IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪化成株式会社の特許一覧

特開2022-129672害虫の忌避方法およびそれに用いる害虫忌避剤、並びにそれを用いた洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤
<>
  • 特開-害虫の忌避方法およびそれに用いる害虫忌避剤、並びにそれを用いた洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤 図1
  • 特開-害虫の忌避方法およびそれに用いる害虫忌避剤、並びにそれを用いた洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129672
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】害虫の忌避方法およびそれに用いる害虫忌避剤、並びにそれを用いた洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤
(51)【国際特許分類】
   A01P 17/00 20060101AFI20220830BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220830BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20220830BHJP
   A01N 31/16 20060101ALI20220830BHJP
   A01N 65/28 20090101ALI20220830BHJP
   A01N 65/24 20090101ALI20220830BHJP
   A01N 65/22 20090101ALI20220830BHJP
   A01N 65/08 20090101ALI20220830BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20220830BHJP
   A01N 65/10 20090101ALI20220830BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20220830BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A01P17/00
A01N25/02
A01N31/02
A01N31/16
A01N65/28
A01N65/24
A01N65/22
A01N65/08
A01N37/02
A01N65/10
C11D3/50
C11D3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028447
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000205432
【氏名又は名称】大阪化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】山神 安令
【テーマコード(参考)】
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4H003AC12
4H003EB02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB09
4H003EB11
4H003ED02
4H003FA26
4H003FA33
4H003FA34
4H011AC05
4H011AC06
4H011BA01
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB22
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC19
4H011DA13
4H011DA14
4H011DD01
4H011DH03
(57)【要約】
【課題】衣料等が濡れている間だけ、害虫に対して優れた忌避効果を発揮する害虫の忌避方法およびそれに用いる害虫忌避剤、それを用いた洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤を提供する。
【解決手段】対象となる害虫を忌避しうる揮発性の害虫忌避成分を含有する害虫忌避剤を、水とともに繊維構造物に付与して繊維構造物を湿潤化させた後、上記湿潤化された繊維構造物から水とともに上記害虫忌避成分を揮発させながら害虫を忌避するようにした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫を忌避する方法であって、対象となる害虫を忌避しうる揮発性の害虫忌避成分を含有する害虫忌避剤を、水とともに繊維構造物に付与して繊維構造物を湿潤化させた後、上記湿潤化された繊維構造物から水とともに上記害虫忌避成分を揮発させながら害虫を忌避するようにしたことを特徴とする害虫の忌避方法。
【請求項2】
上記繊維構造物の湿潤化が、繊維構造物を洗濯することによって行われるものであり、上記害虫忌避剤が、洗浄液もしくはすすぎ液の一部として繊維構造物に提供されるようになっている請求項1記載の害虫の忌避方法。
【請求項3】
上記揮発性の害虫忌避成分が、精油成分およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の成分である請求項1または2記載の害虫の忌避方法。
【請求項4】
上記精油成分が、モノテルペン炭化水素類、セスキテルペン炭化水素類、モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、ジテルペンアルコール類、テルペン系アルデヒド類、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、ケトン類、エステル類、フェニルプロパノイド類、オキシド類、ラクトン類のいずれか、もしくはそのいずれかを含有する植物精油である請求項3記載の害虫の忌避方法。
【請求項5】
