(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129773
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】熱交換器及び熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法
(51)【国際特許分類】
F28F 1/30 20060101AFI20220830BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F28F1/30 B
F28D1/053 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028587
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】390000158
【氏名又は名称】日軽熱交株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 和彦
(72)【発明者】
【氏名】畠沢 良之
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103DD34
3L103DD85
(57)【要約】
【課題】扁平チューブとコルゲートフィンとの接触面積を増大させて扁平チューブ表面の腐食進行を抑制し、熱交換器の耐食性の向上を図れるようにすること。
【解決手段】両面に平坦状の扁平面3bを有する扁平チューブ3と、コルゲートフィン4と、対峙する一対のヘッダーパイプ2a,2bをろう付けにより接合してなるアルミニウム製の熱交換器において、上記コルゲートフィンは、隣接する上記扁平チューブの上記扁平面に接触する山部41及び谷部42が平坦面状に形成されると共に、上記山部と上記谷部を繋ぐ直線部43により形成される上記山部の平坦面側の内角α及び上記谷部の平坦面側の内角βが鋭角に形成され、かつ、上記コルゲートフィンと上記扁平チューブの接触長さ(L)、上記扁平チューブの長手方向の長さ(TL)とした場合、隣接する上記扁平チューブの対向面を含む上記扁平チューブの両面において、1/2×TL<L≦TLの関係にする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に平坦状の扁平面を有し、熱媒体流路を有する扁平チューブと、コルゲートフィンとが並列状に複数配置され、上記扁平チューブが、対峙する一対のヘッダーパイプに連通接続され、上記扁平チューブ、上記コルゲートフィン及び上記ヘッダーパイプをろう付けにより接合してなるアルミニウム製の熱交換器であって、
上記コルゲートフィンは、隣接する上記扁平チューブの上記扁平面に接触する山部及び谷部が平坦面状に形成されると共に、上記山部と上記谷部を繋ぐ直線部により形成される上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角が鋭角に形成され、
かつ、隣接する上記扁平チューブの対向面を含む上記扁平チューブの両面における上記コルゲートフィンと上記扁平チューブの接触長さ(L)、上記扁平チューブの長手方向の長さ(TL)とした場合、隣接する上記扁平チューブの対向面を含む上記扁平チューブの両面において、
1/2×TL<L≦TL
の関係にある、ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器において、
上記コルゲートフィンと上記扁平チューブの接触長さ(L)は、上記扁平チューブの両面に接触する上記山部及び上記谷部の上記平坦面の長さ(L0)、上記コルゲートフィンの上記山部と上記谷部間のピッチ(P)のピッチ数(n)とした場合、L=L0×nである、ことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱交換器において、
上記コルゲートフィンの上記山部の平坦面側の内角と上記谷部の平坦面側の内角が略同角度に形成されている、ことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1に記載の熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法であって、
アルミニウム製シートを一対の歯形状成形ローラ間を通して湾曲状の山部及び谷部と上記山部と上記谷部を繋ぐ直線部を有する波形状のコルゲートフィン基材を成形する前処理工程と、
