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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012972
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】意思決定支援システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20220111BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115177
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】515118999
【氏名又は名称】メドケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明石 英之
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】保険組織による、被保険者の健康増進または健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援することができる意思決定支援システムを提供する。
【解決手段】意思決定支援システムにおいて、被保険者の健康状態情報と、医療費情報と、保険組織の拠出金情報と、被保険者の健康状態の改善又は維持のための対象施策情報とを記憶するサーバ記憶部110、健康状態情報、医療費情報、拠出金情報及び対象施策情報に基づいて、対象施策の目標を達成した場合又は対象施策を行わない場合の、将来の所定の期間における保険組織負担金と、拠出金と、対象施策の実行に必要な費用の低減又は増加の度合の予測を行う予測部と、予測部による予測結果を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保険組織に加入する被保険者の健康状態を示す健康状態情報と、該被保険者の医療費の額を示す医療費情報と、該保険組織が国に支払う拠出金の額を示す拠出金情報と、該被保険者の健康状態の改善又は維持のための施策であって、該施策の目標を達成することにより該拠出金が低減され又は該目標を達成しないことにより該拠出金が増加される対象となる対象施策の内容及びその実行に必要な費用の額並びに該拠出金の低減又は増加の度合を示す対象施策情報と、を記憶する記憶部と、
前記健康状態情報、前記医療費情報、前記拠出金情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記対象施策の前記目標を達成した場合又は該対象施策を行わない場合の、将来の所定の期間における医療費のうち前記保険組織が負担する保険組織負担金と、前記拠出金と、該対象施策の実行に必要な費用と、の低減又は増加の度合の予測を行う予測部と、
を備えることを特徴とする意思決定支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の意思決定支援システムにおいて、
前記記憶部に記憶されている前記対象施策は複数であり、
前記予測部は、複数の前記対象施策それぞれについて前記予測を行うように構成されており、
前記予測部の予測結果に基づいて、前記対象施策の前記目標を達成した場合の前記将来の所定の期間における前記保険組織負担金、前記拠出金及び該対象施策の実行に必要な費用の合計の低減の度合が大きい順に1以上の該対象施策を選択し、又は該対象施策を行わない場合の該将来の所定の期間における該保険組織負担金及び該拠出金の合計の増加の度合が大きい順に1以上の該対象施策を選択する選択部を備える
ことを特徴とする意思決定支援システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の意思決定支援システムにおいて、
前記被保険者が勤務する勤務先組織における該被保険者の勤務日数又は残業時間を含む勤怠状況を示す勤怠情報を取得する勤怠情報取得部を備え、
前記対象施策情報は、前記勤怠情報に示される前記勤怠状況を改善するための施策に関する情報を含み、
前記予測部は、前記勤怠情報、前記医療費情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されている
ことを特徴とする意思決定支援システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の意思決定支援システムにおいて、
前記被保険者が勤務する勤務先組織における該被保険者の業務の生産性に関する情報である生産性情報を取得する生産性情報取得部を備え、
前記対象施策情報は、前記生産性情報に含まれる前記被保険者の生産性を改善するための施策に関する情報を含み、
前記予測部は、前記生産性情報、前記医療費情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されている
ことを特徴とする意思決定支援システム。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の意思決定支援システムにおいて、
前記被保険者の物品購入の履歴に関する情報である購入履歴情報を取得する購入履歴情報取得部と、
前記購入履歴情報から前記被保険者の健康状態の悪化の要因となりうる購入傾向を認識する購入傾向認識部とを備え、
前記対象施策情報は、前記購入傾向認識部により認識された前記購入傾向を改善するための施策に関する情報を含み、
前記予測部は、前記購入傾向、前記医療費情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されている
ことを特徴とする意思決定支援システム。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の意思決定支援システムにおいて、
前記医療費情報は、医師により処方された医薬品の種類及び金額を特定する医薬品処方情報を含み、
前記医療費情報から、前記医薬品処方情報を取得する医薬品処方情報取得部を備え、
前記対象施策情報は、医師により処方された前記医薬品の代わりに、医師による処方が不要であり該医薬品と同種の薬効を有する代替品の購入を促す施策に関する情報を含み、
前記予測部は、前記医薬品処方情報を含む前記医療費情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されている
