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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129805
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】紙葉類識別装置及び紙葉類識別方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20220830BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20220830BHJP
【FI】
G06T1/00 400E
G07D7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028635
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】番匠谷 利彦
(72)【発明者】
【氏名】池本 良
【テーマコード(参考)】
3E041
5B047
【Fターム(参考)】
3E041AA02
3E041BA10
3E041BB03
3E041BB06
3E041CA08
5B047AA04
5B047AB04
5B047BA01
5B047BB02
5B047BB04
5B047BC04
5B047BC12
5B047BC18
5B047CB21
5B047DA03
(57)【要約】
【課題】紙葉類の識別精度を向上することが可能な紙葉類識別装置、紙葉類識別方法及び紙葉類識別プログラムを提供する。
【解決手段】識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別装置であって、紙葉類に光を照射する光源と、紙葉類から到来した光を受光する受光部と、前記受光部の出力データを取得する制御部と、を備え、前記制御部は、識別対象物を含む領域に対応する前記受光部の出力データである第1データと、当該識別対象物が含まれない領域に対応する前記受光部の出力データである第2データと、を取得し、前記第2データにより前記第1データを補正した第3データを生成し、前記第3データに基づいて紙葉類を識別する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別装置であって、
紙葉類に光を照射する光源と、
紙葉類から到来した光を受光する受光部と、
前記受光部の出力データを取得する制御部と、を備え、
前記制御部は、
識別対象物を含む領域に対応する前記受光部の出力データである第1データと、当該識別対象物が含まれない領域に対応する前記受光部の出力データである第2データと、を取得し、
前記第2データにより前記第1データを補正した第3データを生成し、
前記第3データに基づいて紙葉類を識別する
ことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記光源は、紙葉類に複数波長の光を照射し、
前記受光部は、紙葉類から到来した複数波長の光を受光し、
前記第1データ及び前記第2データは、各々、前記複数波長の光に係るデータを含み、
前記制御部は、前記複数波長の光に係る第1データをそれぞれ、対応する同じ波長の光に係る第2データで補正した複数波長の光に係る第3データを生成し、
前記複数波長の光に係る第3データに基づいて紙葉類を識別する
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数波長の光に係る第1データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第1乗算データと、前記複数波長の光に係る第2データのうちの前記第1の波長及び前記第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第2乗算データとを算出し、
前記第2乗算データにより前記第1乗算データを補正した第4データを生成し、
前記複数波長の光に係る第3データと、前記第4データとに基づいて紙葉類を識別する
ことを特徴とする請求項2記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2データとして、前記識別対象物が含まれない領域の出力データの代表値を用いる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記光源は、
アクリル樹脂製の棒状の導光体と、
前記導光体の2つの端面のうちの少なくとも一方に対向する発光素子と、
を備え、
前記光源は、
前記導光体を介して紙葉類に光を照射する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
前記光源は、紙葉類に対して主走査方向に直線状の光を照射し、
前記受光部は、紙葉類から到来した主走査方向で直線状の光を受光し、
前記制御部は、前記第2データとして、前記識別対象物を含む領域の主走査方向での位置に応じた出力データを用いる
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
【請求項7】
識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別装置であって、
紙葉類に複数波長の光を照射する光源と、
紙葉類から到来した複数波長の光を受光する受光部と、
前記受光部の前記複数波長の光に係る出力データを取得する制御部と、を備え、
前記制御部は、取得した前記複数波長の光に係る出力データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである乗算データを算出し、
前記複数波長の光に係る出力データと、前記乗算データとに基づいて紙葉類を識別する
ことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項8】
前記光源は、紙葉類に赤外光を照射し、
前記赤外光は、850nm以上、950nm以下の波長の光を含む
ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
【請求項9】
前記受光部は、前記光源から照射されて紙葉類で反射した光を受光し、
前記出力データは、紙葉類で反射した光に係るデータを含む
ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
【請求項10】
識別対象の紙葉類は、識別対象物として、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が減少するインクと、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が増加するインクとの少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
【請求項11】
識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別方法であって、
光源から照射されて紙葉類から到来した光を受光した受光部から出力データを取得するステップと、
識別対象物を含む領域に対応する前記受光部の出力データである第1データと、当該識別対象物が含まれない領域に対応する前記受光部の出力データである第2データと、を取得するステップと、
前記第2データにより前記第1データを補正した第3データを生成するステップと、
前記第3データに基づいて紙葉類を識別するステップと、
を備えることを特徴とする紙葉類識別方法。
【請求項12】
識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別方法であって、
光源から照射されて紙葉類から到来した複数波長の光を受光した受光部から前記複数波長の光に係る出力データを取得するステップと、
取得した前記複数波長の光に係る出力データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである乗算データを算出するステップと、
前記複数波長の光に係る出力データと、前記乗算データとに基づいて紙葉類を識別するステップと、
を備えることを特徴とする紙葉類識別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙葉類識別装置、紙葉類識別方法及び紙葉類識別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣といった紙葉類を識別する紙葉類識別装置では、各種のセンサを用いて、紙葉類の特徴を取得する。そして、取得した紙葉類の特徴に基づき、紙葉類の種類(金種)や真偽、正損等を識別(判定)することが一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、光源から複数波長の赤外光を紙幣に照射し、紙幣で反射又は透過した光を受光部で受光する光学センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/082251号
【特許文献2】国際公開第2020/208806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光源の発光素子(例えばLED)の素子毎の特性ばらつきや温度によるピーク波長のシフト、光源の導光体(例えばアクリル樹脂製の導光体)の透過率の波長に応じた変動等の環境要因に起因して、受光部の出力データがばらつく場合がある。その場合、ばらつきのある出力データに基づき紙葉類の識別処理が行われることになるため、紙葉類の識別精度が低下してしまう。また、この出力データの環境要因に起因するばらつきは、特に赤外領域において顕著となる傾向があるため、赤外領域における出力データに基づき紙葉類の識別処理を行う場合は、特にその精度が悪化しやすい。
【0006】
また、複数波長の光を紙幣に照射し、受光部から取得した複数波長の光に係る出力データに基づいて紙葉類を識別する場合は、各波長の光に係る出力データのみを用いて識別処理を行うことが一般的であるが、それでは、紙葉類に設けられた識別対象物(例えば特殊インク)の真偽の分離性能が充分ではないことがある。識別対象物の真偽の分離性能が不充分であると当該紙葉類の識別精度の低下につながってしまう。
【0007】
本開示は、上記現状に鑑みてなされたものであり、紙葉類の識別精度を向上することが可能な紙葉類識別装置、紙葉類識別方法及び紙葉類識別プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、(1)本開示の第1の態様に係る紙葉類識別装置は、識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別装置であって、紙葉類に光を照射する光源と、紙葉類から到来した光を受光する受光部と、前記受光部の出力データを取得する制御部と、を備え、前記制御部は、識別対象物を含む領域に対応する前記受光部の出力データである第1データと、当該識別対象物が含まれない領域に対応する前記受光部の出力データである第2データと、を取得し、前記第2データにより前記第1データを補正した第3データを生成し、前記第3データに基づいて紙葉類を識別する。