上記コルゲートフィン基材を、該コルゲートフィン基材のフィン高さ寸法より狭い間隔で対をなす押圧成形ローラ間を通して上記山部及び上記谷部の湾曲面を平坦面状に成形すると共に、上記直線部により形成される上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形する後処理工程と、
を備える、ことを特徴とする熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法において、
上記後処理工程は、上記間隔が漸次狭くなる複数対の押圧成形ローラ間を通して上記山部及び上記谷部の湾曲面を平坦面状に成形すると共に、上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形する、ことを特徴とする熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法において、
上記後処理工程において、対をなす上記押圧成形ローラによって上記コルゲートフィン基材の山部及び谷部の湾曲面に同圧の圧縮力を加圧すると共に、上記直線部に上記コルゲートフィン基材の送り方向と反対方向の同圧の押圧力を加圧する、ことを特徴とする熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法。
【請求項7】
請求項1に記載の熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法であって、
アルミニウム製シートを一対の歯形状成形ローラ間を通して湾曲状の山部及び谷部と上記山部と上記谷部を繋ぐ直線部を有する波形状のコルゲートフィン基材を成形後、所定の長さに切断する前処理工程と、
上記コルゲートフィン基材を送り方向の先端及び後端を押さえながら少なくとも上記山部及び上記谷部に接触する面が平坦な押圧盤で垂直方向に上下から圧縮して、上記山部及び上記谷部の湾曲面を平坦面状に成形すると共に、上記直線部により形成される上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形する後処理工程と、
を備える、ことを特徴とする熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扁平状の熱交換チューブとコルゲートフィンとをろう付け接合してなるアルミニウム製の熱交換器及び熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム製熱交換器としては、対峙する一対のヘッダーパイプ間に、互いに平行な複数の扁平状押出形材からなる熱交換チューブ(以下に扁平チューブという)を水平方向に配置し、更にこれら扁平チューブ間にコルゲートフィンを配置し、これらをろう付けにより接合してなるパラレルフロー型の熱交換器が広く使用されている。
【0003】
この種の熱交換器においては、耐食性を高めるための一般的な方法として、扁平チューブとコルゲートフィンの電気化学的な自然電位を調整し、コルゲートフィンの自然電位を卑となし、扁平チューブの自然電位を貴となすことによって、犠牲材であるコルゲートフィンを優先的に腐食させ、扁平チューブの腐食を遅らせて扁平チューブ表面の腐食進行を抑制している。また、扁平チューブ表面の腐食進行を抑制する手段として、扁平チューブとコルゲートフィンとの接触面積を多くし、扁平チューブ表面の露出面積を少なくすることで、扁平チューブ表面の腐食進行を抑制することができる。
【0004】
従来のこの種の熱交換器として、両側に平坦面を有する扁平チューブにろう付けされるコルゲートフィンは、湾曲部と直線部とが交互に形成され、湾曲部は直線部側の2つの部位を小径とすると共に、小径間をそれより大きい径(大径)に形成し、ろう付け時に加圧により湾曲部の小径と大径との連続的な形状が直線に近い形状として、扁平チューブの平坦面との接触面積の拡大を図る熱交換器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、コルゲートフィンは、空気の流通方向と略平行な面を有する平面部と、隣り合う平面部間を繋ぐ湾曲部を有し、扁平チューブの長手方向において隣り合う湾曲部が近接するように、隣り合う平面部同士が空気の流通方向から見て略ハの字状に形成され、伝熱効率の向上を図るために、湾曲部の一部が切り起こされて形成される突起部を大きくして放熱面積を増大させる熱交換器が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-255091号公報
