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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129762
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】圧電センサ及び位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G01L1/16 G
G01L1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028572
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌士
(72)【発明者】
【氏名】望月 規之
(57)【要約】
【課題】センサ素子から出力される圧電効果に基づく出力電圧を容易に増幅処理できるようにする。
【解決手段】基板と、下部電極と、第1圧電体層と、共通電極と、第2圧電体層と、上部電極と、下部電極及び共通電極から出力された第1検出信号と、共通電極及び上部電極から出力された第2検出信号とを増幅した増幅信号を出力する信号増幅部とを備え、信号増幅部は、第1検出信号を増幅する第1増幅回路と、第1増幅回路の増幅信号を増幅する第2増幅回路と、第1増幅回路の増幅信号を第2増幅回路よりも小さい増幅率で増幅する第3増幅回路と、第2検出信号を増幅する第4増幅回路と、第4増幅回路の増幅信号を増幅する第5増幅回路と、第4増幅回路の増幅信号を第5増幅回路よりも小さい増幅率で増幅する第6増幅回路とを有する、圧電センサ。
【選択図】図10


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板の上に形成されている下部電極と、
前記下部電極の上に圧電体が形成されている第1圧電体層と、
前記第1圧電体層の上に形成されている共通電極と、
前記共通電極の上に圧電体が形成されている第2圧電体層と、
前記第2圧電体層の上に形成されている上部電極と、
前記下部電極及び前記共通電極から出力された第1検出信号と、前記共通電極及び前記上部電極から出力された第2検出信号とを受け取って、前記第1検出信号及び前記第2検出信号を増幅した増幅信号を出力する信号増幅部と
を備え、
前記信号増幅部は、
前記第1検出信号を第1増幅率で増幅する第1増幅回路と、
前記第1増幅回路が増幅した信号を第2増幅率で増幅する第2増幅回路と、
前記第1増幅回路が増幅した信号を前記第2増幅率よりも小さい第3増幅率で増幅する第3増幅回路と、
前記第2検出信号を第4増幅率で増幅する第4増幅回路と、
前記第4増幅回路が増幅した信号を第5増幅率で増幅する第5増幅回路と、
前記第4増幅回路が増幅した信号を前記第5増幅率よりも小さい第6増幅率で増幅する第6増幅回路と
を有する、圧電センサ。
【請求項2】
基板と、
基板の上に形成されている下部電極と、
前記下部電極の上に圧電体が形成されている第1圧電体層と、
前記第1圧電体層の上に形成されている共通電極と、
前記共通電極の上に圧電体が形成されている第2圧電体層と、
前記第2圧電体層の上に形成されている上部電極と、
前記下部電極及び前記共通電極から出力された第1検出信号と、前記共通電極及び前記上部電極から出力された第2検出信号とを受け取って、前記第1検出信号及び前記第2検出信号を増幅した増幅信号を出力する信号増幅部と
を備え、
前記信号増幅部は、
前記第1検出信号を第1増幅率で増幅する第1増幅回路と、
前記第1増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を増幅する第2増幅回路と、
前記第1増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を増幅する第3増幅回路と、
前記第2検出信号を前記第1増幅回路の前記第1増幅率とは異なる第4増幅率で増幅する第4増幅回路と、
前記第4増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を増幅する第5増幅回路と、
前記第4増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を増幅する第6増幅回路と
を有する、圧電センサ。
【請求項3】
前記第1増幅回路及び前記第2増幅回路の間に設けられ、前記第1増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を通過させる第1高周波用フィルタと、
前記第1増幅回路及び前記第3増幅回路の間に設けられ、前記第1増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を通過させる第1低周波用フィルタと、
前記第4増幅回路及び前記第5増幅回路の間に設けられ、前記第4増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を通過させる第2高周波用フィルタと、
前記第4増幅回路及び前記第6増幅回路の間に設けられ、前記第4増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を通過させる第2低周波用フィルタと
を更に備える、請求項1又は2に記載の圧電センサ。
【請求項4】
前記第1圧電体層の厚さが前記第2圧電体層の厚さよりも大きく形成されている場合、前記第1増幅回路の前記第1増幅率は、前記第4増幅回路の前記第4増幅率よりも小さく、
前記第1圧電体層の厚さが前記第2圧電体層の厚さよりも小さく形成されている場合、前記第1増幅回路の前記第1増幅率は、前記第4増幅回路の前記第4増幅率よりも大きい、
請求項1から3のいずれか一項に記載の圧電センサ。
【請求項5】
前記上部電極の上に形成され、前記基板と平行な第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向に配列されており、外部から圧力が印加される複数の圧力印加部を更に備え、
前記第1圧電体層は、前記基板と平行な面において、単位面積あたりの前記圧電体の体積が前記第1方向に配列されている前記圧力印加部の位置によって異なるように前記圧電体が形成されており、
前記第2圧電体層は、前記基板と平行な面において、単位面積あたりの前記圧電体の体積が前記第2方向に配列されている前記圧力印加部の位置によって異なるように前記圧電体が形成されている、
請求項1に記載の圧電センサ。
【請求項6】
前記第1圧電体層及び前記第2圧電体層の厚さは、前記圧力印加部の位置によって異なる、請求項5に記載の圧電センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の前記圧電センサと、
前記上部電極の上に形成されており、外部から圧力が印加される複数の圧力印加部と、
前記信号増幅部から出力された前記増幅信号を受け取る信号受信部と、
前記基板と平行な面における複数の前記圧力印加部の位置と、当該圧力印加部に圧力がそれぞれ印加された場合の前記増幅信号の基準値とが関連付けられた圧力印加部データを記憶する記憶部と、
前記信号受信部が受信した前記増幅信号と前記圧力印加部データとに基づいて、外力が加わった前記圧力印加部の位置を特定する特定部と
を備える、
位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電センサ及び位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電体を2つの電極で挟み、圧電体を歪ませるように外力を印加することで、2つの電極間に電圧を発生させる圧電効果を用いたセンサ素子が知られている。そして、このようなセンサ素子を複数並べることにより、外力が印加された位置を検出する位置検出装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-163531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような位置検出装置は、検出したい位置ごとにセンサ素子を配置していた。この場合、検出したい位置の増加に伴ってセンサ素子の数が増加するので、位置検出装置が複雑になってしまうという問題が生じていた。そこで、複数のセンサ素子を配置することなく、センサ素子の出力電圧に応じて複数の圧力印加位置の中から実際に外力が印加された位置を特定できる圧電センサが望まれていた。このような圧電センサのセンサ素子が出力する電圧の電圧範囲は、検出したい位置の数に対応して大きくなってしまい、出力電圧を増幅して処理することが困難になってしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、センサ素子から出力される圧電効果に基づく出力電圧を容易に増幅処理できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、基板と、基板の上に形成されている下部電極と、前記下部電極の上に圧電体が形成されている第1圧電体層と、前記第1圧電体層の上に形成されている共通電極と、前記共通電極の上に圧電体が形成されている第2圧電体層と、前記第2圧電体層の上に形成されている上部電極と、前記下部電極及び前記共通電極から出力された第1検出信号と、前記共通電極及び前記上部電極から出力された第2検出信号とを受け取って、前記第1検出信号及び前記第2検出信号を増幅した増幅信号を出力する信号増幅部とを備え、前記信号増幅部は、前記第1検出信号を第1増幅率で増幅する第1増幅回路と、前記第1増幅回路が増幅した信号を第2増幅率で増幅する第2増幅回路と、前記第1増幅回路が増幅した信号を前記第2増幅率よりも小さい第3増幅率で増幅する第3増幅回路と、前記第2検出信号を第4増幅率で増幅する第4増幅回路と、前記第4増幅回路が増幅した信号を第5増幅率で増幅する第5増幅回路と、前記第4増幅回路が増幅した信号を前記第5増幅率よりも小さい第6増幅率で増幅する第6増幅回路とを有する、圧電センサを提供する。
