(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129702
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】回転電機及びそれを用いたダンプトラック用回転電機システム
(51)【国際特許分類】
H02K 13/00 20060101AFI20220830BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20220830BHJP
H02K 5/16 20060101ALI20220830BHJP
H02K 23/00 20060101ALI20220830BHJP
H02K 23/36 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H02K13/00 T
H02K9/02 Z
H02K5/16 A
H02K23/00 A
H02K23/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028484
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】郡 大祐
(72)【発明者】
【氏名】杉本 愼治
(72)【発明者】
【氏名】藤井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】土谷 摂
(72)【発明者】
【氏名】里 水里
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
5H613
5H623
【Fターム(参考)】
5H605AA12
5H605BB09
5H605EB30
5H609BB06
5H609PP02
5H609QQ02
5H609QQ12
5H613AA02
5H613BB23
5H613BB35
5H623AA08
5H623BB07
(57)【要約】
【課題】
ブラシ方式での給電による励磁形回転電機のブラシの機械的要因による摩耗、変形を低減し、ブラシの長期健全性を確保できること。
【解決手段】
本発明の回転電機は、上記課題を解決するために、フレームと、該フレーム内に設置された励磁電流が異なる第1及び第2の励磁形回転電機と、前記第1及び第2の励磁形回転電機のそれぞれに電流を供給する第1及び第2のブラシとスリップリングと、前記第1及び第2の励磁形回転電機の回転子と締結し、前記回転子と共に回転するシャフトと、該シャフトを回転支持する軸受とを備えた回転電機であって、前記第1及び第2のブラシは、前記軸受と前記第1の励磁形回転電機との間に配置され、かつ、前記第1及び第2のブラシのうち励磁電流の高い方のブラシが前記軸受側に配置されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、該フレーム内に設置された励磁電流が異なる複数の励磁形回転電機と、励磁電流が異なるそれぞれの前記励磁形回転電機に電流を供給する少なくともブラシを有する給電装置と、励磁電流が異なるそれぞれの前記励磁形回転電機の回転子と締結し、前記回転子と共に回転するシャフトと、該シャフトを回転支持する軸受とを備えた回転電機であって、
励磁電流が異なるそれぞれの前記励磁形回転電機に電流を供給する複数の前記ブラシを、励磁電流が高い順に前記軸受側から順次軸方向中心に向かって配置したことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
フレームと、該フレーム内に設置された励磁電流が異なる第1及び第2の励磁形回転電機と、前記第1及び第2の励磁形回転電機のそれぞれに電流を供給する第1及び第2のブラシとスリップリングと、前記第1及び第2の励磁形回転電機の回転子と締結し、前記回転子と共に回転するシャフトと、該シャフトを回転支持する軸受とを備えた回転電機であって、
前記第1及び第2のブラシは、前記軸受と前記第1の励磁形回転電機との間に配置され、かつ、前記第1及び第2のブラシのうち励磁電流の高い方のブラシが前記軸受側に配置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機であって、
