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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129687
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】情報装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220830BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G06F3/041 430
H05K1/11 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028464
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】大塚 智雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀幸
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA07
5E317BB01
5E317BB11
5E317BB12
5E317BB13
5E317BB14
5E317BB18
5E317CC33
5E317GG05
(57)【要約】
【課題】入力領域と非入力領域との境界近傍において、温度変化による熱応力の影響によってクラックや断線が生じるのを防ぐことが可能な情報装置を提供する。
【解決手段】樹脂基板と、樹脂基板上の入力領域に設けられる酸化物導電材料からなる電極と、電極に電気的に接続され、入力領域の外側の非入力領域に引き回される配線部と、を有し、配線部は、電極に連続したパッド部と、パッド部に連続してパッド部よりも幅細の配線延出部と、を有し、パッド部は、第1配線層と第2配線層とを有する積層構造を有し、第1配線層は、樹脂基板の表面に形成された電極と一体で形成された導電層であり、第2配線層は、第1配線層上に金属層で形成され、パッド部には、電極の端部から間隔をあけて配置された孔部が形成され、孔部は、第1配線層及び第2配線層を積層方向に貫通している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板と、
前記樹脂基板上の入力領域に設けられる酸化物導電材料からなる電極と、
前記電極に電気的に接続され、前記入力領域の外側の非入力領域に引き回される配線部と、を有し、
前記配線部は、前記電極に連続したパッド部と、前記パッド部に連続して前記パッド部よりも幅細の配線延出部と、を有し、
前記パッド部は、第1配線層と第2配線層とを有する積層構造を有し、
前記第1配線層は、前記樹脂基板の表面に形成された前記電極と一体で形成された導電層であり、
前記第2配線層は、前記第1配線層上に金属層で形成され、
前記パッド部には、前記電極の端部から間隔をあけて配置された孔部が形成され、
前記孔部は、前記第1配線層及び前記第2配線層を積層方向に貫通していることを特徴とする情報装置。
【請求項2】
前記電極から前記配線部へ向かう方向を第1方向としたときに、
前記パッド部における前記電極側の端部から前記第1方向に沿って前記配線延出部側へ延ばした仮想線は、前記孔部に至る請求項1に記載の情報装置。
【請求項3】
前記パッド部には前記孔部が複数設けられ、隣り合う2つの前記孔部の間に配置された導体からなる連結部は前記電極と前記配線延出部とを電気的に接続する請求項1又は請求項2に記載の情報装置。
【請求項4】
前記電極から前記配線部へ向かう方向を第1方向とし、
前記第1方向に交差し、前記電極と前記配線部との境界線が延びる方向を第2方向として、
前記第1方向に沿って前記パッド部をみたときに、複数の前記孔部の少なくとも1つは、その前記第2方向の端部において、他の前記孔部と重複する請求項3に記載の情報装置。
【請求項5】
前記電極から前記配線部へ向かう方向を第1方向としたときに、
複数の前記孔部は、前記第1方向に交差する交差方向に沿って延びる、互いに同一の形状を有する複数のスリットであって、
前記複数のスリットは、少なくとも、前記交差方向に沿って並んで設けられたスリット群を形成しており、
前記交差方向において、隣り合う2つの前記スリットの間の前記連結部の幅は、前記スリットの幅よりも小さい請求項3に記載の情報装置。
【請求項6】
前記複数のスリットは、前記第1方向に前記スリット群が複数並んで設けられている請求項5に記載の情報装置。
【請求項7】
前記第1方向において隣り合って形成された複数の前記スリット群は、前記交差方向における形成位置が互いにずれている請求項6に記載の情報装置。
【請求項8】
前記配線延出部は前記積層構造を有し、その前記第1配線層及び前記第2配線層は、前記パッド部の前記第1配線層及び前記第2配線層にそれぞれ連続して形成されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の情報装置。
【請求項9】
前記電極の線膨張係数は、前記樹脂基板より小さく、前記金属層よりも大きい請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の情報装置。
【請求項10】