【0007】
本発明の第2の態様においては、基板と、基板の上に形成されている下部電極と、前記下部電極の上に圧電体が形成されている第1圧電体層と、前記第1圧電体層の上に形成されている共通電極と、前記共通電極の上に圧電体が形成されている第2圧電体層と、前記第2圧電体層の上に形成されている上部電極と、前記下部電極及び前記共通電極から出力された第1検出信号と、前記共通電極及び前記上部電極から出力された第2検出信号とを受け取って、前記第1検出信号及び前記第2検出信号を増幅した増幅信号を出力する信号増幅部とを備え、前記信号増幅部は、前記第1検出信号を第1増幅率で増幅する第1増幅回路と、前記第1増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を増幅する第2増幅回路と、前記第1増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を増幅する第3増幅回路と、前記第2検出信号を前記第1増幅回路の前記第1増幅率とは異なる第4増幅率で増幅する第4増幅回路と、前記第4増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を増幅する第5増幅回路と、前記第4増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を増幅する第6増幅回路とを有する、圧電センサを提供する。
【0008】
前記第1増幅回路及び前記第2増幅回路の間に設けられ、前記第1増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を通過させる第1高周波用フィルタと、前記第1増幅回路及び前記第3増幅回路の間に設けられ、前記第1増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を通過させる第1低周波用フィルタと、前記第4増幅回路及び前記第5増幅回路の間に設けられ、前記第4増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を通過させる第2高周波用フィルタと、前記第4増幅回路及び前記第6増幅回路の間に設けられ、前記第4増幅回路が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を通過させる第2低周波用フィルタとを更に備えてもよい。
【0009】
前記第1圧電体層の厚さが前記第2圧電体層の厚さよりも大きく形成されている場合、前記第1増幅回路の前記第1増幅率は、前記第4増幅回路の前記第4増幅率よりも小さく、前記第1圧電体層の厚さが前記第2圧電体層の厚さよりも小さく形成されている場合、前記第1増幅回路の前記第1増幅率は、前記第4増幅回路の前記第4増幅率よりも大きくてもよい。
【0010】
前記上部電極の上に形成され、前記基板と平行な第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向に配列されており、外部から圧力が印加される複数の圧力印加部を更に備え、前記第1圧電体層は、前記基板と平行な面において、単位面積あたりの前記圧電体の体積が前記第1方向に配列されている前記圧力印加部の位置によって異なるように前記圧電体が形成されており、前記第2圧電体層は、前記基板と平行な面において、単位面積あたりの前記圧電体の体積が前記第2方向に配列されている前記圧力印加部の位置によって異なるように前記圧電体が形成されていてもよい。
【0011】
前記第1圧電体層及び前記第2圧電体層の厚さは、前記圧力印加部の位置によって異なっていてもよい。
【0012】
本発明の第3の態様においては、第1の態様及び第2の態様の前記圧電センサと、前記上部電極の上に形成されており、外部から圧力が印加される複数の圧力印加部と、前記信号増幅部から出力された前記増幅信号を受け取る信号受信部と、前記基板と平行な面における複数の前記圧力印加部の位置と、当該圧力印加部に圧力がそれぞれ印加された場合の前記増幅信号の基準値とが関連付けられた圧力印加部データを記憶する記憶部と、前記信号受信部が受信した前記増幅信号と前記圧力印加部データとに基づいて、外力が加わった前記圧力印加部の位置を特定する特定部とを備える、位置検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センサ素子から出力される圧電効果に基づく出力電圧を容易に増幅処理できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】比較対象の位置検出装置10の構成例を示す。
図2】本実施形態に係る位置検出装置100の第1構成例を示す。
図3】本実施形態に係る位置検出装置100の第2構成例を示す。
図4】本実施形態に係る位置検出装置100の第3構成例を示す。
図5図4に示す第3構成例の位置検出装置100の圧力センサ110の概略構成を示す。
図6】第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の第1計算例を示す。
図7】第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比の第1計算例を示す。
図8】第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の第2計算例を示す。
図9】第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比の第2計算例を示す。
図10】本実施形態に係る圧電センサ300の構成例を示す。
図11】本実施形態に係る圧電センサ300の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<比較対象の位置検出装置10の構成例>
図1は、比較対象の位置検出装置10の構成例を示す。本実施形態において、直交する3つの軸をX軸、Y軸、Z軸として示す。位置検出装置10は、圧力センサ20と信号処理部30とを備える。圧力センサ20は、圧力印加部40と、基板50と、センサ素子60と、下地層70と、保護膜80と、配線90とを有する。
【0016】
圧力印加部40は、位置検出装置10に複数設けられており、外部から圧力が印加される。図1は、第1圧力印加部40A、第2圧力印加部40B、および第3圧力印加部40Cの3つの圧力印加部40が位置検出装置10に設けられている例を示す。圧力印加部40は、例えば、ユーザ等の操作によって圧力が印加される。一例として、圧力印加部40は、ユーザの指先によって押圧される。圧力印加部40は、例えば、押ボタン、キーボタンの形状に形成されている。これに代えて、複数の圧力印加部40は、弾性を有する板状又はフィルム状の部材の上面に印刷等によって区分けされている複数の領域であってもよい。圧力印加部40は、例えば、不図示の筐体等に取り付けられている。
【0017】
基板50は、XY面と略平行な面を有し、当該面上にセンサ素子60等の部材が形成されている。基板50は、位置検出装置10の強度を保つための部材であることが望ましい。基板50は、例えば、屈曲させることが可能な材料で形成されている。この場合、基板50は、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム、フレキシブル基板等である。
【0018】
センサ素子60は、基板50の上に複数形成されている。なお、センサ素子60は、基板50の上面に形成されている下地層70の上面に形成されていてもよい。下地層70は、一例として、架橋PVP(ポリビニルピロリドン)膜である。センサ素子60は、外部から加わった圧力を検出する。1つのセンサ素子60は、1つの圧力印加部40に対応して設けられており、1つの圧力印加部40が押圧されたことを検出できるように配置されている。図1は、3つの圧力印加部40に対応して、3つのセンサ素子60が基板50の上に形成されている例を示す。センサ素子60は、下部電極62、上部電極64、及び圧電体層66を有する。
【0019】
下部電極62及び上部電極64は、導電性の材料で形成されている。下部電極62及び上部電極64は、金属の材料を含むことが望ましい。下部電極62及び上部電極64は、圧電体層66を挟んで形成されている。
【0020】
圧電体層66は、下部電極62の上面に圧電体が形成されている部位である。圧電体は、圧電効果を有する強誘電体性を有する材料である。圧電体は、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のポリマー、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスである。
【0021】
