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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129793
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】オゾン発生照明器具
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/04 20060101AFI20220830BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20220830BHJP
   H01J 61/42 20060101ALI20220830BHJP
   H01J 61/30 20060101ALI20220830BHJP
   H01J 61/34 20060101ALI20220830BHJP
   A61L 9/015 20060101ALI20220830BHJP
   C09K 11/74 20060101ALI20220830BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01J65/04 A
B82Y20/00
H01J61/42 Z
H01J61/30 Q
H01J61/34 F
A61L9/015
C09K11/74 ZNM
C09K11/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028617
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】303043999
【氏名又は名称】天草池田電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169133
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 勇
(72)【発明者】
【氏名】西浦 由成
(72)【発明者】
【氏名】小崎 祐一
(72)【発明者】
【氏名】美川 正一
(72)【発明者】
【氏名】清島 庸典
(72)【発明者】
【氏名】有馬 玄輝
【テーマコード(参考)】
4C180
4H001
5C043
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CA01
4C180EA17X
4C180HH01
4C180HH17
4H001CA01
4H001CA02
4H001XA51
4H001XA82
5C043AA20
5C043BB01
5C043CD05
5C043DD02
5C043DD28
5C043DD36
5C043EB01
5C043EC14
(57)【要約】
【課題】照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮するオゾン発生照明器具を実現する。
【解決手段】オゾン発生照明器具として、内部にガスを封入した放電電極を有さない無電極放電管と、該無電極放電管に近接して配置される誘導コイルと、該誘導コイルに高周波電力を供給する回路とを備えた無電極放電灯を含む照明器具であって、該照明器具は、オゾン発生機構を備え、照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガスを封入した放電電極を有さない無電極放電管と、
該無電極放電管に近接して配置される誘導コイルと、
該誘導コイルに高周波電力を供給する回路とを備えた無電極放電灯を含む照明器具であって、
該照明器具は、オゾン発生機構を備え、
照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮することを特徴とする、
オゾン発生照明器具。
【請求項2】
該放電管に於いて生起される紫外光を可視光に変換する機能材料として、
量子ドット材料を用いたことを特徴とする、
請求項1記載のオゾン発生照明器具。
【請求項3】
該放電管に於いて生起される紫外光を可視光に変換する機能材料として、
蛍光体材料を用いたことを特徴とする、
請求項1記載のオゾン発生照明器具。
【請求項4】
該放電管は、
内管及び外管からなる二重の管構造を有し、
内管中で外部からの電界によるプラズマ励起による紫外光を発生せしめ、係る紫外光の作用により空気中の酸素からオゾンを生成し、
外管の内面或いは外面に配置された紫外光を可視光に変換する機能材料により可視光に変換することにより照明器具として機能し、
且つ、外管は外気と連通する開口部を有し、内管と外管の間で生成されたオゾンが外気中に放出、拡散することによりオゾン発生機構としても機能することを特徴とする、
請求項1乃至3の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項5】
該紫外光を可視光に変換する機能材料は、
該外管の内面或いは外面に形成され、
且つ、該紫外光を可視光に変換する機能材料表面に保護層が形成されていることを特徴とする、
請求項4記載のオゾン発生照明器具。
【請求項6】
該放電管に於いて生起される紫外光は、