ことを特徴とする意思決定支援システム。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の意思決定支援システムにおいて、
前記予測部は、少なくとも第1所定期間と、該第1所定期間よりも未来の期間を含む第2所定期間と、を含む将来の複数の所定の期間について前記予測を行うように構成されている
ことを特徴とする意思決定支援システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の意思決定支援システムにおいて、
前記対象施策を行う前及び行った後の該対象施策の効果を示す効果指標情報を取得する効果指標取得部を備え、
前記予測部は、前記対象施策を行う前及び行った後の前記効果指標情報、前記医療費情報、前記拠出金情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されている
ことを特徴とする意思決定支援システム。
【請求項9】
請求項8に記載の意思決定支援システムにおいて、
前記効果指標取得部は、前記被保険者が勤務する勤務先組織ごとの前記効果指標情報を取得するように構成されており、また前記対象施策を行った後の該効果指標情報を取得できない該勤務先組織については該勤務先組織と同種の他の勤務先組織の該対象施策を行った後の前記効果指標情報を取得して、該取得した効果指標情報に基づいて該対象施策を行った後の該効果指標情報を推定するように構成されており、
前記予測部は、前記効果指標取得部により取得又は推定された前記対象施策を行う前及び行った後の前記効果指標情報、前記医療費情報、前記拠出金情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されている
ことを特徴とする意思決定支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、健康管理介入支援システムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-226166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、対象者の基本的属性、身体的情報、健康心理的情報、遺伝子学的情報等に基づいて、対象者の健康管理への介入プログラムを選定することができる。
【0005】
特許文献1のようなシステムを、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援するシステムに応用することが考えられる。
【0006】
健保組合などの保険組織は、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策を行うことを主要な業務の一つとしている。
【0007】
被保険者の健康増進又は健康維持のための施策を行い、当該施策の目標を達成することで、中長期的には医療費が下がり、また短期的には国への拠出金が低減される制度があるため、保険組織にはこれらの施策を行う動機づけがある。
【0008】
施策の実行には保険組織側の費用負担を伴うが、保険組織の事業費の内訳を見ると、50%が医療費、40%が国への拠出金であり、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策に使うことのできる事業費は全体の10%に過ぎない。
【0009】
保険組織は、このように少ない事業費を実効性のある施策に効率よく配分して、医療費と国への拠出金を低減して、事業費を削減したいが、各施策がその費用に見合う効果を有するか否かが把握できない。
【0010】
結果的に、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を効率的に行うことができない。
【0011】
そこで本発明は、かかる課題に鑑み、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援することができる意思決定支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の意思決定支援システムは、
保険組織に加入する被保険者の健康状態を示す健康状態情報と、該被保険者の医療費の額を示す医療費情報と、該保険組織が国に支払う拠出金の額を示す拠出金情報と、該被保険者の健康状態の改善又は維持のための施策であって、該施策の目標を達成することにより該拠出金が低減され又は該目標を達成しないことにより該拠出金が増加される対象となる対象施策の内容及びその実行に必要な費用の額並びに該拠出金の低減又は増加の度合を示す対象施策情報と、を記憶する記憶部と、
前記健康状態情報、前記医療費情報、前記拠出金情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記対象施策の前記目標を達成した場合又は該対象施策を行わない場合の、将来の所定の期間における医療費のうち前記保険組織が負担する保険組織負担金と、前記拠出金と、該対象施策の実行に必要な費用と、の低減又は増加の度合の予測を行う予測部と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の意思決定支援システムによれば、対象施策の目標を達成した場合又は該対象施策を行わない場合の、将来の所定の期間における医療費のうち保険組織が負担する保険組織負担金と拠出金と、当該対象施策を行うために必要な費用の低減又は増加の度合が予測される。
【0014】
これにより、保険組織の担当者は施策がその費用に見合う効果を有しているか否かを、費用の増加度合又は低減度合により容易に知ることができ、当該施策の実行要否の意思決定を効率的に行うことができる。
【0015】
このように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援することができる。
【0016】
本発明の意思決定支援システムにおいて、
前記記憶部に記憶されている前記対象施策は複数であり、
前記予測部は、複数の前記対象施策それぞれについて前記予測を行うように構成されており、
