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特開2022-129776放射線照射条件設定装置、放射線照射条件設定方法、及び放射線照射条件設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129776
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】放射線照射条件設定装置、放射線照射条件設定方法、及び放射線照射条件設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
A61N5/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028591
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】521082329
【氏名又は名称】橘 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 英伸
(72)【発明者】
【氏名】守屋 駿佑
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC02
4C082AE03
4C082AG24
4C082AJ08
4C082AJ14
4C082AP06
(57)【要約】
【課題】患者の患部に照射される放射線の量が不必要に多くなるのを抑制することができる。
【解決手段】放射線照射条件設定装置は、患者の患部を撮影した四次元画像と、患者の腹部の動きに基づく呼吸波形と、を取得し、四次元画像及び前記呼吸波形に基づいて、患部の移動量を呼吸波形の位相毎に算出し、呼吸波形の位相毎に算出した患部の移動量に基づいて、患部に放射線を照射する際の照射タイミングを設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の患部を撮影した四次元画像と、前記患者の腹部の動きに基づく呼吸波形と、を取得する取得部と、
前記四次元画像及び前記呼吸波形に基づいて、前記患部の移動量を前記呼吸波形の位相毎に算出する算出部と、
前記呼吸波形の位相毎に算出した前記患部の移動量に基づいて、前記患部に放射線を照射する際の照射タイミングを設定する設定部と、
を備えた放射線照射条件設定装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記呼吸波形の振幅の範囲を指定することにより前記照射タイミングを設定する振幅モードと、前記呼吸波形の位相の範囲を指定することにより前記照射タイミングを設定する位相モードと、の何れかを選択する選択部を含む
請求項1記載の放射線照射条件設定装置。
【請求項3】
前記設定部は、複数周期の前記呼吸波形を平均化した呼吸波形に基づいて、前記照射タイミングを設定する
請求項1又は請求項2記載の放射線照射条件設定装置。
【請求項4】
コンピュータが、
患者の患部を撮影した四次元画像と、前記患者の腹部の動きに基づく呼吸波形と、を取得し、
前記四次元画像及び前記呼吸波形に基づいて、前記患部の移動量を前記呼吸波形の位相毎に算出し、
前記呼吸波形の位相毎に算出した前記患部の移動量に基づいて、前記患部に放射線を照射する際の照射タイミングを設定する
処理を実行する放射線照射条件設定方法。
【請求項5】
コンピュータに、
患者の患部を撮影した四次元画像と、前記患者の腹部の動きに基づく呼吸波形と、を取得し、
前記四次元画像及び前記呼吸波形に基づいて、前記患部の移動量を前記呼吸波形の位相毎に算出し、
前記呼吸波形の位相毎に算出した前記患部の移動量に基づいて、前記患部に放射線を照射する際の照射タイミングを設定する
処理を実行させるための放射線照射条件設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射条件設定装置、放射線照射条件設定方法、及び放射線照射条件設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、患者における、標的範囲と前記標的範囲を囲むマージン範囲とを含む照射範囲に放射線を照射する照射部と、前記患者の形態以外の生体情報であって、前記患者の安定度に応じて変化する生体情報を計測する計測部と、前記生体情報の計測値に応じて前記マージン範囲を変更する変更部と、を具備する放射線治療システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、被検体のボリュームデータと、ボリュームデータにおけるオブジェクトの第1位置と、放射線画像を撮像する放射線撮像装置の位置及び姿勢を示すジオメトリ情報とを取得する取得部と、前記ボリュームデータと、前記第1位置と、前記ジオメトリ情報とを用いて、前記放射線撮像装置が照射する撮像用放射線の撮像条件を決定する決定部と、を備える情報処理装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、患者の体内に埋め込まれたマーカを撮影した透視画像に基づいて、前記マーカの三次元位置を算出するマーカ位置算出部と、前記患者の呼吸周期における前記マーカの平均位置から最も離れたときの前記マーカの三次元位置を吸気相に対応付けるとともに、前回の吸気相から所定の距離だけ移動したときの前記マーカの三次元位置を前回の吸気相から今回の吸気相までに前記マーカが移動した移動距離に対する前記所定の距離の割合に応じた呼吸位相に対応付けることにより、前記患者の呼吸位相を評価する呼吸位相評価部と、前記マーカの三次元位置および前記患者の呼吸位相に基づいて、治療用放射線を照射してもよいか否かを判別する治療用放射線照射判別部とを有する放射線治療システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-72236号公報