185nm付近に発光ピークを有する波長特性を有することを特徴とする、
請求項1乃至5の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項7】
該オゾン発生機構は、
低温放電装置の一対の電極に交流高電圧を印加し無声放電を生起させることによりオゾン発生を行う機構であることを特徴とする、
請求項1乃至3の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項8】
該オゾン発生機構の低温放電装置に印加される交流高電圧は、
無電極放電管に近接して配置される誘導コイルに高周波電力を供給する回路から供給されることを特徴とする、
請求項7記載のオゾン発生照明器具。
【請求項9】
該無電極放電管は、
電球形或いは円環形の形状のものを用いることを特徴とする、
請求項1乃至8の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項10】
該無電極放電管は、
電球形の形状のものを用い、
該オゾン発生機構は電球形無電極放電管のソケット部付近に配置されたことを特徴とする、
請求項7又は8記載のオゾン発生照明器具。
【請求項11】
該無電極放電管は、
円環形の形状のものを用い、
該オゾン発生機構は円環形無電極放電管の円環内部付近に配置されたことを特徴とする、
請求項7又は8記載のオゾン発生照明器具。
【請求項12】
該量子ドット材料は、
Stranski-Krastanovモードによる結晶成長により形成されたものを用いることを特徴とする、
請求項1、2或いは4乃至11の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項13】
該量子ドット材料は、
微細マスクを利用した選択成長により形成されたものを用いることを特徴とする、
請求項1、2或いは4乃至11の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項14】
該量子ドット材料は、
界面活性剤を用いた液層成長により形成されたものを用いることを特徴とする、
請求項1乃至11の何れか一に記載の、放電灯及び無電極放電灯。
【請求項15】
該量子ドット材料は、
錫化合物を主成分とすることを特徴とする、
請求項1、2或いは4乃至14の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項16】
該量子ドット材料は、
鉛化合物を主成分とすることを特徴とする、
請求項1、2或いは4乃至14の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項17】
該量子ドット材料は、
アンチモン化合物を主成分とすることを特徴とする、
請求項1、2或いは4乃至14の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項18】
該量子ドット材料は、
複数の波長にピークを有する材料を混合して用いることを特徴とする、
請求項1、2或いは4乃至17の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項19】
該量子ドット材料は、
液相成膜法により成膜されたことを特徴とする、
請求項1、2或いは4乃至18の何れか一に記載のオゾン発生照明器具。
【請求項20】
該量子ドット材料は、
スプレー法により成膜されたことを特徴とする、
請求項19記載の記載のオゾン発生照明器具。
【請求項21】
該量子ドット材料は、
印刷法により成膜されたことを特徴とする、
請求項19記載の記載のオゾン発生照明器具。
【請求項22】
該量子ドット材料は、
コロイド溶液の状態で液相成膜に用いられることを特徴とする、
請求項19乃至21の何れか一に記載の記載のオゾン発生照明器具。
【請求項23】
該量子ドット材料は、
液相成膜法により成膜された後に減圧加熱して形成されることを特徴とする、
請求項19乃至22の何れか一に記載の記載のオゾン発生照明器具。
【請求項24】
該量子ドット材料の膜形成の前に、
成膜対象の表面を親水化処理することを特徴とする、
請求項19乃至23の何れか一に記載の記載のオゾン発生照明器具。
【請求項25】
該成膜対象の表面を親水化処理は、
オゾン、プラズマ、過酸化水素或いはアンモニアの水溶液により行われることを特徴とする、
請求項24記載の記載のオゾン発生照明器具。
【請求項26】
該量子ドット材料のコロイド溶液は、
正又は負に帯電する高分子材料を含んでなることを特徴とする、
請求項22記載の記載のオゾン発生照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にガスを封入した放電電極を有さない無電極放電管と、該無電極放電管に近接して配置される誘導コイルと、該誘導コイルに高周波電力を供給する回路とを備えた無電極放電灯を含む照明器具であって、該照明器具は、オゾン発生機構を備え、照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮することを特徴とする、オゾン発生照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯をはじめとする放電灯は非常に成熟した技術であり、各種照明ランプ等に広範に用いられている。特に、無電極放電灯はLEDを凌駕する長寿命を有し、高天井やトンネル内などメンテナンスが困難な用途に於いては非常に有効である。