前記予測部の予測結果に基づいて、前記対象施策の前記目標を達成した場合の前記将来の所定の期間における前記保険組織負担金、前記拠出金及び該対象施策の実行に必要な費用の合計の低減の度合が大きい順に1以上の該対象施策を選択し、又は該対象施策を行わない場合の該将来の所定の期間における該保険組織負担金及び該拠出金の合計の増加の度合が大きい順に1以上の該対象施策を選択する選択部を備えることが好ましい。
【0017】
本発明の意思決定支援システムによれば、予測部の予測結果に基づいて、選択部は対象施策の目標を達成した場合の将来の所定の期間における保険組織負担金、拠出金及び対象施策の実行に必要な費用の合計の低減の度合が大きい順に1以上の対象施策を選択する。
【0018】
あるいは選択部は、対象施策を行わない場合の将来の所定の期間における保険組織負担金及び拠出金の合計の増加の度合が大きい順に1以上の対象施策を選択する。
【0019】
すなわち、施策の目標を達成することにより事業費を少なく抑えることができる対象施策又は施策を行わないことにより事業費を多くしてしまう対象施策がいずれであるかが出力される。
【0020】
これにより、保険組織の担当者はいずれの施策がその費用に見合う効果を有しているかを容易に知ることができ、複数ある施策のいずれを実行するべきかの意思決定を効率的に行うことができる。
【0021】
このように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための複数ある施策のいずれを実行するべきかの意思決定を支援することができる。
【0022】
本発明の意思決定支援システムにおいて、
前記被保険者が勤務する勤務先組織における該被保険者の勤務日数又は残業時間を含む勤怠状況を示す勤怠情報を取得する勤怠情報取得部を備え、
前記対象施策情報は、前記勤怠情報に示される前記勤怠状況を改善するための施策に関する情報を含み、
前記予測部は、前記勤怠情報、前記医療費情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されていることが好ましい。
【0023】
被保険者が勤務する勤務先組織における該被保険者の勤務日数(頻繁な休日出勤、長期又は頻繁な休暇・欠勤)又は残業時間(夜遅くまで働ている)を含む勤怠状況の改善は、被保険者の健康状態の維持及び改善に有効であり、将来的な保険組織負担金の増加の抑制に効果を有している。
【0024】
本発明の意思決定支援システムによれば、予測部は被保険者の勤務日数又は残業時間を含む勤怠状況を考慮して保険組織負担金等の低減又は増加の度合を予測する。
【0025】
これにより、保険組織の担当者は被保険者の勤怠状況を改善するための施策が将来的な保険組織負担金の増加を効果的に抑制できるか否かを容易に知ることができ、当該施策の実行要否の意思決定を効率的に行うことができる。
【0026】
このように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、勤怠状況の改善をとおした被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援することができる。
【0027】
本発明の意思決定支援システムにおいて、
前記被保険者が勤務する勤務先組織における該被保険者の業務の生産性に関する情報である生産性情報を取得する生産性情報取得部を備え、
前記対象施策情報は、前記生産性情報に含まれる前記被保険者の生産性を改善するための施策に関する情報を含み、
前記予測部は、前記生産性情報、前記医療費情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されていることが好ましい。
【0028】
被保険者が勤務する勤務先組織における該被保険者の業務の生産性の低下は、当該被保険者のまだ表面化していない健康状態の悪化の兆候である可能性がある。
【0029】
そのため、被保険者の業務の生産性の改善は、被保険者の健康状態の維持及び改善に有効であり、将来的な保険組織負担金の増加の抑制に効果を有している。
【0030】
本発明の意思決定支援システムによれば、予測部は被保険者の業務の生産性を考慮して保険組織負担金等の低減又は増加の度合を予測する。
【0031】
これにより、保険組織の担当者は被保険者の業務の生産性を改善するための施策が将来的な保険組織負担の増加を効果的に抑制できるか否かを容易に知ることができ、当該施策の実行要否の意思決定を効率的に行うことができる。
【0032】
このように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、業務の生産性の改善をとおした被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援することができる。
【0033】
本発明の意思決定支援システムにおいて、
前記被保険者の物品購入の履歴に関する情報である購入履歴情報を取得する購入履歴情報取得部と、
前記購入履歴情報から前記被保険者の健康状態の悪化の要因となりうる購入傾向を認識する購入傾向認識部とを備え、
前記対象施策情報は、前記購入傾向認識部により認識された前記購入傾向を改善するための施策に関する情報を含み、
前記予測部は、前記購入傾向、前記医療費情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されていることが好ましい。
【0034】
食生活の偏り、過度の飲酒、喫煙などは、被保険者の健康状態の悪化の要因となりうる。また被保険者の物品の購入履歴は、このような被保険者の健康状態の悪化の要因となりうる物品を購入する傾向にあるかどうかを如実に表す。
【0035】
そして、被保険者の健康状態の悪化の要因となりうる購入傾向を改善することは、被保険者の健康状態の維持及び改善に有効であり、将来的な保険組織負担金の増加の抑制に効果を有している。
【0036】
本発明の意思決定支援システムによれば、予測部は被保険者の物品の購入傾向を考慮して保険組織負担金等の低減又は増加の度合を予測する。
【0037】
これにより、保険組織の担当者は被保険者の物品の購入傾向を改善するための施策が将来的な保険組織負担金の増加を効果的に抑制できるか否かを容易に知ることができ、当該施策の実行要否の意思決定を効率的に行うことができる。
【0038】
このように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、物品の購入傾向の改善をとおした被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援することができる。
