(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129780
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ハニカム構造体及びハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 3/20 20060101AFI20220830BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20220830BHJP
C04B 35/119 20060101ALI20220830BHJP
C04B 35/488 20060101ALI20220830BHJP
C04B 41/88 20060101ALI20220830BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220830BHJP
C04B 38/00 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
B28B3/20 K
C04B35/50 ZAB
C04B35/119
C04B35/488 500
C04B41/88 Z
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028595
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真之助
【テーマコード(参考)】
4D148
4G019
4G054
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA03Y
4D148BA08Y
4D148BA19Y
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA33Y
4D148BA42Y
4D148BB02
4G019FA12
4G054AA06
4G054AB09
4G054BD00
(57)【要約】
【課題】 ベーマイトの凝集体に起因する大きな空隙に起因する強度低下が防止されたハニカム構造体を提供する。
【解決手段】 複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体からなるハニカム構造体であって、上記ハニカム焼成体は、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子及び/又はアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を含む複合酸化物粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダーとからなり、上記ハニカム焼成体の上記隔壁の切断面の電子顕微鏡画像において、直径が20μm以上の空隙内にアルミナバインダーの凝集体が上記空隙の面積の70%以上存在する、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が、上記隔壁の面積に対して10%以下であることを特徴とするハニカム構造体。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体からなるハニカム構造体であって、
前記ハニカム焼成体は、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子及び/又はアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を含む複合酸化物粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダーとからなり、
前記ハニカム焼成体の前記隔壁の切断面の電子顕微鏡画像において、直径が20μm以上の空隙内にアルミナバインダーの凝集体が前記空隙の面積の70%以上存在する、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が、前記隔壁の面積に対して10%以下であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が、前記隔壁の面積に対して5%以下である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム焼成体に貴金属が担持されている請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体からなるハニカム構造体の製造方法であって、
ベーマイト及び水を混合し、攪拌してペースト状物を得る攪拌工程と、
セリア-ジルコニア複合酸化物粒子及び/又はアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を含む複合酸化物粒子、アルミナ粒子、並びに有機バインダーを乾式混合して乾式混合物を得る乾式混合工程と、
前記乾式混合物と前記ペースト状物を湿式混合して湿式混合物を得る湿式混合工程と、
前記湿式混合物を成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する成形工程と、
