際に亀裂や白化が発生する可能性を著しく低下させることができる光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、ポリエステル変性シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)と、カプロラクトン骨格を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(C)と、光重合開始剤(D)と、を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、ポリエステル変性シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)と、カプロラクトン骨格を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(C)と、光重合開始剤(D)と、を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
床材に用いられることを特徴とする請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光硬化性樹脂組成物は、短時間で硬化可能で、非常に扱いやすい材料であることから、電子・電気部品や、印刷、塗装など幅広く用いられている。
【0003】
過去に、出願人は、硬さと伸張性を備え、更に耐溶剤性を有する光硬化樹脂組成物を発明した。具体的には、ポリエステル主鎖のウレタンアクリレートと芳香環を有する単官能アクリレートが含まれ、嵩高官能基を有する単官能アクリレート或いは単官能アクリルアミドのいずれかが含まれることを特徴とする光硬化樹脂組成物を得た(特許文献1)。当該組成物は、硬さと伸張性とを備えた上で、耐溶剤性に優れていることから、機構部品として、変形が必要な部位等のシール、接着、充填に向くという性質をもつものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-77069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、塩化ビニル樹脂などのポリマーを基材とし、その表面に光硬化性樹脂組成物を塗工した床材が各種提供されている。特に光硬化性樹脂組成物は、溶剤を含まず乾燥工程を必要としないことから、短時間のうちに安価な床材を大量に製造することが可能である。
【0006】
近年では、製造工程・施工過程の簡略化のため、基材に対してライン上にてダイコーターにより光硬化性樹脂組成物を塗工し、即座に硬化させ、ロールに巻き取り保管しておき、必要時に必要量だけカットし現場施工するという手法が採用されている。ここで、特許文献1に記載された光硬化樹脂組成物は、硬度や強度が比較的高いため、巻き取りの際に亀裂や白化が発生する可能性があった。
【0007】
また、光硬化性樹脂組成物は、床材の表面層を構成するため、薬品等に対する耐久性に加え、太陽光などの反射による光沢の抑制が強く求められていた。さらに、安全性の確保のため、防滑性を付与することが必要であり、さらなる改善の余地があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、基材との密着性が良好で、薬品に対する耐久性が高く、光沢が抑制されており、防滑性に優れ、巻き取りの際に亀裂や白化が発生する可能性を著しく低下させることができる光硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、ポリエステル変性シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)と、カプロラクトン骨格を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(C)と、光重合開始剤(D)と、を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる光硬化性樹脂組成物は、基材との密着性が良好で、薬品に対する耐久性が高く、光沢が抑制されており、防滑性に優れ、巻き取りの際に亀裂や白化が発生する可能性を著しく低下させることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー>
本発明では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を用いる。当該(A)成分は、本発明にかかる光硬化性樹脂組成物の主成分となるものであり、ウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有することを特徴する。ポリオール類とポリイソシアネート類の反応物であるウレタンオリゴマーに対して、ヒドロキシ(メタ)アクリレートを反応させることにより得ることができるが、原料モノマーの組み合わせにより様々なオリゴマーを設計することができる。
【0012】
当該(A)成分の構造としては、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリブタジエン骨格、ポリカーボネート骨格などを有するものが挙げられる。これらの中でも、柔軟性に優れることから、ポリエーテル骨格を有するものを用いることが好ましい。
【0013】
当該(A)成分の数平均分子量としては、500~30,000であることが好ましく、650~20,000であることが更に好ましく、800~10,000であることが特に好ましい。
【0014】
当該(A)成分の具体例としては、SUA-017(商品名、亜細亜工業社製、ポリエーテル骨格、2官能、数平均分子量:6,300)、SUA-023(商品名、亜細亜工業社製、ポリエーテル骨格、2官能、数平均分子量:1,200)、SUA-024(商品名、亜細亜工業社製、ポリエーテル骨格、2官能、数平均分子量:1,300)などが挙げられる。
【0015】
<ポリエステル変性シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー>
本発明では、ポリエステル変性シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)を用いる。シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリシロキサン骨格の両末端に(メタ)アクリロイル基を導入したものであり、本発明では、特にポリエステル変性させたものを用いる必要がある。
【0016】
一般に、シリコーン化合物を用いた場合は、防滑性が低下する傾向がみられるところ、本発明にかかる発明者は、当該(B)成分を用いることにより、防滑性を付与できる上、その他の諸物性も充足できることを見出し、本発明を完成させた。その詳細な反応機構は不明であるものの、光硬化性樹脂組成物中の当該(B)成分が、一定の作用効果を及ぼしているものと考えられる。
【0017】
当該(B)成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、1~200重量部配合することが好ましく、5~100重量部配合することが更に好ましく、10~50重量部配合することが特に好ましい。
【0018】
当該(B)成分の重量平均分子量としては、500~30,000であることが好ましく、800~20,000であることがさらに好ましく、1,000~10,000であることが特に好ましい。
【0019】
当該(B)成分の市販品としては、SIP910(商品名、MIWON社製、ポリエステル変性シリコーンアクリレートオリゴマー、2官能、重量平均分子量:6,600)などが挙げられる。
【0020】
<カプロラクトン骨格を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー>