【0003】
また、昨今の新型コロナウィルスの蔓延に対する対策として、室内の空気の殺菌、殺ウィルス処理は喫緊の課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016ー157555号公報
【特許文献2】特開2016ー114846号公報
【特許文献3】特開2013ー183144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、無電極放電灯の特性を活かし、照明器具としての機能のみならず、簡便な構成でオゾン発生機構を備え、照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮するオゾン発生照明器具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部にガスを封入した放電電極を有さない無電極放電管と、該無電極放電管に近接して配置される誘導コイルと、該誘導コイルに高周波電力を供給する回路とを備えた無電極放電灯を含む照明器具であって、該照明器具は、オゾン発生機構を備え、照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮することを特徴とする、オゾン発生照明器具である。
【0007】
また本発明は、該放電管に於いて生起される紫外光を可視光に変換する機能材料として、量子ドット材料を用いたことを特徴とする。或いは本発明は、該放電管に於いて生起される紫外光を可視光に変換する機能材料として、蛍光体材料を用いたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、該放電管が内管及び外管からなる二重の管構造を有し、内管中で外部からの電界によるプラズマ励起による紫外光を発生せしめ、係る紫外光の作用により空気中の酸素からオゾンを生成し、外管の内面或いは外面に配置された紫外光を可視光に変換する機能材料により可視光に変換することにより照明器具として機能し、且つ、外管は外気と連通する開口部を有し、内管と外管の間で生成されたオゾンが外気中に放出、拡散することによりオゾン発生機構としても機能することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、該紫外光を可視光に変換する機能材料が該外管の内面或いは外面に形成され、且つ、該紫外光を可視光に変換する機能材料表面に保護層が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、該放電管に於いて生起される紫外光が185nm付近に発光ピークを有する波長特性を有することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、該オゾン発生機構が低温放電装置の一対の電極に交流高電圧を印加し無声放電を生起させることによりオゾン発生を行う機構であることを特徴とする。
【0012】
さらに本発明は、該オゾン発生機構の低温放電装置に印加される交流高電圧が無電極放電管に近接して配置される誘導コイルに高周波電力を供給する回路から供給されることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、該無電極放電管が電球形或いは円環形の形状のものを用いることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、該オゾン発生機構が低温放電装置の一対の電極に交流高電圧を印加し無声放電を生起させることによりオゾン発生を行う機構であって、該無電極放電管が電球形の形状のものを用い、該オゾン発生機構は電球形無電極放電管のソケット部付近に配置されたことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、該オゾン発生機構が低温放電装置の一対の電極に交流高電圧を印加し無声放電を生起させることによりオゾン発生を行う機構であって、該無電極放電管が円環形の形状のものを用い、該オゾン発生機構は円環形無電極放電管の円環内部付近に配置されたことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、該量子ドット材料がStranski-Krastanovモードによる結晶成長により形成されたものを用いることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、該量子ドット材料が微細マスクを利用した選択成長により形成されたものを用いることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、該量子ドット材料が界面活性剤を用いた液層成長により形成されたものを用いることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、該量子ドット材料が錫化合物を主成分とすることを特徴とする。或いは本発明は、該量子ドット材料が鉛化合物を主成分とすることを特徴とする。或いは本発明は、該量子ドット材料がアンチモン化合物を主成分とすることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、該量子ドット材料が複数の波長にピークを有する材料を混合して用いることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、該量子ドット材料が液相成膜法により成膜されたことを特徴とする。