前記ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する焼成工程と、を含むことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記ペースト状物に含まれるベーマイトの割合が25重量%以上である請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記ペースト状物の粘度が50.0Pa・s以上である請求項4又は5に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記湿式混合物に含まれるベーマイトの割合が10重量%以上である請求項4~6のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及びハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)等の有害ガスが含まれている。そのような有害ガスを分解する排ガス浄化触媒は三元触媒とも称され、コージェライト等からなるハニカム状のモノリス基材に触媒活性を有する貴金属粒子を含むスラリーをウォッシュコートして触媒層を設けたものが一般的である。
【0003】
特許文献1には、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子(以下、CZ粒子ともいう)及びアルミナ粒子とを含む押出成形体からなるハニカム焼成体を備え、0.01~0.1μm及び0.1~5μmの範囲に気孔径分布曲線のピークを有するハニカム構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、CZ粒子、θアルミナ粒子、ベーマイト、αアルミナファイバ、メチルセルロース、アクリル樹脂等を混合して原料ペーストを調製し、これを成形、焼成してハニカム構造体を製造することが記載されている。
【0006】
ベーマイトは、原料ペーストの調製の際に凝集することがあり、原料ペーストにおいて凝集体(いわゆる、「ダマ」)になることがあった。そして、凝集体を含む原料ペーストを成形、焼成した得られたハニカム構造体には、その隔壁中に凝集体が残っていた。アルミナの収縮率が周囲の他の原料に比べて大きいために、凝集体の周囲に空隙が生じ、意図しない大きさの空隙が隔壁内に存在することが分かった。
このような空隙が存在すると、構造体の強度の低下の原因となるため、当該空隙を減らして構造体の強度を向上させることが求められていた。
【0007】
本発明は、このような観点からなされたものであり、ベーマイトの凝集体に起因する大きな空隙に起因する強度低下が防止されたハニカム構造体、及び当該ハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のハニカム構造体は、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体からなるハニカム構造体であって、上記ハニカム焼成体は、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子及び/又はアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を含む複合酸化物粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダーとからなり、上記ハニカム焼成体の上記隔壁の切断面の電子顕微鏡画像において、直径が20μm以上の空隙内にアルミナバインダーの凝集体が上記空隙の面積の70%以上存在する、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が、上記隔壁の面積に対して10%以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明のハニカム構造体では、直径が20μm以上の空隙内にアルミナバインダーの凝集体が空隙の面積の70%以上存在する、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が、隔壁の面積に対して10%以下となっている。
アルミナ凝集体含有空隙は、空隙の中にアルミナバインダーの凝集体(以下、アルミナ凝集体という)が存在している部分である。
アルミナ凝集体含有空隙の直径は、アルミナ凝集体も含んだ空隙全体の直径として定める。そして、アルミナ凝集体の面積を含む空隙全体の面積のうちアルミナ凝集体の面積が70%以上である空隙を、アルミナ凝集体含有空隙と定める。すなわち、空隙の直径が20μm以上であっても、空隙内にアルミナ凝集体が存在しないもの、空隙内のアルミナ凝集体の大きさが小さいもの等はアルミナ凝集体含有空隙とは区別する。
【0010】
なお、本願明細書において、空隙の直径とは、隔壁の断面を電子顕微鏡で撮影して得られる断面図における空隙の面積相当円の直径(Heywood径)を指す。
【0011】
隔壁の面積に対するアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合は以下の方法で求めることができる。
1)まず、ハニカム構造体のうち隔壁の一部を測定サンプルとして切り出し、長手方向に沿って切断した切断面の拡大画像を電子顕微鏡で撮影する。このとき、電子顕微鏡の加速電圧は15kV、拡大倍率は500倍とする。
2)続いて、得られた電子顕微鏡画像の所定の領域を市販の画像解析ソフト等を用いて、空隙と空隙以外の部分に分離する。その後、分離した各空隙の面積から面積相当円の直径(気孔径)を求める。ただし、面積相当径が20μm未満となる空隙は、この測定から除外する。