【0009】
(2)上記(1)に記載の紙葉類識別装置において、前記光源は、紙葉類に複数波長の光を照射してもよく、前記受光部は、紙葉類から到来した複数波長の光を受光してもよく、前記第1データ及び前記第2データは、各々、前記複数波長の光に係るデータを含んでもよく、前記制御部は、前記複数波長の光に係る第1データをそれぞれ、対応する同じ波長の光に係る第2データで補正した複数波長に係る第3データを生成してもよく、前記複数波長の光に係る第3データに基づいて紙葉類を識別してもよい。
【0010】
(3)上記(2)に記載の紙葉類識別装置において、前記制御部は、前記複数波長の光に係る第1データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第1乗算データと、前記複数波長の光に係る第2データのうちの前記第1の波長及び前記第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第2乗算データとを算出してもよく、前記第2乗算データにより前記第1乗算データを補正した第4データを生成してもよく、前記複数波長の光に係る第3データと、前記第4データとに基づいて紙葉類を識別してもよい。
【0011】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の紙葉類識別装置において、前記制御部は、前記第2データとして、前記識別対象物が含まれない領域の出力データの代表値を用いてもよい。
【0012】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の紙葉類識別装置において、前記光源は、アクリル樹脂製の棒状の導光体と、前記導光体の2つの端面のうちの少なくとも一方に対向する発光素子と、を備えてもよく、前記光源は、前記導光体を介して紙葉類に光を照射してもよい。
【0013】
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の紙葉類識別装置において、前記光源は、紙葉類に対して主走査方向に直線状の光を照射してもよく、前記受光部は、紙葉類から到来した主走査方向で直線状の光を受光してもよく、前記制御部は、前記第2データとして、前記識別対象物を含む領域の主走査方向での位置に応じた出力データを用いてもよい。
【0014】
(7)本開示の第2の態様に係る紙葉類識別装置は、識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別装置であって、紙葉類に複数波長の光を照射する光源と、紙葉類から到来した複数波長の光を受光する受光部と、前記受光部の前記複数波長の光に係る出力データを取得する制御部と、を備え、前記制御部は、取得した前記複数波長の光に係る出力データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである乗算データを算出し、前記複数波長の光に係る出力データと、前記乗算データとに基づいて紙葉類を識別する。
【0015】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の紙葉類識別装置において、前記光源は、紙葉類に赤外光を照射してもよく、前記赤外光は、850nm以上、950nm以下の波長の光を含んでもよい。
【0016】
(9)上記(1)~(8)のいずれかに記載の紙葉類識別装置において、前記受光部は、前記光源から照射されて紙葉類で反射した光を受光してもよく、前記出力データは、紙葉類で反射した光に係るデータを含んでもよい。
【0017】
(10)上記(1)~(9)のいずれかに記載の紙葉類識別装置において、識別対象の紙葉類は、識別対象物として、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が減少するインクと、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が増加するインクとの少なくとも一方を含んでもよい。
【0018】
(11)本開示の第3の態様に係る紙葉類識別方法は、識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別方法であって、光源から照射されて紙葉類から到来した光を受光した受光部から出力データを取得するステップ(A)と、識別対象物を含む領域に対応する前記受光部の出力データである第1データと、当該識別対象物が含まれない領域に対応する前記受光部の出力データである第2データと、を取得するステップ(B)と、前記第2データにより前記第1データを補正した第3データを生成するステップ(C)と、前記第3データに基づいて紙葉類を識別するステップ(D)と、を備える。
【0019】
(12)上記(11)に記載の紙葉類識別方法において、前記光源は、紙葉類に複数波長の光を照射してもよく、前記受光部は、紙葉類から到来した複数波長の光を受光してもよく、前記第1データ及び前記第2データは、各々、前記複数波長の光に係るデータを含んでもよく、上記ステップ(C)では、前記複数波長の光に係る第1データをそれぞれ、対応する同じ波長の光に係る第2データで補正した複数波長に係る第3データを生成してもよく、上記ステップ(D)では、前記複数波長の光に係る第3データに基づいて紙葉類を識別してもよい。
【0020】
(13)上記(12)に記載の紙葉類識別方法において、前記複数波長の光に係る第1データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第1乗算データと、前記複数波長の光に係る第2データのうちの前記第1の波長及び前記第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第2乗算データとを算出するステップ(E)を更に備えてもよく、上記ステップ(C)では、前記第2乗算データにより前記第1乗算データを補正した第4データを生成してもよく、上記ステップ(D)では、前記複数波長の光に係る第3データと、前記第4データとに基づいて紙葉類を識別してもよい。
【0021】
(14)上記(11)~(13)のいずれかに記載の紙葉類識別方法において、上記ステップ(C)では、前記第2データとして、前記識別対象物が含まれない領域の出力データの代表値を用いてもよい。
【0022】
(15)上記(11)~(14)のいずれかに記載の紙葉類識別方法において、前記光源は、アクリル樹脂製の棒状の導光体と、前記導光体の2つの端面のうちの少なくとも一方に対向する発光素子と、を備えてもよく、前記光源は、前記導光体を介して紙葉類に光を照射してもよい。
【0023】
(16)上記(11)~(15)のいずれかに記載の紙葉類識別方法において、前記光源は、紙葉類に対して主走査方向に直線状の光を照射してもよく、前記受光部は、紙葉類から到来した主走査方向で直線状の光を受光してもよく、上記ステップ(C)では、前記第2データとして、前記識別対象物を含む領域の主走査方向での位置に応じた出力データを用いてもよい。
【0024】
(17)本開示の第4の態様に係る紙葉類識別方法は、識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別方法であって、光源から照射されて紙葉類から到来した複数波長の光を受光した受光部から前記複数波長の光に係る出力データを取得するステップと、取得した前記複数波長の光に係る出力データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである乗算データを算出するステップと、前記複数波長の光に係る出力データと、前記乗算データとに基づいて紙葉類を識別するステップと、を備える。
【0025】
(18)上記(11)~(17)のいずれかに記載の紙葉類識別方法において、前記光源は、紙葉類に赤外光を照射してもよく、前記赤外光は、850nm以上、950nm以下の波長の光を含んでもよい。
【0026】
(19)上記(11)~(18)のいずれかに記載の紙葉類識別方法において、前記受光部は、前記光源から照射されて紙葉類で反射した光を受光してもよく、前記出力データは、紙葉類で反射した光に係るデータを含んでもよい。
【0027】
(20)上記(11)~(19)のいずれかに記載の紙葉類識別方法において、識別対象の紙葉類は、識別対象物として、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が減少するインクと、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が増加するインクとの少なくとも一方を含んでもよい。
【0028】
(21)本開示の第5の態様に係る紙葉類識別プログラムは、紙葉類識別装置を用いて識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別プログラムであって、光源から照射されて紙葉類から到来した光を受光した受光部から出力データを取得する処理(A)と、識別対象物を含む領域に対応する前記受光部の出力データである第1データと、当該識別対象物が含まれない領域に対応する前記受光部の出力データである第2データと、を取得する処理(B)と、前記第2データにより前記第1データを補正した第3データを生成する処理(C)と、前記第3データに基づいて紙葉類を識別する処理(D)と、を紙葉類識別装置に実行させる。
【0029】
(22)上記(21)に記載の紙葉類識別プログラムにおいて、前記光源は、紙葉類に複数波長の光を照射してもよく、前記受光部は、紙葉類から到来した複数波長の光を受光してもよく、前記第1データ及び前記第2データは、各々、前記複数波長の光に係るデータを含んでもよく、上記処理(C)では、前記複数波長の光に係る第1データをそれぞれ、対応する同じ波長の光に係る第2データで補正した複数波長に係る第3データを生成してもよく、上記処理(D)では、前記複数波長の光に係る第3データに基づいて紙葉類を識別してもよい。
【0030】
(23)上記(22)に記載の紙葉類識別プログラムにおいて、前記複数波長の光に係る第1データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第1乗算データと、前記複数波長の光に係る第2データのうちの前記第1の波長及び前記第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第2乗算データとを算出する処理(D)を更に備えてもよく、上記処理(C)では、前記第2乗算データにより前記第1乗算データを補正した第4データを生成してもよく、上記処理(D)では、前記複数波長の光に係る第3データと、前記第4データとに基づいて紙葉類を識別してもよい。