保護膜80は、複数のセンサ素子60を覆うように形成されている。保護膜80は、樹脂等である。保護膜80は、例えば、パリレン等のポリマーである。なお、圧力印加部40は、保護膜80の上に設けられている。圧力印加部40は、押圧されていない状態において、保護膜80と接触するように設けられていてもよく、これに代えて、保護膜80との間には空隙があるように設けられていてもよい。
【0022】
配線90は、センサ素子60の下部電極62及び上部電極64と信号処理部30とを電気的に接続する。配線90は、センサ素子60ごとに設けられている。信号処理部30は、センサ素子60から生じた電圧を検出して、複数のセンサ素子60のうち圧力が印加されたセンサ素子60を特定する。また、信号処理部30は、特定したセンサ素子60に対応する圧力印加部40を外力が印加された圧力印加部40として特定できる。
【0023】
以上のように、圧力センサ20は、圧力印加部40が押圧されると、圧電体層66に圧力が加わるようにセンサ素子60が圧力印加部40の位置に対応して配置されている。そして、センサ素子60は、圧電効果により、圧電体層66に加わった圧力に応じた電圧を下部電極62及び上部電極64の間に生じさせる。
【0024】
センサ素子60は、例えば、図1に示す検出波形の例のように、ユーザが指で圧力印加部40を押圧すると、定常状態の電圧よりも大きい電圧を発生させる。また、センサ素子60は、ユーザが指で圧力印加部40を押圧した状態から指を圧力印加部40から離すと、定常状態の電圧よりも小さい電圧を発生させる。信号処理部30は、例えば、このような検出波形の最大振幅値を検出することにより、圧力が印加されたセンサ素子60を特定する。
【0025】
以上の位置検出装置10は、ユーザの操作入力を検出する入力デバイスとして機能することができる。位置検出装置10は、例えば、ユーザが指で第1圧力印加部40Aを押圧したことに応じて、センサ素子60Aが電圧を発生させる。したがって、信号処理部30は、センサ素子60Aに接続されている配線90から所定の電圧値が発生したことに応じて、センサ素子60Aに対応する位置の第1圧力印加部40Aが押圧されたことを検出できる。信号処理部30は、検出した圧力印加部40の情報を外部の回路、装置等に出力する。
【0026】
これにより、位置検出装置10は、例えば、タッチパネル、テンキー、キーボード等の入力デバイスとして構成される。位置検出装置10は、圧電効果を利用しているので、静電容量を利用する入力デバイスと比較して、水滴や埃が介在しても誤検出を低減することができる。
【0027】
このような位置検出装置10において、位置の検出分解能を向上させたい場合、入力可能な圧力印加部40の数を増加させたい場合等が生じることがある。この場合、圧力センサ20の圧力を検出したい位置ごとに、センサ素子60を配置しなければならない。しかしながら、センサ素子60を増加させることにより、センサ素子60の配置、配線90の配置、信号処理部30の回路等が複雑になってしまい、位置検出装置10を製造すること、保守、点検等が困難になってしまうことがあった。そこで、本実施形態に係る位置検出装置は、複数のセンサ素子60等を配置することなく、複数の圧力印加部40の中から実際に圧力が加わった圧力印加部40の位置を検出できるようにする。
【0028】
<位置検出装置100の第1構成例>
図2は、本実施形態に係る位置検出装置100の第1構成例を示す。本実施形態に係る位置検出装置100において、図1に示された比較対象の位置検出装置10の動作と略同一のものには同一の符号を付け、重複する説明を省略する。位置検出装置100は、圧力センサ110と信号処理部150とを備える。圧力センサ110は、圧力印加部40、基板50、下地層70、保護膜80、配線90、下部電極120、上部電極130、及び圧電体層140を有する。
【0029】
下部電極120は、基板50の上に形成されている。図2は、下部電極120が下地層70の上面に形成されている例を示す。下部電極120は、一体に形成されていることが望ましい。上部電極130は、圧電体層140の上に形成されている。上部電極130は、圧電体層140の上面に形成されていることが望ましい。上部電極130は、一体に形成されていることが望ましい。下部電極120及び上部電極130は、導電性の材料で形成されている。
【0030】
圧電体層140は、下部電極120の上に圧電体が形成されている部位である。圧電体層140は、下部電極120の上面に形成されていることが望ましい。圧電体は、圧電効果を有する強誘電体性を有する材料である。圧電体は、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のポリマー、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスである。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る位置検出装置100は、比較対象の位置検出装置10の複数のセンサ素子60の代わりに、下部電極120、上部電極130、及び圧電体層140が形成されている。言い換えると、位置検出装置100は、共通の下部電極120と共通の上部電極130が圧電体層140を挟んで形成されている。そして、圧力印加部40が、保護膜80を介して上部電極130の上に形成されている。
【0032】
圧電体層140は、基板50と略平行な面(XY面)において、単位面積あたりの圧電体の体積が圧力印加部40の位置によって異なるように圧電体が形成されている。図2は、圧電体層140の厚さが圧力印加部40の位置によって異なる例を示す。圧電体層140の圧電効果は、圧電体に同じ圧力が加わっても、圧力が加わった圧電体の体積に応じて、発生させる電圧が異なる。
【0033】
例えば、第1圧力印加部40Aに外力が印加された場合に、第1圧力印加部40Aの直下の第1圧力印加部40Aに対応して圧力が加わる圧電体層140の一部を第1圧電体領域141とする。また、第2圧力印加部40Bに外力が印加され、第2圧力印加部40Bの直下の第2圧力印加部40Bに対応して圧力が加わる圧電体層140の一部を第2圧電体領域142とする。同様に、第3圧力印加部40Cに外力が印加された場合に圧力が加わる圧電体層140の一部を第3圧電体領域143とする。
【0034】
図2の場合、第1圧電体領域141の基板50に垂直な方向(Z軸方向)の厚さは、第2圧電体領域142の厚さよりも薄く形成されているので、第1圧電体領域141の体積は、第2圧電体領域142の体積よりも小さい。同様に、第2圧電体領域142の体積は、第3圧電体領域143の体積よりも小さい。
【0035】
圧電体の体積が大きければ大きいほど、圧電体から出力される電荷の量が増える。したがって、図2に示す構造を有する圧力センサ110の場合、ある大きさの外力が第1圧力印加部40A、第2圧力印加部40B及び第3圧力印加部40Cのそれぞれに印加された場合に圧電体層140が発生する電圧は、互いに異なっている。例えば、ある大きさの外力が第1圧力印加部40Aに加わって第1圧電体領域141から発生する電圧の大きさは、当該外力と略同一の大きさの外力が第2圧力印加部40Bに加わって第2圧電体領域142から発生する電圧の大きさよりも小さい。したがって、共通の下部電極120及び上部電極130に発生する電圧の値を検出することにより、どこの圧力印加部40に外力が印加したかを判断することができる。
【0036】
配線90は、このように下部電極120及び上部電極130に発生する電圧を検出信号として信号処理部150に伝送する。信号処理部150は、圧力センサ110から出力された検出信号の波形(例えば振幅)に基づいて、外力が加わった圧力印加部40を特定する。信号処理部150は、信号受信部160と、特定部170と、記憶部180とを有する。
【0037】
信号受信部160は、上部電極130及び下部電極120から出力される検出信号を受け取る。信号受信部160は、例えば、増幅回路、A/D変換回路等を含み、受信した検出信号をデジタル信号に変換する。信号受信部160は、変換したデジタル信号を特定部170に供給する。
【0038】
特定部170は、信号受信部160が受信した検出信号と圧力印加部データとに基づいて、外力が加わった圧力印加部40の位置を特定する。圧力印加部データは、基板50と平行な面における複数の圧力印加部40の位置と、当該圧力印加部40に圧力がそれぞれ印加された場合の検出信号の基準値とが関連付けられたデータである。
【0039】
例えば、第1圧力印加部40Aを指で押圧して第1圧電体領域141から発生する電圧の最大振幅値の平均値をV1ave、誤差の許容値をΔVとする。この場合、第1圧力印加部40Aに対応する検出信号の基準値ST1は、平均値から誤差の許容値を差し引いた値(V1ave-ΔV)である。同様に、第2圧力印加部40Bに対応する検出信号の基準値ST2は、第2圧力印加部40Bを指で押圧して第2圧電体領域142から発生する電圧の最大振幅値の平均値から誤差の許容値を差し引いた値(V2ave-ΔV)である。また、第3圧力印加部40Cに対応する検出信号の基準値ST3も同様にV3ave-ΔVである。
【0040】