【0039】
本発明の意思決定支援システムにおいて、
前記医療費情報は、医師により処方された医薬品の種類及び金額を特定する医薬品処方情報を含み、
前記医療費情報から、前記医薬品処方情報を取得する医薬品処方情報取得部を備え、
前記対象施策情報は、医師により処方された前記医薬品の代わりに、医師による処方が不要であり該医薬品と同種の薬効を有する代替品の購入を促す施策に関する情報を含み、
前記予測部は、前記医薬品処方情報を含む前記医療費情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されていることが好ましい。
【0040】
医師により処方される医薬品の代わりに、医師による処方が不要であり該医薬品と同種の薬効を有する代替品を被保険者が購入すれば、被保険者は病院で診察・処方を受ける必要がないので、その分医療費が下がり結果的に保険組織負担金が低減される。
【0041】
また、当該代替品は医師により処方される医薬品と同種の薬効を有するので、被保険者の健康状態の改善又は維持の効果を損なわれない。
【0042】
そのため、医師により処方された医薬品の代わりに、医師による処方が不要であり該医薬品と同種の薬効を有する代替品の購入を促すことは、被保険者の健康状態の改善又は維持の効果を損なわずに保険組織負担金を低減させる効果を有している。
【0043】
本発明の意思決定支援システムによれば、予測部は医師により処方された医薬品の種類及び金額を考慮して保険組織負担金の低減又は増加の度合を予測する。
【0044】
これにより、保険組織の担当者は医師により処方された医薬品の代わりに、医師による処方が不要であり該医薬品と同種の薬効を有する代替品の購入を促す施策が保険組織負担金を効果的に低減できるか否かを容易に知ることができ、当該施策の実行要否の意思決定を効率的に行うことができる。
【0045】
このように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、代替品の購入を促して被保険者の健康状態の改善又は維持の効果を損なわずに保険組織負担金を低減させる施策の実行要否の意思決定を支援することができる。
【0046】
本発明の意思決定支援システムにおいて、
前記予測部は、少なくとも第1所定期間と、該第1所定期間よりも未来の期間を含む第2所定期間と、を含む将来の複数の所定の期間について前記予測を行うように構成されていることが好ましい。
【0047】
施策の内容や被保険者の状況によって、施策を行うことによる効果が短期的に表れる場合もあれば、長期間にわたって施策を行わなければその効果が表れない場合もある。そのため、短期的な予測と長期的な予測との両方を見て施策の実行要否を判断したいというニーズがある。
【0048】
本発明の意思決定支援システムによれば、予測部は、第1所定期間と、当該第1所定期間よりも未来の期間を含む第2所定期間と、を含む複数の期間の保険組織負担金等の低減又は増加の度合を予測する。
【0049】
これにより、保険組織の担当者は短期的・長期的両方の視点から施策の実行要否の意思決定を行うことができる。
【0050】
このように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の、短期的・長期的両方の視点からの意思決定を支援することができる。
【0051】
本発明の意思決定支援システムにおいて、
前記対象施策を行う前及び行った後の該対象施策の効果を示す効果指標情報を取得する効果指標取得部を備え、
前記予測部は、前記対象施策を行う前及び行った後の前記効果指標情報、前記医療費情報、前記拠出金情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されていることが好ましい。
【0052】
本発明の意思決定支援システムによれば、施策を行ったことによる効果を考慮して予測部が保険組織負担金の低減又は増加の度合を予測するので、保険組織の担当者は当該施策を継続的に実行すべきか否かの意思決定を実態に即して効率的に行うことができる。
【0053】
このように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を効率的に支援することができる。
【0054】
本発明の意思決定支援システムにおいて、
前記効果指標取得部は、前記被保険者が勤務する勤務先組織ごとの前記効果指標情報を取得するように構成されており、また前記対象施策を行った後の該効果指標情報を取得できない該勤務先組織については該勤務先組織と同種の他の勤務先組織の該対象施策を行った後の前記効果指標情報を取得して、該取得した効果指標情報に基づいて該対象施策を行った後の該効果指標情報を推定するように構成されており、
前記予測部は、前記効果指標取得部により取得又は推定された前記対象施策を行う前及び行った後の前記効果指標情報、前記医療費情報、前記拠出金情報及び前記対象施策情報に基づいて、前記予測を行うように構成されていることが好ましい。
【0055】
本発明の意思決定支援システムによれば、施策を行った後の該効果指標情報を取得できない勤務先組織については効果指標取得部が同種の勤務先組織の効果の実績に基づいて効果を推定して、予測部が当該推定された効果を考慮して保険組織負担金の低減又は増加の度合を予測する
これにより、保険組織の担当者は、同種の勤務先組織の効果の実績を参考にしながら、施策を実行すべきか否かの意思決定を効率的に行うことができる。
【0056】
このように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の効率的な意思決定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の意思決定支援システムの全体像を示すブロック図。
図2A】本発明の意思決定支援システムが処理に用いるデータの内容を示す図。
図2B】本発明の意思決定支援システムが処理に用いるデータの内容を示す図。
図2C】本発明の意思決定支援システムが処理に用いるデータの内容を示す図。
図2D】本発明の意思決定支援システムが処理に用いるデータの内容を示す図。
図3】本発明の意思決定支援システムの処理内容を示すフローチャート。
図4】本発明の意思決定支援システムの処理内容を示すイメージ図。
図5】本発明の意思決定支援システムの出力内容を示す図。