前記第1の励磁形回転電機を補助励磁形回転電機とし、前記第2の励磁形回転電機を主励磁形回転電機とすると共に、前記第1のブラシを前記補助励磁形回転電機用とし、前記第2のブラシを前記主励磁形回転電機用としたことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機であって、
前記補助励磁形回転電機と前記主励磁形回転電機及び前記第1のブラシと前記第2のブラシは、前記シャフト上に、前記軸受側から前記第2のブラシ、第1のブラシ、前記補助励磁形回転電機及び前記主励磁形回転電機の順に配置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の回転電機であって、
前記第1及び第2のブラシは、同じ形状、同じ寸法、同じ材質であることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項4に記載の回転電機であって、
前記第1及び第2のブラシより軸方向中心側又は前記軸受側の前記シャフト上に、軸電圧を放電する零相ブラシが設置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1項に記載の回転電機であって、
前記第1及び第2の励磁形回転電機には、回転子鉄心の内径側に軸方向に冷媒を流すためのアキシャフダクトが設けられていると共に、複数の通風ダクトが、周方向に所定間隔を持ち、かつ、径方向に延びて放射状に配置されており、前記アキシャフダクトから流れてきた前記冷媒が、複数の前記通風ダクトの間を径方向へと流れるように構成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか1項に記載の回転電機であって、
前記フレームには冷媒を内部に導く流入口が設けられており、前記流入口は、前記第1及び第2のブラシと、この第1及び第2のブラシを保持するブラシホルダーが配置されている位置と対向する位置に設けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項8に記載の回転電機であって、
前記第1及び第2のブラシと前記スリップリング又は前記ブラシホルダーの軸方向の間隔が不等となるように配置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項10】
請求項9に記載の回転電機であって、
前記第1及び第2のブラシは、前記第2のブラシの前記スリップリング又は前記ブラシホルダーの軸方向の間隔をW1、前記第1のブラシの前記スリップリング又は前記ブラシホルダーの軸方向の間隔をW2、前記第1のブラシと前記第2のブラシの前記スリップリング又は前記ブラシホルダーの軸方向間隔をW3とすると、W1>W2、W3≧W1の関係となるように配置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項11】
請求項2乃至10のいずれか1項に記載の回転電機であって、
前記第1及び第2のブラシの軸方向幅よりも、前記スリップリングの軸方向幅を大きくしたことを特徴とする回転電機。
【請求項12】
請求項2乃至11のいずれか1項に記載の回転電機であって、
前記第1のブラシと前記第2のブラシを、周方向に異なる位置となるように配置していることを特徴とする回転電機。
【請求項13】
請求項2乃至12のいずれか1項に記載の回転電機であって、
前記スリップリングの前記第1及び第2のブラシが接触する面に、複数の螺旋状の溝を設けたことを特徴とする回転電機。
【請求項14】
第1の励磁形回転電機、第2の励磁形回転電機、エンジン、変換器及び駆動用回転電機を冷却するためのブロアを備え、前記エンジンが駆動することで前記第1及び第2の励磁形回転電機で発電し、前記変換器を介して電力を供給するダンプトラック用回転電機システムであって、
前記第1及び第2の励磁形回転電機は、請求項2乃至13のいずれか1項に記載の回転電機であることを特徴とするダンプトラック用回転電機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機及びそれを用いたダンプトラック用回転電機システムに係り、特に、フレーム内に励磁電流が異なる励磁形回転電機が複数台配置され、それぞれの励磁形回転電機への給電装置としてブラシ方式を適用したものに好適な回転電機及びそれを用いたダンプトラック用回転電機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスを削減するために、鉄道車両や建設車両等では、従来のディーゼルエンジンを動力源として駆動する方式から電動駆動による方式が採用されている。電動駆動式の場合、電力を供給する電源はディーゼル発電機となり、ディーゼルエンジンそのもので駆動するよりも、低燃費でシステム効率も向上する。