【特許文献2】特開2017-189526号公報
【特許文献3】特開2016-131737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者の患部に治療用の放射線を照射する場合、患者の呼吸によって患部の位置は変動するため、適切なタイミングで放射線を照射する必要がある。また、患部の位置の変動範囲の全てを放射線の照射範囲としてしまうと、患部以外の範囲に照射される放射線の放射線量が多くなり好ましくない。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものであり、患者の患部に照射される放射線の量が不必要に多くなるのを抑制することができる放射線照射条件設定装置、放射線照射条件設定方法、及び放射線照射条件設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1態様に係る放射線照射条件設定装置は、患者の患部を撮影した四次元画像と、前記患者の腹部の動きに基づく呼吸波形と、を取得する取得部と、前記四次元画像及び前記呼吸波形に基づいて、前記患部の移動量を前記呼吸波形の位相毎に算出する算出部と、前記呼吸波形の位相毎に算出した前記患部の移動量に基づいて、前記患部に放射線を照射する際の照射タイミングを設定する設定部と、を備える。
【0009】
第1態様に係る放射線照射条件設定装置において、前記設定部は、前記呼吸波形の振幅の範囲を指定することにより前記照射タイミングを設定する振幅モードと、前記呼吸波形の位相の範囲を指定することにより前記照射タイミングを設定する位相モードと、の何れかを選択する選択部を含む構成としてもよい。
【0010】
第2態様に係る放射線照射条件設定方法は、コンピュータが、患者の患部を撮影した四次元画像と、前記患者の腹部の動きに基づく呼吸波形と、を取得し、前記四次元画像及び前記呼吸波形に基づいて、前記患部の移動量を前記呼吸波形の位相毎に算出し、前記呼吸波形の位相毎に算出した前記患部の移動量に基づいて、前記患部に放射線を照射する際の照射タイミングを設定する処理を実行する。
【0011】
第3態様に係る放射線照射条件設定プログラムは、コンピュータに、患者の患部を撮影した四次元画像と、前記患者の腹部の動きに基づく呼吸波形と、を取得し、前記四次元画像及び前記呼吸波形に基づいて、前記患部の移動量を前記呼吸波形の位相毎に算出し、前記呼吸波形の位相毎に算出した前記患部の移動量に基づいて、前記患部に放射線を照射する際の照射タイミングを設定する処理を実行させるための放射線照射条件設定プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、患者の患部に照射される放射線の量が不必要に多くなるのを抑制することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】放射線治療照射システムのブロック図である。
図2】呼吸波形の一例を示す図である。
図3】CT撮影装置及び放射線照射装置の外観図である。
図4】四次元画像の一例を示す図である。
図5】治療計画装置のハードウェア構成を示す図である。
図6】治療計画装置の機能構成を示す図である。
図7】放射線照射条件設定処理のフローチャートである。
図8】呼吸波形の位相と患部の移動量との関係を示す線図である。
図9】呼吸波形の位相と患部の移動量との関係を示す線図である。
図10】振幅モードにおける照射タイミングの設定について説明するための図である。
図11】振幅モードにおける照射タイミングの設定について説明するための図である。
図12】位相モードにおける照射タイミングの設定について説明するための図である。
図13】呼吸波形の位相と患部の移動量との関係を示す線図である。
図14】位相モードにおける照射タイミングの設定について説明するための図である。
図15】呼吸波形の位相と患部の移動量との関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1には、放射線治療照射システム10のブロック図を示した。図1に示すように、放射線治療照射システム10は、呼吸管理装置20、CT(Computed Tomography)撮影装置30、治療計画装置40、及び放射線照射装置50を備える。
【0016】
呼吸管理装置20は、患者の呼吸波形を一定期間測定し、CT撮影装置30に出力する。呼吸波形の測定方法は公知の手法を用いることができる。例えば仰向けに横たわった患者の腹部に赤外線を反射する反射マーカーを載せ、この反射マーカーを赤外線カメラで撮影して腹部の動きを検出し、検出した腹部の動きを呼吸波形として測定する方法を用いることができる。