図6】本発明の意思決定支援システムの処理内容の変更例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0058】
<意思決定支援システムの構成>
まず図1及び図2A図2Dを用いて、本実施形態の意思決定支援システムの構成について説明する。なお同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0059】
本実施形態の意思決定支援システムは、例えばサーバ10と、保険組織情報部30と、を含んで構成される、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援するシステムである。
【0060】
サーバ10は、サーバ記憶部110と、サーバ制御部130と、を含んで構成される、例えばコンピュータである。サーバ10は、単一のコンピュータにより構成されていてもよく、複数のコンピュータにより構成されていてもよい。
【0061】
サーバ記憶部110は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により構成されている。サーバ記憶部110は、例えば健康状態情報DB111と、医療費情報DB113と、拠出金情報DB115と、対象施策情報DB117と、の各データベースのほか、意思決定支援システムの処理に必要な情報を記憶している。
【0062】
サーバ記憶部110が、本実施形態における記憶部として機能する。
【0063】
健康状態情報DB111は、保険組織に加入する被保険者の健康状態を示す健康状態情報を格納している。健康状態情報には、例えば図2Aに示す通り、被保険者を特定する情報としての被保険者IDと、氏名、勤務先組織名、年齢、性別などの被保険者属性情報と、特定健診の受診実績、糖尿病等の疾病の有無、受診勧奨の実績などの被保険者健康情報と、運動習慣、食生活習慣、喫煙習慣などの被保険者生活習慣情報が含まれている。
【0064】
医療費情報DB113は、被保険者の医療費の額を示す医療費情報を格納している。医療費情報には、例えば図2Bに示す通り、被保険者IDと、医療機関の名称、傷病名称、診療行為の内容、医療費金額などの診療情報と、必要に応じて、処方された医薬品の種類、医薬品の金額などの医薬品処方情報が含まれている。
【0065】
拠出金情報DB115は、保険組織が国に支払う拠出金の額を示す拠出金情報を格納している。拠出金情報には、例えば図2Cに示す通り、拠出金の算出の根拠となる、当該保険組織の保険料収入の金額及びそのうち拠出金として支払うべき金額の比率の情報が含まれている。あるいはこれに加えて又は代えて、拠出金の額の情報が含まれていてもよい。
【0066】
なお、健康状態情報DB111、医療費情報DB113、拠出金情報DB115には、例えば現在までの複数年分の情報が格納されている。
【0067】
対象施策情報DB117は、被保険者の健康状態の改善又は維持のための施策であって、施策の目標を達成することにより拠出金が低減され又は目標を達成しないことにより拠出金が増加される対象となる対象施策の内容及びその実行に必要な費用の額並びに拠出金の低減又は増加の度合を示す対象施策情報を格納している。
【0068】
対象施策情報には、例えば図2Dに示す通り、対象施策を特定する情報としての対象施策ID、施策内容、対象施策の目標となる対象項目の情報、その目標値、目標値を達成した場合又は達成しなかった場合の拠出金の低減又は増加の指標となる増減ポイント、対象施策を実行する場合に必要な費用(例えば一人当たりの単価など)及び、実行年度、実行対象などの対象施策の実行履歴の情報が含まれている。
【0069】
サーバ制御部130は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置、メモリ、及びI/O(Input/Output)デバイスなどにより構成されている。サーバ制御部130は、所定のプログラムを読み込んで実行することにより例えば予測部131として機能し、あるいはさらに、選択部133、勤怠情報取得部135、生産性情報取得部137、購入履歴情報取得部139、購入傾向認識部141、医薬品処方情報取得部143、効果指標取得部145として機能する。
【0070】
予測部131は、健康状態情報、医療費情報、拠出金情報及び対象施策情報に基づいて、対象施策の目標を達成した場合又は対象施策を行わない場合の、将来の所定の期間における医療費のうち保険組織が負担する保険組織負担金と、拠出金と、対象施策の実行に必要な費用の額と、の低減又は増加の度合の予測を行う。
【0071】
あるいはさらに予測部131は、勤怠情報、生産性情報、購入傾向、医薬品処方情報に基づいて、当該予測を行う。
【0072】
また予測部131は、少なくとも第1所定期間(例えば3年間など)と、第1所定期間よりも未来の期間を含む第2所定期間(例えば10年間など)と、を含む将来の複数の所定の期間について当該予測を行うように構成されてもよい。
【0073】
なお、保険組織負担金と、拠出金と、対象施策の実行に必要な費用との低減又は増加の度合の予測の手法としては種々の手法を採用しうるところである。
【0074】
すなわち例えば予測部131は、糖尿病などの特定の病気に関する受診の勧奨に関して当該予測を行う場合であれば、被保険者の健康状態及び受診勧奨の内容、種類その他のパラメータと医療費との相関関係を表す式あるいは当該相関関係を学習させたモデルなどの任意のアルゴリズムを用いて、当該パラメータから将来の所定の期間における医療費の変化を予測し、保険組織の負担率を当該医療費に乗じることで保険組織負担金の低減又は増加の度合を予測する。
【0075】
また予測部131は、拠出金については例えば、対象施策情報に含まれる、各目標値を達成した場合の増減ポイントの値に基づいてその低減又は増加の度合を予測する。
【0076】
そして予測部131は、対象施策の実行に必要な費用については例えば、健康状態情報から各対象施策の実行対象とすべき被保険者を特定してその人数を認識し、さらに任意のアルゴリズムを用いて、将来の所定の期間における各対象施策の目標の達成のために当該対象施策の実行対象とすべき被保険者の人数の変化を予測し、当該人数に、対象施策情報に含まれる、当該対象施策を実行する場合の一人当たりの単価などの費用を示す情報を乗じることで、将来の所定の期間における対象施策の実行に必要な費用の低減又は増加の度合を予測する。
【0077】