上記精油成分が、ゲラニオール、オイゲノール、そのいずれかの誘導体、そのいずれかを含有する植物精油からなる群から選択される少なくとも一種の成分である請求項4記載の害虫の忌避方法。
【請求項6】
上記害虫忌避剤における害虫忌避成分を、繊維構造物の乾燥繊維重量に対し0.005~0.1重量%の割合で付与するようにした請求項1~5のいずれか一項に記載の害虫の忌避方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の害虫の忌避方法に用いられる害虫忌避剤であって、対象となる害虫を忌避しうる揮発性の害虫忌避成分(a)、界面活性剤(b)および安定化剤(c)を含有することを特徴とする害虫忌避剤。
【請求項8】
上記害虫忌避剤が、繊維構造物の洗濯時に、洗浄液もしくはすすぎ液の一部として繊維構造物に提供される液剤であり、下記の(a)~(d)成分を含有するものである請求項7記載の害虫忌避剤。
(a)害虫忌避成分 0.1~5重量%
(b)界面活性剤 0.1~20重量%
(c)安定化剤 1~20重量%
(d)水
【請求項9】
上記害虫忌避剤が、洗浄液もしくはすすぎ液の水量に対して、0.01~0.2重量%の濃度に希釈された状態で繊維構造物に提供されるものである請求項8記載の害虫忌避剤。
【請求項10】
上記揮発性の害虫忌避成分が、精油成分およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の成分である請求項7~9のいずれか一項に記載の害虫忌避剤。
【請求項11】
上記精油成分が、モノテルペン炭化水素類、セスキテルペン炭化水素類、モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、ジテルペンアルコール類、テルペン系アルデヒド類、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、ケトン類、エステル類、フェニルプロパノイド類、オキシド類、ラクトン類のいずれか、もしくはそのいずれかを含有する植物精油である請求項10記載の害虫忌避剤。
【請求項12】
上記精油成分が、ゲラニオール、オイゲノール、そのいずれかの誘導体、そのいずれかを含有する植物精油からなる群から選択される少なくとも一種の成分である請求項11記載の害虫忌避剤。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか一項に記載の害虫忌避剤を含むことを特徴とする洗濯洗剤。
【請求項14】
請求項7~12のいずれか一項に記載の害虫忌避剤を含むことを特徴とする洗濯仕上げ剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメムシ等の害虫の忌避方法およびそれに用いる害虫忌避剤、並びにそれを用いた洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に干した洗濯物にカメムシやハチ、ハエ等の虫が付いて、洗濯物を取り込む際や屋内に取り込んだ後に、洗濯物の間から虫が出てきて騒動となることがある。これらの虫は、異臭を放ったり、人を刺したり、病原菌を拡散させたりして、人に悪影響を及ぼすおそれがあるため、「害虫」として駆除や忌避の対象となっている。
【0003】
これらの害虫は、濡れた洗濯物に付きやすいことが一般によく知られている。その理由は必ずしもはっきりしないが、(1)日中、日差しのなかで活動する虫が水分を求めして濡れた洗濯物に寄ってくる、(2)暑い日に、濡れた洗濯物の気化熱による涼しさを求めて寄ってくる、(3)洗濯洗剤や柔軟仕上げ剤に使用されている薬剤の臭いが虫にとって好ましく感じられる、等の理由が考えられている。
【0004】
上記害虫を排除するための対抗手段としては、これらの害虫が嫌う臭いを発散する害虫忌避剤を、洗濯物の近く、例えば物干し竿につり下げる方法や、害虫を見かけたら、害虫駆除剤を直接害虫に吹きかける方法等があるが、手間がかかるわりに、充分な効果を奏しているとはいえない。
【0005】
ところで、洋服タンスやクローゼット、衣装ケース等に収納する衣料に対して、防虫成分を徐々に揮発させる防虫剤を一緒に収納して、繊維を傷める虫から衣料を守ることが古くから行われている。
【0006】
このような防虫剤から揮発する防虫成分は、人体にも何らかの影響を及ぼすのではないか、との懸念から、防虫成分を含む洗剤を用いて衣料を洗濯し、衣料自体に防虫成分を付着させて、その揮発を抑制しつつ防虫効果をもたせることが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-195544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、カメムシ等の害虫に対する忌避剤については、洗濯物が濡れているときに生じやすい問題であることから、わざわざ忌避剤を配合した洗剤を用いて衣料自体に忌避剤を付着させることは、全く想定されておらず、そのようなものは市場に出回っていないのが実情である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、カメムシ等の害虫に対する忌避剤を、洗濯行為を利用する等して水とともに衣料等に付与し、衣料等が乾燥するにつれて、忌避剤の忌避成分を水分とともに揮発させることにより、衣料等が濡れている間だけ、害虫に対して優れた忌避効果を発揮する害虫の忌避方法と、それに用いる害虫忌避剤、さらにはそれを用いた洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤の提供を、その目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、害虫を忌避する方法であって、対象となる害虫を忌避しうる揮発性の害虫忌避成分を含有する害虫忌避剤を、水とともに繊維構造物に付与して繊維構造物を湿潤化させた後、上記湿潤化された繊維構造物から水とともに上記害虫忌避成分を揮発させながら害虫を忌避するようにした害虫の忌避方法を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記繊維構造物の湿潤化が、繊維構造物を洗濯することによって行われるものであり、上記害虫忌避剤が、洗浄液もしくはすすぎ液の一部として繊維構造物に提供されるようになっている害虫の忌避方法を第2の要旨とする。