【0031】
(24)上記(21)~(23)のいずれかに記載の紙葉類識別方法において、上記処理(C)では、前記第2データとして、前記識別対象物が含まれない領域の出力データの代表値を用いてもよい。
【0032】
(25)上記(21)~(24)のいずれかに記載の紙葉類識別プログラムにおいて、前記光源は、アクリル樹脂製の棒状の導光体と、前記導光体の2つの端面のうちの少なくとも一方に対向する発光素子と、を備えてもよく、前記光源は、前記導光体を介して紙葉類に光を照射してもよい。
【0033】
(26)上記(21)~(25)のいずれかに記載の紙葉類識別プログラムにおいて、前記光源は、紙葉類に対して主走査方向に直線状の光を照射してもよく、前記受光部は、紙葉類から到来した主走査方向で直線状の光を受光してもよく、上記処理(C)では、前記第2データとして、前記識別対象物を含む領域の主走査方向での位置に応じた出力データを用いてもよい。
【0034】
(27)本開示の第6の態様に係る紙葉類識別プログラムは、紙葉類識別装置を用いて識別対象物が設けられた紙葉類を識別する紙葉類識別プログラムであって、光源から照射されて紙葉類から到来した複数波長の光を受光した受光部から前記複数波長の光に係る出力データを取得する処理と、取得した前記複数波長の光に係る出力データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである乗算データを算出する処理と、前記複数波長の光に係る出力データと、前記乗算データとに基づいて紙葉類を識別する処理と、を紙葉類識別装置に実行させる。
【0035】
(28)上記(21)~(27)のいずれかに記載の紙葉類識別プログラムにおいて、前記光源は、紙葉類に赤外光を照射してもよく、前記赤外光は、850nm以上、950nm以下の波長の光を含んでもよい。
【0036】
(29)上記(21)~(28)のいずれかに記載の紙葉類識別プログラムにおいて、前記受光部は、前記光源から照射されて紙葉類で反射した光を受光してもよく、前記出力データは、紙葉類で反射した光に係るデータを含んでもよい。
【0037】
(30)上記(21)~(29)のいずれかに記載の紙葉類識別方法において、識別対象の紙葉類は、識別対象物として、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が減少するインクと、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が増加するインクとの少なくとも一方を含んでもよい。
【発明の効果】
【0038】
本開示によれば、紙葉類の識別精度を向上することが可能な紙葉類識別装置、紙葉類識別方法及び紙葉類識別プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施形態1に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を側方から見た図である。
図2】実施形態1の識別対象となる紙幣の一例を示す平面模式図である。
図3】実施形態1の識別対象となる紙幣に設けられたインクの赤外領域における反射率を示すグラフの一例である。
図4】実施形態1に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、斜め方向から見た図である。
図5】実施形態1に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を上方から見た図である。
図6】紙幣全体の画像データを示す模式図である。
図7】実施形態1に係る紙葉類識別装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
図8】実施形態2に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を側方から見た図である。
図9】実施形態2の識別対象となる紙幣の一例を示す平面模式図である。
図10】実施形態2に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、斜め方向から見た図である。
図11】実施形態2に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を上方から見た図である。
図12】実施形態2に係る紙葉類識別装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
図13】実施形態3に係る紙葉類識別装置が搭載され得る紙葉類処理装置の一例の外観を示した斜視模式図である。
図14】実施形態3に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明するブロック図である。
図15】実施形態3に係る紙葉類識別装置が備える光学ラインセンサの構成の一例を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本開示に係る紙葉類識別装置、紙葉類識別方法及び紙葉類識別プログラムの実施形態を、図面を参照しながら説明する。本開示の対象となる紙葉類としては、紙幣、小切手、商品券、手形、帳票、有価証券、カード状媒体等の様々な紙葉類が適用可能であるが、以下においては、紙幣を対象とする装置を例として、本開示を説明する。なお、紙葉類識別プログラムは、紙葉類識別装置に予め導入されてもよいし、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、又は、ネットワークを介して、操作者に提供されてもよい。また、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。また、構造を説明する図面には、互いに直交するXYZ座標系を適宜示している。
【0041】
(実施形態1)
図1を用いて、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を側方から見た図である。図1に示すように、本実施形態に係る紙葉類識別装置1aは、紙幣BNに光を照射する光源11aと、紙幣BNから到来した光を受光する受光部13aと、受光部13aの出力データを取得する制御部20aと、を備えており、例えば、紙幣を処理対象とする紙葉類処理装置に搭載して用いることができる。識別対象となる紙幣BNは、XY平面内をX方向に搬送されてもよい。
【0042】
図2は、本実施形態の識別対象となる紙幣の一例を示す平面模式図の一例である。図3は、本実施形態の識別対象となる紙幣に設けられたインクの赤外領域における反射率を示すグラフの一例である。図2に示すように、本実施形態の識別対象となる紙幣BNの少なくとも一方の主面には、識別対象物Sが設けられている(例えば印刷されている)。紙幣BNの当該主面には、識別対象物Sを含む、例えば矩形の領域ROIとともに、識別対象物Sを含まない、例えば矩形の領域ROIが設定されている。
【0043】
識別対象の紙幣BNは、識別対象物Sとして、図3に示すように、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が減少するインク(以下、ネガティブインク)と、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が増加するインク(以下、ポジティブインク)との少なくとも一方を含んでいてもよい。紙葉類識別装置1aによれば、このようなインクを含む紙幣BNを高精度に識別することが可能である。以下、ネガティブインク及びポジティブインクをまとめて特殊インクという場合がある。図3中、IR1は、例えば800nmであり、IR2は、例えば870nmであり、IR3は、940nmである。
【0044】
光源11aは、紙幣BNに光を照射する。光源11aが照射する光は、ピーク波長とその近傍の波長を含む波長帯域の光であってもよい。光源11aから照射される光の種類(波長)は、特に限定されず、白色光、赤色光、緑色光、青色光等の可視光や、赤外光等が挙げられる。
【0045】
受光部13aは、紙幣BNから到来した光を受光する。すなわち、光学センサとして機能し得る。受光部13aは、光源11aから照射され紙幣BNで反射した光を受光してもよい。すなわち、受光部13aは、光源11aが光を照射する間、その光が紙幣BNで反射した光を受光してもよい。このとき、受光部13aは、少なくとも、光源11aから照射された光の波長帯域に、感度をもつセンサとして機能し得る。受光部13aは、受光した光の光量に応じた電気信号を出力データとして出力してもよい。より詳細には、受光部13aは、受光素子を備えてもよく、受光素子は、光を受光して入射光量に応じた電気信号に変換してもよく、受光部13aは、その電気信号を出力してもよい。なお、ここで、「光量」とは、入射光の放射強度及び入射時間に比例する物理量を意味する。
【0046】
図4は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、斜め方向から見た図である。図4に示すように、光源11a及び受光部13aは、Y方向に延在する光学ラインセンサ14aを構成していてもよい。この場合、Y方向は、光学ラインセンサ14aの主走査方向に対応し、X方向は、光学ラインセンサ14aの副走査方向に対応する。光源11aは、Y方向に延びる直線状に光を照射してもよい。受光部13aは、Y方向に一列に配列された複数の受光素子(受光画素)を備えていてもよく、リニアイメージセンサを構成していてもよい。
【0047】
また、光源11a及び受光部13aのY方向(主走査方向)の長さは、紙幣BNのY方向の長さよりも長くてもよい。そして、光源11aが紙幣BNのY方向全体に直線状に光を照射し、受光部13aが紙幣BNのY方向全体で反射された光を受光してもよい。すなわち、受光部13aは、入射光量に応じた電気信号を、複数の受光素子(Y方向の位置)に対応する複数のチャンネルにて出力してもよい。チャンネルは、Y方向に順に受光素子に割り当てられた番号である。このとき、受光部13aは、出力データとして、各チャンネルで同時に受光した光に係るデータであるラインデータを出力してもよい。紙幣BNをX方向(副走査方向)に搬送しながら、この光源11aによる光の照射と受光部13aによる光の受光とを繰り返すことによって、紙幣BN全体の反射光に係るデータを取得してもよい。
【0048】
図5は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を上方から見た図である。図5に示すように、光源11aは、導光体15aと、導光体15aの2つの端面15aaにそれぞれ対向する発光素子17aと、を備えていてもよく、導光体15aを介して紙幣BNに光を照射してもよい。
