(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129736
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】顔料分散ペースト、塗料組成物およびカチオン電着塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20220830BHJP
C09D 175/00 20060101ALI20220830BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20220830BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220830BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D175/00
C09D163/00
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028537
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】赤城 沙紀
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】宮前 治広
(72)【発明者】
【氏名】印部 俊雄
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA02
4J037CC21
4J037EE08
4J037FF21
4J038DA042
4J038DB061
4J038DG061
4J038DG161
4J038GA09
4J038KA03
4J038MA10
4J038NA03
4J038NA25
4J038PA04
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】塗料の硬化性を損なわない顔料分散ペースト、および、この顔料分散ペーストを含む塗料組成物およびカチオン電着塗料組成物を提供する。
【解決手段】顔料および分散樹脂を含み、前記分散樹脂は、ブロックポリイソシアネートを含み、前記ブロックポリイソシアネートは、疎水基を有する第1ブロックイソシアネート基と、親水基を有する第2ブロックイソシアネート基と、を有する、顔料分散ペースト。上記顔料分散ペーストと、塗膜形成樹脂と、硬化剤と、極性溶媒と、を含む、塗料組成物。上記顔料分散ペーストと、アミン化エポキシ樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、極性溶媒と、を含む、カチオン電着塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料および分散樹脂を含み、
前記分散樹脂は、ブロックポリイソシアネートを含み、
前記ブロックポリイソシアネートは、
疎水基を有する第1ブロックイソシアネート基と、
親水基を有する第2ブロックイソシアネート基と、を有する、顔料分散ペースト。
【請求項2】
前記疎水基は、炭素数3以上のオキシアルキレン基を含む、請求項1に記載の顔料分散ペースト。
【請求項3】
前記第1ブロックイソシアネート基は、第1ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成され、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(1):
R1-O-X1
n1-X2
n2-H
(式中、R1は炭素数1~8のアルキル基であり、X1は、炭素数3以上のオキシアルキレン基であり、X2は、X1とは異なるオキシアルキレン基であり、n1は1~50の整数であり、n2は0~50の整数である。)
で表される(オキシアルキレン)アルキルエーテルを含む、請求項2に記載の顔料分散ペースト。
【請求項4】
前記疎水基は、炭素数3以上のアルキル基を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散ペースト。
【請求項5】
前記第1ブロックイソシアネート基は、第1ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成され、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(2):
R2-(O-(CH2)a)n3-OH
(式中、R2は炭素数3~8のアルキル基であり、aは1~4の整数であり、n3は1~4の整数である。)
で表されるアルキレングリコールモノアルキルエーテルを含む、請求項4に記載の顔料分散ペースト。
【請求項6】
前記親水基は、アミノ基を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の顔料分散ペースト。
【請求項7】
前記第2ブロックイソシアネート基は、第2ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成され、
前記第2ブロック剤は、3級アミノ基を有するアルコールおよびジアミンの少なくとも一方を含む、請求項6に記載の顔料分散ペースト。
【請求項8】
前記顔料の固形分質量Wpと前記分散樹脂の固形分質量Wrとの比:Wp/Wrは、1/0.15以上、1/0.7以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の顔料分散ペースト。
【請求項9】
固形分濃度は、45質量%以上80質量%以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の顔料分散ペースト。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の顔料分散ペーストと、
塗膜形成樹脂と、
硬化剤と、
極性溶媒と、を含む、塗料組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の顔料分散ペーストと、
アミン化エポキシ樹脂と、
ポリイソシアネート化合物と、
極性溶媒と、を含む、カチオン電着塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散ペースト、塗料組成物およびカチオン電着塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料は、通常、樹脂とともに高濃度で溶媒に分散されたペーストの状態で、塗料に配合される。粒子状の顔料を、塗料にそのまま均一に分散させるのは困難なためである。水性塗料に配合されるペーストに含まれる樹脂(以下、分散樹脂と称す。)としては、例えば、4級アンモニウム基、3級スルホニウム基、1級および3級アミノ基等のカチオン基を有する樹脂が挙げられる(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗料は、通常、硬化性樹脂を含んでおり、被塗物に塗装された後、硬化される。しかし、上記のような分散樹脂を含む塗料は、十分に硬化しない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、塗料の硬化性を損なわない顔料分散ペーストを提供することである。本発明の目的は、また、上記顔料分散ペーストを含む塗料組成物およびカチオン電着塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記態様[1]~[11]を提供する。
[1]
顔料および分散樹脂を含み、
前記分散樹脂は、ブロックポリイソシアネートを含み、
前記ブロックポリイソシアネートは、
疎水基を有する第1ブロックイソシアネート基と、
親水基を有する第2ブロックイソシアネート基と、を有する、顔料分散ペースト。
【0007】
[2]
前記疎水基は、炭素数3以上のオキシアルキレン基を含む、上記[1]に記載の顔料分散ペースト。
【0008】
[3]
前記第1ブロックイソシアネート基は、第1ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成され、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(1):
R1-O-X1
n1-X2
n2-H
(式中、R1は炭素数1~8のアルキル基であり、X1は、炭素数3以上のオキシアルキレン基であり、X2は、X1とは異なるオキシアルキレン基であり、n1は1~50の整数であり、n2は0~50の整数である。)
で表される(オキシアルキレン)アルキルエーテルを含む、上記[2]に記載の顔料分散ペースト。
