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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129634
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】回転機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028379
(22)【出願日】2021-02-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴彦
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP07
5H609QQ05
5H609RR01
5H609RR37
5H609RR41
5H609RR51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハウジングの収容空間内に貯留されるオイルによるロータの回転効率の低下を抑えつつ、ステータ及びロータを良好に冷却することができるモータを提供する。
【解決手段】ハウジング3が、電動オイルポンプから吐出されたオイルを受け入れる主流路3bを備え、モータが、主流路3bよりも下流側で冷媒を流す下流路(ゴム管60の内部)とを備え、ハウジング3が、収容空間3yに連通し、且つ収容空間3yよりも径方向の外側でオイルを貯留するオイル貯留部3aと、主流路3bから分岐する分岐孔と、主流路3bに設けられたフロント側吐出孔よりもオイル貯留部に近い位置で収容空間3y内のステータに向けてオイルを吐出する副吐出孔とを備え、下流路の一端側が分岐孔に連通し、下流路の他端側が副吐出孔に連通する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記テータの中空内に配置される回転可能なロータと、前記ステータ及び前記ロータを収容空間内に収容するハウジングと、冷媒を吸引及び吐出するポンプとを備え、
前記ハウジングが、前記ポンプから吐出された冷媒を受け入れる流路を備え、
前記流路が、記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する吐出孔を備える回転機であって、
前記流路としての主流路よりも下流側で冷媒を流す下流路を備え、
前記ハウジングが、前記収容空間に連通し、且つ前記収容空間よりも径方向の外側で冷媒を貯留する冷媒貯留部と、前記主流路から分岐する分岐孔と、前記吐出孔としての主吐出孔よりも前記冷媒貯留部に近い位置で前記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する副吐出孔とを備え、
前記下流路の一端側が前記分岐孔に連通し、
前記下流路の他端側が前記副吐出孔に連通する
ことを特徴とする回転機。
【請求項2】
前記分岐孔の径が、前記主流路の径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の回転機。
【請求項3】
前記副吐出孔が、前記回転軸線を中心にして前記主吐出孔よりも90〔°〕ずれた位置にある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転機。
【請求項4】
前記ハウジングが、前記ロータの回転軸線方向に延びる底面を備え、
前記主吐出孔が、前記収容空間における最も高い位置に連通する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転機。
【請求項5】
冷媒を冷却する冷却器を備え、
前記ポンプが、前記冷媒貯留部内の冷媒を吸引して吐出し、
前記ハウジングが、前記ポンプから吐出された冷媒を前記主流路に向けて送るための送り流路を備え、
前記冷却器が、前記送り流路から送られてくる冷媒を受け入れて前記主流路に向けて吐出する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の回転機。
【請求項6】
前記下流路が、前記ハウジングとは別体の管材によって構成される