【0049】
導光体15aは、透明な棒状の光学部材であり、発光素子17aからの光を導いて照射対象である紙幣BNに向けて直線状の光を照射するものであり、発光素子17aから発せられる光を線状化する。
【0050】
導光体15aは、アクリル樹脂製のものであってもよい。アクリル樹脂製の導光体15aは、受光部13aの出力データに与える影響が大きいため、この場合に、特に効果的に、後述する第1データのばらつきを低減できる。したがって、紙幣BNの識別精度を特に効果的に向上することが可能である。
【0051】
発光素子17aは、対向する端面15aaに向けて発光する素子であり、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。なお、発光素子17aは、対応する端面に対して複数設けられていてもよい。また、発光素子17aは、2つの端面15aaのいずれか一方のみに対向して配置されていてもよい。
【0052】
光源11aは、紙幣BNに、850nm以上、950nm以下の波長の光を含む赤外光を照射してもよい。光源11aの導光体15a(例えばアクリル樹脂製の導光体)の透過率は、900nm付近の赤外領域で特に変動が大きいため、上記構成の場合に、特に効果的に出力データ(後述する第1データ)のばらつきを低減できる。したがって、紙幣BNの識別精度を特に効果的に向上することが可能である。また、900nm付近の赤外領域で反射率が変動するインク(例えば特殊インク)を識別対象物Sとして含む紙幣BNを高精度に識別することが可能である。
【0053】
受光部13aの各受光画素は、互いに異なる複数の波長帯域の全域に感度をもつ受光素子を備えていてもよいし、互いに異なる波長帯域の光を選択的に受光する複数種の受光素子を備えていてもよい。前者の場合、光源11aは、複数波長の光を順番に紙幣BNに照射し、各波長の光の照射タイミングに合わせて受光部13aが当該波長の光を受光してもよい。後者の場合、光源11aは、複数波長の光を同時に紙幣BNに照射し、受光部13aが複数波長の光を複数種の受光素子にてそれぞれ受光してもよい。
【0054】
制御部20aは、受光部13aの出力データを取得する処理を行う。すなわち、受光部13aが受光した光の光量に応じたデータを取得する。制御部20aが取得する受光部13aの出力データは、デジタル化されたものであってもよい。制御部20aは、受光部13aの出力データとして、紙幣BN全体の画像データを取得してもよい。
【0055】
図6は、紙幣全体の画像データを示す模式図である。紙幣BN全体の画像データは、紙幣BN全体を撮像したデータ(二次元データ)であり、図6に示すように、Y方向(主走査方向)及びX方向(副走査方向)にマトリクス状に配列された複数の画素Pixから構成されてもよい。各画素Pixのアドレスは、Y方向の位置に対応する受光部13aのチャンネルと、X方向の位置に対応するラインによって特定されてもよい。ラインは、受光部13aが順次出力するラインデータに順に割り当てられた番号である。
【0056】
制御部20aによって取得される受光部13aの出力データは、紙幣BNで反射した光に係るデータを含んでもよい。これにより、反射率に特徴があるインク(例えば特殊インク)を識別対象物Sとして含む紙幣BNを高精度に識別することが可能である。
【0057】
また、制御部20aは、受光部13aの出力データとして、紙幣BN全体の反射光に係る画像データを取得してもよい。以下、反射光に係る画像データを反射画像データという。
【0058】
なお、制御部20aが取得した出力データの解像度は、受光部13aの出力データの解像度と同じであってもよいし、異なっていてもよく、例えば、Y方向(主走査方向)及びX方向(副走査方向)において低くてもよい。
【0059】
制御部20aは、紙葉類識別装置1aの各部を制御するものであってもよく、例えば、紙葉類識別プログラムを含む、各種の処理を実現するためのプログラムと、該プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、該CPUによって制御される各種ハードウェア(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array))等によって構成されてもよい。
【0060】
制御部20aは、識別対象物Sを含む領域ROI図2参照)に対応する受光部13aの出力データである第1データと、当該識別対象物Sが含まれない領域ROI図2参照)に対応する受光部13aの出力データである第2データと、を取得する処理を行う。
【0061】
第1データ及び第2データは、いずれも紙幣BN全体の反射画像データの一部のデータ、すなわち紙幣BNの一部の反射画像データであってもよい。領域ROI及びROIは、当該紙幣BNの金種に応じて予め設定されていてもよく、制御部20aは、金種毎に設定された領域ROI及びROIの位置情報に基づいて、受光部13aの出力データ(例えば、紙幣BN全体の反射画像データ)から、第1データ及び第2データを抽出してもよい。
【0062】
そして、制御部20aは、第2データにより第1データを補正した第3データを生成する処理(以下、補正処理という場合がある)を行い、第3データに基づいて紙幣BNを識別する処理(以下、識別処理という場合がある)を行う。光源11aの発光素子17a(例えばLED)の素子毎の特性ばらつきや温度によるピーク波長のシフト、光源11aの導光体15a(例えばアクリル樹脂製の導光体)の透過率の波長に応じた変動、受光部13aの受光素子自体の特性ばらつき等の環境要因に起因して、受光部13aの出力データがばらつく場合があるが、本実施形態によれば、識別対象物Sを含む領域ROIに対応する受光部13aの出力データである第1データを、当該識別対象物Sが含まれない領域ROIに対応する受光部13aの出力データである第2データで補正して第3データを生成することから、出力データ(特に第1データ)の上記環境要因に起因したばらつきを低減することができる。そして、補正されたデータである第3データに基づいて紙幣BNを識別することから、ばらつきが低減されたデータに基づいて紙幣BNを識別することができる。したがって、紙幣BNの識別精度を向上することが可能である。
【0063】
制御部20aは、補正処理において、第1データを第2データで規格化することによって第3データを生成してもよい。例えば、第1データの各出力値(画素値)を第2データに係る出力値で除算する処理を行ってもよい。
【0064】
また、制御部20aは、第2データとして、識別対象物Sが含まれない領域ROIに対応する受光部13aの出力データの代表値(例えば平均値、中央値等)を用いてもよい。例えば、識別対象物Sが含まれない領域ROIの反射画像データに含まれる出力値(画素値)の平均値を用いて、第1データの各出力値(画素値)を規格化(除算)してもよい。
【0065】
光源11aは、紙幣BNに複数波長の光を照射してもよく、受光部13aは、紙幣BNから到来した複数波長の光を受光してもよく、第1データ及び第2データは、各々、複数波長の光に係るデータを含んでもよく、制御部20aは、補正処理において、複数波長の光に係る第1データをそれぞれ、対応する同じ波長の光に係る第2データで補正した複数波長の光に係る第3データを生成してもよく、識別処理において、複数波長の光に係る第3データに基づいて紙幣BNを識別してもよい。これにより、波長に応じて特性(例えば反射率)が変化する識別対象物S(例えば特殊インク)が設けられた紙幣BNを高精度に識別することができる。
【0066】
また、この場合、制御部20aは、複数波長の光に係る第1データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第1乗算データと、複数波長の光に係る第2データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである第2乗算データとを算出する処理(以下、乗算処理という場合がある)を行ってもよく、補正処理において、第2乗算データにより第1乗算データを補正した第4データを更に生成する処理を行ってもよく、識別処理において、複数波長の光に係る第3データと、第4データとに基づいて紙幣BNを識別してもよい。これにより、識別対象物S(特に特殊インク)の真偽の分離性能を向上することができる。したがって、紙幣BNの識別精度を更に向上することが可能である。
【0067】
一般的なインク、例えば赤外吸収インクや赤外非吸収インクでは、赤外領域での反射率に差がほとんど見られず、赤外光に係る出力データの空間では、各出力は、原点を通るベクトル(1,1,1)方向に分布する。一方、特殊インクはそうではない。したがって、複数波長の光に係る出力データの積は、特殊インクよりも一般的なインクの方が影響を受けやすく、特殊インクと一般的なインクとの分離度の向上に貢献する。
【0068】
なお、「複数波長の光」とは、波長帯域が互いに異なる光であり、少なくとも第1の波長の光及び第2の波長の光を含む。例えば、2波長の光、すなわち第1の波長の光及び第2の波長の光であってもよいし、3波長の光、すなわち第1の波長の光、第2の波長の光及び第3の波長の光であってもよい。複数波長の光は、例えば、可視光については色が互いに異なる光であってもよく、赤外光及び紫外光については、波長帯域の一部のみが互いに重なる光又は波長帯域が互いに重ならない光であってもよい。
【0069】
また、「複数波長の光に係る第1データ(第2データ)」とは、受光部13aが各波長の光を受光することによってそれぞれ出力されたデータに基づく第1データ(第2データ)であり、第1の波長の光に係る第1データ(第2データ)から第N(Nは2以上の整数)の波長の光に係る第1データ(第2データ)までを含むものである。
【0070】
2波長の光を用いる場合、制御部20aは、補正処理において、第1の波長の光に係る第1データ(以下、λ1の第1データ)を、第1の波長の光に係る第2データ(以下、λ1の第2データ)で補正した第1の波長の光に係る第3データ(以下、λ1の第3データ)を生成してもよく、第2の波長の光に係る第1データ(以下、λ2の第1データ)を、第2の波長の光に係る第2データ(以下、λ2の第2データ)で補正した第2の波長の光に係る第3データ(以下、λ2の第3データ)を生成してもよい。3波長の光を用いる場合、制御部20aは、補正処理において、更に、第3の波長の光に係る第1データ(以下、λ3の第1データ)を、第3の波長の光に係る第2データ(以下、λ1の第2データ)で補正した第3の波長の光に係る第3データ(以下、λ3の第3データ)を生成してもよい。
【0071】
