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  • 特開-水槽装置及び液体循環方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129660
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】水槽装置及び液体循環方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220830BHJP
   C12N 1/12 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12M1/00 D
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028429
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】516039398
【氏名又は名称】中嶋 智也
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 智也
(72)【発明者】
【氏名】植田 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】大橋 弘明
(72)【発明者】
【氏名】酒井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】河野 真恵加
(72)【発明者】
【氏名】河村 大樹
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029BB12
4B029CC01
4B029DB17
4B029DF05
4B065AA83X
4B065AC09
4B065BC08
4B065CA54
(57)【要約】
【課題】収容される液体の流れを均一化することが可能な水槽装置を提供する。
【解決手段】液体を収容可能な成育領域R1と、当該成育領域R1と区画され、成育領域R1から越流する液体を貯留可能な貯留領域R2とを有する水槽を備えた水槽装置であって、貯留領域R2から液体を回収し、成育領域R1側に循環させるポンプ14と、ポンプ14の排出側と管路を介して接続され、当該管路の管径よりも大きな断面積を有するチャンバー24と、チャンバー24と成育領域R1間に接続され、チャンバー24側から供給される液体を成育領域R1の範囲に形成された複数の孔から排出する供給管26aとを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な成育領域と、当該成育領域と区画され、前記成育領域から越流する液体を貯留可能な貯留領域とを有する水槽を備えた水槽装置であって、
前記貯留領域から液体を回収し、前記成育領域側に循環させるポンプと、
前記ポンプの排出側と管路を介して接続され、当該管路の管径よりも大きな断面積を有するチャンバーと、
前記チャンバーと前記成育領域間に接続され、チャンバー側から供給される液体を成育領域の範囲に形成された複数の孔から排出する供給管と、
を備えたことを特徴とする水槽装置。
【請求項2】
前記成育領域における前記供給管の上部に前記成育領域の底面積と実質的に等しい開口率を有する多孔板を設けたことを特徴とする請求項1記載の水槽装置。
【請求項3】
液体を収容可能な成育領域と、当該成育領域と区画され、前記成育領域から越流する液体を貯留可能な貯留領域とを有する水槽における液体循環方法であって、
ポンプの駆動により前記貯留領域から回収した液体を、当該ポンプの排出側の管路の管径よりも大きな断面積を有するチャンバー内を経由させ、
前記チャンバー内の液体を前記成育領域の下部に設けられた複数の孔を介して当該成育領域内に供給することを特徴とする液体循環方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物の飼育や培養に好適な水槽に関し、特に液中の水流変化を抑制可能な水槽装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食用、或いは所謂バイオマス資源として藻類等の植物を培養するための施設や装置の開発が盛んに行われている。このような装置の一例として特許文献には、培養液をタワー型の水槽内において攪拌しながら、培養液内の藻類の光合成を促進し、以て藻類を培養する閉鎖型のフォトバイオリアクターが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-10号公報
【発明の概要】
【0004】