前記金属層の厚さは、前記樹脂基板より小さく、前記導電層よりも大きい請求項9に記載の情報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報装置、特に、操作者の入力操作に応じて生ずる静電容量の変化に基づいて情報を入力可能な情報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の配線基材は、基材と、この基材に形成された第1の配線とを有し、第1の配線は金属微粒子を焼結して形成されており、第1の配線は、第1の配線部と、第2の配線部と、第1の配線部と第2の配線部とを接続する接続部とを有し、第2の配線部の単位長さあたりの体積が、第1の配線部の単位長さあたりの体積よりも小さく形成されており、第1の配線部と接続部とが接続された近傍における接続部の全体の幅が、第2の配線部と接続部とが接続された近傍における接続部の全体の幅よりも大きく形成されている。接続部には、厚み方向に貫通した、平面視六角形状の開口部を設けることでメッシュ状パターンが形成されている。メッシュパターンを設けることによって、接続部全体の面積を大きくすることなく接続配線の数を多く形成することを可能としている。
【0003】
特許文献2に記載のタッチパネル部材は、基材と、基材上に設けられる複数の電極部から構成される電極層と、電極部の端部に一端が電気的に接続される複数の取り出し配線と、を備え、取り出し配線は、配線部と、電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる電極部接続用広域部及び/又は外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる外部電極接続部材接続用広域部とを備え、電極部接続用広域部及び/又は外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と、開口部とに区画されており、基材において、複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有している。導電部と開口部で区画することによって、広域部の形成を、複数の配線部が並列する領域の形成条件に適応させやすくし、広域部及び並列する配線部のいずれにおいても電気信頼性を満足させ、取り出し配線の電気信頼性の低下を防ぐことを可能としている。
【0004】
特許文献1に記載の配線基材を用いたタッチパネルや特許文献2に記載のタッチパネル部材では、樹脂系材料のフィルム上に、ITOなどによる透明電極層が形成され、非入力領域には、透明電極層上に、透明電極層よりも電気抵抗の低い金属材料による配線層が形成される。さらに、X、Yセンサの形成や、非入力領域における配線の保護などのために、絶縁層が積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-207283号公報
【特許文献2】特開2013-45246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フィルムを構成する樹脂系材料は、その上に形成される透明電極層を構成する材料や、配線層を構成する金属材料に対して、線膨張係数が高い場合が多い。また、多くの場合、透明電極層を構成する材料と配線層を構成する金属材料との線膨張係数も相違する。タッチパネルの入力領域と非入力領域との境界近傍では、このような線膨張係数の異なる材料が近接して配置されているため、通電等によって温度変化が生じた場合に、各層の変形(膨張・収縮)のしやすさに違いがあることから、フィルムと配線層の間に位置する透明電極に熱応力の集中が生じてクラックや断線が生じるおそれがあった。
【0007】
そこで本発明は、電極と一体で形成される導電層が金属層と積層された構造を有するパッド部が、非入力領域と入力領域との界面近傍に設けられた情報装置において、温度変化による熱応力の影響によってパッド部に連なる電極にクラックや断線が生じるのを防ぐことが可能な情報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の情報装置は、樹脂基板と、樹脂基板上の入力領域に設けられる酸化物導電材料からなる電極と、電極に電気的に接続され、入力領域の外側の非入力領域に引き回される配線部と、を有し、配線部は、電極に連続したパッド部と、パッド部に連続してパッド部よりも幅細の配線延出部と、を有し、パッド部は、第1配線層と第2配線層とを有する積層構造を有し、第1配線層は、樹脂基板の表面に形成された電極と一体で形成された導電層であり、第2配線層は、第1配線層上に金属層で形成され、パッド部には、電極の端部から間隔をあけて配置された孔部が形成され、孔部は、第1配線層及び第2配線層を積層方向に貫通していることを特徴としている。
【0009】
この構成においては、パッド部の第1配線層は電極と一体で形成されているため、電極と配線部との接触抵抗が増大しにくい。このため、配線部抵抗のばらつきを抑制することができる。ここで、パッド部の第1配線層と電極とはいずれも導電層で一体的に形成されているが、パッドに位置する導電層(第1配線層)には金属層からなる第2配線層が形成されて積層構造が構成されているのに対し、電極部に位置する導電層はそのような積層構造の構成要素となっていないという相違がある。そして、金属層は導電層とは異種材料で構成され、多くの場合、線膨張係数が相違する。このため、積層構造が設けられたパッド部と積層構造が設けられていない電極部とでは、温度変化が生じたときに導電層の変形挙動が相違する。それゆえ、パッド部に連なる電極を構成する導電層に、熱応力が集中した領域が生じやすい。
【0010】
この熱応力の集中は、導電層に重なる金属層が大きいほど顕著になる。そこで、パッド部における電極の端部から間隔をあけた位置に金属層が除去された孔部を設けることにより、パッド部における金属層の面積が相対的に小さくなって、パッド部に連なる電極の熱応力の集中が抑制される。
【0011】
また、孔部において第1配線層と第2配線層とが積層方向に貫通している、換言すれば、孔部内では金属層のみならず導電層も除去されていることにより、引出配線間の短絡の発生を抑制することができる。孔部内に導電層を残すと、この導電層は積層構造に連なり、積層構造を構成しない導電層となるため、パッド部に連なる電極を構成する導電層と同等またはそれ以上に熱応力が集中しやすい。このため、孔部内の導電層を残すと、その導電層にクラックが生じて部分剥離して導電性のコンタミネーションが生成するおそれがある。このコンタミネーションは孔部外で引出配線間の短絡の原因となり得る。