また、2波長の光を用いる場合、制御部20aは、乗算処理において、第1乗算データとして、λ1の第1データをλ2の第1データと乗算したデータ(以下、λ1×λ2の第1データ)を算出してもよく、第2乗算データとして、λ1の第2データをλ2の第2データと乗算したデータ(以下、λ1×λ2の第2データ)を算出してもよく、補正処理において、第4データとして、λ1×λ2の第2データによりλ1×λ2の第1データを補正したデータ(以下、λ1×λ2の第4データ)を生成してもよい。
【0072】
3波長の光を用いる場合、制御部20aは、乗算処理において、第1乗算データとして、更に、λ1の第1データをλ3の第1データと乗算したデータ(以下、λ1×λ3の第1データ)と、λ2の第1データをλ3の第1データと乗算したデータ(以下、λ2×λ3の第1データ)と、を算出してもよく、第2乗算データとして、更に、λ1の第2データをλ3の第2データと乗算したデータ(以下、λ1×λ3の第2データ)と、λ2の第2データをλ3の第2データと乗算したデータ(以下、λ2×λ3の第2データ)と、を算出してもよく、補正処理において、第4データとして、更に、λ1×λ3の第2データによりλ1×λ3の第1データを補正したデータ(以下、λ1×λ3の第4データ)と、λ2×λ3の第2データによりλ2×λ3の第1データを補正したデータ(以下、λ2×λ3の第4データ)と、を生成してもよい。
【0073】
2波長の光を用いる場合、第1乗算データは、第1の波長の光に係る第1データの各出力値(画素値)を、第2の波長の光に係る第2データの各出力値(画素値)と乗算したデータ(ただし、XY平明内の同一地点に係る出力値同士を乗算したもの)であってもよい。3波長の光を用いる場合も同様に出力値(画素値)同士(ただし、XY平明内の同一地点に係る出力値同士)を乗算してもよい。
【0074】
2波長の光を用いる場合、第2乗算データは、第1の波長の光に係る第2データの代表値を、第2の波長の光に係る第2データの代表値と乗算したデータ(ただし、同じ種類の代表値同士(例えば平均値同士)を乗算したもの)であってもよい。3波長の光を用いる場合も同様に代表値同士(ただし、同じ種類の代表値同士)を乗算してもよい。
【0075】
2波長の光を用いる場合、制御部20aは、識別処理において、λ1の第3データ、及びλ2の第3データ(2次元の特徴量)に基づいて、紙幣BNを識別してもよいし、λ1の第3データ、λ2の第3データ、及びλ1×λ2の第4データ(3次元の特徴量)に基づいて、紙幣BNを識別してもよい。
【0076】
3波長の光を用いる場合、制御部20aは、識別処理において、λ1の第3データ、λ2の第3データ、及びλ3の第3データ(3次元の特徴量)に基づいて、紙幣BNを識別してもよいし、λ1の第3データ、λ2の第3データ、λ3の第3データ、λ1×λ2の第4データ、λ1×λ3の第4データ、及びλ2×λ3の第4データ(6次元の特徴量)に基づいて、紙幣BNを識別してもよい。
【0077】
上述のように複数波長の光を用いる場合、受光部13aは、光源11aが複数波長の光を照射する間、その複数波長の光が紙幣BNで反射した複数波長の光を受光してもよい。このとき、受光部13aは、少なくとも、光源11aから照射された光の波長帯域に、感度をもつセンサとして機能し得る。受光部13aは、受光した光の光量に応じた電気信号を出力データとして波長毎に出力してもよい。より詳細には、受光部13aは、受光素子を備えてもよく、受光素子は、光を受光して入射光量に応じた電気信号に変換してもよく、受光部13aは、その電気信号を波長毎に出力してもよい。
【0078】
また、複数波長の光を用いる場合、光源11aが照射する各波長の光は、ピーク波長とその近傍の波長を含む波長帯域の光であってもよく、光源11aが照射する複数波長の光は、互いにピーク波長が異なっていてもよい。また、光源11aは、ピーク波長が互いに異なる複数の発光素子17aを備えていてもよい。例えば、光源11aは、ピーク波長が互いに異なる複数波長の赤外光を照射してもよく、ピーク波長が互いに異なる複数波長の赤外光をそれぞれ照射する複数の発光素子17aを備えていてもよい。また、受光部13aは、光源11aから照射されて紙幣BNで反射した複数波長の赤外光をそれぞれ受光してもよい。同様に、第1データ及び第2データは、各々、複数波長の赤外光に係るデータであってもよい。更に、制御部20aによって処理される複数波長の光に係る各種データは、複数波長の赤外光に係るデータであってもよい。
【0079】
例えば、光源11aは、ピーク波長が互いに異なる複数波長の赤外光(第1及び第2の赤外光、又は第1~第3の赤外光)を照射してもよく、受光部13aは、光源11aから照射されて紙幣BNで反射した複数波長の赤外光(第1及び第2の赤外光、又は第1~第3の赤外光)を受光してもよく、第1データ及び第2データは、各々、複数波長の赤外光(第1及び第2の赤外光、又は第1~第3の赤外光)に係るデータを含んでもよい。制御部20aによって処理される複数波長の光に係る各種データは、複数波長の赤外光(例えば、第1及び第2の赤外光、又は第1~第3の赤外光)に係るデータであってもよい。
【0080】
第1及び第2の赤外光は、770~830nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、840~900nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、910~970nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、のうちのいずれか2つの組み合わせであってもよい。なお、第1及び第2の赤外光の波長は、いずれが大きくてもよい。
【0081】
同様に、第1~第3の赤外光は、770~830nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、840~900nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、910~970nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光との組み合わせであってもよい。なお、第1~第3の赤外光における波長の大小関係は、特に限定されない。
【0082】
図4に示したように、光源11aは、紙幣BNに対して主走査方向(Y方向)に直線状の光を照射してもよく、受光部13aは、紙幣BNから到来した主走査方向(Y方向)で直線状の光を受光してもよく、制御部20aは、第2データとして、識別対象物Sを含む領域ROI図2参照)の主走査方向(Y方向)での位置に応じた出力データを用いてもよい。主走査方向における位置が変化すると、光が通過する光源11aの導光体15a(例えばアクリル樹脂製の導光体)の長さも変動するため、出力データも主走査方向において変動し、特に主走査方向の中心(導光体15aの中心部)において変動がより顕著になるが、上記構成によれば、補正用の第2データとして、識別対象物Sを含む領域ROIの主走査方向での位置に応じた出力データを用いることから、主走査方向における位置に起因する出力データのばらつきを低減することができる。また、主走査方向における位置によって受光素子の特性ばらつきも発生し得るが、上記構成によれば、そのような受光素子の特性ばらつきも低減することができる。したがって、紙幣BNの識別精度を更に向上することが可能である。
【0083】
この場合、識別対象物Sを含む領域ROIと、識別対象物Sが含まれない領域ROIとは、主走査方向(Y方向)において紙幣BNの同一箇所(同一範囲)に設定されていてもよく、第1データ及び第2データは、いずれも紙幣BN全体の反射画像データに含まれる同じチャンネル範囲のデータであってもよい。例えば、第1データ及び第2データは、紙幣BN全体の反射画像データのうち、nチャンネルからmチャンネルまで(ただし、n及びmは、n<mを満たす自然数)のデータであってもよい。
【0084】
なお、第1データ及び第2データの副走査方向(X方向)の範囲、すなわちライン数は、それぞれ適宜設定可能であり、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0085】
制御部20aは、識別処理において、各画素に識別関数を適用し、画素毎に、当該画素が特殊インクを有するか否かを判定してもよい。すなわち、識別処理に用いる上述の各種データを特徴量(例えば、2次元、3次元又は6次元の特徴量)として識別関数に入力し、識別関数の出力に基づいて、紙幣BNに識別対象物Sが設けられているか否かを判定してもよい。これにより、制御部20aによる識別処理の高速化が可能である。
【0086】
ここで、識別関数は、教師あり機械学習により生成することができる。具体的には、例えば、判別分析やサポートベクターマシン、ニューラルネットワーク等を用いることができる。教師データとしては、例えば、特殊インクが印刷された紙幣の当該インク部分と、その背景部分(周辺部分)とを含む画像データを用いることができる。ここで、特殊インク部分と、背景部分、すなわち非特殊インク部分とをクラスラベルとすることができる。例えば、ネガティブインクであれば、910~970nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光に係る画像データを二値化(インク部分と背景部分に分離)し、その結果をそのまま画素毎のクラスラベルとすることができる。ポジティブインクであれば、770~830nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光に係る画像データを二値化(インク部分と背景部分に分離)し、その結果をそのまま画素毎のクラスラベルとすることができる。何れの場合も、二値化処理として、Otsuの二値化を行ってもよい。
【0087】
より具体的には、例えば、3波長の光を用いる場合、制御部20aは、識別処理において、下記式(1)~(6)に基づいて、紙幣BNに識別対象物Sが設けられているか否かを判定してもよい。ここで、式(3)の代わりに式(3’)を用いてもよい。
【0088】
【数1】
【0089】
式(1)及び(2)において、Lは閾値であり、式(1)において、λがL以上であれば、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていると判定し、λがL未満であれば、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていないと判定する。
【0090】
式(2)において、λは評価値であり、識別対象物Sを含む領域ROI内のPの総和を算出する。
【0091】
各式において、Pは識別関数f(x)の結果であり、特殊インクがあると判定された画素の総和(式(3))、又は、識別関数f(x)の出力である分類スコアの総和(式(3’))を用いることができる。式(3)及び(3’)において、cは分類スコアの閾値である。
【0092】