この場合、特定部170は、例えば、検出信号の最大振幅値が基準値ST2よりも小さく、かつ、基準値ST1以上となったことに応じて、外力が加わった圧力印加部40が第1圧力印加部40Aであることを特定する。同様に、特定部170は、検出信号の最大振幅値が基準値ST3よりも小さく、かつ、基準値ST2以上となったことに応じて、外力が加わった圧力印加部40が第2圧力印加部40Bであることを特定する。また、特定部170は、検出信号の最大振幅値が基準値ST3以上となったことに応じて、外力が加わった圧力印加部40が第3圧力印加部40Cであることを特定してもよい。
【0041】
これに代えて、検出信号の基準値は、1つの圧力印加部40に対して、電圧値の範囲を示す2つの値が設定されていてもよい。例えば、第1圧力印加部40Aに対応する検出信号の基準値は、平均値から誤差の許容値を差し引いた値ST1m(V1ave-ΔV)と平均値に誤差の許容値を加算した値ST1p(V1ave+ΔV)である。
【0042】
この場合、特定部170は、例えば、検出信号の最大振幅値が基準値ST1pよりも小さく、かつ、基準値ST1m以上となったことに応じて、外力が加わった圧力印加部40が第1圧力印加部40Aであることを特定する。特定部170は、このように統計的な手法により定められた基準値、又は、設計値等から定められた基準値等を用いることにより、外力が加わった圧力印加部40をより正確に特定することができる。
【0043】
特定部170は、例えば、特定した外力の加わった位置の情報を外部の回路、装置等に供給する。また、特定部170は、特定した外力の加わった位置の情報を表示部等に表示してもよい。特定部170は、特定した外力の加わった位置の情報を記憶部180に記憶してもよい。このような特定部170は、例えば、CPU等である。
【0044】
記憶部180は、複数の圧力印加部40の位置と検出信号の基準値とが関連付けられた圧力印加部データを記憶する。記憶部180は、特定部170が動作に用いる設定値、閾値、及びパラメータ等を記憶してもよい。記憶部180は、CPU等が少なくとも特定部170の一部として動作する場合、CPU等が実行するプログラムの情報を格納してもよい。また、記憶部180は、当該プログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。
【0045】
記憶部180は、一例として、BIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、及び作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。これにより、CPU等は、記憶部180に記憶されたプログラムを実行することによって特定部170として機能する。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る圧力センサ110は、圧電体層140の圧電体の単位面積あたりの体積が圧力印加部40の位置によって異なっているので、外力が印加した場合に発生する検出信号の最大振幅値が圧力印加部40の位置に応じて異なる。したがって、位置検出装置100は、圧力センサ110の検出信号の最大振幅値と複数の基準値とを比較することにより、検出信号が発生した圧電体層140の領域に対応する圧力印加部40の位置を特定できる。
【0047】
このような圧電体層140を有する圧力センサ110は、複数のセンサ素子60を設けることなく、圧電体層140を挟む共通の下部電極120及び上部電極130を用いた簡便な構成とすることができる。そして、位置検出装置100は、このような簡便な構成の圧力センサ110を用いることで、配線90の数を低減させることができる。また、位置検出装置100は、共通の下部電極120及び上部電極130から出力された検出信号をデジタル信号に変換してデジタル処理するだけで、複数の圧力印加部40の中から実際に外力が印加された圧力印加部40の位置を簡便に特定することができる。
【0048】
以上の本実施形態に係る圧力センサ110において、圧電体層140の厚さが圧力印加部40の位置によって異なる例を説明したが、これに限定されることはない。圧力センサ110においては、圧電体層140の圧電体の単位面積あたりの体積が圧力印加部40の位置によって異なっていればよく、圧電体層140は、基板50と平行な面における圧力印加部40に対応する領域内の面積が、圧力印加部40の位置によって異なるように形成されていてもよい。
【0049】
例えば、基板50と平行な平面における平面視で、第1圧力印加部40Aに対応する第1圧電体領域141の面積は、第2圧力印加部40Bに対応する第2圧電体領域142の面積よりも小さくなるように形成されていてもよい。同様に、平面視で、第2圧力印加部40Bに対応する第2圧電体領域142の面積は、第3圧力印加部40Cに対応する第3圧電体領域143の面積よりも小さくなるように形成されていてもよい。
【0050】
これにより、圧力印加部40の位置によって、圧電体層140の圧電体の単位面積あたりの体積を異ならせることができる。なお、基板50の垂直方向の圧電体層140の厚さは、略一定の厚さに形成されていてもよい。この場合、上部電極130及び下部電極120は、略一定の厚さの圧電体層140を挟んで略平行に形成される。このような上部電極130及び下部電極120は、階段状に形成する部分がないので、製造しやすく、また、段切れ等によって電気的な特性に悪影響を及ぼす欠陥を生じにくくすることができる。
【0051】
なお、圧電体層140の複数の圧電体領域は、隙間等によって分離されて形成されてもよい。また、圧電体層140の複数の圧電体領域は、空隙等によって体積がそれぞれ異なるように形成されていてもよい。このような圧力センサ110aを有する位置検出装置100について、次に説明する。
【0052】
<位置検出装置100の第2構成例>
図3は、本実施形態に係る位置検出装置100の第2構成例を示す。第2構成例の圧力センサ110aが有する圧電体層140は、複数の圧力印加部40に対応する複数の圧電体領域を有しており、複数の圧電体領域のそれぞれと他の圧電体領域との間に、圧電体が形成されていない隙間領域144が設けられている例を示す。このように、複数の圧電体領域を分離することにより、1つの圧電体領域に圧力が加わった場合に、隣接する圧電体領域にも圧力が加わることを防止でき、検出信号の雑音成分を低減することができる。
【0053】
また、圧電体層140には、圧電体が形成されていない複数の空隙部146が更に形成されている。そして、第1圧力印加部40Aに対応する圧電体層140の第1圧電体領域141が有する空隙部146の体積は、第1圧力印加部40Aとは異なる第2圧力印加部40Bに対応する圧電体層140の第2圧電体領域142が有する空隙部146の体積とは異なるように圧電体層140が形成されている。
【0054】
これにより、圧電体の単位面積あたりの体積が圧力印加部40の位置によって異なるように圧電体層140を形成することができる。また、圧電体の厚さを略一定にすることができ、上部電極130及び下部電極120を、一定の厚さの圧電体層140を挟んで平行に形成することもできる。このような隙間領域144、空隙部146等は、例えば、エッチング等によって容易に形成することができる。したがって、第2構成例の位置検出装置100も、簡便に製造することができ、また、複数のセンサ素子を配置することなく、複数の圧力が印加される位置の中から実際に外力が印加された位置を特定することができる。
【0055】
以上の本実施形態に係る位置検出装置100において、圧力印加部40が基板50と平行な第1方向(X方向)に配列されており、圧電体層140の圧電体の単位面積あたりの体積が圧力印加部40の位置によって異なる例を説明したが、これに限定されることはない。圧力印加部40は、基板50と平行な面において、第1方向に加えて第1方向とは異なる第2方向にも配列されていてもよい。第2方向は、例えば、Y方向と略平行な方向である。
【0056】
なお、圧力印加部40は、基板50と平行な面において2次元的に配列しているだけでもよく、圧力印加部40の大きさ、配列の間隔が一定の値である必要はない。そして、このような圧力印加部40の2次元的な配列に対応して、圧電体層140の圧電体は、単位面積あたりの体積が圧力印加部40の位置によって異なるように形成されていることが望ましい。これに代えて、圧力センサ110は、複数の圧電体層を有し、2次元的に配列されている圧力印加部40の位置に対応するように構成されていてもよい。このような圧力センサ110を備える位置検出装置10について次に説明する。
【0057】
<位置検出装置100の第3構成例>
図4は、本実施形態に係る位置検出装置100の第3構成例を示す。第3構成例の位置検出装置100において、図2に示された第1構成例の位置検出装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、重複する説明を省略する。第3構成例の位置検出装置100は、圧力センサ110が第1圧電体層210、共通電極220、及び第2圧電体層230を備える。
【0058】
第1圧電体層210は、下部電極120の上に圧電体が形成されている部位である。第1圧電体層210は、下部電極120の上面に形成されていることが望ましい。圧電体は、図2で説明した圧電体層140と同様の材料である。
【0059】
共通電極220は、第1圧電体層210の上に形成されている。共通電極220は、第1圧電体層210の上面に形成されていることが望ましい。共通電極220は、一体に形成されていることが望ましい。共通電極220は、例えば、下部電極120及び上部電極130と同様の材料で形成されている。