【0003】
電動駆動式のエンジン発電機には、励磁形回転電機が多く採用されており、励磁形回転電機の場合、回転子に直接励磁電流を通電して制御できるため、力率1.0の運転が可能であり、誘導回転電機よりも高効率である。
【0004】
しかしながら、励磁形回転電機の場合、回転子を励磁するための給電装置が必要になる。給電装置の方式としては2種類あり、ブラシ、スリップリングを用いたブラシ方式と、固定子側に直流通電し、回転子に三相巻線を施すことで、無接触で励磁電流を通電できるACエキサイター方式が挙げられる。メンテンナス性の観点では、無接触のACエキサイター方式が有効であるが、単純構造で低コストなブラシ方式も採用されている。
【0005】
ところで、鉄道車両や建設車両等の電源供給用に適用される励磁形回転電機は、車体を駆動させための電源(トラクション用)と、その他のアクセサリー用の補助電源の2系統を有することになる。この2系統は、用途が全く異なるため、双方の容量、電気特性は全く異なる仕様となる。
【0006】
このため、励磁形回転電機のフレーム内に容量、電気特性が異なる励磁形回転電機が2台配置され、回転する同軸上に回転子が2台連なる構成となり、上述したブラシ方式を適用している場合には、回転子2台分に励磁電流を供給する必要があるため、通常の1台構成よりもブラシの数も2倍となる。
【0007】
また、ブラシ方式の欠点は、ブラシ自体に摩耗や変形が生じやすく、ブラシに起因する故障も発生するため、定期点検やブラシの交換作業が必要となり、メンテナンス性が悪いことであり、更に、励磁形回転電機が2台構成の場合、励磁電流も異なることからブラシの摩耗量等も励磁形回転電機の運転パターン等で差が生じるため、故障リスクにも差が生じることになる。
【0008】
よって、励磁形回転電機が2台構成でのブラシ方式におけるブラシの摩耗量、変形、故障リスクを低減することが必要となる。
【0009】
このようなことから、2台構成の励磁形回転電機の給電装置としてブラシ方式を用いた場合の上記欠点を解消する構成が検討されており、その先行技術文献として、例えば、特許文献1が挙げられる。
【0010】
上記特許文献1は、発電機の構成が2台で、それぞれの給電装置がブラシ方式あり、一方の発電機はバッテリー供給に用いられ、もう一方の発電機は駆動用電動機に供給するために用いられている。バッテリー供給の発電機の励磁電流は、電動機に供給する発電機の励磁電流より小さくなるように電流制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した特許文献1には、システムの他に、発電機内部の構造が示されている。特に、特許文献1の
図2には、フレーム内に2台の発電機が配置され、回転軸上に2台の発電機が連なっており、回転子の給電装置であるブラシは、回転軸を回転支持する軸受直近と、回転子の軸方向中心付近の2ヶ所に配置されている構成が記載されている。
【0013】
一般に、ブラシの摩耗や変形する要因は、電気的要因と機械的要因が挙げられるが、上述した特許文献1の構成の場合、回転子の軸方向の中央に配置されたブラシの摩耗、変形が機械的要因によって生じる可能性が高いと考えられる。
【0014】
これは、後述するが、回転子の撓みが最も大きくなる箇所は、軸受での回転支持から最も離れた位置であるからと考えられる。
【0015】
特許文献1の
図2では、ブラシの位置が回転子の軸方向中心付近に配置されていることから、回転子の撓みによる機械的要因の影響が大きくなる。また、特許文献1の構成は、2つの回転子を励磁する電流に差を設けた構成であるが、どの位置に配置されたブラシに通電するか不明であるため、通電による電気的要因と機械的要因の影響が最も低減される構成とは言えない。
【0016】
このようなことから、特許文献1に記載されている構成では、ブラシの長期健全性を確保するには問題があると言わざるを得ない。