識別関数f(x)は式(4)で表され、式(6)に示されるように3次元の特徴量が入力される。式(5)において、ω(w~w)は、機械学習の結果得られた係数ベクトル(重み)であり、式(6)で表されるφ(x)は対象画素j(jは、対象画素を示す番号)の特徴量ベクトルである。式(6)において、x1j、x2j及びx3jは、それぞれ、対象画素における第1、第2及び第3の光(第1、第2及び第3の赤外光でもよい)に係る画素値であり、μ、μ及びμは、それぞれ、識別対象物Sを含まない領域ROIにおける第1、第2及び第3の光(第1、第2及び第3の赤外光でもよい)に係る出力データの代表値である。ここでは、識別関数f(x)は、線形識別式で表される。
【0093】
なお、式(6)中、x1j/μ、x2j/μ及びx3j/μが、それぞれ、上述のλ1の第3データ、λ2の第3データ、及びλ3の第3データに対応する。
【0094】
また、3波長の光を用いる場合、制御部20aは、識別処理において、下記式(11)~(16)に基づいて、紙幣BNに識別対象物Sが設けられているか否かを判定してもよい。ここで、式(13)の代わりに式(13’)を用いてもよい。
【0095】
【数2】
【0096】
式(11)及び(12)において、Lは閾値であり、式(11)において、λがL以上であれば、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていると判定し、λがL未満であれば、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていないと判定する。
【0097】
式(12)において、λは評価値であり、識別対象物Sを含む領域ROI内のPの総和を算出する。
【0098】
各式において、Pは識別関数f(x)の結果であり、特殊インクがあると判定された画素の総和(式(13))、又は、識別関数f(x)の出力である分類スコアの総和(式(13’))を用いることができる。式(13)及び(13’)において、cは分類スコアの閾値である。
【0099】
識別関数f(x)は式(14)で表され、式(16)に示されるように6次元の特徴量が入力される。式(15)において、ω(w~w)は、機械学習の結果得られた係数ベクトル(重み)であり、式(16)で表されるφ(x)は対象画素j(jは、対象画素を示す番号)の特徴量ベクトルである。式(16)において、x1j、x2j及びx3jは、それぞれ、対象画素における第1、第2及び第3の光(第1、第2及び第3の赤外光でもよい)に係る画素値であり、μ、μ及びμは、それぞれ、識別対象物Sを含まない領域ROIにおける第1、第2及び第3の光(第1、第2及び第3の赤外光でもよい)に係る出力データの代表値である。ここでは、識別関数f(x)は、線形識別式を非線形モデルに拡張した式で表される。
【0100】
なお、式(16)中、x1j/μ、x2j/μ、x3j/μ、x1j2j/μμ、x1j3j/μμ及びx2j3j/μμが、それぞれ、上述のλ1の第3データ、λ2の第3データ、λ3の第3データ、λ1×λ2の第4データ、λ1×λ3の第4データ、及びλ2×λ3の第4データに対応する。
【0101】
制御部20aは、例えば上記式(6)及び(16)で説明したように、同じ計算処理内において補正処理と同時に乗算処理を行ってもよい。
【0102】
制御部20aは、識別処理において、紙幣BNの真偽を識別してもよい。例えば、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていると判定した場合、当該紙幣BNを真券で判定してもよく、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていないと判定した場合、当該紙幣BNを偽造券で判定してもよい。
【0103】
次に、図7を用いて、本実施形態に係る紙葉類識別装置1aの動作について説明する。図7は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0104】
図7に示すように、まず、制御部20aが、光源11aから照射されて紙幣BNから到来した(例えば反射した)光を受光した受光部13aから出力データを取得する(ステップS11)。
【0105】
次に、制御部20aが、識別対象物Sを含む領域ROIに対応する受光部13aの出力データである第1データと、当該識別対象物Sが含まれない領域ROIに対応する受光部13aの出力データである第2データと、を取得する(ステップS12)。
【0106】
次に、制御部20aが、第2データにより第1データを補正した第3データを生成する補正処理を行う(ステップS13)。ステップS13では、制御部20aが、補正処理とともに、乗算処理を行ってもよい。
【0107】
その後、制御部20aが、第3データに基づいて紙幣BNを識別する識別処理を行い(ステップS14)、紙葉類識別装置1aの動作が終了する。
【0108】
(実施形態2)
図8を用いて、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成について説明する。図8は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を側方から見た図である。図8に示すように、本実施形態に係る紙葉類識別装置1bは、紙幣BNに複数波長の光を照射する光源11bと、紙幣BNから到来した複数波長の光を受光する受光部13bと、受光部13bの複数波長の光に係る出力データを取得する制御部20bと、を備えており、例えば、紙幣を処理対象とする紙葉類処理装置に搭載して用いることができる。識別対象となる紙幣BNは、XY平面内をX方向に搬送されてもよい。
【0109】
図9は、本実施形態の識別対象となる紙幣の一例を示す平面模式図である。図9に示すように、本実施形態の識別対象となる紙幣BNの少なくとも一方の主面には、識別対象物Sが設けられている(例えば印刷されている)。紙幣BNの当該主面には、識別対象物Sを含む、例えば矩形の領域ROIが設定されている。
【0110】
識別対象の紙幣BNは、識別対象物Sとして、図3に示したように、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が減少するインク(ネガティブインク)と、赤外領域において波長が長くなるにつれて反射率が増加するインク(ポジティブインク)との少なくとも一方を含んでいてもよい。紙葉類識別装置1bによれば、このようなインクを含む紙幣BNを高精度に識別することが可能である。
【0111】
光源11bは、紙幣BNに複数波長の光を照射する。光源11bから照射される光の種類(波長)は、特に限定されず、白色光、赤色光、緑色光、青色光等の可視光や、赤外光等が挙げられる。
【0112】
なお、「複数波長の光」とは、波長帯域が互いに異なる光であり、少なくとも第1の波長の光及び第2の波長の光を含む。例えば、2波長の光、すなわち第1の波長の光及び第2の波長の光であってもよいし、3波長の光、すなわち第1の波長の光、第2の波長の光及び第3の波長の光であってもよい。複数波長の光は、例えば、可視光については色が互いに異なる光であってもよく、赤外光及び紫外光については、波長帯域の一部のみが互いに重なる光又は波長帯域が互いに重ならない光であってもよい。
【0113】
受光部13bは、紙幣BNから到来した複数波長の光を受光する。すなわち、光学センサとして機能し得る。受光部13bは、光源11bから照射され紙幣BNで反射した複数波長の光を受光してもよい。すなわち、受光部13bは、光源11bが複数波長の光を照射する間、その複数波長の光が紙幣BNで反射した複数波長の光を受光してもよい。このとき、受光部13bは、少なくとも、光源11bから照射された光の波長帯域に、感度をもつセンサとして機能し得る。受光部13bは、受光した光の光量に応じた電気信号を出力データとして波長毎に出力してもよい。より詳細には、受光部13bは、受光素子を備えてもよく、受光素子は、光を受光して入射光量に応じた電気信号に変換してもよく、受光部13bは、その電気信号を波長毎に出力してもよい。
【0114】
図10は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、斜め方向から見た図である。図10に示すように、光源11b及び受光部13bは、Y方向に延在する光学ラインセンサ14bを構成していてもよい。この場合、Y方向は、光学ラインセンサ14bの主走査方向に対応し、X方向は、光学ラインセンサ14bの副走査方向に対応する。光源11bは、Y方向に延びる直線状に光を照射してもよい。受光部13bは、Y方向に一列に配列された複数の受光素子(受光画素)を備えていてもよく、リニアイメージセンサを構成していてもよい。
【0115】
また、光源11b及び受光部13bのY方向(主走査方向)の長さは、紙幣BNのY方向の長さよりも長くてもよい。そして、光源11bが紙幣BNのY方向全体に直線状に光を照射し、受光部13bが紙幣BNのY方向全体で反射された光を受光してもよい。すなわち、受光部13bは、入射光量に応じた電気信号を、複数の受光素子(Y方向の位置)に対応する複数のチャンネルにて出力してもよい。チャンネルは、Y方向に順に受光素子に割り当てられた番号である。このとき、受光部13bは、出力データとして、各チャンネルで同時に受光した光に係るデータであるラインデータを出力する。紙幣BNをX方向(副走査方向)に搬送しながら、この光源11bによる光の照射と受光部13bによる光の受光とを繰り返すことによって、紙幣BN全体の反射光に係るデータを取得してもよい。
【0116】
図11は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を上方から見た図である。図11に示すように、光源11bは、導光体15bと、導光体15bの2つの端面15baにそれぞれ対向する発光素子17bと、を備えていてもよく、導光体15bを介して紙幣BNに光を照射してもよい。
【0117】
導光体15bは、透明な棒状の光学部材であり、発光素子17bからの光を導いて照射対象である紙幣BNに向けて直線状の光を照射するものであり、発光素子17bから発せられる光を線状化する。
【0118】
導光体15bは、アクリル樹脂製のものであってもよい。
【0119】
発光素子17bは、対向する端面15baに向けて発光する素子であり、例えば、LEDを用いることができる。なお、発光素子17bは、対応する端面に対して複数設けられていてもよい。また、発光素子17bは、2つの端面15baのいずれか一方のみに対向して配置されていてもよい。
【0120】
光源11bは、紙幣BNに、850nm以上、950nm以下の波長の光を含む赤外光を照射してもよい。これにより、900nm付近の赤外領域で反射率が変動するインク(例えば特殊インク)を識別対象物Sとして含む紙幣BNを高精度に識別することが可能である。
【0121】