【0012】
本発明の情報装置において、電極から配線部へ向かう方向を第1方向としたときに、パッド部における電極側の端部から第1方向に沿って配線延出部側へ延ばした仮想線は、孔部に至ることが好ましい。
【0013】
パッド部において、上記の仮想線が孔部に至らず積層構造を通る長さが長いほど、積層構造の領域が広くなる。このため、仮想線が孔部に至る部分では、孔部に至らない部分に比べて、パッド部に連なる電極の応力集中が抑制されやすい。
【0014】
本発明の情報装置において、パッド部には孔部が複数設けられ、隣り合う2つの孔部の間に配置された導体からなる連結部は電極と配線延出部とを電気的に接続することが好ましい。
【0015】
孔部は、第1配線層をも貫通しているため実質的に絶縁領域となるが、パッド部に設けられた隣り合う孔部の間に配置された導体からなる連結部が導電経路となるため、電極側と配線延出部側との電気的な接続は確保され、パッド部での抵抗増大は適切に抑制される。
【0016】
本発明の情報装置において、第1方向に交差し、電極と配線部との境界線が延びる方向を第2方向として、第1方向に沿ってパッド部をみたときに、複数の孔部の少なくとも1つは、その第2方向の端部において、他の孔部と重複することが好ましい。
【0017】
複数の孔部の形状、サイズ、配置が、互いに同一でない場合や規則的でない場合であっても、第1方向に沿って見たときに重複する部分を有するように複数の孔部の配置関係を設定することにより、第1方向において、パッド部の電極側端部と配線延出部との間に孔部が確実に存在する構成が実現される。それゆえ、パッド部に連なる電極における熱応力の集中が、より安定的に抑制される。
【0018】
本発明の情報装置において、電極から配線部へ向かう方向を第1方向としたときに、複数の孔部は、第1方向に交差する交差方向に沿って延びる、互いに同一の形状を有する複数のスリットであって、複数のスリットは、少なくとも、交差方向に沿って並んで設けられたスリット群を形成しており、交差方向において、隣り合う2つのスリットの間の連結部の幅は、スリットの幅よりも小さいことが好ましい。
【0019】
パッド部における連結部に連なる電極では、相対的に熱応力が高くなりやすいが、連結部の幅がスリットの幅よりも小さいため、連結部に起因して生じた電極の応力集中の影響を少なくすることができる。また、電極から配線延出部への経路となる連結部が規則的に配置されるため、配線部抵抗のばらつきも抑制される。スリットの形状が整えられていることは、パッド部に連なる電極の熱応力のばらつきを小さくすることに寄与する。
【0020】
本発明の情報装置において、複数のスリットは、第1方向にスリット群が複数並んで設けられていることが好ましい。これにより、電極の熱応力の影響をさらに安定的に低減でき、配線部抵抗のばらつきも低減できる。
【0021】
本発明の情報装置において、第1方向において隣り合って形成された複数のスリット群は、交差方向における形成位置が互いにずれていることが好ましい。
【0022】
複数のスリット群が交差方向にずれて配置されていることにより、第1方向に連結部が並ぶ可能性が低下する。それゆえ、パッド部に連なる電極における熱応力の集中が特に安定的に抑制される。複数のスリット群が設けられている場合に連結部が第1方向に沿って並ぶと、その部分は他の部分に比べて孔部となるスリットが少ないため、電極層が広く存在することとなる。それゆえ、その部分に連なる電極は相対的に熱応力が集中しやすくなる。
【0023】
本発明の情報装置において、配線延出部は積層構造を有し、その第1配線層及び第2配線層は、パッド部の第1配線層及び第2配線層にそれぞれ連続して形成されていることが好ましい。これにより、パッド部と配線延出部の配線の接触抵抗を低減することができ、抵抗ばらつきを抑えることができる。
【0024】
本発明の情報装置において、電極の線膨張係数は、樹脂基板より小さく、第2配線層よりも大きくてもよい。この場合には、例えば温度変化が生じて樹脂基板が膨張したときに、電極がその影響を受けて膨張しようとすることを、金属層からなる第2配線層が抑制するため、パッド部に連なる電極の熱応力が高まりやすい。このような場合であっても、上記のように孔部を備えることにより、パッド部に連なる電極への熱応力の集中を抑制することができる。
【0025】
本発明の情報装置において、金属層の厚さは、樹脂基板より小さく、導電層よりも大きいことが好ましい。これにより、孔部を設けることでクラックや剥離を抑えつつ、配線部における電気抵抗を低減した情報装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の情報装置は、電極と一体で形成される導電層と金属層との積層構造をパッド部が有していても、温度変化により生じた熱応力の影響が孔部により緩和されるため、パッド部に連なる電極にクラックや断線が生じにくい。このように電極におけるクラックや断線の発生が防止されているため、本発明の情報装置は配線延出部ごとの抵抗のばらつきが生じにくい。また、導電層形成材料の剥離部の再付着に起因する配線延出部間での短絡も生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の本実施形態における情報装置としての入力装置の構成を示す平面図である。
図2】(a)は、図1のA1部分を拡大して示す平面図、(b)は(a)のC1-C1’線における断面図である。
図3図2(a)のA2部分を拡大して示す平面図である。
図4】比較例としての第2サンプルにおける、第1の電極部、パッド部、及び、配線延出部の構成を拡大して示す断面図である。
図5】比較例としての第3サンプルにおける、第1の電極部、パッド部、及び、配線延出部の構成を拡大して示す断面図である。