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、発電機等の回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータと、ステータの中空内に配置される回転可能なロータと、ステータ及びロータを収容空間内に収容するハウジングと、冷媒を吸引及び吐出するポンプとを備える回転機が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の回転機としてのジェネレータ(発電機)は、ステータと、ステータの中空内に配置されるロータとを、ハウジングとしてのケースの収容空間内に収容する。ケースの収容空間内には、冷媒としてのオイルがステータ及びロータの径方向の一部を浸ける液位で貯留される。このオイルは、電動オイルポンプによって吸引及び吐出される。電動オイルポンプから吐出されたオイルは、ケースに設けられた流路としてのオイル通路に送られる。オイル通路の一端は、ケースの収容空間に向けて開口する吐出孔になっている。オイル通路内のオイルは、吐出孔から吐出されてステータにおけるオイルに浸かっていない部分に付着して、ステータを冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-92727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる構成のジェネレータにおいては、ケースの収容空間内に貯留されるオイルが、回転するロータに負荷をかけてロータの回転効率を低下させてしまう。ロータの回転効率を向上させるためには、ケースの収容空間内に貯留されるオイルの量を低減することが望ましいが、オイルの貯留量を低減すると、ロータ及びステータの冷却効率を低下させてしまう。具体的には、ケースの吐出孔から吐出されてステータに付着したオイルは、ステータ及びロータの表面を伝って重力方向に移動していく過程で、ステータ及びロータを冷却しながら昇温する。ステータ及びロータにおける吐出孔とは反対側の部分まで移動したオイルは、温度をある程度まで上昇させていることから、前述の部分を良好に冷却することが困難である。このため、ケースの収容空間内のオイル貯留量を低減すると、ステータ及びロータにおける吐出孔とは反対側の部分を良好に冷却することが困難になってしまうのである。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハウジングの収容空間内に貯留されるオイルによるロータの回転効率の低下を抑えつつ、ステータ及びロータを良好に冷却することができる回転機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ステータと、前記テータの中空内に配置される回転可能なロータと、前記ステータ及び前記ロータを収容空間内に収容するハウジングと、冷媒を吸引及び吐出するポンプとを備え、前記ハウジングが、前記ポンプから吐出された冷媒を受け入れる流路を備え、前記流路が、記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する吐出孔を備える回転機であって、前記流路としての主流路よりも下流側で冷媒を流す下流路を備え、前記ハウジングが、前記収容空間に連通し、且つ前記収容空間よりも径方向の外側で冷媒を貯留する冷媒貯留部と、前記主流路から分岐する分岐孔と、前記吐出孔としての主吐出孔よりも前記冷媒貯留部に近い位置で前記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する副吐出孔とを備え、前記下流路の一端側が前記分岐孔に連通し、前記下流路の他端側が前記副吐出孔に連通することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハウジングの収容空間内に貯留されるオイルによるロータの回転効率の低下を抑えつつ、ステータ及びロータを良好に冷却することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るモータのステータ及びロータを示す横断面図である。
図2】同モータを示す斜視図である。
図3】同モータの縦断面図である。
図4】同モータのハウジングの第1横断面を示す断面図である。
図5】同モータの上部を回転軸線方向のフロント側から示す斜視図である。
図6】同ハウジングのフロント側副流路及びその周囲を拡大して示す拡大斜視図である。
図7】同モータの上部を回転軸線方向のリア側から示す斜視図である。