【0017】
図2に呼吸波形の一例を示す。図2に示すように、本実施形態では呼気をしてから吸気し、再び呼気をするまでを1周期とし、呼吸波形の位相を0~100%で表す。呼気0%(100%)は、呼気から吸気に切り替わる位相であり、吸気(50%)は、吸気から呼気に切り替わる位相である。呼吸管理装置20は、複数周期の呼吸波形が含まれるように、患者の呼吸を一定期間測定する。
【0018】
図3には、CT撮影装置30及び放射線照射装置50の外観図を示した。なお、図3では、説明の便宜上、CT撮影装置30が放射線照射装置50と同室に設置されている例について示したが、CT撮影装置30は、放射線照射装置50と別室に設置されるのが一般的である。
【0019】
CT撮影装置30は、空洞部32内に、寝台Sに横たわった患者Hの患部を通過させながらCT撮影用の撮影用放射線であるX線を照射することにより、CT画像(コンピュータ断層画像)を一定期間撮影する。
【0020】
CT撮影装置30は、呼吸管理装置20から出力された呼吸波形とCT画像とを対応付けて四次元画像として治療計画装置40に出力する。本実施形態における四次元画像とは、CT撮影装置30で撮影された三次元のCT画像に呼吸波形の位相の情報を加えたものである。図4に、四次元画像のイメージ図を示す。図4に示す四次元CT画像は、位相0%から位相90%の範囲において位相10%毎のCT画像を10個含む。
【0021】
なお、本実施形態では、四次元画像にCT画像を用いた場合について説明するが、これに限られるものではなく、例えばMRI(Magnetic Resonance Image)画像等の他の方法により得られた三次元画像を用いてもよい。
【0022】
放射線照射装置50は、治療計画装置40により生成された治療計画情報に基づいて、寝台Sに横たわった患者Hに治療用放射線(例えばX線)Rを照射して患部の治療を行う。具体的には、放射線照射装置50は、患者Hに照射する放射線Rを出力する放射線源52と、放射線源52から照射された放射線を患者Hの患部に応じた照射野に絞るコリメータ54と、を備える。ここで、治療用放射線には、高エネルギー(例えば1MeVから1000MeV)の放射線が用いられる。
【0023】
コリメータ54は、放射線源52から照射された放射線Rの照射野をY方向に絞るジョー54Yと、ジョー54Yによって照射野がY方向に絞られた放射線Rの照射野をY方向と直交するX方向に絞るジョー54Xと、ジョー54Y、54Xによって照射野が絞られた放射線Rの照射野を患部の形状に合わせて絞るマルチリーフコリメータ(MLC)54Mと、を備える。なお、本実施形態では、上からジョー54Y、ジョー54X、MLC54Mの順に配置された場合を示したが、並び順はこれに限られるものではない。
【0024】
図3に示すように、放射線源52及びコリメータ54は、ガントリ56に設けられている。ガントリ56は、Y方向に沿った回転軸58を介して回転可能に支持部59に支持されている。回転軸58を中心にしてガントリ56を回転させることにより、患者Hに照射される放射線RのX-Z平面内における照射角度を適切に調整することができる。
【0025】
コリメータ54は、Z方向に沿った軸を回転軸として回転可能にガントリ56に支持されている。Z軸を中心としてコリメータ54を回転させることにより、患者Hに照射される放射線RのX-Y平面内における照射野Fを適切に調整することができる。
【0026】
放射線照射条件設定装置の一例としての治療計画装置40は、CT撮影装置30により撮影されたCT画像に基づいて、患部(例えば腫瘍部分)及び正常部分の形状を特定するための形状情報を生成すると共に、患部に照射すべき放射線の照射条件等の治療計画に関する治療計画情報を生成する。
【0027】
照射条件には、例えば患者Hに照射する放射線の照射線量を表すMU(モニタユニット)値、吸収線量値、MLC54Mの位置(以下、MLC位置と称する)、ジョー54Xの位置(以下、X方向ジョー位置と称する)、ジョー54Yの位置(以下、Y方向ジョー位置と称する)、ガントリ56の回転角度(以下、ガントリ角度と称する)、コリメータ54の回転角度(以下、コリメータ角度と称する)、患者Hに照射する放射線のエネルギー(以下、放射エネルギーと称する)、放射線の照射タイミング等が含まれる。
【0028】
図5は、治療計画装置40のハードウェア構成を示すブロック図である。図5に示すように、治療計画装置40は、一般的なコンピュータと同様の構成であり、CPU(Central Processing Unit)40A、ROM(Read Only Memory)40B、RAM(Random Access Memory)40C、ストレージ40D、キーボード40E、マウス40F、モニタ40G、及び通信インタフェース40Hを有する。各構成は、バス40Iを介して相互に通信可能に接続されている。
【0029】