【特許文献2】特開2005-55096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の熱交換器においては、扁平チューブの平坦面に接触するコルゲートフィンの湾曲部が直線に近い状態となり、湾曲部と直線部が略直交状となるため、扁平チューブの両面(隣接する扁平チューブの対向面を含む)において、コルゲートフィンが接触しない部分の扁平チューブ表面が露出し、この露出部分が外気に晒されて腐食する懸念がある。一般にコルゲートフィンの山部と谷部のピッチは等ピッチであるので、上記露出部分は扁平チューブの長手方向の長さの少なくとも1/2を占めることになり、この部分が腐食する懸念がある。
【0008】
一方、特許文献2に記載の熱交換器においては、扁平チューブに接触する湾曲部と、該湾曲部の両側に連なる2枚の平面部が略2等辺三角形となるので、扁平チューブとコルゲートフィンとの接触面積を増大させることができる。しかし、特許文献2に記載の熱交換器においては、上記湾曲部の一部が切り起こされて形成される突起部を大きくしてあるため、突起部を切り起こした穴部分は扁平チューブは外部に露出し、この露出部分が外気に晒されて腐食する懸念がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、扁平チューブとコルゲートフィンとの接触面積を増大させて扁平チューブ表面の腐食進行を抑制し、熱交換器の耐食性の向上を図れるようにした熱交換器を提供すると共に、上記扁平チューブとの接触面積を増大させる熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、この発明の熱交換器は、両面に平坦状の扁平面を有し、熱媒体流路を有する扁平チューブと、コルゲートフィンとが並列状に複数配置され、上記扁平チューブが、対峙する一対のヘッダーパイプに連通接続され、上記扁平チューブ、上記コルゲートフィン及び上記ヘッダーパイプをろう付けにより接合してなるアルミニウム製の熱交換器であって、上記コルゲートフィンは、隣接する上記扁平チューブの上記扁平面に接触する山部及び谷部が平坦面状に形成されると共に、上記山部と上記谷部を繋ぐ直線部により形成される上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角が鋭角に形成され、かつ、隣接する上記扁平チューブの対向面を含む上記扁平チューブの両面における上記コルゲートフィンと上記扁平チューブの接触長さ(L)、上記扁平チューブの長手方向の長さ(TL)とした場合、隣接する上記扁平チューブの対向面を含む上記扁平チューブの両面において、1/2×TL<L≦TLの関係にある、ことを特徴とする(請求項1)。
【0011】
この場合、上記コルゲートフィンと上記扁平チューブの接触長さ(L)は、上記扁平チューブの両面に接触する上記山部及び上記谷部の上記平坦面の長さ(L0)の総和である。すなわち、上記コルゲートフィンの上記山部と上記谷部間のピッチ(P)のピッチ数(n)とした場合、L=L0×nである(請求項2)。
【0012】
このように構成することにより、隣接する扁平チューブの対向面を含む扁平チューブの両面において、コルゲートフィンの山部の平坦面と谷部の平坦面が重なる部分が生じることで、扁平チューブ表面において、犠牲材であるコルゲートフィンに覆われる面積が増大し、扁平チューブ表面が露出する範囲を減少することができ、扁平チューブ表面が外気に晒されて腐食するのを抑制することができる。
【0013】
この発明において、上記コルゲートフィンの上記山部の平坦面側の内角と上記谷部の平坦面側の内角が略同角度に形成されているのが好ましい(請求項3)。
【0014】
このように構成することにより、扁平チューブの両面(隣接する扁平チューブの対向面を含む)において、扁平チューブとコルゲートフィンとの接触(接合)を均一にすることができる。また、ヘッダーパイプ、扁平チューブ及びコルゲートフィン等を仮組みしてろう付けする際に、扁平チューブ間に配置されるコルゲートフィンの山部と谷部の向きに制限無く配置することができる。
【0015】