3)面積相当径が20μm以上である空隙内に含まれるアルミナ凝集体の面積を求め、空隙に対するアルミナ凝集体の面積の割合が70%以上である空隙と、それ以外の空隙に分離する。空隙に対するアルミナ凝集体の面積の割合が70%以上である空隙のみをアルミナ凝集体含有空隙とする。
4)電子顕微鏡画像に含まれるアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合を求める。
同様の測定を10枚の電子顕微鏡写真について行い、隔壁の面積に対するアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合を求める。
【0012】
アルミナ凝集体含有空隙は意図しない大きさの空隙であるので、破壊の起点となることがあり、ハニカム構造体の強度低下の原因となる。
本発明のハニカム構造体では、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が隔壁の面積に対して10%以下となっているので、ハニカム構造体の強度低下の原因となる部分が少なくなり、強度低下が防止されたハニカム構造体となる。
【0013】
本発明のハニカム構造体は、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子及び/又はアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を含む複合酸化物粒子をその構成成分として含む。
上述の通り、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子はCZ粒子ともいう。また、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子はACZ粒子ともいう。
【0014】
本発明のハニカム構造体は、上記アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が、上記隔壁の面積に対して5%以下であることが好ましい。
アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が上記範囲であると、ハニカム構造体の強度低下の原因となる部分がより少なくなり、強度低下がより防止されたハニカム構造体となる。
【0015】
本発明のハニカム構造体は、上記ハニカム焼成体に貴金属が担持されていることが好ましい。ハニカム焼成体に貴金属を担持させることにより、排ガス浄化用途に使用することが可能となる。
【0016】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体からなるハニカム構造体の製造方法であって、ベーマイト及び水を混合し、攪拌してペースト状物を得る攪拌工程と、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子及び/又はアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を含む複合酸化物粒子、アルミナ粒子、並びに有機バインダーを乾式混合して乾式混合物を得る乾式混合工程と、上記乾式混合物と上記ペースト状物を湿式混合して湿式混合物を得る湿式混合工程と、上記湿式混合物を成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する成形工程と、上記ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する焼成工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
上記方法では、ベーマイト及び水を混合し、攪拌してペースト状物を得る攪拌工程を行う。攪拌工程においてベーマイト及び水を混合し、この段階で水にベーマイトが分散したペースト状物を得る。このペースト状物においてベーマイトが凝集した凝集体(いわゆる「ダマ」)が少なくなるように攪拌を行う。
【0018】
このように、事前に凝集体の発生が防止されたペースト状物を先に得ておき、このペースト状物を他の成分と混合することによって、ハニカム構造体の隔壁内にベーマイトの凝集体に起因する大きな空隙が生じることを防止することができる。
すなわち、強度低下が防止されたハニカム構造体を製造することができる。
【0019】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記ペースト状物に含まれるベーマイトの割合が25重量%以上であることが好ましい。
上記製造方法で使用するペースト状物は、ベーマイトを25重量%以上含んでいることから、水分量が少なめのペーストであるといえる。このようなペースト状物を使用することが、強度低下が防止されたハニカム構造体を得るためにより好ましい。
【0020】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記ペースト状物の粘度が50.0Pa・s以上であることが好ましい。
ペースト状物の粘度が50.0Pa・s以上であると、攪拌混合が充分にされており、凝集体の量がより低減されたペーストであるといえる。このようなペースト状物を使用することが、強度低下が防止されたハニカム構造体を得るためにより好ましい。
【0021】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記湿式混合物に含まれるベーマイトの割合が10重量%以上であることが好ましい。