本発明では、カプロラクトン骨格を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(C)を用いる。当該(C)成分を用いることにより、基材との密着性をさらに向上させることができ、また剥がれを抑制できることから、巻き取りの際に亀裂や白化が発生する可能性を低下させることができる。
【0021】
当該(C)成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、0.01~50重量部配合することが好ましく、0.05~30重量部配合することが更に好ましく、0.1~10重量部配合することが特に好ましい。
【0022】
当該(C)成分の市販品としては、アロニックス M-5300(商品名、東亞合成社製、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート)、プラクセル FA1(商品名、ダイセル社製、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン)などが挙げられる。
【0023】
<光重合開始剤>
本発明では、光重合開始剤(D)を用いる。当該(D)成分の具体例としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
当該(D)成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、0.01~50重量部配合することが好ましく、0.1~40重量部配合することがさらに好ましく、1~30重量部配合することが特に好ましい。この範囲内において配合することにより、本発明にかかる光硬化性樹脂組成物を効率的に反応させることができる傾向がある。
【0025】
当該(D)成分の市販品としては、Omnirad 127、Omnirad 184、Omnirad 369、Omnirad 500、Omnirad 754、Omnirad 819、Omnirad 907、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad TPO、Omnirad MBF(製品名、いずれもiGM RESINS社製)、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE04(商品名、いずれもBASFジャパン社製)、DAIDO UV-CURE PMB、DAIDO UV-CURE OMB、DAIDO UV-CURE BMS、DAIDO UV-CURE 171、DAIDO UV-CURE D-177F、DAIDO UV-CURE ♯174、PHOTOCURE 550(商品名、いずれも大同化成工業社製)などが挙げられる。
【0026】
<その他の成分>
本発明では、上記(A)~(D)成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を配合することができる。
【0027】
本発明では、例えば、アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。当該成分は、希釈剤としてはたらくため、塗布する際の作業性を向上させることができる。当該成分の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、当該成分の配合割合としては、例えば、上記(A)成分100重量部に対して、1~1000重量部配合することができる。
【0028】
本発明では、例えば、無機粒子を用いることができる。当該成分としては、主に金属酸化物の粒子があり、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などが挙げられる。当該成分を配合することにより、光が乱反射するため、床表面の光沢を抑制することができる傾向がある。また、当該成分については、密着性を向上させるため、有機処理をすることが好ましい。なお、当該成分の配合割合としては、例えば、上記(A)成分100重量部に対して、0.1~100重量部配合することができる。
【0029】
さらに、本発明にかかる光硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、各種の添加剤を配合することもできる。
【0030】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例0031】
表1に示す配合において、混合液を調製し、実施例及び比較例の光硬化性樹脂組成物を得た。ここで、表1における数値は、重量部を表すものとする。以下に、使用した原材料を示す。
SUA-023(商品名、亜細亜工業社製、ポリエーテル骨格、ウレタンアクリレートオリゴマー、2官能、数平均分子量:1,200)
SIP910(商品名、MIWON社製、ポリエステル変性シリコーンアクリレートオリゴマー、2官能、重量平均分子量:6,600)
SIU2400(商品名、MIWON社製、ウレタン変性シリコーンアクリレートオリゴマー、10官能、重量平均分子量:8,000)
X-22-164B(商品名、信越化学工業社製、シリコーンアクリレート、2官能)
アロニックス M-5300(商品名、東亞合成社製、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート)
DAIDO UV-CURE ♯174(商品名、大同化成工業社製)
2-EHA(三菱ケミカル社製、2-エチルヘキシルアクリレート)
ACEMATT OK607(商品名、エボニック社製、有機処理シリカ)
【0032】
【表1】
【0033】
上記の実施例等にて得られた光硬化性樹脂組成物について、以下の要領で試験体を作製し、物性評価を行った。この結果を表2に示す。
【0034】
<試験体の作製>
塩化ビニル樹脂シート(商品名:パーマリュームモンテ PH-8327、田島ルーフィング社製、厚み:2.0mm)を基材として、光硬化性樹脂組成物を膜厚15μmとなるように塗工し、有電極高圧水銀ランプ(商品名:アイグランデージ ECS4011GX/N、アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度100mW/cm、積算光量1000mJ/cmにて紫外線照射させ、当該組成物を硬化させることで試験体を作製した。ただし、比較例2については、混合液が不均一であり、紫外線照射しても組成物が硬化せず、試験体を作製できなかった。
【0035】
<密着性>
旧JIS K 5400の碁盤目テープ法に準じて、試験体に対して、1mm幅にて碁盤目状に切り込みを入れ、100個の碁盤目を作製した後、セロハンテープ(ニチバン社製、商品名:CT24)を貼り付け剥がした際の、塗膜の剥離状態(試験後の碁盤目の数/試験前の碁盤目の数)を目視にて観察した。
【0036】
<光沢度>
試験体について、JIS Z 8741に準じて、マイクロトリグロス(ビックガードナー社製)を用いて、60°光沢度を測定した。当該測定値が小さいほど光沢が抑制されていることを示す。
【0037】
<静摩擦係数>
試験体に対して、自動摩擦摩耗解析装置 TS 501(トライボスター社製)を用いて、測定条件として荷重100g、R面接触子、走査距離5cm、走査距離1cm/分にて2回測定し、静摩擦係数(μk)の平均値を算出した。当該測定値が大きいほど、防滑性に優れていることを示す。
【0038】
<屈曲性>
試験体について、マンドレル棒に巻き付け、5秒間圧締した後、元に戻して塗膜に亀裂や白化がないか目視にて観察した。なお、本試験における最小値は6Rである。
【0039】
<耐薬品性>
試験体表面に市販の布(1cm×1cm)を重ね、アンモニア水(28%溶液)を8滴滴下し、常温にて24時間静置した後、布を除去して水拭きし、塗膜の変化の有無について目視で観察した。
【0040】
【表2】