また、この発明の第1のコルゲートフィンの加工方法は、請求項1に記載の熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法であって、アルミニウム製シートを一対の歯形状成形ローラ間を通して湾曲状の山部及び谷部と上記山部と上記谷部を繋ぐ直線部を有する波形状のコルゲートフィン基材を成形する前処理工程と、上記コルゲートフィン基材を、該コルゲートフィン基材のフィン高さ寸法より狭い間隔で対をなす押圧成形ローラ間を通して上記山部及び上記谷部の湾曲面を平坦面状に成形すると共に、上記直線部により形成される上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形する後処理工程と、を備える、ことを特徴とする(請求項4)。
【0016】
このように構成することにより、前処理工程において、アルミニウム製シート(心材にろう材がクラッドされたブレージングシートを含む)を湾曲状の山部及び谷部と上記山部と上記谷部を繋ぐ直線部を有する波形状のコルゲートフィン基材を成形した後、後処理工程において、コルゲートフィン基材を、該コルゲートフィン基材のフィン高さ寸法より狭い間隔で対をなす押圧成形ローラによる山部及び谷部の湾曲面を圧縮する圧縮力と直線部をコルゲートフィン基材の送り方向と反対方向に押圧する押圧力とが作用して、上記山部及び上記谷部の湾曲面を平坦面状に成形すると共に、上記直線部により形成される上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形して、上記山部及び谷部が平坦面状で、上記山部及び谷部の平坦面側の内角が鋭角のコルゲートフィンを成形することができる。
【0017】
また、上記コルゲートフィンの加工方法において、上記後処理工程は、上記間隔すなわち上記コルゲートフィン基材のフィン高さ寸法より狭い間隔が漸次狭くなる複数対の押圧成形ローラ間を通して上記山部及び上記谷部の湾曲面を平坦面状に成形すると共に、上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形するのが好ましい(請求項5)。
【0018】
このように構成することにより、コルゲートフィン基材の山部及び谷部の湾曲面を段階的に圧縮して平坦面状に成形することができ、山部と谷部を繋ぐ直線部をコルゲートフィン基材の送り方向と反対方向に段階的に押圧して山部及び谷部の平坦面側の内角を所定の鋭角に成形することができる。
【0019】
また、上記コルゲートフィンの加工方法において、上記後処理工程において、対をなす上記押圧成形ローラによって上記コルゲートフィン基材の山部及び谷部の湾曲面に同圧の圧縮力を加圧すると共に、上記直線部に上記コルゲートフィン基材の送り方向と反対方向の同圧の押圧力を加圧するのがよい(請求項6)。
【0020】
このように構成することにより、山部の平坦面側の内角と谷部の平坦面側の内角が同角度のコルゲートフィンを容易に加工(製造)することができる。
【0021】
また、この発明の第2のコルゲートフィンの加工方法は、請求項1に記載の熱交換器におけるコルゲートフィンの加工方法であって、アルミニウム製シートを一対の歯形状成形ローラ間を通して湾曲状の山部及び谷部と上記山部と上記谷部を繋ぐ直線部を有する波形状のコルゲートフィン基材を成形後、所定の長さに切断する前処理工程と、上記コルゲートフィン基材を送り方向の先端及び後端を押さえながら少なくとも上記山部及び上記谷部に接触する面が平坦な押圧盤で垂直方向に上下から圧縮して、上記山部及び上記谷部の湾曲面を平坦面状に成形すると共に、上記直線部により形成される上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形する後処理工程と、を備える、ことを特徴とする(請求項7)
【0022】
このように構成することによって、前処理工程において、アルミニウム製シート(心材にろう材がクラッドされたブレージングシートを含む)を湾曲状の山部及び谷部と上記山部と上記谷部を繋ぐ直線部を有する波形状のコルゲートフィン基材を成形した後、後処理工程において、コルゲートフィン基材を、該コルゲートフィン基材の送り方向の先端及び後端を押さえながら押圧盤で垂直方向に上下から圧縮して、上記山部及び上記谷部の湾曲面を平坦面状に成形すると共に、上記直線部により形成される上記山部の平坦面側の内角及び上記谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形して、上記山部及び谷部が平坦面状で、上記山部及び谷部の平坦面側の内角が鋭角のコルゲートフィンを成形することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0024】