【0012】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記揮発性の害虫忌避成分が、精油成分およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の成分である害虫の忌避方法を第3の要旨とする。
【0013】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記精油成分が、モノテルペン炭化水素類、セスキテルペン炭化水素類、モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、ジテルペンアルコール類、テルペン系アルデヒド類、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、ケトン類、エステル類、フェニルプロパノイド類、オキシド類、ラクトン類のいずれか、もしくはそのいずれかを含有する植物精油である害虫の忌避方法を第4の要旨とし、特に、上記精油成分が、ゲラニオール、オイゲノール、そのいずれかの誘導体、そのいずれかを含有する植物精油からなる群から選択される少なくとも一種の成分である害虫の忌避方法を第5の要旨とする。
【0014】
また、本発明は、それらのなかでも、特に、上記害虫忌避剤における害虫忌避成分を、繊維構造物の乾燥繊維重量に対し0.005~0.1重量%の割合で付与するようにした害虫の忌避方法を第6の要旨とする。
【0015】
さらに、本発明は、上記第1~第6のいずれかの要旨である害虫の忌避方法に用いられる害虫忌避剤であって、対象となる害虫を忌避しうる揮発性の害虫忌避成分(a)、界面活性剤(b)および安定化剤(c)を含有する害虫忌避剤を第7の要旨とする。
【0016】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記害虫忌避剤が、繊維構造物の洗濯時に、洗浄液もしくはすすぎ液の一部として繊維構造物に提供される液剤であり、下記の(a)~(d)成分を含有するものである害虫忌避剤を第8の要旨とする。
(a)害虫忌避成分 0.1~5重量%
(b)界面活性剤 0.1~20重量%
(c)安定化剤 1~20重量%
(d)水
【0017】
さらに、本発明は、そのなかでも、特に、上記害虫忌避剤が、洗浄液もしくはすすぎ液の水量に対して、0.01~0.2重量%の濃度に希釈された状態で繊維構造物に提供されるものである害虫忌避剤を第9の要旨とする。
【0018】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記揮発性の害虫忌避成分が、精油成分およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の成分である害虫忌避剤を第10の要旨とする。
【0019】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記精油成分が、モノテルペン炭化水素類、セスキテルペン炭化水素類、モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、ジテルペンアルコール類、テルペン系アルデヒド類、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、ケトン類、エステル類、フェニルプロパノイド類、オキシド類、ラクトン類のいずれか、もしくはそのいずれかを含有する植物精油である害虫忌避剤を第11の要旨とし、特に、上記精油成分が、ゲラニオール、オイゲノール、そのいずれかの誘導体、そのいずれかを含有する植物精油からなる群から選択される少なくとも一種の成分である害虫忌避剤を第12の要旨とする。
【0020】
そして、本発明は、上記第7~第12のいずれかの要旨である害虫忌避剤を含む洗濯洗剤を第13の要旨とし、同じく洗濯仕上げ剤を第14の要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
すなわち、本発明の害虫の忌避方法は、所定の害虫忌避剤を水とともに繊維構造物に付与して濡らした後、上記繊維構造物から水とともに上記害虫忌避剤の害虫忌避成分を揮発させながら害虫を忌避するようにしたものである。
【0022】
この忌避方法によれば、濡れた洗濯物等に寄ってくる害虫を、簡単かつ効果的に忌避することができる。しかも、水分の乾燥とともに、用いた害虫忌避剤の害虫忌避成分が揮発していくため、乾燥した繊維構造物に害虫忌避成分の臭いがいつまでも残留せず、違和感なく使用することができるという利点を有する。
【0023】
なお、本発明において、「繊維構造物に害虫忌避成分が残留しない」とは、平均的な嗅覚を有する人間が、乾燥後の繊維構造物の臭いを嗅いでも害虫忌避剤の害虫忌避成分の臭いを感知しない状態をいい、例えば7名のモニターに、下記の6段階で臭いの有無を評価させ、その過半数以上の者が「0」と評価したものを「臭いが残留しない」状態とする。
0:無臭
1:かろうじて何らかの臭いを感知できる程度の臭い
2:弱い臭いであるが、何の臭いであるかがわかる程度の臭い
3:すぐに何の臭いであるかわかる状態で感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
【0024】
また、本発明において、繊維構造物が「乾燥した状態」とは、繊維構造物の乾燥前の重量を1として、乾燥後の重量が1±0.01以内であることをいう。
【0025】
そして、本発明の害虫の忌避方法のなかでも、特に、上記繊維構造物の湿潤化が、繊維構造物を洗濯することによって行われるものであり、上記害虫忌避剤が、洗浄液もしくはすすぎ液の一部として繊維構造物に提供されるようになっているものは、衣料の洗濯、という日常的な行為によって、洗濯物を干している間、簡単かつ効果的に害虫を忌避することかでき、好適である。
【0026】