図8】同ハウジングのリア側副流路及びその周囲を拡大して示す拡大斜視図である。
図9】同ハウジングの第2横断面を示す断面図である。
図10】同ハウジングの第3横断面を示す断面図である。
図11】同ハウジングを示す斜視図である。
図12】同ステータ及び同ロータをフロント側から示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を用いて、本発明を適用した回転機のモータの一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るモータのステータ5及びロータ7を示す横断面図である。ステータ5は、円筒状のステータコア5aと、ステータコア5aに巻かれた巻線たる平角線コイル5bとを備える。ロータ7は、ステータコア5aの中空内に配置され、ロータコア7aと、ロータ7の回転軸線Lを中心とする周方向に並ぶ態様でロータコア7aに埋め込まれた複数の永久磁石7bとを備える。なお、図1においては、平角線コイル5bの横断面に付されるべきハッチングが省略されている。
【0012】
図2は、実施形態に係るモータ1を示す斜視図である。なお、図2においては、モータ1の内部構成を可視化するために、後述のモータカバーの図示が省略されている。モータ1は、ステータ5及びロータ7の他に、ハウジング3、シャフト6、電動オイルポンプ80、冷却器たるオイルクーラ90等を備える。
【0013】
モータ1は、IPM(Interior Permanent Magnet)モータからなり、EV(Electric Vehicle)車、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)車などの自動車に搭載されるものである。シャフト6は、図中において一点鎖線で示される回転軸線Lを中心にして回転可能に支持される。ロータ7は、シャフト6と一体的に回転する。ハウジング3は、インバータ基板に繋がる端子台を収容する端子台収容部3wと、ステータ5及びロータ7を収容する収容空間3yと、回転軸線Lの方向に沿って延びる底面3zと、冷媒としてのオイルを貯留するオイル貯留部3aとを備える。
【0014】
インバータ基板は、車両のECU(Engine Control Unit)等の上位装置から送られてくる指令に従って、ステータ5の平角線コイル5bに三相電源の電力を指令に基づく周波数で供給するものである。
【0015】
ハウジング3の収容空間3yは、フロント側の端と、リア側の端とのそれぞれに開口を備える。それぞれの開口は、モータカバーによって塞がれる。ハウジング3は、円柱状の収容空間3y内に、ステータ5、シャフト6、及びロータ7を収容する。
【0016】
モータ1は、回転軸線Lを水平方向に沿わせ、且つ底面3zを鉛直方向の下方に向ける姿勢で自動車に搭載される。モータ1は、シャフトの長手方向の一端部を、不図示のモータカバーから突出させる。以下、回転軸線Lの方向において、シャフト6をモータカバーから突出させる側をフロント側(A側)、反対側をリア側(B側)という。同図における矢印Cは、上下方向を示す。ハウジング3の端子台収容部3wは、上側に向けて開口する開口部を備え、その開口部は端子台カバー59によって塞がれる。
【0017】
モータ1は、ハウジング3の冷媒貯留部としてのオイル貯留部3aを上下方向における下側に位置させる姿勢(正規姿勢)で配置されることを前提にした設計がなされている。以下、正規姿勢で配置されたモータ1におけるハウジング3について、上下方向の下側に位置する部分を下部と言い、上側になる部分を上部と言う。
【0018】
ハウジング3内には、一定量のオイルが貯留される。正規姿勢で配置されたモータ1において、ハウジング3内のオイルは、重力によってオイル貯留部3a内に流れ込んで貯留される。
【0019】
図3は、モータ1の縦断面図である。図3においても、ハウジング3におけるフロント側の開口を塞ぐモータカバー、及びリア側の開口を塞ぐモータカバーの図示が省略されている。以下、回転軸線Lを中心とする周方向を単に周方向と言う。また、回転軸線Lを中心とする径方向を単に径方向と言う。
【0020】
シャフト6は、ロータコア7aの中心に設けられた貫通穴に嵌め込まれる。シャフト6におけるフロント側の端部、及びリア側の端部のそれぞれは、ボールベアリング8によって回転可能に支持される。
【0021】