【0009】
[4]
前記疎水基は、炭素数3以上のアルキル基を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の顔料分散ペースト。
【0010】
[5]
前記第1ブロックイソシアネート基は、第1ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成され、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(2):
R2-(O-(CH2)a)n3-OH
(式中、R2は炭素数3~8のアルキル基であり、aは1~4の整数であり、n3は1~4の整数である。)
で表されるアルキレングリコールモノアルキルエーテルを含む、上記[4]に記載の顔料分散ペースト。
【0011】
[6]
前記親水基は、アミノ基を含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の顔料分散ペースト。
【0012】
[7]
前記第2ブロックイソシアネート基は、第2ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成され、
前記第2ブロック剤は、3級アミノ基を有するアルコールおよびジアミンの少なくとも一方を含む、上記[6]に記載の顔料分散ペースト。
【0013】
[8]
前記顔料の固形分質量Wpと前記分散樹脂の固形分質量Wrとの比:Wp/Wrは、1/0.15以上、1/0.7以下である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の顔料分散ペースト。
【0014】
[9]
固形分濃度は、45質量%以上80質量%以下である、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の顔料分散ペースト。
【0015】
[10]
上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の顔料分散ペーストと、
塗膜形成樹脂と、
硬化剤と、
極性溶媒と、を含む、塗料組成物。
【0016】
[11]
上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の顔料分散ペーストと、
アミン化エポキシ樹脂と、
ポリイソシアネート化合物と、
極性溶媒と、を含む、カチオン電着塗料組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塗料の硬化性を損なわない顔料分散ペーストが提供される。本発明によれば、さらに、上記顔料分散ペーストを含む塗料組成物およびカチオン電着塗料組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特許文献1に記載されているような分散樹脂は通常、塗料の硬化に寄与しない。そのため、塗料の硬化性が低下する場合がある。そこで、本実施形態では、分散樹脂として、少なくともブロックポリイソシアネートを用いる。ブロックポリイソシアネートのブロック剤は、加熱により解離する。生成したイソシアネート化合物は、塗料組成物において塗膜形成樹脂の硬化剤として作用し得る。つまり、分散樹脂として用いられるブロックポリイソシアネートは、硬化剤としても機能し得る。そのため、分散樹脂を含む塗料組成物の硬化性は損なわれず、さらには向上し得る。そして、分散樹脂は硬化塗膜の一部を構成するため、塗膜の耐食性も向上する。
【0019】
本実施形態で用いられるブロックポリイソシアネートは、分散樹脂としての性能にも優れる。分散樹脂は一般に、アンカー部分とバリアー部分とを有する。アンカー部分は、通常、分散樹脂の主骨格である。アンカー部分は、例えば疎水性であって、疎水性相互作用により分散樹脂を顔料に吸着させる。バリアー部分は、通常、主骨格に結合した側鎖である。バリアー部分は、例えばカチオン等の電荷を有しており、電荷同士の反発力により顔料の再凝集を抑制する。あるいは、バリアー部分は嵩高く、立体障害により顔料の再凝集を抑制する。アンカー部分によって顔料に分散樹脂が吸着すると、顔料の表面が分散樹脂で覆われ、粒子の凝集力が低下する。そのため、凝集していた顔料は、その後の機械的解砕により分散し易くなる。バリアー部分は、解砕された顔料間の空間を維持して、顔料の分散状態を安定化させる。
【0020】
本実施形態で用いられるブロックポリイソシアネートにおいて、側鎖に相当するイソシアネート基の一部は、疎水基を有するブロック剤によりブロックされ、残部は、親水基を有するブロック剤によりブロックされている。そのため、ブロックポリイソシアネートの側鎖に相当する部分は、アンカー部分に相当する性能(顔料の吸着性能)およびバリアー部分に相当する性能(分散状態を安定化する性能)の両方を発揮することができる。つまり、顔料の吸着性能は、分散樹脂の主骨格に加えて、側鎖によっても発揮されるため、顔料の分散性がより向上する。さらに、イソシアネート基の親水基は極性を有する。そのため、分散樹脂で覆われた顔料粒子は、極性溶媒を含む塗料組成物中に安定に分散する。
【0021】
顔料の分散性および分散安定性が十分でない場合、顔料分散ペーストにおける分散樹脂の量を多くする必要がある。上記の通り、一般的な分散樹脂は、塗料組成物の硬化に寄与しない。そのため、分散樹脂を多く含む顔料分散ペーストを塗料組成物に配合すると、塗料組成物の硬化性や、塗膜の耐食性が低下し易くなる。カチオン基を有する分散樹脂は、一般に親水性が高く、これを含む塗膜の耐食性はさらに低下し易い。
【0022】
本実施形態で用いられる分散樹脂によれば、顔料の分散性および分散安定性が高まるため、顔料分散ペーストおよび塗料組成物に占める分散樹脂の割合を小さくすることができる。そのため、塗料組成物に含まれる塗膜形成樹脂の固形分濃度を高めることができ、塗料組成物の硬化性は、さらに損なわれ難い。また、顔料の分散性および分散安定性が高まることで、顔料分散ペーストの固形分濃度を高めることができる。固形分濃度が高いと、顔料分散ペーストのバッチサイズを大きくすることができて、生産性が高まる。さらに、輸送コストが低減されて、コストカットが図れる。
【0023】
[顔料分散ペースト]
本実施形態に係る顔料分散ペーストは、顔料および分散樹脂を含む。分散樹脂は、ブロックポリイソシアネートを含む。ブロックポリイソシアネートは、疎水基を有する第1ブロックイソシアネート基と、親水基を有する第2ブロックイソシアネート基と、を有する。
【0024】
本実施形態に係る顔料分散ペーストは、特に、極性溶媒を含む塗料組成物、なかでもカチオン電着用の塗料組成物に好適に用いられる。
【0025】
顔料分散ペーストの固形分濃度は特に限定されない。顔料分散ペーストにおける顔料の分散性および分散安定性は高いため、顔料の濃度、ひいては顔料分散ペーストの固形分濃度を高めることができる。顔料分散ペーストの固形分濃度は、例えば、45質量%以上80質量%以下であってよい。上記固形分濃度は、50質量%以上が好ましい。上記固形分濃度は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。
【0026】
顔料分散ペーストの固形分とは、顔料分散ペースト中に含まれる成分であって、揮発成分(代表的には、溶媒)を除く全成分である。具体的には、固形分とは、顔料分散ペーストに含まれる、分散樹脂、顔料および必要に応じて添加される添加剤である。
【0027】
顔料分散ペーストは、分散樹脂、顔料および溶媒、必要に応じて添加剤を混合して得られる。顔料は、所定の均一な粒径になるまで、ボールミルやサンドグラインドミルなどの通常用いられる分散装置を用いて分散される。
【0028】
(分散樹脂)
分散樹脂は、顔料を分散させるための樹脂である。分散樹脂は、顔料とともにペースト中に分散している。分散樹脂は、ブロックポリイソシアネートを含む。ブロックポリイソシアネートは、複数のブロックされたイソシアネート基を有する。
【0029】
〈ブロックポリイソシアネート〉
ブロックポリイソシアネートの構造は、例えば、概念的に次のように表される。下記構造式(1)において、各ブロックイソシアネート基はウレタン結合(-NH-CO-O-)を有しているが、これに限定されるものではない。ブロックイソシアネート基は、ウレア結合(-NH-CO-NH-)を有していてもよい。
【0030】
【0031】
Rは、主骨格を構成している。複数のRは、それぞれ独立して脂肪族炭化水素であってよく、芳香族炭化水素であってよく、脂肪族および芳香族の炭化水素の双方を含んでいてよい。mは、0~5の整数が好ましく、0~3がより好ましい。
【0032】