【0060】
第2圧電体層230は、共通電極220の上に圧電体が形成されている部位である。第2圧電体層230は、共通電極220の上面に形成されていることが望ましい。圧電体は、図2で説明した圧電体層140と同様の材料である。
【0061】
そして、上部電極130は、第2圧電体層230の上に形成されている。上部電極130は、第2圧電体層230の上面に形成されていることが望ましい。信号受信部160は、下部電極120及び共通電極220から出力された第1検出信号と、共通電極220及び上部電極130から出力された第2検出信号とを受け取る。そして、特定部170は、信号受信部160が受信した第1検出信号及び第2検出信号と圧力印加部データとに基づいて、外力が加わった圧力印加部40の位置を特定する。
【0062】
以上のように、第3構成例の圧力センサ110は、第1圧電体層210及び第2圧電体層230を備え、2次元的に配列している圧力印加部40に対応して、単位面積あたりの圧電体の体積が圧力印加部40の位置によって異なるように形成されている。このような圧力センサ110のより詳細な構成を次に説明する。
【0063】
<圧力センサ110の概略構成>
図5は、図4に示す第3構成例の位置検出装置100の圧力センサ110の概略構成を示す。図5は、圧力センサ110の構成のうちの、下部電極120、第1圧電体層210、共通電極220、第2圧電体層230、上部電極130、及び圧力印加部40の概略構成を示す。
【0064】
圧力印加部40は、上部電極130の上に形成され、基板50と平行な第1方向及び第1方向とは異なる第2方向に配列されている。図5は、第1方向をX方向とし、第2方向をY方向とし、略同一形状の9個の圧力印加部40が第1方向に3個ずつ、第2方向に3個ずつ配列されている例を示す。言い換えると、第1方向を行方向、第2方向を列方向とすると、圧力印加部40は3行3列に配列されている。ここで、圧力印加部40の位置を(m,n)と行列表示で示す(m=1,2,3、n=1,2,3)。
【0065】
第1圧電体層210は、図2で説明した圧電体層140と同様に、基板50と略平行な面において、単位面積あたりの圧電体の体積が第1方向に配列されている圧力印加部40の位置によって異なるように、圧電体が形成されている。これに代えて、第1圧電体層210は、図3で説明した圧電体層140と同様に形成されていてもよい。
【0066】
図5は、第1圧電体層210の厚さが第1方向に配列されている圧力印加部40の位置によって異なる例を示す。例えば、1列目の圧力印加部40(m,1)に外力が印加された場合に、圧力印加部40(m,1)の直下の圧力印加部40(m,1)に対応して圧力が加わる第1圧電体層210の一部を第1圧電体領域211とする。
【0067】
また、2列目の圧力印加部40(m,2)に外力が印加された場合に、圧力印加部40(m,2)の直下の圧力印加部40(m,2)に対応して圧力が加わる第1圧電体層210の一部を第2圧電体領域212とする。同様に、3列目の圧力印加部40(m,3)に外力が印加された場合に、圧力印加部40(m,3)の直下の圧力印加部40(m,3)に対応して圧力が加わる第1圧電体層210の一部を第3圧電体領域213とする。
【0068】
図5は、第1圧電体領域211の基板50に垂直な方向(Z軸方向)の厚さは、第2圧電体領域212の厚さよりも厚く形成されているので、第1圧電体領域211の体積は、第2圧電体領域212の体積よりも大きい。同様に、第2圧電体領域212の厚さは、第3圧電体領域213の厚さよりも厚く形成されているので、第2圧電体領域212の体積は、第3圧電体領域213の体積よりも大きい。
【0069】
圧力センサ110が以上の第1圧電体層210を有することにより、特定部170は、下部電極120及び共通電極220から出力された第1検出信号に基づいて、何列目の圧力印加部40に外力が加わったのかを特定することができる。なお、図5の第1圧電体層210には、9個の圧力印加部40の配列(m,n)に対応する位置を、同様に(m,n)と示している(m=1,2,3、n=1,2,3)。
【0070】
第2圧電体層230は、基板50と平行な面において、単位面積あたりの圧電体の体積が第2方向に配列されている圧力印加部40の位置によって異なるように、圧電体が形成されている。第2圧電体層230は、例えば、第1圧電体層210と同様の構成を有し、第1方向と第2方向がなす角だけ回転させたように形成されている。これに代えて、第2圧電体層230は、図3で説明した圧電体層140と同様に形成されていてもよい。図5は、第1圧電体層210と略同一の形状を有する第2圧電体層230が、基板50に垂直な方向(Z方向)を軸として略90度回転させた例を示す。
【0071】
この場合、例えば、1行目の圧力印加部40(1,n)に外力が印加された場合に、圧力印加部40(1,n)の直下の圧力印加部40(1,n)に対応して圧力が加わる第2圧電体層230の一部を第4圧電体領域231とする。同様に、2行目の圧力印加部40(2,n)に対応する第2圧電体層230の一部を第5圧電体領域232とし、3行目の圧力印加部40(3,n)に対応する第2圧電体層230の一部を第6圧電体領域233とする。
【0072】
第4圧電体領域231の厚さは第5圧電体領域232の厚さよりも薄く、第5圧電体領域232の厚さは第6圧電体領域233の厚さよりも薄く形成されている。したがって、第4圧電体領域231の体積は第5圧電体領域232の体積よりも小さく、第5圧電体領域232の体積は第6圧電体領域233の体積よりも小さい。
【0073】
圧力センサ110が以上の第2圧電体層230を有することにより、特定部170は、共通電極220及び上部電極130から出力された第2検出信号に基づいて、何行目の圧力印加部40に外力が加わったのかを特定することができる。なお、図5の第2圧電体層230には、9個の圧力印加部40の配列(m,n)に対応する位置を、同様に(m,n)と示している(m=1,2,3、n=1,2,3)。
【0074】
以上のように、第3構成例の位置検出装置100は、第1圧電体層210の圧電効果に基づく第1検出信号から圧力印加部40の第1方向の位置を特定し、第2圧電体層230の圧電効果に基づく第2検出信号から圧力印加部40の第2方向の位置を特定する。第3構成例の位置検出装置100は、圧力センサ110が2つの圧電体層と3つの電極層を有することにより、複数のセンサ素子60を設けることなく、2次元的に配列されたより多くの圧力印加部40のうち外力が加わった圧力印加部40の位置を特定できる。
【0075】
なお、図4及び図5で説明した第3構成例の位置検出装置100の構成は、一例であり、これに限定されることはない。より多くの圧力印加部40が基板50と略平行な面に配列されていてもよい。圧力印加部40の形状はそれぞれ異なっていてもよく、また、圧力印加部40の配列間隔は一定の値でなくてもよい。第1圧電体層210及び第2圧電体層230は、圧力印加部40の形状、間隔、配置等に対応して設けられていればよい。例えば、第1方向及び第2方向は、直交していなくてもよい。また、第1圧電体層210及び第2圧電体層230は、異なる形状であってもよい。
【0076】
例えば、第1圧電体層210の第1圧電体領域211、第2圧電体領域212、及び第3圧電体領域213と、第2圧電体層230の第4圧電体領域231、第5圧電体領域232、及び第6圧電体領域233との6つの圧電体領域は、異なる厚さ(体積)を有するように形成されていてもよい。また、第1圧電体層210の厚さ(体積)と第2圧電体層230の厚さ(体積)の和が、圧力印加部40の位置に対応してそれぞれ異なるように形成されていることが望ましい。言い換えると、第1圧電体層210及び第2圧電体層230の厚さ(体積)は、圧力印加部40の位置によって異なっているように形成されている。
【0077】
図5の例の場合、例えば、9つの圧力印加部40の位置(m、n)に対応する第1圧電体層210の位置(m、n)の厚さと第2圧電体層230の位置(m、n)の厚さの和が、異なる9種類の厚さになる。このような圧力センサ110が出力する第1検出信号及び第2検出信号の振幅値の和は、圧力印加部40の位置(m、n)に応じて異なる値となる。したがって、第3構成例の位置検出装置100は、第1検出信号及び第2検出信号の振幅値の和と、圧力印加部40の位置ごとに予め設定されている基準値、閾値等と比較することにより、圧力印加部40の位置を特定できる。
【0078】
なお、第1検出信号及び第2検出信号の振幅値の和は、下部電極120及び上部電極130の間の電位差と等しい。したがって、信号受信部160は、第1検出信号及び第2検出信号に代えて、下部電極120及び上部電極130の間の信号を受信して、特定部170に供給してもよい。信号処理部150がこのように動作する場合、共通電極220はなくてもよい。
【0079】
なお、圧力センサ110は、印加された外力の大きさが変わると、外力の大きさに応じて最大振幅値が異なる検出信号を出力する。したがって、圧力センサ110は、印加された外力の大きさが予め定められた範囲内であれば、外力が加わった圧力印加部40を正確に特定できるセンサである。
【0080】