本実施形態では、ストレージ40Dには、放射線の照射条件を設定するための放射線照射条件設定プログラムが格納されている。CPU40Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各構成を制御したりする。すなわち、CPU40Aは、ストレージ40Dからプログラムを読み出し、RAM40Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU40Aは、ストレージ40Dに記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。ROM42は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM40Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ40Dは、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。キーボード40E及びマウス40Fは各種の入力を行うために使用される。モニタ40Gは、例えば、液晶ディスプレイが用いられるが、タッチパネル方式を採用して、入力装置として機能してもよい。通信インタフェース40Hは、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI又はWi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0030】
図6は、治療計画装置40をハードウェアとソフトウェアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。
【0031】
図6に示すように、治療計画装置40は、取得部42、算出部44、及び設定部46を備える。
【0032】
取得部42は、CT撮影装置30により患者の患部を撮影した四次元画像と、呼吸管理装置20により測定された患者の腹部の動きに基づく呼吸波形と、を取得する。
【0033】
算出部44は、取得部42が取得した四次元画像及び呼吸波形に基づいて、患部の移動量を呼吸波形の位相毎に算出する。
【0034】
設定部46は、算出部44が呼吸波形の位相毎に算出した患部の移動量に基づいて、患部に放射線を照射する際の照射条件を設定する。
【0035】
次に、本実施形態の作用として、治療計画装置40のCPU40Aで実行される放射線照射範囲設定処理について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0036】
まず、治療計画装置40で放射線照射範囲設定処理を実行する前に、呼吸管理装置20により患者Hの呼吸波形を測定する。測定された呼吸波形はCT撮影装置30及び治療計画装置40に出力される。
【0037】
また、CT撮影装置30により患者HのCT画像を一定期間撮影する。CT撮影装置30は、呼吸管理装置20により測定された呼吸波形に基づいて、一定期間撮影された複数のCT画像と呼吸波形の位相とを対応付けた四次元画像を生成し、治療計画装置40に出力する。
【0038】
ステップS100では、CT撮影装置30から出力された四次元画像と、呼吸管理装置20により測定された呼吸波形と、を取得する。
【0039】
ステップS102では、患部の移動量を算出する際の基準となる呼吸波形の基準位相を設定する。具体的には、例えば1周期分の呼吸波形を10%刻みで10分割した0~90%の位相の中から基準位相を設定する。基準位相の設定はユーザーに設定させてもよいし、予め定めた位相に設定してもよい。例えば吸気(位相50%)時に放射線を照射する場合(以下、吸気照射と称する)は、位相50%を基準位相に設定する。一方、呼気(位相0%)時に放射線を照射する場合(以下、呼気照射と称する)は、位相0%を基準位相に設定する。
【0040】
ステップS104では、ステップS102で設定した基準位相のCT画像に基づいて患部の位置を特定する。具体的には、呼吸波形の中から1周期分の呼吸波形を選択し、基準位相に対応するCT画像をモニタ40Gに表示する。ここで、ユーザーは、CT画像を参照し、マウス40F、キーボード40Eを操作する等して患部の位置を特定する。
【0041】
ステップS106では、ステップS100で取得した四次元画像及び呼吸波形に基づいて、患部の移動量を呼吸波形の位相毎に算出する。具体的には、ステップS102で設定した基準位相のCT画像における患部の位置と、基準位相以外の他の位相のCT画像における患部の位置と、の差分を移動量として算出することを他の位相毎に行う。なお、患部の移動量の算出は、複数の方向について行う。
【0042】
図8には、基準位相を50%に設定した場合における、呼吸波形1周期分の患部の移動量を算出した結果を示した。横軸は位相、縦軸は移動量を表す。図8に示すように、患部の移動量は、患者Hの左右方向(図3におけるY方向)、前後方向(図3におけるZ方向)、頭尾方向(図3におけるX方向)、及びベクトルの各々について算出する。縦軸の「0.0」の位置が基準位相50%の位置に相当する。また、図9には、基準位相を0%に設定した場合における、呼吸波形1周期分の患部の移動量を算出した結果を示した。この場合、縦軸の「0.0」の位置が基準位相0%の位置に相当する。
【0043】