Aは、疎水基を含むブロック基である。Bは、親水基を含むブロック基である。ブロックポリイソシアネートは、ブロック基Aによりブロックされた第1ブロックイソシアネート基と、ブロック基Bによりブロックされた第2ブロックイソシアネート基と、を有する。第1ブロックイソシアネート基および第2ブロックイソシアネート基の配置は特に限定されず、上記の構造式のように交互に配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。
【0033】
第1ブロックイソシアネート基と第2ブロックイソシアネート基との割合は、特に限定されない。顔料分散ペーストの安定性の点で、第1ブロックイソシアネート基の個数N1と第2ブロックイソシアネート基の個数N2との割合(=N1/N2)は、50/50~90/10が好ましく、60/40~80/20がより好ましい。
【0034】
ブロックポリイソシアネートにおいて、イソシアネート基のブロック化率は99%以上が好ましい。これにより、分散樹脂の性能がさらに発揮され易くなって、顔料の分散性および分散安定性がさらに向上する。ブロック化率は、100%がより好ましい。
【0035】
ブロックポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート原料と2種以上のブロック剤とを反応させることにより得られる。ポリイソシアネート原料は、1分子中に平均で2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されない。ポリイソシアネート原料としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2’-MDI、2,4’-MDI、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;これらの変性体(例えば、ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン等);ポリメリックMDIが挙げられる。なかでも、耐食性の点で、ポリメリックMDIが好ましい。ポリメリックMDIは、通常、MDIのモノマーとMDIのオリゴマーとの混合物である。
【0036】
ポリメリックMDIと2種のブロック剤とを反応させて得られるブロックポリイソシアネートの構造は、例えば、概念的に次のように表される。下記構造式(2)において、m、AおよびBは、上記の通りである。
【0037】
【0038】
ブロックポリイソシアネートの構造は、構造式(1)および(2)に限定されるものではない。ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート原料の三量体(例えば、ビューレット体、イソシアヌレート体)と、2種以上のブロック剤とを反応させることにより得られてもよい。
【0039】
《第1ブロックイソシアネート基》
第1ブロックイソシアネート基は、疎水基を有する。疎水基は、末端に位置していることが好ましい。疎水基は、ウレタン結合の酸素原子あるいはウレア結合の窒素原子に直接、結合していてもよいし、間接的に結合していてもよい。ウレタン結合の酸素原子あるいはウレア結合の窒素原子と疎水基との間には、例えば、アルキレン基等の脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基が介在していてもよい。
【0040】
疎水基は、非極性である限り特に限定されない。疎水基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基およびアルケニル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基およびベンジル基等の芳香族炭化水素基;炭素数3以上のアルコキシ基;炭素数3以上のオキシアルキレン基;フェノキシ基が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。疎水基の水素は、置換されていてもよい。例えば、芳香族炭化水素基の1以上の水素は、脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。
【0041】
脂肪族炭化水素基およびアルコキシ基の酸素原子に結合するアルキル基は、直鎖構造であってよく、分岐構造であってよい。脂肪族炭化水素基およびアルコキシ基の酸素原子に結合するアルキル基の炭素数は特に限定されない。上記炭素数は、例えば、1以上13以下であってよく、2以上11以下であってよく、3以上8以下であってよい。
【0042】
なかでも、硬化性の点で、炭素数3以上のオキシアルキレン基および炭素数3以上のアルキル基の少なくとも一方が好ましい。特に、炭素数3または4のオキシアルキレン基(すなわち、オキシプロピレン基またはオキシブチレン基)および/または炭素数4以上のアルキル基が好ましい。オキシアルキレン基およびアルキル基は直鎖構造であってよく、分岐構造であってよい。なかでも、オキシプロピレン基および/またはブチル基が好ましい。
【0043】
第1ブロックイソシアネート基は、例えば、疎水基およびイソシアネート基(-N=C=O)と反応する反応性基を有する第1ブロック剤と、イソシアネート基との反応により形成される。アルコキシ基を有するブロックイソシアネート基は、アルコキシ基および反応性基を有する第1ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成される。
【0044】
反応性基は特に限定されない。反応性基は、例えば、活性水素を有している。反応性基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基およびウレタン基が挙げられる。なかでも、第1ブロック剤が解離し易い点で、ヒドロキシ基が好ましい。
【0045】
炭素数3以上のオキシアルキレン基およびヒドロキシ基を有する第1ブロック剤としては、例えば、(オキシアルキレン)アルキルエーテルが挙げられる。炭素数3以上のオキシアルキレン基は1以上含まれており、2以上含まれていてもよい。
【0046】
(オキシアルキレン)アルキルエーテルは、下記一般式(1):
R1-O-X1
n1-X2
n2-H
(式中、R1は炭素数1~8のアルキル基であり、X1は、炭素数3以上のオキシアルキレン基であり、X2は、X1とは異なるオキシアルキレン基であり、n1は1~50の整数であり、n2は0~50の整数である。)
で表される。
【0047】
疎水性の観点から、R1は、炭素数3以上5以下の直鎖のアルキル基が好ましい。同様の観点から、X1は、炭素数3以上5以下のオキシアルキレン基が好ましい。n1は、2以上40以下の整数が好ましい。顔料の分散安定性の観点から、X2は、炭素数2または4のオキシアルキレン基が好ましい。同様の観点から、n2は、2以上50以下の整数が好ましい。X1およびX2のアルキレン基は、直鎖であってよく、分岐していてよい。
【0048】
なかでも、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル(R1はn-ブチル基、X1はオキシプロピレン基(-CH2(CH3)-CH2-O-)、X2はオキシエチレン基(-CH2-CH2-O-)、n1=2~40、n2=2~50)が好ましい。
【0049】
炭素数3以上のアルキル基およびヒドロキシ基を有する第1ブロック剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、モノ、ジ、トリあるいはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルを包含する。
【0050】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、例えば、下記一般式(2):
R2-(O-(CH2)a)n3-OH
(式中、R2は炭素数3~8のアルキル基であり、aは1~4の整数であり、n3は1~4の整数である。)
で表される。
【0051】
疎水性の観点から、R2は、炭素数3以上5以下の直鎖のアルキル基が好ましい。顔料の分散安定性の観点から、aは、2以上4以下が好ましい。同様の観点から、n3は、1以上3以下の整数が好ましい。
【0052】
なかでも、エチレングリコールモノブチルエーテル(R2はn-ブチル基、a=2、n3=1、)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(R2はn-ブチル基、a=2、n3=2)が好ましい。
【0053】
(オキシアルキレン)アルキルエーテルでブロックされたイソシアネート基は、例えば、下記一般式(3)で表される。