ハウジング3は、オイルを流通させるための主流路3bを備える。主流路3bは、ハウジング3における上側端部において、回転軸線Lの方向に延びる態様で配置される。なお、本発明において、回転軸線方向に延びる態様は、厳密に回転軸線方向に沿って延びる態様の他、回転軸線方向から45〔°〕未満に傾いた方向に延びる態様も含む。
【0022】
ハウジング3において、ステータ5及びロータ7を収容する収容空間3yと、オイル貯留部3aとは、回転軸線Lの方向におけるリア側で互いに連通する。オイル貯留部3aの一部は、図示のように、収容空間3yよりも径方向の外側且つ下方に位置する。収容空間3y内のオイルは、自重によって収容空間3y内からオイル貯留部3a内に移動して貯留される。
【0023】
図4は、ハウジング3の第1横断面を示す断面図である。図4においては、便宜上、電動オイルポンプ80の内部構成の図示が省略されている。第1吸引流路3j1はオイル貯留部3aに連通し、第2吸引流路3j2は、第1吸引流路3j1に連通する。オイル貯留部3a内のオイルは、電動オイルポンプ80により、第2吸引流路3j2及び第1吸引流路3j1を介して吸引される。
【0024】
第1送り流路3k1は、電動オイルポンプ80の吐出口に連通する。第2送り流路3k2は、第1送り流路3k1に連通する。第3送り流路3k3の一端側は第2送り流路3k2に連通し、他端側はオイルクーラ90の流入口に連通する。第4送り流路3k4の一端側はオイルクーラ90の流出口に連通し、他端側は主流路3bに連通する。電動オイルポンプ80から吐出されたオイルは、第1送り流路3k1を経由した後、第2送り流路3k2内に流入する。そして、オイルは、第2送り流路3k2内を下方から上方に向けて移動する。その後、オイルは、第3送り流路3k3を経由した後にオイルクーラ90内に流入する。オイルクーラ90内で冷却されたオイルは、オイルクーラ90から流出した後、第4送り流路3k4を経由してから主流路3b内に流入する。
【0025】
図5は、モータ1の上部を回転軸線Lの方向のフロント側から示す斜視図である。ハウジング3は、回転軸線Lの方向におけるフロント側の端部に、主流路3bにおけるフロント側の端に通じるフロント側副流路3cを備える。図3図5に示されるフロント側副流路3cは、回転軸線Lの方向におけるフロント側の端が開口しているが、この開口は、不図示のモータカバーによって塞がれる。
【0026】
図6は、フロント側副流路3c及びその周囲を拡大して示す拡大斜視図である。主流路3bに流入したオイルは、第4送り流路(図4の3k4)の位置を輝点として、2分される。一方のオイルは、主流路3b内を回転軸線Lの方向に沿ってリア側からフロント側に移動した後に、フロント側副流路3c内に流入する。また、他方のオイルは、主流路3b内を回転軸線Lの方向に沿ってフロント側からリア側に移動した後、後述の第2副流路内に流入する。
【0027】
主流路3bのフロント側の端部には、収容空間3yに向けて開口するフロント側吐出孔3b1が配置される。主流路3bのフロント側の端部に移動したオイルは、フロント側副流路3c内に流入させずに、フロント側吐出孔3b1内に流入した後、収容空間3y内に吐出される。吐出されたオイルは、ステータ(図2の5)及びロータ(図2の7)に付着してステータ及びロータを冷却する。
【0028】
フロント側副流路3cは、図示のように径方向に沿って湾曲する弓状の形状をしており、長手方向の中央部を主流路3bに連通させている。また、フロント側副流路3cは、互いに径方向にずれた位置にある4つの吐出孔3c1を備える。主流路3bからフロント側副流路3c内に流入したオイルは、4つの吐出孔3c1における何れかから吐出されてステータ及びロータに付着する。付着したオイルは、ステータ及びロータを冷却する。
【0029】
図7は、モータ1の上部を回転軸線Lの方向のリア側から示す斜視図である。ハウジング3は、回転軸線Lの方向におけるリア側の端部に、主流路3bにおけるリア側の端に通じるリア側副流路3dを備える。リア側副流路3dは、回転軸線Lの方向におけるリア側の端が開口しているが、この開口は、不図示のモータカバーによって塞がれる。
【0030】
図8は、リア側副流路3d及びその周囲を拡大して示す拡大斜視図である。主流路3bのリア側の端部には、収容空間3yに向けて開口するリア側吐出孔3b2が配置される。主流路3bのリア側の端部に移動したオイルは、リア側副流路3d内に流入させずに、主吐出孔としてのリア側吐出孔3b2内に流入した後、収容空間3y内に吐出される。吐出されたオイルは、ステータ(図2の5)及びローラ(図2の7)に付着してステータ及びロータを冷却する。