(1)請求項1,2に記載の発明によれば、扁平チューブ表面において、犠牲材であるコルゲートフィンに覆われる面積が増大し、扁平チューブ表面が露出する範囲を減少することができ、扁平チューブ表面が外気に晒されて腐食するのを抑制することができるので、熱交換器の耐食性及び耐久性の向上が図れる。
【0025】
(2)請求項3に記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更に扁平チューブの両面(隣接する扁平チューブの対向面を含む)において、扁平チューブとコルゲートフィンとの接触(接合)を均一にすることができる。また、ヘッダーパイプ、扁平チューブ及びコルゲートフィン等を仮組みしてろう付けする際に、扁平チューブ間に配置されるコルゲートフィンの山部と谷部の向きに制限無く配置することができるので、熱交換器の組み立てを容易にすることができる。
【0026】
(3)請求項4~7に記載の発明によれば、山部及び谷部が平坦面状で、上記山部及び谷部の平坦面側の内角が鋭角のコルゲートフィンを容易に加工(製造)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】この発明に係る熱交換器の一例を示す概略正面図である。
【
図2】上記熱交換器の一部を断面で示す斜視図である。
【
図3】この発明における扁平チューブとコルゲートフィンの接合状態を示す要部拡大正面図である。
【
図3A】上記扁平チューブとコルゲートフィンの別の接合状態を示す要部拡大正面図である。
【
図3B】上記扁平チューブとコルゲートフィンの更に別の接合状態を示す要部拡大正面図である。
【
図4】この発明におけるコルゲートフィン基材を成形する前処理工程を示す概略側面図である。
【
図5】この発明におけるコルゲートフィンの山部及び谷部を段階的に平坦面状に成形すると共に、山部及び谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形する後処理工程を示す概略側面図である。
【
図6】この発明におけるコルゲートフィンの山部の湾曲面を平坦面状に成形する状態を示す要部拡大図である。
【
図7】この発明におけるコルゲートフィンの山部及び谷部を平坦面状に成形すると共に、山部及び谷部の平坦面側の内角を鋭角に成形する後処理工程の別の実施形態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
<熱交換器>
この発明に係るアルミニウム製の熱交換器1は、
図1に示すように、それぞれアルミニウム(アルミニウム合金を含む)製の左右に対峙する一対のヘッダーパイプ2a,2bと、これらヘッダーパイプ2a,2b間に互いに平行に水平方向に配置されて連通接続される複数の扁平状熱交換チューブ3(以下に扁平チューブ3という)及び隣接する扁平チューブ3間に介在されるコルゲートフィン4をろう付けしてなる。
【0030】
なお、扁平チューブ3は、両面に平坦状の扁平面3bを有し、複数に区画された熱媒体流路3aが形成されている。また、上下端のコルゲートフィン4の上部外方側及び下部開放側には、それぞれアルミニウム製のサイドプレート5がろう付けされている。また、ヘッダーパイプ2a,2bの上下開口端にはアルミニウム製のエンドキャップ6がろう付けされている。
【0031】
また、上記ヘッダーパイプ2a,2bのうちの一方のヘッダーパイプ2a(
図1において左側)の上部には熱媒体(以下に冷媒という)の流入管7aが接続され、該ヘッダーパイプ2aには第1の仕切板8aが配置されている。他方のヘッダーパイプ2b(
図1における右側)の下部には冷媒の流出管7bが接続され、該ヘッダーパイプ2bには第2の仕切板8bが配置されている。
【0032】
上記のように構成される熱交換器1において、冷媒は流入管7aを介して第1の仕切板8aによって区画されたヘッダーパイプ2a内の上部側に流入した後、扁平チューブ3を介して第2の仕切板8bによって区画されたヘッダーパイプ2b内の上部側に流れ、次いで、扁平チューブ3を介して第1の仕切板8aによって区画されたヘッダーパイプ2a内の下部側に流入し、その後流出管7bを介して外部に流れる。
【0033】
コルゲートフィン4は、
図1~
図3に示すように、アルミニウム製の板材(例えば、心材の両面にろう材がクラッドされたブレージングシート)を屈曲することにより連続波形状に形成されており、隣接する扁平チューブ3の扁平面3bに接触する山部41及び谷部42が平坦面状に形成されると共に、山部41と谷部42を繋ぐ直線部43により形成される山部41の平坦面側の内角α(以下に山部内角αという)及び谷部42の平坦面側の内角β(以下に谷部内角βという)が鋭角に形成されている。この場合、山部内角αと谷部内角βは同角度に形成されている。