また、そのなかでも、特に、上記揮発性の害虫忌避成分が、精油成分およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の成分であるもの、そして、特に、上記精油成分が、モノテルペン炭化水素類、セスキテルペン炭化水素類、モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、ジテルペンアルコール類、テルペン系アルデヒド類、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、ケトン類、エステル類、フェニルプロパノイド類、オキシド類、ラクトン類のいずれか、もしくはそのいずれかを含有する植物精油であるもの、さらに、特に、上記精油成分が、ゲラニオール、オイゲノール、そのいずれかの誘導体、そのいずれかを含有する植物精油からなる群から選択される少なくとも一種の成分であるものは、とりわけ、害虫に対する優れた忌避効果と適度な揮発性を備えており、好適である。
【0027】
さらに、それらのなかでも、特に、上記害虫忌避剤における害虫忌避成分を、繊維構造物の乾燥繊維重量に対し0.005~0.1重量%の割合で付与するようにしたものは、害虫に対する忌避効果が小さすぎず過剰すぎず適度なものとなり、好適である。
【0028】
そして、本発明の害虫忌避剤は、本発明の、上記害虫の忌避方法に用いられるものであり、害虫を忌避しうる揮発性の害虫忌避成分(a)、界面活性剤(b)および安定化剤(c)を含有し、繊維構造物に付着しやすく、かつ経時的に上記害虫忌避成分(a)が揮発して、いつまでも繊維構造物に残留することがない、という優れた特性を備えたものである。
【0029】
上記害虫忌避剤によれば、繊維構造物が濡れている間、害虫に対して優れた忌避効果を奏することができる。そして、この害虫忌避剤は、水とともに揮発するため、衣料等に臭いが残らず、気にならないという利点を有する。
【0030】
そして、上記害虫忌避剤のなかでも、特に、上記害虫忌避剤が繊維構造物の洗濯時に、洗浄液もしくはすすぎ液の一部として繊維構造物に提供される液剤であり、前記の(a)~(d)成分を、特定の割合で含有するものであると、より優れた忌避効果を発揮するとともに、臭い残りがなく、好適である。
【0031】
また、そのなかでも、特に、上記害虫忌避剤が、洗浄液もしくはすすぎ液の水量に対して、0.01~0.2重量%の濃度に希釈された状態で繊維構造物に提供されるものであると、繊維構造物に対する洗浄効果やすすぎ効果を損なうことなく、優れた害虫忌避効果を付与することができ、好適である。
【0032】
さらに、それらのなかでも、特に、上記害虫忌避成分(a)が、前述のとおり特定のものであると、とりわけ忌避効果に優れ、しかも人体に対して悪影響を及ぼすことがないものとなるため、安心して使用することができ、好適である。
【0033】
そして、本発明の洗濯洗剤および洗濯仕上げ剤によれば、衣料等を洗濯する際、洗濯洗剤や洗濯仕上げ剤とは別に上記害虫忌避剤を投入する必要がなく、手軽に、洗濯物に害虫忌避効果を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の害虫の忌避方法の一例を示す模式的な説明図である。
図2】(a)、(b)は、ともに実施例において行った害虫忌避性能の評価試験の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
つぎに、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限られるものではない。
【0036】
まず、本発明が忌避の対象とする害虫は、洗濯物やその周辺に生息、飛来する昆虫類全般のことを指し、特に限定されるものではない。例えば、カメムシ、ハチ、蚊、ユスリカ、ハエ、コバエ、ゴキブリ、テントウムシ、ガ、ケムシ、アリ、クモ、アブラムシ、ウンカ、ヨコバイ、ダニ、カゲロウ、トビケラ、カワゲラ、甲虫、ガガンボ等があげられる。なかでもカメムシ類は、洗濯物に付いてじっとしていることが多く、不意に手に当たったり誤ってつまんだりすると、強烈な臭いを発してその臭いが洗濯物や指先から落ちにくいことから、忌避すべき虫の筆頭である。
【0037】
本発明の害虫の忌避方法は、このような害虫に対して、以下のようにして忌避することを特徴とするものである。すなわち、対象となる害虫を忌避しうる揮発性の害虫忌避成分を含有する害虫忌避剤を、水とともに繊維構造物に付与して繊維構造物を湿潤化させた後、上記湿潤化された繊維構造物から水とともに上記害虫忌避成分を揮発させながら害虫を忌避することを特徴とする。
【0038】
上記忌避方法に用いられる、揮発性の害虫忌避成分を含有する害虫忌避剤は、水とともに害虫忌避成分を付与しうるものであればよく、通常、害虫忌避成分を水や、水と相溶性を有する有機溶剤、あるいはそれらの混合液に溶解もしくは分散させた液剤として調製されたものが好適に用いられるが、場合によっては、粉粒体やタブレット等の、易溶性の固形剤として調製されたものであってもよい。また、液剤を水溶性フィルムに少量ずつ個包した、いわゆるジェルボール(登録商標)タイプの剤として調製されたものであってもよい。
【0039】
上記害虫忌避剤に用いられる、揮発性の害虫忌避成分としては、対象とする害虫に応じて適宜選択されるが、例えば、害虫に対して忌避効果があることが知られている各種の害虫忌避成分を用いることができる。ただし、繊維構造物に直接付与するものであり、その付与作業に、通常、人が関与することから、繊維を傷めることがなく、人体にも悪影響を及ぼすことのない、安全な物質であることが重要である。
【0040】
このような害虫忌避成分としては、天然由来の精油成分やその誘導体、あるいはこれに類する合成成分が好適に用いられる。そして、人体への安全性を考慮して、天然由来の精油成分がとりわけ好適に用いられる。
【0041】