湿式混合物に含まれるベーマイトの割合が10重量%以上であると、焼成工程後にバインダーとして充分に機能し、得られるハニカム構造体の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ハニカム焼成体の隔壁の切断面の例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施例1で製造したハニカム構造体の隔壁の断面顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、実施例2で製造したハニカム構造体の隔壁の断面顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、実施例3で製造したハニカム構造体の隔壁の断面顕微鏡写真である。
【
図6】
図6は、比較例1で製造したハニカム構造体の隔壁の断面顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、各実施例及び比較例で製造したハニカム構造体のA軸曲げ強度の測定結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、各実施例及び比較例で製造したハニカム構造体のB軸曲げ強度の測定結果を示すグラフである。
【0023】
(発明の詳細な説明)
[ハニカム構造体]
まず、本発明のハニカム構造体について説明する。
【0024】
図1は、本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すハニカム構造体10は、複数の貫通孔12が隔壁13を隔てて長手方向に並設された単一のハニカム焼成体11を備えている。ハニカム焼成体11は、CZ粒子及び/又はACZ粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダーを含み、押出成形体の形状を有している。
図1に示すように、ハニカム構造体10が単一のハニカム焼成体11からなる場合、ハニカム構造体10はハニカム焼成体そのものでもある。
【0025】
本発明のハニカム構造体において、ハニカム焼成体は、CZ粒子及び/又はACZ粒子を含む複合酸化物粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダーからなる。
本発明のハニカム構造体がCZ粒子及び/又はACZ粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダーを有しているか否かについては、X線回折(XRD)にて確認できる。
アルミナバインダーは、ハニカム構造体の製造時に使用されるベーマイトに由来する。
【0026】
ハニカム焼成体の隔壁の切断面の電子顕微鏡画像において、直径が20μm以上の空隙内にアルミナバインダーの凝集体が空隙の面積の70%以上存在する、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が、隔壁の面積に対して10%以下である。
このことについて図面を参照して説明する。
【0027】
図2は、ハニカム焼成体の隔壁の切断面の例を示す模式図である。
図2に示す隔壁13は多孔質セラミックからなる。隔壁13には多数の気孔が存在しており、さらにアルミナ凝集体含有空隙15が存在する。隔壁13に存在するアルミナ凝集体含有空隙以外の気孔については図示を省略している。
アルミナ凝集体含有空隙15は、直径が20μm以上である空隙16内にアルミナバインダーの凝集体17が存在する空隙である。
アルミナバインダーの凝集体を、以下、アルミナ凝集体という。
【0028】
アルミナ凝集体含有空隙15の直径は、アルミナ凝集体17も含んだ空隙16全体の直径として定める。そして、アルミナ凝集体17の面積を含む空隙16全体の面積のうちアルミナ凝集体17の面積が70%以上である空隙を、アルミナ凝集体含有空隙15と定める。すなわち、空隙16の直径が20μm以上であっても、空隙16内にアルミナ凝集体17が存在しないもの、空隙16内のアルミナ凝集体17の大きさが小さいもの等はアルミナ凝集体含有空隙15とは区別する。
【0029】
空隙の直径とは、隔壁の断面を電子顕微鏡で撮影して得られる断面図における空隙の面積相当円の直径(Heywood径)を指す。
【0030】
隔壁の面積に対するアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合は以下の方法で求めることができる。
1)まず、ハニカム構造体のうち隔壁の一部を測定サンプルとして切り出し、長手方向に沿って切断した切断面の拡大画像を電子顕微鏡で撮影する。このとき、電子顕微鏡の加速電圧は15kV、拡大倍率は500倍とする。
2)続いて、得られた電子顕微鏡画像の所定の領域を市販の画像解析ソフト等を用いて、空隙と空隙以外の部分に分離する。その後、分離した各空隙の面積から面積相当円の直径(気孔径)を求める。ただし、面積相当径が20μm未満となる空隙は、この測定から除外する。
3)面積相当径が20μm以上である空隙内に含まれるアルミナ凝集体の面積を求め、空隙に対するアルミナ凝集体の面積の割合が70%以上である空隙と、それ以外の空隙に分離する。空隙に対するアルミナ凝集体の面積の割合が70%以上である空隙のみをアルミナ凝集体含有空隙とする。