図6】導電層にITOを用いた場合の導電層における熱応力の最大値とメタル幅との関係を示すグラフである。
図7】(a)は、第1サンプルの条件No.11~14と第3サンプルの条件No.31における、X位置に対するITO熱応力の変化を示すグラフ、(b)は(a)の一部拡大図である。
図8】(a)は、図6に示すシミュレーションの第2サンプルの条件No.21~24と第3サンプルの条件No.31における、X位置に対するITO熱応力の変化を示すグラフ、(b)は(a)の一部拡大図である。
図9】(a)は変形例における、第1の電極部、パッド部、及び、配線延出部の構成を拡大して示す平面図、(b)は(a)のC2-C2’線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る情報装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。本実施形態においては、静電容量式の入力装置を例に挙げて説明する。
【0029】
図1は、本実施形態における情報装置としての入力装置10の構成を示す平面図である。なお、透明電極は透明なので本来は視認できないが、各図では理解を容易にするため透明電極の外形を示している。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の入力装置10は、基板21と、基板21上に設けられた配線部30及び電極40とを備える。基板21には、操作者が入力操作を行うことができる入力領域15と、入力領域15の外側の非入力領域16とが設定されている。電極40は、基板21の入力領域15に形成されており、配線部30は、電極40に接続されるとともに、非入力領域16に引き回されて形成されている。
【0031】
図1に示すように、電極40は、第1の電極部41と第2の電極部42とを有しており、第1の電極部41及び第2の電極部42はいずれも菱形形状のパッド電極部である。
【0032】
第1の電極部41は、X1-X2方向において間隔を設けて配置されており、X1-X2方向に隣り合う第1の電極部41同士は、ブリッジ部43により接続される。そして、X1-X2方向に接続された複数の第1の電極部41は、Y1-Y2方向において、間隔を設けて複数本配列されている。配線部30は、X1-X2方向に並ぶ第1の電極部41のX1側又はX2側の端部に接続されている。
【0033】
第2の電極部42は、Y1-Y2方向において間隔を設けて配置されており、Y1-Y2方向に隣り合う第2の電極部42同士は、ブリッジ部43の下を通る幅細部44によって接続される。そして、Y1-Y2方向に接続された複数の第2の電極部42は、X1-X2方向において、間隔を設けて複数本配列されている。幅細部44を覆うように絶縁層(不図示)が設けられており、ブリッジ部43は、幅細部44及び絶縁層を跨がって形成されている。配線部30は、Y1-Y2方向に並ぶ第2の電極部42のY2側の端部に接続されている。
【0034】
入力装置10においては、第1の電極部41と第2の電極部42とがその間で静電容量を形成するように配置されており、操作者が入力操作を行う際に生じる静電容量の変化に基づいて、入力位置を検出することができる。例えば、第1の電極部41と第2の電極部42の上面を覆うように配置したパネル(不図示)の表面上に操作体の一例として指を接触させると、指と指に近い第1の電極部41との間、及び、指と指に近い第2の電極部42との間で静電容量が生じる。入力装置10は、このときの静電容量の変化を検知部(不図示)により検知し、この静電容量変化に基づいて、指の接触位置を制御部によって算出することが可能である。つまり、入力装置10は、指と第1の電極部41との間の静電容量変化に基づいて指の位置のY座標を検知し、指と第2の電極部42との間の静電容量変化に基づいて指の位置のX座標を検知する。
【0035】
電極40(第1の電極部41と第2の電極部42)は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、GZO(Gallium-doped Zinc Oxide)、AZO(Aluminum-doped Zinc Oxide)およびFZO(Fluorine-doped Zinc Oxide)等の透明酸化物導電材料を用いて、スパッタや蒸着などの薄膜法により形成した後に、フォトリソグラフィ法によってパターン形成される。また、ブリッジ部43と、ブリッジ部43が跨がる上記絶縁層(不図示)についても、電極40と同様にパターン形成される。透明酸化物導電材料は、成膜段階ではアモルファスであって、プロセス中に少なくとも一部について結晶化させる場合がある。このような場合には、結晶化に伴い電極40に応力が蓄積されることがある。電極40の線膨張係数は、製造プロセスや基板21の影響により変動するが、2.5×10-5/°C程度から2.8×10-5/°C程度(いずれも室温環境での値、以下同じ。)となる傾向がある。
【0036】
基板21は、フィルム状の樹脂材料を用いて形成された樹脂基板であり、ポリエチレンテレフタレート(PET;Polyethylene terephthalate)、ポリオレフィン系ポリマー(COC;Cyclic Olefin Copolymer,COP;Cyclic Olefin Polymer)、ポリカーボネート(PC;Polycarbonate)等の透光性樹脂材料が用いられる。これらの材料の線膨張係数は、PETが6.5×10-5/°C程度、COCが5×10-5/°C程度から6.5×10-5/°C程度、COPが5.8×10-5/°C程度から7.0×10-5/°C程度、PCが5.6×10-5/°C程度である。基板21と電極40とを以上の材料で構成するため、電極40の線膨張係数は、基板21の線膨張係数よりも小さくなる。
【0037】