上記構成からなる水槽内には、培養を促進するための二酸化炭素を含んだ気体や新規な培養液が供給されることから、水槽を上下方向に循環する水流が発生しており、槽内全体で見ると、流れの不均一が生じ易く、例えば上記主たる水流以外の領域では流れが停滞した淀み領域が生じる。そして、当該淀み領域には、培養の対象たる藻類や他の植物等が堆積し易く、意図せぬ細菌や糸状藻類が発生し易くなると言う欠点がある。また、例えば熱帯魚等を飼育するための水槽においては、水槽内から揚水した飼育水を水槽上部に架設された濾過装置で濾過した後に、液面に向けて放水するのが一般的であるが、このような構成であっても、水槽内には局所的な水流が発生し、他の領域が淀み領域となるため、水槽内壁の汚れの付着等、動植物の飼育環境に悪影響を及ぼす。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、収容される液体の流れを均一化することが可能な水槽装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係る構成として、液体を収容可能な成育領域と、当該成育領域と区画され、成育領域から越流する液体を貯留可能な貯留領域とを有する水槽を備えた水槽装置であって、貯留領域から液体を回収し、成育領域側に循環させるポンプと、ポンプの排出側と管路を介して接続され、当該管路の管径よりも大きな断面積を有するチャンバーと、チャンバーと成育領域間に接続され、チャンバー側から供給される液体を成育領域の範囲に形成された複数の孔から排出する供給管とを備えた構成とした。
また、他の構成として、成育領域における供給管の上部に成育領域の底面積と実質的に等しい開口率を有する多孔板を設けた構成とした。
また、他の形態として、液体を収容可能な成育領域と、当該成育領域と区画され、前記成育領域から越流する液体を貯留可能な貯留領域とを有する水槽における液体循環方法であって、ポンプの駆動により貯留領域から回収した液体を、当該ポンプの排出側の管路の管径よりも大きな断面積を有するチャンバー内を経由させ、チャンバー内の液体を成育領域の下部に設けられた複数の孔を介して当該成育領域内に供給する形態とした。
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。また、以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成又は工程をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る水槽装置の全体構造を示す概要斜視図である。
図2】整流部の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明に係る水槽装置1の概要斜視図である。また、図2は水槽装置1の概要断面図である。各図に示すように、水槽装置1は、動植物の培養,飼育等に必要な液体(培養液,飼育液)を収容可能な水槽本体3と、水槽本体3から液体を回収する回収機構10と、回収機構10によって回収された液体を再び水槽本体3内に供給する整流部20とを主たる構成とする。液体は、水槽本体3の壁面に図外の治具を介して取り付けられたポンプ14の駆動によって水槽本体3、回収機構10及び整流部20を循環する。
【0009】
[水槽本体について]
水槽本体3は、例えばガラスやアクリル樹脂、ステンレス等からなる上方開放の箱型状である。水槽本体3は、培養,飼育の対象となる動植物が液体と共に収容される成育領域R1と、成育領域R1からオーバーフローした液体が一時的に貯留される貯留領域R2とを有する。同図に示すように、成育領域R1は、水槽本体3の前壁3aの内面において互いに側方に離間して設けられた区画壁5a;5bと、当該区画壁5a;5b間に渡って延在する薄板状の仕切板7とにより区画された縦長な領域である。また、成育領域R1は、断面横長の矩形状とされており、そのアスペクト比をある程度大きく設定するのが好ましい。
【0010】
詳細にはついては後述するが、上記成育領域R1には、下方に配設された複数の供給管26a~26cを通じて常時液体が供給される。当該成育領域R1の容積を超えた液体は、貯留領域R2に向けて越流することとなる。また、液体が越流する仕切板7の上端面7aは、水平面として形成される。液体が越流する出口としての仕切板7の上端面7aをこのような構成とすることにより、成育領域R1の出口における影響がなくなるため、流れの不均一性、及び成育領域R1内の圧力変動を抑制することができる。
【0011】