4)電子顕微鏡画像に含まれるアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合を求める。
同様の測定を10枚の電子顕微鏡写真について行い、隔壁の面積に対するアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合を求める。
【0031】
アルミナ凝集体含有空隙は意図しない大きさの空隙であるので、破壊の起点となることがあり、ハニカム構造体の強度低下の原因となる。
ハニカム構造体では、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が隔壁の面積に対して10%以下となっているので、ハニカム構造体の強度低下の原因となる部分が少なくなり、強度低下が防止されたハニカム構造体となる。
【0032】
また、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が、隔壁の面積に対して5%以下であることが好ましい。
アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が上記範囲であると、ハニカム構造体の強度低下の原因となる部分がより少なくなり、強度低下がより防止されたハニカム構造体となる。
【0033】
ハニカム構造体は、単一のハニカム焼成体を備えていてもよいし、複数個のハニカム焼成体を備えていてもよく、複数個のハニカム焼成体が接着剤により結合されていてもよい。
【0034】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体の外周面には、外周コート層が形成されていてもよい。
【0035】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体の気孔率は、45~75体積%であることが好ましい。
ハニカム焼成体の気孔率が45~75体積%であると、高い機械的強度と排ガス浄化性能を両立させることができる。
【0036】
ハニカム焼成体の気孔率が45体積%未満であると、隔壁のうちガス拡散に寄与することができる気孔の割合が少なくなり、ガス浄化性能が低下してしまうことがある。一方、ハニカム焼成体の気孔率が75体積%を超えると、気孔率が高くなりすぎるため、ハニカム構造体の機械的特性が劣化し、ハニカム構造体を使用中、クラックや破壊等が発生し易くなる。
【0037】
ハニカム焼成体の気孔率は、以下に説明する重量法により測定することができる。
(1)ハニカム焼成体を10セル×10セル×10mmの大きさに切断して、測定試料とする。この測定試料をイオン交換水及びアセトンを用いて超音波洗浄した後、オーブンを用いて100℃で乾燥する。なお、10セル×10セル×10mmの測定試料とは、貫通孔が縦方向に10個、横方向に10個並んだ状態で、最も外側の貫通孔とその貫通孔を構成する隔壁を含み、長手方向の長さが10mmとなるように切り出した試料を指す。
(2)測定顕微鏡(ニコン製Measuring Microscope MM-40 倍率:100倍)を用いて、測定試料の断面形状の寸法を測定し、幾何学的な計算から体積を求める(なお、幾何学的な計算から体積を求めることができない場合は、飽水重量と水中重量とを実測して体積を測定する)。
(3)計算から求められた体積及びピクノメータで測定した測定試料の真密度から、測定試料が完全な緻密体であると仮定した場合の重量を計算する。なお、ピクノメータでの測定手順は(4)に示す通りとする。
(4)ハニカム焼成体を粉砕し、23.6ccの粉末を準備する。得られた粉末を200℃で8時間乾燥させる。その後、Micromeritics社製 Auto Pycnometer1320を用いて、JIS R 1620(1995)に準拠して真密度を測定する。排気時間は40分とする。
(5)測定試料の実際の重量を電子天秤(A&D製 HR202i)で測定する。
(6)以下の式から、ハニカム焼成体の気孔率を求める。
(ハニカム焼成体の気孔率)=100-(測定試料の実際の重量/測定試料が完全な緻密体であると仮定した場合の重量)×100[%]
なお、ハニカム構造体に触媒を担持させた場合であっても、触媒担持によるハニカム焼成体の気孔率の変化は無視できるほど小さい。
【0038】
ハニカム構造体の形状としては、円柱状に限定されず、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0039】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体の貫通孔の形状としては、四角柱状に限定されず、三角柱状、六角柱状等が挙げられる。
【0040】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面の貫通孔の密度は、31~155個/cm2であることが好ましい。
【0041】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体の隔壁の厚さは、0.05~0.50mmであることが好ましく、0.07~0.30mmであることがより好ましい。
【0042】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体の外周面に外周コート層が形成されている場合、外周コート層の厚さは、0.1~2.0mmであることが好ましい。
【0043】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体に貴金属が担持されていることが好ましい。