上記天然由来の精油成分としては、モノテルペン炭化水素類、セスキテルペン炭化水素類、モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、ジテルペンアルコール類、テルペン系アルデヒド類、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、ケトン類、エステル類、フェニルプロパノイド類、オキシド類、ラクトン類のいずれか、もしくはそのいずれかを含有する植物精油が、害虫に対する優れた忌避効果と適度な揮発性を備えており、好適である。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記精油成分をより詳しく説明する。まず、上記モノテルペン炭化水素類としては、リモネン、δ-3-カレン、γ-テルピネン、α-ピネン等があげられ、上記セスキテルペン炭化水素類としては、カマズレン等があげられる。また、上記モノテルペンアルコール類としては、ゲラニオール、シトロネロール、テルピネン-4-オール、ネロール、メントール、チモール、ラバンジュロール、リナロール等があげられる。そして、上記セスキテルペンアルコール類としては、サンタロール、ネロリドール、ビサボロール等があげられ、上記ジテルペンアルコール類としては、スクラレオール等があげられる。また、上記テルペン系アルデヒド類としては、シトラール、シトロネラール等があげられ、上記芳香族アルコール類としては、フェネチルアルコール等があげられ、上記芳香族アルデヒド類としては、クミンアルデヒド等があげられる。さらに、上記ケトン類としては、カンファー、ツヨン、メントン等があげられ、上記エステル類としては、リナリルアセテート、ゲラニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルアセテート等があげられる。そして、上記フェニルプロパノイド類としては、クマル酸、ケイ皮酸、コーヒー酸(3,4-ジヒドロキシケイ皮酸)、オイゲノール、アネトール、コニフェリルアルコール、シナピルアルコール、フェルラ酸、セサミン、ポドフィロトキシン、リグナン、リグニン等があげられ、上記オキシド類としては、1,8-シネオールがあげられ、上記ラクトン類としては、フロクマリン類等があげられる。
【0043】
つぎに、これらの精油成分を含有する植物精油としては、例えば以下に示すものがあげられる。まず、ヒノキ科植物体の精油としては、例えばヒノキ油、シーダー油、レッドシーダー油、ビャクシン油、アスナロ油、イトスギ油、クロベ油、ヒバ油等があげられる。また、マツ科植物体の精油としては、例えばアビエス油、テレピン油、米松油等があげられる。スギ科植物体の精油としては、例えばスギ油等があげられる。クスノキ科植物体の精油としては、例えば樟脳油、芳樟、サッサフラス油等があげられる。ミカン科植物体の精油としては、例えばレモン油、橙油、ベルガンモット油等があげられる。ニクズク科植物体の精油としては、例えばナツメグ油等があげられる。フウロソウ科植物体の精油としては、例えばゼラニウム油等があげられる。セリ科植物体の精油としては、例えばコリアンダー油等があげられる。フトモモ科植物体の精油としては、例えば丁子油、ユーカリ油等があげられる。シソ科植物体の精油としては、例えばハッカ油、オレガノ油、スペアミント油、タイム油、ラベンダー油等があげられる。
【0044】
上記精油成分のなかでも、特に、ゲラニオール、オイゲノール、そのいずれかの誘導体、そのいずれかを含有する植物精油は、カメムシ等に対して忌避効果が高く、より好適である。
【0045】
そして、上記害虫忌避成分を含有する害虫忌避剤は、水とともに繊維構造物に付与するために、すでに述べたように、通常、上記害虫忌避成分を水に溶解、分散させた液体として調製することが好適である。また、液剤とする場合、水とともに有機溶剤を用いることもできる。さらに、固形薬剤の賦形に一般的に用いられる水溶性賦形剤を用いて、上記害虫忌避成分を含有するタブレット状や顆粒状の害虫忌避剤とすることもできる。この場合は、使用の都度、上記害虫忌避剤を水もしくは水と有機溶剤の混合液に溶解して所定濃度に調製してから用いることが望ましい。
【0046】
上記害虫忌避剤を液体として調製するために、水とともに用いることのできる有機溶剤としては、水との相溶性に優れた、メタノール、エタノール、ジプロピレングリコール等があげられる。これらを用いる場合、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
また、上記害虫忌避剤をタブレット状や粉粒状の固形剤として調製する場合、そのために用いられる賦形剤としては、乳糖、デンプン、デキストリン、セルロース等があげられ、なかでも、水への溶けやすさ、コストの点で、デンプン、セルロースが好適である。
【0048】
上記害虫忌避剤を付与する繊維構造物としては、どのような繊維で構成されているものであってもよい。そして、構造物全体が繊維で構成されている必要はなく、少なくともその一部に繊維が用いられていればよい。
【0049】
このような繊維構造物としては、繊維、糸、編物、織物、不織布等を用いた、各種の形態のものをあげることができる。具体的には、各種の衣料品の他、靴下,手袋,マフラー,帽子等の装身具、寝袋,テント,タープ等のアウトドア用品、寝装寝具、敷物、カーテン、インテリアファブリック、風呂敷、布製バッグ、包帯,ガーゼ,マスク等の衛生用品等があげられる。また、ぬいぐるみ等の玩具も対象とすることができる。
【0050】
そして、本発明において、上記繊維構造物に対して、水とともに上記害虫忌避剤を付与して繊維構造物を湿潤化させる方法としては、例えば下記の(1)~(3)の方法があげられる。なお、水とともに害虫忌避剤を付与する場合、両者は必ずして同時に付与する必要はなく、最終的に両者が繊維構造物に付与されて繊維構造物が湿潤化されていればよい。すなわち、以下に示すように、繊維構造物に対して一方を先に付与し、他方を後に付与することができる。
(1)繊維構造物を、水で希釈した害虫忌避剤含有液に浸漬するか、繊維構造物に対して上記害虫忌避剤含有液をスプレー等で振りかけるかして、繊維構造物を濡れた状態にする。
(2)繊維構造物を、水に浸漬するか、水を振りかけるかして、繊維構造物を濡れた状態にした後、害虫忌避剤もしくは害虫忌避剤含有液を繊維構造物にスプレー等で振りかける等して繊維構造物に付与する。