【0034】
また、
図3に示すように、扁平チューブ3の両面(隣接する扁平チューブ3の対向面を含む)におけるコルゲートフィン4と扁平チューブ3の接触長さ(L)、扁平チューブ3の長手方向の長さ{具体的には、両ヘッダーパイプ2a,2b間の長さ}(TL)とした場合、扁平チューブ3の両面(隣接する扁平チューブ3の対向面を含む)において、
1/2×TL<L≦TL
の関係に形成されている。
【0035】
この場合、扁平チューブ3の両面(隣接する扁平チューブ3の対向面を含む)におけるコルゲートフィン4と扁平チューブ3の接触長さ(L)は、扁平チューブ3の両面に接触する山部41及び谷部42の平坦面44の長さ(L0)の総和である。すなわち、コルゲートフィン4の山部41と谷部42間のピッチ(P)のピッチ数(n)とした場合、L=L0×nである。
【0036】
なお、
図3においては、隣接するコルゲートフィン4の山部41と谷部42のピッチPが同ピッチPとなるように配置されている場合について説明したが、隣接するコルゲートフィン4の配置は必ずしも同ピッチPでなくてもよい。例えば、
図3Aに示すように、隣接するコルゲートフィン4の山部41と谷部42のピッチPが1ピッチPずれて配置される場合、
図3Bに示すように、隣接するコルゲートフィン4の山部41と谷部42のピッチPがずれる(例えば、1/2Pずれる)場合や1/2P以外等のずれのいずれにおいても、上記の1/2×TL<L≦TLの関係となる。
【0037】
上述したように、コルゲートフィン4の山部41及び谷部42の平坦面44は扁平チューブ3の扁平面3bに接触しているので、上記の1/2×TL<L≦TLの関係にあることは、換言すると、扁平チューブ3の両面(隣接する扁平チューブ3の対向面を含む)において、コルゲートフィン4が接触する面積は、少なくとも扁平チューブ3の長手方向の長さ{具体的には、両ヘッダーパイプ2a,2b間の長さ}の1/2以上の範囲となる。
【0038】
上記のように構成される実施形態の熱交換器1によれば、扁平チューブ3の両面(隣接する扁平チューブ3の対向面を含む)において、コルゲートフィン4の山部41の平坦面44と谷部42の平坦面44が重なる部分が生じることで、扁平チューブ3表面において、犠牲材であるコルゲートフィン4に覆われる面積が少なくとも扁平チューブ3の長手方向の長さ{具体的には、両ヘッダーパイプ2a,2b間の長さ}の1/2以上にして、扁平チューブ3表面が露出する範囲を減少することができるので、扁平チューブ3表面が外気に晒されて腐食するのを抑制することができる。したがって、熱交換器1の耐食性及び耐久性の向上が図れる。
【0039】
この場合、山部内角αと谷部内角βの角度を小さくすることによって、山部41の平坦面44と谷部42の平坦面の重なる部分(面積)が大きくなり、その部分扁平チューブ3表面が露出する範囲を減少することができる。
この場合、山部内角αと谷部内角βは、α≒β<90度となる。
【0040】
また、コルゲートフィン4の山部内角αと谷部内角βが略同角度に形成されているので、扁平チューブの両面(隣接する扁平チューブの対向面を含む)において、扁平チューブとコルゲートフィンとの接触(接合)を均一にすることができる。
【0041】
また、山部内角αと谷部内角βを略同角度に形成することにより、熱交換器1の各構成部材である、ヘッダーパイプ2a,2b、扁平チューブ3及びコルゲートフィン4等を仮組みしてろう付けする際に、扁平チューブ3間に配置されるコルゲートフィン4の山部41と谷部42の向きに制限無く配置することができる。したがって、熱交換器1の組立を容易にすることができる。
【0042】
<コルゲートフィンの加工>
以下に、上記熱交換器1を構成するコルゲートフィン4の加工方法について説明する。
まず、
図4に示すように、ロール11から繰り出されたアルミニウム製シート10(心材にろう材がクラッドされたブレージングシートを含む)を対峙する一対のガイドローラ12を介して一対の歯形状成形ローラ20間を通して湾曲状の山部41a及び谷部42aと山部41aと谷部42aを繋ぐ直線部43を有する波形状のコルゲートフィン基材4Aを成形する(前処理工程)。
【0043】
次に、