【0031】
リア側副流路3dは、図示のように径方向に沿って湾曲する弓状の形状をしており、長手方向の中央部を主流路3bに連通させている。また、リア側副流路3dは、互いに径方向にずれた位置にある4つの吐出孔3d1を備える。主流路3bからリア側副流路3d内に流入したオイルは、4つの吐出孔3d1における何れかから吐出されてステータ及びロータに付着する。付着したオイルは、ステータ及びロータを冷却する。
【0032】
図9は、ハウジング3の第2横断面を示す断面図である。図9に示される第2横断面は、図4に示される第1横断面よりも回転軸線Lの方向のリア側に位置する。また、図9に示される断面は、軸方向において、図6に示されるフロント側吐出孔3b1と、図8に示されるリア側吐出孔3b2との中間に位置する。
【0033】
図9に示されるように、ハウジング3は、主流路3bから収容空間3yに通じる2つの中間吐出孔3b3を備える。主吐出孔としての2つの中間吐出孔3b3は、互いに径方向に並ぶ。また、2つの中間吐出孔3b3は、軸方向において、フロント側吐出孔(図6の3b1)とリア側吐出孔(図8の3b2)との中間点に位置する。中間吐出孔3b3から吐出されたオイルは、ステータ(図2の5)とロータ(図2の7)との間に形成されるギャップ内において、ステータの周面上を伝わって、重力方向下方に向かう。これにより、オイルは、ステータの全周に付着してスタータの全周を冷却する。
【0034】
ハウジング3において、フロント側からみて主吐出孔たるフロント側吐出孔(図6の3b1)から反時計回りに90〔°〕ずれた位置には、副吐出孔3nが配置される。副吐出孔3nは、収容空間3yに向けて開口し、収容空間3y内のステータに向けてオイルを吐出する。副吐出孔3nは、主吐出孔としてのフロント側吐出孔(図6の3b1)、リア側吐出孔(図8の3b2)、及び中間吐出孔3b3のそれぞれよりもオイル貯留部3aに近い位置(より詳しくは下方の位置)で収容空間3y内のステータに向けてオイルを吐出する。
【0035】
図10は、ハウジング3の第3横断面を示す断面図である。図10に示される第3横断面は、図9に示される第2横断面よりも回転軸線Lの方向のリア側に位置する。図10に示されるように、ハウジング3は、主流路3bから分岐する分岐孔3mを備える。ハウジング3の外部には、耐熱ゴムからなるゴム管60が配置される。ゴム管60の内部は、主流路3bよりも下流側でオイルを流す下流路60aを構成する。
【0036】
図11は、ハウジング3を示す斜視図である。図11に示されるように、ゴム管60の両端のそれぞれは、ハウジングに接続される。また、図10に示されるように、ゴム管60の内部に形成される下流路60aの一端側は、ハウジング3の分岐孔3mに連通する。また、図10には示されていないが、下流路60aの他端側は、ハウジング3の副吐出孔(図9の3n)に連通する。
【0037】
ハウジング3の主流路3bに流入したオイルの一部は、主流路3bから分岐孔3m内に流入した後、下流路60aを経由して副吐出孔3nから収容空間3y内に吐出される。そして、オイルは、収容空間3y内のステータ及びロータに付着してステータ(図2の5)及びロータ(図2の7)を冷却する。
【0038】
図4に示されるように、ハウジング3のオイル貯留部3aは、収容空間3yよりも径方向の外側において、収容空間3yよりも下方の位置にオイルを貯留する。かかる構成では、オイル貯留部3a内に必要量のオイルを貯留しつつ、収容空間3y内におけるオイル貯留量を低減してオイルによるロータ7の回転効率の低下を抑えることができる。
【0039】
図12は、ステータ5及びロータ7をフロント側から示す正面図である。図9に示される2つの中間吐出孔3b3における一方から吐出されたオイルは、図12の矢印aで示されるように、ステータ5の周面における最上部に付着する。また、図9に示される2つの中間吐出孔3b3における他方から吐出されたオイルは、図12の矢印bで示されるように、ステータ5の周面における最上部に付着する。最上部に付着したオイルは、矢印eで示されるように、自重によってステータ5の周面を伝わりながら、重力方向下方に向かって移動する。この移動の過程において、ステータ5の上下方向における上部、中間部、下部を順に冷却していくが、下部に伝わった段階では、昇温していることから、冷却効率はそれほど高くない。ステータ5の周面における下部まで伝わったオイルは、矢印fで示されるようにステータ5の周面から落下して収容空間3yの下部に受けられた後、オイル貯留部3a内に流入する。このようにして、ハウジング3内のオイルは、オイル貯留部3a、吸引流路(3j1~3j2)、電動オイルポンプ80、第1~第3送り流路(3k1~3k3)、オイルクーラ90、第4送り流路(3k4)、主流路3bという循環経路を循環する。