受光部13bの各受光画素は、互いに異なる複数の波長帯域の全域に感度をもつ受光素子を備えていてもよいし、互いに異なる波長帯域の光を選択的に受光する複数種の受光素子を備えていてもよい。前者の場合、光源11bは、複数波長の光を順番に紙幣BNに照射し、各波長の光の照射タイミングに合わせて受光部13bが当該波長の光を受光してもよい。後者の場合、光源11bは、複数波長の光を同時に紙幣BNに照射し、受光部13bが複数波長の光を複数種の受光素子にてそれぞれ受光してもよい。
【0122】
制御部20bは、受光部13bの複数波長の光に係る出力データを取得する処理を行う。すなわち、受光部13bが受光した光の光量に応じた波長毎のデータを取得する。なお、「複数波長の光に係る出力データ」とは、受光部13bが各波長の光を受光することによってそれぞれ出力されたデータであり、第1の波長の光に係る出力データから第N(Nは2以上の整数)の波長の光に係る出力データまでを含むものである。制御部20bが取得する受光部13bの出力データは、デジタル化されたものであってもよい。制御部20bは、受光部13bの出力データとして、紙幣BN全体の画像データを取得してもよい。
【0123】
紙幣BN全体の画像データは、紙幣BN全体を撮像したデータ(二次元データ)であり、図6に示したように、Y方向(主走査方向)及びX方向(副走査方向)にマトリクス状に配列された複数の画素Pixから構成されてもよい。各画素Pixのアドレスは、Y方向の位置に対応する受光部13bのチャンネルと、X方向の位置に対応するラインによって特定されてもよい。ラインは、受光部13bが順次出力するラインデータに順に割り当てられた番号である。
【0124】
制御部20bによって取得される受光部13bの出力データは、紙幣BNで反射した光に係るデータを含んでもよい。これにより、反射率に特徴があるインク(例えば特殊インク)を識別対象物Sとして含む紙幣BNを高精度に識別することが可能である。
【0125】
また、制御部20bは、受光部13bの出力データとして、紙幣BN全体の反射光に係る画像データ、すなわち紙幣BN全体の反射画像データを取得してもよい。
【0126】
なお、制御部20bが取得した出力データの解像度は、受光部13bの出力データの解像度と同じであってもよいし、異なっていてもよく、例えば、Y方向(主走査方向)及びX方向(副走査方向)において低くてもよい。
【0127】
制御部20bは、紙葉類識別装置1bの各部を制御するものであってもよく、例えば、紙葉類識別プログラムを含む、各種の処理を実現するためのプログラムと、該プログラムを実行するCPUと、該CPUによって制御される各種ハードウェア(例えばFPGA)等によって構成されてもよい。
【0128】
制御部20bは、取得した複数波長の光に係る出力データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士(出力データ同士)を乗算したデータである乗算データを算出する処理(以下、乗算処理という場合がある)を行い、複数波長の光に係る出力データと、乗算データとに基づいて紙幣BNを識別する処理(以下、識別処理という場合がある)を行う。これにより、識別対象物S(特に特殊インク)の真偽の分離性能を向上することができる。したがって、紙幣BNの識別精度を向上することが可能である。
【0129】
一般的なインク、例えば赤外吸収インクや赤外非吸収インクでは、赤外領域での反射率に差がほとんど見られず、赤外光に係る出力データの空間では、各出力は、原点を通るベクトル(1,1,1)方向に分布する。一方、特殊インクはそうではない。したがって、複数波長の光に係る出力データの積は、特殊インクよりも一般的なインクの方が影響を受けやすく、特殊インクと一般的なインクとの分離度の向上に貢献する。
【0130】
制御部20bが受光部13bから取得した複数波長の光に係る出力データは、識別対象物Sを含む領域ROIに対応するデータであってもよい。すなわち、複数波長の光に係る出力データは、いずれも紙幣BN全体の反射画像データの一部のデータ、すなわち紙幣BNの一部の反射画像データであってもよい。領域ROIは、当該紙幣BNの金種に応じて予め設定されていてもよく、制御部20bは、金種毎に設定された領域ROIの位置情報に基づいて、受光部13bの出力データ(例えば、紙幣BN全体の反射画像データ)から、識別対象物Sを含む領域ROIに対応するデータを抽出してもよい。
【0131】
2波長の光を用いる場合、制御部20bは、乗算処理において、乗算データとして、第1の波長の光に係る出力データ(以下、λ1の出力データ)を第2の波長の光に係る出力データ(以下、λ2の出力データ)と乗算したデータ(以下、λ1×λ2の出力データ)を算出してもよく、制御部20bは、識別処理において、λ1の出力データ、λ2の出力データ、及びλ1×λ2の出力データ(3次元の特徴量)に基づいて、紙幣BNを識別してもよい。
【0132】
3波長の光を用いる場合、制御部20bは、乗算処理において、乗算データとして、更に、λ1の出力データを第3の波長の光に係る出力データ(以下、λ3の出力データ)と乗算したデータ(以下、λ1×λ3の出力データ)と、λ2の出力データをλ3の出力データと乗算したデータ(以下、λ2×λ3の出力データ)と、を算出してもよく、制御部20bは、識別処理において、λ1の出力データ、λ2の出力データ、λ3の出力データ、λ1×λ2の出力データ、λ1×λ3の出力データ、及びλ2×λ3の出力データ(6次元の特徴量)に基づいて、紙幣BNを識別してもよい。
【0133】
2波長の光を用いる場合、乗算データは、第1の波長の光に係る出力データの各出力値(画素値)を、第2の波長の光に係る出力データの各出力値(画素値)と乗算したデータ(ただし、XY平明内の同一地点に係る出力値同士を乗算したもの)であってもよい。3波長の光を用いる場合も同様に出力値(画素値)同士(ただし、XY平明内の同一地点に係る出力値同士)を乗算してもよい。
【0134】
本実施形態では、光源11bが照射する各波長の光は、ピーク波長とその近傍の波長を含む波長帯域の光であってもよく、光源11bが照射する複数波長の光は、互いにピーク波長が異なっていてもよい。また、光源11bは、ピーク波長が互いに異なる複数の発光素子17bを備えていてもよい。例えば、光源11bは、ピーク波長が互いに異なる複数波長の赤外光を照射してもよく、ピーク波長が互いに異なる複数波長の赤外光をそれぞれ照射する複数の発光素子17bを備えていてもよい。また、受光部13bは、光源11bから照射されて紙幣BNで反射した複数波長の赤外光をそれぞれ受光してもよい。同様に、制御部20bが受光部13bから取得した複数波長の光に係る出力データは、各々、複数波長の赤外光に係るデータであってもよい。更に、制御部20bによって処理される複数波長の光に係る各種データは、複数波長の赤外光に係るデータであってもよい。
【0135】
例えば、光源11bは、ピーク波長が互いに異なる複数波長の赤外光(第1及び第2の赤外光、又は第1~第3の赤外光)を照射してもよく、受光部13bは、光源11bから照射されて紙幣BNで反射した複数波長の赤外光(第1及び第2の赤外光、又は第1~第3の赤外光)を受光してもよく、制御部20bは、受光部13bから、複数波長の赤外光(第1及び第2の赤外光、又は第1~第3の赤外光)に係るデータを取得してもよい。制御部20bによって処理される複数波長の光に係る各種データは、複数波長の赤外光(例えば、第1及び第2の赤外光、又は第1~第3の赤外光)に係るデータであってもよい。
【0136】
第1及び第2の赤外光は、770~830nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、840~900nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、910~970nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、のうちのいずれか2つの組み合わせであってもよい。なお、第1及び第2の赤外光の波長は、いずれが大きくてもよい。
【0137】
同様に、第1~第3の赤外光は、770~830nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、840~900nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光と、910~970nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光との組み合わせであってもよい。なお、第1~第3の赤外光における波長の大小関係は、特に限定されない。
【0138】
制御部20bは、識別処理において、各画素に識別関数を適用し、画素毎に、当該画素が特殊インクを有するか否かを判定してもよい。すなわち、識別処理に用いる上述の各種データを特徴量(例えば、3次元又は6次元の特徴量)として識別関数に入力し、識別関数の出力に基づいて、紙幣BNに識別対象物Sが設けられているか否かを判定してもよい。これにより、制御部20bによる識別処理の高速化が可能である。
【0139】
ここで、識別関数は、教師あり機械学習により生成することができる。具体的には、例えば、判別分析やサポートベクターマシン、ニューラルネットワーク等を用いることができる。教師データとしては、例えば、特殊インクが印刷された紙幣の当該インク部分と、その背景部分(周辺部分)とを含む画像データを用いることができる。ここで、上述の各種データに係る特徴量(例えば、3次元又は6次元の特徴量)を入力とし、特殊インク部分と、背景部分、すなわち非特殊インク部分とをクラスラベルとすることができる。例えば、ネガティブインクであれば、910~970nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光に係る画像データを二値化(インク部分と背景部分に分離)し、その結果をそのまま画素毎のクラスラベルとすることができる。ポジティブインクであれば、770~830nmの波長帯域にピーク波長がある赤外光に係る画像データを二値化(インク部分と背景部分に分離)し、その結果をそのまま画素毎のクラスラベルとすることができる。何れの場合も、二値化処理として、Otsuの二値化を行ってもよい。
【0140】
より具体的には、例えば、3波長の光を用いる場合、制御部20bは、識別処理において、下記式(21)~(26)に基づいて、紙幣BNに識別対象物Sが設けられているか否かを判定してもよい。ここで、式(23)の代わりに式(23’)を用いてもよい。
【0141】
【数3】
【0142】
式(21)及び(22)において、Lは閾値であり、式(21)において、λがL以上であれば、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていると判定し、λがL未満であれば、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていないと判定する。
【0143】