R1-O-X1
n1-X2
n2-CO-NH-
(式中、R1は炭素数1~8のアルキル基であり、X1は、炭素数3以上のオキシアルキレン基であり、X2は、X1とは異なるオキシアルキレン基であり、n1は1~50の整数であり、n2は0~50の整数である。)
【0054】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルでブロックされたイソシアネート基は、例えば、下記一般式(4)で表される。
R2-(O-(CH2)a)-O-CO-NH-
(式中、R2は炭素数3~8のアルキル基であり、aは1~4の整数であり、n3は1~4の整数である。)
【0055】
《第2ブロックイソシアネート基》
第2ブロックイソシアネート基は、親水基を有する。親水基は、末端に位置していることが好ましい。親水基は、ウレタン結合の酸素原子あるいはウレア結合の窒素原子に直接、結合していてもよいし、間接的に結合していてもよい。ウレタン結合の酸素原子あるいはウレア結合の窒素原子と親水基との間には、例えば、アルキレン基等の脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基が介在していてもよい。
【0056】
親水基は、極性を有している限り特に限定されない。親水基が分極することにより、顔料は、極性溶媒を含む塗料組成物において安定して分散される。親水基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、スルホ基、リン酸基が挙げられる。アミノ基は、1級(-NH2)であってよく、2級(-NHR)であってよく、3級(-NRR’)であってよい。RおよびR’は、例えば、それぞれ独立して炭素数1以上5以下の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は、直鎖構造であってよく、分岐構造であってよい。分散樹脂の立体障害が大きくなる点で、分岐構造が好ましい。分散樹脂の立体障害によって、顔料の分散安定性はさらに向上し易くなる。なお、4級アンモニウム基は、得られる塗膜の酸素、水またはイオンなどの腐食要因の遮断性を低下させ易く、耐食性が低下し易い。そのため、親水基は、4級アンモニウム基を含まないことが望ましい。
【0057】
なかでも、顔料分散ペーストの安定性の点で、アミノ基が好ましい。特に、3級アミノ基が好ましい。3級アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジ-i-プロピルアミノ基が挙げられる。3級アミノ基は、さらに官能基(例えば、ヒドロキシ基)を有していてもよい。
【0058】
第2ブロックイソシアネート基は、例えば、親水基およびイソシアネート基と反応する反応性基を有する第2ブロック剤と、イソシアネート基との反応により形成される。アミノ基を有するブロックイソシアネート基は、アミノ基および反応性基を有する第2ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成される。
【0059】
反応性基は特に限定されない。反応性基は、例えば、活性水素を有している。反応性基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、ウレタン基が挙げられる。なかでも、第2ブロック剤が解離し易い点で、ヒドロキシ基が好ましい。
【0060】
アミノ基および反応性基を有する第2ブロック剤としては、例えば、アミノ基(特に、3級アミノ基)を有するアルコールおよびジアミンの少なくとも一方が挙げられる。アミノ基を有するアルコールとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
ジアミンとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
〈その他の分散樹脂〉
分散樹脂として、上記のブロックポリイソシアネートとともに、他の分散樹脂を用いてもよい。他の分散樹脂としては、顔料を分散させるために用いられている従来公知の樹脂が挙げられる。具体的には、カチオン性またはノニオン性の低分子量界面活性剤、4級アンモニウム基、3級スルホニウム基、1級または3級アミノ基を有する変性エポキシ樹脂等のカチオン性重合体が挙げられる。
【0077】
全分散樹脂の含有量は特に限定されず、顔料の含有量に応じて適宜設定される。本実施形態で用いられるブロックポリイソシアネートは、顔料の分散性および分散安定性に優れるため、分散樹脂の含有量を低減できる。そのため、顔料の濃度を高めることができる。
【0078】
顔料の固形分質量Wpと分散樹脂の固形分質量Wrとの比:Wp/Wrは、1/0.15以上、1/0.7以下であってよい。Wp/Wrは、1/0.20以上が好ましく、1/0.25以上がより好ましい。Wp/Wrは、1/0.6以下が好ましく、1/0.5以下がより好ましい。
【0079】
分散樹脂のうち、ブロックポリイソシアネートは、50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることが好ましく、80質量%以上を占めることが好ましく、100質量%を占めることが特に好ましい。
【0080】
(顔料)
顔料は特に限定されない。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラックおよびベンガラ等の着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレー等の体質顔料;リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、およびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛等の防錆顔料が挙げられる。
【0081】
顔料の含有量は特に限定されない。顔料の含有量は、例えば、後述する塗料組成物に含まれる樹脂固形分100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であってよい。顔料の含有量は、塗料組成物に含まれる樹脂固形分100質量部に対して、15質量部以上が好ましい。顔料の含有量は、塗料組成物に含まれる樹脂固形分100質量部に対して、35質量部以下が好ましい。塗料組成物に含まれる樹脂固形分とは、後述する塗膜形成樹脂、硬化剤および分散樹脂である。
【0082】
(溶媒)
顔料分散ペーストに含まれる溶媒(以下、第1溶媒と称す。)は、通常、極性溶媒である。第1溶媒は、ブロックポリイソシアネートを製造する際に用いられた極性溶媒を含み得る。第1溶媒は、また、顔料分散ペーストの粘度を調整するために添加された希釈成分であり得る。
【0083】
極性溶媒としては、例えば、イオン交換水;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、エトキシプロパノール、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコール-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メトキシブタノール、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン系溶媒;が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0084】
[塗料組成物]
本実施形態に係る塗料組成物は、上記の顔料分散ペーストと塗膜形成樹脂と硬化剤と極性溶媒とを含む。塗料組成物は、例えば、顔料分散ペースト、塗膜形成樹脂と硬化剤とを含むエマルション、溶媒、および、必要に応じて添加剤を混合して調製される。本実施形態に係る塗料組成物は、特に、カチオン電着に好適に用いられる。
【0085】
塗料組成物の固形分濃度は特に限定されない。カチオン電着用の塗料組成物の固形分濃度は、1質量%以上30質量%以下が好ましい。これにより、十分な量の電着塗膜が析出して、耐食性が向上し易くなる。さらに、つきまわり性および塗膜の外観も向上する。
【0086】
塗料組成物のpHは特に限定されない。カチオン電着用の塗料組成物のpHは、4.5以上7以下が好ましい。これにより、得られる電着塗膜の外観が良好になり易い。
【0087】
(エマルション)
エマルションは、例えば、塗膜形成樹脂を含む溶液および硬化剤を含む溶液を混合することにより調整される。
【0088】
エマルションの固形分濃度は特に限定されない。エマルションの固形分濃度は、例えば、25質量%以上50質量%以下であってよい。上記固形分濃度は、35質量%以上が好ましい。上記固形分濃度は、45質量%以下が好ましい。