例えば、一の圧力印加部40に通常よりも大きな外力が印加された場合を考える。圧力センサ110は、外力が印加された一の圧力印加部40とは異なる他の圧力印加部40に通常と同程度の大きさの外力が印加された場合に出力する検出信号の最大振幅値と同じ程度の最大振幅値の検出信号を出力することがある。この場合、特定部170は、外力が加わった圧力印加部40を正確に特定することが困難になってしまう。位置検出装置10において、外力の大きさが変動しても、検出精度が低下しないようにできることが望ましい。
【0081】
そこで、特定部170は、第1検出信号及び第2検出信号の振幅値の比を算出することにより、このような検出精度の変動を低減させてもよい。圧力印加部40に加わる外力の大きさが変動した場合、第1検出信号及び第2検出信号の振幅値は外力の大きさに応じて変動する。したがって、第1検出信号及び第2検出信号の振幅値の比は、外力の大きさの変動を相殺するので、第1圧電体層210の厚さ(体積)と第2圧電体層230の厚さ(体積)の比を反映した値となる。
【0082】
<検出信号の第1計算例>
図6は、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の第1計算例を示す。図6において、外力が印加された圧力印加部40の位置に対応する第1圧電体層210及び第2圧電体層230の位置を「押下位置」と示している。また、第1圧電体層210及び第2圧電体層230の圧電体領域ごとの厚さを、第1圧電体領域211の厚さを1として正規化した値を「膜厚」として示す。そして、信号受信部160の増幅回路のゲインを「アンプゲイン」とし、信号受信部160が検出信号をデジタル信号にして出力する電圧値を「出力電圧」として示す。
【0083】
例えば、第1圧電体層210の第1圧電体領域211の位置(m、1)に外力が加わった場合、出力電圧は10となる。第1検出信号の最大振幅値、実効値等は、このような出力電圧となる。また、第2圧電体層230の第5圧電体領域232の位置(2、n)に外力が加わった場合、出力電圧は40となる。第2検出信号の最大振幅値、実効値等は、このような出力電圧となる。なお、図6の出力電圧は、相対値である。実際の出力電圧は、印加圧力、圧電定数、感度係数等を用いて算出できるが、ここでは省略する。言い換えると、図6の出力電圧は、圧力印加部40に印加される外力の大きさによって変動する値である。
【0084】
図7は、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比の第1計算例を示す。図7において、外力が印加された圧力印加部40の位置に対応する第1圧電体層210及び第2圧電体層230の位置を「押下座標」と示している。また、「押下座標」に対応する第1圧電体層210及び第2圧電体層230の出力電圧を、図6から抽出してそれぞれ「出力電圧」として示す。そして、第1圧電体層210及び第2圧電体層230の出力電圧の比を、「出力電圧比」とする。参考のため、「押下座標」に対応する第1圧電体層210及び第2圧電体層230の「膜厚」の比を「膜厚比」として示す。
【0085】
図7より、「出力電圧比」は、第1圧電体層210及び第2圧電体層230の「膜厚比」に等しくなり、外力の大きさが変動しても略一定の値となる。また、「出力電圧比」は、第1圧電体層210及び第2圧電体層230の圧電体領域の厚さを調節することにより、圧力印加部40の9個の位置に対応して異なる9個の値とすることができる。したがって、特定部170は、例えば、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比を算出し、圧力印加部40の位置ごとに予め設定されている基準値、閾値等と比較することにより、圧力印加部40の位置をより正確に特定できる。
【0086】
なお、図6及び図7に示した計算例は一例であり、これに限定されることはない。例えば、「出力電圧」の値の範囲を調節するために、「アンプゲイン」の大きさを変化させてもよい。また、第1圧電体層210の「アンプゲイン」の大きさと第2圧電体層230の「アンプゲイン」の大きさとを異ならせてもよい。
【0087】
<検出信号の第2計算例>
図8は、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の第2計算例を示す。図9は、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比の第2計算例を示す。図8及び図9に示す第2計算例は、図6及び図7に示す第1計算例における第2圧電体層230の「アンプゲイン」の大きさを、10から30に変更した結果を示す。このように「アンプゲイン」の大きさを調節することにより、設計の自由度を向上できるので、「出力電圧」の値の範囲、「出力電圧比」の値、「出力電圧比」の値の範囲、異なる「出力電圧比」の値の差分等を調節を容易にすることができる。
【0088】
以上のような第3構成例の圧力センサ110を用いる場合、第1検出信号及び第2検出信号の振幅値に基づいて外力が印加された圧力印加部40の位置を特定するので、第1検出信号及び第2検出信号の振幅値の電圧範囲は大きい方が好ましい。例えば、圧力印加部40の数が多い場合、第1検出信号及び第2検出信号の振幅値の電圧範囲はより大きい方が好ましい。また、圧力印加部40に印加される外力の大きさにも幅があるので、第1検出信号及び第2検出信号の振幅値の電圧範囲は更に拡大することがある。
【0089】
したがって、信号受信部160は、電圧範囲の大きい第1検出信号及び第2検出信号を増幅してデジタル信号に変換することになる。言い換えると、信号受信部160には、ダイナミックレンジの広い増幅回路が要求されることがある。そこで、このような検出信号を処理することが可能な信号受信部160の例について次に説明する。
【0090】
<圧電センサ300の構成例>
図10は、本実施形態に係る圧電センサ300の構成例を示す。本例において、本実施形態に係る圧力センサ110及び信号受信部160の組み合わせを、圧電センサ300と呼ぶ。圧力センサ110は、図4から図9で説明した第3構成例の圧力センサ110でよく、ここでは説明を省略する。信号受信部160は、信号増幅部310とAD変換部320とを有する。
【0091】
信号増幅部310は、下部電極120及び共通電極220から出力された第1検出信号と、共通電極220及び上部電極130から出力された第2検出信号とを受け取って、第1検出信号及び第2検出信号を増幅した増幅信号を出力する。信号増幅部310は、第1増幅回路311、第2増幅回路312、第3増幅回路313、第4増幅回路314、第5増幅回路315、及び第6増幅回路316を含む。
【0092】
第1増幅回路311は、下部電極120及び共通電極220から出力された第1検出信号を第1増幅率で増幅する。第1増幅率は、1倍以上の増幅率である。第1増幅回路311は、増幅した信号を第2増幅回路312及び第3増幅回路313に供給する。
【0093】
第2増幅回路312は、第1増幅回路311が増幅した信号を第2増幅率で増幅する。また、第3増幅回路313は、第1増幅回路311が増幅した信号を第2増幅率よりも小さい第3増幅率で増幅する。第2増幅率及び第3増幅率は、1倍以上の増幅率である。例えば、第2増幅回路312は小信号用の増幅回路として機能し、第3増幅回路313は大信号用の増幅回路として機能する。第2増幅回路312及び第3増幅回路313は、増幅した信号をAD変換部320に供給する。
【0094】
第4増幅回路314は、上部電極130及び共通電極220から出力された第2検出信号を第4増幅率で増幅する。第4増幅率は、1倍以上の増幅率である。第4増幅率は、第1増幅率と同じ増幅率であってもよく、これに代えて、第1増幅率とは異なる増幅率であってもよい。第4増幅回路314は、増幅した信号を第5増幅回路315及び第6増幅回路316に供給する。
【0095】
第5増幅回路315は、第4増幅回路314が増幅した信号を第5増幅率で増幅する。また、第6増幅回路316は、第4増幅回路314が増幅した信号を第5増幅率よりも小さい第6増幅率で増幅する。第5増幅率及び第6増幅率は、1倍以上の増幅率である。例えば、第5増幅回路315は小信号用の増幅回路として機能し、第6増幅回路316は大信号用の増幅回路として機能する。第5増幅回路315及び第6増幅回路316は、増幅した信号をAD変換部320に供給する。
【0096】
AD変換部320は、第2増幅回路312、第3増幅回路313、第5増幅回路315、及び第6増幅回路316から受け取った4つの増幅信号をそれぞれデジタル信号に変換する。AD変換部320は、変換したデジタル信号を信号受信部160の受信結果として出力する。特定部170は、このような信号受信部160の受信結果を受け取る。なお、信号受信部160は、所定の電圧値と信号増幅部310の出力とを比較するコンパレータ等を更に備えてもよい。所定の電圧値は、例えば、閾値、基準値等である。
【0097】
以上のように、本実施形態に係る圧電センサ300の信号増幅部310は、第1検出信号を第1増幅率及び第2増幅率で増幅する第1経路と、第1増幅率及び第3増幅率で増幅する第1経路よりも増幅率の小さい第2経路とを含む。このように、信号増幅部310が増幅率の異なる複数の経路を有するので、例えば、圧電センサ300の後段の特定部170は、第1検出信号の最大振幅値の大きさに基づいて、より適切な経路の増幅信号を選択できる。
【0098】