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体に触媒として機能する貴金属が担持されていると、排ガス浄化用のハニカム触媒としても使用することができる。
貴金属としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等が挙げられる。
【0044】
ハニカム構造体において、貴金属の担持量は、0.1~15g/Lであることが好ましく、0.5~10g/Lであることがより好ましい。
本明細書において、貴金属の担持量とは、ハニカム構造体の見掛けの体積当たりの貴金属の重量をいう。なお、ハニカム構造体の見掛けの体積とは、空隙の体積を含む体積であり、外周コート層及び/又は接着層の体積を含むこととする。
【0045】
[ハニカム構造体の製造方法]
本発明のハニカム構造体の製造方法は、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体からなるハニカム構造体の製造方法であって、ベーマイト及び水を混合し、攪拌してペースト状物を得る攪拌工程と、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子及び/又はアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を含む複合酸化物粒子、アルミナ粒子、並びに有機バインダーを乾式混合して乾式混合物を得る乾式混合工程と、上記乾式混合物と上記ペースト状物を湿式混合して湿式混合物を得る湿式混合工程と、上記湿式混合物を成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する成形工程と、上記ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する焼成工程と、を含むことを特徴とする。
【0046】
攪拌工程では、ベーマイト及び水を混合し、攪拌してペースト状物を得る。
ベーマイトは固体のアルミナバインダーである。本製造方法では、アルミナゾルのように水中にアルミナが分散した水系のアルミナバインダーとは異なる固形物を用いる。そのためのアルミナバインダーとしてベーマイトを用いる。
【0047】
攪拌工程においてベーマイト及び水を混合し、この段階でベーマイトが分散したペースト状物を得る。このペースト状物においてベーマイトが凝集した凝集体が少なくなるように攪拌を行う。
【0048】
このように、事前に凝集体の発生が防止されたペースト状物を先に得ておき、このペースト状物を他の成分と混合することによって、ハニカム構造体の隔壁内にベーマイトの凝集体に起因する大きな空隙が生じることを防止することができる。
すなわち、強度低下が防止されたハニカム構造体を製造することができる。
【0049】
攪拌工程では、ペースト状物に含まれるベーマイトの割合が25重量%以上となるようにベーマイトと水を混合することが好ましい。
攪拌工程で調製するペースト状物がベーマイトを25重量%以上含んでいると、水分量が少なめのペーストであるといえる。このようなペースト状物を使用することが、強度低下が防止されたハニカム構造体を得るためにより好ましい。
【0050】
攪拌工程で得るペースト状物はその粘度が50.0Pa・s以上であることが好ましい。
ペースト状物の粘度は攪拌条件(時間、速度等)により調整することができる。攪拌時間を長くすると粘度が上昇し、攪拌が充分に進むと攪拌時間を延ばしても粘度が上昇しなくなる。粘度が上昇しなくなった時点が、攪拌が充分に行われ、ペースト状物に含まれるベーマイトの凝集体が充分に減少した状態であるといえる。
すなわち、ペースト状物の粘度が50.0Pa・s以上であると、攪拌混合が充分にされており、凝集体の量がより低減されたペーストであるといえる。このようなペースト状物を使用することが、強度低下が防止されたハニカム構造体を得るためにより好ましい。
ペースト状物の粘度は、回転式粘度計により25℃で測定した粘度として定める。
【0051】
また、攪拌工程を経たペースト状物に対して、さらに成形助剤を追加し、攪拌を行って、成形助剤を含むペースト状物を得てもよい。
【0052】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0053】
次に、CZ粒子及び/又はACZ粒子を含む複合酸化物粒子、アルミナ粒子、並びに有機バインダーを乾式混合して乾式混合物を得る乾式混合工程を行う。
【0054】
有機バインダーとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0055】
また、乾式混合工程において無機ファイバ等をさらに混合してもよい。
上記無機ファイバを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等が挙げられ、二種以上併用してもよい。これらのなかでは、アルミナファイバが好ましい。
【0056】
上記無機ファイバのアスペクト比は、5~300であることが好ましく、10~200であることがより好ましく、10~100であることがさらに好ましい。
【0057】
次に、乾式混合物とペースト状物を湿式混合して湿式混合物を得る湿式混合工程を行う。
湿式混合物に含まれるベーマイトの割合が10重量%以上となるように、乾式混合物とペースト状物の割合を調整することが好ましい。