【0089】
エマルションの固形分とは、エマルションに含まれる成分であって、揮発成分(代表的には、溶媒)を除く全成分である。具体的には、塗膜形成樹脂、硬化剤および必要に応じて添加される添加剤である。
【0090】
(塗膜形成樹脂)
塗膜形成樹脂は、例えば加熱によって硬化剤と反応して、三次元の硬化塗膜を形成する。
塗膜形成樹脂は特に限定されず、塗料組成物において従来公知の樹脂が使用される。塗膜形成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびカルボジイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。塗膜形成樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0091】
カチオン電着用の塗料組成物において、塗膜形成樹脂は、アミノ基を有する樹脂(アミン化樹脂)を含むことが好ましい。塗膜形成樹脂は、アミン化樹脂とともに、フェノール樹脂、キシレン樹脂を含むことが好ましい。
【0092】
〈アミン化樹脂〉
アミン化樹脂は、例えば上記の熱硬化性樹脂が有する官能基とアミン化合物とを反応させることにより得られる。なかでも、アミン化エポキシ樹脂が好ましい。アミン化エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂骨格中のオキシラン環とアミン化合物との反応により得られる。
【0093】
アミン化合物は特に限定されない。アミン化合物としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミンおよびこれらの酸塩が挙げられる。エポキシ樹脂と2級アミンとを反応させると、3級アミノ基を有するアミン化エポキシ樹脂が得られる。エポキシ樹脂と1級アミンとを反応させると、2級アミノ基を有するアミン化エポキシ樹脂が得られる。エポキシ樹脂とブロックされた1級アミンを有する2級アミンとを反応させると、1級アミノ基を有するアミン化エポキシ樹脂が得られる。1級アミノ基および2級アミノ基を有するアミン化エポキシ樹脂は、例えば以下のようにして得られる。まず、アミン化合物の1級アミノ基をケトンでブロック化して、ケチミンを作製する。次いで、ケチミンとエポキシ樹脂とを反応させた後、脱ブロック化する。
【0094】
1級アミンとしては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミンおよびモノエタノールアミンが挙げられる。2級アミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、ジエタノールアミンおよびN-メチルエタノールアミンが挙げられる。3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミンおよびN,N-ジメチルエタノールアミンが挙げられる。ケチミンとしては、例えば、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンおよびジエチレントリアミンジケチミンが挙げられる。アミン化合物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0095】
アミン化樹脂の数平均分子量は特に限定されない。取り扱い性および分散安定性の観点から、アミン化樹脂の数平均分子量は、1,000以上5,000以下が好ましい。さらに、数平均分子量がこの範囲であると、得られる塗膜の耐食性がより向上し易い。よびアミン化樹脂の数平均分子量は、2,000以上がより好ましい。アミン化樹脂の数平均分子量は、3,500以下がより好ましい。
【0096】
アミン化樹脂のアミン価は特に限定されない。分散安定性の観点から、アミン化樹脂のアミン価は、20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下が好ましい。さらに、アミン価がこの範囲であると、得られる塗膜に含まれるアミノ基の量が適正となり、塗膜の耐水性も向上し易い。アミン化樹脂のアミン価は、20mgKOH/g以上がより好ましい。アミン化樹脂のアミン価は、80mgKOH/g以下がより好ましい。
【0097】
アミン化樹脂の水酸基価は特に限定されない。硬化性の観点から、アミン化樹脂の水酸基価は、150mgKOH/g以上650mgKOH/g以下が好ましい。水酸基価が150mgKOH/g以上であると、塗料組成物の硬化性がより向上し易い。さらに、得られる塗膜に残存し得る水酸基の量が低減されて、塗膜の耐水性も向上し易い。アミン化樹脂の水酸基価は、150mgKOH/g以上がより好ましい。アミン化樹脂の水酸基価は、400mgKOH/g以下がより好ましい。
【0098】
必要に応じて、アミン価および/または水酸基価の異なるアミン化樹脂を併用してもよい。この場合、使用するアミン化樹脂の質量比に基づいて算出されるみかけのアミン価および水酸基価が、上記の範囲を満たすことが好ましい。なかでも、アミン価が20mgKOH/g以上50mgKOH/g未満であり、かつ、水酸基価が50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のアミン化樹脂と、アミン価が50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、かつ、水酸基価が200mgKOH/g以上500mgKOH/g以下のアミン化樹脂とを、併用することが好ましい。これにより、アミン化樹脂のエマルションのコア部がより疎水性を示し、シェル部が親水性を示すため、得られる塗膜の耐食性はより向上し易い。
【0099】
アミン化樹脂を含むエマルションは、中和酸で中和されることが好ましい。これにより、極性溶媒への、塗膜形成樹脂の分散性が向上する。中和酸としては、例えば、メタンスルホン酸、スルファミン酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、ギ酸、酢酸などの有機酸が挙げられる。
【0100】
中和酸は、中和率が10%以上となるように添加される。中和率は、20%以上がより好ましい。中和率は、100%であってよく、70%以下であってよい。中和率とは、アミン化樹脂が有するアミノ基の当量に対する中和酸の当量比である。中和率が10%以上であると、塗膜形成樹脂の水への親和性が確保され、水分散性が良好となる。
【0101】
(硬化剤)
塗料組成物は、硬化剤を含む。これにより、塗膜形成性樹脂が架橋されて、得られる塗膜の耐食性および耐久性が向上する。
【0102】
硬化剤の含有量は、例えば、塗料組成物の樹脂固形分の50質量%以下であり、45質量%以下が好ましい。硬化剤の含有量は、例えば、塗料組成物の樹脂固形分の20質量%以上である。ただし、本実施形態で分散樹脂として用いられるブロックイソシアネートは、硬化剤として機能し得るため、通常の硬化剤の量を減らすことができる。例えば、硬化剤の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分の40質量%以下であってよく、35質量%以下であってよい。硬化剤の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分の15質量%以上であってよく、10質量%以上であってよい。
【0103】
硬化剤は特に限定されず、塗膜形成性樹脂が有する硬化性官能基の種類に応じて適宜選択される。硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0104】
なかでも、得られる塗膜の諸性能およびコストの点で、ポリイソシアネート化合物が好ましい。ポリイソシアネート化合物はアミン化樹脂の1級アミンと優先的に反応する。そのため、アミン化樹脂の硬化剤としてポリイソシアネート化合物を使用することにより、硬化性はより向上し易い。
【0105】
〈ポリイソシアネート化合物〉
硬化剤としてのポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート系硬化剤と称す場合がある。)は特に限定されず、塗料に配合される公知のものを用いることができる。
【0106】
ポリイソシアネート系硬化剤は、ブロックポリイソシアネートと同様、ポリイソシアネート原料を、ブロック剤でブロック化することによって調製されるブロックポリイソシアネートであってよい。ポリイソシアネート原料としては、第1ブロックイソシアネートに用いられるポリイソシアネート原料と同様のものが例示できる。ポリイソシアネート原料は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0107】