【0040】
図9に示される副吐出孔3nから吐出されたオイルは、図12の矢印dで示されるように、ステータ5の周面における中間部に付着した後、自重によってステータ5の周面を伝わりながら、重力方向下方に向かって移動する。このオイルは、図12に示されるオイルの挙動とは異なり、ステータ5の上部を冷却することなく、ステータ5の中間部から冷却を開始するので、上部から中間部に移動する過程での昇温を引き起こさない。このため、そのオイルは、中間部において、ステータ5の上部から中間部へと伝わってきたオイルに比べて、低い温度になっている。このような低い温度のオイルと、上部から中間部へと伝わる過程で昇温したオイルとが混ざり合うことで、上下方向の中間部においては、副吐出孔3nを備えない従来構成に比べて、オイル全体の温度が低くなる。即ち、実施形態に係るモータ1においては、ステータ(図2の5)の上下方向における中間部から下部に至るまでの領域において、従来構成よりも低い温度のオイルによってステータ5の冷却がなされる。これにより、ステータ5の中間部から下部に至るまでの領域をより効率良く冷却する。よって、実施形態に係るモータ1によれば、ステータ5及びロータ7を良好に冷却することができる。
【0041】
図10に示されるように、分岐孔3mの径は、主流路3bの径よりも小さい。かかる構成では、主流路3b内から分岐孔3m内にオイルを流入させるときに、オイルに対して流路抵抗を与える。これにより、オイルを副吐出孔3nに集中的に流して、副吐出孔3n以外の吐出孔からのオイル吐出量を不足させてしまうという事態の発生を回避して、オイルを各吐出孔からバランスよく吐出させることができる。
【0042】
図9に示されるように、副吐出孔3nは、回転軸線Lを中心にしてフロント側吐出孔(図6の3b1)よりも90〔°〕ずれた位置にある。かかる構成では、副吐出孔3nから吐出させたオイルをステータ5の上下方向における上部に付着させることを防止して、上部に付着させることによるステータ5の下部の昇温を低減することができる。
【0043】
図2に示されるように、ハウジング3は、ロータ7の回転軸線Lの方向に延びる底面3zを備える。図6に示される主吐出孔としてのフロント側吐出孔3b1は、収容空間3yにおける最も高い位置に連通する。かかる構成では、フロント側吐出孔3b1から吐出させたオイルを、ステータ5の周面の最上部に付着させて、ステータ5の周面の全域を冷却することができる。
【0044】
図4に示されるように、オイルクーラ90は、第3送り流路3k3から送られてくるオイルを受け入れて主流路3bに向けて吐出する。かかる構成では、オイルクーラ90によって冷却した直後のオイルを、ステータ5に付着させて冷却効率を高めることができる。
【0045】
図10に示されるように、下流路60aは、ハウジング3とは別体の管材たるゴム管60によって構成される。かかる構成では、ゴム管60内のオイルを空冷によって冷却してステータ5及びロータ7の冷却効率を高めることができる。
【0046】
副吐出孔3nを、フロント側吐出孔3b1から90〔°〕ずれた位置に配置した例について説明したが、-90〔°〕ずれた位置に配置してもよいし、両方の位置に配置してもよい。
【0047】
本発明を回転機としてのモータ1に適用した例について説明したが、本発明を回転機としての発電機(ダイナモ)に適用してもよい。
【0048】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の構成を適用し得る範囲内で、実施形態とは異なる構成を採用することもできる。本発明は、以下に説明する態様毎に特有の作用効果を奏する。
【0049】
〔第1態様〕