(3)繊維構造物を洗濯する際に、その洗浄液もしくはすすぎ液の一部として上記害虫忌避剤を用いて繊維構造物に付与する。
【0051】
本発明においては、すでに述べたとおり、湿潤化された繊維構造物を乾燥させる過程で、水とともに害虫忌避剤の害虫忌避成分を揮発させることが大きな特徴である。このため、繊維構造物に付与する害虫忌避成分の、繊維構造物に対する割合や、水に対する割合を適正にコントロールすることが重要である。
【0052】
したがって、繊維構造物を湿潤化する場合、上記コントロールがしやすい、上記(3)の、繊維構造物(衣料等)に対する洗濯行為を利用する方法を採用することが好適である。すなわち、家庭用の自動洗濯機では、通常、洗濯物の重量に応じて洗浄・すすぎに使用される水量がコントロールされており、洗濯洗剤や、柔軟仕上げ剤・香付剤等の洗濯仕上げ剤も、キャップを利用する等して、洗濯物の重量に応じた使用量を、概ね過不足のないように投入するようになっている。
【0053】
したがって、洗濯において、上記洗濯洗剤や洗濯仕上げ剤を用いる場合と同様の考え方で、繊維構造物に対して充分な害虫忌避効果があり、しかも水とともに揮発して繊維構造物が乾燥した後には繊維構造物に臭いが残留しない、適正な範囲の付与量となるように、自動洗濯機に害虫忌避剤を投入することが好適である。投入のタイミングは、洗浄からすすぎにいたる、どのタイミングであってもよいが、害虫忌避剤の害虫忌避成分が、繊維構造物に充分に付着した状態で取り出されることが必要である。
【0054】
このような、「繊維構造物に対して充分な害虫忌避効果があり、しかも水とともに揮発して繊維構造物が乾燥した後には繊維構造物に残留しない、害虫忌避成分の適正な付与量」は、繊維構造物の種類や害虫忌避成分の種類、害虫忌避剤に用いられる有機溶剤の有無等によって左右されるが、概ね、繊維構造物の乾燥繊維重量に対して、0.005~0.1重量%、なかでも、0.01~0.08重量%の割合に設定することが好適である。
【0055】
ちなみに、家庭で洗濯の際に、洗浄液もしくはすすぎ液の一部となるように、自動洗濯機に投入して用いる害虫忌避剤を想定した場合、例えば下記の(a)~(d)成分を含有する液剤として調製することが好適である。
(a)害虫忌避成分 0.1~5重量%
(b)界面活性剤 0.1~20重量%
(c)安定化剤 1~20重量%
(d)水
【0056】
そして、上記のように、害虫忌避剤を洗浄液もしくはすすぎ液の一部として用いる場合は、上記害虫忌避剤を、洗浄液もしくはすすぎ液の水量に対して、0.01~0.2重量%の濃度に希釈した状態で繊維構造物に提供することが好適である。
【0057】
上記害虫忌避成分(a)は、すでに述べたとおりのものが好適に用いられる。そして、その含有割合は、上記のとおり、害虫忌避剤全量に対して、0.1~5重量%であることが好ましく、なかでも、0.5~2重量%であることがとりわけ好ましい。
【0058】
すなわち、上記害虫忌避成分(a)が多すぎると、洗濯して干して繊維構造物(衣料等)が乾燥した後においても、繊維構造物に害虫忌避成分(a)が長く残留するおそれがあり、逆に、上記害虫忌避成分(a)が少なすぎると、繊維構造物が濡れている状態において、害虫を忌避する効果が不充分になるおそれがある。
【0059】
また、上記界面活性剤(b)は、水系における害虫忌避成分(a)の均一分散性を高めるもので、繊維構造物に均一に害虫忌避成分(a)を付着させる役割を果たす。このような界面活性剤(b)としては、各種の界面活性剤を用いることができるが、人体や環境への安全性と取り扱いやすさの点で、非イオン界面活性剤が好適である。
【0060】
上記非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェノールフェニルエーテル(APE)、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル等のエーテル系非イオン界面活性剤、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエステル系非イオン界面活性剤、エーテル・エステル系非イオン界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド系非イオン界面活性剤等があげられる。なかでも、エーテル系非イオン界面活性剤が好ましく、とりわけ、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテルが、上記害虫忌避成分(a)に対する分散安定化効果の点で、より好ましい。そして、これらの界面活性剤(b)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0061】
また、上記界面活性剤(b)として、アニオン界面活性剤を用いることもできる。上記アニオン界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム(石鹸)、アルファスルホン化脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、アルキル硫酸エステルナトリウム(AS)、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES)、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(AOS)等があげられる。これらも、単独で用いても2種以上を併用することができる。もちろん、これらのアニオン界面活性剤を上記非イオン界面活性剤と組み合わせて用いてもよい。
【0062】
さらに、上記界面活性剤(b)として、例えば繊維の柔軟仕上げ用に汎用されているカチオン界面活性剤を用いることもできる。上記カチオン界面活性剤としては、各種のアルキルアミン塩型カチオン界面活性剤や、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤をあげることができる。これらも、単独で用いても2種以上を併用してもよい。もちろん、これらのカチオン界面活性剤を上記非イオン界面活性剤やアニオン界面活性剤と組み合わせて用いてもよい。