【0022】
また本発明は、該量子ドット材料がスプレー法により成膜されたことを特徴とする。或いは本発明は、該量子ドット材料が印刷法により成膜されたことを特徴とする。
【0023】
また本発明は、該量子ドット材料がコロイド溶液の状態で液相成膜に用いられることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、該量子ドット材料が液相成膜法により成膜された後に減圧加熱して形成されることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、該量子ドット材料の膜形成の前に、成膜対象の表面を親水化処理することを特徴とする。
【0026】
また本発明は、該成膜対象の表面を親水化処理は、オゾン、プラズマ、過酸化水素或いはアンモニアの水溶液により行われることを特徴とする。
【0027】
また本発明は、該量子ドット材料のコロイド溶液が正又は負に帯電する高分子材料を含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る無電極放電灯を用いたオゾン発生照明器具は、無電極放電灯の特性を活かし、照明器具としての機能のみならず、簡便な構成でオゾン発生機構を備え、照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮するオゾン発生照明器具を実現し、照明機能と殺菌及び/又は殺ウィルス機能を同時に発現し、新型コロナウィルス蔓延防止にも資する照明装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明にかかる無電極放電灯を用いたオゾン発生照明器具の一例を示した概念図である。
図2図2は、本発明にかかるオゾン発生照明器具に用いられる無電極放電灯の外管に形成される波長変換機能を発揮する量子ドット薄膜の製造工程の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明にかかる無電極放電灯を用いたオゾン発生照明器具の他の構成の例を示した概念図である。
図4図4は、量子ドットを用いた無電極放電灯の発光状態の一例を示す図面代用写真である。
図5図5は、量子ドットを用いた無電極放電灯のガスの励起状態における波長分布の一例を示すグラフである。
図6図6は、量子ドットを用いた無電極放電灯に本発明にかかる量子ドットを用いた場合における波長分布の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、内部にガスを封入した放電電極を有さない無電極放電管と、該無電極放電管に近接して配置される誘導コイルと、該誘導コイルに高周波電力を供給する回路とを備えた無電極放電灯を含む照明器具であって、該照明器具は、オゾン発生機構を備え、照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮することを特徴とする、オゾン発生照明器具である。
【0031】
発明者らは、継続的に無電極放電灯に関する研究を推進してきており、無電極放電管に封入するガスについても検討を加え、特に水銀を含まないガスにより安定的なプラズマ励起を可能にしてきている。また、この中で、紫外光の発光波長も内部封入ガスの種類及び圧力の制御によりコントロールが可能となり、オゾン生成に有効な波長にピークを有する発光特性を実現している。
【0032】
また本発明は、該放電管に於いて生起される紫外光を可視光に変換する機能材料として、量子ドット材料を用いたことを特徴とする。或いは本発明は、該放電管に於いて生起される紫外光を可視光に変換する機能材料として、蛍光体材料を用いたことを特徴とする。特に、紫外光を可視光に変換する機能材料として、量子ドット材料を用いる事により、吸収波長をコントロールできることから、後述するオゾン生成に有効な波長にピークを有する紫外光を効率的に可視光に変換することが可能となった。
【0033】
また本発明は、該放電管が内管及び外管からなる二重の管構造を有し、内管中で外部からの電界によるプラズマ励起による紫外光を発生せしめ、係る紫外光の作用により空気中の酸素からオゾンを生成し、外管の内面或いは外面に配置された紫外光を可視光に変換する機能材料により可視光に変換することにより照明器具として機能し、且つ、外管は外気と連通する開口部を有し、内管と外管の間で生成されたオゾンが外気中に放出、拡散することによりオゾン発生機構としても機能することを特徴とする。
【0034】