第1態様は、ステータ(例えばステータ5)と、前記テータの中空内に配置される回転可能なロータ(例えばロータ7)と、前記ステータ及び前記ロータを収容空間(例えば収容空間3y)内に収容するハウジング(例えばハウジング3)と、冷媒(例えばオイル)を吸引及び吐出するポンプ(例えば電動オイルポンプ)とを備え、前記ハウジングが、前記ポンプから吐出された冷媒を受け入れる流路を備え、前記流路が、記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する吐出孔を備える回転機(例えばモータ1)であって、前記流路としての主流路(例えば主流路3b)よりも下流側で冷媒を流す下流路(例えば下流路60a)を備え、前記ハウジングが、前記収容空間に連通し、且つ前記収容空間よりも径方向の外側で冷媒を貯留する冷媒貯留部(例えばオイル貯留部3a)と、前記主流路から分岐する分岐孔(例えば分岐孔3m)と、前記吐出孔としての主吐出孔よりも前記冷媒貯留部に近い位置で前記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する副吐出孔(例えば副吐出孔3n)とを備え、前記下流路の一端側が前記分岐孔に連通し、前記下流路の他端側が前記副吐出孔に連通することを特徴とするものである。
【0050】
第1態様によれば、収容空間とは別に、冷媒貯留部内に冷媒を貯留することで、ハウジング内に必要量の冷媒を貯留しつつ、収容空間内における冷媒貯留量を低減することで、収容空間内のオイルによるロータの回転効率の低下を抑えることができる。
また、第1態様においては、副吐出孔から吐出した冷媒を、ステータの上部に付着させることなく、上部よりも下方の部位に付着させて、その部位から冷媒による冷却を開始することにより、ステータ及びロータを良好に冷却することができる。
【0051】
〔第2態様〕
第2態様は、第1態様の構成を備え、且つ、前記分岐孔の径が、前記主流路の径よりも小さいことを特徴とする回転機である。
【0052】
第2態様によれば、冷媒を各吐出孔からバランスよく吐出させることができる。
【0053】
〔第3態様〕
第3態様は、第1態様又は第2態様の構成を備え、且つ、前記副吐出孔が、前記回転軸線を中心にして前記主吐出孔よりも90〔°〕ずれた位置にあることを特徴とする回転機である。
【0054】
第3態様によれば、副吐出孔から吐出させた冷媒をステータの上下方向における上部に付着させることを防止して、上部に付着させることによるステータの下部の昇温を低減することができる。
【0055】
〔第4態様〕
第4態様は、第1態様~第3態様の何れかの構成を備え、且つ、前記ハウジングが、前記ロータの回転軸線方向に延びる底面(例えば底面3z)を備え、前記主吐出孔が、前記収容空間における最も高い位置に連通することを特徴とする回転機である。
【0056】
第4態様によれば、主吐出孔から吐出させた冷媒を、ステータの周面の最上部に付着させて、ステータの周面の全域を冷却することができる。
【0057】
〔第5態様〕
第5態様は、第1態様~第4態様の何れかの構成を備え、且つ、冷媒を冷却する冷却器を備え、前記ポンプが、前記冷媒貯留部内の冷媒を吸引して吐出し、前記ハウジングが、前記ポンプから吐出された冷媒を前記主流路に向けて送るための送り流路を備え、前記冷却器が、前記送り流路から送られてくる冷媒を受け入れて前記主流路に向けて吐出することを特徴とする回転機である。
【0058】
第5態様によれば、冷却器によって冷却した直後の冷媒を、ステータに付着させて冷却効率を高めることができる。
【0059】
〔第6態様〕
第6態様は、第1態様~第5態様の何れかの構成を備え、且つ、前記下流路が、前記ハウジングとは別体の管材によって構成されることを特徴とする回転機である。
【0060】
第6態様によれば、管材内の冷媒を空冷によって冷却してステータ及びロータの冷却効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・モータ(回転機)、 3・・・ハウジング、 3a・・・オイル貯留部(冷媒貯留部)、 3b・・・主流路、 3b1:フロント側吐出孔(主吐出孔)、 3c:フロント側副流路、 3c1:吐出口、 3m・・・分岐孔、 3n・・・副吐出孔、 3k1・・・第1送り流路、 3k2・・・第2送り流路、 3k3・・・第3送り流路、 3k4・・・第4送り流路、 60・・・ゴム管(管材)、 60a・・・下流路、 80・・・電動オイルポンプ(ポンプ)、 90・・・オイルクーラ(冷却器)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記テータの中空内に配置される回転可能なロータと、前記ステータ及び前記ロータを収容空間内に収容するハウジングと、冷媒を吸引及び吐出するポンプとを備え、