図5に示すように、前処理工程で成形されたコルゲートフィン基材4Aを、該コルゲートフィン基材4Aの高さ寸法H0より狭い間隔で、間隔が漸次狭くなる複数対、すなわち、間隔H1(<H0)の第1の押圧成形ローラ30a,間隔H2(<H1)の第2の押圧成形ローラ30b及び間隔H3(<H2)の第3の押圧成形ローラ30cをなす押圧成形ローラ30間を通して山部41a及び谷部42aの湾曲面を段階的に圧縮して平坦面状の山部41及び谷部42を成形すると共に、直線部43により形成される山部41の平坦面側の内角α(山部内角α)及び谷部42の平坦面側の内角β(谷部内角β)を段階的に鋭角に成形する(後処理工程)。なお、第1~第3の押圧成形ローラ30a~30cは回転自在に形成されると共に、図示しない付勢手段によってコルゲートフィン基材4Aの頂部に向かって押圧されている。
【0044】
後処理工程において、コルゲートフィン基材4Aは、コルゲートフィン基材4Aのフィン高さH0より狭い間隔H1を有する第1の押圧成形ローラ対30aを通る際に第1の押圧成形ローラ対30aによって湾曲状の山部41a及び谷部42aが圧縮されると共に、直線部43がコルゲートフィン基材4Aの送り方向と反対側に向かって屈曲される。これにより、第1の押圧成形ローラ対30aによってコルゲートフィン基材4Aのフィン高さH0からH1に縮小される。
【0045】
すなわち、
図6に示すように、コルゲートフィン基材4Aの山部41aは第1の押圧成形ローラ対30aに接触して垂直方向の圧縮力F1を受けると共に、直線部43はコルゲートフィン基材4Aの送り方向と反対側に作用する水平方向の押圧力F2を受けて、山部41aは平坦面状に成形され、直線部43はコルゲートフィン基材4Aの送り方向と反対側に向かって屈曲される。コルゲートフィン基材4Aの谷部42aについても同様に垂直方向の圧縮力F1と水平方向の押圧力F2を受けて、谷部42aは平坦面状に成形され、直線部43はコルゲートフィン基材4Aの送り方向と反対側に向かって屈曲される。
【0046】
第1の押圧成形ローラ対30aによって成形されたコルゲートフィン基材4Aは、第1の押圧成形ローラ対30aの間隔H1より狭い間隔H2を有する第2の押圧成形ローラ対30bを通る際に第2の押圧成形ローラ対30bに接触して、上記と同様に垂直方向の圧縮力F1を受けると共に、送り方向と反対側に作用する水平方向の押圧力F2を受けて、コルゲートフィン基材4Aのフィン高さH1からH2に縮小される。
【0047】
第2の押圧成形ローラ対30bによって成形されたコルゲートフィン基材4Aは、第2押圧成形ローラ対30aの間隔H2より狭い間隔H3を有する第3の押圧成形ローラ対30cを通る際に第3の押圧成形ローラ対30cに接触して、上記と同様に垂直方向の圧縮力F1を受けると共に、送り方向と反対側に作用する水平方向の押圧力F2を受けて、コルゲートフィン基材4Aの高さH2からH3に縮小されて、コルゲートフィン4が成形される。なお、コルゲートフィン4のフィン高さH3は、熱交換器1を構成する隣接する扁平チューブ3間の寸法Sより若干高い寸法に設定されており、熱交換器の組み付け時には弾性変形して扁平チューブ3間に配置される。
【0048】
上記のようにして、コルゲートフィン基材4Aを、第1,第2及び第3の押圧成形ローラ対30a,30b,30cをなす押圧成形ローラ30間を通して山部41a及び谷部42aの湾曲面を段階的に圧縮して平坦面状の山部41及び谷部42を成形すると共に、直線部43により形成される山部41の平坦面側の内角α(山部内角α)及び谷部42の平坦面側の内角β(谷部内角β)を鋭角に成形することができる。また、この後処理工程において、第1,第2及び第3の押圧成形ローラ対30a,30b,30cによってコルゲートフィン基材4Aの山部41a及び谷部42aの湾曲面に同圧の圧縮力が加圧されると共に、直線部43に同圧の押圧力が加圧されるので、コルゲートフィン4の山部内角αと谷部内角βは略同角度に形成される。
【0049】
上記のようにして成形されたコルゲートフィン4は、熱交換器1の両ヘッダーパイプ2a,2b間の距離、すなわち両ヘッダーパイプ2a,2bに連通接続される扁平チューブ3の長さに合わせて切断される。このように所定の長さに切断されたコルゲートフィン4は、両ヘッダーパイプ2a,2bに連通接続される扁平チューブ3間に配置されて仮固定された状態で、炉中ろう付け法によって一体ろう付けされる。
【0050】
なお、扁平チューブ3の長さに合わせて切断するのは、前処理で成形されたコルゲートフィン基材4Aを、熱交換器1の両ヘッダーパイプ2a,2b間の距離、すなわち両ヘッダーパイプ2a,2bに連通接続される扁平チューブ3の長さに合わせて切断するであってもよい。