選択部133は、予測部131の予測結果に基づいて、対象施策の目標を達成した場合の将来の所定の期間における保険組織負担金、拠出金及び対象施策の実行に必要な費用の合計の低減又は増加の度合が大きい順に1以上の対象施策を選択し、又は対象施策を行わない場合の将来の所定の期間における保険組織負担金及び拠出金の合計の増加の度合が大きい順に1以上の対象施策を選択する。
【0078】
勤怠情報取得部135は、被保険者が勤務する勤務先組織における被保険者の勤務日数又は残業時間を含む勤怠状況を示す勤怠情報を取得する。
【0079】
生産性情報取得部137は、被保険者が勤務する勤務先組織における被保険者の業務の生産性に関する情報である生産性情報を取得する。
【0080】
購入履歴情報取得部139は、被保険者の物品購入の履歴に関する情報である購入履歴情報を取得する。
【0081】
購入傾向認識部141は、購入履歴情報取得部139が取得した購入履歴情報から被保険者の健康状態の悪化の要因となりうる購入傾向を認識する。
【0082】
医薬品処方情報取得部143は、医療費情報から、医師により処方された医薬品の種類及び金額を特定する医薬品処方情報を取得する。
【0083】
効果指標取得部145は、対象施策を行う前及び行った後の該対象施策の効果を示す効果指標情報を取得する。
【0084】
保険組織情報部30は、保険組織情報部制御部310と、出力部330と、を含んで構成される、保険組織の担当者が用いる例えばコンピュータである。保険組織情報部30は、保険組織ごとに備えられていてよい。
【0085】
保険組織情報部制御部310は、CPU等の演算処理装置、メモリ、及びI/Oデバイスなどにより構成されている。保険組織情報部制御部310は、所定のプログラムを読み込んで実行することにより例えば出力制御部311として機能する。
【0086】
出力制御部311は、予測部131による予測結果を、あるいはさらに選択部133が選択した対象施策に関する情報を、出力部330を介して出力する。
【0087】
出力部330は例えばディスプレイであるがそれに加えて又は代えて、プリンタ、スピーカであってもよい。
【0088】
通信ネットワーク90は、サーバ10と、保険組織情報部30とを相互に通信可能に接続する。
【0089】
<処理の概要>
次に、本実施形態の意思決定支援システムの処理内容について説明する。まず図3図5を参照して、意思決定支援システムによる一連の処理について説明する。
【0090】
<情報記憶処理>
意思決定支援システムによる一連の処理を開始すると、サーバ記憶部110に健康状態情報と、医療費情報と、拠出金情報と、対象施策情報とを記憶させる情報記憶処理が実行される(図3/S10)。
【0091】
情報記憶処理は、通信ネットワーク90を介して、例えばサーバ10により自動的に、保険組織のコンピュータ、医療機関のコンピュータ、被保険者の勤務先のコンピュータ等から上記の情報が取得されることにより実行されてもよく、あるいは例えば意思決定支援システムの操作者等の操作により記憶媒体を介して取得されてサーバ記憶部110に記憶される。
【0092】
また、それぞれの情報が任意のタイミングで個別に取得されてサーバ記憶部110に記憶されてもよい。
【0093】
<予測処理>
その後、予測部131は、将来の所定の期間における医療費のうち保険組織が負担する保険組織負担金と、拠出金と、対象施策の実行に必要な費用と、の低減又は増加の度合の予測を行う予測処理を実行する(図3/S150)。
【0094】
すなわち例えば予測部131は、サーバ記憶部110に記憶されている健康状態情報DB111、医療費情報DB113、拠出金情報DB115、対象施策情報DB117の各DBを参照して、健康状態情報、医療費情報、拠出金情報及び対象施策情報の情報を取得する。
【0095】
そして予測部131は、当該取得した情報に基づいて、対象施策の目標を達成した場合又は対象施策を行わない場合の、将来の所定の期間における保険組織負担金と、拠出金と、対象施策の実行に必要な費用と、の低減又は増加の度合の予測を行う。
【0096】
当該予測結果を表したものが、図4のグラフである。この例では、糖尿病の予備軍に対して糖尿病健診の受診勧奨を行うという「対象施策A」を実行して目標を達成した場合と、当該対象施策を行わなかった場合の保険組織負担金と、拠出金と、対象施策の実行に必要な費用との、低減又は増加の度合の今後10年間の予測が行われている。
【0097】
すなわち、図4の上側のグラフは、対象施策Aを実行する場合の予測結果である。糖尿病の予備軍に対して糖尿病健診の受診勧奨を行い、健診の受診が促進されるので、1~4年目は医療費が増えるため保険組織負担金が増加する。一方で、糖尿病が重症化するリスクが軽減され、あるいは快方に向かうことで、5年目以降は段階的に医療費が低減し、保険組織負担金が低減する。
【0098】
そして、受診勧奨を行うという目標が達成されるので、拠出金が1年目以降低減されている。
【0099】
また、糖尿病健診の受診勧奨を行うための事業費が1年目以降発生しているが、受診勧奨の効果によって、受診勧奨の対象となる被保険者が減っていくことに伴い、4年目以降は段階的に事業費が低減している。
【0100】
そして、図4の下側のグラフは、対象施策Aを実行しない場合の予測結果である。対象施策を行わない場合には、最初の数年は保険組織負担金の増加は緩やかだが、5年目から糖尿病が重症化する被保険者が出始めてその後急速に増加するため、保険組織負担金が5年目以降から急速に増加する。
【0101】
そして、対象施策を実行しなければ目標が達成されることもないので、拠出金は低減されない。また、対象施策を実行していないので、事業費は0である。
【0102】
その後に予測部131は、このような予測結果を保険組織情報部30に送信して、処理を終了する。
【0103】
<出力処理>
その後、サーバ10から上記のような予測結果を受信した保険組織情報部30の出力制御部311は、出力部330を介して予測結果等を出力する出力処理を実行する(図3/S190)。
【0104】
図5は、予測結果の画面表示を行う場合の一例であり、対象施策Aを実行する場合と実行しない場合とを比較するグラフである。本実施形態において出力制御部311は、サーバ10から受信した予測結果を用いて、対象施策を行った場合及び、行わなかった場合の費用の増減額を算出して、当該増減額に基づいて、当該対象施策を実行するべきか否かを示す情報を作成し、増減額の情報Bal、拠出金の低減又は増加の度合の情報Con及び対象施策を実行するべきか否かを示す情報Decを表示させている。あるいは出力制御部311は、図4に示したようなグラフを併せて表示させてもよい。