湿式混合物に含まれるベーマイトの割合が10重量%以上であると、焼成工程後にバインダーとして充分に機能し、得られるハニカム構造体の強度を向上させることができる。
【0058】
湿式混合工程においては、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0059】
上記した原料としてCZ粒子及び/又はACZ粒子を含む複合酸化物粒子、アルミナ粒子、アルミナファイバ及びベーマイトを使用した際、これらの配合割合は、原料中の焼成工程後に残存する全固形分に対し、複合酸化物粒子:40~60重量%、アルミナ粒子:15~35重量%、アルミナファイバ:0~15重量%、ベーマイト:10~20重量%が好ましい。
【0060】
次に、湿式混合物を成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する。
具体的には、所定の形状の金型を通過させることにより、所定の形状の貫通孔を有するハニカム成形体の連続体を押出成形し、所定の長さにカットすることにより、ハニカム成形体とすることができる。
【0061】
次に、上記成形工程により成形された成形体を乾燥することが好ましい。
この際、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥し、ハニカム乾燥体を作製することが好ましい。
【0062】
本明細書においては、焼成工程を行う前のハニカム成形体及びハニカム乾燥体をまとめてハニカム成形体とも呼ぶ。
【0063】
次に、ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する焼成工程を行う。
焼成工程では、ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する。なお、この工程は、ハニカム成形体の脱脂及び焼成が行われるため、「脱脂・焼成工程」ということもできるが、便宜上「焼成工程」という。
【0064】
焼成工程の温度は、800~1300℃であることが好ましく、900~1200℃であることがより好ましい。また、焼成工程の時間は、1~24時間であることが好ましく、3~18時間であることがより好ましい。焼成工程の雰囲気は特に限定されないが、酸素濃度が1~20%であることが好ましい。
【0065】
以上の工程により、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造することができる。
【0066】
ハニカム構造体の製造方法は、必要に応じて、ハニカム焼成体に貴金属を担持させる担持工程をさらに含んでいてもよい。
ハニカム焼成体に貴金属を担持する方法としては、例えば、貴金属粒子もしくは錯体を含む溶液にハニカム焼成体又はハニカム構造体を浸漬した後、引き上げて加熱する方法等が挙げられる。
ハニカム構造体が外周コート層を備える場合、外周コート層を形成する前のハニカム焼成体に貴金属を担持してもよいし、外周コート層を形成した後のハニカム焼成体又はハニカム構造体に貴金属を担持してもよい。
【0067】
ハニカム構造体の製造方法において、上記担持工程で担持した貴金属の担持量は、0.1~15g/Lであることが好ましく、0.5~10g/Lであることがより好ましい。
【0068】
ハニカム構造体の製造方法において、ハニカム焼成体の外周面に外周コート層を形成する場合、外周コート層は、ハニカム焼成体の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布した後、乾燥固化することにより形成することができる。外周コート層用ペーストとしては、湿式混合物と同じ組成のものが挙げられる。
【0069】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
[評価用サンプルの作製]
(実施例1)
ベーマイト11.4重量部と水28.7重量部を混合し、遊星混合器により攪拌してペースト状物を調製した。ペースト状物に含まれるベーマイトの割合は28重量%であった。
攪拌時間を10分とし、攪拌後のペースト状物の粘度を測定したところ45.6Pa・sであった。
粘度の測定は回転式粘度計により25℃で行った。
さらに、ペースト状物に対して成形助剤としてオレイン酸を3.7重量部混合した。
【0071】
ペースト状物の調製とは別に、CZ粒子及びACZ粒子の混合物からなる複合酸化物粒子29.2重量部と、アルミナ粒子11.9重量部と、アルミナファイバ5.5重量部と、メチルセルロース9.6重量部とを乾式混合して乾式混合物を調製した。
【0072】
ペースト状物と乾式混合物を混合混錬して湿式混合物を調製した。
ペースト状物と乾式混合物の配合割合は、焼成工程後に残存する全固形分に対し、複合酸化物粒子:53重量%、アルミナ粒子:22重量%、アルミナファイバ:10重量%、ベーマイト:15重量%となるようにした。
【0073】
押出成形機を用いて、湿式混合物を押出成形して、円柱状のハニカム成形体を作製した。
そして、減圧マイクロ波乾燥機を用いて、ハニカム成形体を出力1.74kW、減圧6.7kPaで12分間乾燥させた後、1100℃で10時間脱脂・焼成することにより、ハニカム焼成体を作製した。このハニカム焼成体が実施例1で製造したハニカム構造体である。ハニカム構造体は、直径が103mm、長さが80mmの円柱状であり、貫通孔の密度が108.5個/cm2(700cpsi)、隔壁の厚さが0.102mm(4mil)であった。
【0074】
(実施例2)