【0063】
上記界面活性剤(b)の含有割合は、上記のとおり、害虫忌避剤全量に対して、0.1~20重量%であることが好ましく、なかでも、0.5~10重量%であることがとりわけ好ましい。
【0064】
すなわち、上記界面活性剤(b)が上記の範囲より多すぎたり少なすぎたりする場合、系のバランスを損なうおそれが生じたり、害虫忌避効果が充分に発揮されにくくなるおそれが生じる傾向がある。
【0065】
そして、上記界面活性剤(b)の、害虫忌避成分(a)に対する含有割合〔(b)/(a)〕は、重量基準で、1/2~5/1、なかでも、1/1~3/1に設定することが、上記界面活性剤(b)による効果をより発揮させる上で好適である。
【0066】
さらに、上記安定化剤(c)は、水中に分散する害虫忌避成分(b)をより安定的に維持する作用や可溶化作用を果たすものであり、クメンスルホン酸ナトリウム、塩化カルシウム、亜硫酸カリウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、ギ酸、クエン酸、p-トルエンスルホン酸、エタノールアミン、アルカノールアミン、水酸化ナトリウム、ブチルカルビトール、エチルアルコール、フェノキシエタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジブチルグリコール、ポリエチレングリコール、水添ヒマシ油、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジメチル、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等があげられる。なかでも、効果の点で、プロピレングリコール、セバシン酸ジイソプロピル、エチレングリコールモノフェニルエーテルが好適に用いられる。
【0067】
そして、上記安定化剤(c)の含有割合は、上記のとおり、害虫忌避剤全量に対して、1~20重量%であることが好ましく、なかでも、2~15重量%であることがとりわけ好ましい。
【0068】
すなわち、上記安定化剤(c)が上記の範囲より多すぎたり少なすぎたりする場合、系のバランスを損なうおそれが生じたり、害虫忌避効果が充分に発揮されにくくなるおそれが生じる傾向がある。
【0069】
また、上記安定化剤(c)の、害虫忌避成分(a)に対する含有割合〔(c)/(a)〕は、重量基準で、1/5~500/1、なかでも、1/1~100/1、とりわけ5/1~20/1に設定することが、系を安定化する上で好適である。
【0070】
そして、上記洗濯に用いる害虫忌避剤は、通常、上記(a)~(c)成分を必須成分とし、その残部が水(d)である液剤として調製することが好適であるが、上記必須成分(a)~(c)以外に、任意成分として、例えば、防腐剤(e)を入れることができる。
【0071】
上記防腐剤(e)としては、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、イソチアゾリノン、サリチル酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、カプリル酸グリセリル、カプリン酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、ビサボロール、メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン等があげられる。これらのなかでも、1,2-ベンゾイソチアゾリン-オン(BIT)、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、イソプロピルメチルフェノール等が好適に用いられる。
【0072】
上記防腐剤(e)を配合することにより、液剤の変質を防止し、上記害虫忌避成分(a)の害虫忌避効果を長く維持することができる。
【0073】
さらに、本発明の害虫忌避剤には、他の任意成分として、分散剤、金属封鎖剤、柔軟剤、乳白剤、酸化防止剤、pH調整剤、泡調整剤、再汚染防止剤、増粘剤、消泡剤、蛍光増白剤、酵素、着色剤、香料、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、消臭剤、繊維潤滑剤、風合い向上剤、ダニよけ成分、しわ防止剤、抗酸化剤等の他、一般的な防虫剤、殺虫剤および忌避剤を、必要に応じて配合することができる。
【0074】
このような害虫忌避剤を、洗浄液もしくはすすぎ液の一部として、従来の洗剤や柔軟仕上げ剤と同様にして投入して繊維構造物(衣料等)を洗濯した後、濡れた状態で物干し等に吊り下げて干すと、図1に模式的に示すように、濡れた洗濯物(繊維構造物)から、水と害虫忌避成分が徐々に揮発して、洗濯物が乾燥する。この間、洗濯物の表面や周囲には、害虫忌避成分が存在してカメムシ等の害虫に対して忌避効果を発揮するため、害虫が洗濯物に付くことがない。
【0075】
そして、水が完全に蒸発して洗濯物が乾燥すると、害虫忌避成分も揮発して洗濯物に残留しなくなり、それに伴って害虫忌避成分に由来する臭いもなくなって違和感のないものとなる。
【0076】
なお、「害虫忌避成分が洗濯物(繊維構造物)に残留していない状態」および「洗濯物(繊維構造物)が乾燥した状態」については、前述の定義のとおりである。
【0077】
また、繊維構造物を手洗いで洗浄する場合は、繊維構造物を浸漬する液中に、害虫忌避剤を投入すればよい。その場合、害虫忌避剤投入量の目安として、浸漬に用いる液量に対して使用する害虫忌避剤の量を提示しておくことが望ましい。例えば、「2~5リットルの水に対してキャップ目盛り○○までの量を投入」といった提示を行うことが好ましい。
【0078】
そして、本発明は、このような害虫忌避剤を、洗濯洗剤や洗濯仕上げ剤とは別に用いるだけでなく、予め洗濯洗剤や、柔軟仕上げ剤や香付剤等の洗濯仕上げ剤の一部として用いることができる。その場合、洗濯洗剤や洗濯仕上げ剤の洗濯性能や洗濯仕上げ性能を損なうことなく、その組成の一部を、本発明の害虫忌避剤の成分で置き換えることが好ましい。
【0079】