【0105】
図5によれば対象施策Aを実行した場合と実行しない場合とを比較した当初3年間の累積費用の増減額は9,600万円の増加であり、累積費用が低減に転じるのは8年目と予測されている。また10年目まで対象施策Aを実行した場合累積費用の増減額は2億350万円の低減と予測されている。
【0106】
以上説明したように本発明の意思決定支援システムによれば、保険組織による、被保険者の健康増進又は健康維持のための施策の実行要否の意思決定を支援することができる。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。以下に、その他の実施形態として、図6を用いて意思決定支援システムによる一連の処理の変更例について説明する。
【0108】
<変更実施形態>
本実施形態においては例えば、予測処理(図6/S150)の前に以下の各処理が必要に応じて行われる。
【0109】
<勤怠情報取得処理>
処理を開始すると勤怠情報取得部135は、被保険者が勤務する勤務先組織における被保険者の勤務日数又は残業時間を含む勤怠状況を示す勤怠情報を取得する(図6/S30)。
【0110】
勤怠情報取得部135は、勤怠情報を例えば被保険者の勤務先組織の勤怠管理システムから受信することにより取得する。
【0111】
そして、この場合に予測部131は、例えば後の予測処理(図6/S150)において、勤怠情報から例えば頻繁な休日出勤をしている被保険者、長期又は頻繁な休暇・欠勤をしている被保険者、あるいは深夜におよぶ残業を繰り返している被保険者を抽出する。
【0112】
また予測部131は、対象施策情報DB117を参照して勤怠情報に示される勤怠状況を改善するための施策を取得し、勤怠情報に基づく当該抽出結果、医療費情報及び勤怠状況を改善するための施策に関する対象施策情報に基づいて、上述の予測を行う。
【0113】
勤怠状況を改善するための施策としては例えば、被保険者の勤務先組織と連携した健康宣言の策定や、健康づくり等の共同事業などが考えられる。
【0114】
<生産性情報取得処理>
処理を開始すると生産性情報取得部137は、被保険者が勤務する勤務先組織における被保険者の業務の生産性に関する情報である生産性情報を取得する(図6/S50)。
【0115】
生産性情報としては、例えば被保険者の売り上げ実績、時間当たりの作業量、脳波などの生体情報から算出される生産性の指標、被保険者本人又はその業務の管理者に対するアンケートの回答の内容など種々の情報を採用しうる。
【0116】
そして、この場合に予測部131は、例えば後の予測処理(図6/S150)において、生産性情報から生産性の低い被保険者を抽出する。
【0117】
また予測部131は、対象施策情報DB117を参照して生産性情報に含まれる被保険者の生産性を改善するための施策を取得し、生産性情報に基づく当該抽出結果、医療費情報及び生産性を改善するための施策に関する対象施策情報に基づいて、上述の予測を行う。
【0118】
生産性を改善するための施策としては、運動習慣改善、こころの健康づくりのための健康教室などが考えられる。
【0119】
<購入履歴情報取得処理>
処理を開始すると購入履歴情報取得部139は、被保険者の物品購入の履歴に関する情報である購入履歴情報を取得する(図6/S70)。
【0120】
購入履歴情報としては、例えば被保険者の勤務先の売店の決済システムから得られる購入履歴の情報、クレジットカード、電子マネーの利用履歴、紙の領収書など種々の情報を採用しうる。
【0121】
<購入傾向認識処理>
購入傾向認識処理の後に、購入傾向認識処理は開始される(図6/S90)。処理を開始すると購入傾向認識部141は、購入履歴情報から被保険者の健康状態の悪化の要因となりうる購入傾向を認識する。
【0122】
より具体的には、購入傾向認識部141は、購入履歴情報を解析して、例えば食生活の偏り、過度の飲酒、喫煙の有無などを推定し、そのような健康状態の悪化の要因となりうる購入傾向のある被保険者を抽出する。
【0123】
そして、購入履歴情報取得処理及び購入傾向認識処理が実行される場合に予測部131は、後の予測処理(図6/S150)において、対象施策情報DB117を参照して購入傾向認識部により認識された購入傾向を改善するための施策を取得し、購入履歴情報に基づく購入傾向認識部141による抽出結果、医療費情報及び購入傾向を改善するための施策に関する対象施策情報に基づいて、上述の予測を行う。
【0124】
購入傾向を改善するための施策としては、料理教室、社食での健康メニューの提供など食生活の改善のための事業、あるいは禁煙保健指導、勤務先組織と連携した個別禁煙相談、禁煙セミナー、事業所敷地内の禁煙等などが考えられる。
【0125】
<医薬品処方情報取得処理>
医薬品処方情報取得部143は、医師により処方された医薬品の種類及び金額を特定する医薬品処方情報が医療費情報に含まれている場合に、医薬品処方情報取得処理を実行する(図6/S110)。
【0126】
処理を開始すると医薬品処方情報取得部143は、医療費情報DB113を参照して、医療費情報から、医師により処方された医薬品の種類及び金額を特定する医薬品処方情報を取得する。
【0127】
そして、この場合に予測部131は、例えば後の予測処理(図6/S150)において、医薬品処方情報から医師による処方が不要であり該医薬品と同種の薬効を有する代替品で置き換えが可能な医薬品の処方を受けた被保険者を抽出する。
【0128】
また予測部131は、対象施策情報DB117を参照して、医師により処方された医薬品の代わりに、医師による処方が不要であり医薬品と同種の薬効を有する代替品の購入を促す施策を取得し、医薬品処方情報に基づく当該抽出結果、医療費情報及び生産性を改善するための施策に関する対象施策情報に基づいて、上述の予測を行う。
【0129】
代替品の購入を促す施策としては、医師による処方が不要であり医薬品と同種の薬効を有する代替品であるいわゆるOTC医薬品に変更した場合の差額の通知などが考えられる。
【0130】
<効果指標取得処理>
処理を開始すると効果指標取得部145は、対象施策を行う前及び行った後の対象施策の効果を示す効果指標情報を取得する(図6/S130)。
【0131】