【0051】
なお、上記説明では、押圧成形ローラ30が3対の押圧成形ローラ対30a,30b,30cによって構成される場合について説明したが、押圧成形ローラ30は必ずしも3対である必要はなく、3対以外の複数対、例えば2対,4対であってもよい。また、押圧成形ローラ30は1対であってもよい。
【0052】
なお、上記押圧成形ローラ30の一部を歯形状に形成してもよい。例えば、第1の押圧成形ローラ30aの歯形の歯先厚さを、第2の押圧成形ローラ30bの歯形の対応する高さの位置の厚さと同一の寸法に形成し、歯底厚さを、第2の押圧成形ローラ30bの歯底厚さと同一寸法に形成する。また、第2の押圧成形ローラ30bと第3の押圧成形ローラ30cも上記と同様の関係にするか、あるいは、第3の押圧成形ローラ30cを歯形状でないローラとしてもよい。
【0053】
また、コルゲートフィン基材4Aを先に切断する場合は、
図7に示すように、押圧成形ローラを用いずにコルゲートフィン基材4Aを送り方向の先端及び後端を押え板52で押さえながらプレス装置50の押圧盤例えば平盤51で垂直方向に上下から圧縮(プレス)することで、コルゲートフィン4の山部内角αと谷部内角βを形成させるようにしてもよい。なお、ここでは、押圧盤を平盤51にしたが、押圧盤は少なくともコルゲートフィン基材4Aの山部41a及び谷部42aに接触する面が平坦状に形成されていればよい。
【0054】
上記実施形態のコルゲートフィンの加工方法によれば、前処理工程において、アルミニウム製シート10(心材にろう材がクラッドされたブレージングシートを含む)を湾曲状の山部41a及び谷部42aと山部41aと谷部42aを繋ぐ直線部43を有する波形状のコルゲートフィン基材4Aを成形した後、後処理工程において、コルゲートフィン基材4Aを、該コルゲートフィン基材4Aのフィン高さ寸法H0より狭い間隔で対をなす押圧成形ローラ30による山部41a及び谷部42aの湾曲面を圧縮する圧縮力と直線部43をコルゲートフィン基材4Aの送り方向と反対方向に押圧する押圧力とが作用して、山部41a及び谷部42aの湾曲面を平坦面状に成形すると共に、直線部43により形成される山部41の平坦面側の内角α(山部内角α)及び谷部42の平坦面側の内角β(谷部内角β)を鋭角に成形して、山部41及び谷部42が平坦面状で、山部41及び谷部42の平坦面側の内角α,βが鋭角のコルゲートフィン4を容易に加工(製造)することができる。
【0055】
また、上記実施形態のコルゲートフィンの加工方法によれば、後処理工程において、コルゲートフィン基材4Aの山部41a及び谷部42aの湾曲面を段階的に圧縮して平坦面状に成形すると共に、山部41aと谷部42aを繋ぐ直線部43を段階的にコルゲートフィン基材4Aの送り方向と反対方向に押圧して山部41の平坦面側の内角α(山部内角α)と谷部42の平坦面側の内角β(谷部内角β)を略同角度のコルゲートフィン4を容易に加工(製造)することができる。
【0056】
また、後処理工程にプレス装置50を用いる場合は、切断されたコルゲートフィン基材4Aの山部41a及び谷部42aの湾曲面を垂直方向上下から圧縮して平坦面状に成形すると共に、山部41の平坦面側の内角α(山部内角α)と谷部42の平坦面側の内角β(谷部内角β)を略同角度のコルゲートフィン4を容易に加工(製造)することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 熱交換器
2a,2b ヘッダーパイプ
3 扁平チューブ
3a 熱媒体流路
3b 扁平面
4 コルゲートフィン
4A コルゲートフィン基材
41,41a 山部
42,42a 谷部
43 直線部
44 平坦面
10 アルミニウム製シート
20 歯形状成形ローラ
30 押圧成形ローラ
30a 第1の押圧成形ローラ(第1の押圧成形ローラ対)
30b 第2の押圧成形ローラ(第2の押圧成形ローラ対)
30c 第3の押圧成形ローラ(第3の押圧成形ローラ対)
50 プレス装置
51 平盤(押圧盤)
52 押え板
α 山部内角(山部の平坦面側の内角)
β 谷部内角(谷部の平坦面側の内角)
L0 平坦面の長さ
L コルゲートフィンと扁平チューブの接触長さ
TL 扁平チューブの長手方向の長さ
P コルゲートフィンのピッチ
n ピッチ数
H0 コルゲートフィン基材のフィン高さ
H1 第1の押圧成形ローラ対の間隔
H2 第2の押圧成形ローラ対の間隔
H3 第3の押圧成形ローラ対の間隔(コルゲートフィンのフィン高さ)