【0017】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ブラシ方式での給電による励磁形回転電機のブラシの機械的要因による摩耗、変形を低減し、ブラシの長期健全性を確保できる回転電機及びそれを用いたダンプトラック用回転電機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の回転電機は、上記目的を達成するために、フレームと、該フレーム内に設置された励磁電流が異なる複数の励磁形回転電機と、励磁電流が異なるそれぞれの前記励磁形回転電機に電流を供給する少なくともブラシを有する給電装置と、励磁電流が異なるそれぞれの前記励磁形回転電機の回転子と締結し、前記回転子と共に回転するシャフトと、該シャフトを回転支持する軸受とを備えた回転電機であって、励磁電流が異なるそれぞれの前記励磁形回転電機に電流を供給する複数の前記ブラシを、励磁電流が高い順に前記軸受側から順次軸方向中心に向かって配置したことを特徴とするか、
或いは、フレームと、該フレーム内に設置された励磁電流が異なる第1及び第2の励磁形回転電機と、前記第1及び第2の励磁形回転電機のそれぞれに電流を供給する第1及び第2のブラシとスリップリングと、前記第1及び第2の励磁形回転電機の回転子と締結し、前記回転子と共に回転するシャフトと、該シャフトを回転支持する軸受とを備えた回転電機であって、前記第1及び第2のブラシは、前記軸受と前記第1の励磁形回転電機との間に配置され、かつ、前記第1及び第2のブラシのうち励磁電流の高い方のブラシが前記軸受側に配置されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のダンプトラック用回転電機システムは、上記目的を達成するために、第1の励磁形回転電機、第2の励磁形回転電機、エンジン、変換器及び駆動用回転電機を冷却するためのブロアを備え、前記エンジンが駆動することで前記第1及び第2の励磁形回転電機で発電し、前記変換器を介して電力を供給するダンプトラック用回転電機システムであって、前記第1及び第2の励磁形回転電機は、上記構成の回転電機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブラシ方式での給電による励磁形回転電機のブラシの機械的要因による摩耗、変形を低減し、ブラシの長期健全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の回転電機の実施例1を示す全体構成図である。
【
図2】
図1のA-A´線に沿った断面を示し、極数8極のうちの1極を示す断面図である。
【
図3】
図1のB-B´線に沿った断面を示し、極数10極のうちの1極を示す断面図である。
【
図4】
図1における給電装置近傍を拡大して示す図である。
【
図5】機械的要因となる回転子における支点と撓みの関係を説明するための図である。
【
図6】電気的要因となる電流密度とブラシ摩耗量の関係を説明するための特性図である。
【
図7】本発明の回転電機の実施例2を示し、給電装置近傍を拡大して示す図である。
【
図8】本発明の回転電機の実施例3を示し、給電装置近傍を拡大して示す図である。
【
図9(a)】
図7の実施例2におけるロッドと零相ブラシとの絶縁関係を説明するための図である。
【
図9(b)】
図8の実施例3におけるロッドと零相ブラシとの絶縁関係を説明するための図である。
【
図10】本発明の回転電機の実施例4を示す全体構成図である。
【
図11】
図10のC-C´線に沿った断面を示し、極数10極のうちの1極を示す断面図である。
【
図12】本発明の回転電機の実施例5示し、給電装置近傍を拡大して示す図である。
【
図13】本発明の回転電機の実施例6を示し、スリップリングとブラシとの軸方向幅の寸法関係を説明するための図である。
【
図14】本発明の回転電機の実施例7を示し、給電装置を軸方向から見た図である。
【
図15】本発明の回転電機の実施例8を示し、給電装置の拡大図である。
【
図16】本発明の実施例9であり、ダンプトラック用回転電機システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の回転電機及びそれを用いたダンプトラック用回転電機システムを説明する。なお、各図において、同一構成部品は同符号を使用する。
【実施例0023】
図1に、本発明の回転電機100の実施例1の全体構成を示し、主にエンジンと接続して使用する回転電機100である。本実施例の回転電機100の回転速度は、数千min-1クラスの回転電機であり、大型ダンプトラック用の電源として適用される。
【0024】