図1に示すように、Y2側の非入力領域16には端子部45が設けられており、端子部45は外部のフレキシブル基板(不図示)等に接続される。電極40と端子部45とは、配線部30により電気的に接続されており、電極40(第1の電極部41と第2の電極部42)により検出された入力位置情報は、配線部30を介して外部回路へと取り出される。
【0038】
図2(a)は、図1のA1部分を拡大して示す平面図、(b)は(a)のC1-C1’線における断面図である。図3は、図2(a)のA2部分を拡大して示す平面図である。図2(a)、(b)では、配線部30と電極40とが接続された部分について拡大して示している。
【0039】
図2(a)、(b)に示すように、配線部30は、第1の電極部41に連続して接続されたパッド部31と、パッド部31に連続して接続され、パッド部31よりも幅細の配線延出部32とから構成される。配線延出部32は端子部45に接続されているため、第1の電極部41は配線部30と端子部45を介して外部の回路(不図示)に接続される。
【0040】
なお、本実施形態では、第1の電極部41に接続された配線部30が、パッド部31と配線延出部32とから構成される例を挙げたが、第2の電極部42についても、パッド部31と配線延出部32とから構成される配線部を設けると以下に述べるのと同様の作用・効果を得ることができる。
【0041】
図2(b)に示すように、配線部30は、基板21上に形成した導電層としての第1配線層36と、第1配線層36上に形成した第2配線層37とを有する積層構造を備える。
【0042】
第1配線層36は、電極40の形成の際に、電極40の透明酸化物導電材料の層(導電層)と一体で、同一の厚さt2で、非入力領域16に形成される。すなわち、第1配線層36は、基板21の表面に形成された電極40と一体で形成された導電層である。このように共通の導電層から構成されるため、第1の電極部41と配線部30とは連続して接続される。それゆえ、第1配線層36が設けられた配線部30と電極40との間の接触抵抗は増大しにくく、配線部30の抵抗のばらつきが生じにくい。
【0043】
第2配線層37は、スパッタリングや蒸着などのドライプロセスや電気めっきなどのウエットプロセスによって、第1配線層36の上に形成される金属層である。金属層を構成する材料は所定の導電性を有している限り、限定されない。具体例として、Ag、Cu、Al、Au、Pt、Pd、Niなどの元素を含有する金属や合金が挙げられる。第2配線層37は、単一の金属又は合金で構成される単一層のほか、複数の層を積層した構成でもよい。複数の層にする場合、例えば、中間層を、互いに同一の材料で構成される上下の層で挟む構成も可能である。この構成として、例えば、中間層をCuで構成し、上下の層をCuNiで構成する。
【0044】
第2配線層37が金属層であることから、その線膨張係数は1.0×10-5/°C程度から2.0×10-5/°C程度である。このため、一般的には、第2配線層37の線膨張係数は、第1配線層36の線膨張係数よりも小さくなる。
【0045】
図2(b)に示すように、第2配線層37は、その厚さt3(Z1-Z2方向の高さ)が、第1配線層36の厚さt2よりも大きくなるように形成されており、第1配線層36よりも低い電気抵抗を得ることができる。ここで、第2配線層37の厚さt3は、基板21の厚さt1よりも小さい。配線部30と、電極40において配線部30に連なる領域には、これらを覆うように、絶縁層としてのオーバーコート層38が設けられている。オーバーコート層38は、例えばノボラック系樹脂のレジスト(オーバーコート(OC))により構成される。
【0046】
図2(a)、(b)に示すように、パッド部31においては、第1配線層36と第2配線層37を積層方向(Z1-Z2方向)に貫通して基板21に至る孔部として、2つのスリット群(第1のスリット群33、第2のスリット群34)が形成されている。パッド部31に孔部が設けられていることにより、パッド部31に連なる第1の電極部41において熱応力の集中が抑制される。また、孔部内に第1配線層36が残留すると、その第1配線層36を構成する導電層にクラックが生じやすくなるため、孔部が基板21に至る貫通孔となっていることにより、クラックの発生した導電層の破片が引出配線間にコンタミネーションとして位置することで発生する、引出配線間の短絡が防止されている。
【0047】
第1のスリット群33は、複数の第1のスリット33aを有する。複数の第1のスリット33aは、互いに同一形状であって、Z1-Z2方向に沿って見た平面視(図2(a)参照)において矩形状をなしており、Y1-Y2方向に沿って順に並ぶように配置されている。第2のスリット群34は、第1のスリット33aと同一形状の複数の第2のスリット34aがY1-Y2方向に沿って順に並んで構成される。
【0048】
図3に示すように、第1の電極部41(電極40)側から配線部30へ向かう方向を第1方向D1(X1-X2方向に沿った方向)としたときに、2つのスリット群(第1のスリット群33、第2のスリット群34)は第1方向D1に間隔L11をあけて並んで設けられる。第1のスリット群33を構成する複数の第1のスリット33aは、第1方向D1に直交する第2方向D2(Y1-Y2方向に沿った方向)に沿って延びる矩形形状を有する。第2のスリット群34を構成する複数の第2のスリット34aについても、第2方向D2に沿って延びる矩形形状を有する。
【0049】
さらに、第2のスリット群34は、第1方向D1において、第1の電極部41とパッド部31との境界線BL、すなわち第1の電極部41の端部41a、から間隔L11をあけて設けられている。第2のスリット群34は、第1のスリット群33から間隔L11をあけて配置されている。第1のスリット群33は、第1方向D1において、パッド部31の配線延出部32側の端部31aから間隔L11をあけて設けられている。
【0050】