かかる構成により、発光と同時にオゾンの生成、拡散が実現され、照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮することが可能となり、簡便な構成で新型コロナウィルス蔓延防止にも資する照明装置を実現することができる。
【0035】
また本発明は、該紫外光を可視光に変換する機能材料が該外管の内面或いは外面に形成され、且つ、該紫外光を可視光に変換する機能材料表面に保護層が形成されていることを特徴とする。
【0036】
また本発明は、該放電管に於いて生起される紫外光が185nm付近に発光ピークを有する波長特性を有することを特徴とする。ここで、185nm付近の紫外光がオゾンの生成に有効であることは広く知られている。従前の水銀を含む封入ガスを用いても185nm付近に発光ピークが存在するので、オゾン生成の効果は得られる。しかし、水銀を含む封入ガスに於いては254nm付近にもピークが存在し、この波長の紫外光は殺菌効果が高いもののオゾンの再結合(消失)にも寄与するため、従前の水銀を含む封入ガスではオゾンの生成という観点からは十分な効率が得られなかった。しかし、前記した通り発明者らは無電極放電管に封入するガスについても検討を加え、特に水銀を含まないガスにより安定的なプラズマ励起を可能にし、この中で、紫外光の発光波長も内部封入ガスの種類及び圧力の制御によりコントロールが可能となり、オゾン生成に有効な波長にピークを有し、且つオゾンの消失に関わる波長の発光が非常に少ない発光特性を実現している。
【0037】
また本発明は、該オゾン発生機構が低温放電装置の一対の電極に交流高電圧を印加し無声放電を生起させることによりオゾン発生を行う機構であることを特徴とする。さらに本発明は、該オゾン発生機構の低温放電装置に印加される交流高電圧が無電極放電管に近接して配置される誘導コイルに高周波電力を供給する回路から供給されることを特徴とする。かかる構成により、オゾン生成のための無声放電を生起させるための交流高電圧回路を用意する必要がなく、無電極放電管に近接して配置される誘導コイルに高周波電力を供給する回路からの出力を共用することにより、非常に簡便且つ低コストで照明機能と殺菌及び/又は殺ウィルス機能を同時に発現することが可能となった。
【0038】
また本発明は、該無電極放電管が電球形或いは円環形の形状のものを用いることを特徴とする。これは、二重管構成の紫外光によるオゾン生成タイプ、或いは無声放電によるオゾン生成タイプの何にも好適に応用できる。
【0039】
また本発明は、該オゾン発生機構が低温放電装置の一対の電極に交流高電圧を印加し無声放電を生起させることによりオゾン発生を行う機構であって、該無電極放電管が電球形の形状のものを用い、該オゾン発生機構は電球形無電極放電管のソケット部付近に配置されたことを特徴とする。
【0040】
また本発明は、該オゾン発生機構が低温放電装置の一対の電極に交流高電圧を印加し無声放電を生起させることによりオゾン発生を行う機構であって、該無電極放電管が円環形の形状のものを用い、該オゾン発生機構は円環形無電極放電管の円環内部付近に配置されたことを特徴とする。
【0041】
また本発明は、該量子ドット材料がStranski-Krastanovモードによる結晶成長により形成されたものを用いることを特徴とする。
【0042】
また本発明は、該量子ドット材料が微細マスクを利用した選択成長により形成されたものを用いることを特徴とする。
【0043】
また本発明は、該量子ドット材料が界面活性剤を用いた液層成長により形成されたものを用いることを特徴とする。
【0044】
また本発明は、該量子ドット材料が錫化合物を主成分とすることを特徴とする。或いは本発明は、該量子ドット材料が鉛化合物を主成分とすることを特徴とする。或いは本発明は、該量子ドット材料がアンチモン化合物を主成分とすることを特徴とする。
【0045】
また本発明は、該量子ドット材料が複数の波長にピークを有する材料を混合して用いることを特徴とする。
【0046】
また本発明は、該量子ドット材料が液相成膜法により成膜されたことを特徴とする。
【0047】
また本発明は、該量子ドット材料がスプレー法により成膜されたことを特徴とする。或いは本発明は、該量子ドット材料が印刷法により成膜されたことを特徴とする。
【0048】
また本発明は、該量子ドット材料がコロイド溶液の状態で液相成膜に用いられることを特徴とする。
【0049】
また本発明は、該量子ドット材料が液相成膜法により成膜された後に減圧加熱して形成されることを特徴とする。
【0050】
また本発明は、該量子ドット材料の膜形成の前に、成膜対象の表面を親水化処理することを特徴とする。
【0051】
また本発明は、該成膜対象の表面を親水化処理は、オゾン、プラズマ、過酸化水素或いはアンモニアの水溶液により行われることを特徴とする。
【0052】
また本発明は、該量子ドット材料のコロイド溶液が正又は負に帯電する高分子材料を含んでなることを特徴とする。
【実施例0053】
以下、本発明の実施の例を図面を用いて説明する。図1は、本発明にかかる無電極放電灯を用いたオゾン発生照明器具の一例を示した概念図である。本実施例に於いては、無電極放電管として電球形のタイプを用い、内管と外管の二重構造を取り、内管と外管の間の空間で紫外線によるオゾン生成を行う構成とした。なお、管形についてはドーナツ形状のものを用いても同様に構成可能である。