ブロック剤は特に限定されず、ブロックポリイソシアネートに用いられるものであってよく、それ以外であってよい。ブロック剤としては、例えば、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノール等のポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類とから得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類;メチルジケトン、メチルケトエステルおよびメチルジエステル化合物(例えばアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル等のアルキルエステル)等の活性水素化合物;イミダゾール化合物;ピラゾール化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0108】
ポリイソシアネート系硬化剤において、イソシアネート基のブロック化率は100%が好ましい。これにより、ポリイソシアネート系硬化剤の樹脂組成物中での分散安定性が向上し易い。
【0109】
ポリイソシアネート系硬化剤の含有量は特に限定されない。硬化反応の促進の観点から、ポリイソシアネート系硬化剤は、アミン化樹脂の水酸基のモル数とポリイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基のモル数との比(NCO/OH)が、0.2以上2.0以下になるように、配合される。NCO/OHは、0.5以上2.0以下であってよく、0.8以上1.8以下であってよい。
【0110】
(溶媒)
塗料組成物に含まれる溶媒(以下、第2溶媒と称す。)は特に限定されず、所望の塗料組成物の性質に応じて適宜選択される。カチオン電着用の塗料組成物において、第2溶媒は極性溶媒である。極性溶媒としては、第1溶媒と同様のものが例示できる。
【0111】
第2溶媒は、塗膜形成樹脂(代表的には、アミン化エポキシ樹脂)および/またはポリイソシアネート化合物を合成する際に用いられた溶媒を含み得る。第2溶媒は、また、塗料組成物の粘度を調整するために添加された希釈成分であり得る。
【0112】
(添加剤)
塗料組成物は、必要に応じて、公知の添加剤を含む。添加剤としては、例えば、界面活性剤、アクリル樹脂微粒子などの粘度調整剤、はじき防止剤、バナジウム塩、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム塩などの無機防錆剤、補助錯化剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤が挙げられる。これらの添加剤は、エマルションを製造する際に添加されてもよいし、顔料分散ペーストを製造する際に添加されてもよいし、エマルションと顔料分散ペーストとの混合時あるいは混合後に添加されてもよい。
【0113】
[カチオン電着塗料組成物]
カチオン電着塗料組成物は、本実施形態に係る顔料分散ペーストと、上記のアミン化エポキシ樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、極性溶媒と、を含む。各成分の種類、含有量等は、上記と同様である。
【0114】
[塗膜形成方法]
本実施形態に係る塗料組成物は、従来公知の塗装方法に用いることができる。塗装方法としては、例えば、カチオン電着塗装、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装が挙げられる。カチオン電着塗装では、被塗物を陰極として、対極である陽極との間に電圧が印加される。これにより、電着塗膜が被塗物上に析出する。
【0115】
被塗物は特に限定されない。カチオン電着塗装の場合、導電性の被塗物が用いられる。導電性の被塗物としては、例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛-鉄合金系めっき鋼板、亜鉛-マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム-シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板が挙げられる。
【0116】
塗装後、加熱することにより硬化塗膜が得られる。加熱条件は、各塗膜の組成等に応じて適宜設定される。カチオン電着塗装の場合、加熱温度は、例えば、120℃以上260℃以下であり、140℃以上220℃以下が好ましい。加熱時間は、例えば、10分以上30分以下程度である。
【0117】
得られる塗膜の厚みは特に限定されない。塗膜の厚みは、例えば、5μm以上60μm以下であってよく、10μm以上25μm以下であってよい。
【実施例0118】
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。「エポキシ当量」および「アミン当量」は、固形分に対する数値を示す。
【0119】
[製造例]
(a)分散樹脂の製造
(a-1)分散樹脂(ブロックポリイソシアネートA1)の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI、ポリイソシアネート原料、東ソー製、イソシアネート当量134)134部を入れて、80℃まで昇温した。次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル(第1ブロック剤、EGBE)77部を1時間かけて滴下した。ポリイソシアネート原料のイソシアネート当量を確認した後、N,N-ジメチルアミノプロパノール(第2ブロック剤、DMAPOH)26部を1時間かけて滴下した。続いて、さらにEGBE12部を1時間かけて滴下した。反応温度を80℃に保持したまま、IRスペクトルの測定においてイソシアネート基に基づく吸収が消失するまで、反応を継続させた。最後に、EGBE44部を追加し、ブロックポリイソシアネートA1(分散樹脂)を含むペースト(固形分濃度85%)を得た。
【0120】
ブロックポリイソシアネートA1は、上記の構造式(2)と同様の構造を有しており、m=0~5であった。第1ブロックイソシアネート基の個数N1と第2ブロックイソシアネート基の個数N2との割合(=N1/N2)は、75/25であった。
【0121】
(a-2)分散樹脂(ブロックポリイソシアネートA2)の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、コロネートHXR(HDI系ポリイソシアヌレート、ポリイソシアネート原料、東ソー製、イソシアネート当量192)192部を入れて、70℃まで昇温した。次いで、ドデシルフェノール(第1ブロック剤)87部を1時間かけて滴下した。ポリイソシアネート原料のイソシアネート当量を確認した後、N,N-ジメチルアミノプロパノール(第2ブロック剤、DMAPOH)34部を1時間かけて滴下した。再度ポリイソシアネート原料のイソシアネート当量を確認した後、さらにニューポール50HB-660(第1ブロック剤、ポリオキシエチレン(15)ポリオキシプロピレン(20)ブチルエーテル、三洋化成製)594部を1時間かけて滴下した。反応温度を70℃に保持したまま、IRスペクトルの測定においてイソシアネート基に基づく吸収が消失するまで、反応を継続させた。最後に、EGBE126部を追加し、ブロックポリイソシアネートA2(分散樹脂)を含むペースト(固形分濃度80%)を得た。
【0122】
ブロックポリイソシアネートA2は、イソシアヌレート構造(HDIの3員環)を有している。第1ブロックイソシアネート基の個数N1と第2ブロックイソシアネート基の個数N2との割合(=N1/N2)は、67/33であった。
【0123】
(a-3)分散樹脂(ブロックポリイソシアネートA3)の製造
第2ブロック剤としてN,N-ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)を用いたこと以外、製造例(a-1)と同様にして、ブロックポリイソシアネートA3を含むペースト(固形分濃度85%)を得た。
【0124】
ブロックポリイソシアネートA3は、上記の構造式(2)と同様の構造を有しており、m=0~5であった。第1ブロックイソシアネート基の個数N1と第2ブロックイソシアネート基の個数N2との割合(=N1/N2)は、75/25であった。
【0125】
(a-4)分散樹脂(従来の4級アンモニウム基を有する分散樹脂B1)の製造