ステップS108では、呼吸波形を平均化した呼吸波形を算出する。呼吸波形には複数周期の呼吸波形が含まれているので、各周期の同じ位相の振幅の平均を位相毎に算出することにより、平均化した1周期分の呼吸波形を得る。
【0044】
ステップS110では、照射タイミングを設定するための設定モードをユーザーに選択させる。設定モードには、ステップS108で平均化した1周期分の呼吸波形の振幅に基づいて照射タイミングを設定する振幅モードと、呼吸波形の位相に基づいて照射タイミングを設定する位相モードと、がある。ユーザーは、振幅モード及び位相モードの何れかを選択する。
【0045】
ステップS112では、ステップS110で選択された設定モードにおいて、放射線の照射タイミングを設定する。具体的には、ステップS108で算出した平均化した呼吸波形をモニタ40Gに表示する。
【0046】
まず、ユーザーが振幅モードを選択した場合について説明する。
【0047】
図10には、平均化した1周期分の呼吸波形の一例を示した。ユーザーは、放射線の照射タイミングを設定するために、図8の位相毎の患部の移動量及び図10に示す呼吸波形を参照し、マウス40F、キーボード40Eを操作する等して振幅の幅Aを設定する。図10の例では、基準位相を50%に設定した吸気照射の場合において、呼吸波形の振幅の最小値から0.9mm分を幅Aとして設定している。この振幅の幅Aは、位相30%から位相70%の範囲に相当し、この範囲が照射タイミングとして設定される。この場合、治療時に放射線照射装置50で患者Hに放射線を照射する際には、呼吸波形の位相が30%から70%の範囲で放射線を照射し、その他の位相においては放射線を照射しない。図8の網掛け領域で示すように、位相30%から位相70%の範囲は、他の位相の範囲と比較して患部の移動量が少ない範囲であるため、放射線の照射範囲を必要最小限の範囲とすることができる。
【0048】
また、図11には、基準位相を0%に設定した呼気照射の場合において、呼吸波形の振幅の最大値から0.9mm分を幅Aとして設定した場合を示した。この振幅の幅Aは、位相90%から位相10%の範囲に相当し、この範囲が照射タイミングとして設定される。
【0049】
図9の網掛け領域で示すように、位相90%から位相10%の範囲は、他の位相の範囲と比較して患部の移動量が少ない範囲であるため、放射線の照射範囲を必要最小限の範囲とすることができる。
【0050】
次に、ユーザーが位相モードを選択した場合について説明する。
【0051】
ユーザーは、放射線の照射タイミングを設定するために、図12に示す呼吸波形を参照し、マウス40F、キーボード40Eを操作する等して位相の幅Pを設定する。図12の例では、基準位相を50%に設定した吸気照射の場合において、呼吸波形の位相35%から位相80%の範囲を位相の幅Pとして設定しており、この範囲が照射タイミングとして設定される。図13の網掛け領域で示すように、位相35%から位相80%の範囲は、他の位相の範囲と比較して患部の移動量が少ない範囲であるため、放射線の照射範囲を必要最小限の範囲とすることができる。
【0052】
また、図14には、基準位相を0%に設定した呼気照射の場合において、呼吸波形の位相80%から位相20%の範囲を位相の幅Pとして設定しており、この範囲が照射タイミングとして設定される。図15の網掛け領域で示すように、位相80%から位相20%の範囲は、他の位相の範囲と比較して患部の移動量が少ない範囲であるため、放射線の照射範囲を必要最小限の範囲とすることができる。
【0053】
ステップS114では、ステップS112で設定した放射線の照射タイミングを治療計画情報に含めて、放射線照射装置50に出力する。放射線照射装置50では、治療計画情報に従って放射線を患者Hに照射する。
【0054】
このように、本実施形態では、四次元画像及び呼吸波形に基づいて、患者Hの患部の移動量を呼吸波形の位相毎に算出し、呼吸波形の位相毎に算出した患部の移動量に基づいて、患部に放射線を照射する際の照射タイミングを設定する。これにより、患者の患部に照射される放射線の量が不必要に多くなるのを抑制することができる。
【0055】
なお、上記実施形態は、本発明の構成例を例示的に説明するものに過ぎない。開示の技術は上記の具体的な形態には限定されることはなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0056】
また、上各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した放射線照射条件設定処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、放射線照射条件設定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0057】
また、上記実施形態では、放射線照射条件設定プログラムがストレージ40Dに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 放射線治療照射システム
20 呼吸管理装置
30 CT撮影装置
40 治療計画装置
42 取得部
44 算出部
46 設定部
50 放射線照射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15