したがって、パッド部31には、第1方向D1において、第1の電極部41側の端部31bと第2のスリット群34との間に間隔L11の第3の主導体部31eが設けられ、第2のスリット群34と第1のスリット群33との間に間隔L11の第2の主導体部31dが設けられ、さらに、第1のスリット群33と配線延出部32側の端部31bとの間に間隔L11の第1の主導体部31cが設けられている。また、第3の主導体部31eと第2の主導体部31dとの間を電気的に接続する第2の連結部34bが設けられ、第2の主導体部31dと第1の主導体部31cとの間を電気的に接続する第1の連結部33bが設けられている。
【0051】
こうして、パッド部31においては、第3の主導体部31e、第2の連結部34b、第2の主導体部31d、第1の連結部33b、第1の主導体部31cの順につながる導電経路Pが形成される。この導電経路Pによって第1の電極部41から、パッド部31を介して、配線延出部32へと電気的に接続される。前述のように、孔部(第1のスリット33a、第2のスリット34a)には基板21に至る貫通孔が形成されているため、孔部は導電性を有しないが、隣り合う2つの孔部の間に導体で形成された連結部(第1の連結部33b、第2の連結部34b)が設けられていることにより、導電経路Pが形成され、第1の電極部41から配線延出部32への導電が確保される。なお、図3においては、導電経路Pの一部の例を示している。
【0052】
図3に示すように、第1方向D1に沿って、第1の電極部41(電極40)側からパッド部31を見たとき、第2方向D2のいずれの位置においても、第1のスリット群33の第1のスリット33a又は第2のスリット群34の第2のスリット34aに至るように、第1のスリット群33と第2のスリット群34は配置されている。別言すると、パッド部31における電極40側の端部31bから第1方向D1に沿って配線延出部32側(X1-X2方向X1側)へ仮想線Vを延ばすと、仮想線Vは、第1のスリット群33の第1のスリット33a又は第2のスリット群34の第2のスリット34aに至る。パッド部31における電極40側の端部31bからの仮想線Vがいずれかのスリットに至る部分では、その端部31bに連なる第1の電極部41における熱応力の集中が抑制される。仮想線Vの端部31bから孔部までの長さが短いほど、端部31bに連なる第1の電極部41における熱応力の集中を効果的に抑制することができる。
【0053】
第1のスリット群33と第2のスリット群34とは、第2方向D2において、第1のスリット33aと第2のスリット34aとが互いにずれ、かつ、一部が互いに重複するような形成位置にそれぞれ配置されている。このような配置となっているため、パッド部31における電極40側の端部31bから第1方向D1に沿って延ばした仮想線Vが、孔部(第1のスリット33a、第2のスリット34a)に至らない部分が生じにくくなる。具体的に説明すれば、隣り合う2つの第2のスリット34aの間には第2の連結部34bが位置する。第2の連結部34bには孔部が設けられていないが、第2の連結部34bの第1方向D1の配線延出部32側(X1-X2方向X1側)には第1のスリット33aが設けられているため、第2の連結部34bにおいても、パッド部31における電極40側の端部31bから延ばした仮想線Vは孔部(第1のスリット33a)に至ることができる。
【0054】
図3に示すように、第2方向D2(Y1-Y2方向)において、隣り合う第1のスリット33a同士の間に配置された導体で形成された第1の連結部33bの幅と、隣り合う第2のスリット34a同士の間に配置された導体で形成された第2の連結部34bの幅とは互いに同一であって幅L21とされている。第1のスリット33aおよび第2のスリット34aはいずれも、第2方向D2における幅L22が連結部(第1の連結部33b、第2の連結部34b)の幅L21より長く設定されている。第2の連結部34bに連なる第1の電極部41は、第2のスリット34aに連なる第1の電極部41よりも熱応力の集中が抑制されにくいが、上記のように幅L22が幅L21よりも長く設定されているため、第2の連結部34bの影響を相対的に小さくすることができる。また、それぞれのスリット群(第1のスリット群33、第2のスリット群34)を構成するスリット(第1のスリット33a、第2のスリット34a)は互いに同一の形状を有するため、パッド部31に連なる第1の電極部41に生じる応力集中のばらつきが小さい。
【0055】
なお、上記の説明では、第1の電極部41と配線部30との配置において、第1方向D1と第2方向D2とが互いに直交しているが、第1方向D1と第2方向D2が直角でない角度の交差方向に沿って交差するように第1の電極部41と配線部30とが配置される構成も可能である。
【0056】
次に、図4から図8を参照して、本実施形態における作用・効果について、シミュレーション結果に基づいて説明する。
【0057】
図4は比較例としての第2サンプルにおける、第1の電極部41、パッド部51、及び、配線延出部32の構成を拡大して示す断面図である。第2サンプルにおいては、第1の電極部41と配線延出部32は上記実施形態と同じ構成である。一方、パッド部51においては、スリット53a、54aが第2配線層37のみを厚さ方向(Z1-Z2方向)に沿って貫通している。したがって、スリット53a、54aは、第1配線層36を貫通しておらず、第1配線層36は第1の電極部41から、パッド部51の配線延出部32側の端部51aまで延びている。なお、パッド部51には、上記実施形態と同様に、平面視において、第2方向D2に沿った2列のスリット群が形成されるとともに、各スリット群は第2方向D2に並んだ複数のスリットを有し、上記2つのスリット53a、54aはそれぞれ、2列のスリット群の複数のスリットの1つである。
【0058】