本発明の洗濯洗剤および洗濯仕上げ剤によれば、衣料等を洗濯する際、洗濯洗剤や洗濯仕上げ剤とは別に害虫忌避剤を投入する必要がなく、手軽に、洗濯物に害虫忌避効果を付与することができる。
【実施例0080】
つぎに、本発明の実施例を、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
[実施例1~21、比較例1~4]
まず、下記の害虫忌避成分(a)、界面活性剤(b)、安定化剤(c)、水(d)と、任意成分である防腐剤(e)を準備し、後記の表1、表2に従う組成となるよう各成分を配合して均一に撹拌混合することにより、実施例1~21品と、比較例1~4品となる25種類の害虫忌避剤を得た。
【0082】
<害虫忌避成分(a)>
・ゲラニオール(合成精油成分)
・オイゲノール(天然精油成分)
・クローブオイル(天然精油成分)
・サッサフラスオイル(天然精油成分)
・オレガノオイル(天然精油成分)
・フェンチルアルコール(天然精油成分)
・ナツメグオイル(天然精油成分)
・ゼラニウムオイル(天然精油成分)
・フェンチルアセテート(合成精油成分)
・コリアンダーオイル(天然精油成分)
・ゲラニルアセテート(天然精油成分)
・スペアミントオイル(天然精油成分)
・タイムオイル(天然精油成分)
・ラベンダーオイル(天然精油成分)
【0083】
<界面活性剤(b)>
・界面活性剤1:ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル(ユニオックスHC60、日油社製)
【0084】
<安定化剤(c)>
・安定化剤1:プロピレングリコール
【0085】
<防腐剤(e)>
・防腐剤:1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT、バックマンラボラトリー社製)
【0086】
このようにして得られた実施例1~21、比較例1~4の各害虫忌避剤に対し、害虫忌避性能、害虫忌避成分残留性の2項目について、以下の方法に従って評価した。
【0087】
<害虫忌避性能>
上記各害虫忌避剤を用い、下記の条件で試験的な洗濯を行い、洗濯後の濡れた布がマルカメムシに対して忌避効果を奏するか否かを評価した。
(1)洗濯条件(市販の柔軟仕上げ剤を用いた洗濯方法に準じる)
繊維構造物:綿金巾(綿100%、縦30cm×横50cm、布重量約14g)
害虫忌避剤量:0.1ミリリットル
害虫忌避剤希釈用水:200ミリリットル
害虫忌避剤希釈濃度:0.05重量%
害虫忌避剤の繊維構造物に対する比率:0.007重量%
すすぎ時間:5分
切り替え時間:3分
脱水時間:5分
脱水速度:1000rpm
(2)対照例
なお、上記の洗濯条件と全く同じ条件で、害虫忌避剤を用いずに洗濯を行い、「対照例」とした。
(3)害虫忌避性能の評価
上記の洗濯によって得られた、害虫忌避剤を含む濡れた布(繊維構造物:綿金巾)1と、害虫忌避剤を含まない布2(対照例)とを、25℃雰囲気下において、図2(a)に示すように、左右に並べて拡げた。そして、蓋としてその上に、直径35cm、目開き♯1mmの、円形の金網3を載置し、さらに、マルカメムシの移動を刺激するために、図示のように、餌(サヤエンドウ)4を置いた。
そして、上記布1、2の境界線上にマルカメムシ5(全40匹)を順次放し、布1、2が乾燥する4時間経過までの間、図2(b)に示すように、加工区域(布1側の区域をいう。ただし、金網3の内側についているものを除く。)と無加工区域(布2側の区域をいう。ただし、金網3の内側についているものを除く。)に侵入するマルカメムシ5の数を計測して、下記の式(1)に従い、害虫忌避性能を数値(忌避率、%)として求めた。数値が高いほど害虫忌避性能に優れているといえる。
【0088】
[式]
害虫忌避性能(忌避率、%)=[(無加工区域への侵入虫数-加工区域への侵入虫数)/無加工区域への侵入虫数]×100 …(1)
【0089】
<害虫忌避成分残留性>
上記「害虫忌避性能」で用いたと同様の、害虫忌避剤を付与した布1を用いて、布1が乾燥した4時間後に害虫忌避成分の臭いが残留しているか否かを、モニター7名に嗅がせて下記の6段階で臭いの有無を評価させ、7名中の何名が「0:無臭」と評価するかによってその残留性を評価した。
0:無臭
1:かろうじて何らかの臭いを感知できる程度の臭い
2:弱い臭いであるが、何の臭いであるかがわかる程度の臭い
3:すぐに何の臭いであるかわかる状態で感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
【0090】
これらの評価結果を、下記の表1、表2に併せて示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
また、上記実施例21品の評価と、害虫忌避成分(a)が入っていない比較例4品の評価において、経過時間ごとの忌避率の推移を示したものを、下記の表3に対比して示す。
【0094】
【表3】
【0095】
上記の結果から、実施例1~21品は、いずれも概ね良好な評価となることがわかる。一方、必須成分である害虫忌避成分(a)が入っていない比較例4品は、当然ながら、害虫忌効果が得られない。また、害虫忌避成分(a)が入っていても、界面活性剤(b)や安定化剤(c)が入っていない比較例1~3品は、水と油性成分である害虫忌避成分(a)とのバランスが崩れ、害虫忌避成分(a)が分離して布に付着する総量が少なくなったり、付着しても偏在したりする。このため、害虫忌避効果にばらつきが生じたり、害虫忌避成分(a)が付着していない部分に害虫の侵入が起こったりして、効果が不充分になることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、害虫に対する忌避剤を水とともに衣料等に付与し、衣料等が乾燥するにつれて、忌避剤の忌避成分を水分とともに揮発させることにより、衣料等が濡れている間だけ、害虫に対して優れた忌避効果を発揮する害虫の忌避方法、それに用いる害虫忌避剤、それを用いた洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤に利用することができる。
図1
図2