図1に示すように、フレーム1内には、第1の励磁形回転電機2、第2の励磁形回転電機3、第1の励磁形回転電機2の回転子4、第2の励磁形回転電機3の回転子6、第1の励磁形回転電機2の固定子5、第2の励磁形回転電機3の固定子7、第1の励磁形回転電機2の回転子4と第2の励磁形回転電機3の回転子6に励磁電流を通電するための給電装置8が配置されている。
【0025】
第1の励磁形回転電機2の回転子4と固定子5の軸方向端部には、回転子コイルエンド39a、固定子コイルエンド39bが突出し、第2の励磁形回転電機3の回転子6と固定子7の軸方向端部には、回転子コイルエンド40a、固定子コイルエンド40bが突出し、フレーム1には、第1の励磁形回転電機2の回転子4と第2の励磁形回転電機3の回転子6が回転するための軸受9が、回転子4と回転子6が篏合されたシャフト10を回転可能に支持するように設けてある。
【0026】
図1では、上述したように、エンジンと接続するため軸受9が無い方は、エンジン側(
図1の右側)の軸受(図示せず)で支えることとなる。無論、回転電機100の両側に軸受9を設けて、シャフト10を回転可能に支持しても問題は無い。
【0027】
図1のフレーム1には、冷媒が流入する流入口11が形成されており、後述するが、流入口11に入る冷媒12は、回転電機100とは別に配置するブロア301(
図16参照)により送り込まれる。冷媒12は、流入口11から
図1の右方向に流れ、矢印で示すように大気(開放)へ流出される。
【0028】
図2は、
図1のA-A´線に沿った断面を示し、極数8極のうちの1極を示す断面図である。
【0029】
図2に示すように、第1の励磁形回転電機2の回転子4及び固定子5を構成する主な部品として、回転子鉄心13と、この回転子鉄心13と径方向に所定のギャップ17をもって対向配置された固定子鉄心14と、回転子鉄心13に巻回された界磁コイル15と、固定子鉄心14のスロットに巻回された固定子コイル16と、回転子鉄心13の頭部に配置されたポールシュー18と、固定子鉄心14のスロットに巻回された固定子コイル16を固定する固定子楔19とで概略構成されている。
【0030】
第1の励磁形回転電機2の回転子鉄心13とポールシュー18は、ボルト或いはダブテイル構造により接続され、固定子5とフレーム1の固定部は、周方向に所定の間隔をもって位置しており、その固定部の間のフレーム1には、軸方向に冷媒12を流すための第1の励磁形回転電機2の背面ダクト20が設けられている。
【0031】
図3は、
図1のB-B´線に沿った断面を示し、極数10極のうちの1極を示す断面図である。
【0032】
図3に示すように、第2の励磁形回転電機3の回転子6、固定子7を構成する主な部品として、回転子鉄心21と、この回転子鉄心21と径方向に所定のギャップ25をもって対向配置された固定子鉄心22と、回転子鉄心21のスロットに巻回された界磁コイル23と、固定子鉄心22のスロットに巻回された固定子コイル24と、回転子鉄心21の界磁コイル23の周方向間の頭部に設けられたダンパーバー26と、回転子鉄心21のスロットに巻回された界磁コイル23を固定する回転子楔27と、固定子鉄心22のスロットに巻回された固定子コイル24を固定する固定子楔28とで概略構成されている。
【0033】
第2の励磁形回転電機3の回転子鉄心21の内径側には、軸方向に冷媒12を流すためのアキシャルダクト29が設けられており、固定子7とフレーム1の固定部は、周方向に所定の間隔をもって位置しており、その固定部の間には軸方向に冷媒12を流すための第2の励磁形回転電機3の背面ダクト30が設けられている。
【0034】
従って、フッレーム1に形成された流入口から流入した冷媒12が流れる順序は、給電装置8、第1の励磁形回転電機2の通風路(ギャップ17、背面ダクト20)を流れ、第2の励磁形回転電機3の通風路(ギャップ25、アキシャルダクト29、背面ダクト30)を経由して大気に放出される。
【0035】
背景技術で説明したように、本実施例の回転電機100は、補助電源用と駆動用電源(以下、主電源という)の励磁形回転電機2台の構成となる。電源容量としては、補助電源<主電源の関係となり、補助電源が数百kVA、主電源が数千kVAとなる。両者の励磁形回転電機は、同軸上で同じ回転速度で回転するため、容量の大きい方が励磁形回転電機の体格も大きくなり、同様に回転子の励磁電流も容量が大きい方が大きくなる。
【0036】
このことを踏まえると、