【0054】
本実施例において、電球形状の放電管を有する無電極放電灯の内管である無電極放電管1は外部に電界印加用コイル2を備えており、これから生ずる電界により放電管内にプラズマを励起する。このプラズマにより内部に封入されたガスが励起されて主として紫外域にピークを持つ励起光が放出され、これが内管と外管の間の空間で紫外線によるオゾン生成を行い、さらに外管に構成された波長変換材料に入射して可視光に波長変換されて発光素子として機能する。
【0055】
生成されたオゾンは開口部(オゾン放出孔)3から外気に放出され、殺菌、殺ウィルスの機能を発現する。なお、開口部(オゾン放出孔)3は上下に存在するから、プラズマ励起による温度上昇に伴う上昇気流により上部孔から、或いは空気とオゾンの比重差により下部孔から放出される。
【0056】
本実施例に於いては内管には石英ガラスを用いており、紫外線に対しても透明である。また、外管の内面に後述の量子ドットを波長変換材料として薄膜形成しており、波長変換機能を発揮して照明として機能する。ここで、外管の材料はソーダガラスを用いた。このため、可視光は外管を透過するが、余分な紫外光はソーダガラスで吸収されるため外部への影響は殆どない。
【0057】
図2は、本発明にかかるオゾン発生照明器具に用いられる無電極放電灯の外管に形成される波長変換機能を発揮する量子ドット薄膜の製造工程の一例を示すフローチャートである。かかる工程を経て、外管に波長変換機能を発揮する量子ドット薄膜が形成された。なお、量子ドット薄膜については後に詳述する。
【実施例0058】
図3は、本発明にかかる無電極放電灯を用いたオゾン発生照明器具の他の構成の例を示した概念図である。本実施例において、リング形状の放電管を有する無電極放電灯の放電管1は外部に電界印加用コイル2を備えており、これから生ずる電界により放電管内にプラズマを励起する。このプラズマにより内部に封入されたガスが励起されて主として紫外域にピークを持つ励起光が放出され、これが本発明に係る量子ドット層に入射して可視光に波長変換されて発光素子として機能する。
【0059】
本実施例に於いては、オゾン発生機構として低温放電装置の一対の電極に交流高電圧を印加し無声放電を生起させることによりオゾン発生を行う機構を用いた。オゾン発生機構の低温放電装置に印加される交流高電圧は、無電極放電管に近接して配置される誘導コイルに高周波電力を供給する回路から供給されるようにした。かかる構成により、オゾン生成のための無声放電を生起させるための交流高電圧回路を用意する必要がなく、無電極放電管に近接して配置される誘導コイルに高周波電力を供給する回路からの出力を共用することにより、非常に簡便且つ低コストで照明機能と殺菌及び/又は殺ウィルス機能を同時に発現することが可能となった。
【0060】
低温放電装置は円環の中央部に備えられ、生成されたオゾンは開口部(オゾン放出孔)3から外気に放出され、殺菌、殺ウィルスの機能を発現する。ここで、管形については電球形状のものを用いても同様に構成可能である。
【0061】
以下、本発明に係るオゾン発生照明器具の波長変換機能を発揮する量子ドット薄膜の形成方法について詳述する。なお、以下の記載はオゾン発生機構として低温放電装置の一対の電極に交流高電圧を印加し無声放電を生起させることによりオゾン発生を行う機構を用いた場合のドーナツ形無電極放電管を構成する場合についてのものであるが、量子ドット薄膜の形成方法については前述の内管と外管の二重構造を取り、内管と外管の間の空間で紫外線によるオゾン生成を行う構成の場合の外管に於いても同様である。
【0062】
本実施例に係る無電極放電灯の製造工程に於いては、まずリングを二つに分割した形状のガラス管を用意した。この管の内面に量子ドット層を形成するため、前処理を行った。本実施例では前処理として親水化処理を行った。本実施例では、親水化処理は過酸化水素により管内面を洗浄することにより行ったが、処理はアンモニアの水溶液により行ってもよい。さらに、オゾン或いはプラズマによる処理によっても問題ない。
【0063】
続いて、管内面に量子ドット層を形成した。本実施例では、量子ドット材料が酸化錫を主成分とするものを用いた。量子ドット材料が錫化合物を主成分とするものを用いた。 2乃至5nmの錫酸化物SnO2は酸素欠陥の存在により紫外線照射下では青色発光を示し、また酸化物であるため安定性も高い。また錫を主成分とするペロブスカイト型ナノ結晶CH3NH3SnI3は非常に高い発光強度を示すため、低い励起光強度でも十分な発光を得ることができる。
【0064】
なお、量子ドット材料としては錫化合物を主成分とするものだけでなく、鉛化合物、アンチモン化合物或いはビスマス化合物を主成分とするものも好適に用いられる。さらに、カドミウム、セレン、ガリウム、砒素、インジウムなど従来から用いられる材料系も用いることができる。
【0065】