ペースト状物を調製する際の攪拌時間を20分とした。
攪拌後のペースト状物の粘度を測定したところ50.1Pa・sであった。
その他は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
【0075】
(実施例3)
ペースト状物を調製する際の攪拌時間を40分とした。
攪拌後のペースト状物の粘度を測定したところ51.7Pa・sであった。
その他は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
【0076】
(比較例1)
ベーマイトと、水と、CZ粒子及びACZ粒子の混合物からなる複合酸化物粒子と、アルミナ粒子と、アルミナファイバと、メチルセルロースとを一度に混合して湿式混合物を調製した。
湿式混合物を成形、焼成する工程は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
焼成工程後に残存する全固形分に対する、複合酸化物粒子、アルミナ粒子、アルミナファイバ及びベーマイトの重量割合は実施例1と同様になるようにした。
【0077】
各実施例及び比較例で製造したハニカム構造体の隔壁の断面写真を撮影し、隔壁の面積に対するアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合を求めた。
図3は、実施例1で製造したハニカム構造体の隔壁の断面顕微鏡写真である。
図4は、実施例2で製造したハニカム構造体の隔壁の断面顕微鏡写真である。
図5は、実施例3で製造したハニカム構造体の隔壁の断面顕微鏡写真である。
図6は、比較例1で製造したハニカム構造体の隔壁の断面顕微鏡写真である。
【0078】
比較例1の隔壁の断面では、アルミナ凝集体含有空隙が多数存在し、アルミナ凝集体含有空隙の大きさも大きい。アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合は13.5%であった。
実施例1の隔壁の断面にはアルミナ凝集体含有空隙が存在するがその数は少なく、大きさも小さい。アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合は5.8%であった。
実施例2の隔壁の断面にもアルミナ凝集体含有空隙が存在するがその数はより少なく、大きさはより小さい。アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合は2.8%であった。
実施例3の隔壁の断面にはアルミナ凝集体含有空隙が見られない。すなわち、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合は0%であった。
【0079】
[曲げ強度の測定]
各実施例及び比較例で製造したハニカム構造体のA軸曲げ強度及びB軸曲げ強度を測定した。
A軸曲げ強度は、ハニカム構造体の長手方向に沿った曲げ強度である。
A軸曲げ強度試験用のサンプルは、サンプル断面幅5.5mm、サンプル断面高さ5.5mm、長さ(ハニカム構造体の長手方向長さ)40mmとした。
スパン間距離30mm、測定速度0.1mm/minで3点曲げ強度を測定した。
【0080】
B軸曲げ強度は、ハニカム構造体の長手方向に対して垂直な方向に沿った曲げ強度である。
B軸曲げ強度試験用のサンプルは、サンプル断面幅10mm、サンプル断面高さ10mm、長さ(ハニカム構造体の長手方向に対して垂直な方向の長さ)35mmとした。
スパン間距離25mm、測定速度0.1mm/minで3点曲げ強度を測定した。
【0081】
図7は、各実施例及び比較例で製造したハニカム構造体のA軸曲げ強度の測定結果を示すグラフである。
図8は、各実施例及び比較例で製造したハニカム構造体のB軸曲げ強度の測定結果を示すグラフである。
【0082】
図7から、A軸曲げ強度はアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が小さいほど高くなり、比較例1に対して実施例3ではA軸曲げ強度が約30%向上することがわかった。
図8から、B軸曲げ強度はアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が小さいほど高くなり、比較例1に対して実施例3ではB軸曲げ強度が約40%向上することがわかった。
また、アルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が5%以下である実施例2及び実施例3において、A軸曲げ強度及びB軸曲げ強度が特に高くなっていることがわかった。
【0083】
これらの結果から、隔壁の面積に対するアルミナ凝集体含有空隙の面積の割合が10%以下であると、ハニカム構造体の強度低下の原因となる部分が少なくなり、強度低下が防止されたハニカム構造体となることが分かった。
【0084】
また、攪拌工程においてベーマイト及び水を混合して、ペースト状物においてベーマイトが凝集した凝集体が少なくなるように攪拌を行い、当該ペースト状物を用いてハニカム構造体を製造することにより、ハニカム構造体の隔壁内にベーマイトの凝集体に起因する大きな空隙が生じることを防止することができ、強度低下が防止されたハニカム構造体を製造することができることが分かった。
【符号の説明】
【0085】
10 ハニカム構造体
11 ハニカム焼成体
12 貫通孔
13 隔壁
15 アルミナ凝集体含有空隙
16 空隙
17 アルミナバインダーの凝集体(アルミナ凝集体)