特定部170は、例えば、第1増幅回路311が第1検出信号を増幅した信号の最大振幅値が第2増幅回路312の処理可能なダイナミックレンジの範囲内であれば、第1経路の増幅信号を採用する。また、特定部170は、第1増幅回路311が第1検出信号を増幅した信号の最大振幅値が第2増幅回路312のダイナミックレンジの範囲を超える場合、第2経路の増幅信号を採用する。
【0099】
同様に、信号増幅部310は、第2検出信号を第4増幅率及び第5増幅率で増幅する第3経路と、第4増幅率及び第6増幅率で増幅する第3経路よりも増幅率の小さい第4経路とを含む。これにより、圧電センサ300の後段の特定部170は、第2検出信号の最大振幅値の大きさに基づいて、より適切な経路の増幅信号を選択できる。
【0100】
特定部170は、例えば、第4増幅回路314が第2検出信号を増幅した信号の最大振幅値が第5増幅回路315の処理可能なダイナミックレンジの範囲内であれば、第3経路の増幅信号を採用する。また、特定部170は、第4増幅回路314が第2検出信号を増幅した信号の最大振幅値が第5増幅回路315のダイナミックレンジの範囲を超える場合、第4経路の増幅信号を採用する。以上のように、特定部170は、適切な増幅回路で第1検出信号及び第2検出信号を増幅した信号を用いて、精度よく圧力印加部40の位置を特定することができる。
【0101】
なお、特定部170は、信号受信部160の受信結果を予め定められた経路の増幅特性に対応させるように、信号受信部160の受信結果に予め定められた定数を乗じてもよい。特定部170は、例えば、第2経路の増幅信号を採用した場合、信号受信部160の受信結果に第1定数を乗算して、第1経路の増幅信号を採用した場合に受け取る受信結果に換算する。第1定数は、一例として、第2増幅率/第3増幅率である。
【0102】
これにより、特定部170は、第1経路及び第2経路の2つの経路のうち、どちらの経路を通過した増幅信号を採用しても、第1経路及び第2経路のうち予め定められた一方の経路を通過した増幅信号の受信結果を取得することができる。同様に、特定部170は、例えば、第4経路の増幅信号を採用した場合、信号受信部160の受信結果に第2定数を乗算して、第3経路の増幅信号を採用した場合に受け取る受信結果に換算してもよい。第2定数は、一例として、第5増幅率/第6増幅率である。
【0103】
なお、特定部170は、2つの経路を通過した増幅信号を比較してから、採用する増幅信号を決定してもよい。例えば、第1増幅回路311が第1検出信号を増幅した信号の最大振幅値が第2増幅回路312のダイナミックレンジの範囲を超える場合、第2増幅回路312が出力する増幅信号には歪みが生じ、最大振幅値は第2増幅率で増幅した値よりも小さくなる。そこで、特定部170は、第1経路の増幅信号の最大振幅値と、第2経路の増幅信号を第1経路の増幅信号に換算した信号の最大振幅値とを比較する。
【0104】
例えば、特定部170は、2つの増幅信号の比較結果が略同一の場合、第2増幅回路312が出力する増幅信号には歪みが生じていないと判断できるので、第1経路の増幅信号を採用する。また、特定部170は、2つの信号のうち第1経路の増幅信号の最大振幅値の方が小さい比較結果の場合、第2増幅回路312が出力する増幅信号には歪みが生じていると判断できるので、第2経路の増幅信号を採用する。特定部170は、同様に、第3経路の増幅信号の最大振幅値と、第4経路の増幅信号を第3経路の増幅信号に換算した信号の最大振幅値とを比較してから、第3経路及び第4経路の増幅信号のうちどちらの増幅信号を採用するかを決定してよい。
【0105】
また、特定部170は、図6から図9で説明したように、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比を算出して圧力印加部40の位置を特定することがある。この場合、例えば、第1増幅率と第2増幅率との乗算結果が、図6又は図8の第1圧電体層210の「アンプゲイン」の値と略等しくなるように、第1増幅回路311及び第2増幅回路312が設計されていることが望ましい。これに代えて、特定部170は、第1経路及び第2経路を通過した増幅信号の増幅率が、「アンプゲイン」の値と略等しくなるように換算してもよい。
【0106】
同様に、第4増幅率と第5増幅率との乗算結果が、図6又は図8の第2圧電体層230の「アンプゲイン」の値と略等しくなるように、第4増幅回路314及び第5増幅回路315が設計されていることが望ましい。これに代えて、特定部170は、第3経路及び第4経路を通過した増幅信号の増幅率が、「アンプゲイン」の値と略等しくなるように換算してもよい。
【0107】
なお、図6に示すように、圧力印加部40の全ての位置に対応する「アンプゲイン」の値が一定の値の場合、増幅回路の増幅率を「アンプゲイン」の値に一致させなくてもよい。特定部170は、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比を算出するので、第1検出信号及び第2検出信号の増幅率が一致していればよい。また、これに代えて、第1検出信号及び第2検出信号の増幅率が一致するように換算してもよい。
【0108】
例えば、第1増幅率と第2増幅率との乗算結果が、第4増幅率と第5増幅率との乗算結果と一致するように、第1増幅回路311、第2増幅回路312、第4増幅回路314、及び第5増幅回路315が設計されていればよい。また、第1増幅率と第3増幅率との乗算結果が、第4増幅率と第6増幅率との乗算結果と一致するように、第1増幅回路311、第3増幅回路313、第4増幅回路314、及び第6増幅回路316が設計されていることが望ましい。
【0109】
この場合、特定部170は、第1経路の増幅信号を採用した場合、第3経路の増幅信号を採用して、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比を算出する。また、特定部170は、第2経路の増幅信号を採用した場合、第4経路の増幅信号を採用して、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比を算出する。これにより、特定部170は、簡便な制御により、適切なダイナミックレンジの増幅回路の増幅信号を用いて、第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比を算出できる。
【0110】
この場合、特定部170は、第1経路と第3経路の増幅信号を用いた第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比と、第2経路と第4経路の増幅信号を用いた第1検出信号及び第2検出信号の最大振幅値の比とを比較して、どちらの算出結果を採用するかを決定してもよい。特定部170は、例えば、第1経路と第3経路の増幅信号を用いた算出結果と第2経路と第4経路の増幅信号を用いた算出結果とが略等しい場合、全ての増幅回路の増幅信号には歪みがほとんど発生していないと判断できるので、第1経路と第3経路の増幅信号を用いた算出結果を採用する。
【0111】
また、特定部170は、第1経路と第3経路の増幅信号を用いた算出結果と第2経路と第4経路の増幅信号を用いた算出結果とが異なる場合、大信号用の増幅回路の増幅信号に歪みが発生していると判断できるので、第2経路と第4経路の増幅信号を用いた算出結果を採用する。以上のように、本実施形態に係る圧電センサ300は、異なる増幅率の増幅回路を複数有することにより、圧力センサ110から出力される圧電効果に基づく出力電圧を容易に増幅処理することができる。
【0112】
以上のように、圧力印加部40に過大な外力が加わった場合、比較的弱い外力が加わった場合等であっても、特定部170は、信号増幅部310の複数の経路のうち適切に検出信号を増幅している経路を選択することにより、外力が加わった圧力印加部40を精度よく特定できる。なお、特定部170が適切な経路を選択する方法については、上記の例に限定されることはない。例えば、信号受信部160は、第1増幅回路311及び第4増幅回路314の入力信号又は出力信号の最大振幅値を検出する検出回路を有し、特定部170は、検出回路の検出結果に応じて適切な経路を選択してもよい。
【0113】
以上の本実施形態に係る圧電センサ300において、第3構成例の圧力センサ110を備える例を説明したが、これに限定されることはない。圧電センサ300は、振幅値の電圧範囲が大きい検出信号を処理することができる信号受信部160を有するので、種々の圧力センサを用いることができる。例えば、圧電センサ300は、上述の第1構成例の圧力センサ110、第2構成例の圧力センサ110等を備えてもよい。
【0114】
また、圧電センサ300は、図4及び図5で説明した圧力センサ110を用いて、圧力印加部40に印加された外力の大きさを検出してもよい。例えば、特定部170は、第1検出信号及び/又は第2検出信号と一定の外力に対応する基準値等を比較することにより、圧力印加部40に印加された外力の大きさを特定できる。基準値は、異なる外力の大きさに対応して予め複数設定されていることが望ましい。
【0115】
この場合、第1圧電体層210の厚さは第2圧電体層230の厚さとは異なる厚さであることが望ましい。例えば、外力が圧力印加部40に印加された場合、薄い圧電体層に発生する電圧は、厚い圧電体層に発生する電圧よりも小さくなる。ここで、薄い圧電体層は大きな外力が加わっても発生する電圧に歪みが生じにくく、また、厚い圧電体層は小さい外力の検出感度が高い。
【0116】