量子ドット材料の形成には、界面活性剤を用いた液層成長により形成されたものを用いた。SnO2ナノ結晶粒子は、高沸点有機溶媒中での金属錯体の熱分解を利用した。具体的には、高沸点有機溶媒、IV価のSnの金属錯体とアミンとアルコールを溶解させ、真空下で加熱した後、不活性気体流中200℃乃至260℃の温度範囲に加熱して金属錯体を熱分解させ、ナノ結晶粒子を形成させる。 得られたナノ結晶はヘキサンとエタノールで遠心分離によって洗浄し、最後にヘキサンに分散させた。有機溶媒としては、例えばジベンジルエーテル、オクタデセン、トリオクチルフォスフィンなどが利用できる。アミンとしては、例えばオレイルアミン、オクタデシルアミンが利用できる。アルコールとしては、オクタンジオール、ヘキサデカンジオールなどが利用できる。
【0066】
ペロブスカイト型ナノ結晶CH3NH3SnI3はエマルジョン法によって合成した。具体的には、臭化メチルアンモニウムをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液と臭化錫をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液を用意し、これをオレイン酸とオクチルアミンを含むヘキサン溶液に一滴ずつ滴下する。この混合溶液に第3級ブタノールを加えることで望みとするナノ結晶を得た。ナノ結晶は遠心分離によってトルエンで洗浄して、最後にトルエンに分散させた。
【0067】
なお、量子ドット材料の形成方法としては、Stranski-Krastanovモードによる結晶成長により形成されたもの或いは微細マスクを利用した選択成長により形成されたものも好適に用いられる。
【0068】
本実施例に於いては、量子ドット材料が複数の波長にピークを有する材料を混合して用いた。これにより、発光スペクトルがよりブロードになり、演色性や発光効率が向上した。
【0069】
本実施例に於いては、量子ドット層の形成には液相成膜法を用いた。具体的には、量子ドット材料を含むコロイド溶液を管内面に接触させることにより薄膜層を形成し、その後減圧加熱して成膜した。ここで、成膜法としてはスプレー法や印刷法を用いてもよい。また、後処理としては減圧加熱のみならず常圧での加熱、窒素や希ガス雰囲気下での加熱、或いは減圧のみによっても良い。さらに、後述する保護層の形成後に同時に後処理を行っても良い。
【0070】
本実施例に於いては、量子ドット材料のコロイド溶液が正に帯電する高分子材料を含んだものを用いた。これにより、成膜性が向上し均一な発光層の形成に有効であった。
【0071】
本実施例に於いては、さらに量子ドット層の表面に保護層を形成した。保護層材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)といった透明高分子を用いることができる。
【0072】
本実施例に於いては、前記の工程を経て管内面に量子ドット層及び保護層を形成したリングを二つに分割した形状のガラス管を融着してリング状に形成し、内部を減圧したのちプラズマ励起のためのガスを注入して封止し、放電管を形成した。
【0073】
ここで、リングを二つに分割した形状のガラス管の接続はセラミックセメント等を用いる等の他の方法によっても問題ない。封入するガスは通常の水銀を含むものでも良いが、硫黄系等の水銀を用いない他の励起ガスであっても問題ない。
【0074】
本実施例に於いては、無電極放電管に近接して配置される誘導コイルとして2個のリングコイルを配設した。かかる構成により、本発明の放電灯及び無電極放電灯は、放電灯及び無電極放電灯のプラズマ励起による紫外光を可視光に変換する波長変換材料として量子ドット材料を応用し、高効率の波長変換を可能として、高天井やトンネル内などメンテナンスが困難な用途に於いて有効な照明装置を実現することができた。
【実施例0075】
図4は、量子ドットを用いた無電極放電灯の発光状態の一例を示す図面代用写真である。本実施例では、量子ドットによる波長変換効果を検討するため、二重U字型構造のガラス管中にガスを充填し、これを外部から励起して発光させている。
【0076】
図5は、量子ドットを用いた無電極放電灯のガスの励起状態における波長分布の一例を示すグラフである。このように、本発明に於いては放電灯及び無電極放電灯のプラズマ励起による紫外光を可視光に変換する波長変換材料として量子ドット材料を応用する。本実施例に於いてはかかる波長分布を有する励起光を緑色発光の量子ドットを使用して波長変換し、その効果を確認した。
【0077】
図6は、量子ドットを用いた無電極放電灯に本発明にかかる量子ドットを用いた場合における波長分布の一例(緑色発光の量子ドットを使用した場合)を示すグラフである。ここで、図5には生じていなかった500乃至550nmの範囲にブロードなピークが生成していることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上述べてきたように本発明に係る無電極放電灯を用いたオゾン発生照明器具は、無電極放電灯の特性を活かし、照明器具としての機能のみならず、簡便な構成でオゾン発生機構を備え、照明と同時に殺菌及び/又は殺ウィルス機能を発揮するオゾン発生照明器具を実現し、照明機能と殺菌及び/又は殺ウィルス機能を同時に発現し、新型コロナウィルス蔓延防止にも資する照明装置を実現することができ、産業状の利用可能性は大であると言える。
【符号の説明】
【0079】
1 無電極放電灯の放電管
2 電界印加用コイル
3 開口部(オゾン放出孔)
4 外管
図1
図2
図3
図4
図5
図6