式(22)において、λは評価値であり、識別対象物Sを含む領域ROI内のPの総和を算出する。
【0144】
各式において、Pは識別関数f(x)の結果であり、特殊インクがあると判定された画素の総和(式(23))、又は、識別関数f(x)の出力である分類スコアの総和(式(23’))を用いることができる。式(23)及び(23’)において、cは分類スコアの閾値である。
【0145】
識別関数f(x)は式(24)で表され、式(26)に示されるように6次元の特徴量が入力される。式(25)において、ω(w~w)は、機械学習の結果得られた係数ベクトルであり、式(26)で表されるφ(x)は対象画素j(jは、対象画素を示す番号)の特徴量ベクトルである。式(26)において、x1j、x2j及びx3jは、それぞれ、対象画素における第1、第2及び第3の光(第1、第2及び第3の赤外光でもよい)に係る画素値である。ここでは、識別関数f(x)は、線形識別式を非線形モデルに拡張した式で表される。
【0146】
なお、式(26)中、x1j、x2j、x3j、x1j2j、x1j3j及びx2j3jが、それぞれ、上述のλ1の出力データ、λ2の出力データ、λ3の出力データ、λ1×λ2の出力データ、λ1×λ3の出力データ、及びλ2×λ3の出力データに対応する。
【0147】
制御部20bは、識別処理において、紙幣BNの真偽を識別してもよい。例えば、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていると判定した場合、当該紙幣BNを真券で判定してもよく、紙幣BNに識別対象物Sが設けられていないと判定した場合、当該紙幣BNを偽造券で判定してもよい。
【0148】
次に、図12を用いて、本実施形態に係る紙葉類識別装置1bの動作について説明する。図12は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0149】
図12に示すように、まず、制御部20bが、光源11bから照射されて紙幣BNから到来した(例えば反射した)複数波長の光を受光した受光部13bから出力データを取得する(ステップS21)。
【0150】
次に、制御部20bが、取得した複数波長の光に係る出力データのうちの第1の波長及び第2の波長の光に係るデータ同士を乗算したデータである乗算データを算出する乗算を行う(ステップS22)。
【0151】
第1の波長及び第2の波長の光に係るデータが識別対象物Sを含む領域ROIに対応するデータである場合は、ステップS22の前に、各波長の光に係る出力データについて、紙幣BN全体に対応するデータ(例えば紙幣BN全体の反射画像データ)から、識別対象物Sを含む領域ROIに対応するデータ(例えば識別対象物Sを含む領域ROIの反射画像データ)を抽出する処理を行ってもよい。
【0152】
その後、制御部20bが、受光部13bから取得した複数波長の光に係る出力データ(識別対象物Sを含む領域ROIに対応するデータでもよい)と、算出した乗算データとに基づいて紙幣BNを識別する識別処理を行い(ステップS23)、紙葉類識別装置1bの動作が終了する。
【0153】
(実施形態3)
図13を用いて、本実施形態に係る紙葉類識別装置が搭載され得る紙葉類処理装置の構成について説明する。図13は、本実施形態に係る紙葉類識別装置が搭載され得る紙葉類処理装置の一例の外観を示した斜視模式図である。本実施形態に係る紙葉類識別装置が搭載される紙葉類処理装置は、例えば、図13に示す構成を有するものであってもよい。図13に示す紙葉類処理装置300は、紙幣の識別処理を行う本実施形態に係る紙幣識別装置(図13では図示せず)と、処理対象の複数の紙幣が積層状態で載置されるホッパ301と、リジェクト紙幣が排出される2つのリジェクト部302と、オペレータからの指示を入力するための操作部303と、筐体310内で金種、真偽及び正損が識別された紙幣を分類して集積するための4つの集積部306a~306dと、紙幣の識別計数結果や各集積部306a~306dの集積状況等の情報を表示するための表示部305とを備える。
【0154】
次に、図14を用いて、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成について説明する。図14は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の構成の一例を説明するブロック図である。図14に示すように、本実施形態に係る紙葉類識別装置100は、光学ラインセンサ110、制御部120、記憶部130及び搬送部140を備えている。
【0155】
光学ラインセンサ110は、搬送される紙幣の各種の光学特性を検出するものであり、紙幣の搬送路に沿って、光源111及び受光部113を備えていてもよい。光源111は、紙幣に複数波長の光を照射し、受光部113は、光源111から照射されて紙幣で反射された複数波長の光を受光し、複数波長の光に係るデータを波長毎に出力する。
【0156】
制御部120は、記憶部130に記憶された各種の処理を実現するためのプログラム(紙葉類識別プログラムを含む)と、当該プログラムを実行するCPUと、当該CPUによって制御される各種ハードウェア(例えばFPGA)等によって構成されている。制御部120は、記憶部130に記憶されたプログラムに従って、紙葉類識別装置100の各部を制御する。また、制御部120は、記憶部130に記憶されたプログラムにより、受光部113からの出力データの取得処理、取得した出力データの補正処理、取得した出力データの乗算処理、補正及び/又は乗算された各種データを用いた識別処理等の処理を行う機能を有している。制御部120によるこれらの処理は、実施形態1又は2で説明した制御部10a又は10bによる処理と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0157】
制御部120は、識別処理として、紙幣の少なくとも金種及び真偽を識別する処理を行う。実施形態1又は2で説明した補正及び/又は乗算された各種データを用いた識別処理によれば、紙幣の真偽を識別することができる。制御部120は、紙幣の正損を判定する機能を有してもよい。その場合、制御部120は、紙幣の汚れ、折れ、破れ等を検出することにより、紙幣を、市場で再利用できる正券及び市場流通に適さない損券のいずれとして処理するかを判定する機能を有する。
【0158】
記憶部130は、半導体メモリやハードディスク等の不揮発性及び/又は揮発性の記憶装置から構成されており、紙葉類識別装置100を制御するための各種プログラムと各種データとを記憶している。
【0159】
搬送部140は、複数のローラやベルト等を回転駆動して、紙葉類識別装置100内に設けた搬送路に沿って紙幣を1枚ずつ搬送する。
【0160】
次に、図15を用いて、光学ラインセンサ110の構成について説明する。図15は、本実施形態に係る紙葉類識別装置が備える光学ラインセンサの構成の一例を説明する断面模式図である。図15に示すように、光学ラインセンサ110は、紙葉類処理装置の搬送路311に対向するコンタクトイメージセンサから構成されており、搬送路311の一部を構成している。紙幣BNは、搬送路311(XY平面)内をX方向に搬送される。Y方向が光学ラインセンサ110の主走査方向に対応し、X方向が光学ラインセンサ110の副走査方向に対応している。
【0161】
図15に示すように、光学ラインセンサ110は、2つの反射用の光源111、集光レンズ112、受光部113及び基板114を備えている。反射用の光源111は、例えば、主走査方向に延在する導光体と、導光体の少なくとも一方の端面に対向し、複数波長の光をそれぞれ照射する複数種の発光素子とを備え、紙幣BNの受光部113側の主面(以下、A面)に、複数波長の光を順次照射する。集光レンズ112は、例えば、主走査方向に複数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイから構成され、反射用の光源111から出射され、紙幣BNのA面で反射された光を集光する。受光部113は、例えば、主走査方向に複数の受光素子(受光画素)が配列されたリニアイメージセンサを備えており、各受光素子は、光源111が照射する複数波長の光の波長帯域に感度をもつ。各受光素子には、例えば、少なくとも可視領域から波長1100nmの赤外領域まで感度をもつ、シリコン(Si)フォトダイオードを用いることができる。各受光素子は、基板114上に実装されており、集光レンズ112によって集光された光を受光して、入射光量に応じた電気信号に変換して基板114に出力する。各受光素子は、光源111による各波長の光の照射タイミングに合わせて当該波長の光を受光する。基板114は、例えば、受光素子を駆動するための駆動回路と、受光素子からの信号を処理して出力するための信号処理回路とを含んでいる。基板114は、受光部113(各受光素子)の出力信号を増幅処理した後、デジタルデータにA/D変換した上で出力する。
【0162】
光源111は、複数波長の光として、少なくとも複数波長の赤外光、例えばピーク波長が互いに異なる第1~第3の赤外光を照射する。光源111は、その他、可視光を照射してもよい。可視光としては、例えば、赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)、これら3色の光を含む白色光(W)等を用いることができる。
【0163】
本実施形態では、制御部120が実施形態1又は2で説明した制御部10a又は10bと同様の処理を行うことから、実施形態1又は2と同様に、紙幣の識別精度を向上することが可能である。
【0164】
なお、上記実施形態では、光源から照射されて紙幣で反射した光に係る出力データを制御部による補正処理や乗算処理に用いる場合について説明したが、光源から照射されて紙幣を透過した光に係る出力データを制御部による補正処理や乗算処理に用いてもよい。
【0165】
以上、図面を参照しながら実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0166】
以上のように、本開示は、紙葉類の識別精度を向上するのに有用な技術である。
【符号の説明】
【0167】
1a、1b、100:紙葉類識別装置
11a、11b、111:光源
13a、13b、113:受光部
14a、14b、110:光学ラインセンサ
15a、15b:導光体
15aa、15ba:導光体の端面
17a、17b:発光素子
20a、20b、120:制御部
112:集光レンズ
114:基板
130:記憶部
140:搬送部
300:紙幣処理装置
301:ホッパ
302:リジェクト部
303:操作部
305:表示部
306a~306d:集積部
311:搬送路
BN:紙幣
S:識別対象物
ROI:識別対象物を含む領域
ROI:識別対象物を含まない領域
Pix:画素

図1
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