図5は比較例としての第3サンプルにおける、第1の電極部41、パッド部61、及び、配線延出部32の構成を拡大して示す断面図である。第3サンプルにおいては、第1の電極部41と配線延出部32は上記実施形態と同じ構成である。一方、パッド部61においては、スリットは設けられていない。第1配線層36は第1の電極部41から、パッド部61の配線延出部32側の端部61aまで延びている。
【0059】
図6は、線S1、S2、S3で示すサンプルを用いたシミュレーションにおいて、第1配線層36および第1の電極部41を構成する導電層にITOを用いた場合の導電層における熱応力の最大値(単位:MPa)と後述のメタル幅W1(単位:μm)との関係を示している。図6において、線S1(黒丸印)は本実施形態に対応する構成を有する第1サンプルを示しており、線S2(白抜きの丸印)は図4に示す比較例に対応する構成を有する第2サンプルを示しており、線S3(四角印)は図5に示す比較例に対応する構成を有する第3サンプルを示している。
【0060】
図6の横軸の「メタル幅」は、線S1に示す第1サンプルについては、図2(b)に示す第2配線層37(金属層)のうち、第1方向D1(X1-X2方向)において、最も第1の電極部41に近い第2のスリット34aから、境界線BLまでの幅W1である。線S2に示す第2サンプルについては、図2(b)に示すサンプルと同じ幅W1であって、図4に示す第2配線層37のうち、第1方向D1(X1-X2方向)において、境界線BLから、最も第1の電極部41に近いスリット54aまでの幅W1である。線S3に示す第3サンプルではスリットは設けていないため、第2配線層37の幅は、パッド部31全体の幅に等しい。
【0061】
図6の縦軸の「ITO最大熱応力」は、サンプルS1、S2、S3について以下の条件でシミュレーションしたときの熱応力の最大値を示している。
【0062】
図7(a)は、図6に示すシミュレーションの第1サンプルS1の条件No.11~14と第3サンプルS3の条件No.31における、X位置に対するITO熱応力の変化を示すグラフであって、(b)は(a)の一部拡大図である。図8(a)は、図6に示すシミュレーションの第2サンプルの条件No.21~24と第3サンプルS3の条件No.31における、X位置に対するITO熱応力の変化を示すグラフであって、(b)は(a)の一部拡大図である。
【0063】
ここで、「X位置」とは、第1方向D1としてのX1-X2方向における位置であって、図7(a)、(b)、及び、図8(a)、(b)における各サンプルについて、境界線BLの位置を0.075mmのX位置として、X1-X2方向に沿って、X1側からX2側へ向かうほど座標が大きくなるように表示している。
【0064】
図4から図8に示すシミュレーションにおける設定条件は次の通りである。
(A)応力解析ソフトウエア:ABAQUS(有限要素解析)
加熱温度135°C
【0065】
(B)各層の構成材料の物性値及び膜厚
COPからなる基板21の上にITOからなる導電層が形成され、パッド部31では、導電層からなる第1配線層36に、CuNi層/Cu層/CuNi層の3層構造の金属層からなる第2配線層37が形成されている。第1の電極部41では導電層は電極40となり、電極40と第1配線層36とが一体化した構造となっている。第1の電極部41のパッド部31につながる部分およびパッド部31には、ノボラック樹脂系のレジスト(OC)からなるオーバーコート層38が積層されている。これらの各層の物性値および厚さは表1に示すとおりである。
【0066】
【表1】
【0067】
(C)各サンプルの形状
第1・第2・第3サンプルの第1方向D1(X1-X2方向)の全体幅は400μm(0.4mm)である。
【0068】
以下の説明において、各幅は次のように定義される。
幅W1:境界線BLから第2のスリット34aまたはスリット54aまでの第1方向D1(X1-X2方向)における幅
なお、スリットが設けられていない第3サンプルでは、幅W1はパッド部61の第1方向D1(X1-X2方向)における全幅である。すなわち、幅W1は、パッド部31の第1の電極部41側の端部31bから第1方向D1(X1-X2方向X1側)へと仮想線Vを延ばしたときに、パッド部31を構成する金属層が最初に途切れるまでの長さ(メタル幅)となる。
幅W2:境界線BLから、配線延出部32側の第1のスリット33aまたはスリット53aの端部までの、第1方向D1(X1-X2方向)における幅
幅W3:境界線BLから第1の電極部41側において、第2配線層37が形成されず、オーバーコート層38が第2配線層37を介さずに第1配線層36上に形成された範囲の、第1方向D1(X1-X2方向)における幅
幅W4:第2のスリット34aまたはスリット54aの第1方向D1(X1-X2方向)における幅
幅W5:第1のスリット33aと第2のスリット34aとの間またはスリット53aとスリット54aとの間の第2の主導体部31dの第1方向D1(X1-X2方向)における幅
幅W6:第1のスリット33aまたはスリット53aの第1方向D1(X1-X2方向)における幅
【0069】
これらの幅の具体的数値を表2にまとめて示した。また、各条件でのシミュレーションの結果として、第1配線層36および第1の電極部41を構成する導電層の応力の最大値(単位:MPa)を表2に示した。
【0070】
【表2】
【0071】
図6から図8に示されるように、熱応力の最大値は、スリットを設けない第3サンプル(図6の線S3、図7(a)、(b)と図8(a)、(b)の線S31)よりも、スリットを設けた第1サンプルと第2サンプル(図6の線S1、S2、図7(a)、(b)の線S11~S14、図8(a)、(b)の線S21~S24)の方が小さい。例えば、第3サンプルでメタル幅W1が150μmのときの最大熱応力値が660.6MPa(条件No.31)であるのに対して、第1サンプルでメタル幅W1が50μmのときの最大熱応力値は619.4MPa(条件No.11)、第2サンプルでメタル幅W1が50μmのときの最大熱応力値は645.9MPa(条件No.21)であって、スリットを設けてメタル幅W1を小さくすることによって熱応力を抑えることができている。