前記ハウジングが、前記ポンプから吐出された冷媒を受け入れる流路を備え、
前記流路が、記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する吐出孔を備える回転機であって、
前記流路としての主流路よりも下流側で冷媒を流す下流路を備え、
前記主流路が、前記ロータの回転軸線方向に向けて延び、
前記ハウジングが、前記収容空間に連通し、且つ前記収容空間よりも径方向の外側で冷媒を貯留する冷媒貯留部と、前記主流路から分岐する分岐孔と、前記吐出孔としての主吐出孔よりも前記冷媒貯留部に近い位置で前記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する副吐出孔とを備え、
前記主吐出孔として、前記主流路における前記回転軸線方向のフロント側端部に連通するフロント側吐出孔と、前記主流路における前記回転軸線方向のリア側端部に連通するリア側吐出孔と、前記主流路の前記回転軸線方向における前記フロント側吐出孔と前記リア側吐出孔との中間部に連通する中間吐出孔とが設けられ、
前記副吐出孔が、前記回転軸線方向における前記フロント側吐出孔と前記リア側吐出孔との中間位置に設けられ、
前記下流路の一端側が前記分岐孔に連通し、
前記下流路の他端側が前記副吐出孔に連通する
ことを特徴とする回転機。
【請求項2】
前記分岐孔の径が、前記主流路の径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の回転機。
【請求項3】
前記副吐出孔が、前記回転軸線を中心にして前記主吐出孔よりも90〔°〕ずれた位置にある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転機。
【請求項4】
前記ハウジングが、前記ロータの回転軸線方向に延びる底面を備え、
前記主吐出孔が、前記収容空間における最も高い位置に連通する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転機。
【請求項5】
冷媒を冷却する冷却器を備え、
前記ポンプが、前記冷媒貯留部内の冷媒を吸引して吐出し、
前記ハウジングが、前記ポンプから吐出された冷媒を前記主流路に向けて送るための送り流路を備え、
前記冷却器が、前記送り流路から送られてくる冷媒を受け入れて前記主流路に向けて吐出する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の回転機。
【請求項6】
前記下流路が、前記ハウジングとは別体の管材によって構成される
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一態様は、ステータと、前記テータの中空内に配置される回転可能なロータと、前記ステータ及び前記ロータを収容空間内に収容するハウジングと、冷媒を吸引及び吐出するポンプとを備え、前記ハウジングが、前記ポンプから吐出された冷媒を受け入れる流路を備え、前記流路が、記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する吐出孔を備える回転機であって、前記流路としての主流路よりも下流側で冷媒を流す下流路を備え、前記主流路が、前記ロータの回転軸線方向に向けて延び、
前記ハウジングが、前記収容空間に連通し、且つ前記収容空間よりも径方向の外側で冷媒を貯留する冷媒貯留部と、前記主流路から分岐する分岐孔と、前記吐出孔としての主吐出孔よりも前記冷媒貯留部に近い位置で前記収容空間内の前記ステータに向けて冷媒を吐出する副吐出孔とを備え、前記主吐出孔として、前記主流路における前記回転軸線方向のフロント側端部に連通するフロント側吐出孔と、前記主流路における前記回転軸線方向のリア側端部に連通するリア側吐出孔と、前記主流路の前記回転軸線方向における前記フロント側吐出孔と前記リア側吐出孔との中間部に連通する中間吐出孔とが設けられ、前記副吐出孔が、前記回転軸線方向における前記フロント側吐出孔と前記リア側吐出孔との中間位置に設けられ、前記下流路の一端側が前記分岐孔に連通し、前記下流路の他端側が前記副吐出孔に連通することを特徴とするものである。