成育領域R1からオーバーフローした液体は、貯留領域R2に一時的に貯留される。貯留領域R2は、水槽本体3の側壁3b;3cと後壁3d及び、区画壁5a;5及び薄板状の仕切板7の後面によって区画された領域である。当該貯留領域R2の底部には、水槽本体3の幅方向に沿って横長な箱状体である後述のチャンバー24が配設される。また、チャンバー24の前面からは、複数の供給管26a~26cが仕切板7を突き抜けて成育領域R1に達するように設けられている。
【0012】
[回収機構について]
貯留領域R2に貯留された液体は、回収機構10としての揚水管12とポンプ14と排出管16とにより回収,再供給される。揚水管12は、一端がポンプ14の吸入側に接続され、他端が貯留領域R2内に貯留された液体を吸引可能な高さに位置するように設定される。ポンプ14の駆動によって、貯留領域R2内の液体が回収されると、回収された液体は、ポンプ14の排出側に接続された排出管16を介して所定の圧力によりチャンバー24内に導出される。排出管16は、一端がポンプ14の排出側に接続されると共に、他端側が貯留領域R2の底部に配設されたチャンバー24の上面24aに接続され、ポンプ14の駆動によって回収された液体がチャンバー24内に供給される。なお、他端側の接続位置は、チャンバー24の上面24aに限られない。
【0013】
[整流機構について]
整流部20は、チャンバー24と複数の供給管26a~26cと、成育領域R1の底面側に配設された整流格子28とを備える。チャンバー24は、幅方向に沿って横長な中空の箱状体であって、排出管16を介してポンプ14側から排出される液体を収容可能である。同図に示すように、チャンバー24は、貯留領域R2の幅方向寸法と対応する幅を有しており、排出管16の断面積との比較において大であることから、排出管16を通る液体の流速がチャンバー24内において大幅に減速されると共に、チャンバー24内における流速のバラツキが均一化されることとなる。
【0014】
チャンバー24内において減速、均一化された液体は、複数の供給管26a~26cを介して成育領域R1内に供給される。供給管26a~26cは、成育領域R1の幅寸法に対して均等な間隔を有して配設されており、一端がチャンバー24の前面に接続され、他端が仕切板7を貫通して成育領域R1の下部に到達する。なお、複数の供給管26a~26cの配列はこれに限られず、例えば成育領域R1の高さ寸法に対して均等な間隔で配設しても良い。また、供給管を単数とすることや4本以上配設しても良い。
【0015】
図2に特に示すように、供給管26a~26cの延長長さにおける仕切板7から成育領域R1に達する範囲には、微小な円孔27が長さ方向及び円周方向に渡って均等に穿設されている。このように、供給管26a~26cを介して供給される液体は、成育領域R1の下部において多数の円孔27から流出することとなるため、成育領域R1の下部全域において、流速が減速し、均質化された液体が成育領域R1の上部に向けて供給されることとなる。
【0016】
図2に示すように、成育領域R1における供給管26a~26cの上部には、選択的に配設可能な整流格子28が成育領域R1の底面の大きさと対応するように平行に架設されている。整流格子28は、アルミやステンレスからなる矩形状の所謂パンチングメタルであって、その開口率は、成育領域R1の底面(断面積)と実質的に等しくなるように可能な限り大(例えば90%以上)であることが望ましい。当該整流格子28が供給管26a~26cの上部(下流側)に配設されることにより、多数の円孔27から流出して混流、均一化された液体が、成育領域R1の全域に渡ってより一層均一化された状態で上部に供給されることとなり、成育領域R1内における流速のバラつきを抑制でき、局所的な水流の発生による淀み領域の発生をより一層抑制することが可能となる。なお、上述の例では、整流格子28としてパンチングメタルを採用したが、これに限るものではなく、例えば金属や樹脂を格子状やハニカム状に加工した部材も採用可能である。
【0017】
また、上記水槽装置1を藻類や他の植物の培養に適用する場合には、例えば揚水管12から排出管16までの経路上に外部から二酸化炭素等の気体を供給可能な供給部を接続し、気体が混合された液体をチャンバー24内に送り込む構成としても良い。また、例えば熱帯魚等の動物飼育に適用する場合には、上記経路上に濾過機構と酸素等の気体を供給可能な供給部を接続しても良い。
そして、水槽装置1をこのように適用すれば、淀み領域の発生を抑制できるため、意図せぬ細菌や糸状藻類の発生、或いは、汚れの付着等、動植物の飼育環境を改善することが可能となる。
【0018】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0019】
1 水槽装置,3 水槽本体,10 回収機構,14 ポンプ 20 整流部,
24 チャンバー,26a~26c 供給管,28 整流格子
図1
図2