図1からも明らかなように、第1の励磁形回転電機2が補助電源となり、第2の励磁形回転電機3が主電源となる。励磁電流の大きさも、第1の励磁形回転電機2の回転子4<第2の励磁形回転電機3の回転子6の関係となる。
【0037】
図4に、第1の励磁形回転電機2の回転子4と第2の励磁形回転電機3の回転子6に励磁電流を通電するための給電装置8を拡大して示す。
【0038】
図4に示すように、給電装置8は、スリップリング31、ブラシ32、ブラシホルダー33及びロッド34で構成されている。
【0039】
図示してないが、励磁用電源とブラシ32が接続されており、励磁電流は、ブラシ32とスリップリング31が摺動接触して第1の励磁形回転電機2の回転子4と第2の励磁形回転電機3の回転子6へ供給されている。ブラシ32は、ブラシホルダー33に格納され、ロッド34によりフレーム1にブラシホルダー33を固定している。ロッド34は、ブラシ同士の短絡を防止するため、通常は絶縁処理を施している。
【0040】
図4に示すように、励磁電流を供給する接点は、第1のブラシ35a、第2のブラシ35bの電流の正負を一対とする2組が配置されており、第1のブラシ35aと第2のブラシ35bブラシは、寸法、形状、材質は全て同一である。励磁電流は、第2のブラシ35bから第2の励磁形回転電機3の回転子6へ、第1のブラシ35aからは第1の励磁形回転電機2の回転子4へ供給されている。
【0041】
即ち、励磁電流が大きい方の第2のブラシ35b(ブラシの電流密度が高い)を軸受9の直近に配置し、励磁電流が小さい方の第1のブラシ35aを軸方向の中心側に配置している。
【0042】
このようなブラシ32の配置は、ブラシ32に対する電気的要因と機械的要因の関係から、本実施例の配置が最良と言える。
【0043】
図5に、機械的要因となる回転子における支点と撓みの関係を示す。
【0044】
図5に示すように、回転子は回転することで撓むことになるが、励磁形回転電機の定性的な構成から、回転部材は軸方向の中心付近に集中する。
【0045】
つまり、回転する自重が軸方向中心付近に集中することになるため、撓み量も多くなる。仮に、回転径が均一な回転子と考えた場合でも、回転支持(軸受)から最も離れた位置の撓み量が多くなる。よって、
図5に示すように、軸方向中心の撓みが最大となり、回転支持(軸受)に向かって撓み量は小さくなっていくことになる。
【0046】
これを踏まえ、
図4に示した軸方向中心側に配置された第2のブラシ35bが最も回転子の撓みによる影響が大きくなると言える。回転子の撓みにより、第2のブラシ35bは、スリップリング31により叩かれる作用が生じる。この作用により、軸方向中心側に配置された第1のブラシ35aは摩耗と変形が生じやすくなる。逆に軸受9の直近に配置された第2のブラシ35bは影響が小さいくなる。
【0047】
このことから、ブラシ32の配置順により機械的要因の影響が異なるため、ブラシ32の摩耗量、変形による不具合リスクに差が生じることとなる。
【0048】
図6に、電気的要因となる電流密度とブラシの摩耗量の関係を示す。
【0049】
図6に示すように、電流密度が高くなると、ブラシの摩耗量は図中Aで示すように非線形的に増加していく。上述した機械的要因を無視した場合の機械的要因による摩耗は、ブラシ32とスリップリング31の摺動による摩耗のみとなり、図中Bで示した点線となる。この機械的要因と電気的要因に対する摩耗量への影響は、電気的要因による摩耗量が支配的であることが知られている。
【0050】
上記の機械的要因と電気的要因の関係から、励磁電流が大きい第2のブラシ35bを軸受9の直近に配置することで、ブラシ32の異常摩耗、変形するリスクを低減できるため、ブラシ32の長期健全性を確保することができる。
【0051】
なお、上述した本実施例では、励磁形回転電機が2台の構成だが、励磁形回転電機が複数台の構成で励磁電流に差が生じる場合は、ブラシ32を励磁電流が大きい順に軸受9の直近から順次、軸方向中心側に向かって配置すれば良い。
【0052】
このような本実施例の構成とすることにより、ブラシ方式での給電による励磁形回転電機のブラシの機械的要因による摩耗、変形を低減し、ブラシの長期健全性を確保することができる。
零相ブラシ36の目的は軸電圧を放電するために設けており、軸電圧による電流が発生しにくく、或いは励磁電流に対して微小な場合、ブラシ32の摩耗する要因は機械要因が支配的となるため、零相ブラシ36は軸方向中心側に配置されることになる。