したがって、薄い圧電体層を強い外力を検出するセンサとして用い、厚い圧電体層を弱い外力を検出するセンサとして用いることにより、圧力センサ110は、検出可能な力の大きさの範囲が広い外力センサとしても機能できる。この場合、第1圧電体層210の厚さが第2圧電体層230の厚さよりも大きく形成されている場合、第1増幅回路311の第1増幅率は、第4増幅回路314の第4増幅率よりも小さく設計されていることが望ましい。また、第1圧電体層210の厚さが第2圧電体層230の厚さよりも小さく形成されている場合、第1増幅回路311の第1増幅率は、第4増幅回路314の第4増幅率よりも大きく設計されていることが望ましい。
【0117】
これにより、圧電センサ300は、検出可能な力の大きさの範囲が広い外力センサから出力される信号をダイナミックレンジの広い信号増幅部310で増幅できる。したがって、特定部170は、外力が印加された圧力印加部40の位置を特定しつつ、印加された外力の大きさも特定できる。なお、圧電センサ300は、外力の大きさだけを特定してもよく、この場合、第1圧電体層210及び第2圧電体層230の厚さは一定で、圧力印加部40の数は1つだけでもよい。
【0118】
以上の本実施形態に係る圧電センサ300において、外力が加わった位置及び/又は外力の大きさを特定するための圧力センサ110を備える例を説明したが、これに限定されることはない。圧力センサ110は、音波等の振動を更に検出する振動センサとして機能してもよい。この場合、特定部170は、例えば、検出信号に含まれてる音声帯域の信号成分を音声信号として特定する。これにより、位置検出装置100は、例えば、タッチパネルの機能と音声用のマイクとしての機能を有することができる。
【0119】
圧電センサ300が振動センサとして機能する場合、信号増幅部310に設けられている複数の増幅回路は、外力の大きさを特定するための検出信号を増幅する増幅回路と、振動を検出するための検出信号を増幅する増幅回路とに分かれていてもよい。このような圧電センサ300の例について、次に説明する。
【0120】
<圧電センサ300の変形例>
図11は、本実施形態に係る圧電センサ300の変形例を示す。本変形例の圧電センサ300において、図10に示された本実施形態に係る圧電センサ300の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。圧電センサ300の信号増幅部310は、第1高周波用フィルタ331、第1低周波用フィルタ332、第2高周波用フィルタ333、及び第2低周波用フィルタ334を更に有する。
【0121】
本変形例の第1増幅回路311の第1増幅率は、第4増幅回路314の第4増幅率とは異なる。一例として、第1増幅率は第4増幅率よりも大きく、第1増幅回路311は小信号用の増幅回路として機能し、第4増幅回路314は大信号用の増幅回路として機能する。
【0122】
第2増幅回路312は、第1増幅回路311が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を増幅する。所定の周波数は、例えば、10Hz程度の周波数である。言い換えると、第2増幅回路312は、可聴帯域の周波数成分を増幅し、マイクのための小信号の増幅回路として機能する。第2増幅回路312は、例えば、可聴帯域に増幅特性を有する増幅回路である。これに代えて、第2増幅回路312は、第1高周波用フィルタ331と組み合わされることにより、可聴帯域の周波数成分を増幅する増幅回路として機能してもよい。
【0123】
第1高周波用フィルタ331は、第1増幅回路311及び第2増幅回路312の間に設けられており、第1増幅回路311が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を通過させる。第1高周波用フィルタ331は、可聴帯域の周波数成分を通過させる。第1高周波用フィルタ331は、例えば、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ等である。
【0124】
第3増幅回路313は、第1増幅回路311が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を増幅する。圧力印加部40に加わった外力の大きさを検出するための信号は、可聴帯域よりも低い周波数の信号で十分である。したがって、第3増幅回路313は、可聴帯域以下の周波数成分を増幅し、外力の大きさを特定するための小信号の増幅回路として機能する。第3増幅回路313は、例えば、可聴帯域以下の周波数領域に増幅特性を有する増幅回路である。これに代えて、第3増幅回路313は、第1低周波用フィルタ332と組み合わされることにより、可聴帯域以下の周波数成分を増幅する増幅回路として機能してもよい。
【0125】
第1低周波用フィルタ332は、第1増幅回路311及び第3増幅回路313の間に設けられ、第1増幅回路311が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を通過させる。第1低周波用フィルタ332は、可聴帯域以下の周波数成分を通過させる。第1低周波用フィルタ332は、例えば、ローパスフィルタ等である。
【0126】
第5増幅回路315は、第4増幅回路314が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を増幅する。第5増幅回路315は、可聴帯域の周波数成分を増幅し、マイクのための大信号の増幅回路として機能する。言い換えると、第5増幅回路315は、第2増幅回路312を大信号用にした増幅回路である。
【0127】
第2高周波用フィルタ333は、第4増幅回路314及び第5増幅回路315の間に設けられており、第4増幅回路314が増幅した信号のうち所定の周波数を超える周波数成分を通過させる。第2高周波用フィルタ333は、第1高周波用フィルタ331と同様のフィルタでよい。
【0128】
第6増幅回路316は、第4増幅回路314が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を増幅する。第6増幅回路316は、可聴帯域以下の周波数成分を増幅し、外力の大きさを特定するための小信号の増幅回路として機能する。言い換えると、第6増幅回路316は、第3増幅回路313を大信号用にした増幅回路である。
【0129】
第2低周波用フィルタ334は、第4増幅回路314及び第6増幅回路316の間に設けられており、第4増幅回路314が増幅した信号のうち所定の周波数以下の周波数成分を通過させる。第2低周波用フィルタ334は、第1低周波用フィルタ332と同様のフィルタでよい。
【0130】
以上の変形例の圧電センサ300において、圧力センサ110の第1圧電体層210は、外力の大きさと音声を検出するための小信号用センサとして機能する。また、圧力センサ110の第2圧電体層230は、外力の大きさと音声を検出するための大信号用センサとして機能する。したがって、本例の第1圧電体層210の厚さは、第2圧電体層230の厚さよりも厚く形成されていることが望ましい。これにより、圧電センサ300は、検出できる力の大きさと音声の音量をより広くすることができる。
【0131】
ここで、圧力センサ110の第1圧電体層210及び第2圧電体層230のいずれか一方は、上述の第1構成例の圧力センサ110又は第2構成例の圧力センサ110の圧電体層140と同様に形成されていてもよい。これにより、圧電センサ300は、外力が印加された位置、外力の大きさ、及び音声を検出することができる。
【0132】
また、圧力センサ110の第1圧電体層210及び第2圧電体層230の両方が上述の第1構成例の圧力センサ110又は第2構成例の圧力センサ110の圧電体層140と同様に形成されていてもよい。この場合、第1圧電体層210のそれぞれの圧電体領域の厚さは、第2圧電体層230のそれぞれの圧電体領域の厚さよりも薄く形成されていることが望ましい。これにより、第1圧電体層210は外力が印加された位置、外力の大きさ、及び音声を検出するための大信号用センサとして機能することができ、また、第2圧電体層230は外力が印加された位置、外力の大きさ、及び音声を検出するための小信号用センサとして機能することができる。
【0133】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0134】
10 位置検出装置
20 圧力センサ
30 信号処理部
40 圧力印加部
50 基板
60 センサ素子
62 下部電極
64 上部電極
66 圧電体層
70 下地層
80 保護膜
90 配線
100 位置検出装置
110 圧力センサ
120 下部電極
130 上部電極
140 圧電体層
141 第1圧電体領域
142 第2圧電体領域
143 第3圧電体領域
144 隙間領域
146 空隙部
150 信号処理部
160 信号受信部
170 特定部
180 記憶部
210 第1圧電体層
220 共通電極
230 第2圧電体層
300 圧電センサ
310 信号増幅部
311 第1増幅回路
312 第2増幅回路
313 第3増幅回路
314 第4増幅回路
315 第5増幅回路
316 第6増幅回路
320 AD変換部
331 第1高周波用フィルタ
332 第1低周波用フィルタ
333 第2高周波用フィルタ
334 第2低周波用フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11