まず、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部、および、エチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順次加え、65℃で約30分間攪拌して、4級化剤を調製した。
【0126】
別途、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)222.0部およびMIBK39.1部を入れた後、ジブチルスズラウレート0.2部を加えた。その後、50℃に昇温した。次いで、この混合物を攪拌しながら、乾燥窒素雰囲気中で2-エチルヘキサノール131.5部を2時間かけて滴下した。適宜、冷却して、反応温度を50℃に維持した。これにより、2-エチルヘキサノールハーフブロック化IPDIを得た。
【0127】
さらに別途、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポン829、シェル・ケミカル・カンパニー社製、エポキシ当量193~203)710部およびビスフェノールA289.6部を適当な反応容器に仕込んだ。この反応混合物を、窒素雰囲気下、150℃~160℃で約1時間反応させた。その後、120℃に冷却し、上記の2-エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
【0128】
得られた反応混合物を110℃~120℃に約1時間保った後、エチレングリコールモノブチルエーテル695.1部、および、ビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物(三洋化成社製、商品名BPE-60,Rがエチレン基でm+nが約6)695.1部からなる溶媒1390.2部を加えた。この混合物を85℃~95℃に冷却した後、上記の4級化剤196.7部を添加した。反応混合物を、酸価が1になるまで、85℃~95℃に保持した。次いで、脱イオン水37部を加えて、4級アンモニウム基を有する分散樹脂B1を含むペースト(固形分濃度50%)を得た。
【0129】
(b)塗膜形成樹脂(アミン化エポキシ樹脂)の製造
反応容器に、メチルイソブチルケトン92部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA382部、オクチル酸63部およびジメチルベンジルアミン2部を仕込んだ。反応容器内の温度を140℃に保持しながら、エポキシ当量が1223g/eqになるまで反応させた。その後、反応容器内の温度が120℃になるまで冷却した。次いで、上記の反応容器に、ジエチレントリアミンジケチミンのメチルイソブチルケトン溶液(固形分73質量%)78部とジエタノールアミン92部との混合物を添加し、120℃で1時間反応させた。これにより、アミン化エポキシ樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量は2,560、アミン価は50mgKOH/g、水酸基価は240mgKOH/gであった。
【0130】
(c)硬化剤の製造
(c-1)硬化剤C1の製造
反応容器に、HDI(商品名HDI、東ソー社製)を1680部およびMIBKを773部仕込み、反応容器内の温度を60℃まで加熱した。反応容器に、MEKオキシム1067部に溶解させたトリメチロールプロパン346部を、60℃で2時間かけて滴下した。その後、75℃で4時間加熱した。次いで、IRスペクトルの測定によりイソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷した。その後、この反応容器にMIBK99部を加えて、固形分濃度78質量%のブロックイソシアネート硬化剤C1を得た。イソシアネート基価は252mgKOH/gであった。
【0131】
(c-2)硬化剤C2の製造
反応容器に、ポリメリックMDI(商品名ミリオネートMR-200、東ソー社製)を1340部およびMIBKを277部仕込み、反応容器内の温度を80℃まで加熱した。反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル944部に溶解させたε-カプロラクタム226部を、80℃で2時間かけて滴下した。その後、100℃で4時間加熱した。次いで、IRスペクトルの測定によりイソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷した。その後、この反応容器にMIBK349部を加えて、固形分濃度80質量%のブロックイソシアネート硬化剤C2を得た。イソシアネート基価は251mgKOH/gであった。
【0132】
[実施例1]
(1)顔料分散ペーストP1の調製
まず、製造例(a-1)で得られたブロックポリイソシアネートA1を含むペースト36質量部に、イオン交換水107部、90%酢酸2.5部およびエチレングリコールモノブチルエーテル4.7部を加えて、水溶液を得た。次いで、このブロックポリイソシアネートA1を含む水溶液を固形分で50部、カーボンブラック(顔料)1.3部、カオリン(顔料)50部、二酸化チタン(顔料)44部、リンモリブデン酸アルミニウム(顔料)5部、ジオクチルスズオキサイド17部およびイオン交換水76部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散した。このようにして、顔料分散ペーストP1(固形分濃度50%)を調整した。顔料分散ペーストP1において、顔料とブロックポリイソシアネートA1との質量比(=Wp/Wr1)は、1/0.5であった。
【0133】
得られた顔料分散ペーストP1の分散安定性および分散性を評価した。評価方法は後述する。評価結果を表1に示す。
【0134】
(2)カチオン電着用塗料組成物X1の調製
製造例(b)で得られたアミン化エポキシ樹脂を350部(固形分)、製造例(c-1)で得られたブロックイソシアネート硬化剤C1を75部(固形分)および製造例(c-2)で得られたブロックイソシアネート硬化剤C2を75部(固形分)混合した後、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル15部(全固形分の3%)を添加した。さらに、ギ酸を加えて、アミン化エポキシ樹脂の中和率が40%となるように中和した。次いで、この中和物に、イオン交換水を少しずつ加えて希釈した。最後に、減圧化でMIBKを除去して、塗膜形成樹脂および硬化剤を含む樹脂エマルション(固形分濃度40質量%)を得た。
【0135】
得られた樹脂エマルションを426部、顔料分散ペーストP1を107部、イオン交換水を577部混合して、カチオン電着塗料組成物(固形分濃度20%)X1を調整した。
【0136】
(3)カチオン電着塗膜の形成
得られたカチオン電着塗料組成物X1を用いて、リン酸亜鉛処理鋼板に電着塗装を行った。次いで、160℃で15分間加熱して、電着塗膜(厚み20μm)を得た。
【0137】
得られた電着塗膜の硬化性および耐食性を評価した。評価方法は後述する。評価結果を表1に示す。
【0138】
[実施例2]
(1)顔料分散ペーストP2の調製
Wp/Wr1が1/0.15となるようにブロックポリイソシアネートA1を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、顔料分散ペーストP2(固形分濃度50%)を調整し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0139】
(2)カチオン電着用塗料組成物X2の調製
顔料分散ペーストP2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着用塗料組成物X2を調整した。
【0140】
(3)カチオン電着塗膜の形成
得られたカチオン電着塗料組成物X2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電着塗膜を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0141】
[実施例3]
(1)顔料分散ペーストP3の調製
Wp/Wr1が1/0.5となるようにブロックポリイソシアネートA1を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、顔料分散ペーストP3(固形分濃度65%)を得た。
【0142】
(2)カチオン電着用塗料組成物X3の調製
顔料分散ペーストP3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着用塗料組成物X3を調整し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0143】