【0072】
また、図7(a)、(b)から分かるように、第1サンプルおよび第3サンプルでは、パッド部31に連なる第1の電極部41に熱応力が最も大きくなる点が位置する。具体的には、境界線BLから第1の電極部41側へ0.005mmとなるX位置0.08mmに、熱応力が最も大きくなる点が位置する。すなわち、図7(a)、(b)は、金属層と積層構造を構成する導電層(第1配線層36)に連なる、金属層が積層されていない導電層(第1の電極部41)に熱応力が集中することを示している。
【0073】
一方、スリット内に第1配線層36を構成する導電層が残っている第2サンプルでは、図8(a)、(b)に示されるように、熱応力が最も大きくなる点は、パッド部31に連なる第1の電極部41ではなく、スリット内の第1配線層36に位置する。具体的には、第1サンプルにおいて熱応力の最大値を示した境界線BLから第1の電極部41側に位置するX位置0.08mmよりも、境界線BLよりもパッド部31側に、熱応力が最も大きくなる点が位置する。
【0074】
この図8(a)、(b)に示される結果は、パッド部31に連なる第1の電極部41に熱応力が集中することを回避すべくスリットを設けても、スリット内に第1配線層36を構成する導電層が残っていると、この導電層に熱応力が集中してしまうことを意味している。この熱応力の集中は、スリット内の導電層にクラックを生じさせ、導電性コンタミネーションの発生原因となる。導電性コンタミネーションは、スリットの外において引出配線間の短絡をもたらしうる。すなわち、第2サンプルは、スリット内の導電層にクラックを誘引する構成であるといえる。
【0075】
このように、図8(a)、(b)の結果から、パッド部31にスリットを設ける場合には、第1配線層36と第2配線層37の両方を貫通するようにスリットを設けるべきことが分かる。
【0076】
また、メタル幅W1については、図6に示すように、第1サンプル(線S1)の結果から、メタル幅W1を狭くするほど熱応力値を小さくすることができることが分かる。
【0077】
以上のシミュレーションの結果をまとめると、次のようになる。パッド部31に孔部としてのスリット33a、34aを設けることにより、パッド部31に連なる第1の電極部41における熱応力の集中が抑制され、スリットを境界線BLに近づけることによりこの抑制効果が高まる。また、孔部を形成する際には、第1配線層36と第2配線層37の両方を貫通させることにより、孔部内の第1配線層36の剥離に起因する導電性のコンタミネーションによる引出配線間の短絡が抑制される。
【0078】
以下に変形例について説明する。
上記実施形態では、第2方向D2に沿った2列のスリット群33、34を設けた例を示したが、電極40から配線延出部32へ至る導電経路Pが確保できれば、スリット群の列数は1列又は3列以上であってもよく、また、スリット群を構成するスリットの数も任意に定めることができる。例えば、図9(a)、(b)に示すように、第1の電極部41(電極40)と配線延出部32との間に、第2方向D2(Y1-Y2方向)に沿って延びる1本のスリット133を有するパッド部131を設ける構成も可能である。ここで、図9(a)は変形例における、第1の電極部41、パッド部131、及び、配線延出部32の構成を拡大して示す平面図、(b)は(a)のC2-C2’線における断面図である。
【0079】
図9(a)に示すように、スリット133は、第2方向D2(Y1-Y2方向)におけるパッド部131の端部131eとの間に配置された導体から形成された連結部133aを有する。この構成により、配線延出部32側の端部131aから、連結部133aを経て、第1の電極部41側の端部131bへ至る導電経路Pが形成される。
【0080】
上記実施形態及び図9(a)、(b)に示す変形例では、パッド部31、131に、第2方向D2に延びるスリットを設けたが、パッド部において、第1配線層36と第2配線層37を貫通する孔部の形状はこれに限定されず、例えば、円形、楕円形、途中で太さや向きが変わる形(例えばL字型やクランク型)なども可能である。また、スリット形状とする場合も、端部を丸めた形状とするとエッチングの加工精度を確保しやすくなる。
【0081】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の思想の範囲内において改良又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 入力装置(情報装置)
15 入力領域
16 非入力領域
21 基板
30 配線部
31 パッド部
31a、31b パッド部の端部
31c 第1の主導体部
31d 第2の主導体部
31e 第3の主導体部
32 配線延出部
33 第1のスリット群
33a 第1のスリット
33b 第1の連結部
34 第2のスリット群
34a 第2のスリット
34b 第2の連結部
36 第1配線層(導電層)
37 第2配線層(金属層)
38 オーバーコート層(絶縁層)
40 電極
41 第1の電極部
41a 第1の電極部の端部
42 第2の電極部
43 ブリッジ部
44 幅細部
45 端子部
51、61 パッド部
51a、61a パッド部の端部
53a、54a スリット
131 パッド部
131a、131b、131e パッド部の端部
133 スリット
133a 連結部
BL 境界線
D1 第1方向
D2 第2方向
L11 間隔
L21、L22 幅
P 導電経路
S1、S2、S3 サンプル
V 仮想線
W1 メタル幅
W2 境界線から配線延出部側のスリットまでの幅
W3 突出幅
W4、W6 スリットの幅
W5 第2の主導体部の幅
t1 基板の厚さ
t2 第1配線層の厚さ
t3 第2配線層の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9