より具体的には効果指標取得部145は、例えば過去の対象施策の実行履歴をサーバ記憶部110に記憶しておくかあるいは外部から取得し、当該実行履歴に含まれる対象施策が改善又は維持の目的とする健康状態の、対象施策の実行前後における値を取得して、当該取得結果を、対象施策を行う前及び行った後の効果指標情報として取得する。
【0132】
あるいは対象施策が勤怠状況、生産性、購入傾向の改善を目的としたものである場合は、効果指標取得部145は、それぞれ勤怠情報、生産性情報、購入履歴情報を参照して、その対象施策の前後における値を取得して当該取得結果を、対象施策を行う前及び行った後の効果指標情報として取得する。
【0133】
また、対象施策が医師により処方された医薬品の代わりに、医師による処方が不要であり該医薬品と同種の薬効を有する代替品の購入を促すことを目的としたものである場合は、効果指標取得部145は、医薬品処方情報と購入履歴情報とを参照して、対象施策の前後における情報を認識して当該認識結果を、対象施策を行う前及び行った後の効果指標情報として取得する。
【0134】
あるいは例えば効果指標取得部145が、被保険者が勤務する勤務先組織ごとの効果指標情報を取得するように構成されている場合において、対象施策を行う前及び行った後の効果指標情報を取得するときに、対象施策を行った後の効果指標情報を取得できない(すなわち例えば当該対象施策を実行したことがないなどの)勤務先組織がある場合に効果指標取得部145は、該勤務先組織と同種の他の勤務先組織の対象施策を行った後の効果指標情報を取得して、当該取得した効果指標情報に基づいて該対象施策を行った後の効果指標情報を推定する。
【0135】
そして当該推定を行った後に効果指標取得部145は、例えば直近の効果指標情報を、対象施策を行う前の効果指標情報として、当該推定した対象施策を行った後の効果指標情報を、対象施策を行った後の効果指標情報として、それぞれ取得する。
【0136】
そして、この場合に予測部131は、例えば後の予測処理(図6/S150)において、効果指標取得部145により取得又は推定された、対象施策を行う前及び行った後の効果指標情報、医療費情報、拠出金情報及び対象施策情報に基づいて、前記予測を行うに基づいて、上述の予測を行う。
【0137】
また本実施形態においては、記憶部に記憶されている対象施策が複数である場合に、予測処理の後に選択処理が必要に応じて行われる(図6/S170)。
【0138】
<選択処理>
処理を開始すると選択部133は、予測部131の予測結果に基づいて、対象施策の目標を達成した場合の将来の所定の期間における保険組織負担金、拠出金及び該対象施策の実行に必要な費用の合計の低減の度合が大きい順に1以上の該対象施策を選択する。
【0139】
すなわち例えば選択部133は、対象施策の目標を達成した場合の将来の所定の期間における保険組織負担金の額及び該対象施策の実行に必要な費用の合計額が少ない順に1以上の対象施策を選択する。そして当該合計額が同じ対象施策がある場合には、増減ポイントの低減のポイントが大きい対象施策を優先的に選択する。
【0140】
あるいは予測部131は、対象施策を行わない場合の将来の所定の期間における保険組織負担金及び拠出金の合計の増加の度合が大きい順に1以上の対象施策を選択する。
【0141】
すなわち例えば選択部133は、対象施策を実行しない場合の将来の所定の期間における保険組織負担金の額が多い順に1以上の対象施策を選択する。そして当該額が同じ対象施策がある場合には、増減ポイントの増加のポイントが大きい対象施策を優先的に選択する。
【0142】
そして例えば予測部131は、当該選択結果を上述の予測結果と共に保険組織情報部30に送信する。
【0143】
この場合、続く出力処理(図6/S190)において出力制御部311は、予測部131の予測結果と共に、選択部133が選択した対象施策に関する情報を出力部330に出力する。
【0144】
以上、本発明の変更実施形態について説明したが、これに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、さらなる種々の変更が可能である。
【0145】
例えば上記においては、出力処理以外の各処理をサーバ10にて実行する実施例について説明したが、これに限定されない。すなわち例えばサーバ10が有する機能の一部又は全部が保険組織情報部30により実行されてもよい。当該機能の全部が保険組織情報部30により実行される場合には、サーバ10は省略されてよい。
【0146】
あるいは上記においては、拠出金の低減又は増加の度合について、増減ポイントの値で表す実施形態について説明したが、これに限定されない。
【0147】
すなわち例えば、予測部131は、拠出金の算出の根拠となる、保険組織の保険料収入の金額を過去の保険料収入の金額から推定し、そのうち拠出金として支払うべき金額の比率を過去の当該比率及び増減ポイントに基づいて推定し、これらの推定結果を用いて拠出金の金額を予測するように構成されていてもよい。
【0148】
この場合に選択部133は例えば、対象施策の目標を達成した場合の将来の所定の期間における保険組織負担金の額、拠出金の額及び該対象施策の実行に必要な費用の合計額が少ない順に1以上の対象施策を選択するように構成され、対象施策を実行しない場合の将来の所定の期間における保険組織負担金の額及び拠出金の額の合計額が多い順に1以上の対象施策を選択するように構成される。
【0149】
あるいは例えば予測部131は、健康状態情報、医療費情報及び対象施策情報に基づいて、対象施策の目標を達成した場合又は該対象施策を行わない場合の、複数の被保険者それぞれが勤務する勤務先組織ごとの前記予測を行うように構成されていてもよい。
【0150】
これにより、保険組織の担当者は当該施策を実行すべきか否かの意思決定を勤務先組織ごとにきめ細やかに効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0151】
110…サーバ記憶部、111…健康状態情報DB、113…医療費情報DB、115…拠出金情報DB、117…対象施策情報DB、131…予測部、133…選択部、135…勤怠情報取得部、137…生産性情報取得部、139…購入履歴情報取得部、141…購入傾向認識部、143…医薬品処方情報取得部、145…効果指標取得部、330…出力部。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6