(3)カチオン電着塗膜の形成
得られたカチオン電着塗料組成物X3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電着塗膜を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0144】
[実施例4]
(1)顔料分散ペーストP4の調製
製造例(a-4)で得られた分散樹脂B1を、Wp/Wrが1/0.15となるように、さらに混合したこと以外は、実施例2と同様にして、顔料分散ペーストP4(固形分濃度50%)を調整し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0145】
(2)カチオン電着用塗料組成物X4の調製
顔料分散ペーストP4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着用塗料組成物X4を得た。
【0146】
(3)カチオン電着塗膜の形成
得られたカチオン電着塗料組成物X4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電着塗膜を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0147】
[実施例5]
(1)顔料分散ペーストP5の調製
ブロックポリイソシアネートA1に替えて、製造例(a-2)で得られたブロックポリイソシアネートA2を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、顔料分散ペーストP5(固形分濃度50%)を調整し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0148】
(2)カチオン電着用塗料組成物X5の調製
顔料分散ペーストP5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着用塗料組成物X5を得た。
【0149】
(3)カチオン電着塗膜の形成
得られたカチオン電着塗料組成物X5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電着塗膜を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0150】
[実施例6]
(1)顔料分散ペーストP6の調製
ブロックポリイソシアネートA1に替えて、製造例(a-3)で得られたブロックポリイソシアネートA3を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、顔料分散ペーストP6(固形分濃度50%)を調整し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0151】
(2)カチオン電着用塗料組成物X6の調製
顔料分散ペーストP6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着用塗料組成物X6を得た。
【0152】
(3)カチオン電着塗膜の形成
得られたカチオン電着塗料組成物X6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電着塗膜を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0153】
[比較例1]
(1)顔料分散ペーストQ1の調製
ブロックポリイソシアネートA1に替えて、製造例(a-4)で得られた分散樹脂B1を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、顔料分散ペーストQ1(固形分濃度50%)を調整し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0154】
(2)カチオン電着用塗料組成物Y1の調製
顔料分散ペーストQ1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着用塗料組成物Y1を得た。
【0155】
(3)カチオン電着塗膜の形成
得られたカチオン電着塗料組成物Y1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電着塗膜を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0156】
[比較例2]
(1)顔料分散ペーストQ2の調製
ブロックポリイソシアネートA1に替えて、製造例(a-4)で得られた分散樹脂B1を混合したこと以外は、実施例2と同様にして、顔料分散ペーストQ2(固形分濃度50%)を調整し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0157】
(2)カチオン電着用塗料組成物Y2の調製
顔料分散ペーストQ2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着用塗料組成物Y2を得た。
【0158】
(3)カチオン電着塗膜の形成
得られたカチオン電着塗料組成物Y2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電着塗膜を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0159】
[比較例3]
(1)顔料分散ペーストQ3の調製
ブロックポリイソシアネートA1に替えて、製造例(a-4)で得られた分散樹脂B1を混合したこと以外は、実施例3と同様にして、顔料分散ペーストQ3(固形分濃度65%)を調整し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0160】
(2)カチオン電着用塗料組成物Y3の調製
顔料分散ペーストQ3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着用塗料組成物Y3を得た。
【0161】
(3)カチオン電着塗膜の形成
得られたカチオン電着塗料組成物Y3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電着塗膜を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0162】
[評価方法]
(i)分散安定性
顔料分散ペーストを、40℃で14日間静置した。静置後、沈降の有無を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0163】
最良:沈降無し
良:触ったら崩壊するソフトな沈降がわずかに見られた
可:触ったら崩壊するソフトな沈降が見られた
不良:触っても崩壊しないハードな沈降が見られた
【0164】
(ii)顔料の分散性
顔料分散ペーストに含まれる分散粒子の径を、グラインドゲージを用いて、JIS K 5600-2-5に準じて測定した。測定された粒子径を、以下の基準に従って評価した。
【0165】
最良:粒子径が10μm未満
良:粒子径が10μm以上20μm未満
可:粒子径が20μm以上30μm未満
不良:粒子径が30μm以上
【0166】
(iii)耐食性(電解剥離試験)
電着塗膜を有する塗装板を2枚準備した。それぞれの塗装板の電着塗膜側から、被塗物にまで達する長さ5mmの切込みを入れた。2枚の塗装板を少し離して並べて置き、スリットがそれぞれ1つのセル内に収まるように、メガネ型のセルを配置した。セルの内部を電解液(5%食塩水)で満たした。塗装板をそれぞれ陰極および陽極として、0.01mAの電流値にて12時間通電した。続いて、テープ剥離試験を行って、切込みに対して垂直な方向における電着塗膜の剥離幅を測定した。試験用テープとして、JIS Z 1522に規定された粘着テープ(呼び幅20mm)を用いた。剥離幅を、以下の基準に従って評価した。
【0167】
最良:最大の剥離幅が7mm未満
良:最大の剥離幅が7mm以上9mm未満
可:最大の剥離幅が9mm以上10mm未満
不良:最大の剥離幅が10mm以上
【0168】
(iv)硬化性
電着塗膜を有する塗装板の質量を測定した。次いで、この塗装板をソックスレー抽出器に入れ、アセトン還流条件下で6時間還流した。その後、塗装板を取り出して乾燥させ、質量を測定した。塗膜のゲル分率を次式に従い算出した。
ゲル分率(%)=[{抽出後の全体の質量(g)-鋼板の質量(g)}/{抽出前の全体の質量(g)-鋼板の質量(g)}]×100
【0169】
良:ゲル分率が90%以上
可:ゲル分率が80%以上90%未満
不良:ゲル分率が80%未満
【0170】